特許第6386555号(P6386555)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6386555静電計算を使用するコーティングされた表面のテクスッチャ分析
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386555
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】静電計算を使用するコーティングされた表面のテクスッチャ分析
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/46 20060101AFI20180827BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20180827BHJP
   G01N 21/57 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   G01J3/46 Z
   G01N21/27 B
   G01N21/57
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-528177(P2016-528177)
(86)(22)【出願日】2014年11月10日
(65)【公表番号】特表2016-535849(P2016-535849A)
(43)【公表日】2016年11月17日
(86)【国際出願番号】US2014064786
(87)【国際公開番号】WO2015070134
(87)【国際公開日】20150514
【審査請求日】2016年6月14日
(31)【優先権主張番号】61/901,493
(32)【優先日】2013年11月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399074983
【氏名又は名称】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ノリス, アリソン エム.
【審査官】 塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−242018(JP,A)
【文献】 特開平11−230831(JP,A)
【文献】 特開平10−324829(JP,A)
【文献】 特開2001−338091(JP,A)
【文献】 米国特許第06539325(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0235224(US,A1)
【文献】 特開2003−294622(JP,A)
【文献】 特表2005−528603(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0223060(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00−3/52
G01N 21/27
G01N 21/57
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに実装された方法であって、
プロセッサを使用して、標的コーティングから複数の反射角における反射率データを得ることであって、前記反射率データは、分光光度計から得られ、前記反射率データは、前記複数の反射角において測定される、ことと、
前記プロセッサを使用して、前記反射率データから疑似静電データを計算することであって、前記疑似静電データを計算することは、前記複数の反射角のうちの個々の反射角および個々の波長において得られた前記反射率データをクーロンの法則におけるそれぞれの電荷量として処理すること含むことと、
前記プロセッサを使用して、前記疑似静電データ内での相関に基づいて、前記標的コーティングと外観が同一であるか実質的に類似するコーティング顔料着色を生成することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記コーティング顔料着色を生成することは、前記疑似静電データを複数の既知のデータに関連付けることと、前記関連付けることに基づいて、前記標的コーティングの少なくとも1つのテクスチャ特徴を予測することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疑似静電データを複数の既知のデータに関連付けることは、前記疑似静電データを複数の既知のデータに経験的に関連付けることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記関連付けることに基づいて、前記標的コーティングの少なくとも1つのテクスチャ特徴を予測することは、少なくとも1つの経験的計算を使用して、前記関連付けることに基づいて、前記標的コーティングの少なくとも1つのテクスチャ特徴を予測することを含む、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
データベースと、
前記データベースと通信するプロセッサと
を備えたシステムであって、
前記プロセッサは、
標的コーティングから複数の反射角における反射率データを得ることであって、前記反射率データは、分光光度計から得られ、前記反射率データは、前記複数の反射角において測定される、ことと、
前記反射率データから疑似静電データを計算することであって、前記疑似静電データを計算することは、前記複数の反射角のうちの個々の反射角および個々の波長において得られた前記反射率データをクーロンの法則におけるそれぞれの電荷量として処理すること含む、ことと、
前記疑似静電データに基づいて、前記標的コーティングと外観が同一であるか実質的に類似するコーティング顔料着色を生成することと
を行うようにプログラムされている、システム。
【請求項6】
前記プロセッサと通信する分光光度計をさらに備えている、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
標的コーティングから複数の反射角における反射率データを得る手段であって、前記反射率データは、分光光度計から得られ、前記反射率データは、前記複数の反射角において測定される、手段と、
前記反射率データから疑似静電データを計算する手段であって、前記疑似静電データを計算することは、前記複数の反射角のうちの個々の反射角および個々の波長において得られた前記反射率データをクーロンの法則内でそれぞれの電荷量として処理すること含む、手段と、
前記疑似静電データに基づいて、前記標的コーティングと外観が同一であるか実質的に類似するコーティング顔料着色を生成する手段と
を備えている装置。
【請求項8】
前記コーティング顔料着色を生成する手段は、前記疑似静電データを複数の既知のデータに関連付ける手段と、前記関連付けることに基づいて、前記標的コーティングの少なくとも1つのテクスチャ特徴を予測する手段とを備えている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記疑似静電データを複数の既知のデータに関連付ける手段は、前記疑似静電データを複数の既知のデータに経験的に関連付ける手段を備えている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記関連付けることに基づいて、前記標的コーティングの少なくとも1つのテクスチャ特徴を予測する手段は、少なくとも1つの経験的計算を使用して、前記関連付けることに基づいて、前記標的コーティングの少なくとも1つのテクスチャ特徴を予測する手段を備えている、請求項8または請求項9に記載の装置。
【請求項11】
ソフトウェアを含む非一過性コンピュータ読み取り可能な媒体であって、前記ソフトウェアは、
標的コーティングから複数の反射角における反射率データを得ることであって、前記反射率データは、分光光度計から得られ、前記反射率データは、前記複数の反射角において測定される、ことと、
前記反射率データから疑似静電データを計算することであって、前記疑似静電データを計算することは、前記複数の反射角のうちの個々の反射角および個々の波長において得られた前記反射率データをクーロンの法則におけるそれぞれの電荷量として処理すること含む、ことと、
前記疑似静電データに基づいて、前記標的コーティングと外観が同一であるか実質的に類似するコーティング顔料着色を生成することと
をプロセッサに行わせる、非一過性コンピュータ読み取り可能な媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、米国仮出願第61/901,493号(2013年11月8日出願)に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、分光光度角度および/または入射光源からのスペクトル反射率または測色情報を関連させ、未知の標的コーティング内で生じるテクスチャおよび/またはゴニオアパレント効果の両方に合致させるための適切な顔料を識別するための静電気的方法の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
調合または検索エンジン(または視覚プロセス)によって、適切な色マッチングを提供するために、サンプルの正確な顔料着色を決定することが、理想的である。オリジナルサンプルに、同一の顔料またはそれらの顔料の適切なオフセットを利用することが、調合または検索プロセスが、見掛け上の最適な解決策に到達することを可能にするであろうことが、明確に理解可能である。同様に、意図の有無を問わず、それらの顔料を利用から除外することは、準最適色マッチングをもたらすであろうことも明白である。
【0004】
いくつかの調合エンジンおよび方法論は、同時に、種々のアルゴリズムによって、顔料選択および調合を包含することを試みる。歴史的には、顔料識別パッケージおよび調合エンジンは、主として、それらのユーザに調合および顔料情報を提供するために、「総当たり」的である、推測およびチェックタイプの方法を講じている。組み合わせアプローチ、すなわち、総当たり方法は、頻繁に使用される方法であり、ほぼ全ての利用可能な顔料が、最終マッチングにおいて所望される顔料の最終数を与えられると、全ての種々の組み合わせにおいて組み合わせられる。組み合わせアプローチは、種々の調合物を生成するために、クベルカ‐ムンク方程式またはその導関数を利用し得る。エンジンの速度を最適化するためのある条件が与えられると、いくつかの顔料の使用を制限するいくつかの方法が存在するが、最終結果は、これらの調合組み合わせは、次いで、サンプルに対して確認され、最も近くサンプルに合致する調合の選択(または単一)が、ユーザに提供される。サンプルと比較される合致の正確度を決定するために使用される、Delta Eまたは他の測色評価アルゴリズムの種々の形態が、存在する。
【0005】
より簡潔な解決策は、ユーザが、調合エンジンにトナーのサンプルセットを投入することを要求する一方、あまり簡潔ではない方法は、多くの場合、使用すべきトナーの事前決定されたサブセットを選択する。いずれのアプローチも、段階的方法を利用せず、したがって、多くの場合、非最適解決策をもたらす。これらの方法は、典型的には、ユーザにとって煩雑であり、良好な解決策への簡単化された方法をユーザに提供するための適切な「直感性」を欠いていた。加えて、本方法論の性質上、サンプルに合致させるために必要である適切な顔料が除外され得る。
【0006】
標準ポータブル分光光度計では、入射光は、概して、法線から45度の角度に設定される。収集されることができる結果として生じるスペクトル反射率は、概して、入射光と同一平面内にあり、入射光源自体により近いだけではなく、反射角(入射光と同じで反対の角度)の両側においてである。新しいポータブル分光光度デバイスは、膨大な数の角度色応答(スペクトル反射率)データを提供する。方位角、すなわち、平面外の角度を含む、いくつかの新しい角度の追加の他に、多くの機器はまた、標準とは異なる幾何学形状を伴う、追加の光源も提供する。例として、第2の照明器の入射光源は、法線から15度に位置し得る。入射光および角度応答の複数の組み合わせは、両方とも少なすぎ、1回で取り扱うにはおよび多すぎる情報のあり、大量の分光光度データを生成し得る。しかしながら、意図的方法においてこれらのデータの全てを効率的に取り扱い、分析するための方法が、不足している。一方、新しい分光光度デバイスはまた、選択された照明条件に対して、分析されるサンプルのスペクトル応答の一部のみを捕捉する。種々のテクスチャを表現する塗装されたサンプルまたは仮想サンプルを使用して、それらを未知のサンプルと比較する方策が、近年開発されている。これらの技法は、実質的なユーザの介入を要求し、有意に主観的であり、個人の技能に応じて、一貫性のない結果を生成する。
【0007】
限定された多角度、利用可能なときは多平面、カメラの有無を問わないスペクトルデータ、色、またはその他を使用し、顔料特徴付けおよびサンプル特性のための改良および簡略化された結果を生成し得る簡略化されたアプローチが、速度および使用の容易さのために好ましい。調合エンジンまたは視覚色マッチングプロセスに供給されるべきサンプルの顔料着色を正確に決定し得る簡略化されたシステムを提供することは、速度および正確度を大きく改善させる。その同一の柔軟性のあるシステム内に調合エンジンを含むことは、性能、正確度、および簡易性をさらに改善させる。
【0008】
したがって、分光光度計からのデータおよびデータの特定の組み合わせの全てを効率的に評価するために使用され、特に、分析される未知の標的コーティングのテクスチャおよび/またはゴニオアパレント効果に関して有意義な推定を可能にし得るシステムおよび方法の必要性がある。したがって、本発明は、従来技術の前述の欠陥の全てまたは少なくともいくつかを克服するか、または少なくとも修正する手段を提供し、特に、テクスチャおよび/またはゴニオアパレント効果を有する標的コーティングの信頼性があり、かつより精密な色マッチングのために、最新技術の分光光度計から得られたデータの効率的な使用および評価を可能にすることを目標としている。これらの目的は、以下に説明されるようなコンピュータ実装方法、システム、装置、およびソフトウェアを含む非一過性コンピュータ読み取り可能な媒体によって達成される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の側面では、本発明は、コンピュータ実装方法を提供する。本方法は、プロセッサを使用して、標的コーティングから反射率データを得ることと、プロセッサを使用して、反射率および/または測色データから静電データを計算することとを含む。本方法はまた、プロセッサを使用して、静電データに基づいて、標的コーティングと外観が同一であるか、または実質的に類似するコーティング調合物を生成することを含む。
【0010】
別の側面では、本発明は、システムを対象とする。本システムは、データベースと、データベースと通信するプロセッサとを含む。本プロセッサは、標的コーティングから反射率および/または測色データを得ることと、反射率データからの静電データを計算することと、静電データに基づいて、標的コーティングと外観が同一であるか、または実質的に類似するコーティング顔料着色を生成することとを行うようにプログラムされる。
【0011】
別の側面では、本発明は、装置を提供する。本装置は、標的コーティングから反射率および/または測色データを得る手段と、反射率データからの静電データを計算する手段とを含む。本装置はまた、静電データに基づいて、標的コーティングと外観が同一であるか、または実質的に類似するコーティング顔料着色を生成する手段も含む。さらなる側面では、本発明は、標的コーティングから反射率データを得ることと、反射率および/または測色データから静電データを計算することと、静電データに基づいて、標的コーティングと外観が同一であるか、または実質的に類似するコーティング顔料着色を生成することとをプロセッサに行わせるためのソフトウェアを含む、非一過性コンピュータ読み取り可能な媒体を提供する。
例えば、本願は以下の項目を提供する。
(項目1)
コンピュータ実装方法であって、
プロセッサを使用して、標的コーティングから反射率データを得ることと、
前記プロセッサを使用して、前記反射率および/または測色データから静電データを計算することと、
前記プロセッサを使用して、前記静電データに基づいて、前記標的コーティングと外観が同一であるか、または実質的に類似するコーティング顔料着色を生成することと
を含む、方法。
(項目2)
前記反射率データを得ることは、複数の反射角における反射率を得ることを含む、請求項1に記載の方法。
(項目3)
前記静電データを計算することは、点電荷として、個々の反射角において得られた少なくとも1つの反射率、好ましくは少なくとも2つの反射率、より好ましくはあらゆる反射率を処理することを含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記静電データを計算することは、クーロンの法則を適用することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
(項目5)
前記コーティング顔料着色を生成することは、前記静電データを複数の既知のデータと関連付けることと、前記関連付けることに基づいて、前記標的コーティングの少なくとも1つのテクスチャ特徴を予測することとを含む、項目1〜4のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記静電データを複数の既知のデータと関連付けることは、前記静電データを複数の既知のデータと経験的に関連付けることを含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記関連付けることに基づいて、前記標的コーティングの少なくとも1つのテクスチャ特徴を予測することは、少なくとも1つの経験的計算を使用して、前記関連付けることに基づいて、前記標的コーティングの少なくとも1つのテクスチャ特徴を予測することを含む、項目5または6に記載の方法。
(項目8)
システムであって、
データベースと、
前記データベースと通信しているプロセッサと
を備え、前記プロセッサは、
標的コーティングから反射率データを得ることと、
前記反射率および/または測色データから静電データを計算することと、
前記静電データに基づいて、前記標的コーティングと外観が同一であるか、または実質的に類似するコーティング顔料着色を生成することと
を行うようにプログラムされている、システム。
(項目9)
前記プロセッサと通信している分光光度計をさらに備えている、項目8に記載のシステム。
(項目10)
装置であって、
標的コーティングから反射率データを得る手段と、
前記反射率および/または測色データから静電データを計算する手段と、
前記静電データに基づいて、前記標的コーティングと外観が同一であるか、または実質的に類似するコーティング顔料着色を生成する手段と
を備えている、装置。
(項目11)
前記コーティング顔料着色を生成する手段は、前記静電データを複数の既知のデータと関連付ける手段と、前記関連付けることに基づいて、前記標的コーティングの少なくとも1つのテクスチャ特徴を予測する手段とを備えている、項目10に記載の装置。
(項目12)
前記静電データを複数の既知のデータと関連付ける手段は、前記静電データを複数の既知のデータと経験的に関連付ける手段を備えている、項目11に記載の装置。
(項目13)
前記関連付けることに基づいて、前記標的コーティングの少なくとも1つのテクスチャ特徴を予測する手段は、少なくとも1つの経験的計算を使用して、前記関連付けることに基づいて、前記標的コーティングの少なくとも1つのテクスチャ特徴を予測する手段を備えている、項目11または12に記載の装置。
(項目14)
ソフトウェアを含む非一過性コンピュータ読み取り可能な媒体であって、前記ソフトウェアは、
標的コーティングから反射率データを得ることと、
前記反射率および/または測色データから静電データを計算することと、
前記静電データに基づいて、前記標的コーティングと外観が同一であるか、または実質的に類似するコーティング顔料着色を生成することと
をプロセッサに行わせる、
非一過性コンピュータ読み取り可能な媒体。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明を利用して、標的複合コーティングのための顔料着色を計算するプロセスを例証する。
【0013】
図2図2および3は、疑似電場を例証する。
図3図2および3は、疑似電場を例証する。
【0014】
図4図4は、標的コーティングがゴニオアパレント効果を含むかどうかを予測するために、特定の組み合わせの角度を使用する、静電場の使用の実施例を例証する。
【0015】
図5図5は、標的コーティングが特定のゴニオアパレント顔料を含むかどうかに対して、対毎に比較される2つの異なる角度静電データの経験的相関の実施例を例証する。
【0016】
図6図6は、経験的相関の別の形態の異なるタイプの実施例を例証する。
【0017】
図7図7は、本発明による標的サンプルのコーティング混合物の、視覚的および/または分光光度的に独特であるかまたは顔料毎に区別可能である、異なるかまたは同じ光条件下の反射特性等の物理的性質属性を識別するために使用され得る、システムを例証する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書の説明は、概して、塗料またはコーティングについて言及するが、本デバイス、システム、および方法は、染色および工業コーティングを含む、他のタイプのコーティングにも適用されることを理解されたい。本発明の説明される実施形態は、限定として見なされるべきではない。本発明に準拠する方法は、アパレルおよびファッション製品のマッチングおよび/またはコーディネート等、種々の分野において実践され得る。
【0019】
本発明は、独立型ユニットであるか、または、例えば、インターネットもしくはイントラネット等のネットワークを介して、中央コンピュータと通信する1つ以上の遠隔端末もしくはデバイスを含み得るコンピュータシステムと使用されるか、またはその中に組み込まれ得る。したがって、本明細書に説明されるコンピュータまたは「プロセッサ」および関連する構成要素は、ローカルコンピュータシステムまたはリモートコンピュータもしくはオンラインシステム、またはそれらの組み合わせの一部であり得る。本明細書に説明されるデータベースおよびソフトウェアは、コンピュータ内部メモリ内または非一過性コンピュータ読み取り可能な媒体内に記憶され得る。
【0020】
本発明は、概して、コーティングのスペクトル分析を対象とし、より具体的には、限定ではないが、金属顔料、光沢顔料、および/または特殊効果顔料を含む複合コーティング混合物を予測および調合するためのデバイス、方法、およびシステムを対象とする。
【0021】
本発明は、概して、分光光度計からのスペクトル反射率および測色応答に基づいて、プロセッサを使用して、本明細書に説明されるように計算される静電データを使用して、硬化複合コーティング(例えば、塗料)混合物の物理的性質属性を識別するための方法および装置に関する。以下により詳細に説明されるであろうように、本発明によると、反射率データを得るために使用されるデバイスの構成に応じた(個々の反射角に対応する)空間内の選択された点において得られる反射率データの個々のスペクトル反射率は、点電荷として処理される。故に、本発明の文脈内では、静電データは、静電気学の確立された法則および概念を組み合わせにおいて該点電荷類似性を適用して、得られた反射率データから計算される任意の種類のデータを意味する。そのような計算される静電データの例は、例えば、静電力データ、電場データ、電位等を含む。
【0022】
静電気的方法論を使用する目的は、多面的である。第1に、所与のシステム内で全ての利用可能な角度を使用するために、静電気は、代替双方向反射率分布関数(「BRDF」)タイプの分析を作成するために使用され得る。このタイプの分析は、ゴニオアパレントであるかどうかを問わず、特定のコーティング、テクスチャ、または顔料タイプの半球型「マップ」または「フィンガプリント」を作成するために、任意の角度を除外せず、全ての角度を使用する。第2に、静電気は、意図的操作を達成するために、特定の組み合わせの角度のみを評価するために使用され得る。同様に、これは、標的コーティング内に特定のテクスチャまたは効果が含まれるか、含まれなかが追求されている場合、特定の単一角度または角度の組み合わせの特定の除外を含む。第3に、静電気は、受信されたスペクトル反射率値が、ある意味では不正確であるという潜在的仮定に適応し、それを補正するために使用され得る。スペクトル反射率データの不規則性または異常性に対するいくつかの潜在的理由は、小規模であるとしても、入射光角度の場所、入射光変動、開口サイズ、標的コーティング表面の非均一性等を含み得る。
【0023】
図1は、本発明を利用して、標的複合コーティングのための顔料を計算するプロセスを例証する。ステップ10において、反射率データが、例えば、分光光度計から収集され、ステップ12において、データは、関連付けられた情報の二次アレイに基づいてソートされる。一次アレイは、分光光度計に由来する。二次アレイは、ソートされた情報である。ステップ14において、静電データが、計算される。ここで、具体的かつ物理的角度ポート、または入射光角度と併せた角度における個々の反射率測色情報は、点電荷として作用するであろう。ユーザが、収集されたデータが全て整合し、正しい源からであることをチェックおよび検証することを可能にするために、入射角と併せて使用される1つまたは複数の入射光が存在し得る(したがって、複数のアレイ)。そのような概念化された点電荷の各々は、それぞれの測定配列、物理的レイアウト(例えば、図2および3に図式的に示されるポータブル分光光度計)にわたる他の反射率における静電「力」に影響を及ぼす効果を与える。疑似電場が、図2(「標準」図)および3(「俯瞰」図)に例証されるように作成され得る。単一時間における比較のために所望される、点電荷(反射率および/または測色情報)の数に基づいて、クーロンの法則が、単一点電荷によって作成される点電荷間、または複数の点電荷間の電場または力を定義するために使用され得る。単純化した形態では、クーロンの法則は、2つの点電荷に対して以下となる。
【数1】
式中、QおよびQは、点電荷(または、テクスチャ分析の場合、特定の角度および波長ならびに/もしくは測色における反射率)であり、rは、球体の表面上の2つの点電荷間の距離であり、ε=8.854187817×10−12である。反射率値が点電荷値として使用される場合、それらは、波長依存性である。したがって、計算は、各波長に対して個々に生じ、データの最終利用点において積分される。
【0024】
2つの点電荷間の距離rを計算するために、1つの可能な解は、特殊形態のビンセントの公式を採用し、2つの点電荷間の球面角を計算することによって、大円距離計算の一部を使用することである。
【数2】
式中、φ、λおよびφ、λは、球体の表面上の点電荷の、ラジアンにおける座標場所である。距離rは、次いで、以下に従う。
【数3】
式中、Rは、球体の半径である。ポータブル分光光度計の場合では、これは、1に等しいと仮定され得るか、または正確に測定され得る。Rに関する値は、同一または類似の分光光度計モデルが使用される可能性が高いので、Rは、一定のままであり変化しない。Rが、実際には、変化し得ることが予期される場合、Rは、適切に測定され、式3において考慮され得る。
【0025】
種々の実施形態では、特殊形態のビンセントの公式を使用するために、点電荷(反射率および/または測色データ)に対する空間座標、すなわち、緯度および経度が、割り当てられ得る。空間座標割当は、分光光度計の物理的角度レイアウトを使用して作成され得る。例として、点電荷の空間座標は、(1)入射光角度に依存し得る角度反射光のバージョン、(2)平面内または平面外の指示、およびその平面内の場所、(3)特定の波長におけるスペクトル反射率値および/または測色データのうちの少なくとも1つの関数である座標であり得る。特定の形態のクーロンの法則に対して、2つの点電荷の例が示されているが、任意の単数または複数の組み合わせの角度点電荷が、種々の形態のクーロンの法則とともに使用され得る。加えて、電場、電位等、他の静電計算が、クーロンの法則の力の方程式の代わりに、またはそれと併せて使用され得る。単数、対、三重等の比較に対する潜在性が、テクスチャを識別するために使用され得る相当量の情報を提供し得る。法線からまたは平行線からの入射光角度は、他の角度データの座標定義内で使用され得る。これは、複数の入射光角度からのデータを用いて作業するとき、または機器上の同一の物理受光器から受信されるデータの比較を含むが、入射光が複数の角度から来る場合有用であり得る。
【0026】
スペクトル反射率データを使用するとき、計算は、各波長に対して個々に生じ得る。例えば、平均、中間、および合計等の統計が、複数波長計算静電値からの単一値を作成するために使用され得る。個々の特定の波長または複数の波長が、静電分析間で比較され得る。そのような状況の値は、最大反射率、および潜在的には準最大反射率の波長または複数の波長に焦点を当てるべきであり、色および/またはテクスチャ情報の大部分は、可視スペクトル内で視覚的に感知される。波長によってシフトする最大反射率の分析もまた、静電分析を使用して達成され得る。
【0027】
図1のステップ16において、測色データおよび/またはスペクトル反射率データから計算された静電値は、複合コーティング混合物におけるテクスチャ、一次フレークタイプ、または他の外観情報を識別するために、既知の特性とさらに経験的に関連付けられ得る。経験的方法を採用するために、静電データ点(力、場、電位等)は、日常的状況において取り扱われる必要があるであろう、予期される混合物および色を表す、経験的データセットおよび全ての所望される角度の組み合わせに対して計算される。経験的データセットは、予測的相関y=f(x)を作成するために使用され得、式中、yは、標的コーティングに関する識別または定質的疑問に対する所望される特性を表し、f(x)は、xのある関数であり、式中、xは、角度考慮事項の特定のセットまたは複数のセットからの静電計算値を使用する1つまたは複数の変数である。角度比較セットを、識別されている特定の特性に対して最も特徴を定義する特定のセットに限定することが、所望され得る。結果として生じる関数は、経験的データセットによって定義されるような線形または非線形であり得る。
【0028】
図4は、標的コーティングがゴニオアパレント効果を含むかどうかを予測するために、特定の組み合わせの角度を使用する、静電場の使用の実施例を例証する。
【0029】
図5は、標的コーティングが特定のゴニオアパレント顔料を含むかどうかに対して、対毎に比較される2つの異なる角度静電データの経験的相関の実施例を例証する。本実施例では、およそ5500を上回る値をもたらす同じ対の角度組み合わせの計算された静電値が、ゴニオアパレント顔料を含まない可能性に対して、ゴニオアパレントを含む可能性がより高いことを示す。
【0030】
図6は、経験的相関の別の形態の異なるタイプの実施例を例証する。本実施例のシナリオでは、計算された静電データを使用する、対毎の角度比較の2つのセットが、互に対してグラフ化される。相関を使用するために、標的コーティングの値が静電計算において入力され、より接近して一列に並べられるいずれかの線形相関の結果のグラフ値が、その効果が存在しているより高い可能性を提供する。多くの場合、可能性はまた、元々経験的に決定された相関からの残差計算に基づいて評価され得る。そのような例では、計算された静電データ値が相関線60(「真」)により近い標的コーティングは、その標的コーティングが、効果を含まないこと対して、特定のゴニオアパレント効果を含むより高い可能性を示す。
【0031】
経験的相関が決定されると、図1のステップ18において、それが、標的コーティングに対して予期された値を導出するために使用され得る。これは、x(静電力、場、電位等)に対して標的コーティングの値を使用し、y(テクスチャ効果)に対する回答を計算することによって達成され得る。本明細書において、実施例は、ゴニオアパレント顔料の含有に関して与えられているが、本発明は、静電計算および経験的相関のために、最も重要な単一角度または角度の組み合わせを反復的に選定することによって、どのゴニオアパレント顔料がその顔料のどのサイズフレークであるかまで具体的な結果を導出し得る。角度比較およびそれらが組み合わせられるレベルの選択が、最良の可能な経験的相関をもたらすために使用され得る。経験的相関はまた、他の非静電情報、例えば、単一角度測色データを含むことによって、改良され得る。
【0032】
全体的「マップ」または「フィンガプリント」アプローチの品質および経験的相関アプローチの品質は、入力データの品質に依存し得る。入力データの品質は、機器の品質と、全体的マップまたは経験的相関に関する既知のもののセットを作成するために使用されるデータセットの品質とに依存し得る。機器からのデータまたは経験的データセットの任意の品質は、回答をもたらすであろうが、回答は、高品質の機器と、広く変動させられる、高品質の経験的データセットとの使用とともに改良され得る。
【0033】
本明細書に説明される計算の全セットは、特定の角度組み合わせの選択を促進するためだけではなく、静電データを使用する経験的相関を導出し、次いで、使用するために要求される、計算の量に適応するために、プロセッサと併せて使用され得る。
【0034】
図7は、本発明による、標的サンプルのコーティング混合物の、視覚的および/または分光光度的に独特であるか、もしくは顔料毎に区別可能である、異なる、または同じ光条件下の反射特性等、物理的性質属性を識別するために使用され得る、システム90を例証する。ユーザ92は、分光光度計96を動作させ、標的サンプル98の性質を測定するために、グラフィカルユーザインターフェース等のユーザインターフェース94を利用し得る。分光光度計96からのデータは、パーソナルコンピュータ、モバイルデバイス、または任意のタイプのプロセッサ等、コンピュータ100に伝達され得る。コンピュータ100は、ネットワーク102を介して、サーバ104と通信し得る。ネットワーク102は、インターネット、ローカルエリアネットワーク、イントラネット、または無線ネットワーク等、任意のタイプのネットワークであり得る。サーバ104は、比較目的のために本発明の方法によって使用される、データおよび情報を記憶し得る、データベース106と通信する。データベース106は、例えば、クライアントサーバ環境内、または、例えば、クラウドコンピューティング環境等のウェブベースの環境内で利用され得る。本発明の方法の種々のステップが、コンピュータ100および/またはサーバ104によって実施され得る。
【0035】
別の側面では、本発明は、コンピュータまたはコンピュータシステムに、前述される方法を実施させるためのソフトウェアを含む、非一過性コンピュータ読み取り可能な媒体として実装され得る。本ソフトウェアは、プロセッサおよびユーザインターフェースが、前述される方法を実施することを可能にするために使用される、種々のモジュールを含むことができる。
【0036】
前述される説明において開示される概念から逸脱することなく、修正が、本発明に成され得ることが、当業者によって容易に理解されるであろう。故に、本明細書に詳細に説明される特定の実施形態は、例証にすぎず、本発明の範囲を限定しない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7