特許第6386496号(P6386496)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6386496-二重共振振動モーター 図000002
  • 特許6386496-二重共振振動モーター 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386496
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】二重共振振動モーター
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
   B06B1/04 S
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-123058(P2016-123058)
(22)【出願日】2016年6月21日
(65)【公開番号】特開2017-74584(P2017-74584A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2016年6月21日
(31)【優先権主張番号】201520797690.8
(32)【優先日】2015年10月15日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515342457
【氏名又は名称】エーエーシー テクノロジーズ ピーティーイー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AAC TECHNOLOGIES PTE.LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】毛 路斌
(72)【発明者】
【氏名】侯 斐
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−245409(JP,A)
【文献】 特開2011−250637(JP,A)
【文献】 特開2013−192995(JP,A)
【文献】 特開2015−044177(JP,A)
【文献】 特開2010−179295(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0127858(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、前記ケーシング内に設置される振動部材と、前記ケーシング内に固定されるコイルと、前記振動部材を弾性支持するための弾性コネクターとを備える二重共振振動モーターであって、前記振動部材は、重量ブロックと、前記重量ブロック内に収容される第1の磁石鋼セット及び第2の磁石鋼セットとを備え、前記コイルと前記第1の磁石鋼セット及び第2の磁石鋼セットとが対向して設置され、前記第1の磁石鋼セットと前記コイルによって発生する駆動力は、該二重共振振動モーターを第1の方向に振動させ、前記第2の磁石鋼セットと前記コイルによって発生する駆動力は、該二重共振振動モーターを第2の方向に振動させ、前記第1の方向と前記第2の方向とが交差し、
前記弾性コネクターは、第1の弾性コネクター及び第2の弾性コネクターを備え、前記ケーシングは、対向して設置されている第1の側壁及び第2の側壁を備え、前記重量ブロックは、前記第1の側壁に近い第1の側部及び前記第2の側壁に近い第2の側部を備え、前記第1の弾性コネクターは、前記重量ブロックの第2の側部の両端にそれぞれ接続される第1の固定部と、2つの前記第1の固定部を接続する第1の接続部とを備え、前記第1の接続部が前記第1の側壁に接続され、前記第2の弾性コネクターは、前記重量ブロックの第1の側部の両端にそれぞれ接続される第2の固定部と、2つの前記第2の固定部を接続する第2の接続部とを備え、前記第2の接続部が前記第2の側壁に接続されることを特徴とする二重共振振動モーター。
【請求項2】
前記第1の磁石鋼セットは、間隔を置いて対向して設置される2つの第1の磁石鋼を備え、前記第2の磁石鋼セットは、間隔を置いて対向して設置される2つの第2の磁石鋼を備え、2つの前記第1の磁石鋼が対向する方向と2つの前記第2の磁石鋼が対向する方向とが交差することを特徴とする請求項1に記載の二重共振振動モーター。
【請求項3】
前記コイルは、略長方形であり、エンドレス接続されている第1の側辺、第2の側辺、第3の側辺及び第4の側辺を有し、2つの前記第1の磁石鋼は、それぞれ前記第1の側辺及び第3の側辺に対向して設置され、2つの前記第2の磁石鋼は、それぞれ前記第2の側辺及び第4の側辺に対向して設置されることを特徴とする請求項2に記載の二重共振振動モーター。
【請求項4】
前記第1の方向と前記第2の方向とが直交することを特徴とする請求項1に記載の二重共振振動モーター。
【請求項5】
該二重共振振動モーターは、前記第1の磁石鋼セット及び前記第2の磁石鋼セットを被覆すると共に前記重量ブロックに接続される極コアをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の二重共振振動モーター。
【請求項6】
前記ケーシングは、上蓋と、前記上蓋とともに収容空間を形成する蓋板を備え、前記コイルが前記蓋板に固定接続されることを特徴とする請求項1に記載の二重共振振動モーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消耗性電子用の振動モーターに関し、特に二重共振振動モーターに関する。
【背景技術】
【0002】
電子技術の発展に伴い、携帯型の消耗性電子製品、例えば、携帯電話、携帯ゲーム機、ナビゲーション装置又は携帯型マルチメディア娯楽設備などは、ますます人々に好まれるようになる。これらの電子製品では、例えば携帯電話の着信提示、情報提示、ナビ提示、ゲーム機の振動フィードバックなどのようなシステムフィードバックとして、通常に振動モーターが用いられている。このような幅広い応用では、性能が良好で、使用寿命が長く、サイズが小さい振動モーターが要求されている。
【0003】
現在、携帯型の消耗性電子製品に応用される振動モーターとして、一般的に、ケーシングと、前記ケーシングと組み合わせて収納空間を形成する基台と、当該収納空間内に収容固定される単一の振動システムとを備える。1つの振動システムは、1つの固有共鳴周波数しか有していないため、このような従来の構成の振動モーターも1つの共振周波数しか有していない。このような振動モーターを応用する1つの端末は、2つの共振周波数を実現する必要がある場合、2つの振動モーターを使用しなければならない。そうすると、振動モーターが占める空間は大幅に広くなり、現に端末が小型化にする発展の傾向に不利である。
【0004】
そのため、前記欠点を克服ために新規振動モーターを提供することが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、2つの方向の駆動力を供給可能であると共に2種類の共振周波数を有する二重共振振動モーターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。ケーシングと、前記ケーシング内に設置される振動部材と、前記ケーシング内に固定されるコイルと、前記振動部材を弾性支持するための弾性コネクターとを備える二重共振振動モーターであって、前記振動部材は、重量ブロック、前記重量ブロック内に収容される第1の磁石鋼セット及び第2の磁石鋼セットを備え、前記コイルと前記第1の磁石鋼セット及び第2の磁石鋼セットとが対向して設置され、前記第1の磁石鋼セットと前記コイルによって発生する駆動力は、該二重共振振動モーターを第1の方向に振動させ、前記第2の磁石鋼セットと前記コイルによって発生する駆動力は、該二重共振振動モーターを第2の方向に振動させ、前記第1の方向と前記第2の方向とが交差する。
【0007】
好ましくは、前記第1の磁石鋼セットは、間隔を置いて対向して設置される2つの第1の磁石鋼を備え、前記第2の磁石鋼セットは、間隔を置いて対向して設置される2つの第2の磁石鋼を備え、2つの前記第1の磁石鋼接続する線と2つの前記第2の磁石鋼接続する線とが交差する。
【0008】
好ましくは、前記コイルは、略長方形であり、エンドレス接続されている第1の側辺、第2の側辺、第3の側辺及び第4の側辺を有し、2つの前記第1の磁石鋼は、それぞれ前記第1の側辺及び第3の側辺に対向して設置され、2つの前記第2の磁石鋼は、それぞれ前記第2の側辺及び第4の側辺に対向して設置される。
【0009】
好ましくは、前記第1の方向と前記第2の方向とが直交する。
【0010】
好ましくは、前記弾性コネクターは、第1の弾性コネクター及び第2の弾性コネクターを備え、前記ケーシングは、対向して設置されている第1の側壁及び第2の側壁を備え、前記重量ブロックは、前記第1の側壁に近い第1の側部及び前記第2の側壁に近い第2の側部を備え、前記第1の弾性コネクターは、前記重量ブロックの第2の側部の両端にそれぞれ接続される第1の固定部と、2つの前記第1の固定部を接続する第1の接続部とを備え、前記第1の接続部が前記第1の側壁に接続され、前記第2の弾性コネクターは、前記重量ブロックの第1の側部の両端にそれぞれ接続される第2の固定部と、2つの前記第2の固定部を接続する第2の接続部とを備え、前記第2の接続部が前記第2の側壁に接続される。
【0011】
好ましくは、該二重共振振動モーターは、前記第1の磁石鋼セット及び前記第2の磁石鋼セットを被覆すると共に前記重量ブロックに接続される極コアをさらに備える。
【0012】
好ましくは、前記ケーシングは、上蓋と、前記上蓋とともに収容空間を形成する蓋板を備え、前記コイルが前記蓋板に固定接続される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の有益な効果は、以下の通りである。2つの異なる方向においてそれぞれ1つの共振周波数を有し、この2つの異なる共振周波数は、単独で振動することが可能であり、同時に振動して、異なる振動方向の制御を実現することも可能である。しかも、1つの振動部材及び1つの音声コイルを利用するだけで二重共振を実現でき、構成が簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る二重共振振動モーターの構成分解図である。
図2】本発明に係る二重共振振動モーターの上蓋及び極コアが取り外された正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面および実施形態を参照しながら本発明をさらに説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、二重共振振動モーター100は、ケーシングと、ケーシング内に設置される振動部材103と、ケーシング内に固定されるコイル104と、振動部材103をケーシング内に弾性支持するための弾性コネクターとを備える。ケーシングは、上蓋101と、上蓋101とともに収容空間を形成する蓋板102を備える。上蓋101は、平行に対向設置されている第1の側壁101Aと第2の側壁101B、及び第1の側壁101Aと第2の側壁101Bとに連結されている第3の側壁101Cと第4の側壁101Dを有する。第3の側壁101Cと第4の側壁101Dは、平行に対向設置されている。
【0017】
振動部材103は、重量ブロック103A、重量ブロック103Aに収容される第1の磁石鋼セット103B及び第2の磁石鋼セット103Cを備える。第1の磁石鋼セット103Bは、対向して設置される一対の第1の磁石鋼を備え、第2の磁石鋼セット103Cは、対向して設置される一対の第2の磁石鋼を備える。該二重共振振動モーター100は、さらに第1の磁石鋼セット103B及び第2の磁石鋼セット103Cを被覆する極コア107を備える。
【0018】
本実施例において、コイル104は、略長方形であり、エンドレス接続(connected end to end)されている第1の側辺、第2の側辺、第3の側辺及び第4の側辺を有する。2つの第1の磁石鋼は、それぞれ第1の側辺及び第3の側辺に対向して設置されると共に、2つの第2の磁石鋼は、それぞれ第2の側辺及び第4の側辺に対向して設置されるため、2つの第1の磁石鋼の接続線と2つの第2の磁石鋼の接続線とが垂直に交差する。コイル104に通電するときに、コイル104と第1の磁石鋼セット103Bとの間に第1の方向の駆動力が発生し、コイル104と第2の磁石鋼セット103Cとの間に第2の方向の駆動力が発生する。第1の方向(即ち、X方向)と第2の方向(即ち、Y方向)とも垂直に交差する。コイル104はリング状であってもよいが、コイル104が略長方形の形状であり、且つ一対の第1の磁石鋼及び一対の第2の磁石鋼とコイルの四つの辺とがこのような対応関係にある場合、磁界効率が最高となる。
【0019】
当該振動部材103は、X方向に1つの共振周波数f1を有し、Y方向に1つの共振周波数f2を有する。ある周波数信号がコイル104に入力されるときに(例えばf1)、振動部材103は、X、Y方向の両方において力を受ける。周波数f1とf2が大きく相違するときに、振動部材103は、共振方向において振幅が一番大きく、振動感が比較的大きく、一方、非共振方向において振幅が極めて小さく、振動感が無視されてもよい。
【0020】
以上に記述したように、f1の周波数の信号がコイル104に入力されたときに、振動部材103は、X方向に共鳴し、振動部材103がX方向の駆動力によって駆動される場合、その振動は1つの共振周波数f1を有する。このとき、Y方向においてf1の周波数の駆動力で振動させられ、振幅が極めて小さく、振動感は無視されても良い。
【0021】
f2の周波数の信号がコイル104に入力されたときに、振動部材103は、Y方向に共鳴し、振動部材103がY方向の駆動力によって駆動されたときに、その振動は1つの共振周波数f2を有する。このとき、X方向においてf2の周波数の駆動力で振動させられ、振幅が極めて小さく、振動感は無視されても良い。
【0022】
周波数f1及び周波数f2の信号が同時にコイル104に入力されたときに、2つの共振周波数が同時に動作することが可能であり、即ち、X方向のf1の周波数の振動感があれば、Y方向のf2の周波数の振動感もあり、相互に影響しない。このとき、両方向の振動の組み合わせによって、異な方向の振動制御が実現できる。
【0023】
重量ブロック103Aは、第1の側壁101Aに近い第1の側部1031A及び第2の側壁101Bに近い第2の側部1032Aを有する。弾性コネクターは、第1の弾性コネクター108及び第2の弾性コネクター109を備える。第1の弾性コネクター108は、第2の側部1032Aの両端にそれぞれ接続される第1の固定部108Aと、2つの第1の固定部108Aを連結する第1の接続部108Bとを含み、第1の接続部108Bには2つの屈曲部108Cが存在している。この2つの屈曲部108Cは、それぞれ第3の側壁101C及び第4の側壁101Dに当接してもよく、第3の側壁101C及び第4の側壁101Dとの間にギャップが存在してもよい。第1の接続部108Bと第1の側壁101Aとが固定接続される。第2の弾性コネクター109は、第1の側部1031Aの両端にそれぞれ接続される第2の固定部109Aと、2つの第2の固定部109Aを接続する第2の接続部109Bとを備え、第2の接続部109Bには2つの屈曲部109Cが存在している。この2つの屈曲部109Cは、それぞれ第3の側壁101C及び第4の側壁101Dに当接してもよく、第3の側壁101C及び第4の側壁101Dとの間にギャップが存在してもよい。第2の接続部109Bと第2の側壁101Bとが固定接続される。各弾性コネクターはそれぞれ重量ブロック103Aの両端に固定され、このような構成により、振動部材103が振動方向に直交する方向への変位は抑制されることができ、単一方向の振動の安定性を確保できる。
【0024】
該二重共振振動モーター100は、2つの異なる方向においてそれぞれ1つの共振周波数を有し、この2つの異なる共振周波数は、単独で振動することが可能であり、同時に振動して、異なる振動方向の制御を実現することも可能である。しかも、1つの振動部材及び1つの音声コイルを利用するだけで二重共振を実現でき、構成が簡単で、振動安定性が高い。
【0025】
以上に記述されたのは本発明の実施形態に過ぎない。なお、当業者にとっては、本発明の創造思想を逸脱しない前提で、改良を行うことができ、それは全て本発明の保護範囲に属する。
【符号の説明】
【0026】
100 二重共振振動モーター
101 上蓋
101A 第1の側壁
101B 第2の側壁
101C 第3の側壁
101D 第4の側壁
102 蓋板
103 振動部材
103A 重量ブロック
103B 第1の磁石鋼セット
103C 第2の磁石鋼セット
104 コイル
107 極コア
108 第1の弾性コネクター
108A 第1の固定部
108B 第1の接続部
108C 屈曲部
109 第2の弾性コネクター
109A 第2の固定部
109B 第2の接続部
109C 屈曲部
1031A 第1の側部
1032A 第2の側部
図1
図2