【実施例】
【0041】
実施例1:新規なO−スクシニルトランスフェラ−ゼ活性を有するポリペプチドの選別
metA遺伝子のフィードバック調節の解除及び安定性を確保するための方法の一環として、metX遺伝子(Homoserine O-acetyltransferase)がmetA遺伝子と類似の構造を有しながらもL−メチオニン(L-methonine)に対するフィードバック阻害を受けないことに着目し、クロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)由来のmetXが開発されたことがある。
【0042】
これに対し、新規なホモセリンO−スクシニルトランスフェラ−ゼの開発のために、既に開発されたクロモバクテリウム・ビオラセウム由来のmetXのアミノ酸配列の相同性分析により、最終的に配列番号1のアミノ酸配列を有するメチオニンフィードバック阻害耐性に解除されたポリペプチドを選別し、選別されたポリペプチドは、シデロキシダンス・リトトロピクスES−1(Sideroxydans lithotrophicus ES-1)に由来のmetXであるが、既存に報告されたことのない新規な活性を、本発明者らが新たに確認した。
【0043】
実施例2:プラスミドの作製
2−1.シデロキシダンス・リトトロピクスES−1由来のmetX遺伝子の合成
選別したシデロキシダンス・リトトロピクスES−1(sli)由来のmetX遺伝子は、NCBIデータベースの参照配列(reference sequence)YP_003522665.1のmetX遺伝子配列(配列番号2)をベースに、大腸菌(Escherichia coli)で発現できるようにコドン最適化(codon optimization)の過程を経て合成した(配列番号3)。
【0044】
2−2.シデロキシダンス・リトトロピクスES−1由来のmetX遺伝子を発現するプラスミドの作製
合成した配列番号3の塩基配列をベースに、配列番号4、5のプライマーを用いてPCRを行い、metX遺伝子を増幅した。配列番号5のプライマーは、制限酵素HindIII部位を有している。
【0045】
配列番号4) 5'- ATC TTGAGTATTTCGGTTGGTATTG-3’
配列番号5) 5'-CCC AAGCTT ttaagcagctgattcccaagc-3’
【0046】
PCR条件は、変性(denaturation)95℃で30秒間、アニーリング(annealing)55℃で30秒間、伸長(extension)72℃で1分間を30回繰り返して行った。このPCR結果物は、1.0%のアガロースゲルで電気泳動した後、1.14kbの大きさのバンドを溶離して精製した後、HindIII制限酵素を処理し、cysKプロモーターが含まれているpCL1920ベクターは、EcoRV及びHindIII制限酵素で処理した後、両断片をクローニングした。クローニングの結果として得たmetX遺伝子発現プラスミドをpCL−PcysK−metX(sli)と命名した。
【0047】
実施例3:実験菌株の作製
3−1.metB遺伝子欠損
野生型E. coli(K12)W3110菌株からシスタチオニンγ−シンターゼをコードするmetB遺伝子を欠損させた。metB遺伝子欠損のためにFRT−one−step−PCR deletion方法を行った(非特許文献5)。metB遺伝子欠損のために、配列番号6、7のプライマーを用いてpKD3ベクター(非特許文献5)を鋳型としてPCR反応により欠損カセット(deletion cassette)を作製した。
【0048】
配列番号6) 5’-TTACTCTGGTGCCTGACATTTCACCGACAAAGCCCAGGGAACTTCATCACGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC-3’
配列番号7) 5'-CGCTGCGCCAGCTCCATACGCGGCACCAGCGTTCGCAACCCACGTAGCAGCATATGAATATCCTCCTTAG-3’
【0049】
PCR条件は、変性95℃で30秒間、アニーリング55℃で30秒間、伸長72℃で1分間を30回繰り返して行った。このPCR結果物は、1.0%のアガロースゲルで電気泳動した後、1.1kbの大きさのバンドを溶離して精製した。回収したDNA切片はpKD46ベクター(非特許文献5)を予め形質転換したE. coli(K12)W3110菌株にエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション(electroporation)のために、pKD46に形質転換したW3110菌株は、200μg/Lのアンピシリン(ampicillin)と5 mMのアラビノース(L-arabinose)が含まれたLB培地を用いて30℃、OD
600=0.5まで培養した後、10%のグリセロールで3回洗浄して使用した。エレクトロポレーションは2500Vで加えた。回収した菌株を30μg/Lのクロラムフェニコール(chloramphenicol)を含むLB平板培地に塗抹し、37℃で1〜2日間培養した後、耐性を示す菌株を選別した。
【0050】
選別された菌株は、菌株を鋳型として配列番号8、9のプライマーを用いて、前記条件でPCRした後、1.0%のアガロースゲル上で遺伝子の大きさが1.5kbで観察されたことを確認したことにより、metB遺伝子の欠損を確認した。
【0051】
配列番号8) 5'-TATTCGCCGCTCCATTCAGC-3’
配列番号9) 5'-TACCCCTTGTTTGCAGCCCG-3’
【0052】
確認した菌株は、pCP20ベクター(非特許文献5)で形質転換させ、100μg/Lのアンピシリンを含むLB培地で培養し、再び同様の条件のPCRにより1.0%のアガロースゲル上で小さくなった最終的なmetB遺伝子欠損菌株を作製し、クロラムフェニコールマーカーが除去されたことを確認した。作製したメチオニン要求性菌株をCC03−0131と命名した。
【0053】
3−2.thrB遺伝子欠損
ホモセリンキナーゼをコードする遺伝子であるthrB遺伝子を欠損させることにより、ホモセリンからO−スクシニルホモセリンの合成量を増加させようとした。特に、トレオニン生産菌株を利用する場合、ホモセリンの利用活性が非常に大きいため、この遺伝子の欠損が必ず必要である。前記作製したCC03−0131菌株でthrB遺伝子欠損のためにFRT−one−step−PCR deletion方法を行った。thrB遺伝子欠損のためには、配列番号10、11のプライマーを用い、pKD3ベクターを鋳型としてPCR反応により欠損カセットを作製した。
【0054】
配列番号10) 5’-CATGGTTAAAGTTTATGCCCCGGCTTCCAGTGCCAATATGAGCGTCGGGTGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC-3’
配列番号11) 5’-GGAGATACCGCTCGCTACCGCGCCGATTTCCGCGACCGCCTGCCGCGCCTCATATGAATATCCTCCTTAG-3’
【0055】
PCR条件は、変性95℃で30秒間、アニーリング55℃で30秒間、伸長72℃で1分間を30回繰り返して行った。このPCR結果物は、1.0%のアガロースゲルで電気泳動した後、1.1 kbの大きさのバンドを溶離して精製した。回収したDNA切片はpKD46ベクターを予め形質転換させたCC03−0131菌株にエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションのためにpKD46に形質転換したCC03−0131菌株は、200μg/Lのアンピシリンと5 mMのアラビノースを含むLB培地を用い、30℃、OD
600=0.5まで培養した後、10%のグリセロールで3回洗浄して使用した。エレクトロポレーションは2500Vで加えた。回収した菌株を30μg/Lのクロラムフェニコールを含むLB平板培地に塗抹して37℃で1〜2日間培養した後、耐性を示す菌株を選別した。
【0056】
選別された菌株は、菌株を鋳型として配列番号12、13のプライマーを用いて前記条件でPCRした後、1.0%のアガロースゲル上で遺伝子の大きさが1.5 kbで観察されることを確認することにより、thrB遺伝子の欠損を確認した。
【0057】
配列番号12) 5'-ACTCGACGATCTCTTTGCC-3’
配列番号13) 5'-ACGCCGAGAGGATCTTCGCAG-3’
【0058】
確認した菌株は、pCP20ベクターで形質転換させ、100μg/Lのアンピシリンを含むLB培地で培養し、再び同様の条件のPCRにより1.0%のアガロースゲル上で小さくなった最終的なthrB遺伝子欠損菌株を作製し、クロラムフェニコールマーカーが除去されたことを確認した。作製された菌株をCC03−0131−2と命名した。
【0059】
3−3.metA遺伝子欠損
E. coli菌株でシデロキシダンス・リトトロピクスES−1由来のmetX遺伝子の基質特異性及び活性を確認するために、E. coli(K12)W3110菌株にmetBとthrB遺伝子を欠損させたCC03−0131−2菌株をベースに、染色体上の本来のmetA遺伝子を欠損させた。metA遺伝子欠損のためにFRT−one−step−PCR deletion方法を行った。metA遺伝子欠損のために、配列番号14、15のプライマーを用い、pKD3ベクターを鋳型としてPCR反応により欠損カセットを作製した。
【0060】
配列番号14) 5’-TCAGCTGTTGCGCATCGATTCCCGTGAATCGCGCAACACGCCCGCAGAGCGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC-3’
配列番号15) 5’-CCGTCACAAAGGCAATGCGCTTATCTTTACTGGCAAACAGATATGCATCCCATATGAATATCCTCCTTAG-3’
【0061】
PCR条件は、変性95℃で30秒間、アニーリング55℃で30秒間、伸長72℃で1分間を30回繰り返して行った。このPCR結果物は、1.0%のアガロースゲルで電気泳動した後、1.1kbの大きさのバンドを溶離して精製した。回収したDNA切片は、pKD46ベクターを予め形質転換させたCC03−0131−2菌株にエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション(electroporation)のためにpKD46に形質転換されたCC03−0131−2菌株は、200μg/Lのアンピシリンと5mMのアラビノースを含むLB培地を用いて30℃、OD
600=0.5まで培養した後、10%のグリセロールで3回洗浄して使用した。エレクトロポレーションは2500Vで加えた。回収した菌株は30μg/Lのクロラムフェニコールを含むLB平板培地に塗抹して37℃で1〜2日間培養した後、耐性を示す菌株を選別した。
【0062】
選別された菌株は、菌株を鋳型として配列番号16、17のプライマーを用い、前記条件でPCRした後、1.0%のアガロースゲル上で遺伝子の大きさが1.5kbで観察されたことを確認したことにより、metA遺伝子の欠損を確認した。
【0063】
配列番号16) 5'-CTCATTAACGTTGGTTGTCA-3’
配列番号17) 5'-TATCTTGCTGCTGCTGAATG-3’
【0064】
確認した菌株は、pCP20ベクターで形質転換させ、100μg/Lのアンピシリンを含むLB培地で培養し、再び同様の条件のPCRにより1.0%のアガロースゲル上で小さくなった最終的なmetA遺伝子欠損菌株を作製し、クロラムフェニコールマーカーが除去されたことを確認した。作製された菌株をCC03−0132と命名した。
【0065】
3−4.シデロキシダンス・リトトロピクスES−1由来のmetX遺伝子発現プラスミドが導入された菌株の作製
シデロキシダンス・リトトロピクスES−1由来のmetX遺伝子の基質特異性及び活性を確認するために、野生型菌株E. coli(K12)W3110をベースにmetB、thrB及びmetA遺伝子を欠損させた菌株CC03−0132菌株に、前記実施例2で作製したプラスミドpCL−PcysK−metX(sli)を導入した。
【0066】
プラスミドpCL−PcysK−metX(sli)を導入したCC03−0132菌株をCC03−0136と命名し、2013年O6月10日付で韓国ソウル特別市西大門区弘済1洞361−221番地に所在するブダペスト条約の下の国際寄託機関である韓国種菌協会付設韓国微生物保存センターに受託番号KCCM 11424Pとして寄託した。
【0067】
対照群としてCC03−0132菌株に、野生型metAを利用したこと以外は実施例2と同様の方法で作製したプラスミドpCL−PcysK−metAを導入して菌株を作製した。前記作製された菌株をCC03−0132/pCL−PcysK−metAと命名した。
【0068】
それだけでなく、特許文献2に開示された菌株として、メチオニン要求性菌株であるL−トレオニン(L-threonine)の生産菌株TF4076(受託番号:KFCC−10718)をベースにNTGを用いた人工的な突然変異法を利用して、メチオニン要求性が解除されたトレオニン生産菌株CJM002(受託番号:KCCM−10568)を用いて、前記3−1〜3−3と同様の方法で菌株を作製し、作製された菌株をCJM−BTAと命名した。
【0069】
CJM−BTA菌株をベースに、前記と同じプラスミドpCL−PcysK−metX(sli)、pCL−PcysK−metAを導入し、作製された菌株をそれぞれCJM−BTA/pCL−PcysK−metX(sli)及びCJM−BTA/pCL−PcysK−metAと命名した。
【0070】
実施例4:菌株を用いたO−スクシニルホモセリンの生産
4−1.フラスコ培養実験
前記実施例3で作製した菌株に導入されたシデロキシダンス・リトトロピクスES−1由来のmetX遺伝子の基質特異性及び活性を確認するために、三角フラスコ培養を行った。フラスコ培地組成を下記表1に示した。
【0071】
【表1】
【0072】
平板LB培地に、対照群としてCC03−0132菌株及びCJM−BTA菌株を接種し、抗生剤であるスペクチノマイシンが含有された平板LB培地に、metX発現ベクターを形質転換したCC03−0136菌株及び同じベクターを用いて作製したmetA発現ベクターを形質転換した菌株(CC03−0132/pCL−PcysK− metA)、そしてCJM−BTA菌株をベースに、metXまたはmetA発現ベクターをそれぞれ形質転換した両菌株(CJM−BTA/pCL−PcysK−metX(sli)及びCJM−BTA/pCL−PcysK− metA)を接種して33℃で一夜培養した後、単一のコロニーをスペクチノマイシンが含まれた2mlのLB培地に接種した後、33℃で2時間培養し、再び25mlのフラスコ培地を含む250 mlの三角フラスコにOD
600=0.07で接種して33℃の200rpmで48時間培養し、HPLC分析によりO−スクシニルホモセリンの生産量を比較した。その結果を下記表2に示した。
【0073】
【表2】
【0074】
その結果、シデロキシダンス・リトトロピクスES−1由来のmetX遺伝子はE. coliのmetA遺伝子と同様に、スクシニルCoA(succinyl-CoA)を基質として用いてO−スクシニルホモセリンを生産し、O−アセチルホモセリンは生産していなかった。シデロキシダンス・リトトロピクスES−1由来のmetX遺伝子が導入された場合は、変異の導入なしに野生型そのものでも培地に添加されたメチオニンによるフィードバック阻害現象が示されないことが分かった。
【0075】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形で実施されうることを理解できるであろう。これに関連し、以上で記述した実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものではないものとして理解しなければならない。本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【0076】