(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルゴリズムが多指数関数アルゴリズム、双指数関数アルゴリズム、三指数関数アルゴリズム、減衰指数関数アルゴリズム、ラプラス変換、適合度アルゴリズム、SSEアルゴリズム、最小二乗アルゴリズム、及び非負最小二乗アルゴリズムからなる群から選択されるアルゴリズムを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
連続的に及び初期血餅形成から溶解までの全止血プロセスにわたって、治療的血小板遮断をモニタリングするため及び抗血小板薬の効果を測定するための迅速で、信頼できる、定量的なポイントオブケア検査のための方法及び装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(i)サンプル中の水のNMR緩和率特有のシグナルを測定してNMR緩和データを得るステップと;(ii)NMR緩和データからサンプル中のレオロジー変化特有の磁気共鳴パラメータ値又は値のセットを決定するステップと;(iii)ステップ(ii)の結果を所定の閾値と比較するステップと、により水性サンプル中のレオロジー変化をモニタリングする方法を特徴とする。
【0011】
関連する態様では、本発明は、(i)サンプル中の水の一連の磁気共鳴緩和率測定値を得るステップと;(ii)サンプル中の二つ以上の観察可能な水集団を識別するアルゴリズムを使用して測定値を変換するステップであって、各観察可能な水集団はレオロジー変化中の一つ以上の時点で別個の緩和率及び別個のシグナル強度を有するステップと;(iii)二つ以上の観察可能な水集団の少なくとも一つについての緩和率又はシグナル強度に基づいて、サンプル中のレオロジー変化をモニタリングするステップとを含む水性サンプル中のレオロジー変化をモニタリングする方法を特徴とする。
【0012】
本発明はさらに、(i)サンプル中の二つ以上の観察可能な水集団を識別するサンプル中の水の一連の測定値を得るステップであって、各観察可能な水集団はレオロジー変化中の一つ以上の時点で別個のシグナル及び/又は別個のシグナル強度を有するステップと;(ii)二つ以上の観察可能な水集団の少なくとも一つについて観察されたシグナル及び/又はシグナル強度に基づいて、サンプル中のレオロジー変化をモニタリングするステップとを含む水性サンプル中のレオロジー変化をモニタリングする方法を特徴とする。測定は、核磁気共鳴測定、電子常磁性共鳴、マイクロ波分光測定、又は水の特性を測定するための当技術分野で既知の任意の他の技術であり得る。特定の実施形態では、水性サンプル中の水は放射標識されている(例えば、重水素又はトリチウムで標識されている)。
【0013】
一態様では、本発明は、(i)第1の血液サンプル中の水の一連の磁気共鳴緩和率測定値を得るステップと;(ii)第1の血液サンプル中の二つ以上の別個の水集団を識別するアルゴリズムを使用して測定値を変換するステップであって、各別個の水集団は一つ以上の値を有する一つ以上の磁気共鳴パラメータにより特徴づけられるステップと;(iii)ステップ(ii)の結果に基づいて、第1の血液サンプル中の凝固又は溶解プロセスをモニタリングするステップとを含む第1の血液サンプル中の凝固又は溶解プロセスをモニタリングする方法を特徴とする。血液サンプルは血漿サンプル、乏血小板血漿サンプル、多血小板血漿サンプル、単離及び洗浄した血小板を含む血液サンプル、全血サンプル、凝固血サンプル、又は本明細書に記載する任意の他の種類の血液サンプルであり得る。方法のある実施形態では、ステップ(i)の前に、フィブリノーゲン(例えば、1±0.25、2±0.5、3±0.75、4±1、6±2又は8±2mg/mL)を第1の血液サンプルに添加する。方法の特定の実施形態では、ステップ(i)の前に、凝固開始因子又は凝固阻害因子を第1の血液サンプルに添加する。凝固開始因子/阻害因子は、RF(レプチラーゼ及び第XIII因子)、AA(アラキドン酸)、ADP(アデノシン二リン酸)、CK(カオリンクレイ)、TRAP(トロンビン受容体活性化ペプチド)、トロンビン、血小板凝集阻害因子、又は本明細書に記載する任意の凝固開始因子若しくは凝固阻害因子から選択することができる。方法のなお他の実施形態では、ステップ(i)の前に、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)を第1の血液サンプルに添加する。方法は、(iv)対象の第2の血液サンプル中の水の一連の第2の緩和率測定値を得るステップと;(v)第2の血液サンプル中の二つ以上の別個の水集団を識別するアルゴリズムを使用して第2の緩和率測定値を変換するステップであって、各別個の水集団は各々が一つ以上の値を有する一つ以上の磁気共鳴パラメータにより特徴づけられるステップと;(vi)ステップ(ii)及びステップ(v)の結果に基づいて、プロセスをモニタリングするステップとをさらに含むことができる。例えば、第1の血液サンプルは血漿サンプルであってもよく、第2の血液サンプルは全血サンプルであってもよく;第1の血液サンプルは多血小板血漿サンプルであってもよく、第2の血液サンプルは全血サンプルであってもよく;第1の血液サンプルは乏血小板血漿サンプルであってもよく、第2の血液サンプルは全血サンプルであってもよく;第1の血液サンプルは単離及び洗浄した血小板を含んでもよく、第2の血液サンプルは全血サンプル又は本明細書に記載する比較サンプルの任意の他のセットであってもよい。特定の実施形態では、ステップ(i)の前に、血小板阻害因子を第1の血液サンプルに添加し、血小板阻害因子を第2の血液サンプルに添加せず;ステップ(i)の前に、血小板活性化因子を第1の血液サンプルに添加し、血小板活性化因子を第2の血液サンプルに添加せず;又はステップ(i)の前に、RF、AA及びCKから選択される凝固開始因子を第1の血液サンプルに添加し;ステップ(iv)の前に、ADP及びトロンビンから選択される凝固開始因子を第2の血液サンプルに添加する。方法のある実施形態では、ステップ(i)の前に、フィブリノーゲン(例えば、1±0.25、2±0.5、3±0.75、4±1、6±2又は8±2mg/mL)を第1の血液サンプルに添加し;ステップ(iv)の前に、フィブリノーゲン(例えば、1±0.25、2±0.5、3±0.75、4±1、6±2又は8±2mg/mL)を第2の血液サンプルに添加する。
【0014】
上記方法では、磁気共鳴パラメータ値は、血液サンプル中の機能性フィブリノーゲン関連水分子特有であり得る。特定の実施形態では、二つ以上の別個の水集団の少なくとも一つは、血小板活性化、血小板阻害、凝固時間、血小板関連血餅強度、ヘマトクリット又はフィブリノーゲン関連血餅強度と正に相関する。なお他の実施形態では、磁気共鳴パラメータ値は、低血小板活性、高血小板活性、高機能性フィブリノーゲン活性又は低機能性フィブリノーゲン活性を示す。
【0015】
上記方法のいずれかでは、アルゴリズムは、多指数関数アルゴリズム、双指数関数アルゴリズム、三指数関数アルゴリズム、減衰指数関数アルゴリズム、ラプラス変換、適合度アルゴリズム、SSEアルゴリズム、最小二乗アルゴリズム、非負最小二乗アルゴリズム、又は本明細書に記載する任意のアルゴリズムからなる群から選択されるアルゴリズムを含むことができる。特定の実施形態では、アルゴリズムは逆ラプラス変換である。
【0016】
上記方法のいずれかでは、緩和率は、T1、T2、T1/T2ハイブリッド、T
1rho、T
2rho及びT
2*からなる群から選択することができる。一つの特定の実施形態では、緩和率測定はT2測定を含み、測定は減衰曲線を提供する。
【0017】
別の特定の実施形態では、二つ以上の水集団は、血清関連T2シグナルを有する水集団及び血餅関連T2シグナルを有する水集団を含む。方法は、(i)赤血球を含む血液サンプル中の血餅形成を開始する前に血清関連水についてのT2値を計算し、T2値に基づいて、血液サンプルのヘマトクリットを決定するステップを含むことができる。方法はまた、(a)凝固プロセスを生じている血液サンプルについての血清関連T2シグナルと血餅関連T2シグナルの差を計算するステップと;(b)差に基づいて、血液サンプル中に形成された血餅の強度を決定するステップとを含むことができる。方法は、(a)血小板を含み、凝固プロセスを生じている血液サンプルについての血清関連T2シグナルと血餅関連T2シグナルの差を計算するステップと;(b)差に基づいて、血液サンプル中の血小板の活性を決定するステップとを含んでもよい。一実施形態では、方法は、(a)血液サンプル中の凝固プロセスの開始後に、血餅関連T2シグナルの初期検出前の期間を測定するステップと;(b)期間に基づいて、血液サンプルについての凝固時間を決定するステップとをさらに含む。他の実施形態では、方法は、(a)血液サンプル中の凝固プロセスの開始後に、血清関連T2シグナルについてのT2時間曲線を計算するステップと;(b)T2曲線の二次導関数の最大値を計算するステップと;(c)ステップ(b)の結果に基づいて、凝固時間特有の値を計算するステップとをさらに含む。なお他の実施形態では、方法は、血液サンプル中の凝固プロセスの開始後に、血清関連T2シグナル及び血餅関連T2シグナルに基づいて、血液サンプルが凝固亢進、凝固低下又は正常かどうかを決定するステップを含む。
【0018】
上記方法のいずれかの一実施形態では、方法は、凝固又は溶解プロセスの開始後の所定の時点でT2緩和スペクトルを減衰曲線から計算するステップをさらに含む。方法は、血液サンプル中の凝固又は溶解プロセスの開始後に、(a)プロセス中に血液サンプルに複数の緩和率測定を行い複数の減衰曲線を作成するステップと、(b)複数の減衰曲線から複数のT2緩和スペクトルを計算するステップとをさらに含むことができる。任意選択により、方法は、複数のT2緩和スペクトルから、血液サンプル中の凝固又は溶解プロセスの開始後の時間の関数として、血液サンプル中の二つ以上の水集団についての(a)T2緩和時間の変化及び(b)T2シグナル強度の変化を示す三次元データセットを計算するステップをさらに含む。
【0019】
特定の実施形態では、方法は、(i)三次元データセットを安定データ及び移行データに分割するステップと、(ii)安定データ及び移行データに基づいて、血液サンプルが凝固亢進、凝固低下若しくは正常かどうかを決定する、又は血液サンプルが低血小板活性、高血小板活性、高機能性フィブリノーゲン活性若しくは低機能性フィブリノーゲン活性を示すかどうかを決定するステップとをさらに含む。ある実施形態では、方法は、(i)三次元データセットから、プロセス中の所定の期間にわたって血液サンプル中の二つ以上の水集団の各々について観察されたシグナルの相対ボリュームを計算するステップと、(ii)シグナルの相対ボリュームに基づいて、血液サンプルが凝固亢進、凝固低下若しくは正常かどうかを決定する、又は血液サンプルが低血小板活性、高血小板活性、高機能性フィブリノーゲン活性若しくは低機能性フィブリノーゲン活性を示すかどうかを決定するステップとをさらに含む。
【0020】
上記方法のいずれかの別の特定の実施形態では、アルゴリズムは、1〜50ms(例えば、1〜10、1〜20、1〜30、5〜50、5〜30又は10〜50ms)のT2時定数についての下限及び1000〜4000ms(例えば、1000〜2000、2500〜4000、1000〜3000、1500〜4000、2000〜4000又は2000〜4000ms)のT2時定数についての上限を含む逆ラプラス変換である。例えば、血液サンプルは血漿、乏血小板血漿又は多血小板血漿であってもよく、T2時定数についての上限は2500〜4000ms(例えば、2500〜3500、2500〜3000、3000〜4000又は3500〜4000ms)である。他の実施形態では、血液サンプルは全血サンプル、赤血球を含むサンプル、又は磁性粒子を含むサンプルであり、T2時定数についての上限は1000〜2000ms(例えば、1500〜2000、1000〜1500又は1000〜1200ms)である。上記方法のいずれかのなお別の特定の実施形態では、アルゴリズムは、約1.0e-10〜約4.0e0の範囲の正則化パラメータ(α)を含む逆ラプラス変換である。
【0021】
本発明はさらに、(i)対象から採取した血液を用意して血液サンプルを製造するステップと;(ii)血液サンプル中の水の一連の磁気共鳴緩和率測定値を得るステップと;(iii)本発明の方法により、血液サンプル中の二つ以上の別個の水集団を識別するアルゴリズムを使用して測定値を変換して一つ以上の磁気共鳴パラメータ値を得るステップと;(iv)ステップ(iii)の結果に基づいて、対象が正常であるかどうか、出血状態にあるかどうか又は血栓形成促進状態にあるかどうかを決定するステップとを含む、対象の止血状態を評価する方法を特徴とする。
【0022】
関連する態様では、本発明は、(i)単離及び洗浄した血小板を用意するステップと;(ii)単離及び洗浄した血小板を所定の最小レベルのフィブリノーゲンを含む乏血小板血漿と組み合わせて試験サンプルを形成するステップと;(iii)凝固開始因子を試験サンプルに添加することにより凝固プロセスを開始するステップと;(iv)試験サンプル中の水の一連の磁気共鳴緩和率測定値を得るステップと;(v)試験サンプル中の二つ以上の別個の水集団を識別するアルゴリズムを使用して測定値を変換するステップであって、各別個の水集団は一つ以上の値を有する一つ以上の磁気共鳴パラメータにより特徴づけられるステップと;(vi)ステップ(v)の結果に基づいて、血小板活性を評価するステップとを含む、血小板活性を評価する方法を特徴とする。特定の実施形態では、凝固開始因子は、RF及びAAの組み合わせである。なお他の実施形態では、方法は、(a)血小板活性薬の存在下及び血小板活性薬の非存在下で試験サンプルを測定するステップをさらに含む。
【0023】
本発明はさらに、(i)全血サンプルを用意するステップと;(ii)単離及び洗浄した血小板を所定の最小レベルのフィブリノーゲンを含む乏血小板血漿と組み合わせて試験サンプルを形成するステップと;(iii)凝固開始因子を試験サンプルに添加することにより凝固プロセスを開始するステップと;(iv)試験サンプル中の水の一連の磁気共鳴緩和率測定値を得るステップと;(v)試験サンプル中の二つ以上の別個の水集団を識別するアルゴリズムを使用して測定値を変換するステップであって、各別個の水集団は一つ以上の値を有する一つ以上の磁気共鳴パラメータにより特徴づけられるステップと;(vi)ステップ(v)の結果に基づいて、血小板活性を評価するステップとを含む、全血サンプル中の血小板活性を評価する方法を特徴とする。特定の実施形態では、凝固開始因子は、RF及びAAの組み合わせである。なお他の実施形態では、方法は、(a)血小板活性薬の存在下及び血小板活性薬の非存在下で試験サンプルを測定するステップをさらに含む。
【0024】
別の態様では、本発明は、凝固又は溶解を生じているサンプル中の水のNMR緩和率特有のシグナルを測定してNMR緩和率データを得るステップと、NMR緩和率データから、サンプル中の凝固又は溶解プロセス特有の磁気共鳴パラメータ値又は値のセットを決定するステップとにより凝固プロセス又は溶解プロセスをモニタリングする方法を特徴とする。
【0025】
関連する態様では、本発明は、一つ以上の水の集団を有する血液サンプル中の水のNMR緩和特有のシグナルを測定してNMR緩和データを得るステップと、NMR緩和データから、血液サンプル中の水の少なくとも一つの集団と相関する磁気共鳴パラメータ値又は値のセットを決定するステップとにより凝固プロセス又は溶解プロセスをモニタリングする方法であって、磁気共鳴パラメータ値又は値のセットは凝固又は溶解プロセス特有である方法を特徴とする。血液サンプルは少なくとも二つの水の集団又は少なくとも三つの水の集団を含むことができる。特定の実施形態では、磁気共鳴パラメータ値は、血液サンプル中の血小板関連水分子特有である。なお他の実施形態では、磁気共鳴パラメータ値は、血液サンプル中の機能性フィブリノーゲン関連水分子特有である。請求する方法の特定の実施形態では、方法は、血小板関連機能性フィブリノーゲンの相対濃度を測定するステップを含む。
【0026】
ある実施形態では、方法は、対象から採取した単一血液サンプルの凝固挙動に基づいて対象の止血状態を評価するステップを含む(例えば、外科手術を生じている患者の凝固管理のため、血栓性合併症のリスクがある患者を同定するため、抗血小板療法に抵抗性の患者を同定するため、患者における抗凝固療法をモニタリングするため、患者における抗血小板療法をモニタリングするため、及び/又は患者における凝血原療法をモニタリングするため)。
【0027】
本発明のなお他の実施形態では、方法は、サンプルから初期NMR緩和率シグナルを収集してから3分、5分、6分、10分、15分、20分、30分、45分又は60分以内に対象の止血状態を評価するステップを含む。
【0028】
関連する態様では、本発明は、(i)血液サンプル中の水の一連の緩和率測定値を得るステップと;(ii)血液サンプル中の二つ以上の別個の水集団を識別するアルゴリズムを使用して測定値を変換するステップであって、各別個の水集団は一つ以上の値を有する一つ以上の磁気共鳴パラメータにより特徴づけられるステップと;(iii)ステップ(ii)の結果に基づいて、血液サンプル中の血液凝固プロセスをモニタリングするステップとにより血液凝固プロセス又は溶解プロセスをモニタリングする方法を特徴とする。
【0029】
本発明は、(i)血液サンプル中の水の一連の緩和率測定値を得るステップと;(ii) 血液サンプル中の二つ以上の別個の水集団を識別するアルゴリズムを使用して測定値を変換するステップであって、各別個の水集団は一つ以上の値を有する一つ以上の磁気共鳴パラメータにより特徴づけられるステップと;(iii)ステップ(ii)の結果に基づいて、血液サンプル中の血小板活性をモニタリングするステップとを含む血小板活性をモニタリングする方法を特徴とする。
【0030】
本発明はさらに、(i)血液サンプル中の水の一連の緩和率測定値を得るステップと;(ii) 血液サンプル中の二つ以上の別個の水集団を識別するアルゴリズムを使用して測定値を変換するステップであって、各別個の水集団は一つ以上の値を有する一つ以上の磁気共鳴パラメータにより特徴づけられるステップと;(iii)ステップ(ii)の結果に基づいて、血液サンプル中の血小板阻害をモニタリングするステップとを含む血小板阻害をモニタリングする方法を特徴とする。特定の実施形態では、方法は、(iv)血小板阻害因子の存在下で第2の血液サンプル中の水の一連の緩和率測定値を得るステップと;(v)第2の血液サンプル中の二つ以上の別個の水集団を識別するアルゴリズムを使用して測定値を変換するステップであって、各別個の水集団は一つ以上の値を有する一つ以上の磁気共鳴パラメータにより特徴づけられるステップと;(vi)ステップ(ii)及び(v)の結果に基づいて、血液サンプル中の血小板阻害をモニタリングするステップとをさらに含む。
【0031】
本発明はまた、(i)対象の血液サンプル中の水の一連の緩和率測定値を得るステップと;(ii) 血液サンプル中の二つ以上の別個の水集団を識別するアルゴリズムを使用して測定値を変換するステップであって、各別個の水集団は一つ以上の値を有する一つ以上の磁気共鳴パラメータにより特徴づけられるステップと;(iii)ステップ(ii)の結果に基づいて、対象の止血状態を評価するステップとにより対象の止血状態を評価する方法を特徴とする。
【0032】
アルゴリズムは、それだけに限らないが、多指数関数アルゴリズム、双指数関数アルゴリズム、三指数関数アルゴリズム、減衰指数関数アルゴリズム、ラプラス変換、適合度アルゴリズム、SSEアルゴリズム、最小二乗アルゴリズム、非負最小二乗アルゴリズム、及び本明細書に記載する任意の他のアルゴリズムからなる群から選択することができる。特定の実施形態では、アルゴリズムは逆ラプラス変換である、又はアルゴリズムは式(1)(すなわち、双指数関数あてはめについて)若しくは(2)(すなわち、三指数関数あてはめについて)により与えられる。
【数1】
【0033】
式(1)及び(2)中、Iは測定値T2の強度であり;tは時間であり;Amp
Aは指数項exp
(-t/T2A)が測定されたT2強度に寄与する程度を示す抽出係数であり;Amp
Bは指数項exp
(-t/T2B)が測定されたT2強度に寄与する程度を示す抽出係数であり;Amp
Cは指数項exp
(-t/T2C)が測定されたT2強度に寄与する程度を示す抽出係数であり;T2Aは水集団Aの測定されたT2強度への寄与を示す抽出緩和時間であり;T2Bは水集団Bの測定されたT2強度への寄与を示す抽出緩和時間であり;T2Cは水集団Cの測定されたT2強度への寄与を示す抽出緩和時間であり;Oはオフセット定数である。上記方法のいずれかでは、緩和率測定はT2測定を含むことができる。磁気共鳴パラメータ値はT2パラメータ値及び/又は振幅パラメータ値を含むことができる。
【0034】
レオロジー移行を生じているサンプルについては、水の集団が、サンプルの成分及び/又は複雑性に依存して変化し得る。不均一サンプル、例えば、全血では、異なる水の集団、例えば、血漿水、区画水、すなわち、細胞(赤血球、白血球及び血小板)水、及び凝固(例えば、血清)又は血餅融解などの全血プロセスの機能的特徴に関連する水が存在する。本発明の方法により、サンプル中の位置、区画又は生じている変化にかかわらず、サンプル中の種々の水集団の変化をモニタリングすることが可能になる。この方法を使用して、所与のサンプルについてのレオロジー変化を調査する又は一つ以上の分析値(PPT、PT-INR、ヘマトクリット、血小板活性)を計算することができる。
【0035】
上記方法のいずれかでは、サンプル中の水は第1の水集団及び第2の水集団を含むことができ、所与の水集団に関連するNMRパラメータはレオロジー変化と相関し得る。例えば、第2の水集団のNMRパラメータ値は血小板活性化と正に相関し得る。同様に、第1の水集団についてのT2パラメータ値は凝固時間と相関し得る。
【0036】
上記方法のいずれかでは、磁気共鳴パラメータ値は、250〜500ミリ秒の間の第1の水集団についてのT2値を含むことができる。
【0037】
上記方法のいずれかでは、磁気共鳴パラメータ値は、100〜300ミリ秒の間の第2の水集団についてのT2値を含むことができる。
【0038】
上記方法のいずれかでは、サンプルは、1〜10ミリ秒の間のT2値を有する第3の水集団をさらに含むことができる。
【0039】
上記方法のいずれかでは、シグナルは、水中のプロトンをモニタリングすること又は水中の水素原子をモニタリングすることから生じる。あるいは、上記方法のいずれかでは、シグナルは、水中のプロトンをモニタリングすること又は水中の酸素原子をモニタリングすることから生じる。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態では、血液サンプルは、第4の水集団及び第5の水集団を含有し、第4の水集団は退縮した血餅に関連し、第5の水集団は退縮した血餅を囲む血清に関連する。第4及び/又は第5の水集団の存在は、本明細書に定義する第1、第2又は第3の水集団の存在を暗示も要求もしない。
【0041】
上記方法のいずれかでは、方法は、磁気共鳴パラメータ値又は値のセットに基づいて、サンプルが凝固亢進、凝固低下又は正常かどうかを評価するステップをさらに含むことができる。
【0042】
上記方法のいずれかでは、磁気共鳴パラメータは、対象の止血状態(例えば、出血状態又は血栓形成促進状態)特有であり得る。例えば、磁気共鳴パラメータは、低血小板活性を示す;高血小板活性を示す;高機能性フィブリノーゲン活性を示す;又は低機能性フィブリノーゲン活性を示すことができる。
【0043】
本発明の特定の実施形態では、NMR緩和パラメータ特有のシグナルを測定する前に、常磁性剤(例えば、マンガン、マンガン錯体、ガドリニウム、ガドリニウム錯体又は磁性粒子)を血液サンプルに添加する。好ましい実施形態では、超常磁性粒子である。常磁性剤は、3〜40nmの間、30〜70nmの間、70〜100nmの間、100〜500nmの間、又は500〜1000nmの間の平均直径を有する超常磁性粒子であり得る。特定の実施形態では、本発明の方法を、常磁性剤の存在下及び非存在下の両方で単一患者の血液サンプルに行う。
【0044】
本発明の方法の別の実施形態では、分析されるサンプルは、2μL〜400μLの間(例えば、2μL〜10μL、10μL〜20μL、15μL〜50μL、50μL〜100μL、100μL〜250μL又は200μL〜500μL)の体積を有する。なお他の実施形態では、分析されるサンプルは、400μL〜4000μLの間の体積を有する。
【0045】
上記方法のいずれかでは、NMR緩和データは、T1、T2、T1/T2ハイブリッド、T
1rho、T
2rho及びT
2*データから選択される。さらに、見かけの拡散係数(ADC)を決定及び評価することができる(VidmarらNMR in BioMedicine、2009;及びVidmarら、Eur J Biophys J. 2008参照)。さらに、本発明の方法は、パルス磁場勾配(すなわち、勾配強度の二乗の関数としてエコー減衰量の測定を用いる)、ハーンエコーシーケンス、スピンエコーシーケンス及び/又はFIDシグナル比を利用することができる。
【0046】
本発明は、血液凝固プロセスをモニタリングするための磁気共鳴装置を特徴とし、装置は血液サンプル中の二つ以上の別個の水集団を識別するアルゴリズムを使用するマイクロプロセッサを含み、各別個の水集団は磁気共鳴パラメータ値又は値のセットにより特徴づけられる。アルゴリズムは、それだけに限らないが、多指数関数アルゴリズム、双指数関数アルゴリズム、三指数関数アルゴリズム、減衰指数関数アルゴリズム、ラプラス変換、適合度アルゴリズム、SSEアルゴリズム、最小二乗アルゴリズム、非負最小二乗アルゴリズム、及び本明細書に記載する任意の他のアルゴリズムから選択することができる。
【0047】
関連する態様では、本発明は、(i)凝固血サンプルを用意するステップと;(ii)凝固血サンプルを組織プラスミノーゲン因子(TPA)と組み合わせるステップと;(iii)凝固血サンプル中の水の一連の緩和率測定値を得るステップと;(iii) 血液サンプル中の二つ以上の別個の水集団を識別するアルゴリズムを使用して測定値を変換するステップであって、各別個の水集団は一つ以上の値を有する一つ以上の磁気共鳴パラメータにより特徴づけられるステップと;(v)ステップ(iv)の結果に基づいて、凝固血の溶解をモニタリングするステップと、を含む血餅の溶解をモニタリングする方法を特徴とする。
【0048】
ある実施形態では、対象の止血状態を、対象から採取した血液サンプルの血液凝固挙動に基づいて評価する。血液凝固挙動の例としては、凝固時間(R)、血餅強度(MA)、血小板関連血餅強度(MA
PLATELET)、機能性フィブリノーゲン関連血餅強度(MA
FF)及びMA30分後の溶解%(LY30)が挙げられる。止血状態の例としては血栓形成促進、出血及び正常状態が挙げられる。凝固挙動又は止血状態は、初期NMR緩和データの収集後の一定の時間枠内(例えば、10、6又は3分以内)に確立され得る。さらに、凝固挙動を確立する際、もう一つの添加剤(例えば、フィブリノーゲン又はTPA)をサンプルに添加してもよい。
【0049】
他の実施形態では、対象から採取した血液の血液凝固プロセスを、(i)第1の血液サンプル(例えば、添加剤で処理したサンプル)中の水の一連の第1の緩和率測定値を得るステップと;(ii)第1の血液サンプル中の二つ以上の別個の水集団を識別するアルゴリズムを使用して第1の緩和率測定値を変換するステップと;(iii)対象の第2の血液サンプル(例えば、未処理サンプル)中の水の一連の第2の緩和率測定値を得るステップと;(iv) 第2の血液サンプル中の二つ以上の別個の水集団を識別するアルゴリズムを使用して第2の緩和率測定値を変換するステップであって、各別個の水集団は一つ以上の磁気共鳴パラメータにより特徴づけられ、各磁気共鳴パラメータは一つ以上の値を有するステップと;(v)ステップ(iv)の結果に基づいて、対象の血液の凝固プロセスをモニタリングするステップとによりモニタリングする。サンプルの一つ(例えば、第1のサンプル)は、フィブリノーゲン又は組織プラスミノーゲン活性化因子などの添加剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、対象の止血状態を、モニタリングするプロセスの結果に基づいて評価又は診断する(例えば、止血状態を10、6又は3分以内に評価する)。
【0050】
他の実施形態では、本発明は、(i)対象の血液サンプルを用意するステップと;(ii)血液サンプル中の水のNMR緩和率特有のシグナルを測定して磁気共鳴パラメータの一つ以上の値を得るステップと;(iii)ステップ(ii)の結果に基づいて対象を診断するステップとにより対象の止血状態を診断する方法を特徴とする。診断は、磁気共鳴パラメータ値(複数可)と所定の閾値(複数可)の比較に基づいてもよい。所定の閾値は、一定の止血状態(例えば、正常、血栓形成促進又は出血)を表すことができる。止血状態を、初期NMR緩和率シグナルを収集する一定の時間以内(例えば、10、6又は3分以内)に評価してもよい。
【0051】
ある実施形態では、凝固挙動をはっきり定義されたデータ抽出法を使用して評価する。サンプルの凝固時間(R)は、(i)第1の水集団についてのT2時間曲線を計算するステップと;(ii)T2時間曲線の二次導関数の最大値を計算するステップと;(iii)ステップ(ii)の結果に基づいて、凝固時間(R)特有の値を計算するステップとにより収集したNMR緩和率データのセットから評価することができる。サンプルの血小板関連血餅強度(MA
PLATELET)は、(i)第1の水集団についてのT2時間曲線を計算するステップと;(ii)T2曲線上のT2の初期値とT2曲線上のT2の最小値を結ぶ線の勾配を計算するステップと;(iii)ステップ(ii)の結果に基づいて、サンプルの血小板関連血餅強度(MA
PLATELET)特有の値を計算するステップとにより評価することができる。サンプルの機能性フィブリノーゲン関連血餅強度(MA
FF)は、(i)フィブリノーゲンで処理した第1のサンプル中の第1の水集団についての第1の振幅時間曲線を計算するステップと;(ii)第2の未処理のサンプル中の第1の水集団についての第2の振幅時間曲線を計算するステップと;(iii)第1の振幅時間曲線と第2の振幅時間曲線の差を計算するステップと;(iv)ステップ(iii)の結果に基づいて、サンプルの機能性フィブリノーゲン関連血餅強度(MA
FF)特有の値を計算するステップとにより評価することができる。サンプルのMA30分後の溶解%(LY30)は、(i)TPAで処理した第1のサンプル中の第2の水集団についての第1のT2時間曲線を計算するステップと;(ii)第2の未処理のサンプル中の第2の水集団についての第2のT2時間曲線を計算するステップと;(iii)第1のT2時間曲線と第2のT2時間曲線の差を計算するステップと;(iv)ステップ(iii)の結果に基づいて、サンプルのMA30分後の溶解%特有の値を計算するステップとにより評価することができる。
【0052】
他の実施形態では、(i)対象から採取した血液サンプル中の水のNMR緩和特有のシグナルを測定してNMR緩和データを得るステップと;(ii)NMR緩和データから対象の止血状態特有のT2サインを決定するステップとにより、T2サイン曲線を使用して対象の止血状態を評価又は診断する。T2サインを標準又は標準曲線のセットと比較して対象の止血状態を確立することができる。
【0053】
他の実施形態では、本発明は、(i)液体流体状態からゲル状態に移行することができる水含有材料を用意するステップと;(ii)材料中の水のNMR緩和特有の一連のシグナルを測定してNMR緩和データを得るステップと;(iii)NMR緩和データから水含有材料特有の時間曲線を決定するステップとにより、水含有材料をモニタリングする方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、時間曲線は、T1時間曲線、T2時間曲線又はハイブリッドT1/T2時間曲線などのT2緩和曲線以外の緩和曲線である。関連する実施形態では、水含有材料は、全血、ポリアクリルアミドヒドロゲル、ポリビニルピロリドンヒドロゲル、ポリエチレングリコールヒドロゲル、ポリビニルアルコールヒドロゲル、ポリアクリル酸ヒドロゲル、カラゲナンゲル、アルギン酸塩ゲル又はゼラチンである。好ましい実施形態では、水含有材料はアクリルアミドヒドロゲルである。
【0054】
別の態様では、本発明は、(i) 液体流体状態からゲル状態に移行することができる水含有材料を用意するステップと;(ii)血液モニタリング装置を使用して水含有材料の特性を測定するステップと;(iii)ステップ(ii)で作成した特性を所定の閾値と比較することにより血液モニタリング装置の較正状態を評価するステップと、により血液モニタリング装置の較正状態を評価する方法を特徴とする。好ましい実施形態では、水含有材料はアクリルアミドゲルであり、血液モニタリング装置はT2リーダー又はトロンボエラストグラフィ(TEG)アナライザーである。具体的な実施形態では、分析前に常磁性剤(例えば、マンガン、マンガン錯体、ガドリニウム、ガドリニウム錯体又は超常磁性粒子)をサンプルに添加する。常磁性剤は3〜40nmの間、30〜70nmの間、70〜100nmの間、100〜500nmの間又は500〜1000nmの間の平均直径を有する超常磁性粒子であり得る。
【0055】
ある実施形態では、血液サンプルからの一連のNMR緩和率測定値を使用して、血液サンプル中の一定の水集団特有の一連の磁気共鳴パラメータ値(例えば、T2又は振幅値)を作成する。一連の磁気共鳴パラメータ値を時間の関数としてプロットして同様に水集団特有の時間曲線を作成することができる。例えば、サンプルが凝固を生じている際に、血液サンプル中の一定の水集団についてのT2時間曲線(又は振幅曲線)をプロットすることができる。これらの時間曲線をさらに使用して追加の曲線を作成してもよい。例えば、T2時間曲線の一次又は二次時間導関数をプロットすることができる。時間曲線を血液サンプルの凝固挙動又は血液サンプルを採取した対象の止血状態を評価するための基礎として使用することができる。同様に、同一対象から得た二つの異なるサンプル(例えば、処理サンプル及び未処理サンプル)から作成した曲線を、対象の血液の凝固挙動又は対象の止血状態を評価するための基礎として使用することができる。
【0056】
他の実施形態では、サンプルの凝固挙動又は対象の止血状態を、サンプル若しくは対象に関連する磁気共鳴パラメータの値又は時間曲線を所定の閾値と比較することに基づいて評価することができる。所定の閾値は、いくつかの異なる方法で確立することができる。例えば、所定の閾値は、止血状態(例えば、正常、血栓形成促進又は出血状態)特有であり得る。閾値は、正常及び異常対象から採取した血液について観察される平均値又は値の範囲から決定することができる。あるいは、閾値は、本発明のNMRに基づく方法に使用すると同一パラメータ又は曲線を一貫して提供する標準サンプルから決定することができる(例えば、特定の様式で血餅に処置した血液サンプル又はアクリルアミドゲル)。
【0057】
別の態様では、本発明は、(i)対象から採取した血液サンプル中の水の一連の緩和率測定(例えば、T2緩和率測定)を行うステップであって、血液サンプルは凝固プロセス又は溶解プロセスを受けており、測定により二つ以上の減衰曲線が得られ、各減衰曲線はプロセス中の時点特有であるステップと;(ii)数学的変換(例えば、逆ラプラス変換)を二つ以上の減衰曲線に適用してプロセス中の二つ以上の時点での血液サンプル中の二つ以上の水集団(例えば、血清関連T2シグナルを有する水集団及び血餅関連T2シグナルを有する水集団)を同定して二つ以上のシグナル強度を有する二つ以上の磁気共鳴パラメータ値を得るステップであって、各水集団は特徴的磁気共鳴パラメータ値及び磁気共鳴パラメータ値のシグナル強度特有の濃度を有するステップと;(iii)(a)二つ以上の時点;(b)二つ以上の磁気共鳴パラメータ値;及び(c)二つ以上のシグナル強度から3Dデータセットを作成するステップと;(iv)3Dデータセットから、対象の止血状態特有の一つ以上の凝固挙動(例えば、凝固時間(R)、線溶挙動、血餅強度(MA)、血餅の動力学的挙動、血小板関連血餅強度(MA
PLATELET)、機能性フィブリノーゲン関連血餅強度(MA
FF)、MA30分後溶解%(LY30)又はヘマトクリット)を抽出するステップと;(v)一つ以上の凝固挙動に基づいて、対象の止血状態を評価するステップと、により対象の止血状態を評価する方法を特徴とする。
【0058】
ある実施形態では、本発明は、抗血小板抗体又はFabフラグメント(例えば、アブシキシマブ(abciximab))を凝固プロセス又は溶解プロセスを生じているサンプル(例えば、全血サンプル)に添加するステップを特徴とする。他の実施形態では、本発明は、凝固活性化因子又は血小板阻害因子を凝固プロセス又は溶解プロセスを生じているサンプル(例えば、全血サンプル)に添加するステップを特徴とする。
【0059】
別の態様では、本発明は、(i)血餅中の水のT2緩和率測定値を得るステップであって、測定により減衰曲線が得られるステップと;(ii) 数学的変換(例えば、逆ラプラス変換)を減衰曲線に適用して血餅中の水集団のシグナル強度を同定するステップであって、水集団は退縮した血餅水環境又は血清水環境に相当するステップと;(iii)水集団のシグナル強度に基づいて、血餅の強度又は血餅の血小板活性を評価するステップと、により血餅の強度又は血餅の血小板活性を評価する方法を特徴とする。
【0060】
別の態様では、本発明は、(i)対象の血液サンプルを用意するステップと;(ii)サンプル中の水のT2緩和率測定値を得るステップであって、測定により減衰曲線が得られるステップと;(iii)数学的変換(例えば、逆ラプラス変換)を減衰曲線に適用して血清関連T2シグナル及び血餅関連T2シグナルを同定するステップと;(iv)血清関連T2シグナルと血餅関連T2シグナルの差、又は血餅関連T2シグナルの外観に基づいて、対象の止血状態を評価するステップと、により対象の止血状態を評価する方法を特徴とする。
【0061】
別の態様では、本発明は、(i)対象から採取した血液サンプル中の水の一連のNMR緩和率測定値を得るステップと;(ii)処理のためにNMR緩和率測定値又はNMR緩和率測定値特有のデータを変換するステップであって、処理は本明細書に記載する方法のいずれかを含むステップと;(iii)ステップ(ii)の結果を受信し、結果に基づいて、対象を診断するステップと、により対象の止血状態を診断する方法を特徴とする。
【0062】
本発明はさらに、(i)本明細書に記載する方法を使用して対象の止血状態を評価するステップと;(ii)ステップ(i)に基づいて、心臓補助装置の操作パラメータ(例えば、速度、強度、圧力、流量、ポンプ容積又は充填容積)を調整して対象の出血又は凝固のリスクを低下させるステップとを含む、心臓補助装置を装着した対象の出血又は凝固のリスクを低下させる方法を特徴とする。特定の実施形態では、心臓補助装置は、体外心臓バイパス装置及び埋め込み型血液ポンプ、例えば、左心室補助装置から選択される。
【0063】
本発明はさらに、(i)本明細書に記載する方法を使用して対象の止血状態を評価するステップと;(ii)ステップ(i)に基づいて、抗凝固療法、抗血小板療法及び/又は凝血原療法を対象に投与して対象の出血又は凝固のリスクを低下させるステップとを含む、心臓補助装置を装着している対象の出血又は凝固のリスクを低下させる方法を特徴とする。特定の実施形態では、心臓補助装置は、体外心臓バイパス装置及び埋め込み型血液ポンプ、例えば、左心室補助装置から選択される。
【0064】
別の態様では、本発明は、本発明のNMRに基づく技術を使用して測定したサンプルの凝固又は溶解挙動を、当技術分野で既知のシステムを使用して同等サンプルで測定したレオロジー変化又は凝固又は溶解と比較する方法を特徴とする。
【0065】
本発明の方法を使用してサンプル中の複数パラメータの同時測定を行うことができる(例えば、サンプルの凝固又は対象の止血状態に関連するパラメータを同時に測定する)。
【0066】
上記方法のいずれかでは、方法は、(i)全血又はその成分を1種以上の添加剤(例えば、ヘパリン、クエン酸塩、ナノ粒子製剤、常磁性剤、フィブリノーゲン、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、アブシキシマブなどの抗血栓薬、又は本明細書に記載する任意の他の添加剤)を含有する管に添加するステップと、(ii)内容物を混合して凝固プロセスを開始するステップとを含むことができる。特定の実施形態では、1種以上の添加剤は全血又はその成分中で再構成可能な乾燥添加剤である。例えば、サンプル管の底に、コラーゲンの小球を用いて全血又はその成分をインサイツで凝固させることができる。特定の実施形態では、サンプル管の少なくとも一部をコラーゲンでコーティングして凝固を開始する。なお他の実施形態では、サンプル管の局所的領域を凝固開始剤(例えば、コラーゲン又は本明細書に記載する別の凝固開始剤)でコーティングして血餅形成を空間的に制御することを可能にする。
【0067】
上記方法のいずれかでは、方法は、T2リーダーを使用してサンプルのT2シグナルを測定するステップを含むことができる。例えば、約5×T2の総エコー時間という長い総エコー時間を利用するCPMGパルスシーケンスを使用して、血液(全血、希釈血液、PRP等)中の定量的T2測定を行うことができる(例えば、τは典型的には62.5μsより長く、1000μs未満である)。特定の実施形態では、凝固プロセスを開始する前に、T2リーダーを使用してサンプルを所望の温度にプレインキュベートする。
【0068】
未凝固血を含有するサンプルについては、未凝固血が沈降して一つ以上のT2値を有するサンプルを産生することができるが、この沈降の時間尺度は典型的には血餅形成より長いことが理解される。
【0069】
本発明の方法は、生のNMRデータを分析して凝固又は溶解プロセスを生じているサンプル中の二つ以上の水集団についての情報を得ることを対象とする。データを逆ラプラス変換してサンプル中に同時に観察される異なる水集団から生じるシグナル強度を同定することが例証される。あるいは、サンプル中の二つ以上の水集団についての情報は、(i)ハーンエコーパルスシーケンスを使用した緩和測定;(ii)初期90°パルス後の固定時間遅延でのFIDシグナル振幅とその後の180°パルス後の固定遅延での振幅の差に基づく異なる測定;(iii)その緩和特性に基づいて水の特定の集団を減衰し、それによって水の他の集団を強調するよう構成されたパルス磁場勾配の存在下でのT2値及びエコー減衰の測定;及び(iv)差の測定(すなわち、(a)単一90°パルス後のFID、(b)CPMG緩和曲線、(c)一連のハーンエコー又はスピンエコーにより得られる緩和曲線、又は(d)CP緩和曲線)などの当技術分野で既知のデータ取得及びデータ操作技術を使用して得てもよい。代替アプローチを本明細書に記載する方法のいずれかに使用することができる。
【0070】
本明細書で使用する場合、「3Dデータセット」という用語は、一定期間にわたって凝固プロセス又は溶解プロセスを生じているサンプル中の変化特有の3Dプロットに組み立てることができる測定及び/又は派生データポイントの集合を指す。3Dデータセットから得られる3Dプロットは、サンプル中の異なる水集団の出現及び/又は消滅を示すことができ、特定の時点での又は時間の範囲にわたる、これらの水集団の強度及び緩和時間(例えば、T2緩和時間)を定量化する。
【0071】
本明細書で使用する場合、「第1の水集団」という用語は、凝固とともに減少する未凝固血の初期振幅により特徴づけられる全血サンプルの水集団を指す。第1の水集団はまた、集団Aとして本出願中の他で呼ばれる水集団を指すこともできる。第1の水集団から抽出した振幅及びT2データをそれぞれAmp
A及びT2Aと呼ぶ。
【0072】
本明細書で使用する場合、「第2の水集団」という用語は、凝固とともに増加する未凝固血の初期振幅により特徴づけられる全血サンプルの水集団を指す。第2の水集団は、血餅の血小板濃度と関連し得る。第2の水集団はまた、集団Bとして本出願中の他で呼ばれる水集団を指すこともできる。第2の水集団から抽出した振幅及びT2データをそれぞれAmp
B及びT2Bと呼ぶ。
【0073】
本明細書で使用する場合、「第3の水集団」という用語は、凝固プロセス中ほぼ一定の振幅により特徴づけられる全血サンプルの水集団を指す。第3の水集団は、赤血球中の生体分子に結合した水と関連し得る。第3の水集団はまた、集団Cとして本出願中の他で呼ばれる水集団を指すこともできる。第3の水集団から抽出した振幅及びT2データをそれぞれAmp
C及びT2Cと呼ぶ。
【0074】
本明細書で使用する場合、「第4の水集団」という用語は、約400ms〜約2200msに及ぶ、T2値の広い分布により特徴づけられる全血サンプルの水集団を指す。第4の水集団に関連するT2値の範囲は、データ収集に使用するハードウェア及び材料(例えば、サンプル管)に依存し得る。第4の水集団は、退縮した血餅を囲む血清に関連し、血液サンプル中に抗血小板凝集薬(例えば、アブシキシマブ)を封入すると第5の水集団と融合し得る。第4の水集団の特徴は、血小板活性及び/又は血餅強度と一致し得る。
【0075】
本明細書で使用する場合、「血清水環境」という用語は、未凝固血サンプル又は未凝固のままの血液サンプルの部分中に見られる水環境を指す。「血清関連T2シグナル」とは、血清水環境から生じるシグナル(例えば、退縮した血餅を囲む血清に関連する凝固血サンプル中の対応T2シグナル)を指す。血清関連T2シグナルは、典型的には退縮した血餅を含有するサンプルと退縮した血餅を除去した凝固サンプルの両方の中に存在する。血清関連T2シグナルは、血餅関連T2シグナルのT2値よりも高いT2値を有する分解ピークを含有する。血清水環境は、上記第4の水集団と関連し得る。
【0076】
本明細書で使用する場合、「第5の水集団」という用語は、約80ms〜約500msに及ぶ、T2値の分布により特徴づけられる全血サンプルの水集団を指す。第5の水集団と関連するT2値の範囲は、データ収集に使用するハードウェア及び材料(例えば、サンプル管)に依存し得る。第5の水集団は、退縮した血餅と関連し得る。第5の水集団の特徴は、凝固時間及び/又は線溶活性と一致し得る。
【0077】
本明細書で使用する場合、「退縮した血餅水環境」という用語は、退縮した血餅中に見られ、血餅形成に特有の水環境を指す。「血餅関連T2シグナル」とは、退縮した血餅水環境から生じるシグナルを指す(血餅が測定時に退縮しているかどうかによらない)。血餅関連T2シグナルは、退縮した血餅を含有する凝固全血サンプルと周囲血清を除去した退縮した血餅を含有するサンプルの両方の中に存在する。血餅関連T2シグナルは、血清関連T2シグナルのT2値よりも低いT2値を有する分解ピークを含有する。退縮した血餅水環境は、上記第5の水集団と関連し得る。
【0078】
本明細書で使用する場合、「アルゴリズム」という用語は、データを処理又は変換するために使用する数値演算ルーチンを指す。
【0079】
本明細書で使用する場合、「アッセイ」という用語は、血液凝固挙動をモニタリングする方法を指す。
【0080】
本明細書で使用する場合、「凝固挙動」という用語は、血餅、形成している血餅又は溶解を生じている血餅に関連するパラメータ(例えば、凝固時間(R)、線溶挙動、血餅強度(MA)、血餅の動力学的挙動、血小板関連血餅強度(MA
PLATELET)、機能性フィブリノーゲン関連血餅強度(MA
FF)、MA30分後溶解%(LY30)等)を指す。
【0081】
本明細書で使用する場合、「凝固プロセス」という用語は、サンプル中の溶媒水分子の局所的空間的変化をもたらし、水性液体中の溶媒水分子のNMR緩和率の変化により特徴づけられる液体のプロセスを指す。水性液体は溶媒水分子の一つ以上の集団を有することができ、各集団は水性サンプルが凝固プロセスを受けるにつれて変化するNMR緩和パラメータにより特徴づけられる。本発明の方法を使用して、それだけに限らないが、タンパク質性溶液(例えば、特に血液、血漿又はゼラチン)及び非タンパク質性ヒドロゲルを含むゲル形成成分を含有する水性溶液中の凝固プロセスをモニタリングすることができる。
【0082】
本明細書で使用する場合、「溶解プロセス」という用語は、サンプル中の溶媒水分子の局所的空間的変化をもたらし、水性液体中の溶媒水分子のNMR緩和率の変化により特徴づけられる液体のプロセスを指す。水性液体は溶媒水分子の一つ以上の集団を有することができ、各集団は水性サンプルが溶解プロセスを受けるにつれて変化するNMR緩和パラメータにより特徴づけられる。本発明の方法を使用して、それだけに限らないが、タンパク質性溶液(例えば、特に血液、血漿又はゼラチン)及び非タンパク質性ヒドロゲルを含むゲル形成成分を含有する水性溶液中の溶解プロセスをモニタリングすることができる。
【0083】
本明細書で使用する場合、「機能性フィブリノーゲン」という用語は、血餅強度に寄与する血餅中のフィブリノーゲンを指す。
【0084】
本明細書で使用する場合、「ゲル状態」という用語は、水分子の移動度が液体流体状態の水分子の移動度と比べて低下する、水及び固体を含む分散液を指す。ゲル状態は、ポリマー及び/又はタンパク質から(例えば、凝固血から、ゼラチンから、又は本明細書に記載する任意のゲル形成材料から)形成することができる。
【0085】
本明細書で使用する場合、「アッセイの開始後の所与の時間」という用語は、血液凝固挙動をモニタリングすることを目的とするアッセイの開始後に凝固挙動を決定することができる時間を指す。アッセイの開始後の所与の時間の例としては、60分、35分、45分、10分、5分、2分及び1分が挙げられる。
【0086】
本明細書で使用する場合、「心臓補助装置」という用語は、それだけに限らないが、体外心臓バイパス装置及び埋め込み型血液ポンプ、例えば、左心室補助装置を含む。
【0087】
本明細書で使用する場合、「ヘマトクリット」という用語は、全血サンプル中の赤血球の体積百分率を指す。
【0088】
本明細書で使用する場合、「止血状態」という用語は、対象の血液の凝固挙動により特徴づけられる対象の状態を指す。止血状態は、血栓形成促進(血餅形成のリスクの増加)、出血(突発性出血のリスクの増加)又は正常(血栓形成促進でも出血でもない)であり得る。止血状態はまた、特定の血栓障害(例えば、プロテインC欠乏症、プロテインS欠乏症、プロテインZ欠乏症、アンチトロンビン欠乏症、抗リン脂質抗体症候群、抗凝固療法抵抗性、又は高ホモシステイン血症)を指すこともできる。他の例では、止血状態は、対象の生理学的状態に応じて又は対象の生理学的状態の発症を予防するために対象に投与される抗凝固薬による誘発され得る。このような生理学的状態には、心房細動、心筋梗塞、不安定狭心症、深部静脈血栓、肺塞栓症、及び急性虚血発作が含まれる。同様に、止血状態は、抗凝固薬を、関節置換術、手術置換人工心臓弁又は体に埋め込まれた他の装置などの侵襲外科手順を有する対象に投与することにより誘発され得る。対象の止血状態は、対象から採取した一つ以上の血液サンプルの一つ以上の凝固挙動を決定することにより評価され得る。
【0089】
本明細書で使用する場合、「磁気共鳴パラメータ」という用語は、NMR緩和率測定から抽出した緩和率又は振幅を指す。
【0090】
本明細書で使用する場合、「NMR緩和率」という用語は、サンプル中の以下のいずれかを指す:T1、T2、T
1rho、T
2rho及びT
2*。NMR緩和率は、T1/T2ハイブリッド検出法を使用して測定及び/又は表され得る。さらに、見かけの拡散係数(ADC)を決定及び評価することができる(VidmarらNMR in BioMedicine、2009;及びVidmarら、Eur J Biophys J. 2008)。
【0091】
本明細書で使用する場合、「血小板」という用語は、血餅形成に寄与する細胞要素を指す。
【0092】
本明細書で使用する場合、「所定の閾値」という用語は、本発明の方法から得られ、特定のレオロジー状態特有の又は正常若しくは異常結果特有の(正常対象の血液特有の又は異常止血状態を有する対象特有の)標準的パラメータ値又は値のセット、標準的時間曲線、又は標準的サイン曲線を指す。所定の閾値は、例えば、正常及び/又は異常対象の集団から採取した血液サンプル中のNMRパラメータ値を測定することにより得ることができる。所定の閾値は、サンプルについての二つ以上の異なる可能なレオロジー状態を識別するよう選択することができる。サンプルが血液サンプルである場合、所定の閾値を使用して、例えば、対象の止血状態を診断することができる。
【0093】
本明細書で使用する場合、「リーダー」又は「T2リーダー」という用語は、サンプルの凝固及び線溶を含む凝固関連活性化を検出するための装置を指す。T2リーダーを使用して一般的にサンプル(例えば、血液などの生物学的サンプル又はアクリルアミドゲルなどの非生物学的サンプル)の特性を特徴づけることができる。このような装置は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第WO2010/0513162号に記載されている。
【0094】
本明細書で使用する場合、「相対濃度」という用語は、ある水集団の別の(例えば、第2又は第3の)水集団に対する比較濃度又は体積分率を指す。例えば、水集団Aの相対濃度は、水集団Bの濃度よりも2倍(又は5倍又は10倍)大きくてもよい。
【0095】
本明細書で使用する場合、「水集団のシグナル強度」という用語は、(i)特定の水集団特有のピーク高さ又は(ii)特定の水集団特有のピーク(複数可)の積分として測定される、サンプル中の特定の水集団についての緩和率測定からの強度を指す。
【0096】
本明細書で使用する場合、「処理サンプル」という用語は、凝固開始因子(例えば、塩化カルシウム)の非存在下で正常サンプルの凝固を防ぐために必要とされるよりも高い濃度で添加剤を含有する血液サンプルを指す。
【0097】
本明細書で使用する場合、「未処理サンプル」という用語は、凝固開始因子(例えば、塩化カルシウム)の非存在下で正常サンプルの凝固を防ぐために必要とされるよりも高い濃度で添加剤を含有しない血液サンプルを指す。
【0098】
本明細書で使用する場合、「全血」という用語は、赤血球を含む対象の血液を指す。全血は、処理ステップを通して変化した又は添加剤(例えば、ヘパリン、クエン酸塩、ナノ粒子製剤、フィブリノーゲン、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、コラーゲン、アブシキシマブなどの抗血栓薬、又は他の添加剤)を添加することにより修飾された血液を含む。
【0099】
本明細書で使用する場合、「プールされた全血血小板」という用語は、多血小板血液又は血液製剤(例えば、血漿)を指す。プールされた全血血小板は、処理ステップを通して変化した又は添加剤を添加することにより修飾されたサンプルを含む。
【0100】
本明細書で使用する場合、「T1/T2ハイブリッド」という用語は、T1及びT2測定を組み合わせた任意の検出法を指す。例えば、T1/T2ハイブリッドの値は、二つ以上の異なるT1及びT2測定の比又は差の組み合わせを通して得られる複合シグナルであってもよい。T1/T2ハイブリッドは、例えば、T1及びT2が交互に測定される又は交互に取得されるパルスシーケンスを使用することにより得ることができる。さらに、T1/T2ハイブリッドシグナルは、T1とT2両方の緩和率又は機構で構成される緩和率を測定するパルスシーケンスを用いて取得することができる。
【0101】
本明細書で使用する場合、「T2サイン」という用語は、数学的変換(例えば、ラプラス変換又は逆ラプラス変換)を、レオロジーイベント中の離散的時点の又は設定期間にわたる緩和率パラメータに関連する減衰曲線に適用することにより確立される曲線を指す。T2サイン曲線は、血餅中の複数水集団の相対存在量についての情報を提供する。凝固又は線溶が進行するにつれて、T2サイン曲線は血餅中の変化を反映するだろう。T2サインを使用して、有利に対象の識別された止血状態をリアルタイムで評価することができる。さらに、T2サインは、二次元(強度対T2値又はT2値対時間)又は三次元表現(強度対T2値対時間)となり得る。二-又は三次元表現中のT2値は、T1、T1/T2ハイブリッド、T
1rho、T
2rho及びT
2*などの他のNMRシグナルと置き換える又は比較することができる。
【0102】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0104】
本発明の方法及び装置を使用して、血管疾患を有する又は有する疑いがある患者、特に経皮介入を受けた、また例えば、ステント血栓症、血管再狭窄、心筋梗塞又は発作の急性リスクがあるような患者において、心筋虚血イベントを含む血栓性イベントのリスク及び発生を評価することができる。例えば、本発明の方法及び装置を使用して、薬物療法への応答性(例えば、クロピドグレル(clopidogrel)などの抗血小板薬の投与後の血小板反応性の変化により評価される)と独立した、心筋虚血などの血栓性イベントのリスクについての指標としての血小板反応性(すなわち、血餅中の血小板関連水分子の相対濃度)、凝固動力学、血餅強度、血餅安定性、及び時間-フィブリン産生(すなわち、R)を評価することができる。これらの指標を使用してステント血栓症又は再狭窄などの外科的及び経皮的血管手順(例えば、ステント留置又はバルーン血管形成術)から生じる合併症を予防することもできる。さらに、本発明の方法及び装置を使用して、血栓性イベントのリスクがある又は外科的手段を受けている患者のための安全で有効な療法(例えば、用量、レジメン、特に、抗血症板療法)を同定することができる。
【0105】
本発明の方法及び装置を使用して一つ以上の位置又は区画に水を有する複合サンプル(すなわち、一つ以上の水集団を有するサンプル)をモニタリングすることができる。例えば、不均一サンプル、すなわち全血中には、水の種々の集団、例えば、血漿水、区画水、すなわち、細胞(赤血球、白血球及び血小板)水、並びに凝固(例えば、血清、血餅)又は血餅溶解などの全血プロセスの機能的特徴に関連する水が存在する。同様に、レオロジー移行を生じているサンプル中には、一般的に一つ以上の水の集団;例えば、ゲル状態に関連する水、ゲル状態に関連しない水、及びいくつかの例では、サンプルの専門区画に関連する水(すなわち、細胞水)が存在する。本発明の方法により、サンプル中に存在する種々の水集団の変化を同時に観察することによりサンプル中の変化をモニタリングすることが可能になる。変化には、新たな水集団の形成又は既存の水集団の相対シグナルの変化が含まれ、この両方はレオロジー変化(例えば、サンプル中の構造の秩序化又は無秩序化)前、中又は後のサンプルの基礎をなす物理的特性特有であり得る。
【0106】
凝固開始
本発明の方法を行うために、種々の技術を使用して凝固を開始することができる。クエン酸塩添加カオリン(CK)はaPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)及び全血凝固時間のための一般的で世界的な開始剤である。凝固プロセスを開始するために、塩化カルシウム及びカオリンをクエン酸塩添加血液サンプルと混合する。CK活性化サンプルは、血小板及びフィブリンが血餅に寄与する血餅形成により特徴づけられる。あるいは、活性化因子RFを使用して、TRAP、AA又はADPなどの血小板活性化因子へ添加して又は添加しないで凝固を開始することができる。活性化サンプルは、血小板よりもむしろフィブリンが主に血餅に寄与する血餅形成により特徴づけられる。あるいは、ADPを使用して血餅を活性化してもよい。ADP活性化サンプルは、フィブリンが主に血餅に寄与し、血症板はより小さい程度に寄与する血餅形成により特徴づけられる。異なる活性化条件下で観察されるシグナル応答は、対象の止血状態の診断に役立つことができる。
【0107】
本発明の方法に使用することができる他の血液凝固活性化因子には、コラーゲン、エピネフリン、リストセチン、トロンビン、カルシウム、組織因子、トロンボプラスチン、カオリン、セロトニン、血小板活性化因子(PAF)、トロンボキサンA2(TXA2)、フィブリノーゲン、フォンヴィルブランド因子(VFW)、エラスチン、フィブリノネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、トロンボスポンジン及びランタノイドイオン(例えば、ランタン、ユーロピウム、イッテルビウム等)が含まれる。活性化因子の組み合わせを使用して、例えば、凝固低下している対象の血液サンプルをもたらす基礎止血状態を同定するのを助けることができる。
【0108】
シグナル取得及び処理
核共鳴パラメータを決定するための標準的な高周波パルスシーケンスが当技術分野で知られており、例えば、緩和定数T
2を決定しなければならない場合、Carr-Purcell-Meiboom-Gill(CPMG)が伝統的に使用されている。シーケンスにおける高周波パルスの周波数、パルスパワー及びパルス長の選択を含む高周波パルスシーケンスの最適化は調査中のシステムに依存し、当技術分野で既知の手順を使用して行われる。
【0109】
本発明の方法を使用して得ることができる核磁気共鳴パラメータには、それだけに限らないが、T1、T2、T1/T2ハイブリッド、T
1rho、T
2rho及びT
2*が含まれる。典型的には、本発明の方法を使用して得られる一つ以上の核共鳴パラメータの少なくとも一つはスピン-スピン緩和定数T2である。
【0110】
他の診断及び分析計装と同様に、NMRに基づく診断の目標は、サンプルから情報を抽出し、高信頼結果を使用者に伝えることである。情報は、サンプルから使用者に流れるにつれて、典型的には情報を特定の使用者に適合させるためのいくつかの変換を受ける。本発明の方法及び装置を使用して対象の止血状態についての診断情報を得ることができる。これは、NMR緩和シグナルを、例えば、凝固している又は凝固した血液サンプル中に存在する水分子の異なる集団を表す一つ以上の一連の成分シグナルに処理することにより達成される。例えば、T2などのNMR緩和データは、以下の式:
【数2】
【0111】
[f(t)は時間tの関数としてのシグナル強度であり、A
iはi個目の成分についての振幅係数であり、(T)
iはi個目の成分についての減衰定数(T2など)である]
により定義される減衰指数関数曲線にフィットし得る。ここで論じる緩和現象については、検出されるシグナルは離散した数の成分(i=1、2、3、4…n)の和である。このような関数をそれぞれ単一-、双-、三-、四-又は多-指数関数と呼ぶ。科学及び工学において、多指数関数プロセスを分析する必要性が広がっているために、各係数についてA
i及び(T)
iの推定値を迅速に得るためのいくつかの確立された数学的方法が存在する。うまく適用されてきた、本発明の方法を使用して得られた生データの処理に適用することができる方法には、ラプラス変換、代数法、図式解析、非線形最小二乗法(多くの変種が存在する)、分染法、関数変調法、積分法、モーメント法、有理関数近似、Pade-Laplace変換、及び最大エントロピー法が含まれる(Istratov, A. A.及びVyvenko, O. F. Rev. Sci. Inst. 70:1233(1999)参照)。低磁場NMRについて具体的に示されてきた他の方法には、特異値分解(Lupu, M.及びTodor, D. Chemometrics and Intelligent Laboratory Systems 29:11(1995))及び因子分析法が含まれる。
【0112】
これらの指数関数あてはめ法の一つ以上を使用するいくつかのソフトウェアプログラム及びアルゴリズムが利用可能である。指数関数あてはめプログラムについて最も広く引用されている供給源の一つはStephan Provencherにより書かれ、提供されているものであり、「DISCRETE」及び「CONTIN」(Provencher, S. W.及びVogel, R. H. Math. Biosci. 50:251(1980);Provencher, S. W. Comp. Phys. Commun. 27:213(1982))と呼ばれる。Discreteは多成分指数関数曲線中の最大9個までの別個の成分を解決するためのアルゴリズムである。CONTINは緩和時間の分布を有するサンプルを解決するために逆ラプラス変換を使用するアルゴリズムである。多指数関数解析を使用した市販のアプリケーションは、これらの又は類似のアルゴリズムを使用している。実際、Bruker minispecはその解析のいくつかに一般的に利用可能なCONTINアルゴリズムを使用している。ここに記載する発明については、緩和時間は各サンプルに特有の離散値であると予想されるので、CONTINのようなプログラムは、使用することができるであろうが、必要ではない。多くの他の指数関数あてはめ法についてのコードは、一般的に利用可能であり(Istrav, A. A.及びVyvenko, O. F. Rev. Sci. Inst. 70:1233(1999))、これを使用して本発明の方法による医学診断情報を得ることができる。シグナルとノイズの比及び総サンプリング時間が、決定することができる項の最大数、達成することができる最大解像度、及びフィットさせることができる減衰定数の範囲にどのように関連するのかに関する情報が利用可能である。約10
4のシグナルとノイズの比については、解析法と独立して測定される二つの減衰定数の解像度に関する理論限界は1.2より大きい解像度δ=(T
i/T
i+1)である(Istratov, A. A.及びVyvenko, O. F. Rev. Sci. Inst. 70:1233(1999))。したがって、解像可能な減衰定数間の差は、その大きさに比例して増加し、これは完全には直感的ではなく、光検出による解像度と異なっている。最大解像度及びシグナルとノイズ比の解像度への依存を理解することは、あてはめアルゴリズムの性能を評価することに役立つだろう。
【0113】
本発明の方法は、TEG(登録商標)、ROTEM(登録商標)又はSONOCLOT(登録商標)などの当技術分野で既知のシステム及び装置、或いはレオロジー変化を測定するための他の装置と比較することができる。さらに、本発明の方法を、ベンチトップNMRリラクソメータ(relaxometer)、ベンチトップ時間領域システム、又はNMR分析装置(例えば、ACT、Bruker、CEM Corporation、Exstrom Laboratories、Quantum Magnetics、GE Security division、Halliburton、HST-111 Magnetic Solutions、MR Resources、NanoMR、NMR Petrophysics、Oxford Instruments、Process NMR Associates、Qualion NMR Analyzer、SPINLOCK Magnetic Resonance Solutions又はStelar, Resonance Systems)で使用することができる。
【0114】
T2リーダーでデータを収集するために使用するCPMGパルスシーケンスを、サンプルの固有T2緩和時間を検出するよう設計する。典型的には、これは一つの値により指示されるが、複雑な状態の混合物を含有するサンプル(例えば、凝固プロセス又は溶解プロセスを生じているサンプル)については、T2値の分布を観察することができる。この状況では、CPMGシーケンスを用いて得たシグナルは指数関数の和である。T2リーダー出力から緩和情報を抽出するための一つの解法は、最小二乗様式で指数関数の和をフィットすることである。実際、これはいくつの関数をフィットするかについての先験的情報を要する。第2の解法は、逆ラプラス変換(ILT)を使用して観察される指数関数シグナルを構成するT2値の分布を解決することである。さらに、CPMGシーケンスS(t)の結果を指数関数の和であると仮定する:
【数3】
【0115】
[A
iは緩和時定数T2
iに相当する振幅である。]
指数関数の離散的和の代わりに、シグナルをT2値の分布であると仮定すると、状態にわたる和はb:
【数4】
【0116】
と表すことができる。これはILTと同じ関数型を有し:
【数5】
【0117】
同様に処理することができる。指数関数のILTは解決するために制約を要する。制約を課すために使用することができる少数の方法は、CONTIN、有限混合モデル(FMM)及びニューラルネットワーク(NN)である。逆ラプラス変換も3Dデータセットの作成に使用することができる。3Dデータセットは、時系列のT2減衰曲線を収集し、逆ラプラス変換を各減衰曲線に適用して3Dデータセットを形成することにより作成することができる。あるいは、2D逆ラプラス変換を事前組立(pre-assembled)3Dデータセットに適用してT2時間の分布を記載する変換3Dデータを作成することができる。
【0118】
二つの相を含有する不均一環境では、いくつかの異なる交換体制が有効となり得る。二つの水集団(a及びb)を有するこのような環境では、r
a及びr
bが二つの集団中の水の緩和率に相当し;f
a及びf
bが各相の核の分画に相当し;τ
a及びτ
bが各相中の滞留時間に相当し;a=(1/τ
a)+(1/τ
b)が化学変化率に相当する。交換体制は、(1)遅い交換:二つの集団が静的である又は緩和率r
a及びr
bに対してゆっくり交換している場合にシグナルが時定数T
2a及びT
2bで減衰する二つの別々の成分を含有する;(2)速い交換:二つの環境間で交換している水分子についての速度がr
a及びr
bと比べて速い場合に全集団が別々の集団の緩和率の加重和により与えられる平均緩和率(r
av)を有する単一指数関数減衰に従う;及び(3)中間交換:二つの緩和率r
1及びr
2が存在し、r
a<r
b、Amp
1+Amp
2=1の遅い交換限界でr
1がr
aと等しい場合と速い交換限界でr
1,2が平均緩和率になる一般的な場合に、式7、8、9及び10を適用することができる:
【数6】
【0119】
本発明はまた、緩和率データの収集にパルス磁場勾配又は固定磁場勾配を使用することを特徴とする。本発明はさらに、参照により本明細書に組み込まれる、Vidmarら(Vidmarら、NMR Biomed. 23:34〜40(2010))に記載されている拡散強調画像法(DWI)、又は多孔質材料NMRに使用される任意の方法(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Bergmanら、Phys. Rev. E51:3393〜3400(1995)参照)などの技術を使用することを特徴とする。
【0120】
あるいは、T2ではなくて、T2
*又は自由誘導減衰の測定を使用して本発明の方法を行う場合、例えば、サンプル中の水プロトンの特定のクラスの緩和特性を、オフ共鳴放射(すなわち、正確にはラーモア歳差運動周波数でない放射)を使用して作成することができる。出力は完全エコートレインではなくT2測定パルスシーケンスを用いて得た単一エコーの高さの形であり得る。対照的に、正常T2測定は、T2を決定するためにいくつかのエコーの減少する高さを利用する。T2
*アプローチは、印加した磁場の周波数又は強度をシフトするステップと、水プロトン吸収ピークの広さを測定するステップとを含むことができ、ここではより広いピーク又はエネルギー吸収がより高い値のT2と相関する。
【0121】
常磁性剤
本発明の方法は、例えば、凝固を開始する前に血液に添加される常磁性剤(例えば、マンガン、マンガン錯体、ガドリニウム、ガドリニウム錯体又は超常磁性粒子)の存在下で行うことができる。常磁性剤は遊離マンガン、マンガン錯体(例えば、マンガンのEDTA錯体)、遊離ガドリニウム、ガドリニウム錯体(例えば、ガドリニウムのDTPA若しくはDOTA錯体)又は超常磁性粒子であり得る。常磁性剤を使用して、凝固開始後のより早い時点で凝固サンプルを未凝固サンプルと識別することができる(
図46参照)。
【0122】
本発明の方法に使用することができる超常磁性粒子には、例えば、その各々が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,564,245号及び米国特許出願公開第2003-0092029号に記載されているものが含まれる。超常磁性粒子は、一般的に抱合体の形態である、すなわち、超常磁性粒子は粒子と測定される全血サンプルの構成要素の特異的及び非特異的結合を最小化する部分でコーティングされている。粒子は、その鉄、金属酸化物又は他の強若しくはフェリ磁性体ナノ材料の超常磁性のために高い緩和度を有する。鉄、コバルト及びニッケル化合物及びこれらの合金、ガドリニウムなどの希土類元素、並びに金及びバナジウムなどの一定の金属間化合物が超常磁性粒子を製造するために使用することができる強磁性体である。超常磁性粒子は、単分散性(一超常磁性粒子当たり、単結晶の磁性材料、例えば、超常磁性酸化鉄などの金属酸化物)又は多分散性(例えば、一磁性粒子当たり複数の結晶)であり得る。磁性金属酸化物はまた、コバルト、マグネシウム、亜鉛又は鉄とこれらの金属の混合物を含むこともできる。超常磁性粒子は、典型的には、一結晶当たり約1〜25nm、例えば、約3〜10nm又は約5nmの直径の金属酸化物結晶を含む。超常磁性粒子はまた、例えば、約5〜20nm厚さ以上のコア及び/又はコーティングの形態のポリマー成分も含むことができる。超常磁性粒子の全体サイズは、例えば、20〜50nm、50〜200nm、100〜300nm、250〜500nm、400〜600nm、500〜750nm、700〜1200nm、1000〜1500nm又は1500〜2000nmであり得る。超常磁性粒子サイズは、反応条件を調節することにより、例えば、米国特許第5,262,176号に記載されているように、鉄塩を塩基で中和させる間に低温を使用することにより、制御することができる。均一粒径材料はまた、例えば、米国特許第5,492,814号に記載されているように、遠心分離、限外濾過又はゲル濾過を使用して粒子を分画することにより製造することができる。超常磁性粒子はまた、Molday(Molday, R. S.及びD. MacKenzie、「Immunospecific ferromagnetic iron-dextran reagents for the labeling and magnetic separation of cells」、J. Immunol. Methods、52:353(1982)の方法に従って合成し、過ヨウ素酸塩で処理してアルデヒド基を形成することができる。次いで、アルデヒド含有超常磁性粒子をジアミン(例えば、エチレンジアミン又はヘキサンジアミン)と反応させて、これによりシッフ塩基が形成し、次いでこれを水素化ホウ素ナトリウム又はシアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元させることができる。超常磁性粒子は、強磁性流体(すなわち、超常磁性粒子の安定なコロイド懸濁液)から形成することができる。例えば、超常磁性粒子は、サイズが数十nm程度であり、粒子上に吸着されてこれを安定化する界面活性剤を含有する流体に分散させられた、又は金属イオン溶液の塩基性媒体中での沈殿による、複数金属酸化物結晶の複合体であり得る。適当な強磁性流体は、会社Liquid Research Ltd.により参照:WHKS1S9(A、B又はC)(直径10nmの粒子を有する磁鉄鉱(Fe
3O
4)を含む水系強磁性流体);WHJS1(A、B又はC)(直径10nmの磁鉄鉱(Fe
3O
4)の粒子を含むイソパラフィン系強磁性流体);及びBKS25デキストラン(直径9nmの磁鉄鉱(Fe
3O
4)の粒子を含む、デキストランで安定化された水系強磁性流体)で販売されている。本発明のシステム及び方法に使用するための他の適当な強磁性流体は、約70重量%のα-Fe
2O
3粒子(直径約10nm)、15重量%のオクタン、及び15重量%のオレイン酸を含む、Ademtechから市販されているオレイン酸安定化強磁性流体である。超常磁性粒子は、典型的には複数の金属酸化物結晶及び有機マトリックスを含み、超常磁性粒子の表面と結合部分を連結する官能基(すなわち、アミン基又はカルボキシ基)で装飾された表面を有する複合体である。例えば、本発明の方法に有用な超常磁性粒子には、Dynal、Seradyn、Kisker、Miltenyi Biotec、Chemicell、Anvil、Biopal、Estapor、Genovis、Thermo Fisher Scientific、JSR micro、Invitrogen及びAdemtechから市販されているもの、並びにその各々が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,101,435号;第4,452,773号;第5,204,457号;第5,262,176号;第5,424,419号;第6,165,378号;第6,866,838号;第7,001,589号;及び第7,217,457号に記載されているものが含まれる。
【0123】
高感度を要する一定のアッセイについては、T2緩和アッセイを使用した分析物検出は、十分に感受性の磁場誘起凝集を可能にするための適当な粒子を選択することを要し得る。単一のより大きいポリマーマトリックス又は強磁性流体アセンブリ(全直径100nm〜1200nm、例えば、100nm、200nm、250nm、300nm、500nm、800nm又は1000nmの平均直径を有する粒子)中に複数の超常磁性酸化鉄コア(直径5〜15nm)を含有する粒子を使用して、或いはより高い磁気モーメント材料又はより高い密度の粒子及び/又はより高いイオン含量の粒子を使用することにより、より高い感度を達成することができる。理論により限定されるものではないが、これらの種類の粒子は、1個の粒子当たりの鉄原子の数がはるかに多いために100×を超える感度増加をもたらし、これがアッセイ溶液中に存在する粒子の数の減少、及びおそらくは各磁場誘起凝集により影響されるより高い量の超常磁性鉄による感度の増加をもたらすと考えられると推論される。
【0124】
一定のアッセイのためには、直径40nm未満の粒子をアッセイに使用することにより、超常磁性粒子の電界支援凝集を最小化することが望ましいだろう。
【0125】
サイン曲線のデータベース
一実施形態では、本発明は、生の緩和NMRデータを止血状態特有のサイン曲線をもたらすフォーマットに変換するためのデータ処理ツールを特徴とする。好ましい変換には、ラプラス又は逆ラプラス変換(ILT)が含まれる。各T2測定についてのデータを、シグナル強度を時間に対してプロットする時間次元から「T2緩和」次元に変換することができる。ILTは、サンプル中に存在する異なる緩和率及びその相対的大きさについての情報だけでなく、これらのシグナルの分布の幅の報告も提供する。
【0126】
各取得されたT2緩和曲線は、異なる水の集団の全て、又は水がサンプル中で経験している異なるT2緩和環境をマップする、対応する二次元サインを有する。凝固時間次元の持続期間にわたってプロットを積み重ねることにより、これらの曲線を編集して3Dデータセットを形成することができる。これを使用して、どのように水の異なる集団が時間の関数として変化するかを示す3D表面を作成することができる。
【0127】
T2サインは、基礎病理学が現在の技術により識別されない場合には臨床的に関連するものとなり得る。例えば、異常なPT又はaPTT値を有する患者を、患者血液と正常な血漿の1:1混合物を使用したPT、aPTT又はPT及びaPTT解析を含む追加の試験(因子欠乏を除外するため)により精密検査し、この結果により特定の因子又はフォンヴィルブランド因子欠乏が示され得る。しかしながら、凝固因子欠乏の患者は頻繁に一つ以上の欠乏を有する又は不均衡若しくは抑制されていない凝固カスケードを有する。これらの患者では、一つの因子欠乏についての単一試験では完全な機能障害が明らかにならず、臨床医は臨床症候学(過剰の出血又は凝固)に頼らなければならず、不幸にも、時間により有害な結果がもたらされ得る。T2サイン(正常又は異常止血状態を有する患者について)を検出する能力により、複雑な病態生理学的凝固カスケード状態を迅速に理解することが可能になり、臨床結果が改善するだろう。
【0128】
本発明の方法を使用して集めたデータは、異なるNMRパラメータから作成した3Dプロットを使用して表すことができる。特定の患者型又は凝固曲線型を見ることにより、追加の次元を加えることができる。データ削減法を使用して利用可能な複雑な情報を単純化することができる。主成分分析(PCA)、特徴の自動抽出法、又は他のデータ処理法のような技術を使用することができる。理想的には、サイン、2D及び3Dプロットのライブラリーを多種多様な臨床状態について作成することができる。例えば、二次元(強度対T2値若しくはT2値対時間)又は三次元表現(強度対T2値対時間)である。二-又は三次元表現のT2値をT1、T1/T2ハイブリッド、T
1rho、T
2rho及びT
2*などの他のNMRシグナルと置き換える又は比較することができる。
【0129】
関連する実施形態では、サンプル中の凝固又は溶解プロセスを、サンプルから得た一つ以上の自由誘導減衰(FID)シグナルから抽出したNMRパラメータにより評価する。例えば、NMRパラメータを、FIDのシグナルとノイズの比から、FIDと所定の閾値の比較から、FIDの積分から、又はFIDの異なる点を使用した比の計算から抽出することができる。この方法により得られたNMRパラメータを使用して種々の凝固又は溶解プロセスを特徴づけることができる。特定の例では、血液サンプルの一つ以上のFIDから抽出した値を使用して、凝固時間(R)、線溶挙動、血餅強度(MA)、血餅の動力学的挙動、血小板関連血餅強度(MA
PLATELET)、機能性フィブリノーゲン関連血餅強度(MA
FF)又はMA30分後溶解%(LY30)などの血液凝固挙動を計算することができる。同様に、FIDデータから抽出したデータを使用してサイン曲線のライブラリーを組み立てることができる。
【0130】
3Dデータプロット
凝固プロセス又は溶解プロセスを生じているサンプルのT2データの3D表現を、本発明の方法(例えば、実施例18に記載する方法)を使用して作成することができる。一定の実施形態では、作成した3Dプロットの次元は緩和時間(例えば、T2又は1/T2)次元、強度若しくは振幅次元、及び時間次元に相当する。時間次元は、凝固プロセスが進行した又は進行している時間を表す。凝固血液サンプルから得られた3Dプロットは、サンプル中の異なる物理的及び/又は化学的環境中の別々の水集団と一致する種々の3D表面特徴を示す。3Dプロット及び3Dプロットを作成するために使用するデータは、血液サンプルと関連する指標又は凝固挙動に利用することができる(例えば、ヘマトクリット、血餅強度(MA)、凝固時間(R)、血小板活性、フィブリノーゲン活性、線溶等)。3Dプロット又は3Dデータプロットを作成するために使用するデータを使用して新たな指標を発見することもできる。
【0131】
3Dプロット中で明らかな異なる3D表面特徴及び水集団中に含まれる情報は、特定の指標及び凝固挙動と関連し得る。3Dプロットを使用して特定のパラメータ又は指標についての定性的、半定性的及び/又は定量的結果を作成することができる。例えば、血液サンプルのヘマトクリットを初期水集団の特性から計算してもよく、凝固時間及び線溶挙動を80〜400msのT2時間を有する多岐にわたる水集団の特性から計算してもよく、血小板活性及び血餅強度を400〜2200msのT2時間を有する第2の多岐にわたる水集団の特性から計算してもよい。種々の方法を使用して3Dデータセットから指標又は凝固挙動を抽出することができる。例えば、3Dプロットの3D表面特徴の勾配又は湾曲は凝固挙動と相関し得る。3Dプロットの横断面を使用して凝固挙動を計算することもできる。特に、特定のT2時間についての時間の関数としてT2強度を示す横断面は、凝固時間(R)及び/又は線溶を計算するのに有用となり得る。所与の時間での強度の関数としてT2時間を示す3Dプロットの横断面(T2緩和スペクトル)は所与の時間でサンプル中に存在する種々の水集団を示す。T2緩和スペクトルの特徴は、一定範囲の凝固挙動に利用することができる。例えば、T2緩和スペクトル中の二つのシグナル間の差を使用して血餅強度を評価することができる。特定の特徴の体積又は3Dプロットの横断面からの曲線などの特定の3D表面特徴の積分も凝固挙動(例えば、血餅強度)を確立するのに有用となり得る。凝固挙動はまた、連続的又は異なる時点で収集した一定範囲のT2緩和スペクトルの積分を通して抽出することもできる。
【0132】
あるいは、3Dプロットを使用して血餅挙動特有の特徴を同定することができる。特徴は、凝固開始後特定の時間で約400ms又は1000msの平均T2緩和率を有する水集団を選択的にモニタリングするためにパルスシーケンスを介するなどの、3D解析を用いないで測定されるものであり得る。任意選択により、水集団をサンプル中の他の水集団を除いて測定する。
【0133】
特定のシグナルに関連するT2値の範囲を含む、T2緩和曲線の特徴は、データを収集するために使用する装置(例えば、T2リーダー又はBruker minispec)に基づいて変化し得る。同様に、所与のサンプルについてのT2値の範囲は、T2測定中にサンプルを含有する管を構成するために使用する材料(例えば、プラスチック又はガラス)に依存し得る。本発明は、血液サンプルを分析するのに使用する3Dデータセットの集合への任意の共鳴装置及び任意のサンプル容器の使用を包含する。
【0134】
患者の管理
本発明の方法及び装置を使用して患者の止血状態のポイントオブケア評価を提供することができる(例えば、外科手術を受けている患者の凝固管理のため、血栓性合併症のリスクがある患者を同定するため、抗血小板療法に抵抗性の患者を同定するため、患者における抗凝固療法をモニタリングするため、患者における抗血小板療法をモニタリングするため、及び/又は患者における凝血原療法をモニタリングするため)。
【0135】
1)異常出血又は挫傷の原因の発見、2)自己免疫疾患の患者、3)基礎心血管障害の患者、4)あまりに多くの出血が懸念され得る手順又は外科手術の前、5)抗凝固療法のモニタリング、6)周術期及び外傷患者のモニタリング、及び7)敗血症又は敗血症性ショックの患者の同定を含む、凝固試験が要求される医学状況が存在する。
【0136】
心肺バイパス(CPB)のための抗凝固とCPB後の止血との間のバランスのために、心臓手術を受けている患者の凝固管理は複雑である。さらに、ますます多くの患者が、抗血小板薬物の投与により、ベースラインでの血小板機能障害を有している。CPB中、最適凝固は、凝固が拮抗され、血小板の活性化が防がれて、結果として血餅が形成しないことを示す。外科手術後、凝固異常、血小板機能障害及び線溶が起こり、止血完全性を取り戻さなければならない状況を作り出すおそれがある。ヘパリンによる抗凝固、プロタミンによる拮抗、及び術後止血療法の複雑なプロセスを、タイムリー且つ正確な様式で止血機能を評価する本発明の方法及び装置(ポイントオブケア検査)により導くことができる。
【0137】
乏しい肝機能に関連する課題(例えば、凝固因子の合成及びクリアランス低下並びに血小板欠陥)により、止血障害及び線溶亢進がもたらされ得る。敗血症及び播種性血管内血液凝固などの全身合併症が、既存の凝固障害をさらに複雑にする。同所性肝移植における止血の著しい変化は、無肝期(anhepatic phase)中及び臓器再灌流直後に起こり、主に線溶亢進が、不十分な肝クリアランス並びに外因性ヘパリン及び内因性ヘパリン様物質の放出による組織プラスミノーゲン活性化因子の蓄積から生じる。したがって、肝臓手術、特に同所性肝移植を受けている患者は、その凝固の攪乱が大きく、本発明の方法及び装置をこの患者集団をモニタリングするのに有用なものとしている。
【0138】
本発明の方法及び装置を使用してヘパリン療法、特に抗凝固療法を導くことができる。例えば、本発明の方法を、ヘパリナーゼを用いて行って、ヘパリンの抗凝固効果の非存在下での凝固状態を評価することができる。さらに、本発明の方法を利用してプロタミン療法を評価する、すなわち、プロタミン療法後の凝固をモニタリングし、ヘパリン又はプロタミン誘導性止血状態を処置することができる。同様に、分析を術前及び術後に行って、外科手術患者の抗凝固又は止血状態を決定することができるだろう。
【0139】
本発明の方法を使用して抗血小板療法を導く、及び抗血小板療法に対する抵抗性を同定することもできる。抗血小板療法は、急性脳-及び心血管イベントの発生率を低下させるために心血管疾患の一次及び二次予防のためにますます処方されている。抗血小板薬物は、典型的にはシクロオキシゲナーゼ1/トロンボキサンA2受容体(例えば、アスピリン(aspirin))、アデノシン二リン酸受容体(例えば、クロピドグレル)又はGPIIb/IIIa受容体(例えば、アブシキシマブ、チロフィバン(tirofiban))を阻害することを目標としている。抗血小板薬物は主に血小板凝集を低下させることにより作用すると考えられているが、これらはまた抗凝固薬として機能することが示された。血小板は凝固全体で重要な役割を果たすので、血小板機能(その数よりも)を評価することが周術期設定において極めて重要である。
【0140】
本発明の方法及び装置を使用して抗凝固療法をモニタリングする及び/又は導くこともできる。
【0141】
抗凝固療法(例えば、特にリバロキサバン(rivaroxaban)、ダビガトラン(dabigatran))を、有効性及びコンプライアンスのために、並びに有害副作用及び/又は有害事象(例えば、出血イベント)を確実に回避するためにモニタリングすることができる。このような療法についての投与調整が大規模なランダム化研究で出血を制御することが報告されている。具体的には、直接の第Xa因子阻害因子を含む抗凝固薬の投与を使用して治療域(therapeutic window)の維持を助け、患者の心房細動及び深部静脈血栓における発作のリスクを低下させることができる。
【0142】
本発明の方法及び装置を使用して抗凝固療法に抵抗性の患者を同定することができる。抗凝固療法には、他の抗凝固薬の中でもアスピリン、プラビックス(plavix)、及びプラスグレル(prasugrel)が含まれる。本方法は、(i)抗凝固療法を対象に投与するステップと;(ii)本発明の方法を使用して対象の止血状態を評価するステップと;(iii)対象が血栓形成促進であることが分かった場合には、対象を抗凝固療法に対する非応答者と同定するステップとを含む。非応答者の同定により、医師が、患者が応答性の安全で有効な抗凝固薬を同定し、それによって有害事象(すなわち、血栓形成及び発作)のリスクを低下させることが可能になる。
【0143】
本発明の方法及び装置を使用して凝血原療法をモニタリングすることができる。現代の凝固管理実行は、特定の成分療法の概念に基づき、凝血原療法の迅速な診断及びモニタリングを要する。例えば、冠動脈バイパス術の周術期中の血小板輸血は深刻な有害事象のリスク増加と関連することが示されている。臨床判断のみでは誰が急性周術期設定における血小板輸血から利益を得るか予測することはできない。したがって、凝固産物の輸血は、好ましくは本発明の方法により提供される検査などのポイントオブケア検査により導かれるべきである。
【0144】
本発明の方法及び装置を使用して、臨床試験又は医学的利用における治療化合物の効果をモニタリングするためのコンパニオン診断分析又は試験を提供することができる。診断分析は、対象又は患者が療法に応答するか療法に応答しないかのいずれかを判定することを含むことができる。
【0145】
本発明の方法及び装置を使用して、血餅、凝固亢進、凝固過剰(hyperclotting)又は発作若しくは心停止のようなヒトにおいて有害な凝固を通して灌流を決定することができる。
【0146】
本発明の方法及び装置を分析のパネルの一部として使用することができる。パネルは、(i)凝固カスケードに関与するタンパク質の免疫測定法;(ii)フィブリン分解産物を検出するための免疫測定法;(iii)抗リン脂質抗体を検出するための免疫測定法;(iv)ヘパリン又はワルファリン(warfarin)又は他の抗凝固薬を検出して治療濃度を評価するためのアッセイ;(v)血漿プロトロンビン時間をモニタリングするPT又はaPTT又はPTTアッセイ;(vi)(a)トロンビンの形成若しくは溶解、(b)凝固カスケード、(c)ヘパリン結合、又は(d)治療活性に関連するタンパク質をコードする遺伝子の多形性差異を評価するための遺伝子検査を含むことができる。
【0147】
本発明の方法及び装置を使用して凝固障害に向かう暗示により医療機器を管理することができる。例は、心臓移植を待つ患者のための橋として通常使用される心室補助装置である。このようなインプラントを有する患者は、装置の機能の結果として装置の内側及び外側に血餅形成を有することがあり、これらの血餅が発作又は別の血栓関連イベントを引き起こすおそれがある。これはまた感染症及び出血イベントをもたらすおそれもある。これらの問題を回避する方法は、装置の成功に影響をもたらす複数診断マーカーをモニタリングすることである。例えば、PT-INRの日常的検査により、患者の凝固状態をよりしっかりモニタリングすることが可能になり、したがって、出血及び凝固イベントをしっかり管理することができるだろう。
【0148】
INRは、使用する分析システム用の国際感度指標値の冪まで上げられる、患者のトロンビン時間と正常(対照)サンプルの比である。高いINRレベル(例えば、INR=5)は出血の可能性が高いことを示す一方で、INR=0.5である場合、血餅を有する可能性が高い。健常人についての正常INR範囲は0.9〜1.3である。ワルファリン療法を受けている人々では、INR範囲は典型的には2.0〜3.0である。標的INRは、人工心臓弁を有する、又は周術期に低分子ヘパリン(エノキサパリン(enoxaparin)(Levenox))でワルファリンの橋渡しをする者などの、特定の状況でより高くなり得る。
【0149】
血小板機能、線溶、血餅強度及び他の因子をモニタリングすることは、結果を改善するのに等しく重要である。これらの因子の生理学的濃度又は活性を理解することは、装置との相互作用のためのみならず、これらの因子がこれらの装置を装着している患者に通常処方される多くの異なる療法(特に、アスピリン、リバロキサバン、プラビックス、ワルファリン)により調整されるために重要である。これらの種類の装置と共に使用する別の尺度は、ヘマトクリットであり、これは通常、心臓の機能を維持するために装置の機能(速度、強度等)を調整するために使用される。本発明の方法及び装置は、これらの結果(ヘマトクリット、血小板、PT、PT-INR等)の全てを潜在的に同時に提供することができ、血餅形成及び溶解に関する追加の情報を提供することができる。上記標準的尺度を、患者の状態及び装置の有効性を同定する指標又はサインに合体させることができる。
【0150】
本発明の方法及び装置は複数の方法で利用及び構成することができる。これらは実験室装置、ポイントオブケアシステム又は埋め込み型モニタリングシステムとしてさえ使用することができる。例えば、埋め込み型モニタリングシステムとして、サンプルは、他のサンプル流体の中でも、連続的にモニタリングされる血液;全血、血清若しくは血漿を含むバキュテナー;又はフィンガースティックで構成されてもよい。
【0151】
例えば、本発明の方法及び装置を、周術期及び外傷患者をモニタリングするために利用することができる(例えば、PT/INR、aPTT、ACT、Hct、血小板活性及び線溶についての尺度又は代理尺度を提供する)。患者が死亡率、虚血イベント、感染症、合併症の早期発症及びICU/入院日数の増加の約6倍増加を示し得るので、輸血が必要とされているかどうかを迅速且つ効率的に決定することがこれらの患者集団に必要とされている。具体的には、出血イベントの根本原因の決定(凝固カスケード対血小板活性化)により、迅速且つ集中した療法がもたらされ得る。
【0152】
本発明の方法及び装置を利用する文脈にかかわらず、本発明の方法を使用して少容積を迅速に測定することができることが血小板機能にとって特に重要である。これは、採血部位で凝固システムが開始するために、他のシステムを使用して測定することが以前は困難であった。
【0153】
凝固機構
凝固が起こるためには、トロンビンのフィブリノーゲンへの作用を介したフィブリン沈着に達する凝固カスケードの活性化がなければならない。凝固システムは、全プロセスの抑制と均衡を維持するための優雅なフィードバック規制機構を備えた初期刺激を増幅するタンパク分解性カスケードで構成される。凝固活性化の二つの相互接続した経路が存在する:(i)接触活性化(内因性経路);及び(ii)組織因子活性化(外因性経路)。両経路は、種々の凝固因子に依存している。プロトロンビンは第II凝固因子であり、トロンビンは第IIa凝固因子であり、フィブリノーゲンは第I凝固因子であり、フィブリンは第Ia凝固因子である。凝固因子に加えて、血小板は十分な血餅の誘導及び形成の両方にとって極めて重要である。血小板は、プロトロンビナーゼ複合体が形成されるリン脂質表面として作用し、血餅を発達させるための物理的足場として作用する。
【0154】
内因性凝固カスケード経路は、通常は損傷した血管からのコラーゲンと接触することにより活性化されるが、多くの負に帯電した表面がこの経路を刺激することができる。内因性経路は、通常は第VIIIa、IXa及びX因子を含むテナーゼ複合体を組み立てるために血小板活性化を要する。活性化プロセスは、イノシトール三リン酸(IP3)経路と関連し、血小板形状を変化させて最終的に密着することを可能にするために脱顆粒及びミオシン1cキナーゼ活性化を伴う。
【0155】
あるいは、凝固は、血管外細胞の表面からの組織因子を要する外因性凝固カスケード経路を介して活性化され得る。外因性経路は、第V、VII及びX凝固因子の複合体形成を伴う。インビボでの凝固の主要誘導因子は、47kDa糖タンパク質である組織因子(TF)である。血流中でTFを発現することができる唯一の細胞は、内皮細胞及び単球である。対照的に、外膜線維芽細胞を含む、血流の外側の多くの細胞はTFを構成的に発現するので、血管完全性が破壊された場合に凝固を開始することができる「血管外エンベロープ」を形成する。
【0156】
カスケードの最終段階は、両経路に共通であり、活性化複合体であるテナーゼ複合体を伴う。テナーゼは「10」及び接尾語「-ase」の短縮であり、複合体がその基質(不活性第X因子)を切断することにより活性化することを意味する。内因性テナーゼ複合体は、活性第IX(IXa)因子、その補助因子である第VIII(VIIIa)因子、基質(第X因子)を含有し、これらは負に帯電した表面(ガラス、活性血小板膜、時に、単球の細胞膜など)により活性化される。外因性テナーゼ複合体は、組織因子、第VII因子、基質(第X因子)及び活性化イオンとしてのCa
2+で構成される。
【0157】
内因性又は外因性経路のいずれかを介した第X因子の第Xa因子への活性化により、プロトロンビンからトロンビンへのタンパク質分解変換がもたらされ、これが今度は血餅の形成の開始を活性化する。次いで、第VIII因子がトランスグルタミナーゼ反応を触媒してフィブリンモノマーを架橋して架橋ネットワークを形成する。
【0158】
血餅中の架橋フィブリン多量体は、セリンプロテアーゼであるプラスミンにより可溶性ポリペプチドに分解される。プラスミンは、その不活性前駆体プラスミノーゲンから産生され、二つの方法、フィブリン凝塊の表面での組織プラスミノーゲン活性化因子との相互作用により、及び細胞表面でのウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子との相互作用により、フィブリン凝塊の部位に補充され得る。第1の機構が、血管内での血餅の溶解を担う主要なものであると思われる。第2のものは、血餅溶解を媒介することができるが、通常は組織再構築、細胞移動及び炎症において主要な役割を果たし得る。
【0159】
血餅溶解は、二つの方法で制御される。第1に、効率的なプラスミン活性化及び線溶が血餅表面又は細胞膜上で形成された複合体でのみ起こり;血液中の遊離のタンパク質は非効率触媒であり、迅速に不活性化される。第2に、プラスミノーゲン活性化因子とプラスミン自体の両方が、特定のセルピン(セリンプロテアーゼに結合して安定な酵素的に不活性の複合体を形成するタンパク質)により不活性化される。薬理学的には、クロットバスター組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)及びストレプトキナーゼ若しくはウロキナーゼを使用してこの内部線溶機構を活性化する。
【0160】
医学的状態
本明細書に記載する本発明の方法及び装置は、凝固、血栓状態及び以下の疾患の結果としての、血栓障害の診断のための、種々の液体、特に血液サンプルのレオロジー変化を検出するために使用することができる:例えば、敗血症及び播種性血管内血液凝固(DIC)、血友病A、血友病B、血友病C、他の凝固因子の先天的欠損、第XIII因子欠乏症、フォンヴィルブランド病、内因性抗凝固による出血性障害、脱線維素症候群、後天性凝固因子欠乏症、凝固欠損、他の、紫斑病、及び他の出血状態、アレルギー性紫斑病、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、血小板減少症、免疫性血小板減少性紫斑病、突発性血小板減少性紫斑病、続発性血小板減少症、及び非特異性出血状態。
【0161】
心血管系はしっかり制御された止血を要する。過度の凝固は静脈又は動脈閉塞を引き起こすおそれがある一方で、凝固の失敗は過度の出血を引き起こすおそれがあり、両状態は有害な臨床状況をもたらす。ほとんどのヒト対象では、凝固バランスはいくぶん静的である。しかしながら、止血を変化させ、心血管機能不全をもたらし得る多くの異なる臨床パラメータ(遺伝性障害、疾患状態、治療薬物又は薬理学的ストレス要因など)が存在する。
【0162】
血友病(第VIII因子(血友病A)、第IX因子(血友病B)、第XI因子(血友病C))、アレキサンダー病(第VII因子欠乏症)、プロトロンビン欠乏症(第II因子欠乏症)、オーレン病(第V因子欠乏症)、スチュアート-プラワー欠乏症(第X因子欠乏症)、ハーゲマン因子欠乏症(第XII因子欠乏症)、フィブリノーゲン欠乏症(第I因子欠乏症)、及びフォンヴィルブランド病などの非機能性凝固因子の結果である多くの異なる既知の凝固障害が存在する。
【0163】
凝固カスケードの活性化は、末期敗血症で起こる多臓器不全の発達における必須構成要素であると思われる。敗血症の現在の療法は、末期の進行の調節のためにこれらのカスケードを特異的に標的とし、臓器不全を予防することを目標とする。
【0164】
本発明の方法及び装置を使用して血液サンプルのヘマトクリットを決定することができる。ヘマトクリットは、対象の血液中の赤血球が占める体積百分率の尺度であり、健常女性及び男性についての正常値はそれぞれ約36〜44%及び41〜50%である。ヘマトクリットは、サンプル中の赤血球の数と赤血球のサイズの両方に依存する。ヘマトクリットの測定は、対象の種々の生理学的状態を確立するのに有用となり得る。したがって、本発明の方法を正常ヘマトクリットよりも低い又は正常ヘマトクリットよりも高いことに関連する任意の状態の診断に使用することができる。正常ヘマトクリットよりも低いことは、貧血、鎌状赤血球貧血、内出血、赤血球の喪失、栄養不良、栄養欠乏(例えば、鉄、ビタミンB12若しくは葉酸欠乏)、又は水分過剰を示し得る。正常ヘマトクリットよりも高いことは、先天性心疾患、脱水、赤血球増加症、肺線維症、真性一次性赤血球増加症、又は薬物エリスロポエチンの乱用を示し得る。
【0165】
本発明の方法を使用して、がん、自己免疫疾患、紅斑性狼瘡、クローン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、深部静脈若しくは動脈血栓症、肥満、関節リウマチ、アルツハイマー病、糖尿病、心血管疾患、うっ血性心不全、心筋梗塞、冠動脈疾患、心内膜炎、発作、塞栓症、肺炎、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患、喘息、感染症、被移植者、肝疾患、肝炎、膵臓疾患及び障害、腎臓疾患及び障害、内分泌疾患及び障害、肥満、血小板減少症に関連する疾患又は障害、並びに医療(ステント、インプラント、大手術、関節置換術、妊娠)又は治療(がん化学療法)誘発性凝固障害(複数可)、並びにヘビースモーキング、多量のアルコール消費、座りがちなライフスタイルなどの危険因子などの、疾患、障害又は機能障害に関連する因子及び関連する凝固障害をモニタリングすることができる。本発明の方法を使用して凝固及び血液特性に影響を及ぼすゲノム及びプロテオミクス変化を評価することもできる。
【0166】
本発明の方法を使用して抗凝固及び/又は抗血小板療法を受けている患者をモニタリングすることもできる。本発明の方法を使用してモニタリングすることができる抗血栓薬(例えば、血栓溶解薬、抗凝固薬及び抗血小板薬)の例としては、それだけに限らないが、アセノクマロール(acenocoumarol)、クロリンジオン(clorindione)、ジクマロール(dicumarol)、ジフェナジオン(diphenadione)、エチルビスクムアセテート(ethyl biscoumacetate)、フェンプロクモン(phenprocoumon)、フェニンジオン(phenindione)、チオクロマロール(tioclomarol)及びワルファリン(warfarin)などのビタミンK拮抗薬;アンチトロンビンIII、ベミパリン(bemiparin)、ダルテパリン(dalteparin)、ダナパロイド(danaparoid)、エノキサパリン(enoxaparin)、ヘパリン、ナドロパリン(nadroparin)、パルナパリン(parnaparin)、レビパリン(reviparin)、スロデキシド(sulodexide)及びチンザパリン(tinzaparin)などのヘパリングループ(血小板凝集阻害因子);アブシキシマブ、アセチルサリチル酸(アスピリン)、アロキシプリン(aloxiprin)、ベラプロスト(beraprost)、ジタゾール(ditazole)、カルバサラートカルシウム(carbasalate calcium)、クロリクロメン(cloricromen)、クロピドグレル(clopidogrel)、ジピリダモール(dipyridamole)、エポプロステノール(epoprostenol)、エプチフィバチド(eptifibatide)、インドブフェン(indobufen)、イロプロスト(iloprost)、ピコタミド(picotamide)、プラスグレル(prasugrel)、チクロピジン(ticlopidine)、チロフィバン(tirofiban)、トレプロスチニル(treprostinil)及びトリフルサル(triflusal)などの他の血小板凝集阻害因子;アルテプラーゼ(alteplase)、アンクロッド(ancrod)、アニストレプラーゼ(anistreplase)、ブリナーゼ(brinase)、ドロトレコギンアルファ(drotrecogin alfa)、フィブリノリジン、プロセインC、レテプラーゼ(reteplase)、サルプラーゼ(saruplase)、ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼ(tenecteplase)及びウロキナーゼなどの酵素;アルガトロバン(argatroban)、ビバリルジン(bivalirudin)、デシルジン(desirudin)、レピルジン(lepirudin)、メラガトラン(melagatran)及びキシメラガトラン(ximelagatran)などの直接トロンビン阻害因子;ダビガトラン(dabigatran)、デフィブロタイド(defibrotide)、デルマタン硫酸(dermatan sulfate)、フォンダパリヌクス(fondaparinux)及びリバロキサバン(rivaroxaban)などの他の抗血栓薬;並びにクエン酸塩、EDTA及びシュウ酸塩などのその他が挙げられる。
【0167】
敗血症及び播種性血管内凝固
本発明の方法及び装置を使用して、敗血症又は播種性血管内凝固を患っている対象の止血状態を評価することができる。
【0168】
敗血症では、圧倒的な炎症反応がホストの微小循環に広いコラテラルダメージを引き起こす。内皮への損傷が組織因子を露出し、敗血症では、これが大規模に起こり得る。組織因子が今度は活性化第VII因子に結合する。結果として生じる複合体が第IX及びX因子を活性化する。第X因子はプロトロンビンをトロンビンに変換し、これがフィブリノーゲンをフィブリンに切断し、血餅の形成を誘導する。同時に、線溶系は阻害される。サイトカイン及びトロンビンが血小板及び内皮からのプラスミノーゲン活性化因子阻害因子-1(PAI-1)の放出を刺激する。血餅がヒト体内で形成すると、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)により活性化されるプラスミンにより最終的に破壊される。PAI-1はTPAを阻害する。結果として、重度敗血症を患っている対象はプロテインC(血液凝固因子XIV)などの抗凝固薬で処置される。
【0169】
播種性血管内凝固(DIC)は、血管内フィブリンの産生並びに凝血原及び血小板の消費を伴う複雑な全身性血栓出血性障害である。結果としての臨床状態は、血管内凝固及び出血により特徴づけられる。DICは単独の病気ではなく、むしろ他の病気の合併症又は進行の作用であり、入院患者の最大1%に存在すると推定される。DICは常に基礎障害に次ぐものであり、一般的には全身性炎症の活性化を伴ういくつかの臨床状態と関連する。DICは、血管内凝固の活性化、凝固因子の枯渇、及び終末器官損傷を含むいくつかの一貫した構成要素を有する。DICは、重度敗血症及び敗血性ショックで最も一般的に観察される。実際、DICの発達及び重症度は、重症敗血症の死亡率と相関する。グラム陽性とグラム陰性生物の両方を含む菌血症がDICと最も一般的に関連し、ウイルス、真菌及び寄生虫感染症を含む他の感染症もDICを引き起こし得る。外傷、特に神経外傷もDICと頻繁に関連する。DICは全身性炎症反応症候群を発症している外傷を有する患者でより頻繁に観察される。証拠は、炎症性サイトカインが外傷患者と敗血症患者の両方のDICで中心的役割を果たすことを示している。実際、敗血症患者と外傷患者の両方の全身性サイトカインプロファイルはほぼ同一である。
【0170】
DICは、急性型と慢性型の両方で存在する。DICは、血液の組織因子(組織トロンボプラスチン)を含む凝血原への突然の暴露が起こり、血管内凝固をもたらすと急性的に発達する。代償性止血機構は急速に圧倒され、結果として出血をもたらす重度の消費性凝固障害が発達する。血液凝固パラメータの異常が容易に同定され、急性DICでは臓器不全が頻繁に起こる。対照的に、慢性DICは、血液が連続的又は間欠的に少量の組織因子に暴露すると発達する代償性状態を反映する。慢性DICでは、肝臓及び骨髄における代償性機構は圧倒されず、DICの存在についての明らかな臨床的又は実験室的徴候はほとんど存在しないだろう。慢性DICは固形腫瘍及び大きな大動脈瘤でより頻繁に観察される。
【0171】
循環中の組織因子への暴露は、内皮破壊、組織損傷、又は組織因子を含む凝血原分子の炎症性若しくは腫瘍細胞発現を介して起こる。組織因子は、第VIIa因子を伴う外因性経路により凝固を活性化する。第VIIa因子は、敗血症における血管内凝固の中心的媒体として意味づけられてきた。敗血症で第VIIa経路を遮断するとDICの発達が予防されることが示された一方で、代替経路を妨害すると凝固に対するいかなる効果も示さなかった。次いで、組織因子-VIIa複合体は、同時に血小板凝集を引き起こしながら、トロンビンを活性化し、今度はこれがフィブリノーゲンをフィブリンに切断するように作用する。証拠は、内因性(又は接触)経路もDICで活性化されるが、凝固の活性化よりも血行動態不安定及び低血圧に寄与することを示唆している。
【0172】
アンチトロンビンレベルの低下は、敗血症患者の死亡率上昇と相関する。トロンビン産生は通常、複数止血機構によりしっかり制御されている。アンチトロンビン機能は、トロンビンレベルを制御することを担う一つのこのような機構である。しかしながら、複数因子により、アンチトロンビン活性は敗血症患者で低下する。第1に、アンチトロンビンは進行中の凝固活性化により連続的に消費される。さらに、活性化好中球により産生されるエラスターゼがアンチトロンビン並びに他のタンパク質を分解する。さらに、アンチトロンビンは毛細血管漏出に失われる。最後に、アンチトロンビンの産生は低灌流及び微小血管凝固から生じる肝損傷に次いで損なわれる。
【0173】
組織因子経路阻害因子(TFPI)枯渇がDICの対象で明らかである。TFPIは、組織因子-VIIa複合体を阻害する。TFPIレベルは敗血症患者で正常であるが、DICにおいては相対的不十分性が明らかである。動物モデルにおけるTFPI枯渇はこれらの動物をDICに罹らせ、TFPIはヒトにおいて内毒素の凝血原効果を遮断する。トロンビンにより産生される血管内フィブリンは通常は線溶と呼ばれるプロセスを介して排除される。炎症に対する初期反応は線溶作用の増強であるように思われる。しかしながら、この反応は、線溶の阻害因子が放出されるためにすぐに逆行する。高レベルのPAI-IがDICに先行し、臨床転帰不良を予測する。線溶はフィブリン形成の増加と共に進むことができないので、最終的に脈管構造への対立したフィブリン沈着がもたらされる。
【0174】
プロテインCは、プロテインSと共に、重要な抗凝固代償性機構で働く。正常な条件下では、プロテインCがトロンビンにより活性化され、トロンボモジュリンと内皮細胞表面上で複合体を形成する。活性化プロテインCが第Va及びVIIIa因子のタンパク質分解切断を介して凝固と戦う。しかしながら、敗血症及び他の全身性炎症性状態により産生されるサイトカイン(例えば、腫瘍壊死因子α(TNF-α)及びインターロイキン1(IL-1))がプロテインC経路を大きく無能力化する。炎症性サイトカインが内皮細胞表面でのトロンボモジュリンの発現を下方制御する。プロテインCレベルが消費、血管外漏出、肝臓産生減少及び自由に循環するプロテインSの減少によりさらに低下する。
【0175】
炎症及び凝固経路は実質的に相互作用する。DICで産生される活性化凝固因子の多くが、炎症誘発性サイトカインの内皮細胞放出を刺激することにより、炎症の伝播に寄与する。第Xa因子、トロンビン及び組織因子-VIIa複合体は、それぞれ、炎症誘発作用を誘発することが証明されている。さらに、活性化プロテインCの抗炎症作用があるとすると、DICにおけるその障害が炎症のさらなる調節不全に寄与する。
【0176】
DICの構成要素には、血液の凝血原物質への暴露;微小血管系へのフィブリン沈着;線溶障害;凝固因子及び血小板の枯渇(消費性凝固障害);臓器損傷及び不全が含まれる。DICは敗血症患者の30〜50%で起こり得る。
【0177】
本発明の方法及び装置は、敗血症/重度感染症;外傷(神経外傷);臓器破壊;悪性腫瘍(固形及び骨髄増殖性悪性腫瘍);重度輸血反応;リウマチ病;分娩合併症(羊水栓塞症、胎盤早期剥離、溶血、死胎児症候群);血管異常(カサバッハ-メリット症候群、動脈瘤);肝不全;中毒反応;輸血反応、及び移植拒絶反応などの種々のDIC関連状態を有する対象をモニタリングすることに用途を見出すことができる。同様に、本発明を細菌感染症(例えば、グラム陰性敗血症、グラム陽性感染症若しくはリケッチア)、ウイルス感染症(例えば、HIV、サイトメガロウイルス、水疱瘡若しくは肝炎に関連するもの)、真菌感染症、寄生虫感染症(例えば、マラリア)、悪性腫瘍(例えば、急性骨髄性白血病)、分娩状態(例えば、子癇、胎盤早期剥離若しくは羊水塞栓症)、外傷、熱傷、輸血、溶血反応、又は移植拒絶反応に関連する急性DICにより特徴づけられる止血状態を有する対象に関して使用することができる。
【0178】
本発明のNMRに基づく方法を使用して、上記血液関連状態のいずれか及び全てをモニタリングすることができる。時間領域緩和時間測定法、特にT2緩和測定を使用してサンプルの凝固状態の変化を測定することができる。この測定は、サンプルの巨視的凝固状態の変化に感受性の水素核のNMRパラメータを測定することに頼るものである。水素核のほとんどはバルク水溶媒中にあるが、これらのかなりの分画はサンプル中の生物学的高分子及び細胞及び血小板中にある。このため、全水素核からの平均NMRシグナルの測定を、サンプルの凝固状態が上記臨床的理由のいずれかにより変化した場合にシグナルが明らかな様式で変化するように行うことができる。NMR測定は、T2緩和測定、又は「有効」T2緩和測定(例えば、シグナル取得のパラメータが、凝固イベントの最適読み出しのためであって、T2緩和値の最も正確な測定のために設定されるのではないT2緩和測定)であり得る。他の「時間領域」緩和測定法を適用して凝固挙動の変化を測定することができる。これらは、他の測定の中で特に時間領域自由誘導減衰分析を含むことができる。本明細書に記載するNMR時間領域測定を反復して行って、サンプル変化の凝固又は溶解特性として時間経過にわたってNMRシグナルの動的読み出しを得ることができる。
【0179】
正常及び異常止血プロファイルを有する対象
本発明の方法を使用して正常及び異常止血プロファイルを有する対象を識別することができる。例えば、正常及び異常止血プロファイル特有のNMR緩和パラメータ値及び/又はT2サインを決定し、対象の差次的診断に使用することができる。異常止血プロファイルには、一つ以上の凝固因子、凝固補助因子及び/又は調節タンパク質(例えば、特に第XII因子、第XI因子、第IX因子、第VII因子、第X因子、第II因子、第VIII因子、第V因子、第III因子(組織因子)、フィブリノーゲン、第I因子、第XIII因子、フォンヴィルブランド因子、プロテインC、プロテインS、トロンボモジュリン及びアンチトロンビンIII)における共通の欠乏を共有する対象についてのプロファイルが含まれ得る。
【0180】
アンチトロンビンの欠乏は静脈血栓塞栓疾患患者の約2%に見られる。遺伝は常染色体優性形質として起こる。症候性アンチトロンビン欠乏症の罹患率は人口2000人当たり1人〜人口5000人当たり1人に及ぶ。欠乏症はアンチトロンビンの合成又は安定性に影響を及ぼす突然変異から、或いはアンチトロンビンのプロテアーゼ及び/又はヘパリン結合部位に影響を及ぼす突然変異から生じる。本発明の方法を使用して正常対象とアンチトロンビン欠乏症の対象を識別することができる。
【0181】
第XI因子欠乏症は、怪我に関連する出血傾向を与える。この欠乏症は、1953年に同定され、当初は血友病Cと呼ばれた。第XI因子欠乏症はアシュケナージ系ユダヤ人に極めて一般的であり、ホモ接合性又は複合ヘテロ接合性のいずれかで常染色体障害として遺伝する。本発明の方法を使用して正常対象と第XI因子欠乏症の対象を識別することができる。
【0182】
フォンヴィルブランド病(vWD)は、フォンヴィルブランド因子(vWF)の先天性欠乏によるものである。vWDはヒトの最も一般的な遺伝性出血障害である。vWFの欠乏により、血小板粘着欠陥が生じ、第VIII因子の二次欠乏を引き起こす。その結果、vWD欠乏症が血小板機能不全又は血友病により引き起こされるものと類似と思われる出血を引き起こし得ることになる。vWDはいくつかの主要なサブタイプに分類された極めて異種性の障害である。I型vWDが最も一般的であり、常染色体優性形質として遺伝する。この変異形は、全vWF多量体の単純な定量的欠乏による。2型vWDはまた、機能不全タンパク質が血小板との結合についての特定の実験室検査において減少した又は逆説的に増加した機能を有するかどうかに応じてさらに細分化される。3型vWDは臨床的に重度であり、劣性遺伝及びvWFの実質的非存在により特徴づけられる。本発明の方法を使用して正常対象とフォンヴィルブランド因子欠乏症の対象を識別することができる。
【0183】
いくつかの心血管危険因子がフィブリノーゲンの異常と関連している。血漿フィブリノーゲンの上昇が、冠動脈疾患、糖尿病、高血圧、末梢動脈疾患、高リポタンパク血症及び高トリグリセリド血症の患者で観察されている。さらに、妊娠、閉経、高コレステロール血症、経口避妊薬の使用及び喫煙が血漿フィブリノーゲンレベル上昇をもたらす。無フィブリノーゲン血症(フィブリノーゲンの完全な欠損)、低フィブリノーゲン血症(フィブリノーゲンレベルの低下)及び異常フィブリノーゲン血症(機能障害フィブリノーゲンの存在)を含む、フィブリノーゲンの遺伝障害が存在する。無フィブリノーゲン血症は、新生児臍帯出血、斑状出血、粘膜出血、内出血及び反復流産により特徴づけられる。この障害は常染色体劣性様式で遺伝する。低フィブリノーゲン血症は、100mg/dL未満のフィブリノーゲンレベル(正常は250〜350mg/dL)により特徴づけられ、後天性又は遺伝性のいずれかであり得る。本発明の方法を使用して正常対象とフィブリノーゲンの異常を有する対象を識別することができる。
【0184】
血小板モニタリング
本発明の方法及び装置を使用して、血小板機能を測定し、血小板凝集測定法と比較することができる(例えば、Harrisら、Thrombosis Research 120:323(2007)参照)。現在、血小板凝集測定法を行うためにFDAクリアランスと共に二つの検出方法が装置に使用されている:光学及びインピーダンス測定法。例えば、本発明の方法を使用して血小板凝集測定法により測定され得る対象の任意の血小板活性を同定する又は任意の血小板機能障害を診断することができる。血小板凝集測定法は、全血又は多血小板血漿サンプルに行う機能検査である。一般的に、血小板凝集法は、血小板活性化因子をサンプルに添加するステップと、誘導された血小板凝集を測定するステップとを含む。血小板凝集は、電極を、検査をする血液サンプルに浸漬することにより行うことができる。プローブに接着した血小板は安定な単層を形成する。活性化因子を添加すると、血小板凝集体が電極上に形成し、電極に印加されている電流に対する抵抗を増加させる。装置は、血小板凝集反応を反映する電気インピーダンスの変化をモニタリングする。凝集測定法はまた、凝集している血小板からのATPの放出を発光によりモニタリングすることに基づく技術を含む。血小板凝集の光学検出は、血小板が大きな凝集塊に凝集するにつれて、光透過率が増加するという知見に基づく。異なる凝集誘導剤が異なる活性化経路を刺激し、異なる様式の凝集が観察される。光学法の主な欠点は、これが典型的にはPRPに行われ、血小板を赤血球から分離すること及び血小板数を標準化値に調節することを要するということである。
【0185】
血小板凝集測定法のように、本発明の方法を使用して、対象の血液サンプルからの血小板数を評価する又は対象の血小板減少症(血小板数<150,000/μL)若しくは血小板増加症(血小板数>400,000/μL)の状態を診断することができる。このような診断を決定の基礎として使用して対象に血小板輸血又は抗凝固薬を提供することができる。同様に、本発明の方法を使用して対象の血小板輸血又は抗凝固薬に対する反応を評価することができる。
【0186】
以下の実施例は、当業者に、どのように本明細書で請求する方法及び化合物を行う、製造する、及び評価するかについての完全な開示及び説明を提供するために出すものであり、純粋に本発明を例示するものであることを意図されており、本発明者らがその発明とみなすものの範囲を限定することを意図されていない。
【0187】
他の使用
本明細書に記載する本発明のNMRに基づく方法は、物質又は物質の混合物が凝固プロセス又は溶解プロセスを生じている又は生じた種々の用途に使用することができる。本発明の方法を使用して、プロセスを生じている材料中の変化、又はプロセスを既に受けた材料の状態についての情報を得ることができる。
【0188】
石油製品の分野では、本発明の方法を使用して、アスファルト/ビチューメン、ビチューメン-ポリマー製造、ボイラー、粗製油、石炭灰、石炭スラリー、クラッキング、蒸留残渣、工学、流動ビチューメン、高粘度油、ファーネス油、潤滑剤、混合燃料油、油添加剤、油清澄化剤(oil clarificator)、混合油、油カウンター(ピペリン末端)、油摩耗制御、プラスチゾル、鉱物油、石油添加剤製造、石油製品、パイプラインカウンター、ピッチコーティング、ピッチ希釈、エリカ号の災害、クエンチ油、燃料油中の残渣変換、水、沈殿物及び油の分離、特殊油、合成ゴム、使用前のタール制御、超重油、並びに水-石炭スラリーをモニタリングすることができる。
【0189】
塗工及び塗料の分野では、本発明の方法を使用して、車の塗料、金属塗料、水性塗料、削り遊び用の特殊インク、アルミニウム若しくはプラスチック表面用の特殊インク、水性インク、PTFE塗工、白紙塗工、特殊紙塗工、壁紙、接着剤、ワニス、車用ワニス、エンジン用特殊塗料、インクの製造、フォトグラビア、染料、プリント板ワニス、磁気インク、磁気ワニス、光沢塗料、鏡用の銀引き、眼鏡用の特殊ワニス、及びエナメル粉末をモニタリングすることができる。
【0190】
食品及び飲料の分野では、本発明の方法を使用して、ベシャメルソース製造、パン製造、チョコレート製造、生地制御、発酵制御、フィッシュソリュブル(蒸発制御)、フレッシュチーズ製造、ゼラチン食品濃度、アイスクリーム製造、ジャム製造、マーガリン製造、マヨネーズ製造、溶けたチーズ製造、牛乳及びチーズ研究、パラフィンコーティング制御、タンパク質濃度制御、飼料用タンパク質、海藻ゼラチン、スロップ制御、煮込んだ果物、煎糖(結晶化制御)、糖ミキサー、すり身ペースト、合成香料、トマトソース、植物性マーガリン及び油、酵母、ヨーグルト、ビール/酵母制御、製パン所の生地、食品添加物、ゼラチン(タンパク質濃度)、牛乳微粒化、ヨーグルト、プロセスチーズ、加糖果汁、サラダソース、食品増粘剤、食品添加物、酵素濃度制御、凍結流体制御、人工食品香料、タバコ、酒、残存糖酒、産業用スープ、プディング、粉乳、ペットフード、家畜飼料、ベビーフード、無糖練乳、デンプンゲル、果実ペースト及び果汁をモニタリングすることができる。
【0191】
工業化学の分野では、本発明の方法を使用して、塗料製造用の塩基性樹脂、ポリマー、ポリマー-ビチューメン製造、重合制御、ポリカーボネート、PVC製造、二成分型樹脂、繊維及びポリマー、ケーブル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、クロラールメチル樹脂、PVC、カルボキシメチルセルロース、塩酸、ウレタン接着剤、トルエンジイソシアネート、MEKトルエン、プラスチック再利用、シリコーン油、ペースト、接着剤、PBU、エタノールトルオール、ポリカーボネート、ポリエステル樹脂製造、ポリエーテルポリオール制御、ポリイソブチレン、ポリマー樹脂製造、重合化ビニル+トルエン、重合産業、樹脂重合シリコーン油、不飽和ポリエステル樹脂、尿素-ホルモール樹脂、膠、ポリアミド樹脂、ナイロン、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン、エポキシ樹脂、ポリエフィン(polyephine)ワックス、酢酸ジメチル、フェノール系樹脂、プラスター、メラミン、及びメタクリル酸メチルをモニタリングすることができる。
【0192】
本発明の方法を使用して、生化学製品、酢酸セルロース、柔軟剤、酵素、ゲルコーティング、医薬カプセル、エアロゾル、化学物質製造(洗浄ベース)、化粧品製造及び制御、クリーム、化粧品機械における工学、発酵制御、眼鏡用ガラス、医薬品、写真乳剤、シャンプー製造、練り歯磨き、UV感受性ワニス、乳剤の粘度制御、ビタミンA、写真乳剤、ビデオテープ、ゲル、乳剤、精密化学、照明用蛍光ペースト、作動油、ラテックス微粒化、UV接着剤、ホットメルト接着剤、掘削泥水、プラスチゾル、酸濃度、水銀、蓄電池酸、洗剤、セラミック、スラリー、膠、接着剤ポリマー、炭酸カルシウム、アクリル系接着剤、石灰乳、アンモニア+MCB+油、高粘度可燃性燃料、粗製油カウント、2種の油の混合、潤滑油、動物性脂肪ボイラー、燃料油、廃水濃度、泥濃度、酵母汚泥、油混入、溶媒混入、油の難儀な制御、クエンチ油、切削油、及び塔を設置することを含むプロセスをモニタリングすることもできる。
【0193】
本発明の方法及び装置を、リード化合物及び化合物評価発見ツールとして使用することができる。本発明の方法及び装置は、一つ以上の候補化合物によるカスケードへの介入の関数として凝固カスケードの変動を同定する、又は候補化合物に応じた凝固カスケードの外側の変動(例えば、血小板形態)を同定することができる。本発明の方法及び装置を使用して、化合物ライブラリーをスクリーニングして活性剤を同定する並びに疾患及び処置についての新たな機構を指摘することができる。これらは凝固カスケード中にあると見られるが、多くは通常はカスケードに定義も同定もされない標的であるだろう。このアプローチを使用して既知の凝固障害とは区別される疾患状態を同定することもできる。
【0194】
凝固システムは、極めて複雑なシステムであり、このシステムを研究するために利用可能なツールは、薬物発見に従事する科学者に提供することができる情報の幅に限定される。多くの現在の薬物発見は標的ベースのスクリーニングによる一方で、その他は表現型スクリーニングによる。標的化方法は、遺伝子発現又はRNAiに類似の分子作用法を使用してアッセイにより目的の標的を単離し、次いでそのアッセイを使用して化合物を探すことを含む。表現型スクリーニングは、化合物又は剤により生じる生物学への変化を同定するので、それらが体内で所望の効果を有するために有望なリード化合物を特徴づける。標的の阻害の場合、標的の野生型構築物を使用することができる。標的の活性化の例では、標的の遺伝子組換え版を使用することができる。このアプローチは、全血などの基質中の標的も標的活性も見ることができない特定の既存のスクリーニング法の一つの制限に対処する。止血及び凝固における標的のためには、この制限は、任意の所与の標的が血液中で受け得る生物学的相互作用の複雑な性質のために問題となり得る。潜在的スクリーニング標的には、タンパク質、ペプチド、酵素、フィブリノーゲン、トロンビン、血小板、血小板受容体、血小板の疾患状態、凝固因子、これらの標的のいずれかの疾患状態が含まれる。
【0195】
本発明の方法及び装置は、特定の開始因子の添加による、患者サンプル血液又は血症の凝固からもたらされる情報に富むデータセットを産生することができる。種々の開始因子を使用して異なる開始点で血液凝固を誘因することができる。これらの異なる開始因子を使用して、カスケードの選択された点若しくは分岐での活性化及び/又はカスケードの選択された点若しくは分岐での阻害により、凝固カスケードの異なる点を分離又は強調することができる。所与の凝固反応について、本発明の方法により、ヘマトクリットレベル、凝固時間、血小板活性、線溶、並びに多くの他の生理学的及び生物学的パラメータなどの複数パラメータをとらえる3D表面データセットを作成することができる。したがって、特定の阻害因子を使用して特定の凝固経路を探索及び分離することができる。
【0196】
凝固経路又は止血の特定の部分を選択及び的を絞るための別の手段は、ノックアウトマウス又はラットなどの遺伝子組換え系を使用することである。これらの系/モデルにより、疾患状態を表す標的(例えば、疾患血小板)を製造し、本発明の方法を候補化合物の非存在及び存在下でこの系/モデルの血液に適用して疾患状態を回復させる化合物の効果を評価することが可能になる。T2MRのサンプル容積要求が小さいことは動物研究に有利となり得る。従来の血小板法は血液0.5〜2.5mLを要するが、本発明の方法ははるかに少ない容積を使用して行うことができる。
【0197】
本発明のスクリーニング法の別の利点は、多数の特徴がアンカーポイント、及び止血プロセスへの化合物の効果を測定するための感度特徴を同定するために利用可能であるということである。
【0198】
以下の実施例は、当業者に、どのように本明細書で請求する方法及び化合物を行う、製造する、及び評価するかについての完全な開示及び説明を提供するために出すものであり、純粋に本発明を代表するものであることを意図されており、本発明者らがその発明とみなすものの範囲を限定することを意図されていない。
【実施例1】
【0199】
全血サンプルを使用した血液凝固プロセスのモニタリング
新鮮なクエン酸塩添加又はヘパリン添加全血サンプルを使用して凝固プロセスをモニタリングした。いくつかの異なる活性化経路を調査した。
【0200】
カオリン活性化経路(CK経路)については、クエン酸塩添加血液1mLをカオリンバイアル(PlateletMappingアッセイキット、Haemonetics)に添加した。バイアルを5回反転させてサンプルを混合した。血液/カオリン混合物34μLを37℃に予熱した200μL PCR管に移した。0.2M CaCl
2 2μLをPCR管に添加し、T2測定を直ちに開始した。
【0201】
活性化因子経路(A経路)については、新たに調製した活性化因子溶液(A-P1、PlateletMappingアッセイキット、Haemonetics、本明細書では「RF」とも呼ぶ) 1μLを37℃に予熱した200μL PCR管に添加した。ヘパリナーゼバイアルに収集した血液36μLをPCR管に添加し、サンプルを、ピペット先端を用いて3〜4回混合した。T2測定を直ちに開始した。
【0202】
活性化因子(RF)+ADP経路については、新たに調製した活性化因子溶液(A-P1、PlateletMappingアッセイキット、Haemonetics) 1μL及び新たに調製した血小板作動薬溶液(ADP-P2、PlateletMappingアッセイキット、Haemonetics) 1μLを37℃に予熱した200μL PCR管に添加した。ヘパリナーゼバイアルに収集した血液36μLをPCR管に添加し、サンプルを、ピペット先端を用いて3〜4回混合した。T2測定を直ちに開始した。
【0203】
図4は、三つの異なる活性化経路に関連する凝固挙動の差を示している。
【実施例2】
【0204】
サンプル中の血液凝固を解釈するためのアルゴリズムを使用したデータ抽出
実施例1のT2リーダーからのデータ出力を、双指数関数フィットを行い、プロット及びチェックし、特徴抽出する三段階法を使用して処理した。
【0205】
双指数関数フィット
読出し時間を、NDXClientにより登録した。複合yデータを大きさに変換し、正規化した。最初の25msのx及びyを除いた。各緩和曲線を、デフォルト非線形最小二乗法を使用してフィットした。曲線を最初の五つの時点について使用した固定速度を有するAmpA、AmpB、T2A及びT2Bについての開始点(例えば、速度)を使用して双指数関数方程式にフィットさせた。6番目の時点のためのシードを最初の五つの時点の平均から得た。一般的に、時点は前の時点からの出力を用いてシード値を与えた。パラメータに対する負値は許可しなかった。あるいは、データを端と類似に働く、時系列の中央に最初にフィットすることができる。適合度の項を、フィット残差の二乗の和をとり、SSEと呼ばれる負でない値を除外することにより計算した(
図1A及び1C参照)。パラメータAmpA、AmpB、T2A及びT2Bをそれぞれのカテゴリーにビニングしてテキストファイルを作成した。
【0206】
プロット及びチェック
SSE基準を満たさなかったフィットにフラグを付け、除去した。加重LLS及び一次の多項式を使用した局所回帰に基づく単純なスムージング機能を行い、外れ値データを処分した。各フィットパラメータを時間に対してプロットした(スムージング及び非スムージング)。データシフト及び反映を行い、TEGトレーシングを模倣し、T2凝固曲線を作成した。T2凝固曲線は、線形変換を抽出した磁気共鳴パラメータに適用することにより作成することができる。特に、T2凝固曲線は、データ点の各々から最小T2A値を減じ、各得られたデータ点の負を取り、x軸についての曲線を有効に反映することによりT2Aデータから得ることができるだろう。同様に、T2凝固曲線は、データ点の各々から最大T2B値を減じ、各得られたデータ点の負を取り、x軸についての曲線を有効に反映することによりT2Bデータから得ることができるだろう。振幅データAmpA及びAmpBを同様の方法によりT2凝固曲線に変換することができるだろう。
【0207】
特徴抽出
プロットした曲線を測定して凝固挙動「R」、「MA」及び「角度」に関連する値を抽出した。データ抽出は、当技術分野で既知の種々の方法のいずれかを使用して行うことができる。例えば、メトリクスを、結果として生じるデータの曲線形状から得る及び/又は一つ以上のNMRパラメータの値から計算することができる。
【実施例3】
【0208】
凝固挙動を測定するための毛細管法の使用
毛細管を使用して患者から血液サンプル2〜5μLを収集した。血液サンプルは、ランスを使用してフィンガースティックから収集し、サンプルをヘパリン添加毛細管に収集し粘土でキャップした。あるいは、血液をパイレックス(登録商標)管に収集し、粘土でキャップした。あるいは、血液サンプルをガラスDagan毛細管に収集し、粘土でキャップしたが、これは活性化因子を含有しなかった。T2 NMR緩和率についてのデータを、T2リーダーを使用して毛細管サンプルから記録した。収集データが単一指数関数であること、及びこれは標準的CK曲線中に存在するのとは異なる血餅構造を反映し得ることが決定された。おそらく、毛細管の表面が血液凝固を誘導する。
【実施例4】
【0209】
ナノ粒子による血液の処理
血液に超常磁性ナノ粒子をドーピングすることにより、血液中のバルク水の磁化率の変化がもたらされる。同様の現象は、マンガンを血液に添加してバルク水のT2値を変化させ、使用可能な化学シフトが赤血球の内側及び外側の水の測定を交換することを可能にすることにより以前に使用されてきた。単一患者からの血液サンプルを実施例1に示すプロトコルに基づく実験に使用した。さらに、血液サンプルを非官能化800nm直径ナノ粒子で処理した。2種の異なる濃度のナノ粒子を試験した。2種の異なる濃度は、ナノ粒子10μL又はナノ粒子20μLのいずれかを添加することにより得た。T2データを、T2リーダーを使用して記録した。記録したT2データを、実施例2に記載するアルゴリズムを使用して処理した。ナノ粒子を含有するサンプルについてのAmpA及びAmpBの一連のプロットから、ナノ粒子が曲線中に観察されるノイズを減少させ、AmpA及びAmpBをより容易に識別することを可能にすることが認められた。ナノ粒子を含有するサンプルについてのT2A及びT2Bの一連のプロットから、ナノ粒子がT2Aのより大きな変化をもたらすことが認められた。超常磁性ナノ粒子は、(i)サンプル中のレオロジー変化に応じたシグナル変化(若しくはNMRパラメータの値の変化)を増加させる、及び/又は(ii)凝固若しくは溶解プロセスを生じているサンプル中のレオロジー変化のより早期の検出を可能にするために、本発明の方法に有用となり得る。
【0210】
別の実験では、超常磁性粒子のサイズの凝固している血液のT2MRに対する影響が観察された。血液サンプルは、クエン酸塩添加全血1mLと(TEG)からのカオリン試薬1チューブを5回反転させることにより穏やかに混合して混ぜ合わせることにより調製した。血液/カオリン混合物34μLをPCR管(200μL)に入れ、37℃で1分間予熱した。0.2M CaCl
2 2μLを添加することにより凝固を開始し、管をT2リーダーに入れた。サンプルを、磁気粒子を用いないで(
図26A参照)、CLIOナノ粒子(30nmサイズ;約0.05ng)を用いて(
図26B参照)及びSaramag超常磁性粒子(730nmサイズ;約0.05ng)を用いて(
図26C参照)実行した。
【0211】
30nmナノ粒子の添加により、典型的なクエン酸塩添加カオリン実験における血餅シグナル(T2=200ms)が消え、T2約100msの1ピークのみが存在する。730nm超常磁性粒子の添加は両ピークを観察する能力に干渉しない。
【実施例5】
【0212】
ドナー血液サンプルからの磁気共鳴パラメータの決定
データ抽出に使用した磁気共鳴パラメータは、ドナーから得た血液サンプルを使用して得た。血液サンプルを、TEG法とT2凝固法の両方を使用して評価した。いくつかの異なる種類のアッセイを実行した。T2凝固データは、いくつかのT2リーダーの一つを使用して収集した。
【0213】
全血凝固アッセイ
ドナー血液サンプルを、本発明の方法及びTEG法を使用して評価した。実施例1に記載するように、いくつかの異なる全血凝固アッセイを使用した。これらのアッセイを表1にさらに要約する。
【表1】
【0214】
K試験は、血小板活性化とフィブリン形成をもたらす酵素カスケードの両方により血餅を産生する。この血餅は、任意の種類の血小板阻害因子を迂回し、全血凝固全体の評価を提供する。TEG R値は酵素経路の反映を提供し、TEG AAは血餅強度の反映を提供し、血餅強度は、血小板と酵素経路の産物であるフィブリンネットワークの両方により駆動される。
【0215】
RF、ADP及びAA試験はヘパリンを使用してトロンビン経路を阻害し、各特定の作動薬により活性化された経路を分離する。ADP及びAAは血小板を活性化し、フィブリンネットワークの形成による血餅強度への追加の寄与が存在する。RF実行は血小板を活性化しないが、フィブリンネットワークを活性化する。そのため、RF実行からのMAは、K、ADP又はAA実行から減算され、血小板のこれらのそれぞれの実行のMAへの寄与を決定することができる。これが血小板機能の間接的測定であることは注目に値する。
【0216】
患者にK及びADP血液凝固アッセイを実行することを使用して、ADP血小板阻害因子であるPlavix、Ticlid及びEffientなどの抗血小板療法により患者が受けている血小板阻害の量を決定することができる。K及びADP実行についてのTEG MA値を比較してこの阻害を決定する。
【0217】
K及びAA血液凝固アッセイを実行することを使用して、アスピリン、ReoPro(登録商標)、Aggrastat、Integrilin及び非ステロイド系抗炎症薬などの抗血小板療法により阻害されている血小板の割合を決定することができる。これらの薬物は全て、AAにおいて作動薬により活性化される受容体である、GPIIb/IIIa血小板受容体を阻害する。これは、K及びAAについてのMA値を比較することにより行う。GPIIb/IIIa受容体は、血小板を活性化すると、血小板表面で発現する(Corporation, H.、TEG(登録商標) 5000 System Guide to PlateletMapping(登録商標) Assay 2010;Enriquez, L.J.及びL. Shore-Lesserson、Point-of care coagulation testing and transfusion algorithms. Br J Anaesth、2009. 103 Suppl 1:i14〜22頁;Kroll, M.H.、Thromboelastography: Theory and Practice in Measuring Hemostatis. Clinical Laboratory News、2010:8〜10頁)。
【0218】
FF試験は、凝固への血小板寄与を除外する。K MAからFF MAを減算することにより、おそらく血小板寄与による血餅強度をもたらす。これは血小板機能の間接的測定である。FF及びK試験からのMAを基準範囲と比較することにより、出血の問題が低い血小板から来ているのか又は低い機能性フィブリノーゲン活性から来ているのかが示され、それによって臨床医に適当な処置を導くことができる。同様に、血栓形成促進患者を、高い血小板活性又は高い機能性フィブリノーゲン活性又はその両方により診断することができる。フィブリノーゲンは一次と二次止血の両方の重要な構成要素であり、可逆性と不可逆性血小板凝集の両方に参加する。二次止血では、フィブリノーゲンがフィブリンに切断及び変換されてフィブリンマトリックスを形成する(Corporation, H.、Guide to Functional Fibrinogen. 2009)。
【実施例6】
【0219】
特徴抽出のためのプロセス
相当な努力を行ってT2凝固とTEG曲線との間の特徴相関を決定した。相関を探したTEG曲線中の二つの主要な特徴はR及び最大振幅(MA)であった。全特徴抽出は、全曲線の1/15又は40個のデータ点ごとにスムージングしたT2A、T2B、AmpA及びAmpB曲線を使用して行った。
【0220】
特徴探索は、T2凝固曲線中のいくつかの時点に基づいた。曲線の全特徴を、単純な数計算によって、T2A曲線の二次導関数が最大値に達する時により決定したRについてのトップ候補から構築した。この時点を「Possible R 」と呼ぶ。T2Bが最小又は最大値にある時、及びT2Aが最小又は最大値にある時も特徴抽出に使用した。
図5は、T2凝固曲線の一次及び二次導関数を用いた単一対象についてのT2凝固曲線を示している。
【0221】
特に一次及び二次導関数中に偽データ点が存在し得る。そのため、最小及び最大値を、T2Aが最大二次導関数を達成する最初の時間に最も近い極値点と定義した。T2凝固曲線並びにT2凝固曲線の一次及び二次導関数中のこれらの時点を同定した後、いくつかの異なる特徴を、時点、時点の組み合わせ、数値導関数、及びT2凝固曲線の差から計算した。これらの特徴を、TEG R、MA及びMA
PLATELET値と比較した。
【0222】
標準回帰分析を使用して特徴相関の強度を決定した。二つの項を使用して特徴探索を援助した、ピアソンの積率相関(r)係数及び決定係数(R
2)項。r項は有望な相関を得るための一般的ガイドとして使用し、R
2項は相関が実際にどのくらい優れているのかの尺度として使用した。
【0223】
90を超える特徴を試験した。特徴の例としては、PossibleRでの第1の数値導関数の値;T2Aの最大加速度でのT2Aの勾配;T2B曲線上の最大値と最小値との間の差;及び最小T2A値と最大T2A値との間の勾配が挙げられる。
【0224】
T2A+部分T2B曲線
特徴抽出の一つの例では、T2A及びT2B曲線を組み合わせて、T2凝固曲線とTEG MA値との間の相関を探すのに有用であったT2A+部分T2Bを得ることができる。この複合曲線を「T2A+pT2B」と命名し、T2Bが最大である時点を同定し、そのT2B値とすべてのその後のT2B値との間の差の絶対値からなるベクトルを作り出すことにより計算する。次いで、このベクトルを同一時間記録器でT2Aに加える。
図6は、どのようにT2A+pT2B曲線を計算するかの例を示している。T2A+pT2B曲線はTEG曲線の上半分を模倣している。
【0225】
上記のように作成されたT2A+pT2B曲線は、TEG MAとの潜在的相関を生み出した。T2A+pT2B曲線上のT2RでのT2と最後の50個の点にわたる平均T2との間のT2シグナルの変化からなる特徴を同定した。この特徴は、MAとの逆相関に従い、これはMA相関についての本発明者らの第一印象と一致した(
図7参照)。すなわち、T2A+pT2B曲線についての最大T2変化はTEGカオリンMA値と逆相関した。サンプルの大きなセットにわたり、この特徴は0.39〜0.55の間のR
2値との相関を与えた。これらのR
2値は、TEGが感受性であるものよりも、血小板などの凝固の異なる態様に感受性であるT2凝固T2A曲線から生じ得る。
【0226】
凝固前T2A値
血液サンプルのヘマトクリットは、凝固前にサンプル中の単一の初期水集団から計算することができるだろう。血餅形成前、この単一の水集団は実施例2に記載する双指数関数あてはめ法を使用して確立されたT2A値に対応する。サンプルの初期T2A値は、当技術分野で知られている標準的な方法を使用して測定されるヘマトクリットとほぼ逆の線形相関を有することが分かった。較正曲線は、単一患者から採取した血液を使用して異なる希釈で4種の標準のセットを作成することにより確立した。凝固開始前に水集団Aについて観察されたヘマトクリット及び初期緩和率を互いに対してプロットして較正曲線を作成した。血液サンプルを10人の患者から採取し、較正曲線に対して照会した。未凝固血液についてのT2シグナルは、ヘマトクリット(HCT)レベルと逆に変化することが分かった。
図8aに示すように、広範囲のHCT基準値にまたがる別個の患者サンプルがこれを一般的に証明する。
図8bに示すように、較正法を一定範囲のHCTにわたり希釈した単一の患者サンプルに適用することにより、HCTへの一次従属性が示される。
図8a及び8bは、本発明の方法を使用して血液サンプルのヘマトクリットを計算することが可能であることを示している。
【実施例7】
【0227】
抽出磁気共鳴パラメータとTEGにより決定される凝固挙動との間の相関
測定した平均NMR緩和率データから抽出した磁気共鳴パラメータは、TEGにより決定される凝固挙動と相関し得る。表2は、抽出したT2A値と、TEG Hemostasis Analyzerを使用して測定した凝固時間パラメータ「R」との間の相関を示している。
【0228】
TEG Hemostasis Analyzerは、血餅の物理的特性の定量的及び定性的測定を提供する(Samaraら、Thromb. Res. 115:89〜94、2005)。本実施例では、最大振幅(MA)及び凝固時間(R)をトロンビン産生血餅サンプルについて測定した。MAは、血餅形成又は血餅強度の粘弾性の指標であり、血小板凝集並びにフィブリン形成及び重合に依存する。Rは初期フィブリン形成までの潜伏期間であり、トロンビン産生の速度と相関した。
【0229】
AmpA及びAmpB測定、T2A測定並びにT2B測定のプロットから、抽出データの初期の部分は、対応するTEG曲線からは入手可能でない凝固挙動の指標(例えば、線溶又はLY30)を提供することができることが認められた。
【表2】
【0230】
凝固時間(R)についてのT2凝固相関
凝固時間(R)をT2凝固特徴と相関させる方法を、上記のように、自動的にT2Aの二次導関数を得ることに基づいて開発した。25回の実行にわたり、0.80のR
2(
図9)がR(全血凝固時間)値についてT2とTEGとの間で観察された。この相関に使用したT2凝固曲線はカオリン実行(SSE≧2)であった。三つの外れ値実行を、そのT2A曲線を右に示して
図9に強調する。三つのケース全てで、T2A曲線はR TEG時間前に最大加速(T2A''=0)を達成する。
【0231】
血小板関連血餅強度(MAPLATELET)についてのT2凝固相関
カオリン実行を使用してTEG MA時間及びT2凝固特徴を相関させるためにいくつかの特徴を探索した。カオリン実行について見られた最も顕著な相関は、時間0と最小T2値との間のT2凝固特徴であり、これはT2 R特徴の直前である。これは、T2A曲線の典型的な初期減少である。時間0と最小T2値との間のT2Aシグナルの勾配はTEG MA
PLATELET値と相関する。TEGは血小板活性を直接測定することはできないので、血餅強度へのトロンビン誘導血小板寄与は、活性化因子若しくはA実行からMA項(MA
A)、又はカオリン実行からMA項(MA
THROMBINとも呼ぶ)を減算することにより導出される。
図10は、14 T2凝固実行についてのTEG項MA
THROMBIN-MA
A、又はCK実行からのMA-A実行からのMAと28 TEG実行との間の相関を示す。R相関と同様に、SSE≧2を使用した。TEGを用いてMA
PLATELET項を得るために、2種の異なるTEG曲線を得なければならず、使用者は手動演算を行って血餅強度への血小板寄与を決定しなければならない。しかしながら、T2凝固を用いれば、この情報は単一T2凝固実行の最初の6分以内に入手可能であり、セットアップがはるかに早い。
【0232】
機能性フィブリノーゲン関連血餅強度(MAFF)についてのT2凝固相関
NMR緩和データを収集する前に添加剤を血液サンプルに含めることにより、凝固挙動を決定することができる。フィブリノーゲンをサンプルに添加してMA値の範囲を有効に滴定することができる。
図11は、機能性フィブリノーゲン滴定についてのT2凝固曲線及びFF実行のMAとT2凝固曲線からの特徴との間の相関についての明確な証拠を示している。このT2凝固特徴は、初期と最終T2凝固AmpA値との間の差(ΔAmpA)として計算した。フィブリノーゲンを3種の異なる濃度で(0.63、1.25及び2.5mg/mL)サンプルに添加した。
図11(c)に見られるように、添加フィブリノーゲンを含有しないサンプルと比較して、これらの機能性フィブリノーゲン(FF)(MA
FF)についてのΔAmpAとTEG MAとの間に強い相関が存在した。フィブリノーゲン滴定を2人の他の患者サンプルについて行ったところ、0.9より上及び0.98もの相関が得られた。このプロトコルでは、クエン酸塩添加全血をその元の濃度の50%まで希釈した。
【0233】
MA30分後の溶解%(LY30)についてのT2凝固相関
線溶を検出するために使用するLY30について相関が認められた。5人の異なる健常患者サンプルを使用してT2凝固が線溶に感受性であるかどうかを試験した。2種のレベルの組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)を健常患者血液に添加することにより、TPAの添加を使用して線溶を刺激した。フィブリンが形成するとTPAがフィブリンを切断する。線溶をT2凝固の10分以内に検出することができることが認められたが、これはTEGの検出に必要とされる時間の半分未満である。全5人の患者について、健常と線溶サンプルとの間の明確な差が存在した。
図12は、非線溶(実線)及び線溶サンプル(破線)についてのT2A及びT2B曲線に関するT2凝固データを示している。
【0234】
図13に示すように、T2Bシグナル及びTEGからのLY30項の変化についての強い相関が存在する。この相関のために使用することができるいくつかの潜在的特徴が存在する。調査した三つは(i)最小及び最大T2B値(
図13)、(ii)T2B曲線の最後の25分にわたるT2B値の平均、及び(iii)10分でのT2B値の間の差であった。全てが0.72〜0.79の間のR
2値で相関を有していた。相関プロットは、TEGよりも線溶についてのT2凝固のより高い感度を示す。これは、
図13の線溶の異なるレベルについてのグループ化により分かる。健常患者サンプルを実線で囲む。完全線溶サンプル(118ng/mLのCathflo(登録商標)、Genentechにより製造されている組換えアルテプラーゼを含有する)を破線で囲み、部分線溶サンプル(60 ng/mLのCathflo(登録商標)、Genentechにより製造されている組換えアルテプラーゼを含有する)は囲まない。T2凝固T2B項はわずか10分で検出することができ、これはTEG LY30項を検出することができるよりもはるかに速く、線溶のより迅速な測定のためにT2凝固が有用であることを示している。
【0235】
凝固時間、PT/INR及びaPTT
T2MRの血液及び血漿中での血餅形成に対する感度を使用して、PT/INR、aPTT及びTEG Rなどの凝固時間を測定することができる。
【0236】
第1にT2時間曲線の時間0のT2値を確立し(すなわち、第1の点又はある種の平均又は最初の5〜10個のデータ点への線形あてはめを取り)、第2にT2値がサンプル中の凝固を示す所定の量(例えば、5%又は10%)変化した時のT2時間曲線中の時点(すなわち、凝固時間又はPT時間)を同定することにより、凝固時間をT2MRにより測定した。観察されたPT凝固時間から、INRをJanら、Clin. Chem. 35:840(1989)に記載されている方法を使用して計算した。
【0237】
Stagoを用いたPT/INRについての相関は、トロンボプラスチン試薬(Thrombotest、Axis Shield)及びT2MR用の全血の1:5希釈及び標準試薬及びStago Startシステム用の血漿プロトコルを使用して証明した(
図14A参照)。18個の正常サンプル及び24個の異常サンプルを、20個の正常サンプルにより確立された基準範囲に対して試験した。PT時間が延長した異常サンプルは、増加したレベルの抗Xa阻害因子Ribaroxiban(10ng/mL〜1000ng/mL)を添加することにより得られた。TEG凝固時間との相関は、0.8より大きい非最適化R2相関で40超の正常患者サンプルにわたり得られた(
図14B参照)。血漿についてのStago(
図14D参照)及び全血についてのHemochron(
図14C参照)を用いたPT時間相関も見られた。
【実施例8】
【0238】
T1緩和測定
T2測定を測定することができることに加えて、T2リーダーは、T1測定を測定することができるよう構成され得る。T1はサンプル中の水素原子スピン系の異なる物理的特性を測定する。そのため、T1データは、T2データと比べて、血液凝固についての代替及び相補的情報を提供する。従来のT1測定はT1シグナルを得る段階的性質のために時間を消費していたが(2〜3分)、z-リフォーカスエコー(z-refocused echo)(ZRE)法を使用して5秒未満以内にT1が得られた。天然及び凝固全血についてのT1緩和曲線の測定を行ったところ、T1の血液凝固に対する感度が認められた(未凝固全血T1=787ms;凝固全血T1=860ms)。
【実施例9】
【0239】
T1/T2ハイブリッド検出法
T1/T2ハイブリッド検出法は当技術分野で既知である(これにより参照により組み込まれる、Edzes、J. Magn. Reson. 17:301〜313、1975;Sezginerら、J. Magn. Resn. 92:504〜527、1991)。これらの方法及び関連する方法を本発明に使用して磁気共鳴パラメータ値を評価及び/又はT2凝固曲線を確立することができる。
【0240】
T1は、典型的には反転回復法シーケンスによってサンプリングする。反転回復法シーケンスは、パルスシーケンスに使用するデータ測定の数により指示される、使用者が達成することを望む測定される緩和時間の精度に応じて、数分かけて得ることができる。反転回復法シーケンスについての詳細は、任意の標準的NMRテキストブックで検索することができるので、ここでは記載しない。
【0241】
T1ZREパルスシーケンスにより、完全な緩和までの磁化に要する時間(約3〜5×T1)にわたりT1を測定することが可能になる。これは、180°パルスにより磁化を反転させ、次いで、大きさを測定し、一連のパルスによってこれをもとのz位置に戻すことにより磁化を平衡に戻しながら、磁化をサンプリングすることにより達成される。
【0242】
磁化をサンプリングするのにかかる時間をτ
cと呼び、サンプリング間の時間をτ
rと呼ぶ。実際の測定までのτ
cの開始後の時間はτ
mである。測定緩和定数は、R
2とR
1の組み合わせであり、R
12と呼ぶ。三つの項は、
R
12=(1-p)R
1+pR
2 (11)
(p=τ
c/τ
r)
により関連する。この関係から、pが0になると、R12がR1になることが分かる。
【0243】
τ
rは点の総数及び測定の総持続時間に依存するだろう。T2凝固測定については、これは30個の点で約3秒にわたり100msのτ
rであった。τ
c項はパルスシーケンスから計算することができ、本質的には3×τ又は750μsに等しい。したがって、p項は0.0075に等しく、測定緩和又はハイブリッド、T1/T2(hT12)項は主にT1となるはずである。Sezginerらは、hT12シグナルからT1測定を得るための単純な式を提供しており、これは
【数7】
【0244】
[T
1measはhT12であり、T
1はT1であり、T
bは二つの測定間の持続時間であり、t
cpはエコー間遅延又はτの半分であり、T
2は測定T2時間である]
である。
【0245】
上記記載はどのようにこのハイブリッド緩和時間を測定することができるかを単に説明するものである。ハイブリッド緩和定数を測定する及びT1を迅速に得るために使用することができる他のパルスシーケンスが存在する。
【0246】
使用するパルスシーケンスにかかわらず、本発明の概念は、凝固(すなわち、血液凝固)をモニタリングするための磁気共鳴緩和測定を迅速に得ることを目指している。他の種類の磁気共鳴パルスシーケンスを使用して凝固中にサンプル中のバルク水素シグナルをモニタリングすることができる。例としては自由誘導減衰(FID)に基づく分析、高速フーリエ変換に基づく分析(FFT)などのリラクソメータでの材料分析に一般的に使用されるT2、T1、T1/T2ハイブリッド時間、その逆転項のR2、R1、R12、及びパルスNMR測定が挙げられる。FID分析は、一般的に急速減衰シグナルと緩徐減衰シグナルを識別する。これらの二つのシグナルの強度を、その減衰定数のように比較することができる。これらのパルスシーケンスは、脂肪分析、脂肪含量及び固体対液体比、固体脂肪対液体比、水素含量決定、油含量、固形分、及び総脂肪含量決定、油水エマルジョン、並びに脂肪及び水分決定のために一般的に使用されてきた。同様のリアルタイム又は動力学的測定を、これらのNMRパラメータを用いて、凝固反応を生じているサンプルに行うことができる。
【0247】
代替緩和測定は、(1)凝固プロセスについてのより多くの情報;(2)T2測定により捉えられない特定の情報;及び(3)T2と新たなパラメータの両方が感受性である因子についての正規化を提供するのに魅力的である。ポイント3をさらに記載するために、例えば、T1測定が患者間の変動に感受性であるがT1が凝固情報を含有しない場合、T1曲線を使用して、臨床サンプル中の望ましくない感度から生じるT2シグナルの部分を「減算する」ためのアルゴリズムが存在するべきである。このような望ましくない感度は、ヘマトクリット、血小板数等の変動であり得る。
【0248】
概念を説明するために、本発明者らは、Bruker minispecでCK凝固曲線を測定した。実験は300μLのサンプル容積で、ガラスNMR管の内側で行った。このリラクソメータは、T2とハイブリッドT12(hT12)緩和時間の両方を迅速に測定することができるパルスシーケンスを有していた。T1は式12により得た。
【0249】
得られたT2凝固曲線は、本発明に使用したT2リーダーで得られたT2凝固曲線と極めて類似の形状及び特徴を示した。これは、使用したBruker minispecはT2リーダーとは極めて異なる検出コイル、磁石及び曲線あてはめアルゴリズムを有するので、他のT2凝固曲線の確認となる。記載するパルスシーケンス条件下で、T1/T2ハイブリッドは主にT1である。この実験では、T1/T2ハイブリッドシグナルを交互に得た。T2シグナルを、CPMGシーケンスを使用して得て、次いで、T1/T2シグナルを、T1ZREシーケンスを使用して得た。T1/T2ハイブリッド(主にT2)をT2Aで割ることにより、シグナルを互いに組み合わせて新たな曲線を作成することができ、これは血液サンプルの凝固亢進及び/又は凝固低下を評価する本発明の方法に有用であり得る。
【実施例10】
【0250】
アクリルアミド合成凝固対照
アクリルアミドゲル重合をT2凝固測定のための合成対照として使用した。表3に列挙する量の脱イオン水、40%アクリルアミド、0.5M Tris pH6.8緩衝液、及び10%過硫酸アンモニウムを使用して混合物のセットを形成することにより、アクリルアミドゲルのセットを調製した。混合物を室温で30分間インキュベートした。各混合物36μLを、対照として使用するために別々のPCT管のセットに保存した。テトラメチレンジアミン(TEMED)2μLを各混合物に添加した。30分後、各対照のT2測定及び重合反応を行った。
【表3】
【0251】
TEMED処理サンプルと対応する対照サンプルのT2値を比較することにより、T2の変化百分率を計算した。測定データを表4に示す。
【表4】
【0252】
15%、20%及び40%アクリルアミドゲルは、最大T2変化%を示した。これらの反応を時間経過T2測定に選択した。15%、20%及び40%アクリルアミドゲルを表3に従って調製した。TEMEDを添加したら、各サンプルを直ちにT2T2リーダーに入れ、測定を開始した。時間経過データにより、T2及び反応速度の全体変化がアクリルアミド百分率に依存することが明らかになった。これは、これらの異なる反応についての異なるポリマー密度を反映している。T2のポリマーゲル組成に対する感度は、おそらく単一T2測定の時間経過中の水拡散の平均長さの変化に対するT2の感度によるだろう。
【0253】
超常磁性ナノ粒子を合成凝固反応(例えば、アクリルアミドゲル形成)と共に使用することができる。40%アクリルアミドゲルを約800nmカルボキシSera-magナノ粒子(1μg/mLナノ粒子)の存在下で重合した場合、T2時間曲線の初期部分は平坦化した。上記T2測定に使用するCPMGパラメータは以下の通りである:パルス幅=6.8μs;高周波ブランキング幅=1μs;90〜180スペーシング=249.6μs;num 180s=7000;全励起=3494.902ms;反復(Tr)=1000ms;受信機位相=0;90位相=0;及び180位相=90。
【0254】
この実施例は、どのようにNMRパラメータ(例えば、T1又はT2)が相変化を生じているサンプルで変化するかを説明する。ポリマー密度を増加させると、T2のより急速な変化及びT2の全体的により大きい減少が生じ、T2シグナルのポリマーマトリックス密度、細孔径、及びゲルの他のパラメータへの依存を示している。同様の結果は、他の食品製品の中でも、Kappaカラゲナンゲル(カリウムイオンを添加したゲル)、Iotaカラギーンゲル(カルシウムイオンを添加したゲル)、アルギン酸ナトリウムカルシウム、ゼラチンなどの他のゲルで得ることができる。
【実施例11】
【0255】
細菌内毒素の検出
本発明の方法及び装置を使用して細菌内毒素、すなわち、グラム陰性菌の細胞壁材料を検出する。内毒素は、ヒトに高熱をもたらすことができ、結果として、血液に接触する注射用薬物及び医療機器が内毒素の存在について頻繁に試験されている。内毒素を検出するための凝固ベースアッセイは、細菌内毒素とアッセイに使用する特定の溶菌液との間の反応によるものである。カブトガニ、アメリカカブトガニ(Limulus polyphemus)の循環アメーバ様細胞から得られる溶菌液が使用することができる具体的な溶菌液である。アッセイでは、溶菌液を、内毒素の存在について試験するサンプルに導入する。凝固プロセスを介してゲルが形成すると、内毒素が存在するとみなされる。このようなゲルの形成及び特性を、本明細書に記載するNMRに基づく方法のいずれかによりモニタリングする。
【実施例12】
【0256】
T2サイン曲線
NMRデータを処理して、血液サンプル中の個々の水集団を表す別個のシグナル(すなわち、最大値)を示すT2サイン曲線を作成する。数学的変換(すなわち、ラプラス変換又は逆ラプラス変換)を凝固イベント中の時点でT2に関連する減衰曲線に適用することにより、T2サイン曲線を作成する。
図15は、T2減衰曲線及び対応するT2サイン曲線を示している。三つのシグナルは、血液サンプル中の三つの水集団を表す。
図15はまた、シグナルが経時的に変化し得る一つの様式を示している。
【0257】
NMR緩和データ中に観察される水集団A及びBと凝固サンプルの成分との間の相関を、周囲血清から退縮した血餅を分離し、これら二つの構成要素についてのT2データを別々に測定することにより確認した(
図16参照、凝固が完了した後のT2サイン曲線)。患者サンプルについての二つのT2緩和スペクトルを、二つの異なる時点で、T2リーダーで収集した(
図18参照)。スペクトルは、サンプル中の血液と一致する時間0での初期の有意なピークを示している。20分では、二つの有意なピークが明らかである。より低いT2時間(約200〜300ms)のピークはT2血餅水環境と一致し、より高いT2時間(約450〜580ms)のピークはT2血清水環境と一致する。
【0258】
T2AとT2Bとの間の差(ΔT2)は、血餅強度と相関することが認められた。
図17は、同一患者から採取した二つの異なるサンプルについての二つの重ねたT2緩和スペクトル及びTEG血餅強度(MA)を示している。弱い血餅(MA=19.2)を含有するサンプルは、強い血餅(MA=65;258ms)を含有するサンプルよりも、血餅関連シグナルと血清関連シグナルとの間の差についての低い値(182ms)を示した。このデータは、血餅強度の増加がΔT2と正に相関することを示している(R
2=0.8771、
図18参照)。
【実施例13】
【0259】
血餅中の水集団の3Dプロット
T2緩和率データを健常患者から採取したCK血液サンプルから収集した。各サンプルについて、一連のT2減衰曲線を50分の期間にわたって測定した。減衰曲線を逆ラプラス変換(ILT CONTIN)を使用して各々処理して、T2時間の関数としてT2強度を示す曲線の配列を得た。逆ラプラス変換曲線を凝固時間次元の持続時間にわたって積み重ねてどのようにサンプル中の水の異なる集団が時間の関数として変化するかを示す3D表面を作成することにより、これらの曲線を、3Dデータセットを形成するよう従わせた。
図20は、Bruker minispecで収集した患者サンプル29328及び29350についての3Dデータセットを示している。3Dデータは、未凝固血液に相当する250〜500msのT2時間の初期水集団を示した。5分〜30分の間の時間で、単一水集団が二つの有意な水集団に分岐した。これらの二つの水集団は、血餅の二つの構成要素、すなわち、退縮した血餅及び退縮した血餅を囲む血清に相当する。第1の血餅関連水集団は80〜400msのT2時間を有し、退縮した血餅に相当する。第2の血餅関連水集団は400〜3000msのより広範囲のT2時間を有し、退縮した血餅を囲む血清に相当した。いくつかのサンプルについて、これらの二つのピークは完全には分解されなかった。凝固サンプルの水集団と構成要素との間の相関を、周囲血清から退縮した血餅を分離し、これらの二つの構成要素についてのT2データを別々に測定することにより確認した。
【実施例14】
【0260】
アブシキシマブを使用した血小板活性の阻害
全血サンプルの凝固を、抗血栓薬アブシキシマブ(ReoPro(登録商標))を使用して攪乱した。アブシキシマブは、ヒト血小板のIIb/IIIa受容体に結合し、血小板凝集を阻害するヒト-マウスモノクローナル抗体のFabフラグメントである。アブシキシマブは、凝固プロセス中に血餅の退縮を阻害するよう作用する。
【0261】
アブシキシマブを含有するサンプルを以下の手順に従って調製し、μg/mLの単位のアブシキシマブ濃度に相当する数により本出願及び図面で参照する。
【0262】
1. 血液を正常ドナーから6本のクエン酸塩添加管に採取した。正常ドナーは過去2週間にアスピリンも任意の抗血小板薬物も服用していてはならない。
【0263】
2. 6本の管の血液をプールし、8〜10回穏やかに反転させることにより混合した。サンプルは収集してから2時間以内に使用した。
【0264】
3. アブシキシマブ溶液(10mg/5mL)を希釈剤として生理食塩水を使用して1:4の比で希釈して「溶液1」を形成した。
【0265】
4. 血液に、表5に従って、溶液1及び生理食塩水を添加した。
【0266】
5. 任意のサンプルをT2リーダー又はBruler minispecで測定する前に少なくとも5分間静置した。
【表5】
【0267】
第1の実験では、患者サンプル29488の4分割量を、凝固プロセス開始前に異なるアブシキシマブ濃度(0、2、4及び8μg/mL)を有するよう調製した。四つのサンプルについてのT2緩和時間を血餅形成の経過にわたって測定し、対応する3Dプロットを実施例13に記載する技術を使用して決定した。明確な傾向が四つの3Dプロットで明らかとなり、高濃度のアブシキシマブが退縮した血餅水集団及び血清水集団の単一水集団への合体をもたらした。最高濃度のアブシキシマブでは、もはや二つの相は血餅中に見えなかった。この物理的変化は対応する3Dプロット(
図21)で証明及び定量化され、最高濃度のアブシキシマブで均一サンプル中の水の高速変化を示している。
【0268】
第2の実験では、患者サンプル29494の5分割量を、凝固プロセス開始前に異なるアブシキシマブ濃度(0、2、4、8及び0μg/mL)を有するよう調製した。サンプルについてのT2緩和時間を連続して測定し、各測定セットは約50分持続した。試験した最初のサンプル及び試験した最終サンプルは添加アブシキシマブを含有しなかった。収集したT2減衰曲線を、実施例18に記載するように逆ラプラス変換を使用して処理した。五つのサンプルについての0.1分の時間でのデータを
図22に示す。曲線は、アブシキシマブの存在下で、T2シグナルのより狭い分布が、血液サンプル中に存在する初期水集団中に観察されることを示している。その両方が添加アブシキシマブを含有していなかった最初サンプル実行と最終サンプル実行との間の曲線形状の差は、サンプル齢のT2時間分布に対する効果の証拠となり得る。最初の四つのサンプルについての20分の時間でのデータを
図23に示す。これらのサンプルについての対応するTEG決定MA値は、それぞれ60.7、61.4、30.4及び22.0であった。最高濃度のアブシキシマブを有する二つのサンプルは、強い血餅を形成し、分解が乏しいT2ピークを示した他の二つのサンプルよりも、TEGにより測定されるように弱い血餅を形成し、狭く、より分解したT2ピークを示し、これらのサンプル中の複数の水集団及び環境の不均一性を示している。このデータは、本発明のNMRに基づく方法を使用して、凝固サンプル中の血小板活性を測定することができることを示している。
図22及び23は、アブシキシマブなどの、サンプルの凝固挙動を調節する添加剤を有利に使用して、TEG決定指標(例えば、血餅強度及び血小板活性)と本発明の方法を使用して決定されるNMR由来データとの間の相関を確立することができることを示している。
【0269】
図24は、どのように3Dデータセットから構築した3Dプロットを使用して血液サンプルについての凝固時間を決定することができるかを示している。
図25は、3Dデータセットから構築した3Dプロットを使用して、どのように血小板阻害が血餅関連シグナルのシグナル強度を低下させ、血清関連シグナルをより低いT2値に移動させるかを示している。
【実施例15】
【0270】
データ品質及びフィット品質の評価
単一サンプルについてのT2凝固データは、S観察T2 CPMG緩和曲線{f
j(t):0<t<T、j=0、1、2、3、…、S}(j=0、1、2、…、Sはサンプルの凝固/血餅形成プロセスを通した時間の点であり、j=0は凝固開始に相当し、j=Sはサンプルが予想された凝固イベントを受けた後の点に相当する)の集合からなる。T2凝固アルゴリズムは、減衰関数のこの集合をT2×凝固時間領域にわたって減衰定数ポテンシャルの表面に変換し、次いでこれらのポテンシャルからサンプルについての有用な情報を抽出する。
【0271】
単一T2 CPMG緩和データf
j(t)は、式(3)を使用して加重指数関数減衰関数の有限和としてモデル化されるだろう。典型的には、nはサンプルの複雑さのために大きい(例えば、n>300)。このモデルのパラメータを推定するために多くのアルゴリズムが開発されてきた(Istrovら、Rev. Sci. Instrum. 70:1233(1999)参照)。例えば、Tikhonov正則化法(Tikhonov Sov. Math. Dokl. 4:1035(1963)参照)をCONTINに実行して(Provencher、Comput. Phys. Commun. 27:229(1982)参照)本発明の方法で収集した緩和データを評価することができる。一般的なように(Davies、Inversion Problems in Scattering and Imaging、M. Bertero及びE.R. Pike編(Adam Hilfer、Bristol、1992)、393頁)、T2凝固緩和データのための本発明の方法の使用は、前に提供するものなどの、特定の修正又は設定の適用を要し得る。
【0272】
逆ラプラス変換は、不良設定計算(多くの等しく正確な解法が所与の複合減衰データセットから生じ得ることを意味する)であることが知られている。これは、最も明確なデータに当てはまり、複合減衰曲線が騒々しくなる又は単一指数関数減衰関数の和から著しく動くにつれて悪化する。
【0273】
CPMGデータ品質
この課題に対処するために、変換の前に、各T2CPMGデータセットを試験して、データセットと変換が成功する全体的尤度の両方の品質を確立することができる。信号対雑音比(SNR)は、緩和データの遅くに(すなわち、T近くのt)観察された変動と比べてt=0でのCPGM強度に基づいて推定する。初期シグナルの減少から生じた低いSNR値は、データから検討の資格を奪う装置及びオペレータのエラーに関連する。低いSNRは、CPMGデータの遅くの変動の増加から又は減衰プロセスの観察期間が短すぎる場合にも生じ得る。後者の場合は、所与のデータセットにおける減衰定数が予想よりも大きくなることが示唆される。Tikhonov正則化法は予想される最大T2値の知識を要するので、最大予測T2値(CONTINのパラメータ)を増加させることにより、T2アルゴリズムはCOMG曲線の遅くの線形傾向による低SNRの場合を収容する。
【0274】
変動増加はまた、小数の極値点(複合減衰仮定に対する)がCPMG曲線の末尾に見られる場合にも生じる。単一指数関数減衰関数を用いてCPMG曲線のサブセクション(0<t1<t<t2<T)をあてはめた後、フィット残差の分布の正又は負の尾部に見られる点を変換の前に除去する。
【0275】
T2 CPMGデータが品質条件を満たした後、減衰プロセスがフィットのジャックナイフ検定の適用を可能にするのに十分長く観察された場合、CPMGデータを二つのサブセットTrain及びTestにランダムに分けて、結果としてTrainが8000個以下のデータ点を有し、残りがTestセットに割り当てられるようにする。Trainデータを変換し、多指数関数減衰関数を定義する得られたモデルパラメータを使用してTestデータのフィット品質を評価する。Testデータのフィット品質は、フィットの独立した尺度を与え、T2凝固アルゴリズムの特徴抽出相に使用される。
【0276】
CONTINパラメータ値
いくつかのCONTINパラメータは逆ラプラス変換の品質に劇的に影響を及ぼす。表6は、T2 CPMGデータを最良適合させるためにT2凝固アルゴリズムにより使用されるパラメータ及び値を記述している。正則化値(α)は、二つ以上のT2ピークを分解する能力において主要な役割を果たす。T2凝固アルゴリズムは、水分子の亜集団が自身を他の集団から識別し始めた場合の識別するための狭いピークを要する。表6に明示するα値の特定の範囲は、CONTINにこの亜集団識別を可能にする正則化重量を用いた解法を検索させる。
【表6】
【0277】
最小T2値は、典型的には1〜50msの範囲に設定する。これは、サンプル容器中のプラスチックから生じるCPMG時間定数を説明する。最小が1msより上に増加すると、ILTを行うCPMG曲線データを切断して逆転が認められない短時間定数を除外しなければならない。例えば、最小T2を40msに設定する場合、40msより前に収集したCPMGデータを、ILTを行う前に除去するだろう。
【0278】
最大T2値は、サンプル/アッセイの種類及び使用モードにより以下のように変化する。わずかなRBCを含有する多血小板及び乏血漿サンプルは、より大きな最大T2値を要する。PPP及びPRP最大T2値を2500〜3500msの範囲に設定する。RBC含有サンプルは、1000〜2000msの範囲の最大T2値を有するだろう。磁気粒子をサンプルに含めると、最大T2値を減少させることもできる。予測T2値が存在しない状況に関しては、最大T2値を2500〜4000msの範囲に設定して、新規のサンプルの種類を調査しながら潜在的T2値の最も広い範囲を認めることができる。ILTフィットはCPMG曲線全体を説明しようと試みるが、有限範囲のT2値にわたって説明するので、偽ピークがT2フィット境界で生じ得る。これを適応させるために、追加の0.5〜1秒を使用する最大T2値に添加する。上記範囲はこの追加の時間を含む。
【0279】
Tikhonov正則化法は、T2領域にわたる反転の平滑度を制御するパラメータ(α)を含む。小さすぎると、ピークは広くなり、化合物ピークを産生する可能性を有し、大きすぎると、ピークはより狭くなり、単一ピークをいくつかの近接配置されたピークに分割する可能性を有する。Tikhonovアルゴリズムの実行としてのCONTINは、これらの二つの極値間の妥協を求める正則化項を検索することができる。これは、約1.0e-10及び約4.0e0のアルファ値の範囲内で、コースアルファグリッド検索を用いないが、増加したファイングリッド検索(12反復)を用いてCONTINを実行することにより達成される。
【0280】
T2減衰定数電位表面の構築
いったん各ILTを行ったら、曲線{l
j(τ
κ):1<τ
κ<最大T2、κ=1、2、3、…、N、j=0、1、2、3、…、Sの集合はCPMG曲線フィットの元の集合を置換する。所与のCPMG曲線f
jについては、減衰定数τ
κはlj(τκ)を多指数関数分解に与えると推定される(式13参照):
【数8】
【0281】
(lj(τκ)は多くのκについて0であり得る)。非ゼロ減衰定数の変化及び上記時間にわたる分解へのその寄与はサンプルの変化に相当し、T2凝固アルゴリズムはこれらの値及びその変化を解釈してサンプルのレオロジー状態についての情報を得る又は対象の止血状態についての情報を得る。これらの特徴を抽出する前に、偽ピーク及び多峰ピークを分解する(以下に記載のように)。
【0282】
偽ピーク同定及び除去
一般に、所与のjについて、ILT振幅値l
j(τ
κ)を、値が非ゼロである小(<6)領域の周りのT2領域にクラスタ化する。理想的には、非ゼロ強度のこれらの島は単峰であり、反転を行ったT2値の範囲の境界から離れている。これは常に当てはまるわけではないので、l
j(τ
κ)を正確に解釈するよう注意しなければならない。
【0283】
lj(τ
κ)に適用する第1のフィルターは、T2値が、分析しているサンプルの種類に基づいて以前予測した値と一致しない非ゼロ値を除去するためのものである。これの例としては、サンプルを含有するプラスチックから生じるT2<50ms、サンプルが高濃度のタンパク質を有することが予想される場合のT2<100ms、及び本発明に使用する最大T2範囲又はその近くのT2が挙げられ、その存在はより大きい最大T2を使用してサンプルのCPMGデータを反転するべきであったことを示す。
【0284】
さらに、Tikhonov正則化法は、各l
j(τ
κ)を推定ながら、l
j(τ
κ)の標準誤差E(τ
κ)を計算する。l
j(τ
κ)がほぼ0である場合、l
j(τ
κ)<E(τ
κ)であることが一般的であり、これはほとんどの非ゼロ島の縁が、このような非ゼロ強度の集合の平均τ
κ近くの強いシグナルにもかかわらず曖昧であることを意味する。これらのl
j(τ
κ)は除去しない。あるいは、l
j(τ
κ)が極大であるτ
κでl
j(τ
κ)<E(τ
κ)である場合、非ゼロ島全体を信頼できないとみなし、0に設定する。
【実施例16】
【0285】
乾燥又は凍結試薬の使用
乾燥又は凍結試薬を本発明の方法に使用してもよい。以下の結果は、試薬を乾燥させること及び試薬を凍結することが、T2緩和により観察される凝固プロセスに識別可能な影響を及ぼさなかったことを示す。
【0286】
血小板活性化因子としての管乾燥コラーゲン
コラーゲンは、血小板の強力な活性化因子であり、細胞マトリックスから露出したコラーゲンの認識は血小板活性化についてのインビボシグナルの一つである。本発明者らは、マイクロチューブの底で乾燥させた小分割量のコラーゲンが全血とRBC-枯渇血漿の両方でT2MR血餅ピークを有効に産生することができることを示した。チューブを調製するために、2μg(1mg/ml溶液2μL)をマイクロチューブの底に堆積させ、チューブを37℃2〜5時間に置いた。このように調製したチューブを室温又は37℃で数週間保持することができる。T2MRサインを測定するために、クエン酸塩添加全血(又はRBC-枯渇血液)34μLを37℃でチューブに添加した。1分後、0.2M CaCl
2 2μLを添加し、サンプルを緩和測定及び分析のために磁石に置いた。
【0287】
血小板のADP活性化のための凍結ワンポット製剤
本発明者らは、ヘパリン添加を使用してトロンビン活性を制御し、それによってトロンビンを介して血小板活性化の変動を最小化するクエン酸塩添加全血中の血小板のADP活性のための標準的製剤を開発した。このような系の凝固は、カルシウム(クエン酸塩に打ち勝つため)及びレプチラーゼ/第XIIIa因子(トロンビンを置換するため)の組み合わせで開始される。ADPを介して血小板を活性化し、それゆえ、P2Y12 ADP受容体の状態をプロービングするのに有用な完全なワンポット活性化混合物は、ヘパリン、レプチラーゼ、第XIIIa因子、カルシウム及びADPを含有する。
【0288】
本発明者らは、このような混合物を、少量バッチで製造し、ADP誘導血小板活性測定のT2MR測定のための単一使用分割量で凍結(-20℃で)することができることを示した。この混合物の使用は、室温で適当な量の試薬を含有する作り置きマイクロチューブを解凍するステップと、クエン酸塩添加全血34μLを添加するステップと、混合するステップと、サンプルを緩和測定分析のためにリーダーに入れるステップとからなる。
【0289】
乾燥カオリンアッセイ
カオリン実行により、血清及び血餅シグナルの分解が可能になる。患者サンプルにわたり、これらの実行は、使用者のエラーからの絶対T2値の変動を示し得る。乾燥試薬の使用により、ピペット操作エラーが回避され、すべての湿潤試薬実験中に通常遭遇する試薬添加変動が低減する。さらに、乾燥試薬を使用することにより、より単純なアッセイプロトコルがもたらされ、ここでは血液を、追加のピペット操作ステップなしで乾燥試薬を含有するチューブに直接添加する。
【0290】
CaCl
2及びカオリンを含有する乾燥混合物を調製した。0.2M CaCl
2 24μL及びカオリン(Haemonetics)10.8μLを混合し、分割量を10本のPCR管に分配した(調製した混合物2.9μLを各管に)。各管の内容物を、管の蓋を開けた状態で、インキュベータ中37℃で2時間にわたって乾燥させた。各管に蓋をし、チューブを2〜25℃で保管した。乾燥CK試薬混合物を含む予熱PCR管に、予熱クエン酸塩添加全血36μLを添加した。試薬及び血液を、100μLピペット先端を用いて、ピペット操作で上下に動かすことにより3回穏やかに混合した。混合物に蓋をし、サンプルを緩和測定分析のためにT2リーダーに入れた。湿潤試薬も、対照としてクエン酸添加全血と混ぜ合わせた。
【実施例17】
【0291】
アスピリンの効果
この実験では、AA+RFによる活性化の前に600μMアスピリンをex vivoでヘパリン血液に添加することにより、血小板阻害をモニタリングした(サンプルを、アスピリンを用いて及び用いないで試験した)。血餅関連T2シグナルが、アスピリンをドープされたサンプルの存在下で劇的に減少又はなくなることが認められた。これらの試験により、血餅サインは血小板活性に依存することが確認された。これらの試験はまた、血小板阻害を測定するためのT2MRサインの有用性も示している。
【実施例18】
【0292】
2-チオメチルAMP(MeSAMP)の効果
この実験では、血小板活性のPlavix阻害についての模倣物としてex vivoで添加したMeSAMP(2-チオメチルAMP、不可逆ADP P2Y12受容体阻害因子)を使用することによる血小板のP2Y12経路の阻害を試験した。
【0293】
ヘパリン、レプチラーゼ、第XIIIa因子、カルシウム及びADPを含む標準ADP活性化製剤を使用して、健常ドナーから得たクエン酸塩添加全血中の血小板を活性化した。サンプルを血小板活性化阻害因子MeSAMPの存在及び非存在下で試験した。本発明者らは再び、血餅サインが血小板活性に依存することを認めた。血餅関連T2シグナルはMeSAMPをドープされたサンプルの存在下で劇的に減少又はなくなることが認められた。
【実施例19】
【0294】
組織プラスミノーゲン活性化因子の効果
T2MR表面はまた全血線溶にも感受性である。これを評価するために、健常ドナーサンプルに組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)を添加した。線溶をもたらす高い感度及び迅速な時間が証明された。
【0295】
TPAを100U/mLで健常ドナーの血液に添加した。TPAの非存在下で(
図27A参照)、二つの安定なピークが予想された凝固時間に生じる。100U/mLのTPAでは(
図27B参照)、血餅は予想された時間に形成するが、20〜30分後に不安定であることが判明する。不安定性と最終T2ピーク間の距離の両方は、TPAの存在により誘導される線溶への感度を示す。
【0296】
線溶へのT2MR効果を、T2時間曲線中の血餅シグナル(又はT2B)について観察された最大と最小T2値との間の差を計算することにより得られるAU値(任意単位;
図27C参照)で表現した。この差は、サンプル中の線溶度に感受性であることが分かった。
【0297】
線溶を、TPA(100U/mL)の添加を用いて及び用いないで五つの患者血液サンプルのT2磁気共鳴(T2MR)によりモニタリングした(
図27C)。一サンプル、27790は、TPAの添加なしで実質的な線溶を示した。他の全サンプルは、基準法により確認されるように、線溶を誘導するためにTPAを添加することを要した。
【0298】
他の実施形態
本明細書に言及する全ての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも各独立の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的且つ個別的に示されているのと同程度まで参照により本明細書に組み込まれる。
【0299】
本発明をその特定の実施形態に関して記載してきたが、さらなる修正が可能であり、本出願は、一般的に本発明の原理に従う本発明の任意の変形、使用又は適合を網羅することを意図されており、本発明が属する技術分野の中の既知の又は慣用的な慣習に入り、上記の必須の特徴に適用することができ、特許請求の範囲に従うような本開示からの逸脱を含んでいることが理解されるだろう。
【0300】
他の実施形態は、特許請求の範囲の範囲内である。
【0301】
関連出願の相互参照
本出願は、その全てがこれにより参照により組み込まれる、2011年7月13日出願の米国仮特許出願第61/507307号;2011年9月21出願の米国仮特許出願第61/537396号;2011年9月23日出願の米国仮特許出願第61/538257号;2011年11月17日出願の米国仮特許出願第61/560920号;2012年2月8日出願の米国仮特許出願第61/596445号;及び2012年4月18日出願の米国仮特許出願第61/625945号の利益を主張するものである。