(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の鱗片状のアルミニウム顔料とニトロセルロース系樹脂とを溶剤中に含むメタリック塗料は、薄い塗装膜厚にて用いた場合、その塗布膜の隠蔽力が低くなり下地の色が透けやすくなるので、予め下塗り塗料(ベースブラック)を塗装しておく必要があることを本発明者は見いだした。
また、このメタリック塗料には、カラーメタリック塗布膜層を形成するために、有色顔料が配合されることがある。しかしながら、粒子径の大きい(例えば、5μm)有色顔料を配合した塗料を薄い塗装膜厚(例えば、2〜3μm)にて塗装すると、塗装膜厚よりも大きい有色顔料の存在によって塗装膜の平滑性が損なわれ、色ブレ(安定した着色が出来ない)や乱反射が起こり、光輝感(金属感)が損なわれることを本発明者は見いだした。
更に、(1)このメタリック塗料に含まれるニトロセルロース系樹脂は、使用できる溶剤の選択の幅が狭く、使用できる溶剤(例えば、ブチルアセテート)には、溶解性の低さや、塗装膜の耐光性の低下(色差の低下(黄変)及び光沢保持率の低下)や、耐候性低下による塗布膜の外観低下を引き起こすという課題があること、及び、(2)前記の塗装膜の黄変は、塗膜の乾燥時(例えば、150℃での焼付塗装)にニトロセルロース系樹脂が黄変することで起こることを本発明者は見いだした。
【0006】
前述のプライマーレスメタリック塗料はセルロース系樹脂を含むものであるが、このセルロース系樹脂には、塗布膜を薄くした際に起こるクリヤー塗料に対するなじみ性の低下や、塗布膜の耐光性の低下を引き起こすといった課題があることを本発明者は見いだした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上述の課題を鋭意検討したところ、鱗片状の光輝性顔料と、所定の重量平均分子量及びガラス転移点(Tg)を有する樹脂と、溶剤とを組み合わせてなるメタリック塗料が下記の利点を有することを見いだした。
(1)従来の3C3B塗装方法で得られるメタリック塗布膜(以下、「塗膜」又は「塗装膜」ともいう)と同等の光輝感を維持しつつ、塗布膜表面のムラがなく、かつ、下地の隠蔽性が向上した塗布膜が得られること。
(2)前記(1)の塗布膜は下地の隠蔽性が向上しているので、下塗り塗料(ベースブラック)を塗装(C)して加熱乾燥(B)する工程を省略できること。
(3)前記メタリック塗料は、クリヤー塗料に対するセパレート性が良好であるため、メタリック塗料を加熱乾燥(B)することなく、その上にクリヤー塗料を塗装できること(ウエット・オン・ウエット塗装)。
(4)厚い塗装膜厚にて塗装した場合でも前記(1)の塗布膜を得られるため、粒子径の大きい有色顔料を更に配合しても塗布膜の平滑性が損なわれず、色ブレや乱反射が起こりにくいこと。
(5)ニトロセルロース系樹脂を含まないので、塗装膜の耐光性の低下が起こりにくいこと。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、下記[1]〜[12]に関するものである。
[1]メタリック塗料組成物であって、
鱗片状の光輝性顔料と、
重量平均分子量が40000〜60000であり、かつ、ガラス転移点(Tg)が−25〜40℃である樹脂と、
溶剤とを
含む、前記メタリック塗料組成物。
[2]鱗片状の光輝性顔料がアルミニウムフレーク顔料である、前記[1]に記載のメタリック塗料組成物。
[3]アルミニウムフレーク顔料の厚さが0.01〜0.5μmであり、
該アルミニウムフレーク顔料の粒子径(D50)が5〜20μmであり、かつ
該アルミニウムフレーク顔料の粒子径(D90)と粒子径(D10)との差が50μm以下である、前記[1]〜[2]のいずれか1項に記載のメタリック塗料組成物。
[4]樹脂の重量平均分子量が45000〜55000である、前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載のメタリック塗料組成物。
[5]樹脂のガラス転移点(Tg)が−10〜20℃である、前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載のメタリック塗料組成物。
[6]樹脂がラッカー型のポリウレタン樹脂である、前記[1]〜[5]のいずれか1項に記載のメタリック塗料組成物。
[7]更に有色顔料を含む、前記[1]〜[6]のいずれか1項に記載のメタリック塗料組成物。
[8]アルミニウム製の車両用ホイール用の塗料である、前記[1]〜[7]のいずれか1項に記載のメタリック塗料組成物。
[9]前記[1]〜[8]のいずれか1項に記載のメタリック塗料組成物を用いた基材の塗装方法であって、以下の工程:
(1)粉体プライマーが塗装された基材上に、メタリック塗料組成物を塗装する工程、及び、
(2)工程(1)で得られたメタリック塗料組成物の塗布膜の上に、クリヤー塗料を塗装して加熱乾燥(B)する工程
を含む、前記塗装方法。
[10]前記[1]〜[8]のいずれか1項に記載のメタリック塗料組成物の塗布膜。
[11]前記[1]〜[8]のいずれか1項に記載のメタリック塗料組成物の塗布膜を有する基材。
[12]前記[1]〜[8]のいずれか1項に記載のメタリック塗料組成物の塗布膜を有する基材を含む塗装体であって、
基材の上に粉体プライマーの塗布膜を有し、
該粉体プライマーの塗布膜の上に前記のメタリック塗料組成物の塗布膜を有し、
該メタリック塗料組成物の塗布膜の上にクリヤー塗料の塗布膜を最外層として有する、
ことを特徴とする、前記塗装体。
【発明の効果】
【0008】
後述する実施例で示されるように、本発明のメタリック塗料組成物は、下記の効果を奏することができる。
(1)従来の3C3B塗装方法で得られるメタリック塗布膜と同等の光輝感を維持しつつ、塗布膜表面のムラがなく、かつ、下地の隠蔽性が向上したメタリック塗布膜が得られること。
(2)下塗り塗料(ベースブラック)の塗装(C)及び加熱乾燥(B)工程と、メタリック塗料の加熱乾燥(B)工程を省略しても、前記(1)の塗布膜が得られる(2C1B方法)ので、塗装方法を簡素化し、更に塗装時間を短縮することができること。
(3)前記(1)の塗布膜を厚い塗装膜厚とした場合でも得られるため、粒子径の大きい有色顔料を更に配合しても塗布膜の平滑性が損なわれず、色ブレや乱反射がない光輝感(金属感)を持ったカラー金属調意匠が得られること。
(4)塗装膜の耐光性に優れること。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のメタリック塗料組成物は、
鱗片状の光輝性顔料と、
重量平均分子量が40000〜60000であり、かつ、ガラス転移点(Tg)が−25〜40℃である樹脂と、
溶剤とを含む。
【0010】
鱗片状の光輝性顔料
光輝性顔料とは、金属調の光沢を放つことができる顔料をいい、具体例としては金属製の顔料(例えばアルミニウム顔料)や、天然マイカから得られる顔料(例えば、パール顔料)や、ガラスフレーク顔料が挙げられ、好ましくはアルミニウム顔料及びパール顔料であり、より好ましくはアルミニウム顔料である。
鱗片状とは、鱗のような薄板状の形状をいう。本発明の光輝性顔料において、その平面形状は特に限定されず、円形、楕円形、角形や、不定型等であってよい。塗膜中で平行層状に配向し易い点で円形が好ましい。
鱗片状の光輝性顔料としては、塗料やインキの分野で使用されているものを特に制限なく用いることができる。
鱗片状のアルミニウム顔料としては、粉砕法や蒸着法により製造されたアルミニウムフレーク顔料を好適に使用できる。粉砕法により製造されたアルミニウムフレーク顔料が好ましい。
光輝性の観点からは、アルミニウムフレーク顔料の厚さは好ましくは0.01〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.3μmであり、同顔料の粒子径(D50)は好ましくは5〜20μmであり、より好ましくは7〜18μmである。また、粒子径(D50)と厚さとのアスペクト比(D50/厚さ)は10〜2000であることが好ましく、24〜1800であることがより好ましい。
また、アルミニウムフレーク顔料の粒度分布について、粒子径(D90)と粒子径(D10)との差がより小さいものが好ましく、D90とD10の粒子径の差が50μm以下、好ましくは45μm以下のものが好ましい。
なお、粒子径はレーザー回折や動的光散乱法により測定された値をいう。
【0011】
鱗片状の光輝性顔料は、市場において容易に入手可能であるが、公知の方法によっても調製可能である。
例えば、アルミニウムフレーク顔料としては、
商品名:Z485(東洋アルミニウム社製。粉砕法により製造されたアルミニウムフレーク顔料のペースト。厚さ:0.15μm。粒子径(D10):4.9μm。粒子径(D50):11.7μm。粒子径(D90):33.6μm。アスペクト比(D50/厚さ):78。D90とD10の差:28.7μm)や、
商品名:5680NS(東洋アルミニウム社製。粉砕法により製造されたアルミニウムフレーク顔料のペースト。厚さ:0.2μm。粒子径(D10):5μm。粒子径(D50):14.2μm。粒子径(D90):45.7μm。アスペクト比(D50/厚さ):71。D90とD10の差:40.7μm)や、
商品名:METALURE L−55350(エカルト社製。蒸着法により製造されたアルミニウムフレーク顔料のペースト。厚さ:0.05μm。粒子径(D10):5.7μm。粒子径(D50):12.7μm。粒子径(D90):20.7μm。アスペクト比(D50/厚さ):254。D90とD10の差:15μm)
等が挙げられる。
【0012】
鱗片状の光輝性顔料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
メタリック塗料組成物における鱗片状の光輝性顔料の含量は特に制限されないが、メタリック塗料組成物の総質量に対して、好ましくは1〜4質量%、より好ましくは2〜3質量%、特に好ましくは2.5〜3質量%である。1〜4質量%であると下地の色をより高く隠蔽することができる。
【0014】
樹脂
本発明のメタリック塗料組成物で使用する樹脂は、重量平均分子量が40000〜60000、好ましくは43000〜57000、より好ましくは45000〜55000である。
重量平均分子量が40000以上であると、塗料から溶剤が蒸発した際に塗布膜が高粘度となり流動性が低くなることで鱗片状の光輝性顔料が塗布膜中で配向しやすくなり、光輝感の高い金属調意匠を基材へ付与することができる。
重量平均分子量が60000以下であると、メタリック塗料組成物の粘度が過度に上昇すること抑制して、塗装作業性を良好に保つことができる(粘度が高すぎる場合、粘度低下のために塗料の希釈率を上げると、塗装膜厚の制御が難しくなることがある)。
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)において、標準物質としてポリスチレンを使用し、ポリスチレンと試料との相対比較により試料の分子量を決定する方法によって決定される値である。GPCによる重量平均分子量の測定は、例えば、以下の方法により行うことができる。
TSKgelカラム(東ソー(株)社製)を用い、RIを装備したGPC(東ソー(株)社製;HLC−8220GPC)により求める。GPCの条件として、展開溶媒にテトラヒドロフランを用い、流速0.35ml/分、温度40℃にて測定を行う。なお、TSK標準ポリスチレン(東ソー(株)社製)を標準物質として用いる。
【0015】
本発明のメタリック塗料組成物で使用する樹脂は、ガラス転移点(Tg)が−25〜40℃、好ましくは−10〜20℃、より好ましくは−5〜15℃である。
ガラス転移点が−25℃以上であると、メタリック塗料組成物から形成される塗布膜(メタリック層)の上にクリヤー塗料を塗布した際、クリヤー塗料に含まれる溶剤によるメタリック層の浸食(浸食は、鱗片状の光輝性顔料の配向性の乱れにつながる)が起こりにくい(換言すれば、クリヤー塗料に対するセパレート性が高い)ので、メタリック層の平滑性を保ち、光輝感を維持することができる。更に、クリヤー塗料に対するセパレート性の高さを利用して、メタリック塗料組成物を加熱乾燥することなく、クリヤー塗料を塗装することができる(ウエット・オン・ウエット塗装)。
ガラス転移点が40℃以下であると、メタリック塗料組成物から形成される塗布膜の耐衝撃性を良好に保つことができる。
ガラス転移点はJISK7121におけるプラスチックの転移温度測定方法により測定された値をいう。
【0016】
本発明では、上述の重量平均分子量とガラス転移点の条件を満たす限り、塗料やインキの分野で使用されている樹脂を特に制限なく用いることができる。
但し、従来技術のメタリック塗料に含まれるニトロセルロース系樹脂は、重量平均分子量が約30万であり、ガラス転移点(Tg)が約190℃であるので、本発明で使用する樹脂には該当しない。
また、本発明で使用する樹脂は、市場において容易に入手可能であるが、公知の方法によっても調製可能である。
樹脂の種類は、乾燥性と溶剤選択性と塗布膜性能とのバランスを考慮して選択できるが、乾燥速度の調整がしやすく、溶剤選択性が高く(多種の溶剤に溶解可能)、かつ、耐光性試験で塗布膜が黄変しにくい点から、ポリウレタン樹脂が好ましい。
ポリウレタン樹脂としては、塗装〜加熱乾燥の工程で分子量の変化がなく、溶剤の蒸発のみによって塗布膜を形成するラッカー型のポリウレタン樹脂が好ましい。
ラッカー型ウレタン樹脂としては、商品名:バーノック16−416(DIC社製。重量平均分子量:50677。ガラス転移点(Tg):0℃)等が挙げられる。特に、バーノック16−416は、メタリック塗料組成物の総質量に対する濃度が8質量%を超えると糸引きが発生するほど高粘度となり、鱗片状の光輝性顔料が塗布膜中でより配向しやすくなり、結果として光輝感のより高い金属調意匠を基材へ付与することができるので好ましい。
【0017】
上述の重量平均分子量とガラス転移点の条件を満たす樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
メタリック塗料組成物における樹脂の含量は特に制限されないが、メタリック塗料組成物の総質量に対して、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜25質量%、特に好ましくは3〜20質量%である。1〜30質量%であると下地の色をより隠蔽することができる。
【0019】
溶剤
本発明のメタリック塗料組成物で使用する溶剤としては、前述の「重量平均分子量が40000〜60000であり、かつ、ガラス転移点(Tg)が−25〜40℃である樹脂」に対する溶剤として機能できるものを特に制限なく用いることができる。
具体例としては、アセテート系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤や、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
溶剤は、乾燥性や樹脂の溶解性等を考慮して適宜選択することができる。例えば、前述のラッカー型ウレタン樹脂については、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールや酢酸ブチル等を好適に使用することができる。
【0020】
溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
溶剤は、市場において容易に入手可能であるが、公知の方法によっても調製可能である。
【0022】
メタリック塗料組成物における溶剤の含量は特に制限されないが、メタリック塗料組成物の総質量に対して、好ましくは65〜90質量%、より好ましくは70〜90質量%、特に好ましくは75〜90質量%である。65〜90質量%であると下地の色を隠蔽することができる。
【0023】
本発明のメタリック塗料組成物には、カラー(有色)メタリック塗布膜層を得るために、有色顔料(着色剤)を配合してもよい。有色顔料としては、塗料やインキの分野で使用されているもの(例えば、有機顔料や無機顔料)を特に制限なく用いることができる。本発明では、メタリック塗料組成物から形成される塗布膜の厚さを従来よりも厚くすることができるので、粒子径の大きい(例えば、5〜10μm)有色顔料も使用することができる。
【0024】
有色顔料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
有色顔料は、市場において容易に入手可能であるが、公知の方法によっても調製可能である。
【0026】
メタリック塗料組成物における有色顔料の含量は配合目的を達成できる限り特に制限されないが、メタリック塗料組成物の総質量に対して、好ましくは1〜4質量%、より好ましくは2〜3質量%、特に好ましくは2.5〜3質量%である。
【0027】
更に、本発明のメタリック塗料組成物には、鱗片状の光輝性顔料や有色顔料の分散性を向上させるために分散剤(沈降防止剤ともいう)を配合することができる。分散剤としては、塗料やインキの分野で使用されているものを特に制限なく用いることができる。
【0028】
メタリック塗料組成物における分散剤の含量は配合目的を達成できる限り特に制限されないが、メタリック塗料組成物の総質量に対して、好ましくは1〜4質量%、より好ましくは2〜3質量%、特に好ましくは2.5〜3質量%である。
【0029】
有色顔料の他、本発明のメタリック塗料組成物には、メタリック塗料組成物に一般的に用いられている種々の添加剤(例えば、沈降防止剤、タレ止め剤、粘性調節剤(増粘剤)、脱水剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、低汚染化剤や触媒等)を適宜配合することができる。
【0030】
メタリック塗料組成物の製造方法
本発明のメタリック塗料組成物の製造方法は特に限定されない。メタリック塗料組成物の公知の製造方法、例えば、各成分をディスパーにて混合することで製造することができる。
【0031】
メタリック塗料組成物の使用方法
本発明のメタリック塗料組成物は、光輝感のある金属調意匠を基材へ付与するための塗料として使用することができる。
本発明のメタリック塗料組成物から形成される塗布膜は下地の隠蔽性が向上しているので、従来のメタリック塗料の塗装方法(3C3B法)で行っていた下塗り塗料(ベースブラック)を塗装(C)して加熱乾燥(B)する工程を省略できる。更に本発明のメタリック塗料組成物は、クリヤー塗料に対するセパレート性が良好であるため、メタリック塗料を加熱乾燥(B)することなく、その上にクリヤー塗料を塗装できる。
したがって、本発明のメタリック塗料組成物を用いた塗装方法(以下、「本発明の塗装方法」ともいう)は、以下の工程:
(1)粉体プライマーが塗装された基材上に、メタリック塗料組成物を塗装(C)する工程、及び、
(2)工程(1)で得られたメタリック塗料組成物の塗布膜の上に、クリヤー塗料を塗装(C)して加熱乾燥(B)する工程
を含む、2コート1ベーク(2C1B)方法である。
【0032】
本発明の塗装方法を適用できる基材の種類は、メタリック塗料組成物に含まれる溶剤の影響を受けない限り特に制限はない。基材の具体例としては、金属(例えば、鉄やアルミニウム)が挙げられる。
また、基材から構成される物品の種類に特に制限はなく、具体例としては車両用ホイール等が挙げられる。本発明のメタリック塗料組成物は、アルミニウム製の車両用ホイールへ特に好適に用いることができる。
【0033】
本発明の塗装方法で使用する粉体プライマーは、メタリック塗料分野で一般的に用いられているものを特に制限なく用いることができる。具体例としては、商品名:V−PET#5200(大日本塗料株式会社製)等が挙げられる。
基材への粉体プライマーの塗装は、一般的な粉体プライマーの塗装方法を用いて行うことができる。
粉体プライマーの塗装膜厚は特に制限されるものではないが、例えば10〜150μm、好ましくは30〜120μm、より好ましくは50〜100μmである。
【0034】
粉体プライマーが塗装された基材上へのメタリック塗料組成物の塗装は、スプレー塗装やベル塗装など一般的なメタリック塗料の塗装方法を用いて行うことができる。
なお、本発明の塗装方法では、塗装したメタリック塗料組成物を加熱乾燥する工程(B)(焼付け工程)は原則として不要であるが、必要に応じ行ってもよい。
なお、上記の加熱乾燥工程(焼付け工程)とは別に、メタリック塗料組成物中の溶剤を蒸発させるための乾燥工程を行ってもよい。
メタリック塗料組成物の塗装膜厚は特に制限されるものではないが、例えば1〜20μm、好ましくは5〜15μm、より好ましくは9〜12μmである。
【0035】
本発明の塗装方法で使用するクリヤー塗料は、メタリック塗料分野で一般的に用いられているもの(例えば、溶剤系のクリヤー塗料)を特に制限なく用いることができる。具体例としては、自動車用のクリヤー塗料が挙げられる。
メタリック塗料組成物の塗布膜の上へのクリヤー塗料の塗装及び加熱乾燥は、一般的なクリヤー塗料の塗装及び加熱乾燥方法を用いて行うことができる。
クリヤー塗料の塗装膜厚は特に制限されるものではないが、例えば10〜40μm、好ましくは15〜30μm、より好ましくは20〜25μmである。
【0036】
本発明の塗装方法によって得られた物品(以下、「本発明の塗装体」ともいう)では、基材の上に粉体プライマーの塗布膜を有し、当該粉体プライマーの塗布膜の上に本発明のメタリック塗料組成物の塗布膜を有し、更に当該メタリック塗料組成物の塗布膜の上にクリヤー塗料の塗布膜を最外層として有している。
【0037】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
1.メタリック塗料組成物の調製
以下の成分を使用して、製造例1〜8のメタリック塗料組成物を調製した。
【0039】
[鱗片状の光輝性顔料]
商品名:Z485(東洋アルミニウム社製。粉砕法により製造されたアルミニウムフレーク顔料のペースト。厚さ:0.15μm。粒子径(D10):4.9μm。粒子径(D50):11.7μm。粒子径(D90):33.6μm。アスペクト比(D50/厚さ):78。D90とD10の差:28.7μm)
商品名:5680NS(東洋アルミニウム社製。粉砕法により製造されたアルミニウムフレーク顔料のペースト。厚さ:0.2μm。粒子径(D10):5μm。粒子径(D50):14.2μm。粒子径(D90):45.7μm。アスペクト比(D50/厚さ):71。D90とD10の差:40.7μm)
商品名:METALURE L−55350(エカルト社製。蒸着法により製造されたアルミニウムフレーク顔料のペースト。厚さ:0.05μm。粒子径(D10):5.7μm。粒子径(D50):12.7μm。粒子径(D90):20.7μm。アスペクト比(D50/厚さ):254。D90とD10の差:15μm)
【0040】
[有色顔料]
商品名:ラーベン5000(ビルラカーボン社製。黒色顔料(粒子径:10μm)
【0041】
[樹脂]
商品名:バーノック16−416(DIC社製。ラッカー型ウレタン樹脂。重量平均分子量:50677。ガラス転移点(Tg):0℃)
商品名:バーノック16−411(DIC社製。ラッカー型ウレタン樹脂。重量平均分子量:29796。ガラス転移点(Tg):20℃)。この樹脂は、重量平均分子量が本発明の樹脂の要件を満たしておらず、比較例として使用した。
商品名:バーノック18−472(DIC社製。ラッカー型ウレタン樹脂。重量平均分子量:39018。ガラス転移点(Tg):−41℃)。この樹脂は、ガラス転移点(Tg)が本発明の樹脂の要件を満たしておらず、比較例として使用した。
商品名:HIG120(旭化成ケミカルズ社製。工業用硝化綿(ニトロセルロース系樹脂)。重量平均分子量:303281。ガラス転移点(Tg):192℃。この樹脂は、重量平均分子量及びガラス転移点(Tg)が本発明の樹脂の要件を満たしておらず、比較例として使用した。
なお、上記樹脂のGPCによる重量平均分子量の測定は、以下の方法により行った。TSKgelカラム(東ソー(株)社製)を用い、RIを装備したGPC(東ソー(株)社製;HLC−8220GPC)により求めた。GPCの条件として、展開溶媒にテトラヒドロフランを用い、流速0.35ml/分、温度40℃にて測定を行った。TSK標準ポリスチレン(東ソー(株)社製)を標準物質として用いた。
【0042】
[溶剤]
メチルエチルケトン
イソプロピルアルコール
酢酸ブチル
トルエン
【0043】
[添加剤]
フローノン SP-1000(共栄社化学社製。沈降防止剤)
フローノン HR-4AF(共栄社化学社製。タレ止め剤)
UVA /HALS(永光化学社製。紫外線吸収剤/光安定剤)
【0044】
[メタリック塗料組成物の調製方法]
下記表1に記載の配合量の各成分をディスパーにて混合して、製造例1〜9のメタリック塗料組成物を調製した。表1中、各成分の配合量の数値は質量部を表す。
【0045】
2.メタリック塗料組成物の評価
[メタリック塗料組成物を用いた塗装方法]
アルミニウム板に粉体プライマーとして「V―PET#5200GRAY−2A」(大日本塗料社製)を膜厚が90μmとなるように静電塗装し、170℃で20分間焼き付けた。
その後、実施例1〜4と比較例1〜2については、得られたメタリック塗料組成物を乾燥膜厚が10μmとなるようにスプレー塗装(C)し、室温で10分間乾燥させて溶剤を蒸発させた後、クリヤー塗料として「T−639#C890」(大日本塗料社製)を乾燥膜厚が25μmとなるようにウエット・オン・ウエットでスプレー塗装した(C)。最後に、150℃で20分間焼き付けて(B)、メタリック塗料組成物が塗装された評価サンプルを得た。
また、比較例3〜4については、ベースブラックとして「T−646ブラックB10」(大日本塗料社製)を乾燥膜厚が20μmとなるようにスプレー塗装(C)し、150℃で20分間焼き付けた(B)。その後、得られたメタリック塗料組成物を乾燥膜厚が3μmとなるようにスプレー塗装(C)し、150℃で20分間焼き付けた後(B)、クリヤー塗料として「T−639#C890」(大日本塗料社製)を乾燥膜厚が25μmとなるようにスプレー塗装した(C)。最後に、150℃で20分間焼き付けて(B)、メタリック塗料組成物が塗装された評価サンプルを得た。
表2の「塗装工程」欄に各メタリック塗料組成物の塗装方法を記載する。表2中、「2C1B」は2コート1ベーク法を示し、「3C3B」は3コート3ベーク法を示す。
【0046】
[塗布膜の光輝感の評価]
評価サンプルの塗布膜表面を、多角度分光測色計(BYK社製BYK−mac)により測色し、フロップインデックスを算出した。
フロップインデックス =2.69×(L*15°-L*110°)
1.11/(L*45°)
0.86
フロップインデックスに基づき、光輝感を下記の基準により3段階評価した。
[評価基準]
○:フロップインデックスが22以上
△:フロップインデックスが19以上22未満
×:フロップインデックスが19未満
「○」及び「△」は、メタリック塗料に求められる光輝感を満たしていると判定した。したがって、実施例1〜4(2C1B)は、比較例3〜4(3C3B)と同等の光輝感を維持していた。ここで、比較例3〜4は、アルミニウム顔料とニトロセルロース系樹脂とを溶剤中に含む従来技術のメタリック塗料組成物に相当する。したがって、本発明のメタリック塗料組成物は、従来技術(3C3B法)よりも工程数が少ない2C1B法で、従来技術のメタリック塗装膜と同等の光輝感を維持していた。また、従来技術(3C3B法)よりも工程数が少ない2C1B法で本発明のメタリック塗料組成物が従来技術のメタリック塗装膜と同等の光輝感を維持していたことは、下地の隠蔽性が向上したことを意味する。
【0047】
[塗布膜表面のムラの評価]
評価サンプルの塗布膜表面のムラを、前述のフロップインデックスに基づき、下記の基準により2段階評価した。
[評価基準]
○:フロップインデックスが19以上
×:フロップインデックスが19未満
「○」は、塗布膜表面のムラが小さく、メタリック塗料に求められる金属感を有していると判定した。したがって、実施例1〜4は、メタリック塗料に求められる金属感を有していた。
【0048】
[耐光性]
JIS K5600−7−7に従い、光源としてキセノンアークランプを用いた促進耐光性試験で750MJのエネルギーを照射し、評価サンプルの光沢保持率と色差を測定し、以下の基準に従い2段階評価した。
なお、光沢保持率は促進耐候性試験を実施する前の光沢度を100%とした時の値、色差は促進耐候性試験を実施する前を基準とした。
光沢保持率(%)= 照射後の光沢度/照射前の光沢度×100
[評価基準]
○:光沢保持率≧85%かつ色差≦3
×:上記以外の結果
「○」は、メタリック塗料に求められる十分な耐光性を有していると判定した。したがって、実施例1〜4は、メタリック塗料に求められる耐光性を有していた。一方、色差の低下(黄変)をもたらすニトロセルロース系樹脂を含む比較例3〜4は、十分な耐光性を示さなかった。
【0049】
[色ブレ及び乱反射の評価]
有色顔料を配合した実施例4及び比較例4について評価を行った。
各評価サンプルを目視にて観察し、色ブレと乱反射の程度を以下の基準に従い2段階評価した。
[評価基準]
○:色ブレと乱反射がほとんど認められず、優れた塗膜外観を有する
×:色ブレと乱反射が認められ、塗膜外観が劣る
「○」は、色ブレや乱反射がなく、有色顔料を配合したメタリック塗料に求められる性能を有していると判定した。したがって、本発明のメタリック塗料組成物は、有色顔料を配合した場合でも、十分な性能を有していた。一方、比較例4では、色ブレや乱反射が生じた。
【0050】
[塗布膜の付着性の評価(碁盤目試験)]
JIS K5600 5.6に準じ、各評価サンプルの塗膜の表面にカッターで切り込みを入れて、2mm角の碁盤目を100マス作り、その上に粘着テープ(セロハンテープ)を貼り付けた後、強制的に剥離する試験を行い、下記の基準により3段階評価した。
[評価基準]
○:塗膜の剥離は全く認められない。
△:碁盤目の淵部分に剥離が見られる。
×:基材部分から塗膜の剥離が認められる。
実施例1〜4の塗布膜は、従来技術のメタリック塗料組成物の塗布膜(比較例3〜4)と同等の付着性を維持していた。