(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書に記載されている減摩添加剤は、エンジンオイル、並びに特に、自動車エンジンオイル、自動車ギア及びトランスミッションオイル、工業用ギアオイル、油圧作動油、コンプレッサーオイル、タービン油、切削油、圧延油、掘削油、潤滑グリースなどの減摩添加剤として使用できる。
【0024】
減摩添加剤は、式(I)の化合物又は組成物を含む、又は式(I)の化合物又は組成物から成る。
【0026】
式中、
R
1は少なくとも2つの活性水素原子をもつ基の残基であり、
mは少なくとも2であり、
AOはアルキレンオキシド残基であり、
nは各々独立して0〜100であり、
R
2は各々独立してH又はR
3であり、R
3は各々独立してポリヒドロキシアルキルカルボン酸若しくはポリヒドロキシアルケニルカルボン酸の残基、ヒドロキシアルキルカルボン酸若しくはヒドロキシアルケニルカルボン酸の残基、及び/又はヒドロキシアルキルカルボン酸若しくはヒドロキシアルケニルカルボン酸のオリゴマーの残基であり、
平均して少なくとも0.5個のR
2基はR
3である。
【0027】
少なくとも概念的には、減摩添加剤は化合物の「コア基」とみなすことができるR
1基から構築される。このコア基は、少なくとも2つの活性水素原子、好ましくはヒドロキシル及び/又はアミノ基に存在するもの、並びにより好ましくはヒドロキシル基に存在するもののみを含有する化合物の残基(m個の活性水素原子の除去後)である。好ましくは、コア基は置換ヒドロカルビル基、特にC
3〜C
30置換ヒドロカルビル化合物の残基である。
【0028】
R
1コア基としては、例えば、m個の活性水素原子の除去後の以下の組成物の残基が挙げられる。
1 グリセロール並びにポリグリセロール類、とりわけ、ジグリセロール及びトリグリセロール、その部分エステル類、又は複数のヒドロキシル基を含有するいずれのトリグリセリド、例えば、ひまし油;
2 トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールなどのトリメチロールアルカン及び高級ポリメチロールアルカン、並びにその部分エステル類;
3 糖、特に、ソルビトール、マンニトール、及びラクチトールなどの非還元糖、ソルビタン(ソルビトールの環状脱水エーテル)などの糖のエーテル化誘導体、メチルグルコース及びアルキル(ポリ)サッカライドなどの糖の部分アルキルアセタール、デキストリンなどの糖の他のオリゴマー/ポリマー、例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、及びベヘニン酸の脂肪酸エステルなどの糖の部分エステル化誘導体、ソルビタン、ソルビトール、及びスクロースのエステル、N−アルキルグルカミン及びそれぞれのN−アルキル−N−アルケノイルグルカミドなどのアミノサッカライド;
4 ポリヒドロキシカルボン酸、とりわけ、クエン酸及び酒石酸;
5 二多官能性アミン及び多官能性アミンを含むアミン、特に、エチレンジアミン(1,2−ジアミノエタン)などのアルキルジアミンを含むアルキルアミン;
6 アミノアルコール、特に、エタノールアミン、2−アミノエタノール、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミン;
7 尿素、マロンアミド、及びスクシンアミドなどのカルボン酸アミド;並びに
8 スクシンアミド酸などのアミドカルボン酸。
【0029】
好ましいR
1コア基は、少なくとも3個の、より好ましくは4〜10個の範囲、特に5〜8個の範囲、とりわけ6個の遊離ヒドロキシル基及び/又はアミノ基をもつ基の残基である。R
1基は好ましくは直鎖C
4〜C
7、より好ましくはC
6鎖をもつ。好ましくは、ヒドロキシル基又はアミノ基は鎖炭素原子に直接結合する。ヒドロキシル基が好ましい。
【0030】
R
1は好ましくは、開鎖テトラオール、ペンチトール、ヘキシトール若しくはヘプチトール基又はそのような基の無水誘導体、例えば、無水環状エーテルの残基である。特に好ましい実施形態では、R
1は、糖の残基又は糖由来の残基であり、より好ましくは、グルコース、フルクトース、若しくはソルビトールなどの単糖、マルトース、パリトース(palitose)、ラクチトール、若しくはラクトースなどの二糖、又は高次のオリゴ糖の残基又はそれらに由来する残基である。R
1は、好ましくは単糖、より好ましくはグルコース、フルクトース、又はソルビトール、特にソルビトールの残基である。
【0031】
R
1基の開鎖形態が好ましいが、内部環状エーテル官能基を含む基が使用でき、合成経路がそのような環化を促進する比較的高い温度又は他の条件に該基を曝した場合に意図することなく(inadvertently)得られうる。
【0032】
添え字mは、R
1コア基の官能性の尺度であり、アルコキシ化反応はコア基が誘導される分子において一部又は全ての活性水素原子(コア基のアルコキシ化基(alkoxylation group)に対するモル比による)を置換することになる。
【0033】
特定の部位における反応は、立体障害又は適切な保護によって制限又は防止できる。そして結果として得られる化合物のポリアルキレンオキシド鎖の末端ヒドロキシル基は、上記の定義されたアシル化合物との反応に利用可能である。添え字mは、好ましくは少なくとも3、より好ましくは4〜10の範囲、特に5〜8の範囲、とりわけ5〜6の範囲にあることになる。混合物が用いられてもよく、通常は混合物が用いられ、よってmは平均値である可能性があり、整数でない場合がある。
【0034】
典型的には、アルキレンオキシド基AOは、rが2、3、又は4、好ましくは2又は3−である(CrH
2rO)−の基、すなわちエチレンオキシ (−C
2H
4O−)又はプロピレンオキシ(−C
3H
6O−)基であり、AOはアルキレンオキシド鎖に沿った異なる基を表しうる。
【0035】
一般に、鎖はホモポリマー状酸化エチレン鎖であることが望ましい。しかし、該鎖はプロピレングリコール残基のホモポリマー鎖又はエチレングリコール及びプロピレングリコール残基の両方を含有するブロック若しくはランダム共重合体鎖であってもよい。通常は、酸化エチレンと酸化プロピレンの単位の共重合体鎖が使用される場合、用いられる酸化エチレン単位もモル比は、少なくとも50%、より一般的には少なくとも70%であることになる。
【0036】
(ポリ)アルキレンオキシド鎖のアルキレンオキシド残基の数、すなわち、パラメーターnの平均値は、好適には1〜50の範囲、好ましくは2〜20の範囲、より好ましくは4〜15の範囲、特に7〜10の範囲、とりわけ8〜9の範囲であることになる。添え字nの合計又は添え字n×mの
積は、好適には5〜300の範囲、好ましくは10〜100の範囲、より好ましくは25〜65の範囲、特に40〜60の範囲、とりわけ45〜55の範囲である。添え字nの値は平均値であり、鎖長の統計学的な変動が含まれる。
【0037】
R
2基は(ポリ)アルキレンオキシド鎖の「末端基」である。末端基は水素又はR
3であり、R
3は各々独立して、ポリヒドロキシアルキル若しくはポリヒドロキシアルケニルカルボン酸の残基、ヒドロキシアルキルカルボン酸若しくはヒドロキシアルケニルカルボン酸の残基、及び/又はヒドロキシアルキル若しくはヒドロキシアルケニルカルボン酸のオリゴマーの残基である。好ましくは、R
3は各々独立して、ポリヒドロキシアルキルカルボン酸の残基、ヒドロキシアルキルカルボン酸の残基、及び/又はヒドロキシアルキルカルボン酸のオリゴマーの残基であり、より好ましくは、ポリヒドロキシアルキルカルボン酸の残基である。
【0038】
平均して、好適には少なくとも1.0、好ましくは少なくとも1.5、より好ましくは少なくとも2.0、特に少なくとも2.2、とりわけ少なくとも2.4のR
2基はR
3である。さらに、平均して、好適には最大でも6.0、好ましくは最大でも4.0、より好ましくは最大でも3.0、特に最大でも2.7、とりわけ最大でも2.5のR
2基はR
3である。
【0039】
ヒドロキシルアルキルカルボン酸及びヒドロキシアルケニルカルボン酸は式HO−X−COOHからなり、式中Xは、少なくとも8個の炭素原子及び20個以下の炭素原子、典型的には11〜17個の炭素を含有する、二価の飽和又は不飽和、好ましくは、飽和、脂肪族ラジカルであり、そこでは少なくとも4個の炭素原子が直接的にヒドロキシル基とカルボン酸基の間にある。
【0040】
望ましくは、ヒドロキシアルキルカルボン酸は12−ヒドロキシステアリン酸である。
実際には、そのようなヒドロキシアルキルカルボン酸は、ヒドロキシル酸と、対応する非置換脂肪酸の混合物として市販されている。例えば、12−ヒドロキシステアリン酸は典型的には、水素化に際し、12−ヒドロキシステアリン酸とステアリン酸の混合物をもたらす、C18不飽和ヒドロキシル酸を含むひまし油脂肪酸と非置換脂肪酸(オレイン酸及びリノール酸)の水素化によって作製される。市販の12−ヒドロキシステアリン酸は典型的に約5〜8%の非置換ステアリン酸を含有する。
【0041】
ポリヒドロキシアルキルカルボン酸又はポリヒドロキシアルケニルカルボン酸は、上記ヒドロキシアルキルカルボン酸又はヒドロキシアルケニルカルボン酸を重合することによって作製できる。対応する非置換脂肪酸の存在は停止剤として作用し、よってポリマーの鎖長を制限する。望ましくは、ヒドロキシアルキル又はヒドロキシアルケニル単位の数は平均して、2〜12、好ましくは3〜10、より好ましくは4〜9、特に5〜8、とりわけ6〜7である。ポリ酸の分子量は典型的に600〜3,000、特に900〜2,700、より具体的には1,500〜2,400、とりわけ約2,100である。
【0042】
ポリヒドロキシアルキルカルボン酸又はポリヒドロキシアルケニルカルボン酸の残留酸価は典型的に50mgKOH/g未満であり、好ましい範囲は30〜35mgKOH/gである。典型的には、ポリヒドロキシアルキルカルボン酸又はポリヒドロキシアルケニルカルボン酸のヒドロキシル価は最大で40mgKOH/gであり、好ましい範囲は20〜30mgKOH/gである。
【0043】
ヒドロキシアルキルカルボン酸又はヒドロキシアルケニルカルボン酸のオリゴマーは、末端が非置換の対応する脂肪酸ではないという点でポリマーと異なりうる。望ましくは、該オリゴマーはヒドロキシルアルキルカルボン酸又はヒドロキシアルケニルカルボン酸の二量体である。
【0044】
1つの好ましい実施形態では、平均して、好適には少なくとも1.0個、好ましくは少なくとも1.5個、より好ましくは少なくとも2.0個、特に少なくとも2.3個、とりわけ少なくとも2.4個のR
2基は、ポリヒドロキシアルキルカルボン酸残基であるR
3基である。くわえて、平均して、好適には最大でも4.0個、好ましくは最大でも3.5個、より好ましくは最大でも3.0個、特に最大でも2.7個、とりわけ最大でも2.5個のR
2基は、ポリヒドロキシアルキルカルボン酸残基であるR
3基である。これらのポリヒドロキシアルキルカルボン酸残基は、好適には平均して3〜10個、好ましくは4〜9個、より好ましくは5〜8個、特に6〜7個、とりわけ、7個のヒドロキシアルキル単量体単位を含有する。
【0045】
ポリヒドロキシアルキルカルボン酸残基は、好ましくは非置換カルボン酸、より好ましくはステアリン酸で末端にもつ。
【0046】
別の好ましい実施形態では、R
3基がヒドロキシアルキルカルボン酸残基、好ましくはポリヒドロキシアルキルカルボン酸残基を含む場合、本明細書で定義される式(I)の化合物にある全てのヒドロキシアルキルカルボン酸残基の総数は、好適には平均して、ヒドロキシアルキル単量体単位で5〜30の範囲、好ましくは8〜20の範囲、より好ましくは10〜17の範囲、特に12〜15の範囲、とりわけ13〜14に範囲である。
【0047】
さらに好ましい実施形態では、平均して、好適には少なくとも2.0個、好ましくは少なくとも2.5個、より好ましくは少なくとも3.0個、特に少なくとも3.3個、とりわけ少なくとも3.5個のR
2基はHである。くわえて、平均して、好適には最大でも5.0個、好ましくは最大でも4.5個、より好ましくは最大でも4.0個、特に最大でも3.7個、とりわけ
最大でも3.6個のR
2基はHである。
【0048】
コア基が例えば、ペンタエリスリトールに由来する場合、コア残基のアルコキシ化は、活性水素を除去できる4つの利用可能な部位にわたって均一に分布でき、末端ヒドロキシル官能基のエステル化に際して、アシル基の分布は予想されるランダムな分布に近づくことになる。しかし、コア基が、全ての活性水素原子が均一ではないソルビトールなどの化合物に由来する場合、アルコキシ化はポリアルキレンオキシ鎖に等しくない鎖長を付与しうる。
【0049】
減摩添加剤は、最初に当該技術分野において周知である技法、例えば、必要量のアルキレンオキシド、例えば、酸化エチレン及び/又は酸化プロピレンと反応させることによってm個の活性水素原子を含有するR
1コア基をアルコキシ化することによって作成できる。好ましくは、該プロセスの第2のステージは標準的な触媒によるエステル化条件下で最大で250℃の温度にて、上記アルコキシ化された種をポリヒドロキシアルキル(アルケニル)カルボン酸及び/又はヒドロキシアルキル(アルケニル)カルボン酸と反応させることを含む。
【0050】
よって、式(I)の減摩添加剤は、R
1基をアルキレンオキシドと反応させること及びこの反応のアルコキシ化された生成物をポリヒドロキシアルキル(アルケニル)カルボン酸、ヒドロキシアルキル(アルケニル)カルボン酸、又はそれらの混合物とエステル化することによって作製できる。
【0051】
1つの好ましい実施形態では、減摩添加剤は、アルコキシ化されたコア基のポリ酸に対するモル比が、好ましくは1:1〜1:4の範囲、より好ましくは1:2〜1:2.8の範囲である、アルコキシ化されたコアR
1基とポリヒドロキシアルキルカルボン酸の反応によって作製される。好ましくは、この経路によって作製された減摩添加剤は、分子量(Mn)が3,000〜10,000、より好ましくは4,000〜7000、特に5,000〜6,000である。
【0052】
本発明の潤滑剤組成物はベースストックを含む。潤滑剤組成物は、組成物の合計重量に対して、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%のベースストックを含んでよい。潤滑剤組成物は、組成物の合計重量に対して、最大でも98重量%、好ましくは最大でも95重量%、より好ましくは最大でも90重量%のベースストックを含んでよい。
【0053】
潤滑剤組成物は、組成物の合計重量に対して、少なくとも0.02重量%、好適には少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも0.5重量%、一層より好ましくは少なくとも1重量%の減摩添加剤を含んでよい。潤滑剤組成物は、少なくとも5重量%、又はさらに少なくとも10重量%の減摩添加剤を含んでよい。潤滑剤組成物は、組成物の合計重量に対して、最大でも20重量%、好ましくは最大でも15重量%の減摩添加剤を含んでよい。
【0054】
1つの実施形態では、潤滑剤組成物は非水性である。しかし、潤滑剤組成物の構成成分は、結果として潤滑剤組成物に存在しうる少量の残留水(水分)を含有しうることが理解されるであろう。潤滑剤組成物は、組成物の合計重量に対して重量で5%未満の水を含んでよい。より好ましくは、潤滑剤組成物は実質的に水を含まず、すなわち、組成物の合計重量に対して重量で、2%未満、1%未満、又は好ましくは0.5%未満の水を含有する。好ましくは、潤滑剤組成物は実質的に無水である。
【0055】
潤滑剤組成物は、エンジンオイル、油圧作動油若しくは油圧作動油剤、ギアオイル、又は金属加工油剤であってよい。潤滑剤組成物をその目的とする用途に合わせるために、潤滑剤組成物は以下のさらなる種類の添加剤の1つ以上を含んでもよい。
【0056】
1.分散剤:例えば、アルケニルスクシンイミド、アルケニルサクシネートエステル、他の有機化合物で改変されたアルケニルスクシンイミド、炭酸エチレン又はホウ酸での後処理によって改変されたアルケニルスクシンイミド、ペンタエリスリトール、フェナート・サリチレート及びそれらを後処理した類似体、アルカリ金属又は混合アルカリ金属、ホウ酸アルカリ土類金属、水和ホウ酸アルカリ金属の懸濁液、ホウ酸アルカリ土類金属の懸濁液、ポリアミド無灰分散剤など、又はそのような分散剤の混合物。
【0057】
2.抗酸化剤:抗酸化剤は、鉱油が使用中に劣化する傾向を減らし、その劣化は金属面のスラッジ及びニス様堆積などの酸化生成物並びに粘度の増加から明らかになる。抗酸化剤としては、例えば、4,4′−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4′−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4′−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチル−フェノール)、4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2′−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチル−フェノール、2,6−ジ−tert−l−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−4−(N,N′−ジメチルアミノ−メチルフェノール)、4,4′−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)−スルフィド、及びビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)などのフェノール型(フェノール系)酸化防止剤が挙げられる。他の種類の酸化防止剤としては、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、チバガイギー社のイルガノックスL−57)、ジチオカルバミド酸金属(例えば、ジチオカルバミド酸亜鉛)、及びメチレンビス(ジブチルジチオカルバミン酸塩)が挙げられる。
【0058】
3.耐摩耗剤:それらの名称が示すように、これらの剤は可動金属部品の摩耗を低減する。そのような剤としては、例えば、リン酸塩、亜リン酸塩、カルバミン酸塩、エステル、硫黄含有化合物、及びモリブデン錯体が挙げられる。
【0059】
4.乳化剤:例えば、直鎖アルコールエトキシレート。
【0060】
5.解乳化剤:例えば、アルキルフェノールと酸化エチレンの付加生成物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、並びにポリオキシエチレンソルビタンエステル。
【0061】
6.極圧剤(EP剤):例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(第一級アルキル、第二級アルキル、及びアリール型)、硫化油、ジフェニルスルフィド、トリクロロステアリン酸メチル、塩素化ナフタレン、フルオロアルキルポリシロキサン、及びナフテン酸鉛。好ましいEP剤は、例えば、耐摩耗油圧油剤組成物の共添加剤構成成分の1つとしてのジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)である。
【0062】
7.多機能性添加剤:例えば、硫化オキシモリブデンジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンオルガノホスホロジチオアート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチラートアミド、アミン−モリブデン錯体化合物、及び硫黄含有モリブデン錯体化合物。
【0063】
8.粘度指数向上剤:例えば、ポリメタクリレートポリマー、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、水素化スチレン−イソプレン共重合体、ポリイソブチレン、及び分散型粘度指数向上剤。
【0064】
9.流動点降下剤:例えば、ポリメタクリレートポリマー。
【0065】
10.発泡防止剤:例えば、アルキルメタクリレートポリマー及びジメチルシリコーンポリマー。
【0066】
潤滑剤組成物は、組成物の合計重量に対して、少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも5重量%のさらなる添加剤又はさらなる添加剤の混合物を含んでよい。潤滑剤組成物は、組成物の合計重量に対して、最大でも30重量%、好ましくは最大でも20重量%、より好ましくは最大でも10重量%のさらなる添加剤又はさらなる添加剤の混合物を含んでよい。
【0067】
添加剤又は複数の添加剤は、市販の添加剤パック(additive pack)の形で入手できる。そのような添加剤パックは、添加剤パックの求められる使用によって組成物の点でさまざまである。当業者は、エンジンオイル、ギアオイル、油圧油、及び金属加工油剤の各々に適した市販の添加剤パックを選択できる。エンジンオイルに適した添加剤パックの例は、潤滑剤組成物の約10重量%での使用が推奨される、アフトン・ケミカル・コーポレーションUS社製のハイテック(Hitec)11100である。ギアオイルに適した添加剤パックの例は、潤滑剤組成物の1.5〜3.5重量%での使用が推奨される、ラインケミー・ライナウ有限会社(Rhein Chemie Rheinau GmbH)(ドイツ)製のアディティン(Additin)RC9451である。油圧作動油又は油圧作動油剤に適した添加剤パックの例は、潤滑剤組成物の約0.85重量%での使用が推奨される、ラインケミー・ライナウ有限会社(ドイツ)製のアディティンRC9207である。金属加工油剤に適した添加剤パックの例は、潤滑剤組成物の2〜7重量%での使用が推奨される、ラインケミー・ライナウ有限会社製のアディティンRC9410である。
【0068】
本明細書では、アメリカ石油協会(API)によって定義されているベースストックグループの命名法が用いられることになる。ベースストックは潤滑剤組成物の目的用途に基づいて選択できる。
【0069】
好ましくは、ベースストックは、APIグループI、II、III、IV、Vベースストック、又はそれらの混合物からなる群から選択される。ベースストックがグループIVのポリアルファオレフィン(PAO)を含む場合、ベースストックは、グループI、II、若しくはIIIの鉱油又はグループVのエステルも含み、ベースストックの減摩添加剤の溶解度を向上できる。グループVのエステルは、5〜10重量%の潤滑剤組成物で含まれて、ベースストックの減摩添加剤の溶解度を向上できる。ベースストックは、グループIVとグループVベースストックの混合物又はグループIV、及びグループI、II、若しくはIIIベースストックの混合物であってよい。
【0070】
1つの実施形態では、本発明の潤滑剤組成物は、エンジンオイルとして、好ましくは自動車エンジンオイルとして使用されうる。潤滑剤組成物がエンジンオイルである場合、減摩添加剤は好ましくは、エンジンオイルの合計重量に対して0.1〜10重量%の範囲の濃度で含まれる。
【0071】
自動車エンジンオイルに関して、ベースストックという用語は、ガソリン及びディーゼル(例えば、大型車両用ディーゼル(HDDEO))エンジンオイルの両方を包含する。ベースストックは、グループI〜グループVベースオイル(グループIII+気体〜液体を含む)又はその混合物にいずれから選択できる。好ましくは、ベースストックは、グループII、グループIII、又はグループIVベースオイルの1つ、とりわけ、グループIIIを、その主要構成成分としてもつ。主要構成成分とは、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも65重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、とりわけ少なくとも85重量% のベースストックを意味する。
【0072】
また、ベースストックは、微量構成成分として、好ましくは30重量%未満、より好ましくは20重量%未満、とりわけ10重量%未満のベースストックの主要構成成分として使用されていないグループIII+、IV及び/又はグループVベースストックのいずれか又はこれらの混合物のベースストックを含んでもよい。そのようなグループVベースストックとしては、例えば、アルキルナフタレン、アルキル芳香族、植物油、エステル、例えば、モノエステル、ジエステル、及びポリオールエステル、ポリカーボネート、シリコーンオイル、並びにポリアルキレングリコールが挙げられる。2種以上のグループVベースストックが含まれてもよい。好ましいグループVベースストックはエステル、特にポリオールエステルである。
【0073】
エンジンオイルに関して、減摩添加剤は、エンジンオイルの合計重量に対して、少なくとも0.2重量%、好ましくは少なくとも0.3重量%、より好ましくは少なくとも0.5重量%のレベルでしてよい。減摩添加剤は、エンジンオイルの合計重量に対して、最大でも5重量%、好ましくは最大でも3重量%、より好ましくは最大でも2重量%のレベルで存在してよい。
【0074】
また、自動車エンジンオイルは、公知の官能性の他の種類の添加剤も、エンジンオイルの合計重量に対して、0.1〜30重量%、より好ましくは0.5〜20重量%、一層より好ましくは1〜10重量%のレベルで含んでもよい。これらのさらなる添加剤としては、界面活性剤、分散剤、酸化防止剤、腐食防止剤、防錆剤、耐摩耗添加剤、発泡抑制剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤、及びそれらの混合物を挙げることができる。粘度指数向上剤としては、ポリイソブテン、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ジエンポリマー、ポリアルキルスチレン、アルケニルアリール共役ジエン共重合体、及びポリオレフィンが挙げられうる。発泡抑制剤としてはシリコーン及び有機ポリマーが挙げられうる。流動点降下剤としては、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ハロパラフィンワックスと芳香族化合物の縮合物、カルボン酸ビニルポリマー、フマル酸ジアルキルの三元共重合体、脂肪酸のビニルエステル、及びアルキルビニルエーテルが挙げられうる。無灰清浄剤としては、カルボン酸分散剤、アミン分散剤、マンニッヒ分散剤、及びポリマー分散剤が挙げられうる。耐摩耗添加剤としては、ZDDP、無灰及び灰含有有機リン及びオルガノ硫黄化合物、ホウ素化合物、並びにオルガノモリブデン化合物が挙げられうる。灰含有分散剤としては、酸性有機化合物の中性及び塩基性アルカリ土類金属塩が挙げられうる。酸化阻害剤としては、ヒンダードフェノール及びアルキルジフェニルアミンが挙げられうる。添加剤は1つの添加剤中に2つ以上の官能基を含んでもよい。
【0075】
エンジンオイルに関して、ベースストックはSAE粘度グレードが0W〜15Wの範囲であってよい。粘度指数は、好ましくは少なくとも90、より好ましくは少なくとも105である。ベースストックは、好ましくは100℃での粘度が3〜10mm
2/s、より好ましくは4〜8mm
2/sである。ノアック(Noack)揮発度はASTM D−5800に従って測定され、好ましくは20%未満、より好ましくは15%未満である。
【0076】
本発明の潤滑剤組成物はギアオイルとして使用できる。ギアオイルは、工業用、自動車用及び/又は船舶用ギアオイルであってよい。潤滑剤組成物がギアオイルの場合、減摩添加剤は好ましくは、ギアオイルの合計重量に対して0.1〜10重量%の範囲で含まれる。
【0077】
ギアオイルに関して、減摩添加剤は、ギアオイルの合計重量に対して、少なくとも0.2重量%、好ましくは少なくとも0.3重量%、より好ましくは少なくとも0.5重量%のレベルで存在してよい。減摩添加剤は、ギアオイルの合計重量に対して、最大でも5重量%、好ましくは最大でも3重量%、より好ましくは最大でも2重量%のレベルでしてよい。
【0078】
ギアオイルはISOグレードに従った動粘度をもちうる。ISOグレードは40℃での試料の中点動粘度cSt(mm
2/s)を特定する。例えば、ISO100は粘度が100±10cStであり、ISO1000は粘度が1000±100cStである。ギアオイルは、好ましくは粘度がISO10〜ISO1500の範囲であり、より好ましくはISO68〜ISO680である。
【0079】
本発明によるギアオイルは好ましくは良好な低温特性を有する。例えば、−35℃におけるそのような配合の粘度は、120,000センチポアズ(cP)(120,000mPa・s)未満、より好ましくは100,000cP未満、とりわけ90,000cP未満である。
【0080】
工業用ギアオイルは、平歯車、ヘリカルギヤ、かさ歯車、ハイポイドギヤ、遊星歯車、及びウォームギヤをもつギアボックスでの使用に適したものが挙げられる。好適な用途としては、採鉱;製紙工場、織物工場、及び製糖所などの工場;鉄鋼生産、並びに風力タービンにおける使用が挙げられる。1つの好ましい用途は、ギアボックスは典型的に遊星歯車をもつ風力タービンである。
【0081】
風力タービンでは、ギアボックスは典型的に風力タービン翼アセンブリのローターと発電機のローターの間に位置する。ギアボックスは、風力タービン翼ローターによって約10〜30毎分回転数(rpm)で回転する低速シャフトを、大部分の発電機が発電するのに要する回転速度である約1000〜2000rpmで発電機を駆動する1つ以上の高速シャフトに連結できる。ギアボックスで働く高いトルクは、風力タービンのギア及びベアリングで非常に大きな圧力を発生できる。本明細書のギアオイルは、ギア間の摩擦を減らすことによって風力タービンのギアボックスの疲労寿命を長くしうる。
【0082】
風力タービンギアボックスの潤滑剤は、多くの場合、保全間の使用期間が長くなる、すなわち、サービス間隔が長くなる。したがって、長期間にわたって好適な性能がもたらすように、高い安定性をもつ長持ちする潤滑剤組成物が必要とされうる。
【0083】
自動車ギアオイルとしては、すべて典型的にハイポイドギヤを使用するマニュアルトランスミッション、トランスファーケース、及び差動装置での使用に適したものが挙げられる。トランスファーケースで我々が意味するのは、四輪駆動及び全輪駆動システムで見られる四輪駆動システムの部品である。トランスファーケースはトランスミッションに連結され、ドライブシャフトによってフロントアクスル及びリアアクスルにも連結される。文献では、トランスファーギアケース、トランスファーギアボックス、トランスファーボックス、又はジョッキーボックスとも呼ばれる。
【0084】
船舶スラスターギアボックスは、工業用及び自動車用ギアオイルと比較して高い割合の添加剤、例えば、分散剤、防食剤を含む特有のギアオイルを有して、腐食及び水混入に対処する。小型の船に関連しうるプロペラユニットに使用される船外機ギアオイルもある。
【0085】
本発明によるギアオイルは、本明細書に記載されるさらなる添加剤の1つ以上を含んでもよい。ギアオイルは好ましくは、硫黄系添加剤及びリン系添加剤からなる群から選択される少なくとも1種の極圧剤、又は少なくとも1種の極圧剤、並びに可溶化剤、無灰分散剤、流動点降下剤、抗発泡剤、抗酸化物質、防錆剤、及び腐食防止剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含みうる1つ以上の添加剤を含む。
【0086】
他の添加剤は、ギアオイルの合計重量に対して、0.01〜30重量%、より好ましくは 0.01〜20重量%、ことの他に0.01〜10重量%のレベルで既知の官能性のギアオイルに含まれてよい。これらとしては、界面活性剤、極圧/耐摩耗添加剤、分散剤、腐食防止剤、防錆剤、摩擦調整剤、発泡抑制剤、流動点降下剤、及びそれらの混合物を挙げることができる。極圧/耐摩耗添加剤としては、ZDDP、リン酸トリクレジル、リン酸アミンが挙げられる。腐食防止剤としては、サルコシン誘導体、例えば、クローダ・ヨーロッパ社から入手可能のクロダシニックOが挙げられる。発泡抑制剤としては、シリコーン及び有機ポリマーが挙げられる。流動点降下剤としては、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ハロパラフィンワックスと芳香族化合物の縮合物、カルボン酸ビニルポリマー、フマル酸ジアルキルの三元共重合体、脂肪酸のビニルエステル、及びアルキルビニルエーテルが挙げられる。無灰清浄剤としては、カルボン酸分散剤、アミン分散剤、マンニッヒ分散剤、及びポリマー分散剤が挙げられる。摩擦調整剤としては、アミド、アミン、及び多価アルコールの脂肪酸部分エステルが挙げられる。灰含有分散剤としては、酸性有機化合物の中性及び塩基性アルカリ土類金属塩が挙げられる。添加剤は1つの材料に2つ以上の官能性を有してもよい。
【0087】
ギアオイルは、ギアオイルの合計重量に対して、抗酸化物質を好ましくは0.2〜2重量%の範囲、より好ましくは0.4〜1重量%の範囲でさらに含んでもよい。抗酸化物質としては、ヒンダードフェノール、アルキルジフェニルアミン及び誘導体、並びにフェニルアルファナフチルアミン及び誘導体が挙げられる。抗酸化物質が存在するギアオイル組成物は、好ましくはCEC L−40−A−93の改変版を用いて測定した100時間にわたる粘度損失割合が、20%未満、より好ましくは15%未満、とりわけ10%未満である。
【0088】
ギアオイルは、ギアオイルの合計重量に対して、好ましくは少なくとも0.05重量%、より好ましくは少なくとも0.5重量%、特に少なくとも1重量%、とりわけ少なくとも1.5重量%のさらなる添加剤(添加剤パック)を含む。ギアオイルは、ギアオイルの合計重量に対して、好ましくは最大でも15重量%、より好ましくは最大でも10重量%、特に最大でも4重量%、とりわけ最大でも2.5重量%のさらなる添加剤(添加剤パック)を含む。
【0089】
工業用ギアオイルに適した市販の添加剤パックとしては、ハイテック307(風力タービン用)、315、317、及び350(アフトン社製);イルガルーブML605A(BASF社製);ルーブリゾールIG93MA、506、5064、及び5091(ルーブリゾール社製);バンルブ0902(バンデルビルト社製);RC9330、9410、及び9451(ラインケミー社製);NA−LUBE BL−1208(キングインダストリーズ社製)が挙げられる。
【0090】
ギアオイルの1つの使用は風力タービンギアボックスである。ギアボックスは典型的に、風力タービン翼アセンブリのローターと発電機のローターの間に位置する。ギアボックスは、風力タービン翼ローターによって約10〜30毎分回転数(rpm)で回転する低速シャフトを、大部分の発電機が発電するのに要する回転速度である約1000〜2000rpmで発電機を駆動する1つ以上の高速シャフトに連結できる。ギアボックスで働く高いトルクは、風力タービンのギア及びベアリングで非常に大きな圧力を発生できる。本明細書に記載されるギアオイルは、ギア間の摩擦を減らすことによって風力タービンのギアボックスの疲労寿命を長くしうる。
【0091】
風力タービンギアボックスのギアオイルは、多くの場合、保全間の使用期間が長くなる、すなわち、サービス間隔が長くなる。したがって、長期間にわたって好適な性能がもたらすように、高い安定性をもつ長持ちするギアオイルが必要とされうる。
【0092】
本発明の潤滑剤組成物は油圧作動油又は油圧作動油剤として使用できる。潤滑剤組成物が油圧作動油又は油圧作動油剤である場合、減摩添加剤は、好適には、油圧油の合計重量に対して、0.1〜10重量%の範囲で存在してよい。
【0093】
油圧油に関して、減摩添加剤は、油圧油の合計重量に対して、少なくとも0.2重量%、好ましくは少なくとも0.3重量%、より好ましくは少なくとも0.5重量%のレベルで存在してよい。減摩添加剤は、油圧油の合計重量に対して、最大でも5重量%、好ましくは最大でも3重量%、より好ましくは最大でも2重量%のレベルで存在してよい。
【0094】
油圧油は、粘度がISO10〜ISO100、好ましくはISO32〜ISO68であってよい。
【0095】
油圧油は、系内で1つの点から別の点に圧力を移す必要があるところどこにでも使用される。油圧油が利用される多くの商業用途の幾つかは、航空機、ブレーキシステム、コンプレッサー、工作機械、圧搾機、ドローベンチ、ジャッキ、エレベーター、ダイカスト、プラスチック成形、溶接、石炭採鉱、管絞り圧延機、抄紙機圧搾ロール、カレンダースタック(calendar stack)、金属加工操作、フォークリフト、及び自動車である。
【0096】
本発明による油圧作動油若しくは油圧作動油剤は、本明細書に記載されるさらなる添加剤の1つ以上を含んでもよい。
【0097】
本発明の潤滑剤組成物は金属加工油剤として使用してもよい。潤滑剤組成物が金属加工油剤である場合、減摩添加剤は好ましくは、金属加工油剤の合計重量に対して1〜20重量%の範囲で存在してよい。
【0098】
金属加工油剤に関して、減摩添加剤は、金属加工油剤の合計重量に対して、少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも5重量%のレベルで存在してよい。減摩添加剤は、金属加工油剤の合計重量に対して、最大でも15重量%、好ましくは最大でも10重量%のレベルで存在してよい。
【0099】
金属加工油剤は、粘度が少なくともISO10、好ましくは少なくともISO100であってよい。
【0100】
金属加工操作としては、例えば、圧延加工、鍛造加工、熱間プレス加工、打ち抜き加工、曲げ加工、プレス加工、絞り加工、切削加工、パンチング加工、スピニング加工などが挙げられ、一般的に潤滑剤を用いて操作を容易にする。金属加工油剤は、相互に作用する金属面間の摩擦又はすべりを制御する膜をもたらすことができ、それによって操作に必要な総電力を減らし、金型、切削ビットなどの固着を防止し、摩耗を減らすことができる点で、一般的にこれらの操作を改善する。時として、潤滑剤は特定の金属加工接触点から熱を逃がすのを助けると思われている。
【0101】
金属加工油剤は多くの場合、分散媒(carrier fluid)及び1つ以上の添加剤を含む。分散媒は、金属面に幾分かの一般的な潤滑性を与え、特化した添加剤を金属面に輸送/送達する。くわえて、金属加工油剤は金属部に残留膜をもたらし、それによって所望の特性を加工されている金属に付与できる。添加剤は、流体膜潤滑を超える摩擦低減、金属腐食保護、極圧、又は摩耗防止効果を含むさまざまな特性を与えることができる。分散媒はベースストックであってもよい。
【0102】
分散媒としては、アメリカ石油協会グループI〜Vベースストックを含むさまざまな石油留分が挙げられる。添加剤は、溶解材料、分散材料、及び部分的溶解性材料として含む多様な形態で分散媒に存在できる。幾つかの金属加工油剤は、加工プロセス中に金属面に失われたり、堆積したりすることがあり、流出、噴出などで環境に失われことがある。分散媒及び添加剤が使用中に著しく分解しない場合は再生利用できる。一定の割合の金属加工油剤が仕掛り品及び工業プロセスの流れに入るので、金属加工油剤への構成成分は、最終的には生分解が可能であり、環境に対して生物蓄積のリスクをほとんどもたらさないのが望ましい。
【0103】
金属加工油剤は、金属加工油剤の合計重量に対して、最大でも90重量%、より好ましくは最大でも80重量%のベースストックを含んでもよい。
【0104】
本発明による金属加工油剤は、本明細書で記載されるさらなる添加剤の1つ以上を含んでもよい。金属加工油剤は、金属加工油剤の合計重量に対して、少なくとも10重量%のさらなる添加剤を含んでよい。
【0105】
本発明の潤滑剤組成物は、エステル、部分エステル、ホスホネート、オルガノモリブデン系化合物、脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、硫黄含有エステル、リン酸エステル、酸リン酸エステル(acid phosphoric acid ester)、及びリン酸エステルのアミン塩などの、本明細書で定義されるもの以外の減摩剤を含んでもよい。
【0106】
1つの好ましい実施形態では、本発明による潤滑剤組成物は、式(I)の化合物である減摩剤のみを含んでもよい。よって、1つの好ましい潤滑剤組成物は、本明細書で定義される式(I)の化合物である減摩剤から本質的に成る、又はから成る。
【0107】
減摩添加剤を含まない同等の潤滑剤組成物と比較して、式(I)の化合物は、特にミニトラクションマシーン(mini-traction machine)(MTM)を用いて測定した場合、潤滑剤組成物の摩擦係数を低減できる。摩擦係数は動摩擦係数であってもよい。
【0108】
減摩添加剤を含まない同等の潤滑剤組成物と比較して、本明細書で定義される式(I)の化合物は、ミニトラクションマシーンを用いた場合に、本明細書に記載される試験において、好ましくはグループII鉱油を用いて、100℃の温度で、1.0GPaの負荷、及び0.02m/sの回転速度で、潤滑剤組成物の摩擦係数、好ましくはエンジンオイルの摩擦係数を、少なくとも15%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、特に少なくとも45%、とりわけ少なくとも50% 減らすことができる。
【0109】
摩擦係数は、0〜200℃の温度範囲、好ましくは20〜180℃の範囲、より好ましくは40〜150℃の範囲にわたって、本明細書で記載のように低減できる。
【0110】
摩擦係数は、0.002m/s、0.02m/s、0.2m/s及び/又は2m/sの回転速度で測定した場合、本明細書で記載のように低減できる。
【0111】
本発明を以下の非限定的な例によって説明する。
【0113】
ミニトラクションマシーン(MTM)
100重量%のグループII鉱油を含有する潤滑剤組成物(減摩添加剤を含まない対照組成物)(ピュア・パフォーマンス(Pure Performance)110N、フィリップス66社)の摩擦係数を、40℃、100℃、及び150℃で、スムースディスク上に3/4インチ(約1.91cm)ボールをもつMTMを用いて決定した。さらなる0.5重量%の評価減摩添加剤(試験組成物)を含有する上記対照組成物を用いて測定を繰り返した。
【0114】
MTMは英国ロンドンのPCSインスツルメンツ社(PCS Instruments)によって供給された。この機械は、速度、負荷、及び温度などの幾つかの特性を変えながら ボール・オン・ディスク(ball-on-disc)構造を用いて、所与の潤滑剤の摩擦係数を測定する方法を提供する。MTMは、大きな負荷、モーター、又は構造を要することなく、現実的な圧力、温度、及び速度を得ることができるように試験片及び構造が設計されているコンピューター制御精密トラクション測定システムである。ディスクはAISI52100鏡面仕上げの焼き入れ軸受鋼(Ra<0.01μm)であり、ボールはAISI52100焼き入れ軸受鋼であった。36N(1GPa接触圧)の負荷をかけ、回転速度は0.001m/sから2m/sまで変動させた。次いで約50mlの潤滑剤組成物を加えた。ボールをディスクとボールの面に対して載せ、ディスクを独立して動かして50%の滑り率をもつ混合転がり滑り接触を創出した。ボールとディスクの間の摩擦力を力変換器によって測定した。さらなるセンサーによって、負荷荷重及び潤滑剤温度を測定した。
【実施例】
【0115】
実施例1
100gのソルビトール及び0.1gのNaOH(0.007重量%)を加圧ステンレス鋼反応器に加えた。反応混合物を激しく混ぜながら120℃に熱した。次に1,222gの酸化エチレンを小分けにして加えて反応させた。結果として、気体の総圧力は35プサイ(約241,318パスカル)を超えなかった。酸化エチレンの最後の部分を加えた後、反応混合物を150℃に加熱し、この温度でさらに2時間撹拌してエトキシ化反応を完了した。
【0116】
453gの(上で作製した)エトキシ化ソルビトール、997gのポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)及び0.3gのシュウ酸スズ触媒をいっしょに混ぜて230℃に熱した。真空及び軽い窒素スパージ(nitrogen sparge)(0.1cfm)をかけて、混合物の酸性度指数が2mgKOH/g未満になるまで反応を行なった。次に反応を80〜90℃に冷やし、触媒を中和するために4gのリン酸(75重量%)を加えた。次いで生成物をろ過して固体不純物を除去した。必要な場合は、生成物に生蒸気を125〜135℃で約2時間加えることによって脱臭加工を行った。最終生成物は、20℃で、鹸化価が143mgKOH/g、酸価が1.1mgKOH/g、ヨウ素価が1.7gI/100g、ヒドロキシル価が25.4mgKOH/g、及び粘度が22,000Cpであった。
【0117】
実施例2
293gの酸化エチレン及び185gの結果として得られたエトキシ化ソルビトールを使用したこと以外は実施例1の手順を繰り返した。最終生成物は、鹸化価が143mgKOH/g、酸価が1.4mgKOH/g、ヨウ素価が1.7gI/100g、及びヒドロキシル価が25.4mgKOH/gであった。
【0118】
実施例3
ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)の代わりに997gの12−ヒドロキシステアリン酸を使用したこと以外は実施例1の手順を繰り返した。最終生成物は、鹸化価が143mgKOH/g、酸価が1.6mgKOH/g、ヨウ素価が1.7gI/100g、及びヒドロキシル価が26.1mgKOH/gであった。
【0119】
実施例4
実施例1〜3で作製した減摩添加剤(FRA)を上記のMTM試験手順を用いて評価し、グループII鉱油に関する結果を表2〜4に示す。
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
【表4】
【0123】
実施例5
グループII鉱油の代わりに市販の従来の自動車エンジンオイル(GF−5認定、粘度グレード10W−30)を135℃で使用したこと以外は、上記MTM試験手順を用いて、実施例1〜3で作製した減摩添加剤(FRA)を評価した。結果を表5に示す。
【0124】
【表5】
【0125】
実施例6
実施例1で作製した減摩添加剤(FRA)をその金属加工油剤金属加工油剤の添加剤としての性能について評価した。マイクロタップUSA社(Microtap USA, Inc.)によって供給されたマイクロタップ(Microtap)IIスレッドタッピングマシーン(thread tapping machine)を使用して、金属加工油剤のタッピングトルクを測定する。マイクロタップIIマシーンは、選択した操作パラメーターのセットにて下穴にねじ山を切削する。試験は3.7mm径の穴のある50mm×200mm×8mmの軟鋼棒で行った。それらの軟鋼棒は、ロバート・スペックス社(the company Robert Speck Ltd)によって供給された。
【0126】
この実施例については、以下のパラメーターを使用した。
1mlの金属加工油剤を、ピペットを用いてマイクロタップIIマシーンに加える。
周囲温度
穴の深さ 6.0mm
フォーミングタップ(forming tap)4mm
220Ncmに設定した最大トルク
切断速度 1000rpm
【0127】
金属加工油剤を塗った後、穴にねじ山をつけて、要したトルクの量を記録した。金属加工油剤はねじ山が220Ncmに設定した最大トルク内で形成可能に充分でない場合、機械で複数回試した後、不合格(fail)とした。結果を下記の表6に示す。
【0128】
【表6】
【0129】
上記例は本発明による潤滑剤組成物の特性が向上したことを例証する。