(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1回の成形加工を表面処理金属板に行うことで凸状の成形加工部を成形する工程と、前記成形加工部を成形した後にしごき加工用金型により前記成形加工部にしごき加工を行う工程とを含む成形材製造方法に用いられる表面処理金属板であって、
金属板の表面に設けられた表面処理層と、前記表面処理層の表面に設けられた潤滑皮膜とを有し、
前記表面処理層は、Zn−Al−Mg系合金めっき層であり、
前記潤滑皮膜は、樹脂塗装膜である
ことを特徴とする表面処理金属板。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態による成形材製造方法を示すフローチャートであり、
図2は
図1の成形工程S1で成形された成形加工部1を含む成形材を示す斜視図であり、
図3は
図1のしごき工程S2が行われた後の成形加工部1を含む成形材を示す斜視図である。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態の成形材製造方法は、成形工程S1としごき工程S2とを含んでいる。成形工程S1は、少なくとも1回の成形加工を表面処理金属板に行うことで凸状の成形加工部1(
図2参照)を成形する工程である。成形加工には、絞り加工や張り出し加工等のプレス加工が含まれる。表面処理金属板は、金属板の表面に設けられた表面処理層と、表面処理層の表面に設けられた潤滑皮膜とを有するものである。表面処理層には、塗膜やめっき層が含まれる。潤滑皮膜とは、例えば、ポリエチレン樹脂粉末及びポリエチレン樹脂粒子の粒子表面にフッ素樹脂の微粉末が結合したポリエチレン−フッ素樹脂粒子が潤滑剤として表面処理層の表面に複合分散した樹脂塗装膜である。本実施の形態では、表面処理金属板は、Zn(亜鉛)系めっきが鋼板の表面に施された後に、めっき層の表面に潤滑皮膜が形成されたZn系めっき鋼板であるとして説明する。
【0013】
図2に示すように、本実施の形態の成形加工部1は、Zn系めっき鋼板がキャップ体に成形された後に、そのキャップ体の頂部からさらに突出するように成形された凸部である。以下、成形加工部1の基部1bから頂部1aに向かう方向を押込方向1cと呼ぶ。この押込方向1cは、後述のしごき加工用金型のダイに設けられた押込穴(
図5参照)に成形加工部1が押し込まれる方向を意味する。
【0014】
しごき工程S2は、後述するしごき加工用金型により成形加工部1にしごき加工を行う工程である。しごき加工とは、しごき加工用金型のパンチとダイとの間のクリアランスをしごき加工前の成形加工部の板厚よりも狭くして、パンチ及びダイにより成形加工部の板面をしごき、パンチとダイとの間のクリアランスに成形加工部の板厚を一致させる加工方法である。すなわち、しごき加工後の成形加工部1の肉厚は、しごき加工前の成形加工部1の肉厚よりも薄くされている。
【0015】
図3に示すように、しごき加工が行われることで、成形加工部1の基部1bの外面を構成する曲面の曲率半径が小さくされている。このような成形工程S1及びしごき工程S2を経て製造された成形材、すなわち本実施の形態の成形材製造方法により製造された成形材は、様々な用途に用いることができるが、例えばモータケース等の成形加工部1の寸法精度が求められる用途に特に用いられる。
【0016】
次に、
図4は、
図2の成形加工部1の断面図である。
図4に示すように、しごき加工前の成形加工部1の板厚は押込方向1cに沿って非均一である。具体的には、押込方向1cに沿う成形加工部1の基部1b側の板厚は、成形加工部1の頂部1a側の板厚よりも厚い。換言すると、成形加工部1の板厚は、押込方向1cに沿う後端側(基部1b側)から先端側(頂部1a側)に向けて徐々に薄くなっている。このような非均一な板厚分布となるのは、成形工程S1にて成形加工部を成形する際に頂部1a側が基部1b側よりも大きく延ばされるためである。なお、板厚の減少率は、押込方向1cに沿って一定であるか又は非一定である。減少率とは、所定位置の板厚t
1と、その所定位置から単位距離dだけ先端側に進んだ位置における板厚t
2との差を単位距離dで除した値である(=(t
2−t
1)/d)。
【0017】
次に、
図5は
図1のしごき工程S2で用いられるしごき加工用金型2の断面図であり、
図6は
図5のしごき加工用金型2を用いて成形加工部に対してしごき加工を行っている状態の肩部211周辺を拡大して示す説明図である。
図5において、しごき加工用金型2は、パンチ20とダイ21とを備えている。パンチ20は、上述の成形加工部1の内部に挿入される凸状体である。パンチ20の外周面20aは、押込穴210への押込方向1cと平行に直線状に延在されている。
【0018】
ダイ21は、パンチ20とともに成形加工部1が押し込まれる押込穴210を有する部材である。押込穴210は、肩部211と内周面212とを有している。肩部211は、押込穴210の入口外縁に配置されており、所定の曲率半径を有する曲面により構成されている。内周面212は、肩部211のR止まり211aから押込方向1cに沿って延在された壁面である。肩部211のR止まり211aとは、肩部211を構成する曲面の押込穴210の奥側における終端を意味する。内周面212が押込方向1cに沿って延在されるとは、内周面212の延在方向に押込方向1cの成分が含まれることを意味する。後に詳しく説明するように、押込穴210の内周面212は、パンチ20の外周面20aと非平行に延在されている(平行に延在されていない)。
【0019】
パンチ20とともに成形加工部1が押込穴210に押し込まれると、
図6に示すように成形加工部1の板面が肩部211でしごかれる。また、成形加工部1の外面は、パンチ20及びダイ21の相対的な変位により内周面212上を摺動される。本実施の形態のしごき加工用金型2では、上述のように内周面212がパンチ20の外周面20aと非平行に延在されているので、内周面212も成形加工部1の板面をしごく(減肉する)。
【0020】
内周面212は、成形加工部1のしごき量が押込方向1cに沿って一定となるようにしごき加工前の成形加工部1の押込方向1cに沿う非均一な板厚分布に応じたクリアランス212aをパンチ20の外周面20aとの間に有するように設けられている。ここでいうクリアランス212aとは、
図5に示すようにしごき加工が終了される位置までパンチ20が押込穴210内に押し込まれた際の内周面212と外周面20aとの間のクリアランスである。しごき量とは、しごき加工前の板厚t
bとしごき加工後の板厚t
aとの差である(=t
b−t
a)。
【0021】
換言すると、内周面212は、押込方向1cに沿う各位置における外周面20aとのクリアランス212aが、同位置におけるしごき加工前の成形加工部1の板厚から一定値(必要とされるしごき量)を減じた値となるように設けられている。押込方向1cに沿う各位置におけるクリアランス212aをC(d)とし、同位置におけるしごき加工前の成形加工部1の板厚をT
b(d)とし、必要とされるしごき量をAとした場合、内周面212は、C(d)=T
b(d)−Aを満たすように設けられる。なお、dは、押込方向1cに沿う成形加工部1の基部1bからの距離を意味している。
【0022】
さらに換言すると、内周面212は、しごき加工前の押込方向1cに沿う成形加工部1の板厚の減少率と同じ割合で、内周面212と外周面20aとのクリアランス212aが押込方向1cに沿って減少するように設けられている。仮に、押込方向1cに沿うしごき加工前の成形加工部1の板厚の減少率が一定である場合、内周面212は、成形加工部1の板厚の減少率に応じた角度で延在された直線状のテーパ面により構成される。一方で、押込方向1cに沿うしごき加工前の成形加工部1の板厚の減少率が非一定である場合、成形加工部1の板厚の減少率を一定値に近似して、その近似値に応じた角度で延在されるように内周面212をテーパ面で構成する。
【0023】
このように内周面212が構成されることで、押込方向1cに沿う成形加工部1の板厚分布が非均一であっても、しごき加工による成形加工部1の表面への負荷を押込方向1cに沿って均一とすることができる。これにより、一部の表面に大きな負荷が生じることを回避でき、粉状の滓(めっき滓等)の発生量を低減できる。
【0024】
次に、
図7を参照して肩部211でのしごきによりめっき滓が発生するメカニズムを説明する。
図7は、
図6の肩部211とZn系めっき鋼板のめっき層10との関係を概念的に示す説明図である。
図7に示すように、Zn系めっき鋼板のめっき層10の表面には微細な凹凸10aが存在する。潤滑皮膜がない状態では、この凹凸10aは、
図6で示したように肩部211によって成形加工部1の板面がしごかれる際に肩部211によって削られて、めっき滓となるおそれがある。
【0025】
めっき滓の発生量は、肩部211の曲率半径r及びZn系めっき鋼板の板厚tの比r/tと相関を有する。肩部211の曲率半径rが小さいほど、局所的なひずみが増してめっき層10の表面と肩部211との摺動抵抗が増大するので、めっき滓の発生量が増大する。また、Zn系めっき鋼板の板厚tが大きいほど、肩部211による減肉量が大きくなりZn系めっき鋼板表面にかかる負荷が増大するので、めっき滓の発生量が増大する。すなわち、比r/tが小さいほどめっき滓の発生量が増大し、比r/tが大きいほどめっき滓の発生量が減少する。一方で、めっき表面に潤滑皮膜が被覆されている状態では、めっき層10の表面と肩部211との摺動抵抗が低減されるので、めっき滓の発生する比r/tは潤滑皮膜がない状態よりも小さい値を示すこととなる。
【0026】
特に、しごき加工が終了する際にR止まり211aとパンチ20との間に挟まれる位置におけるしごき加工前の成形加工部1の板面が、肩部211によって最も減肉される。このため、めっき滓の発生量を抑える観点から見ると、めっき滓の発生量は、肩部211の曲率半径rと、しごき加工が終了する際にR止まり211aとパンチ20との間に挟まれる位置におけるしごき加工前の成形加工部1の板厚t
reとの比r/t
reと強い相関を有する。
【0027】
また、めっき滓の発生量は、肩部211によるしごき率とも相関を有する。しごき率は、R止まり211aとパンチ20との間のクリアランスをc
reとし、しごき加工が終了する際にR止まり211aとパンチ20との間に挟まれる位置におけるしごき加工前の成形加工部1の板厚をt
reとした場合に、{(t
re−c
re)/t
re}×100で表わされる。クリアランスc
reは、R止まり211aとパンチ20との間に挟まれる位置におけるしごき加工後の成形加工部1の板厚に相当する。しごき率が大きいほど、Zn系めっき鋼板表面にかかる負荷が大きくなり、めっき滓の発生量が増大する。
【0028】
次に、
図8は、各種のめっき層における
図6のめっき層10のスキューネスRskを示すグラフである。めっき滓の発生量は、めっき層10のスキューネスRskとも相関を有する。スキューネスRskとは、日本工業規格B0601で規定されているものであり、下記の式によって表わされるものである。
【数1】
【0029】
スキューネスRskは、めっき層10の凹凸10a(
図7参照)における凸部の存在確率を表わしている。スキューネスRskが小さいほど、凸部が少なく、めっき滓の発生量が抑えられる。なお、スキューネスRskについては、本出願人による特開2006−193776号公報でも説明されている。
【0030】
図8に示すように、Zn系めっき鋼板の種類としては、Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板及び電気亜鉛めっき鋼板が挙げられる。Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板は、代表的にはZnと6質量%のAl(アルミニウム)と3質量%のMg(マグネシウム)とを含む合金からなるめっき層を鋼板表面に施したものである。本出願人がそれぞれのスキューネスRskを調査したところ、
図8に示すように、Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板のスキューネスRskは−0.6未満かつ−1.3以上の範囲に含まれ、その他のめっき鋼板は−0.6以上かつ0以下の範囲に含まれることが分った。
【0031】
次に、実施例を挙げる。本発明者らは、しごき率とr/t
reとをそれぞれ変更するように下記の条件にてZn−Al−Mg系合金めっき鋼板のしごき加工を行った。Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板としては、潤滑被膜を有しないもの(比較例)、及び潤滑被膜を有するもの(発明例)の両方を用いた。なお、Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板の板厚は1.8mmで、そのめっき付着量は90g/m
2である。
【0033】
図9は、潤滑皮膜を有しないZn−Al−Mg系合金めっき鋼板におけるしごき率YとX(=r/t
re)との関係を示すグラフである。
図9の縦軸は{(t
re−c
re)/t
re}×100で表わされるしごき率であり、横軸はr/t
reで表わされる肩部211の曲率半径rとしごき加工が終了する際にR止まり211aとパンチ20との間に挟まれる位置におけるしごき加工前の成形加工部1の板厚t
reとの比である。○はめっき滓の発生を抑えることができたという評価を示し、×はめっき滓の発生を抑えることができなかったという評価を示している。また、●は寸法精度が所定範囲から外れたことを示している。
【0034】
図9に示すように、Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板の場合、すなわち、スキューネスRskが−0.6未満かつ−1.3以上の材料の場合、しごき率をYとしr/t
reをXとしてY=14.6X−4.7で表わされる直線の下方の領域でめっき滓の発生を抑えることができることが確認された。すなわち、スキューネスRskが−0.6未満かつ−1.3以上の材料の場合、0<Y≦14.6X−4.7を満たすように、肩部211の曲率半径r及びR止まり211aとパンチ20との間のクリアランスc
reを決定することで、めっき滓の発生を抑えることができることが確認された。なお、上記の条件式において、0<Yと規定しているのは、しごき率Yが0%以下の場合にはしごき加工にならないためである。
【0035】
次に、
図10は、厚さが0.5μm以上かつ1.2μm以下の潤滑皮膜を有するZn−Al−Mg系合金めっき鋼板におけるしごき率YとX(=r/t
re)との関係を示すグラフである。
図10に示すように、厚さが0.5μm以上かつ1.2μm以下の潤滑皮膜を有するZn−Al−Mg系合金めっき鋼板の場合、しごき率をYとしr/t
reをXとしてY=14.8X+3.5で表わされる直線の下方の領域でめっき滓の発生を抑えることができることが確認された。すなわち、Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板の表面に潤滑皮膜を形成することで、潤滑皮膜を形成しない場合よりも広い範囲でめっき滓の発生を抑えることができることが確認された。
【0036】
次に、
図11は、厚さが2.2μmの潤滑皮膜を有するZn−Al−Mg系合金めっき鋼板におけるしごき率YとX(=r/t
re)との関係を示すグラフである。
図11に示すように、厚さが2.2μmの潤滑皮膜を有するZn−Al−Mg系合金めっき鋼板の場合、しごき率をYとしr/t
reをXとしてY=6.0X−3.2で表わされる直線の下方の領域でめっき滓の発生を抑えることができることが確認された。すなわち、潤滑皮膜の厚さが2.2μmになると、滓の発生を抑えることができる加工範囲が、潤滑皮膜を有しない場合よりも狭くなることが確認された。これは、潤滑皮膜の厚みが増したことにより、潤滑皮膜自体が滓の原因になったためと考えられる。
【0037】
次に、
図12は、厚さが1.8μmの潤滑皮膜を有するZn−Al−Mg系合金めっき鋼板におけるしごき率YとX(=r/t
re)との関係を示すグラフである。
図12に示すように、厚さが1.8μmの潤滑皮膜を有するZn−Al−Mg系合金めっき鋼板の場合、しごき率をYとしr/t
reをXとしてY=14.5X−4.6で表わされる直線の下方の領域でめっき滓の発生を抑えることができることが確認された。すなわち、潤滑皮膜の厚さを1.8μmまで薄くすると、潤滑皮膜を有しない場合と同程度の範囲でめっき滓の発生を抑えることができることが確認された。
【0038】
次に、
図13は、厚さが0.2μmの潤滑皮膜を有するZn−Al−Mg系合金めっき鋼板におけるしごき率YとX(=r/t
re)との関係を示すグラフである。
図13に示すように、厚さが0.2μmの潤滑皮膜を有するZn−Al−Mg系合金めっき鋼板の場合、しごき率をYとしr/t
reをXとしてY=15.0X−3.8で表わされる直線の下方の領域でめっき滓の発生を抑えることができることが確認された。すなわち、潤滑皮膜の厚さが0.2μmでは、潤滑皮膜を有しない場合(
図9)と同程度の範囲でめっき滓の発生を抑えることができる。すなわち、潤滑皮膜の厚さが0.2μmより厚く、1.8μm未満の場合に、潤滑皮膜を有しない場合よりもめっき滓の発生を抑えることができることが確認された。
【0039】
図10〜
図13で示した結果から、潤滑皮膜の厚さを0.2μmより厚くかつ1.8μm未満とすることで、潤滑皮膜が設けられていない状態と比較して、より確実により広い加工条件で粉状の滓の発生量を低減できることが確認された。また、潤滑皮膜の厚さを0.5μm以上かつ1.2μm以下とすることで、さらに確実により広い加工条件で粉状の滓の発生量を低減できることが確認された。
【0040】
次に、
図14は、
図8の合金化溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板及び電気亜鉛めっき鋼板に厚さが0.5μm以上かつ1.2μm以下の潤滑皮膜を設けた場合におけるしごき率YとX(=r/t
re)との関係を示すグラフである。本発明者らは、下記の条件にて合金化溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板及び電気亜鉛めっき鋼板についても同様の実験を行った。なお、プレス機等の実験条件(表3参照)については、上述のZn−Al−Mg系合金めっき鋼板のしごき加工と同様である。また、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板は、板厚が1.8mmで、めっき付着量を90g/m
2とした。電気亜鉛めっき鋼板については、板厚1.8mmで、めっき付着量を20g/m
2とした。
【0042】
図14に示すように、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板及び電気亜鉛めっき鋼板に厚さが0.5μm以上かつ1.2μm以下の潤滑皮膜を設けた場合、すなわち、スキューネスRskが−0.6以上かつ0以下の材料の場合、しごき率をYとしr/t
reをXとしてY=16.7X−5.4で表わされる直線の下方の領域でめっき滓の発生を抑えることができることが確認された。すなわち、スキューネスRskが−0.6以上かつ0以下の材料に厚さが0.5μm以上かつ1.2μm以下の潤滑皮膜を設けた場合、0<Y≦16.7X−5.4を満たすように、肩部211の曲率半径r及びR止まり211aとパンチ20との間のクリアランスc
reを決定することで、めっき滓の発生を抑えることができることが確認された。
【0043】
このようなしごき加工用金型2及び成形材製造方法では、内周面212は、成形加工部1のしごき量が押込方向1cに沿って一定となるようにしごき加工前の成形加工部1の押込方向1cに沿う非均一な板厚分布に応じたクリアランス212aをパンチ20の外周面20aとの間に有するように設けられているので、一部の表面に大きな負荷が生じることを回避でき、粉状の滓の発生量を低減できる。粉状の滓の発生量を低減することで、しごき加工後の成形加工部1の表面に微小なくぼみ部(打痕)が形成されたり、その成形材を用いた製品性能が劣化されたり、さらに粉状の滓の除去作業が発生したりする問題を解消できる。この構成は、Zn系めっき鋼板のしごき加工を行う際に特に有効である。特に、表面処理金属板が、金属板の表面に設けられた表面処理層と、表面処理層の表面に設けられた潤滑皮膜とを有しているので、より広い加工条件で粉状の滓の発生量を低減できる。
【0044】
また、潤滑皮膜の厚さが0.2μmより厚くかつ1.8μm未満であるので、より確実により広い加工条件で粉状の滓の発生量を低減できる。
【0045】
さらに、潤滑皮膜の厚さが0.5μm以上かつ1.2μm以下であるので、さらに確実により広い加工条件で粉状の滓の発生量を低減できる