特許第6386550号(P6386550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6386550血糖降下薬を調製するための瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386550
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】血糖降下薬を調製するための瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/704 20060101AFI20180827BHJP
   A61K 36/36 20060101ALI20180827BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   A61K31/704
   A61K36/36
   A61P3/10
【請求項の数】10
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2016-524659(P2016-524659)
(86)(22)【出願日】2014年4月16日
(65)【公表番号】特表2016-526559(P2016-526559A)
(43)【公表日】2016年9月5日
(86)【国際出願番号】CN2014075471
(87)【国際公開番号】WO2015078133
(87)【国際公開日】20150604
【審査請求日】2016年1月7日
【審判番号】不服2017-10033(P2017-10033/J1)
【審判請求日】2017年7月6日
(31)【優先権主張番号】201310627408.7
(32)【優先日】2013年11月28日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515332414
【氏名又は名称】王学▲勇▼
(73)【特許権者】
【識別番号】515332425
【氏名又は名称】▲趙▼保▲勝▼
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王学▲勇▼
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼保▲勝▼
【合議体】
【審判長】 村上 騎見高
【審判官】 前田 佳与子
【審判官】 安川 聡
(56)【参考文献】
【文献】 Bioorg.Med.Chem.,2008,Vol.16,No.6,pp.2912−2920
【文献】 Chem.Pharm.Bull.,2004,Vol.52,No.2,pp.230−237
【文献】 J.Ethnopharmacol.,2009,Vol.124,No.3,pp.539−543
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-33/44
REGISTRY、CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血糖降下薬を調製するための瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の使用であって、前記瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の構造式は、以下に示す通りである;
【化1】

式中、
はH、Ac、及びGlcのうちの一つであり;
は(E)−MC、(Z)−MC、及びAcのうちの一つであり;
はH、Xylのうちの一つであり;
はH、CH、及びCHCHCHCHのうちの一つであり;

上記Acの構造式は以下の通りであり:
【化2】

上記(E)−MCの構造式は以下の通りであり:
【化3】

上記(Z)−MCの構造式は以下の通りである。
【化4】
【請求項2】
前記瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の構造式は、以下に示す通りである、請求項1に記載の血糖降下薬を調製するための瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の使用。
【化5】
【請求項3】
前記瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の構造式は、以下に示す通りである、請求項1に記載の血糖降下薬を調製するための瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の使用。
【化6】
【請求項4】
前記瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の構造式は、以下に示す通りである、請求項1に記載の血糖降下薬を調製するための瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の使用。
【化7】
【請求項5】
前記瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の構造式は、以下に示す通りである、請求項1に記載の血糖降下薬を調製するための瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の使用。
【化8】
【請求項6】
前記瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の構造式は、以下に示す通りである、請求項1に記載の血糖降下薬を調製するための瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の使用。
【化9】
【請求項7】
前記瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の構造式は、以下に示す通りである、請求項1に記載の血糖降下薬を調製するための瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の使用。
【化10】
【請求項8】
前記瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の構造式は、以下に示す通りである、請求項1に記載の血糖降下薬を調製するための瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の使用。
【化11】
【請求項9】
前記瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の構造式は、以下に示す通りである、請求項1に記載の血糖降下薬を調製するための瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の使用。
【化12】
【請求項10】
前記瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物を単独で使用し、又は二種類若しくは二種類以上を併用し、あるいは他の補助剤と併用し、臨床上に使用される注射剤、外用溶液剤、クリーム剤、ペースト剤、シール剤、滴剤、含嗽剤、坐剤、舌下錠、張付剤、フィルム剤、エアゾール剤、発泡錠、滴丸剤を調製する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の血糖降下薬を調製するための瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖降下薬を調製するための瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の使用に関し、瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の医薬品の新規用途分野に属する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は一種の糖代謝異常を来す疾患である。その表現として、絶食状態または経口ブドウ糖負荷試験中、ブドウ糖を投与した後、血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が上昇し、高血糖症が生じることが挙げられている。糖尿病は主に1型糖尿病(インスリン依存型糖尿病、insulin-dependent diabetes mellitus、IDDM)及び2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病、non-insulin-dependent diabetes mellitus、NIDDM)に分類される。1型糖尿病患者において、体内のインスリンの分泌量は減少し、さらに全く分泌されなくなる。インスリンは主として体内ブドウ糖を調節する作用を有し、分泌量が減少すると血糖は上昇することに至る。2型糖尿病は主にインスリン抵抗性(IR)等の要素と関連している。2型糖尿病患者において、一般的に高インスリン血症を伴い、即ち血中インスリンの濃度が上昇する症状を発症する。インスリン抵抗性(IR)とは、患者体内の肝臓、筋肉及び脂肪組織等のインスリンに敏感な組織が、ブドウ糖及び脂質代謝に与えるインスリンの刺激作用に対して抵抗性が生じることを指す。ブドウ糖に抵抗性が生じる結果として、患者の体内が多くのインスリンを分泌し、インスリン抵抗性に対して補償を行っても、患者の血液中のブドウ糖の濃度は依然として病的に上昇するということである。
【0003】
抗糖尿病薬は幾つかの種類が選択可能である。インスリン以外に、化学薬物であるスルホニル尿素系薬もインスリン分泌促進剤として幅広く用いられている。この類の薬物は膵β−細胞からのインスリン分泌を刺激することによって、血中インスリン濃度を増加させる。しかし、患者が低血糖になるリスクがある。もう一種の幅広く使用されている血糖降下薬はメトホルミン及びフェンホルミンのようなビグアナイド系薬である。この類の薬物の主な作用は生体内における外周血糖の取り込みと利用促進である。高血糖を改善させ、低血糖になるリスクを増加させずに、インスリン或いはインスリン分泌促進剤と併用することも可能であるが、乳酸性アシドーシスや下痢、悪心等の副作用を起こすことがある。もう一種の新血糖降下薬はインスリン増感剤グリタゾン系(チアゾリジンジオン系)であり、代表的な薬物としてロシグリタゾン及びピオグリタゾン等がある。これらの薬物は組織におけるインスリンへの感受性を増加させ、細胞におけるブドウ糖の利用を向上させ、血糖値を下げる効果を発揮している。また、空腹時の血糖値及びインスリン、食後の血糖値及びインスリンを下げる効果も十分期待できる。一方、Na・水の貯留、血液量の増加や心臓負荷の増加等に繋がる不良反応も存在している。
【0004】
植物由来の抗糖尿病活性物質の選別は、抗糖尿病新薬を発明する重要なルートとなっている。抗糖尿病活性物質の選別研究中に、サポニン類化合物はますます研究開発者の視野に入ってきている。サポニン類の成分は血中脂肪の調節、インスリン抵抗性の改善、血糖の下降等のルートを通して糖尿病の予防と治療につながる。当面、よく研究されている、血糖降下作用を備えるサポニンは、主としてサンシチニンジンサポニン、夏枯草トリテルペンサポニン、人参サポニン、オリーブサポニン、ニガウリサポニン、タラノキサポニン等がある。前述の研究結果はサポニンが血糖値を下げるのに応用と開発される巨大な潜在力が備わったことを裏付けている。
【0005】
瓦草はナデシコ科(Caryophyllaceae)マンテマ属植物である▲デン▼白前(デンバイチェン;Silene viscidulaFranch.)の乾燥された根であり、鎮痛、止血、清熱、利尿等の効果を備え、主に打撲、リウマチの痛み、気管支炎、尿路感染等症状の治療に使用される。今現在、瓦草の研究は主に化学成分の研究方面に集中しており、薬理方面の研究報道は少ない。瓦草の主要化学成分としてサポニン類、蛋白質類、有機酸類、多糖類、環状ペプチド類等ある。目下、申請者は分離を通して以下何種類のサポニン類成分の構造を確認した:サポニンシノクラッスロシドVI (sinocrassuloside VI)、シノクラッスロシドVII(sinocrassuloside VII)、シノクラッスロシドVIII(sinocrassuloside VIII)、シノクラッスロシドIX(sinocrassuloside IX)、シノクラッスロシドXII(sinocrassuloside XII)、シノクラッスロシドXIII(sinocrassuloside XIII)等である。環状ペプチド類成分は瓦草環状ペプチドA、B、C(silenins A、B、C)を含む。ステロイドケトン類成分は20−ヒドロキシエクジステロン、1−エピ−インテグリステロンA(1-epi-integristerone A)、アブタステロン、スタキステロンA、15−ヒドロシスターキステロンAを含む。有機酸類成分はヒドロキシ桂皮酸、オリーブ酸、バニラ酸等を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明で解決しようとする技術問題は、血糖降下薬を調製するための瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の使用を提供することである。本申請の発明者から大量的な選別と研究を通して、始めて以下の結果を発見した。ナデシコ科植物の瓦草から抽出して得られた五環系トリテルペノイドサポニン類化合物、特にシノクラッスロシド(sinocrassuloside)を母核とする化合物、上述化合物の組成物及びシノクラッスロシド(sinocrassuloside)を含有する化合物の植物抽出物は強い血糖降下効果を有し、抗糖尿病薬物の調製に使用できる。
【0007】
シノクラッスロシドを母核とする化合物は、シノクラッスロシド母核構造を含有する修飾物及び派生物を含み、シノクラッスロシド化合物のゲニン及び異なる数や構造のあるブドウ糖サポニンを含む。主にシノクラッスロシドVI、シノクラッスロシドVII、シノクラッスロシドVIII、シノクラッスロシドIX、シノクラッスロシドX、シノクラッスロシドXI、シノクラッスロシドXII、シノクラッスロシドXIII及び上述化合物の薬学上取り込み可能の塩を含む。
【0008】
この中で、シノクラッスロシドVIとシノクラッスロシドVII、シノクラッスロシドVIIIとシノクラッスロシドIX、シノクラッスロシドXIIとシノクラッスロシドXIIIは全てシストランス異性体であり、六種類の成分はいずれも強い血糖降下の活性を備え、一定のSAR関係(Structure-Activity Relationship;構造活性相関)を体現している。
【0009】
本発明で記載される薬学上取り込み可能の塩はシノクラッスロシド化合物とアルカリまたはアルカリ土類金属で形成される塩である。アルカリは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化アンモニウム或いはアンモニアを含む。アルカリ土類金属はナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミ、銅、亜鉛またはマグネシウム等がある。
【0010】
本発明に保護される五環系トリテルペノイドサポニン類化合物及びその類似物は主に植物瓦草の中から抽出されるものである。抽出、化学合成、半合成又は生物転換などの方式を通して他の植物の中から獲得された五環系トリテルペノイドサポニン類化合物及びその類似物も本発明の保護範囲内にある。
【0011】
五環系トリテルペノイドサポニン類化合物は主として非インスリン依頼型糖尿病(2型糖尿病)の治療に使用されているが、この限りではない。用量範囲:動物種により0.1〜10mg/kg体重となる。
【0012】
上記の技術問題を解決する本発明の技術方案は以下の通りである。血糖降下薬を調製するための瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の使用について、記載されている瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の構造式を以下に示す。
【0013】
【化1】
【0014】
【化1】
【0015】
上記Acの構造式は以下の通りである。
【化2】
【0016】
上記(E)−MCの構造式は以下の通りである。
【化3】
【0017】
上記(Z)−MCの構造式は以下の通りである
【化4】
【0018】
上記の技術方案の元で、本発明は以下のように改善することができる。
【0019】
更に、前記瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の構造式は、以下に示されている。
【化5】
【0020】
更に、前記瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の構造式は、以下に示されている。
【化6】
【0021】
更に、前記瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の構造式は、以下に示されている。
【化7】
【0022】
更に、前記瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の構造式は、以下に示されている。
【化8】
【0023】
更に、前記瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の構造式は、以下に示されている。
【化9】
【0024】
更に、前記瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の構造式は、以下に示されている。
【化10】
【0025】
更に、前記瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の構造式は、以下に示されている。
【化11】
【0026】
更に、前記瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の構造式は、以下に示されている。
【化12】
【0027】
更に、前記瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物は単独で使用し、二種類若しくは二種類以上を併用し、又は他の補助剤と併用することが可能である。その他、臨床上に使用される注射剤、外用溶液剤、クリーム剤、ペースト剤、シール剤、滴剤、含嗽剤、坐剤、舌下錠、張付剤、フィルム剤、エアゾール剤、発泡錠、滴丸剤を調製することができる。
【0028】
更に、前記注射剤には、静脈注射、筋肉注射、皮下注射、皮内注射及び腔内注射等複数の注射ルートがある。
【0029】
更に、前記外用溶液剤には、ローション又は塗布剤がある。
【0030】
更に、前記クリーム剤には、軟膏剤或いは硬膏剤がある。
【0031】
更に、前記滴剤には、点眼剤或いは点鼻剤がある。
【0032】
更に、前記瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物は単独で使用し、二種類若しくは二種類以上を併用し、又は他の補助剤と併用することができ、食品或いは飲料に製造することもできる。
【0033】
本発明のメリット
本発明は血糖降下薬を調製するための瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の使用を提供し、特にシノクラッスロシドを母核とする化合物及び上記化合物の組合物は顕著な抗糖尿病活性を備え、血糖を有効的に低減させ、及び/又は生体内のブドウ糖の耐糖能を向上させる。
【0034】
本発明から提供される瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物、特にシノクラッスロシドを母核とする化合物及び上記化合物の組合物は、現有までに報道されている植物源の血糖降下作用を有する化合物(以下、血糖降下作用化合物という)と比べると、血糖を下げる効果が著しく、作用が強いという特徴を備えている。
【0035】
本発明から提供される瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物、特にシノクラッスロシドを母核とする化合物及び上記化合物の組合物は、現有の血糖効果作用を有する化合物と比べると、化学骨格構造が独特、斬新で、調製工程が簡単で、汚染が小さく、血糖を下げる作用が強く、副作用が小さいという特徴を備えている。
【0036】
この他、本発明から提供される瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物、特にシノクラッスロシドを母核とする化合物及び上記化合物の組合物は、注射で投与した場合に迅速に効果を奏するインスリン類薬以外で唯一の、注射による投与経路がインスリンの効果に匹敵する天然抽出化学薬物である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物のKKAyマウス血糖への影響を示す。
図2】異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物のKKAyマウス体重への影響を示す。
図3】異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物のKKAyマウス摂餌量への影響を示す。
図4】異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物のKKAyマウス摂水量への影響を示す。
図5】異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物のKKAyマウス血糖への影響を示す。
図6】異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物について、投与停止後の血糖降下作用の維持時間の研究を示す。
図7】異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物のKKAyマウス血中インスリン含有量への影響を示す。
図8】異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物のKKAyマウスインスリン感受性への影響を示す。
図9】異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物のKKAyマウス肝グリコーゲン含有量への影響を示す。
図10】異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物のKKAyマウス筋グリコーゲン含有量への影響を示す。
図11】異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の正常ICRマウス体重への影響を示す。
図12】異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の正常ICRマウス血糖への影響を示す。
図13】異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物のT2DMラット血糖への影響を示す。
図14】異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物のT2DMラットOGTTへの影響を示す。
図15】異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物のT2DMラット肝グリコーゲン含有量への影響を示す。
図16】異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物のT2DMラット筋グリコーゲン含有量への影響を示す。
図17】異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物のT2DMラットGSP含有量への影響を示す。
【0038】
図中、*は正常対照グループと比較してp<0.05、**は正常対照グループと比較してp<0.01、#はモデルグループと比較してp<0.05、##はモデルグループと比較してp<0.01。
【実施例】
【0039】
以下は本発明の原理及び特徴に対して行われた説明である。挙げられた実例は本発明の解釈用のみに扱われるものとし、本発明の範囲を限定するものではない。
【0040】
実験例1 瓦草五環系トリテルペン類化合物の抽出、分離、精製、鑑別方法
瓦草21kgを取り、粉砕後に170Lの95%エタノール及び70%のエタノールでそれぞれ3回抽出を行い、濃縮を通して抽出物7kgを取得した。分離精製方法は文献(J.Zhao,Norio Nakamura, Masao Hattori. New triterpenoidsaponins from the roots of sinocrassulaasclepiadea[J].Pharmaceutical Society of Japan, 2004, 52(2):230-237.)を参考とした。大分子化合物のシノクラッスロシドVI、シノクラッスロシドVII、シノクラッスロシドVIII、シノクラッスロシドIX、シノクラッスロシドXII、シノクラッスロシドXIIIを得た。この中で、シノクラッスロシドVI及びシノクラッスロシドVII、シノクラッスロシドVIII及びシノクラッスロシドIX、シノクラッスロシドXII及びシノクラッスロシドXIIIは3セットのシストランス異性体である。
【0041】
化合物1及び化合物2(シノクラッスロシドVI及びシノクラッスロシドVII):白色粉末、分子式:C7110231。ESI−MS(m/z):1473.2[M+Na],1449.7[M−H]H−NMR及び13C−NMRの具体的なデータは表1参照。
【0042】
化合物3及び化合物4(シノクラッスロシドVIII及びシノクラッスロシドIX):白色粉末、分子式:C7210431。ESI−MS(m/z):1487.2[M+Na],1499.7[M+Cl],1463.8[M−H]H−NMR及び13C−NMRの具体的なデータは表1参照。
【0043】
化合物7及び化合物8(シノクラッスロシドXII及びシノクラッスロシドXIII):白色粉末、分子式:C7511031。ESI−MS(m/z):1529.3[M+Na],1541.8[M+Cl]-,1505.6[M−H]H−NMR及び13C−NMRの具体的なデータは表1参照。
【表1】
【0044】
実験例2 瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の2型糖尿病マウスに対する血糖降下作用
【0045】
動物と飼養管理
12週齢のオスKKAyマウス80匹及び12週齢のオスC57BL/6マウス10匹は、北京華阜康生物科技有限公司より提供された。許可証明番号はSCXK(京)2009−0015である。マウスに適応性給餌した1週間後に、薬効学実験を実施した。
【0046】
実験動物の飼養条件を表2に示す。
【表2】

12時間明/12時間暗:明暗交替時間がそれぞれ12時間であることを表明する。
【0047】
動物を飼料のあるプラスチック飼養箱中にて飼養し、清潔級KKAy専用高脂飼料(北京華阜康生物科技有限公司から購入)を給餌し、自由飲水させた。
【0048】
実験設計
適応性給餌した1週間後、80匹のKKAyマウスをランダムに8グループに分け、それぞれモデルグループ、化合物1グループ、化合物2グループ、化合物3グループ、化合物4グループ、化合物7グループ、化合物8グループ、及び陽性薬メトホルミングループであり、グループ毎に10匹とした。別途10匹の正常C57BL/6マウスを正常対照グループとした。この中で、KKAyマウスには特殊の高脂飼料を給餌し、正常対照グループには正常の飼料を給餌した。正常対照グループ及びモデルグループマウスの皮下に注射用水を注射し、瓦草サポニン各グループマウスの皮下に異なるサポニンを注射し、陽性薬メトホルミングループに胃へメトホルミン水溶液を投与した。投与時間は全て毎日9:00ぐらいとし、投与体積は全て10ml/kgBWとした。連続的に2週間実施した。
【0049】
毎週マウス尾から採血し、試験紙法で血糖を測定した。
【0050】
グループ分けの状況を以下に示す。
【表3】
【0051】
投与方法
瓦草五環系トリテルペン各サポニン類成分をそれぞれ無菌注射用水に溶解させ、ろ過除菌を行い、毎日皮下注射を行った。メトホルミンを無菌水中に溶解し、胃へ投与した。正常対照グループ及びモデルグループのマウスには、同等体積(10ml/kgBW)の注射用水を注射した。毎日午前中9時に投与し、計2週間とした。
【0052】
実験方案
週に1回マウスの血糖を測定し、計2回とした。血糖を測定する前にマウスを一晩断食させ、尾を切って採血し、血糖を測定した。
【0053】
実験終了:投与2週間(14日)後に該実験研究を終了した。
【0054】
データ集計
SPSS10.0ソフトウェアを通してデータ処理分析を行い、全ての指標は、
【数1】
で表示し、グループ間の比較は分散分析を採用した。
【0055】
結果
異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物のKKAyマウス血糖への影響
本部分の実験は、主に瓦草五環系トリテルペンの異なるサポニン類成分のマウス血糖への影響を観察し、異なる成分の血糖降下作用の強さを比較し、後続作業へ実験根拠を提供することである。
【0056】
投与前(0週間)に血糖レベルを以ってランダムで組分けを行った。モデルグループと各投与グループのマウスの血糖は、正常対照グループよりかなり高く、差異に顕著性が見られる。データによると、KKAyマウスの血糖値は高いことから、糖尿病マウスモデルとして合格であることを表明する。
【0057】
薬物で1週間干渉後、モデルグループと比較すると、各サポニン類成分グループのマウスの血糖は全て異なる程度で低減し、この中で、化合物1の血糖降下作用が最も強い(モデルグループと比較すると、p<0.01)、次いで化合物2、化合物4、化合物3、化合物7、化合物8の順である。この中で、化合物8は一定の血糖降下傾向を表現しており、モデルグループと比較すると、統計学的差が現れていない。
【0058】
2週間の時点で、各投与グループマウスの血糖はより明らかに下降し(モデルグループと比較して、全てp<0.01である)、瓦草各サポニン類成分の血糖降下作用の強さは、基本的に投与1週間の時と同じであり、図1に示されている。
【0059】
議論
糖尿病患者の主要症状は血糖の上昇である。生体内で高血糖(ブドウ糖)の持続が全身の組織、器官及び細胞に影響を与え、糖尿病性腎臓病並びに糖尿病性の足、眼底及び周囲神経障害等の慢性合併症を誘発するため、生体内血糖値の下降は糖尿病を治療する主要な目標となっている。
【0060】
本実験はまず、瓦草から抽出した異なるサポニン類成分の血糖降下作用の強さを比較した。研究結果は以下の通りである。化合物1及び化合物2(両者はシストランス異性体)の血糖降下作用は最も強く、その次に化合物3及び化合物4(両者はシストランス異性体)で、化合物7及び化合物8の血糖降下作用はやや弱い。1週間投与した時に、化合物8はただ一定の血糖降下傾向が現れ、モデルグループの血糖と比較すると、統計学的差が認められないが、継続的に1週間投与後、統計学的に有意となった。これは該成分の血糖降下作用は前5類の成分より弱いことを表明している。
【0061】
結論
瓦草中から抽出された各サポニン成分は強い血糖降下作用を備え、糖尿病を治療するには理想的な活性成分となっている。
【0062】
実験例3 瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の2型糖尿病マウスに対する治療作用
【0063】
動物と飼養管理
12週齢のオスKKAyマウス60匹、12週齢のオスC57BL/6マウス10匹は、北京華阜康生物科技有限公司より提供された。許可証明番号はSCXK(京)2009−0015である。マウスに適応性給餌した1週間後に、薬効学実験を実施した。
【0064】
実験動物の飼養条件を表4に示す。
【表4】

12時間明/12時間暗:明暗交替時間がそれぞれ12時間であることを表明する。
【0065】
動物を飼料のあるプラスチック飼養箱の中にて飼養し、清潔級KKAy専用高脂飼料(北京華阜康生物科技株式会社から購入)を給餌し、自由飲水させた。
【0066】
実験設計
適応性給餌した1週間後、60匹のKKAyマウスをランダムに6グループに分け、それぞれモデルグループ、化合物1グループ、化合物2グループ、化合物3グループ、化合物4グループ、及び陽性薬メトホルミングループであり、グループ毎に10匹とした。別途10匹の正常C57BL/6マウスを正常対照グループとした。この中で、KKAyマウスに特殊の高脂飼料を給餌し、正常対照グループには正常の飼料を給餌した。正常対照グループ及びモデルグループマウスの皮下に注射用水を注射し、瓦草サポニン各グループマウスの皮下に異なるサポニンを注射し、陽性薬メトホルミングループに胃へメトホルミン水溶液を投与した。投与時間は全て毎日午前中9時ぐらいとし、投与体積は全て10ml/kgBWとした。連続的に2週間実施した。
【0067】
マウスの体重、摂水量、及び摂餌量は毎週記録した。実験終了時に採血し、血清を分離してから、血糖及びインスリンの含有量を測定し、インスリン感受性指数を計算した。一部の肝臓及び骨格筋を採取して重量を測定することにより、肝グリコーゲン及び筋グリコーゲンを測定した。
【0068】
グループ分け状況を以下に示す。
【表5】
【0069】
投与方法
化合物1、化合物2、化合物3、化合物4を無菌注射用水に溶解し、ろ過除菌を行い、毎日皮下注射した。メトホルミンは胃へ投与した。正常対照グループ及びモデルグループのマウスには、同等体積(10ml/kgBW)の注射用水のみを注射した。毎日午前中9時に投与し、計2週間(14日)とした。
【0070】
実験方案
マウス摂水量の測定:週に1回重量法でマウスの24時間の摂餌量と摂水量を測定した。摂餌量の正確性を確保するため、飼料箱に溢れてきた小顆粒状飼料の回収に注意した。
体重測定:週に1回マウスの体重を測定した。
血液標本:週に1回マウスの血糖を測定した。マウスを一晩断食させ、尾を切って採血し、血糖を測定した。実験終了時に採血して、血糖及びインスリンを測定した。一部の肝臓及び骨格筋を採取し、試薬キット法で肝/筋グリコーゲンの含有量を測定した。
【0071】
実験終了:投与2週間(14日)後に該実験研究を終了した。
【0072】
データ集計
SPSS10.0ソフトウェアを通してデータ処理分析を行い、全ての指標は、
【数2】

で表示し、グループ間の比較は分散分析を採用した。
【0073】
結果
異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物のKKAyマウス体重への影響
モデルグループのマウスは、正常対照グループと比べて体重増加が著しい(全てはp<0.01)。これはKKAyマウスが肥満マウスの一種で、体重が明らかに一般の同年齢のマウスより高いからである。瓦草サポニン各化合物グループ及び陽性薬メトホルミングループのマウスは体重増加が安定し、日平均増加速度がモデルグループより遅い。これは瓦草サポニンが糖尿病マウスの体重増加に一定の抑制作用があることを表明する。図2の通りである。この中で、化合物1の体重増加への抑制作用は最も著しくなっている。
【0074】
異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物のKKAyマウス摂餌量への影響
モデルグループのマウスは摂餌量が正常対照グループより明らかに高く、糖尿病臨床「多食」症状に適合する。異なる薬物を投与して1週間干渉後、各グループマウスの摂餌量は模型グループと比べると減少した。この中で、化合物1グループ及び陽性薬メトホルミングループの摂餌量は明らかに減少し(モデルグループと比較すると、p<0.05)、他の各グループはただ減少傾向を示し、モデルグループと比較すると、統計学的差は無い。
【0075】
投与2週間の時点で、化合物4グループ以外、他の各薬物干渉グループマウスの摂餌量はモデルグループと比べて、全て著しく下降(p<0.05或いはp<0.01)し、一定の時間−効果関係を表現し、図3に示されている。
【0076】
異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物のKKAyマウス摂水量への影響
モデルグループのマウスの摂水量は、明らかに正常対照グループより高く、糖尿病臨床「多飲」症状に適合する。薬物干渉した1週間及び2週間の時点で、各投与グループの摂水量は全て減少した。モデルグループと比較すると、化合物4グループだけ1週間投与した後に、統計学的差が出るが、他のグループは摂水量が全て明らかに減少し(モデルグループと比較すると、p<0.05或いはp<0.01)、図4に示されている。
【0077】
異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物のKKAyマウス血糖への影響
本部分の実験では、それぞれ薬物干渉期間及び投与停止後のマウス血糖の変化を観察した。薬物で1週間干渉後、モデルグループと比較すると、化合物4グループは統計学的差が発生していない以外、他グループの血糖は著しく下降(モデルグループと比較すると、均有p<0.01)している。2週間投与した時点で血糖はより著しく下降(モデルグループと比較してp<0.01)している。この中で、化合物1グループのマウスの血糖は正常対照グループより低くなっている。化合物4グループ以外に、瓦草サポニン他の各化合物の血糖降下作用は陽性薬メトホルミンより優れており、強い血糖降下作用のあることを表明し、図5に示されている。
【0078】
同時に、本申請の発明者は、瓦草サポニン投与停止後の血糖降下作用の維持時間に対して研究を実施した。結果は以下の通りである。投与停止後に各投与グループKKAyマウスの血糖は段々回復し、投与停止2週間の時点で陽性薬メトホルミングループマウスの血糖はモデルグループと比べて明らかな差異が認められず、血糖降下作用が消失した。瓦草サポニン各投与グループの血糖は同様に上昇しているが、モデルグループ(p<0.01)より著しく低くなっている。投与停止3週間の時点で化合物1グループのマウスの血糖はモデルグループより低くなっている。データによると、投与停止後の瓦草サポニンの血糖降下作用の持続時間は陽性薬メトホルミンより長く、相対的に長期間に渡って血糖の上昇速度を抑えることが分かる。図6に示されている。
【0079】
異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物のKKAyマウスインスリン含有量及びインスリン感受性(ISI)への影響
モデルグループマウスのインスリン濃度は、正常対照グループと比べると明らかに増加しているが(p<0.01)、血糖値が高くなっており、一定のインスリン抵抗性(IR)が現れ、2型糖尿病の症状に適合する。薬物干渉した後、化合物4グループ以外の他のグループのマウスでは、インスリン濃度がモデルグループより明らかに上昇している(p<0.05或いはp<0.01)。これは、瓦草サポニンが膵β細胞のインスリン分泌を促進する作用があることを表明し、図7に示されている。
【0080】
ISIから見ると、モデルグループマウスのISIは著しく下降し、各投与グループのマウスはモデルグループよりISIが明らかに向上(全てはp<0.01)していることが分かった。これは、瓦草サポニンが生体内インスリン感受性を増加するのに、一定の生物学活性があることを表明し、図8に示されている。
【0081】
異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物のKKAyマウス肝グリコーゲン及び筋グリコーゲン含有量への影響
データによると、KKAyマウスの肝グリコーゲン及び筋グリコーゲン含有量は、正常対照グループより明らかに減少している(p<0.01)。薬物干渉した後、各グループのマウスの肝グリコーゲン含有量は、全てモデルグループより著しく増加(p<0.05或いはp<0.01)している。異なる瓦草サポニンの筋グリコーゲン含有量への影響と作用は一致していない。この中で、化合物1及び2の作用は強いのに対し(モデルグループと比較すると、p<0.01)、化合物3及び4グループの筋グリコーゲン含有量は一定の増加傾向が現れるが、モデルグループと比較すると、明らかな統計学的差は無い。
【0082】
該実験によると、瓦草サポニンにより、生体内組織におけるグリコーゲンへの保存機能が強化できることを表明する。この中で、化合物1グループの肝、筋グリコーゲン含有量の増加は最も著しく、陽性薬メトホルミングループと似ており、このことは、図9〜10に示されている。
【0083】
議論
糖尿病患者の主要症状は血糖値の上昇であり、臨床上に主に多飲、多食、多尿及び体重減少などの症状が出ており、即ち代表的な「三多一少」の症状である。生体内での高血糖(ブドウ糖)の持続が全身の組織、器官及び細胞に影響を与え、糖尿病腎臓病、糖尿病の足、眼底及び周囲神経障害等慢性合併症を誘発するため、生体内血糖値の下降は糖尿病を治療する主要な目標となっている。2型糖尿病患者は高血糖以外、常に耐糖能異常、Ins感受性低下等の症状があり、同時に脂質代謝障害及びインスリン耐糖能異常が存在し、実験室指標はTC、TG、LDLの上昇、HDL低下等として表現される。
【0084】
本実験の研究結果によると、瓦草サポニンは迅速且つ有効に糖尿病モデルマウスの多飲、多食症状を改善し、マウスの血糖値を下げ、インスリン分泌を促進し、生体内におけるインスリンへの感受性を強化することにより、生体組織の肝、筋グリコーゲン含有量を増加させることが明らかになった。この中で、化合物1の薬効学作用は陽性薬メトホルミンと類似し、良好な血糖降下及びインスリン感受性を強化する生物学活性を持っている。同時にその薬効学作用の維持時間はメトホルミンより長く、投与停止後に血糖の短時間内の反動が有効に抑えられる。その薬理学活性作用を分析すると、それがインスリン分泌の増加、インスリン感受性の増強、並びに生体組織における外周血糖への保存機能の促進と関連があるからである。
【0085】
結論
瓦草サポニンは糖尿病マウスの多飲、多食症状を改善し、インスリンの分泌及び生体内インスリンの感受性を有効的に促進し増加する効果が十分期待である。また、生体組織におけるグリコーゲンを蓄える機能も強化させ、非常に強い血糖降下作用を備え、一種の糖尿病を治療する理想的な活性成分として、優れた製薬性を備えている。
【0086】
実験例4 瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の正常ICRマウスへの血糖降下作用
血糖降下作用の最も強い化合物1及び化合物2を代表とし、瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の正常マウスへの血糖降下作用を考察した。
【0087】
動物と飼養管理
20〜22gのオスICRマウス40匹が北京ICR Mice実験動物技術有限公司より提供された。合格証明書番号がSCXK(京)2011−0004である。マウスに適応性給餌した1週間後に、薬効学実験を実施した。
【0088】
実験動物の飼養条件を以下に示す。
【表6】
【0089】
動物を飼料のあるプラスチック飼養箱中にて飼養し、マウスに清潔級維持飼料(北京科澳協力飼料有限会社)を給餌し、自由飲水させた。
【0090】
実験設計
適応性給餌した1週間後、40匹のICRマウスをランダムで4グループに分け、それぞれ正常対照グループ、化合物1グループ、化合物2グループ、及び陽性薬メトホルミングループであり、グループ毎に10匹とした。各グループのマウスに清潔級のマウス維持飼料を給餌した。正常対照グループのマウスには皮下注射で注射用水を注射した。瓦草サポニンを各グループのマウスに皮下注射で異なるサポニンを注射した。陽性薬メトホルミングループには胃へメトホルミン水溶液を投与した。投与時間は全て毎日午前中9時ぐらい、投与体積は全て10ml/kgBWとし、連続2週間実施する。
【0091】
週に1回、体重及び空腹時の血糖を測定した。
【0092】
グループ分けの状況を以下に示す。
【表7】
【0093】
投与方法
化合物1及び化合物2を無菌注射用水に溶解させ、ろ過除菌を行い、毎日皮下注射した。正常対照グループには同等体積(10mg/kgBW)の注射用水のみを注射し、メトホルミンを胃へ投与した。毎日午前中9時に投与し、計2週間とした。
【0094】
実験方案
体重の測定:週に1回マウスの体重を測定した。
血糖の測定:週に1回マウスの血糖を測定した。マウスを一晩で断食させ、尾を切って採血し、試験紙法で空腹時の血糖を測定した。
【0095】
実験終了:投与2週間(14日)後に該実験研究を終了した。
【0096】
データ集計
SPSS10.0ソフトウェアを通してデータ処理分析を行い、全ての指標は、
【数3】

で表示し、グループ間の比較は分散分析を採用した。
【0097】
結果
異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の正常ICRマウス体重への影響
瓦草サポニン投与グループのマウスは、正常対照グループと比べて著しい変化がない。瓦草サポニンが正常ICRマウスの体重増加に明らかな影響がないことは、データで表明され、図11に示されている。
【0098】
異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の正常ICRマウス血糖への影響
薬物で1週間干渉した後、瓦草サポニングループマウスの血糖は正常対照グループに対して下降した。化合物1グループは明らかに下降する以外(p<0.05)、他の各グループのマウスは下降傾向だけが現れ、正常対照グループと比較すると、統計学的差は無い。2週間投与した時点で、化合物1グループ及び化合物2グループのマウスの血糖はより明らかに下降し(正常対照グループと比べると、p<0.01)、著しい血糖降下作用を表現し、図12に示されている。
【0099】
結論
化合物1及び2は正常動物に対し、一定の血糖降下作用を備え、これは瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物が正常動物の血糖に対して一定の影響を与えることを表明する。
【0100】
実験例5:異なる瓦草五環系トリテルペノイドサポニン類化合物の実験性2型糖尿病(T2DM)ラットに対する血糖降下作用
【0101】
動物と飼養管理
180〜200gのオスSDラット50匹がICR Mice(北京)実験動物技術有限公司より提供された。合格証明書番号はSCXK(京)2011−0004である。ラットに適応性給餌した1週間後に、薬効学実験を実施した。
【0102】
実験動物の飼養条件を以下に示す。
【表8】
【0103】
動物を飼料のあるプラスチック飼養箱中にて飼養し、ラット清潔級維持飼料(北京科澳協力飼料有限会社)を給餌し、自由飲水させた。
【0104】
実験設計
適応性給餌した1週間後、ラットをランダムで5グループに分け、それぞれ正常対照グループ、モデルグループ、化合物1グループ、化合物2グループ、及び陽性薬アカルボース(acarbose)グループであり、グループ毎に10匹とした。各グループのラットに清潔級のラット維持飼料を給餌した。正常対照グループ及びモデルグループのマウスに皮下注射で注射用水を注射し、瓦草サポニン各グループのマウスに皮下注射で異なるサポニンを注射し、陽性薬アカルボースグループに胃へアカルボース水溶液を投与した。投与時間は全て毎日午前中9時とし、体積は全て10ml/kgBWとした。連続的に2週間実施した。
【0105】
週に1回、体重及び空腹時の血糖を測定した。
【0106】
グループ分けの状況を以下に示す。
【表9】
【0107】
投与方法
化合物1及び2を無菌注射用水に溶解させ、ろ過除菌を行い、毎日皮下注射を行った。対照グループ及びモデルグループのマウスには、同等体積(10mg/kgBW)の注射用水のみを注射し、アカルボースを胃へ投与した。毎日午前中9時に投与し、計2週間とする。
【0108】
実験方案
T2DMモデルの調製
60匹のラットについて、正常対照グループの10匹に胃へ動物飲用水を投与する以外、他の各グループのラットに対して胃へ高脂乳剤を投与し、10ml/kgとし、毎週体重を測定した。4週間後に正常グループ以外の各グループに対して腹腔内にストレプトゾトシン(STZ、pH4.2に溶解するクエン酸−クエン酸ナトリウム緩和溶液を使用前に調製し、日光を避けて保存した)を注射し、30mg/kgとした。4日後に後尾静脈で採血して血糖を測定した。空腹時血糖値>11.1mmol/Lのラットを選択して試験に投入した。
【0109】
血糖の測定
それぞれ投与前及び投与2週間後にラットの血糖を測定した。ラットを一晩断食させ、尾を切って採血し、試薬キット法で空腹時の血糖を測定した。
【0110】
糖耐量実験(OGTT実験)
投与2週間後、OGTT実験を実施した。実験前にラットを16時間断食させ、給水を中断せず、50%ブドウ糖をラットに投与し、5g/kgBWとした。胃にブドウ糖を投与する前にまず空腹時の血糖値を測定し、胃にブドウ糖を投与した後の30、60、120分後にそれぞれラットの血糖を測定した。
【0111】
フルクトサミン(GSP)、肝グリコーゲン、及び筋グリコーゲン含有量の測定
実験終了時に腹部大動脈から採血してGSPを測定した。また、一部の肝臓及び骨格筋を採取して、試薬キット法で肝/筋グリコーゲンの含有量を測定した。
【0112】
実験終了:投与2週間(14日)後に該実験研究を終了した。
【0113】
データ集計
SPSS10.0ソフトウェアを通してデータ処理分析を行い、全ての指標は、
【数4】

で表示し、グループ間の比較は分散分析を採用した。
【0114】
結果
瓦草サポニンのT2DMラットの血糖への影響
投与2週間後、化合物1グループ、化合物2グループ及び陽性薬アカルボースグループラットの血糖は、モデルグループと比べると明らかに(P<0.01)低減しており、優れた血糖降下作用を表明している。この中で、化合物1の血糖降下強度は陽性薬アカルボースより優れており、図13に示す。
【0115】
瓦草サポニンのT2DMラットOGTTへの影響
ブドウ糖を30分で投与した時に、各グループラットの血糖もある程度上昇した。この中で、正常対照グループの血糖は明らかに上昇しておらず、一方、モデルグループと各投与グループラットの血糖は急激に上昇し、投与グループとモデルグループの血糖に統計学的差は発生していない。正常対照グループのラットの血糖はブドウ糖を30分で投与した時に下降し始めて、120分の時点で正常に戻った。モデルグループのラットの血糖は60分及び120分の時点にある程度に下降しているが、下降速度が遅く、120分の時点での血糖レベルは依然としてブドウ糖投与前のレベルより高く、ブドウ糖耐糖能が弱いことを表わしている。薬物干渉グループラットの血糖の下降速度は、モデルグループと比べると明らかに加速し(モデルグループと比較すると、p<0.05或いはp<0.01)、化合物1及び化合物2の糖尿病ラットOGTTへの改善作用は、陽性薬アカルボースの作用に相当し、図14に示されている。
【0116】
瓦草サポニンのT2DMラット肝グリコーゲン、肌グリコーゲン及びGSP含有量への影響
モデルグループ肝及び筋グリコーゲン含有量は、正常対照グループと比べると明らかに(P<0.05)減少し、それに対して血中GSP含有量は明らかに(P<0.01)増加している。化合物1、化合物2、及びアカルボースで干渉した後、各グループのマウスの肝及び筋グリコーゲン含有量は明らかに増加し、血中GSPの含有量は明らかに減少している。この中で、化合物1及び化合物2の作用は著しく、陽性薬アカルボースより優れており,図15〜17に示されている。
【0117】
議論
今現在、中国国内で糖尿病に関する研究では、殆どがストレプトゾトシン(streptozotocin,STZ)又はアロキサンの大量注射方法を採用することにより、糖尿病動物モデルを調製している。その作用原理は、膵β細胞を選択的に破壊し、細胞死を起こすことによって、血中インスリンが異なる程度で下降し血糖の上昇も伴うということである。この場合はほとんど1型糖尿病を形成するが、インスリン分泌不足の特徴は2型糖尿病(Type 2 diabetes mellitus,T2DM)の病理過程や臨床症状と一致していない。このため、飲食に亜病原剤量のストレプトゾトシンの腹腔注射という方法を通してT2DMモデルを調製した。
【0118】
各グループのモデルを調製した後、ブランクグループ及び対照グループの血糖値を比較すると、全て明らかな高血糖状態に位置し、STZで高血糖モデルの製造が成功したことを説明している。
【0119】
実験結果から見て分かるように、化合物1及び化合物2を皮下注射で投与した場合、血糖降下作用が著しく、陽性薬アカルボースグループと比較すると、その血糖降下効果はアカルボースより優れている。
【0120】
T2DM糖尿病ラットモデルグループの肝グリコーゲン及び筋グリコーゲンも下降傾向あり、それに対して化合物1グループ及び化合物2グループの肝グリコーゲン及び肌グリコーゲン含有量は正常対照グループより著しく高くなっている。化合物1及び化合物2が糖尿病グリコーゲンの分解発生に抵抗可能で、肝臓と筋肉中にあるグリコーゲン含有量の向上を通して、糖尿病による肝臓や外周組織への損傷に抵抗し、その効果は陽性対照薬のアカルボースグループより優れている。
【0121】
GSPとは、糖尿病の高血糖状態でブドウ糖と血清蛋白質分子のN末端のアミノ基との非酵素的糖化反応により形成された安定的な高分子ケトアミン構造である。血清アルブミンタンパク質の半減期が17−20dであるため、即時血糖濃度の影響を受けずに、GSPの測定は測定前2〜3週間内の平均血糖レベルを反映可能である。測定結果から見ると、糖尿病ラットモデルグループのGSP数は著しく向上し、それに対して化合物1グループ、化合物2グループ及び陽性対照アカルボースグループのGSP値は著しく低下し、化合物1及び化合物2の効果も陽性対照アカルボースより優れている。
【0122】
結論
化合物1及び2は、皮下注射で明らかな血糖降下、糖耐能の改善、肝/筋グリコーゲン含有量の増加、及びラット血中GSP下降の作用を有し、皮下注射用血糖降下に有効的な生物活性成分である。
【0123】
以上はただ本発明に関する優れた実施用例のみで、本発明の制約に扱わないものとする。本発明の精神と原則の元で行われた一切の修正、同等代替、改善等は、全て本発明の保護範囲内に含まれている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17