(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
負荷との間における電力の需要及び供給がバランスするように負荷周波数制御が行われ、前記負荷に電力を供給する第1発電装置と、再生可能エネルギーを用いて前記負荷に電力を供給する第2発電装置と、前記第2発電装置の発電電力を充電する蓄電池と、が接続される電力系統において、前記蓄電池の充放電を制御する需給制御装置であって、
前記第1発電装置の出力値が最低目標値まで下降していない場合、前記蓄電池の充電レベルが第1充電レベル以上であるか否かを判定する判定部と、
前記第1発電装置の出力値が最低目標値まで下降しておらず、前記蓄電池の充電レベルが前記第1充電レベル以上である場合、前記第1発電装置及び前記蓄電池の少なくとも一方を用いて負荷周波数制御を行いながら、予め、前記蓄電池を放電させる制御を行い、前記第1発電装置の出力値が最低目標値に達した場合、前記第1発電装置の出力値が最低目標値を下回らないように、前記第2発電装置の出力を前記蓄電池に充電させる制御を行う第1制御部と、
を備えたことを特徴とする需給制御装置。
複数の前記第1発電装置のうち前記電力系統に並列されている前記第1発電装置の各定格出力値と、前記第1発電装置が起動されて前記電力系統に並列されるまで前記負荷に電力を連続して供給可能な前記蓄電池の出力値と、の第1加算値が、前記負荷の総需要に対して不足している場合、前記複数の第1発電装置のうち前記電力系統から解列されている所定の第1発電装置を並列させる第2制御部と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の需給制御装置。
複数の前記第1発電装置のうち前記電力系統に並列されている前記第1発電装置の各定格出力値と、前記第1発電装置が起動されて前記電力系統に並列されるまで前記負荷に電力を連続して供給可能な前記蓄電池の出力値と、の第1加算値が、前記負荷の総需要に対して不足している場合に、前記第1発電装置の並列を抑制するように、前記第1充電レベルは前記第1充電レベルより大きい第2充電レベルに変更させる第2制御部と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の需給制御装置。
負荷との間における電力の需要及び供給がバランスするように負荷周波数制御が行われ、前記負荷に電力を供給する第1発電装置と、再生可能エネルギーを用いて前記負荷に電力を供給する第2発電装置と、前記第2発電装置の発電電力を充電する蓄電池と、が接続される電力系統において、前記蓄電池の充放電を制御する需給制御方法であって、
前記第1発電装置の出力値が最低目標値まで下降していない場合、前記蓄電池の充電レベルが第1充電レベル以上であるか否かを判定し、
前記第1発電装置の出力値が最低目標値まで下降しておらず、前記蓄電池の充電レベルが前記第1充電レベル以上である場合、前記第1発電装置及び前記蓄電池の少なくとも一方を用いて負荷周波数制御を行いながら、予め、前記蓄電池を放電させる制御を行い、前記第1発電装置の出力値が最低目標値に達した場合、前記第1発電装置の出力値が最低目標値を下回らないように、前記第2発電装置の出力を前記蓄電池に充電させる制御を行う
ことを特徴とする需給制御方法。
複数の前記第1発電装置のうち前記電力系統に並列されている前記第1発電装置の各定格出力値と、前記第1発電装置が起動されて前記電力系統に並列されるまで前記負荷に電力を連続して供給可能な前記蓄電池の出力値と、の第1加算値が、前記負荷の総需要に対して不足している場合、前記複数の第1発電装置のうち前記電力系統から解列されている所定の第1発電装置を並列させる
ことを特徴とする請求項6に記載の需給制御方法。
複数の前記第1発電装置のうち前記電力系統に並列されている前記第1発電装置の各定格出力値と、前記第1発電装置が起動されて前記電力系統に並列されるまで前記負荷に電力を連続して供給可能な前記蓄電池の出力値と、の第1加算値が、前記負荷の総需要に対して不足している場合に、前記第1発電装置の並列を抑制するように、前記第1充電レベルは前記第1充電レベルより大きい第2充電レベルに変更させる
ことを特徴とする請求項6に記載の需給制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
===電力系統===
以下、
図1乃至
図3を参照して、本実施形態に係る需給制御装置によって制御される電力系統について説明する。尚、
図1の電力系統は例えば離島等の僻地に設けられることとする。
【0013】
電力系統1は、複数の内燃力発電装置2(2−1〜2−n)、複数の再生可能エネルギー発電装置3(3−1〜3−n)、蓄電池4、複数の負荷5(5−1〜5−n)が電力線6に接続されて構成されている。
【0014】
内燃力発電装置2は、燃料の燃焼で放出される化学エネルギーで内燃機関を回して火力発電を行う装置であり、例えばディーゼルエンジンを用いる圧縮着火機関を用いて構成されている。内燃力発電装置2は、比較的短時間で起動可能な特長を有しているため、離島における小規模火力発電所に設置されて効率的に稼働される。内燃力発電装置2は、同一の定格出力を有するn個の装置から構成されることとし、後述する需給制御装置7からの制御指令に従って、電力線6に対して選択的に並列又は解列される。そして、並列された内燃力発電装置2は、需給制御装置7からの制御指令に従って、起動又は停止するとともに、負荷5との間における電力の需要及び供給がバランスするように負荷周波数制御(LFC:Load Frequency Control)を行う。尚、以下の説明において、内燃力発電装置2のことをDGと称することもある。
【0015】
再生可能エネルギー発電装置3は、太陽光、風力、波力、潮力、地熱、バイオマス等の自然エネルギーを用いて発電を行う装置である。ここで、複数の再生可能エネルギー発電装置3は、夫々、同一の自然エネルギーを用いる発電装置であってもよいし、異なる自然エネルギーを用いる発電装置であってもよいこととする。
【0016】
蓄電池4は、例えばナトリウム・硫黄電池(NAS電池:登録商標)で構成され、再生可能エネルギー発電装置3の余剰電力を充電可能な容量を有している。尚、ナトリウム・硫黄電池は、負極にナトリウム(Na)、正極に硫黄(S)、両電極を隔てる電解質にβアルミナ個体電解質を用いて、硫黄及びナトリウムイオンの化学反応で充放電を繰り返す蓄電池である。蓄電池4は、需給制御装置7からの制御指令に従って、再生可能エネルギー発電装置3の余剰電力を充電したり、電力系統1の需給計画に沿って充電電力を負荷5に放電したりする。
【0017】
負荷5は、個人宅、公共施設、工場等の需要家において電力を消費する電力機器である。負荷5には、状況に応じて、内燃力発電装置2、再生可能エネルギー発電装置3、蓄電池4の何れかから電力が供給される。
【0018】
需給制御装置7は、電力線6に対する内燃力発電装置2の並列及び解列と、内燃力発電装置2の起動及び停止と、蓄電池4の充放電と、電力系統1の潮流と、を制御する。需給制御装置7は、例えば、小規模火力発電所内に内燃力発電装置2とともに設けられている。
【0019】
需給制御装置7は、上記の制御を行うために、内燃力発電装置2の並列台数N、内燃力発電装置2の発電出力DG、再生可能エネルギー発電装置3の発電出力RE、蓄電池4の出力S(充電時を正、放電時を負とする)、蓄電池4の充電レベルSOC、負荷5の総需要L、電力系統1の周波数Fを示す情報が入力される。需給制御装置7は、上記の情報が入力されると、内燃力発電装置2に対する並列及び解列の指令C、内燃力発電装置2に対する起動及び停止の指令D、蓄電池4に対する充放電の指令Eを出力する。
【0020】
需給制御装置7は、入力部7A、記憶部7B、制御部7C、出力部7Dを含んで構成される。入力部7Aには、内燃力発電装置2の並列台数N及び発電出力DG、再生可能エネルギー発電装置3の発電出力RE、蓄電池4の出力S及び充電レベルSOC、負荷5の総需要L、電力系統1の周波数Fを示す情報が入力される。記憶部7Bには、上記の情報から指令C乃至Eを生成するためのプログラムデータ、指令C乃至Eを生成する際に必要になるテーブルデータ等が記憶されている。制御部7Cは、記憶部7Bから読み出されるプログラムデータ及びテーブルデータに基づいて、入力部7Aから得られる上記の情報に演算を施して指令C乃至Eを生成する。出力部7Dは、制御部7Cから得られる指令C乃至Eを出力する。指令C乃至Eは、内燃力発電装置2及び蓄電池4の制御に際して例えば小規模火力発電所から通信線を介して送信される。
【0021】
ここで、蓄電池4を含む電力系統1の需給バランスについて説明する。
【0022】
時刻tにおける負荷5の総需要Lは、式(1)で表わされる。
【0024】
また、電力系統1の需給アンバランス量ARは、式(2)で表わされる。
【0026】
(但し、−Kは定数,ΔFは時刻tにおける電力系統1の周波数偏差を表す。)
また、時刻t+1における蓄電池4の出力Sを、式(3)で表わされる値とすることで受給バランスが満足される。
【0028】
そして、式(2)を式(1)に代入することにより、内燃力発電装置2の総発電出力、再生可能エネルギー発電装置3の総発電出力、負荷5の総需要、需給アンバランス量、蓄電池4の出力Sから負荷Lが求められる。つまり、式(3)において、蓄電池4の出力S
t+1は、時刻tにおける右辺の値の結果から定まる、所謂時刻tの後の時刻t+1における値と言うことができる。
===需給制御装置の動作===
<<全体制御動作>>
図4を参照して、需給制御装置7の全体制御動作について説明する。尚、
図4の動作の制御を行う主体は制御部7Cである。
【0029】
先ず、内燃力発電装置2及び再生可能エネルギー発電装置3の総発電電力が負荷5の総需要を上回ったとしても、負荷周波数制御を行っている内燃力発電装置2の発電出力が最低目標値を下回らないような制御が行われるように、蓄電池4は可能な限り放電された状態であることが望ましい。そこで、需給制御装置7は、内燃力発電装置2の発電出力が最低目標値まで下降していない状態において、蓄電池4の充電レベルSOCが第1充電レベルT
1以上である場合、内燃力発電装置2及び蓄電池4の少なくとも一方を用いて負荷周波数制御を行いながら、蓄電池4を放電させる制御を行う。一方、複数の内燃力発電装置2のうち何れの内燃力発電装置2が何れのタイミングで電力系統1に対して並列又は解列されるかは、該当日における再生可能エネルギー発電装置3の発電出力の予測値及び負荷5の需要の予測値に基づいて所定の計算式から求められる。例えば、計算結果に従って、何れかの内燃力発電装置2が何れかの時刻に電力系統1に並列されて短時間起動される必要があると見込まれる場合、燃費等の経済性の観点から、この内燃力発電装置2を電力系統1に並列しないで蓄電池4から負荷5に電力を供給することが望ましい。そこで、需給制御装置7は、内燃力発電装置2の発電出力が最低目標値まで下降していない状態において、蓄電池4の充電レベルSOCが第2充電レベルT
1+α(>第1充電レベルT
1)以上である場合、内燃力発電装置2及び蓄電池4の少なくとも一方を用いて負荷周波数制御を行いながら、蓄電池4を放電させる制御を行う(S101)。ステップS101の詳細に関しては後述する。
【0030】
次に、需給制御装置7は、再生可能エネルギー発電装置3の発電出力の変動に応じて、内燃力発電装置2の並列及び解列を制御し、また、既に並列されている内燃力発電装置2の起動及び停止も制御する(S102)。
【0031】
需給制御装置7は、例えば、再生可能エネルギー発電装置3の発電出力が低下した結果、その時点において運転中の内燃力発電装置2の発電出力(定格出力)と再生可能エネルギー発電装置3の発電出力とを合わせても、負荷5に対する電力の供給量が不足する場合、負荷5に対する電力の供給量不足が解消されるように、解列されている内燃力発電装置2のうち何れかの内燃力発電装置2を電力系統1に並列して起動する。一方、需給制御装置7は、例えば、再生可能エネルギー発電装置3の発電出力が上昇した結果、その時点において運転中の内燃力発電装置2の発電出力(最低出力)と再生可能エネルギー発電装置3の発電出力とを合わせると、負荷5に対する電力の供給量が余剰になる場合、再生可能エネルギー発電装置3の発電出力が余剰でなくなるように、並列されている内燃力発電装置2のうち何れかの内燃力発電装置2を電力系統1から解列する。一般に、内燃力発電装置2は燃料を燃焼させる火力発電装置であることから、内燃力発電装置2の起動及び停止が頻繁に行われると、燃費が悪くなって好ましくない。そこで、需給制御装置7は、再生可能エネルギー発電装置3の発電出力の変動に応じて、電力系統1に対する内燃力発電装置2の並列台数を制御している。従って、内燃力発電装置2が電力系統1に常時並列された状態ではなくなるため、再生可能エネルギー発電装置3の発電出力が変動したとしても、内燃力発電装置2における起動直後の停止や停止直後の起動が頻繁に行われなくなり、経済的メリットを得ることができる。ステップS102の詳細に関しては後述する。
【0032】
次に、需給制御装置7は、電力系統1に並列されている内燃力発電装置2の台数が予め定められた最低台数又は解列不可台数の何れか一方であるか否かを判定する(S103)。尚、内燃力発電装置2の解列不可台数とは、ステップS102において需給制御装置7が解列不可能であると判定したときの電力系統1に並列されている内燃力発電装置2の台数のことである。具体的には、内燃力発電装置2の解列不可台数とは、再生可能エネルギー発電装置3の発電出力が零になったとき、負荷5に対して電力を不足なく供給できる最低台数のことである。電力系統1に並列されている内燃力発電装置2の台数が予め定められた最低台数又は解列不可台数の何れでもない場合(S103:NO)、需給制御装置7はステップS101からの動作を繰り返す。
【0033】
次に、電力系統1に並列されている内燃力発電装置2の台数が予め定められた最低台数又は解列不可台数の何れか一方である場合(S103:YES)、需給制御装置7は、電力系統1に並列されている内燃力発電装置2の発電電力の出力値が最低目標値に達したか否かを判定する(S104)。尚、内燃力発電装置2の最低目標値とは、内燃力発電装置2が負荷5に対して電力を供給し得る最低出力値のことである。電力系統1に並列されている内燃力発電装置2の発電電力の出力値が最低目標値に達していない場合(S104:NO)、需給制御装置7はステップS101からの動作を繰り返す。
【0034】
一方、電力系統1に並列されている内燃力発電装置2の台数が予め定められた最低台数又は解列不可台数の何れか一方であって、且つ、電力系統1に並列されている内燃力発電装置2の発電電力の出力値が最低目標値に達した場合(S104:YES)、需給制御装置7は、内燃力発電装置2の発電電力の出力値が最低目標値を下回らないように、蓄電池4に対して再生可能エネルギー発電装置3の発電出力を充電させる制御を行う(S105)。ステップS105の詳細に関しては後述する。
【0035】
需給制御装置7の全体制御動作は、上記のステップS101乃至S105を繰り返す動作である。
【0036】
<<需給制御動作>>
図5を参照して、電力系統1に並列されている内燃力発電装置2の発電電力の出力値が最低目標値より大きい常時における、
図4のステップS101の詳細について説明する。尚、
図5の動作の制御を行う主体は制御部7Cである。
【0037】
先に説明したように、複数の内燃力発電装置2のうち何れの内燃力発電装置2が何れのタイミングで電力系統1に対して並列又は解列されるかは、該当日における再生可能エネルギー発電装置3の発電出力の予測値及び負荷5の需要の予測値に基づいて所定の計算式から求められる。上記の計算は、需給制御装置7において制御部7Cが記憶部7Bに記憶されているプログラムデータを実行することにより実現される。例えば、制御部7Cの計算結果に従って、何れかの内燃力発電装置2が電力系統1に並列されて短時間起動される必要があると見込まれる場合、燃費等の経済性の観点から、この内燃力発電装置2を電力系統1に並列しないで蓄電池4から負荷5に電力を供給することが望ましい。
【0038】
先ず、需給制御装置7は、制御部7Cの計算結果に従って、蓄電池4の充電レベルSOCと比較される基準レベルとして第2充電レベルT
1+αの設定が必要であるか否かを判定する(S201)。第2充電レベルT
1+αの設定が必要である場合(S201:YES)、需給制御装置7は、所定の充電レベルα(>0)を生成し、第2充電レベルT
1+αを設定する(S202)。尚、第2充電レベルT
1+αの設定が必要である場合とは、例えば、何れかの内燃力発電装置2が電力系統1に並列されて短時間起動される必要があると見込まれる場合である。
【0039】
次に、需給制御装置7は、蓄電池4の充電レベルSOCが第2充電レベルT
1+α以上であるか否かを判定する(S203)。蓄電池4の充電レベルSOCが第2充電レベルT
1+α未満である場合(S203:NO)、蓄電池4の放電を停止し(S=0)(S204)、電力系統1に既に並列されている内燃力発電装置2のみで負荷周波数制御を行うように指令を出力する(S205)。このように、蓄電池4の放電が第1充電レベルT
1より高い第2充電レベルT
1+αを境として停止することから、電力系統1に対する並列を見込まれている内燃力発電装置2を解列したまま、蓄電池4から負荷5に電力を供給することができる。そして、需給制御装置7は、ステップS205における指令を出力すると、ステップS201における第1充電レベルT
1又は第2充電レベルT
1+αの設定の要否の判定に戻る。
【0040】
ここで、需給制御装置7がステップS204を実行する際の内燃力発電装置2の発電出力及び蓄電池4の出力の関係は、式(4)で表される。
【0042】
(但し、ΣDG
ctlは電力系統1に並列されているN台の内燃力発電装置2が負荷周波数制御を行っているときの調整出力の合計を表す。)
つまり、蓄電池4が放電を停止する条件として、電力の供給側である内燃力発電装置2の調整出力ΣDG
ctl及び再生可能エネルギー発電装置3の発電出力REと、電力の需要側である負荷5の総需要Lと、の差が零になるように、内燃力発電装置2は負荷周波数制御されて調整出力ΣDG
ctlを出力する。
【0043】
第2充電レベルT
1+αの設定が不要である場合(S201:NO)、需給制御装置7は、所定の充電レベルαを零とし、第1充電レベルT
1を設定する(S206)。尚、第2充電レベルT
1+αの設定が不要である場合とは、例えば、何れかの内燃力発電装置2が電力系統1に並列されて短時間起動される必要はないと見込まれる場合である。この場合、内燃力発電装置2及び再生可能エネルギー発電装置3の総発電電力が負荷5の総需要を上回ったとしても、負荷周波数制御を行っている内燃力発電装置2の発電出力が最低目標値を下回らないような制御が行われるように、蓄電池4を可能な限り放電するための制御(モードA〜C)を行う。
【0044】
次に、需給制御装置7は、蓄電池4の充電レベルSOCが第1充電レベルT
1以上であるか否かを判定する(S207)。蓄電池4の充電レベルSOCが第1充電レベルT
1未満である場合(S207:NO)、需給制御装置7は、上記のステップS204及びS205を実行し、蓄電池4の放電を停止して、電力系統1に既に並列されている内燃力発電装置2のみで負荷周波数制御を行うように指令を出力する。そして、需給制御装置7は、ステップS205における指令を出力すると、ステップS201における第1充電レベルT
1又は第2充電レベルT
1+αの設定の要否の判定に戻る。
【0045】
蓄電池4の充電レベルSOCが第2充電レベルT
1+α以上(S203:YES)又は第1充電レベルT
1以上(S207:YES)である場合、需給制御装置7は、蓄電池4を放電するための3種類のモードA〜Cの何れかを選択する(S208)。尚、3種類のモードA〜Cの選択方法として、例えば、作業員が3種類のモードA〜Cの何れかをマニュアルで選択する方法や、需給制御装置7が3種類のモードA〜Cの何れかを負荷5の総需要Lを含む条件に応じて選択する方法が考えられる。前者の場合、需給制御装置7は、蓄電池4の充電レベルが第1充電レベルT
1以上又は第2充電レベルT
1+α以上であると、例えば作業員に対して3種類のモードA〜Cの選択を促すための警報を出力する。そして、需給制御装置7は、作業員が3種類のモードA〜Cの何れかを選択したことを知らせる信号を受信すると、作業員が選択したモードを実行することができる。また、後者の場合、例えば3種類のモードA〜Cは負荷5の総需要Lの3種類の大きさに夫々対応付けられている。そして、需給制御装置7は、蓄電池4の充電レベルが第1充電レベルT
1以上又は第2充電レベルT
1+α以上であると、3種類のモードA〜Cの中から負荷5の総需要Lに対応するモードを選択して実行することができる。
【0046】
蓄電池4を放電するためのモードAが選択された場合(S208:A)、需給制御装置7は、蓄電池4が一定の出力で放電するように制御するとともに(S209)、電力系統1に並列されている内燃力発電装置2のみで負荷周波数制御を行うように指令を出力する(S210)。そして、需給制御装置7は、ステップS210における指令を出力すると、ステップS201における第1充電レベルT
1又は第2充電レベルT
1+αの設定の要否の判定に戻る。
【0047】
ここで、需給制御装置7がモードAであるステップS209及びS210を実行する際の内燃力発電装置2の発電出力及び蓄電池4の出力の関係は、式(5)で表される。
【0049】
(但し、S
fixは蓄電池4の固定出力を表す。)
つまり、再生可能エネルギー発電装置3の発電出力RE及び負荷5の総需要Lを考慮しつつ、蓄電池4が一定の出力S
fixで放電するように、内燃力発電装置2は負荷周波数制御されて調整出力ΣDG
ctlを出力する。
【0050】
蓄電池4を放電するためのモードBが選択された場合(S208:B)、需給制御装置7は、電力系統1に並列されている内燃力発電装置2の負荷周波数制御を停止して、この内燃力発電装置2の発電出力を最低目標値である最低出力に固定するとともに(S211)、蓄電池4が負荷周波数制御を行うように指令を出力する(S212)。そして、需給制御装置7は、ステップS212における指令を出力すると、ステップS201における第1充電レベルT
1又は第2充電レベルT
1+αの設定の要否の判定に戻る。
【0051】
ここで、需給制御装置7がステップS211及びS212を実行する際の内燃力発電装置2の発電出力及び蓄電池4の出力の関係は、式(6)で表される。
【0053】
(但し、S
ctlは蓄電池4が負荷周波数制御を行っているときの調整出力、ΣDG
minは電力系統1に並列されているN台の内燃力発電装置2の最低出力の合計を表す。)
つまり、再生可能エネルギー発電装置3の発電出力RE及び負荷5の総需要Lを考慮しつつ、内燃力発電装置2が最低出力ΣDG
minを出力するように、蓄電池4は負荷周波数制御されて調整出力S
ctlを出力する。
【0054】
蓄電池4を放電するためのモードCが選択された場合(S208:C)、需給制御装置7は、蓄電池4が負荷周波数制御を行うとともに(S213)、電力系統1に並列されている内燃力発電装置2も負荷周波数制御を行うように指令を出力する(S214)。そして、需給制御装置7は、ステップS214における指令を出力すると、ステップS201における第1充電レベルT
1又は第2充電レベルT
1+αの設定の要否の判定に戻る。
【0055】
ここで、需給制御装置7がステップS213及びS214を実行する際の内燃力発電装置2の発電出力及び蓄電池4の出力の関係は、式(7)で表される。
【0057】
つまり、再生可能エネルギー発電装置3の発電出力RE及び負荷5の総需要Lを考慮しつつ、内燃力発電装置2が負荷周波数制御されて調整出力ΣDG
ctlを出力するとともに、蓄電池4が負荷周波数制御されて調整出力S
ctlを出力するように制御される。尚、負荷5に対する調整出力ΣDG
ctl、S
ctlの配分としては、例えば比例配分や周波数配分が考えられる
このように、内燃力発電装置2及び蓄電池4が負荷5に対する電力の供給を分担しながら、蓄電池4を放電することができる。
【0058】
<<台数制御動作>>
再生可能エネルギー発電装置3の発電出力の変動に応じて、電力系統1に対する内燃力発電装置2の並列及び解列を制御する
図4のステップS102の詳細について説明する。
【0059】
先ず、需給制御装置7は、負荷5に対する電力の供給量を確保することを目的として、上記のモードA〜Cの何れかが実行されると、式(8)(9)に従って電力系統1に対する内燃力発電装置2の並列又は解列を行うべきか否かを判定する。
【0061】
(但し、ΣDG
maxは電力系統1に並列されているN台の内燃力発電装置2の定格出力(最大出力)の合計、S
Tsは内燃力発電装置2が起動されるまでの間、負荷5に対して電力を連続して供給可能な蓄電池4の出力(放電:負値)、ε
1は負荷5の需要の変動に対するマージン、ε
REは再生可能エネルギー発電装置3の発電出力が急速に低下したとしても、最低限期待できる出力を表す。)
【0063】
(但し、ΣDG
maxは電力系統1に並列されていると仮定されるN−1台の内燃力発電装置2の定格出力の合計、ε
2は負荷5の需要の変動に対するマージンを表す。)
ここで、再生可能エネルギー発電装置3の発電出力が急速に低下したとしても、再生可能エネルギー発電装置3に対して例えば20%の発電出力が最低限期待される場合、ε
REはこの20%の発電出力を表すことになる。尚、ε
REは見込みの値であるため、式(8)(9)から省略してもよい。
【0064】
式(8)は、N台の内燃力発電装置2の定格出力ΣDG
max、再生可能エネルギー発電装置3の期待出力ε
RE、蓄電池4の出力S
Tsの合計が、マージンε
1を含む負荷5の総需要L未満であることを表している。つまり、式(8)は、負荷5に対する電力の供給量が不足していることを表している。そこで、式(8)の条件が成立すると、需給制御装置7は、電力系統1に対して、既に解列されている内燃力発電装置2の中から一の内燃力発電装置2を並列するための指令を出力する。一の内燃力発電装置2は、この指令に応じて電力系統1に並列されて起動される。こうして、電力系統1に並列される内燃力発電装置2の台数はN台からN+1台になる。
【0065】
一方、式(9)は、電力系統1に並列されている内燃力発電装置2の台数がN台からN−1台に減少したと仮定し、N−1台の内燃力発電装置2の定格出力ΣDG
max、再生可能エネルギー発電装置3の期待出力ε
RE、蓄電池4の(放電)出力−S
Tsの合計が、マージンε
2を含む負荷5の総需要L以上であることを表している。つまり、式(9)は、内燃力発電装置2の台数が現在のN台からN−1台に減少してもなお、負荷5に対する電力の供給量が余ることを表している。そこで、式(9)の条件が成立すると、需給制御装置7は、電力系統1に対して、既に並列されている内燃力発電装置2の中から一の内燃力発電装置2を解列するための指令を出力する。一の内燃力発電装置2は、この指令に応じて電力系統1から解列される。こうして、電力系統1に並列される内燃力発電装置2の台数はN台からN−1台に減少する。
【0066】
尚、蓄電池4の出力S
Tsが大きくなると、式(8)の条件が成立する機会が減少し、内燃力発電装置2の並列が抑制されることが分かる。このことからも、常時の需給制御動作において、蓄電池4が充電レベルSOCを第1充電レベルT
1より大きい第2充電レベルT1+αと比較するステップ(
図5のステップS201〜S203)を設けているため、何れかの内燃力発電装置2が電力系統1に並列されて短時間起動される必要があると見込まれる場合でも、内燃力発電装置2の並列の抑制が可能になることが理解できる。
【0067】
また、需給制御装置7は、内燃力発電装置2の出力を計画的に下げる調整力である「下げ代(下げ余力)」を確保することを目的として、式(10)に従って電力系統1に対する内燃力発電装置2の並列又は解列を行うべきか否かを判定する。
【0069】
(但し、ΣDG
minは電力系統1に並列されているN台の内燃力発電装置2の最低出力(最低目標値)の合計、ΔRE
iは再生可能エネルギー発電装置3の定格出力から現在出力を減算した値、S
maxは蓄電池4の定格出力(充電)を表す。)
式(10)に含まれるΔRE
iは、式(11)で表される。
【0071】
(但し、ΣRE
maxは電力系統に接続されているM台の再生可能エネルギー発電装置3の定格出力の合計を表す。)
+ΔRE
iは、再生可能エネルギー発電装置3の発電出力が現在出力から定格出力まで増加することを表している。つまり、+ΔRE
iは、内燃力発電装置2の発電出力の下げ代を表している。よって、式(10)は、内燃力発電装置2の発電出力が最低目標値の状態で、再生可能エネルギー発電装置3の発電出力が定格出力まで増加して内燃力発電装置2の下げ代がなくなり、蓄電池4が定格出力まで充電したにも関わらず、内燃力発電装置2及び再生可能エネルギー発電装置3から負荷5へ供給される電力が余剰であることを表している。そこで、式(10)の条件が成立すると、需給制御装置7は、電力系統1に対して、既に並列されている内燃力発電装置2の中から一の内燃力発電装置2を解列するための指令を出力する。一の内燃力発電装置2は、この指令に応じて電力系統1から解列される。こうして、電力系統1に並列される内燃力発電装置2の台数はN台からN−1台に減少する。しかし、N−1台の内燃力発電装置2の発電出力を定格出力まで増加させても、負荷5に対する電力の供給量が不足するような「上げ代不足」になってはならない。
【0072】
需給制御装置7は、内燃力発電装置2の出力を計画的に上げる調整力である「上げ代(上げ余力)」を確保することを目的として、式(10)の他に式(12)に従って電力系統1に対する内燃力発電装置2の並列又は解列を行うべきか否かを判定する。
【0074】
(但し、ΣDG
maxは電力系統1に並列されていると仮定されるN−1台の内燃力発電装置2の定格出力の合計、ΔRE
dは再生可能エネルギー発電装置3の現在出力、S
maxは蓄電池4の定格出力(放電:負値)を表す。)
式(12)に含まれるΔRE
dは、式(13)で表される。
【0076】
(但し、ΣREは電力系統に接続されているM台の再生可能エネルギー発電装置3の現在出力の合計を表す。)
−ΔRE
dは、再生可能エネルギー発電装置3の発電出力が現在出力から零になることを表している。つまり、−ΔRE
dは、内燃力発電装置2の発電出力の上げ代を表している。よって、式(12)は、電力系統1に並列されている内燃力発電装置2の台数がN台からN−1台に減少したと仮定し、内燃力発電装置2の発電出力が定格出力の状態で、再生可能エネルギー発電装置3の発電出力が零になって内燃力発電装置2の上げ代がなくなり、蓄電池4の定格出力を負荷5に供給することで、内燃力発電装置2及び再生可能エネルギー発電装置3から負荷5へ供給される電力が余剰であることを表している。そこで、式(10)の他に式(12)の条件も成立したときに、需給制御装置7は、電力系統1に対して、既に並列されている内燃力発電装置2の中から一の内燃力発電装置2を解列するための指令を出力するようにした方がよい。一の内燃力発電装置2は、この指令に応じて電力系統1から解列される。こうして、電力系統1に並列される内燃力発電装置2の台数はN台からN−1台に減少するが、N−1台の内燃力発電装置2の下げ代及び上げ代は確保される。尚、式(10)(12)は、再生可能エネルギー発電装置3の発電出力が変動して最低出力や定格出力になったとき、電力系統1に対して内燃力発電装置2を新たに並列や解列せずに、負荷5に対する電力の供給量が余剰又は不足になることがないかを判定するための式と言える。
【0077】
図4のステップS102を実行する場合、式(8)(9)(10)(12)の全ての条件を考慮し、電力系統1に対する内燃力発電装置2の並列及び解列を制御し、負荷5に対して電力を供給する内燃力発電装置2の台数を制御する。
【0078】
しかし、再生可能エネルギー発電装置3の台数が増加すると、電力系統1に対する内燃力発電装置2の並列及び解列の制御に際して、式(8)(9)(10)(12)の全ての条件を満足する解が得られなくなる可能性が高くなる。具体的には、内燃力発電装置2の下げ代不足が予想されているにも関わらず、負荷5に対する電力の供給量を確保するために内燃力発電装置2を1台解列することができない場合、即ち、式(10)の条件が成立するときに式(12)の条件が成立しない場合である。この場合、需給制御装置7は、電力系統1に対する内燃力発電装置2の並列及び解列の制御方法を以下の方法A〜Fの何れかに切り替える。
【0079】
<方法A>
再生可能エネルギー発電装置3の発電出力RE(現在出力)によって負荷5に対する電力の供給量が確保され、発電出力REを考慮すると式(12)の条件が成立する場合、需給制御装置7は、電力系統1から内燃力発電装置2を1台解列するための指令を出力する。
【0080】
<方法B>
再生可能エネルギー発電装置3の発電出力REを考慮した未来(例えば数分後)の出力変動分布から未来の発電電力RE’を予想し、発電電力RE’によって負荷5に対する電力の供給量が確保され、発電出力RE’を考慮すると式(12)の条件が成立する場合、需給制御装置7は、電力系統1から内燃力発電装置2を1台解列するための指令を出力する。
【0081】
<方法C>
内燃力発電装置2の下げ代の不足分ΔP
dは、式(10)を基にして式(14)で表される。
【0083】
内燃力発電装置2の上げ代ΔP
iは、式(12)を基にして式(15)で表される。
【0085】
内燃力発電装置2の下げ代及び上げ代に不足が生じた場合、被害の大きさの観点において、ΔP
d及びΔP
iのうち絶対値が小さい方(想定される周波数変動が小さい方)を選択する。例えば、ΔP
d及びΔP
iのうちΔP
dの絶対値の方が大きい場合、需給制御装置7は、電力系統1から内燃力発電装置2を1台解列する。つまり、ΔP
dは下げ代の不足分であって、ΔP
dの値が正値であれば下げ代不足を表す。また、ΔP
iは下げ代不足を解消するために電力系統1から内燃力発電装置2を1台解列したときの上げ代であって,ΔP
iの値が負値であれば上げ代不足を表す。そして、内燃力発電装置2を1台解列して上げ代不足になる場合、内燃力発電装置2を解列しなかったときの下げ代不足と比較して,不足量を小さくするよう,解列すべきかどうかを判断する。
【0086】
<方法D>
内燃力発電装置2において上げ代の確保よりも下げ代の確保を優先する。つまり、式(12)の条件の成立に関わらず、式(10)の条件が成立すると、需給制御装置7は、電力系統1から内燃力発電装置2を1台解列するための指令を出力する。
【0087】
<方法E>
再生可能エネルギー発電装置3の発電出力REが急速に低下した場合に最低限期待される出力ε
REを見込んだ上で、発電出力RE(現在出力)によって負荷5に対する電力の供給量が確保され、発電出力REを考慮すると式(12)の条件が成立する場合、需給制御装置7は、電力系統1から内燃力発電装置2を1台解列するための指令を出力する。
【0088】
<方法F>
再生可能エネルギー発電装置3の台数が減少すると式(10)(12)の条件がともに成立する可能性が高まることから、需給制御装置7は、式(10)(12)の条件がともに成立するまで、電力系統1から再生可能エネルギー発電装置3を1台ずつ解列するための指令を出力する。尚、再生可能エネルギー発電装置3の解列順は、例えば定格出力の小さい順であるものとする。
【0089】
<<内燃力発電装置の発電出力が最低出力時の制御動作>>
需給制御装置7は、電力系統1に対して並列又は解列される内燃力発電装置2の台数を制御した結果、電力系統1に並列されている内燃力発電装置2の台数が予め定められた最低台数又は解列不可台数の何れか一方であって、且つ、電力系統1に並列されている内燃力発電装置2の各発電電力の出力値が予め定められた最低目標値を下回るような場合、内燃力発電装置2の各発電電力の出力値が最低目標値を下回らないように、蓄電池4に対して再生可能エネルギー発電装置3の発電出力を充電させる制御を行う必要がある。
【0090】
<内燃力発電装置による負荷周波数制御>
図6乃至
図8を参照して、
図4のステップS105の詳細について一の制御方法を用いて説明する。尚、
図6の動作の制御を行う主体は制御部7Cである。
【0091】
先ず、需給制御装置7は、電力系統1に並列されている内燃力発電装置2の各発電電力の出力値が下降しつつ予め定められた最低目標値に達したか否かを判定する(S301)。内燃力発電装置2の各発電電力の出力値が最低目標値に達した場合(S301:YES)、需給制御装置7は、内燃力発電装置2の各発電電力の出力値を最低目標値を上回る値にするために、蓄電池4の出力SがΔSを単位として1ステップずつ増加するように、蓄電池4の出力Sを出力S+ΔSに変更するための指令を出力する(S302)。尚、ΔSは予め整定された量である。ステップS302の指令が出力されると、蓄電池4は、蓄電池4の出力SがΔSだけ増加するように、再生可能エネルギー発電装置3の発電出力を充電する。このとき、内燃力発電装置2は電力系統1の全体に亘って負荷周波数制御を行っていることから、蓄電池4の充電に伴って再生可能エネルギー発電装置3の発電出力が減少すると、内燃力発電装置2の発電出力は増加することになる。そして、ステップS301を再度実行する。内燃力発電装置2の各発電電力の出力値が最低目標値を上回らない場合(S301:YES)、需給制御装置7は、蓄電池4の出力S+ΔSを出力S+2ΔSに変更するための指令を出力する(S302)。ステップS302の指令が出力されると、蓄電池4は、蓄電池4の出力S+ΔSがΔSだけ増加するように、再生可能エネルギー発電装置3の発電出力を充電する。内燃力発電装置2の各発電電力の出力値が最低目標値を上回るまで、ステップS301,S302を繰り返し実行する。
【0092】
内燃力発電装置2の各発電電力の出力値が最低目標値を上回った場合(S302:NO)、需給制御装置7は、内燃力発電装置2の各発電電力の出力値が最低目標値+ΔS+ε(ε<ΔS)を上回ったか否かを判定する(S303)。尚、説明の便宜上、ステップS303を最初に実行する際の蓄電池4の出力はSであることとする。内燃力発電装置2の各発電電力の出力値が最低目標値+ΔS+εを上回った場合(S303:YES)、需給制御装置7は、内燃力発電装置2の各発電電力の出力値を最低目標値と最低目標値+ΔSとの間の値にするために、蓄電池4の出力SがΔSを単位として1ステップずつ減少するように、蓄電池4の出力Sを出力S−ΔSに変更するための指令を出力する(S304)。ステップS304の指令が出力されると、蓄電池4は、蓄電池4の出力SがΔSだけ減少するように、負荷5に対して放電する。このとき、内燃力発電装置2は電力系統1の全体に亘って負荷周波数制御を行っていることから、蓄電池4の放電に伴って内燃力発電装置2の発電出力は減少することになる。そして、ステップS301を再度実行する。内燃力発電装置2の各発電電力の出力値が最低目標値+ΔS+εを上回り続けている場合(S303:YES)、需給制御装置7は、蓄電池4の出力S−ΔSを出力S−2ΔSに変更するための指令を出力する(S304)。ステップS304の指令が出力されると、蓄電池4は、蓄電池4の出力S−ΔSがΔSだけ減少するように、負荷5に対して放電する。内燃力発電装置2の各発電電力の出力値が最低目標値+ΔS+εを下回るまで、ステップS301,S303,S304を繰り返し実行する。
【0093】
内燃力発電装置2の各発電電力の出力値が最低目標値+ΔS+εを下回った場合(S303:NO)、蓄電池4の出力Sが負の値であるか否かを判定する(S305)。蓄電池4の出力Sが正の値である場合(S305:NO)、蓄電池4の充電が行われていることから、ステップS301を再度実行する。
【0094】
蓄電池4の出力Sが負の値である場合(S305:YES)、蓄電池4の放電が行われていることから、即ち、内燃力発電装置2は発電電力を蓄電池4に依存せずに減少可能な余裕を有していることから、需給制御装置7は、蓄電池4の充放電を停止させるための指令を出力する(S306)。ステップS306の指令が出力されると、蓄電池4は充放電を停止し、蓄電池4の出力Sは零になる。
【0095】
図7を参照して
図6の動作を説明する。横軸は時間を示し、縦軸は内燃力発電装置2の発電出力レベルを示している。実線は、蓄電池4の充放電が行われない場合の、内燃力発電装置2の発電出力であって負荷5の総需要から再生可能エネルギー発電装置3の発電出力を減じた値を示している。一点鎖線は、蓄電池4の出力SがΔSを単位として増加又は減少する様子を示している。尚、蓄電池4の出力Sの下方向の変化はΔSの充電を示し、蓄電池4の出力Sの上方向の変化はΔSの放電を示している。太破線は、蓄電池4の充放電が行われた場合の、内燃力発電装置2の発電出力を示している。細破線は、内燃力発電装置2の最低目標値を示している。
【0096】
内燃力発電装置2の発電出力が下降しつつ最低目標値に達すると、このときの蓄電池4の出力SがΔSを単位として1ステップ増加するように、蓄電池4は再生可能エネルギー発電装置3の発電出力を充電し、これに伴い、内燃力発電装置2の発電出力は増加する(時刻t1,t2,t3)。内燃力発電装置2の発電出力が最低目標値+ΔS+εを上回ると、このときの蓄電池4の出力SがΔSを単位として1ステップ減少するように、蓄電池4は負荷5に対して放電し、これに伴い、内燃力発電装置2の発電出力は減少する(時刻t4,t5,t6)。時刻t6を過ぎると、内燃力発電装置2の発電出力は最低目標値を上回り、蓄電池4の充放電は停止する。
【0097】
図8を参照して
図6の動作を説明する。
【0098】
内燃力発電装置2の発電出力が最低目標値を下回ると、このときの蓄電池4の出力SがΔS増加するため、内燃力発電装置2の発電出力は増加する。一方、内燃力発電装置2の発電出力が最低目標値+ΔS+εを上回ると、このときの蓄電池4の出力SがΔS減少するため、内燃力発電装置2の発電出力は減少する。内燃力発電装置2の発電出力は、蓄電池4の充放電に従って、最低目標値と最低目標値+ΔSとの間で変化することになる。
【0099】
このように、内燃力発電装置2の発電出力が最低目標値を下回った場合、蓄電池4が再生可能エネルギー発電装置3の発電出力を充電するため、内燃力発電装置2の発電出力が最低目標値以上に維持され、内燃力発電装置2の下げ代を確保することが可能になる。また、蓄電池4が充放電を行っている期間、内燃力発電装置2は負荷周波数制御を継続するため、電力系統1において連続性のよい負荷周波数制御を行うことが可能になる。また、ステップS303において、内燃力発電装置2の発電出力が比較される対象として、蓄電池4の出力Sを増減させる際の変化単位であるΔSより小さいεが含まれているため、内燃力発電装置2の発電出力を最低目標値と最低目標値+ΔSとの間の1ステップ分の範囲内(最低目標値+ε)に収束させることが可能になる。
【0100】
<蓄電池による負荷周波数制御>
図9及び
図10を参照して、
図4のステップS105の詳細について他の制御方法を用いて説明する。尚、
図9の動作の制御を行う主体は制御部7Cである。
【0101】
先ず、電力系統1に並列されている内燃力発電装置2の各発電電力の出力値が下降しつつ予め定められた最低目標値に達した場合、需給制御装置7は、内燃力発電装置2が負荷周波数制御を停止し、内燃力発電装置2の発電出力を最低目標値に固定するための指令を出力する(S401)。ステップS401の指令が出力されると、内燃力発電装置2による負荷周波数制御が停止し、内燃力発電装置2の発電出力は最低目標値に固定される。
【0102】
内燃力発電装置2の発電出力が最低目標値に固定された状態で、内燃力発電装置2及び再生可能エネルギー発電装置3の総発電出力が負荷5の総需要を上回ると、再生可能エネルギー発電装置3の発電出力が余剰になってしまうため、蓄電池4を用いて再生可能エネルギー発電装置3の余剰電力のみを充電する必要がある。そこで、内燃力発電装置2の発電出力が最低目標値に固定されている期間、需給制御装置7は、負荷5との間における電力の需要及び供給がバランスするように、蓄電池4が充電を行いながら負荷周波数制御を行うための指令を出力する(S402)。ステップS402の指令が出力されると、以下の式(16)に示す条件が成立するように、蓄電池4の調整出力S
ctlは制御される。
【0104】
(但し、Sctl=−ARである。)
需給制御装置7は、蓄電池4が負荷周波数制御を行った結果、蓄電池4の出力Sが予め定められた負の値−ε未満であるか否かを判定する(S403)。蓄電池4の出力Sが−ε以上である場合(S403:NO)、蓄電池4の放電量が−εに相当する量に達していないため、需給制御装置7は、蓄電池4が充電を行いながら負荷周波数制御を行うための指令を継続して出力する(S402)。一方、蓄電池4の出力Sが−ε未満である場合(S403:YES)、蓄電池4の放電量が−εに相当する量に達しているため、需給制御装置7は、蓄電池4の充放電を停止するための指令を出力する(S404)。ステップS404の指令が出力されると、蓄電池4が充放電を停止し、蓄電池4の出力Sは零になる。従って、蓄電池4による負荷周波数制御は停止する。そして、需給制御装置7は、内燃力発電装置2の発電出力が最低目標値に固定された状態を解除し、内燃力発電装置2による負荷周波数制御を再開するための指令を出力する(S405)。ステップS405の指令が出力されると、内燃力発電装置2による負荷周波数制御が再開され、内燃力発電装置2の発電出力は負荷周波数制御に応じて変化することになる。
【0105】
図10を参照して
図9の動作を説明する。横軸は時間を示し、縦軸は内燃力発電装置2の発電出力レベルを示している。太実線は、蓄電池4による負荷周波数制御が行われない場合の、内燃力発電装置2の発電出力であって負荷5の総需要から再生可能エネルギー発電装置3の発電出力を減じた値を示している。細実線は、蓄電池4による負荷周波数制御が行われた場合の、内燃力発電装置2の発電出力を示している。細破線は、内燃力発電装置2の最低目標値を示している。
【0106】
内燃力発電装置2の発電出力が下降しつつ最低目標値に達すると、内燃力発電装置2による負荷周波数制御が停止し、内燃力発電装置2の発電出力は最低目標値(細実線)に固定される。一方、蓄電池4は、内燃力発電装置2及び再生可能エネルギー発電装置3と負荷5との間における電力の需要及び供給がバランスするように、充電を行いながら負荷周波数制御を行う(時刻t1)。そして、蓄電池4の放電量が−εに相当する量に達すると、蓄電池4による負荷周波数制御が停止し、内燃力発電装置2の発電出力が最低目標値に固定された状態が解除され、内燃力発電装置2は負荷周波数制御を再開する(時刻t2)。蓄電池4から内燃力発電装置2へ負荷周波数制御を切り替える際にεを考慮しているため、蓄電池4は最低目標値を上回ってから充電を停止する。従って、内燃力発電装置2及び蓄電池4の間で負荷周波数制御が頻繁に切り替わるチャタリングを防止することが可能になる。
【0107】
以上説明したように、負荷5との間における電力の需要及び供給がバランスするように負荷周波数制御が行われ、負荷5に電力を供給する内燃力発電装置2と、再生可能エネルギーを用いて負荷5に電力を供給する再生可能エネルギー発電装置3と、再生可能エネルギー発電装置3の発電電力を充電する蓄電池4と、が接続される電力系統1において、蓄電池4の充電を制御する需給制御装置7であって、制御部7Cは、内燃力発電装置2の出力値が最低目標値まで下降していない場合、蓄電池4の充電レベルが第1充電レベルT
1以上であるか否かを判定する機能と、蓄電池4の充電レベルが第1充電レベルT
1以上である場合、内燃力発電装置2及び蓄電池4の少なくとも一方を用いて負荷周波数制御を行いながら、蓄電池4を放電させる機能と、を実行する。これにより、再生可能エネルギー発電装置3の発電出力が予測に反して増加した場合に備えて、電力系統1に対する負荷周波数制御を行いながら、蓄電池4の充電レベルを下げることが可能になる。
【0108】
また、複数の内燃力発電装置2のうち電力系統1に並列されている内燃力発電装置2の各定格出力値と、電力系統1に並列されている内燃力発電装置2が起動されるまで負荷5に電力を連続して供給可能な蓄電池4の出力値と、の第1加算値が、負荷5の総需要に対して不足している場合、制御部7Cは、複数の内燃力発電装置2のうち電力系統1から解列されている所定の内燃力発電装置2を並列させる機能を実行する。そして、内燃力発電装置2の並列を現状に対して抑制する場合、第1充電レベルT
1は第1充電レベルT
1より大きい第2充電レベルT
1+αに変更される。これにより、例えば内燃力発電装置2が比較的短時間起動されることが予測される場合、電力系統1に並列されている内燃力発電装置2が起動されるまで負荷5に電力を連続して供給可能な蓄電池4の出力値を調整し、内燃力発電装置2を並列せずに燃料消費効率を向上させることが可能になる。
【0109】
また、制御部7Cは、負荷5との間における電力の需要及び供給がバランスするように、内燃力発電装置2及び蓄電池4を用いて負荷周波数制御を行うための指令を出力することができる。
【0110】
また、制御部7Cは、内燃力発電装置2の出力値を最低目標値に固定するとともに、負荷5との間における電力の需要及び供給がバランスするように、蓄電池4の充電を制御しながら負荷周波数制御を行うための指令を出力することもできる。
【0111】
また、制御部7Cは、蓄電池4の充電量を一定量放電させるとともに、負荷5との間における電力の需要及び供給がバランスするように、内燃力発電装置2を用いて負荷周波数制御を行うための指令を出力することもできる。
【0112】
尚、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。