特許第6386556号(P6386556)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386556
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】広周波数帯域音響ホログラフィ
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20180827BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20180827BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   G01H17/00 C
   H04R3/00 320
   H04R1/40 320
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-528385(P2016-528385)
(86)(22)【出願日】2014年6月26日
(65)【公表番号】特表2016-532105(P2016-532105A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(86)【国際出願番号】EP2014063597
(87)【国際公開番号】WO2015010850
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2017年6月20日
(31)【優先権主張番号】13177409.3
(32)【優先日】2013年7月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515352799
【氏名又は名称】ブリュール アンド ケーア サウンド アンド バイブレーション メジャーメント アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100141162
【弁理士】
【氏名又は名称】森 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100141254
【弁理士】
【氏名又は名称】榎原 正巳
(72)【発明者】
【氏名】ヤアアン ハル
【審査官】 山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−011433(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/064628(WO,A1)
【文献】 特開2010−212818(JP,A)
【文献】 Jorgen Hald,“Basic theory and properties of statistically optimized near-field acousti cal holography”,THE JOURNAL OF THE ACOUSTICAL SOCIETY OF AMERICA,米国,Acoustical Society of America,2009年 4月,Vol.125,No.4,pp.2105-2120
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00 − 17/00
H04R 1/40
H04R 3/00
G01S 3/808
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサのアレイから得られた複数の計測された音場パラメータから音場の少なくとも1つのプロパティを決定する方法であって、該方法は、
センサ・アレイの、それぞれの計測位置に配置されたセンサによるそれぞれの計測から各々が計測位置における音場パラメータを示す複数の計測された音場パラメータを取得するステップと、
音場のモデルを提供するステップであって、該モデルは、基本波のセットを備え、それを、モデル・パラメータのセットと結びつけており、モデル・パラメータの該セットは、前記基本波の1つの各々の大きさを示すマグニチュード・パラメータのセットを含む、ステップと、
前記モデルから、前記計測位置の各々における前記音場パラメータの計算値を、前記モデル・パラメータの関数として計算するステップと、
複数の繰返しを含む反復最小化プロセスを実行することにより、エラー計測を減らすように前記モデル・パラメータのパラメータ値のセットを決定するステップであって、該エラー計測は、前記計算された値と前記計測された音場パラメータとを比較するように動作可能なエラー項を含む、ステップと、
モデル・パラメータの前記決定されたセットから前記音場の前記プロパティを計算するステップと、
を含み、
前記反復最小化プロセスの1つ以上の現在反復により決定するステップは、
前記モデル・パラメータの以前の値の少なくとも1セットから、前記モデル・パラメータの現在値のセットを計算するステップであって、前記以前の値は、前記反復最小化プロセスの以前の反復からの結果である、ステップと、
基本波の前記セットから、基本波のサブセットを選択するステップと、前記モデル・パラメータの前記計算された現在値を、基本波の前記サブセットだけでなくすべての基本波の大きさを抑えるように調節するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
基本波のサブセットを選択するステップは、結果のサブセットが、閾値ダイナミック・レンジよりも小さいダイナミック・レンジを有するように該サブセットを選択するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基本波のサブセットを選択するステップは、選択閾値より大きい強度を有する基本波をだけを含むように、該サブセットを選択するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
基本波の前記セットの少なくとも最強の1つに関して前記選択閾値を決定するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記反復最小化プロセスは、前記選択閾値を反復的に変化させるステップを含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記選択閾値を反復的に変化させるステップは、前記結果として生じるサブセットのダイナミック・レンジが、反復的に増加することを可能にするように、前記選択閾値を反復的に変化させるステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記反復最小化プロセスは、所与のダイナミック・レンジ基準が満たされるまで前記選択閾値を反復的に変化させるステップ、および、
少なくとも前記ダイナミック・レンジ基準が満たされるまで、エラー計測を減らすために第1の最小化アルゴリズムを使用するステップ、および、
前記ダイナミック・レンジ基準が満たされた後に、前記第1の最小化アルゴリズムと異なる第2の最小化アルゴリズムを使用するステップ、
を含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記エラー計測は、さらに、前記反復最小化プロセスのソリューションのソリューション・ベクトルの大きさを減らすために動作可能な正規化項を含む、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
センサのアレイから得られた複数の計測された音場パラメータから音場の少なくとも1つのプロパティを決定する処理装置であって、該処理装置は、
センサ・アレイのそれぞれのセンサから、計測された音場パラメータに対応するセンサ出力信号のセットを受信するためのインタフェースと、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法のステップを実行するように構成される処理ユニットと、
を備える、処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の処理装置と、それぞれの計測位置で、音場パラメータの値を計測するための、前記計測された音場パラメータ値を前記処理装置に転送するように、前記処理装置と通信接続において接続可能であるセンサのセットと、を備える計測システム。
【請求項11】
プログラム・コードが、データ処理システムの上で実行されるとき、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法のステップを前記データ処理システムに実行させるのに適するプログラム・コードを備えるコンピュータ・プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えば音響ホログラフィなど音響信号のアレイ信号処理に関連する。
【背景技術】
【0002】
音響ホログラフィは、音源または音場の推定、特に、音源の近くの音場における推定に広く使われている技術である。音響ホログラフィ技術は、典型的には、例えば圧力や粒子速度トランスデューサのアレイなど、センサ・アレイを介して、ソースから離れた音響パラメータの計測を含む。音響ホログラフィの中に含まれる計測技術は、種々の分野において、ますますポピュラーになってきている。最も顕著なのは、輸送、車両および航空機設計、白物設計、NVH(雑音、振動、および、過酷さ)、または、同様のアプリケーションの分野である。
【0003】
既知の音響のホログラフィ法は、統計学的最適近接場音響ホログラフィ(SONAH)および等価音源法(ESM)を含む。例えば、J. HALD、″BASIC THEORY AND PROPERTIES OF STATISTICALLY OPTIMIZED NEAR−FIELD ACOUSTICAL HOLOGRAPHY″、J. ACOUST. SOC. AM. 125 (4)、2009年4月は、SONAH法を記載している。
【0004】
しかしながら、特定の計測条件の下で、上記のような従来の方法は、重篤なゴースト音源という結果、すなわち、偽音源の存在を示すことになる傾向がある。したがって、計測位置以外の位置における音源位置測定または音場の推定のこれら従来の方法の信頼性を減らすことになる。さらに、上記のような従来の方法は、正しい値と比較して低すぎる値を推定する傾向を有する。そのような望ましくないアーチファクトが起こる計測条件の1つの例は、調査される音波の半分の波長より大きなマイクロフォン平均間隔の不規則なアレイでの計測である。そのような場合において、推定の問題は、少なくとも曖昧に近く、非常に劣決定である。
【0005】
マイクロフォン(または他のセンサ)およびデータ/信号収集ハードウェアのコストのために、通常、センサ・アレイでは、できるだけ少ないセンサを使用することが望ましい。したがって、一般に、例えば、センサ・アレイの平均センサ間隔が調査中の音場の波長の半分より大きいときなど、高周波であっても、推定された音場の改善された正確さを提供する、センサのアレイにより得られた計測された音響パラメータから音場を推定するための方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
ここに開示されるのは、センサのアレイから得られた複数の計測された音場パラメータから音場の少なくとも1つのプロパティを決定する方法である。この方法は、各々が、計測位置における音場パラメータを示す複数の計測された音場パラメータを受信するステップと、音場のモデルを提供するステップであって、該モデルは、基本波のセットを備え、それを、モデル・パラメータのセットと結びつけており、モデル・パラメータの該セットは、前記基本波の1つの各々の大きさを示すマグニチュード・パラメータのセットを含む、ステップと、前記モデルから、計測位置の各々における音場パラメータの計算値を、前記モデル・パラメータの関数として計算するステップと、複数の繰返しを含む反復最小化プロセスを実行することにより、エラー計測を減らすように前記モデル・パラメータのパラメータ値のセットを決定するステップであって、該エラー計測は、前記計算された値と前記測定された音場パラメータとを比較するように動作可能なエラー項を含む、ステップと、モデル・パラメータの前記決定されたセットから前記音場の前記プロパティを計算するステップと、を備える。ここで、前記反復最小化プロセスの1つ以上の現在反復により決定するステップは、前記モデル・パラメータの以前の値の少なくとも1セットから、前記モデル・パラメータの現在値のセットを計算するステップであって、前記以前の値は、前記反復プロセスの以前の反復からの結果である、ステップと、基本波の前記セットから、基本波のサブセットを選択するステップと、前記モデル・パラメータの計算された現在値を、基本波の前記サブセットだけでなくすべての基本波の大きさを抑えるように調節するステップと、を含む。
【0007】
このように、ここに開示される方法の実施形態は、計測された音響パラメータから音場を推定するのに用いられる音場モデルに採用された基本波のセットを繰り返し枝刈りすることによってゴースト音源または他のゴースト波ソリューションを取り除くか、少なくとも抑えようとする。選択された音源/波ソリューション以外の基本波の大きさの抑制は、それらの大きさをゼロにセットすることによって、すなわち、音源のマグニチュード・パラメータの値または、選ばれていない音源/波ソリューションと結びついた他のマグニチュード・パラメータを、ゼロにセットすることによって、実行することができる。代替の実施形態において、音源マグニチュード・パラメータまたは他のマグニチュード・パラメータの値は、大きな抑制ファクタにより分割することができる、または、それらのマグニチュードは、さもなければ、減少することができる。このように、調節された現在値は、次に、後続する繰返しにおいて、モデル・パラメータの対応する以前の値として使用される。
【0008】
本願の発明者は、ゴースト音源またはゴースト波の寄与は、典型的には、根底にある本当の音源または本当の波の寄与より弱いことを理解した。結局のところ、いくつかの実施形態において、基本波のサブセットを選択するステップは、選択閾値より大きいマグニチュードを有する音源または基本波を選択するステップを含む。このマグニチュードは、振幅、または、基本波の強度の別の適切な測度であることができる。いくつかの実施形態において、マグニチュード・パラメータは、実部と虚部とを複素振幅である。すなわち、複素振幅は、本当の振幅および位相を表現することができる。いくつかの実施形態において、無限距離における音源が使用される。その場合、各々の基本波は、入射平面波を生成し、そして、マグニチュードは、それぞれの平面波の複素振幅のマグニチュードであることができる。一般的に、基本波の例は、球面波、平面は、ダクト・モードその他を含む。球面波は、例えば、モノポール、ダイポール、または、マルチポールなどの点音源から発散することができる。
【0009】
一般的に、ここに記述される方法実施形態は、基本波動関数のセットによって表現される音場のモデルを使用する。このプロセスは次に、基本波の複素振幅を計算するために逆問題を解決する。計算された複素振幅を含む音場のモデルは、次に、その音場の3D再建のために適用することができる。いくつかの実施形態において、音場の提供されたモデルは、音場へのそれぞれのコヒーレント寄与を表現するコヒーレント・モデルである。それぞれの寄与を、それぞれの基本波としてモデル化することができる。各々の基本は波振幅と位相によって表現される。結局のところ、ここに記述される方法の実施形態は、インコヒーレント音場の分析に制限されないが、しかし、複数のコヒーレント寄与を含む音場の分析を可能にする。いくつかの実施形態において、例えば、音場が複数の無相関の音源から生じるとき、この方法は、平均化クロス・スペクトル・マトリックスを決定することを含むことができる。音場パラメータの計算された値を計算することは、平均化クロス・スペクトル・マトリックスのそれぞれの主要なコンポーネントに関して実行することができる。別の実施形態において、このプロセスは、1つ以上の基準トランスデューサの基準計測を得ること、および、それぞれの部分的な音場パラメータとして計測された音場パラメータを決定することを含む。各々は、基準計測の1つとコヒーレントである。
【0010】
いくつかの実施形態において、受信された計測音場パラメータの各々は、センサによる実際の計測、または、他の実施例においては、音場パラメータが実際の計測から導出された、センサ位置における音場パラメータを示すことができる。いくつかの実施形態において、計測された音場パラメータは、各々、計測位置に配置されている、センサ・アレイのセンサで計測された音場パラメータを示す。いくつかの実施形態において、受信され計測された音場パラメータが例えば、例えば、センサで検出される音圧の計測の平均化クロス・スペクトル・マトリックスの主要なコンポーネントを計算するなど、センサからの計測を前処理することによって、得られる。それゆえ、この方法の実施形態は、それぞれの計測位置に配置された、センサ・アレイのセンサによるそれぞれの計測から、各々が計測位置における音場パラメータを示す複数の計測された音場パラメータを得る。
【0011】
いくつかの実施形態において、プロセスは、その各々が1つの測定位置に結びついている複素音圧のセットを受信する。その音圧は、複数のマイクロフォンからの測定を含むことができる信号処理ステップによって得ることができる。例えば、その信号処理は、マイクロフォンの間でのクロス・スペクトル・マトリクスを平均化すること、および、主要コンポーネントの計算を含むことができる。他の実施形態において、その信号処理は、マイクロフォンのアレイと異なる(例えば、マイクロフォンまたはアクセロメーターなど)1つ以上の基準トランスデューサの使用を含むことができる。
【0012】
単一の基準トランスデューサが使用される場合には、基準信号のオート・スペクトル、および、基準信号の間のクロス・スペクトル、および、アレイ・マイクロフォンの各々が、決定される。所与のマイクロフォンに関する音圧が、次に、基準信号のオート・スペクトルおよび、基準信号とそのマイクロフォンとの間のクロス・スペクトルに基づいて計算される。
【0013】
複数の基準トランスデューサが使用されるならば、すべての基準トランスデューサの間のクロス・スペクトル・マトリクス、および、基準トランスデューサと計測マイクロフォンと間のクロス・スペクトル・マトリクスが、決定される。基準トランスデューサの間での、このクロス・スペクトル・マトリクスの主成分分解が、実行される。この主成分分解は、次に、プロセスへの入力として役立つ音圧を計算するために基準対マイクロフォン・アレイ・クロス・スペクトル・マトリクスと一緒に用いられる。
【0014】
選択閾値は、絶対的閾値、または、例えば、基本波のセットのうちで最強のものに対して相対的な閾値であり得る、相対的な閾値は、例えば、例えば、基本波で最強のものの下のデシベルの所定数としてなど、許容されたダイナミック・レンジとして、定義することができる。それゆえ、いくつかの実施形態において、選択されたサブセットに含まれた基本波は、基本波のサブセットのダイナミック・レンジを制限するように選択される。
【0015】
選択閾値は、反復プロセスの間一定でありえるが、いくつかの実施形態において、選択閾値は、反復プロセスの間に、更新される。いくつかの実施形態において、選択閾値は、選択されたサブセットにおける基本波の増加するダイナミック・レンジを可能にするように更新される。それゆえ、いくつかの実施形態において、選択された基本波のダイナミック・レンジに対する制限は、反復的に減少し、いくつかの実施形態において、結局、取り除かれる。上述のように、各々の実際の音源に対して、先行技術のアレイ方法は、典型的には関連する実際の音源よりも弱い関連したゴースト音源を導入する傾向がある。ここに開示されたこの方法の実施形態は、最初に、1つ以上の強いソース/基本波の限られたセットだけを使用して(他の全ての基本波がゼロにセットされる)音場をモデル化する。これらの音源に関する残余誤差(RESIDUAL ERROR)の寄与は、反復プロセスの間に、取り除かれ(または、少なくともかなり減少する)、より弱い音源を、モデルに追加することができる。すなわち、音源の選択されたサブセットを、徐々に増やし、より弱いソースもまた含むようにする。本願の発明者は、一旦、最強の音源への近似解が確立されると、再導入されるこれらの強い音源に関するゴースト音源のリスクは、小さいことを理解した。
【0016】
いくつかの実施形態において、初めに選択された基本波のマグニチュードが、初期の開始値に、例えば、ゼロに等しく、セットされ、選択閾値が、初期値にセットされる。上述のように、いくつかの実施形態において、選択閾値は、最強の基本波に対して相対的な閾値であることができる。それゆえ、選択閾値の初期値は、最強の基本波に対して所期許容ダイナミック・レンジとして表すことができる。後続する繰返しの間に、選択閾値を、許容ダイナミック・レンジに所定最大値に到達するまで徐々に増加させるようにセットすることができる。
【0017】
基本波の選択を、反復最小化プロセスの各々の反復ステップにおいて、あるいは、反復のサブセットだけにおいて、更新することができることが理解される。同様に、許容ダイナミック・レンジを、反復最小化プロセスの各々の反復ステップにおいて、あるいは、反復のサブセットだけにおいて、更新することができる。例えば、いくつかの実施形態において、各々の反復の間(例えば、最急降下法残差最小化プロセスの各々の最急降下法ステップの後など)、選択閾値の下のマグニチュードを有するすべての音源は、ゼロにセットされ、そして、次の反復ステップが、選択された最強の音源が、以前のステップの間に、決定された値を持つ、ソリューション空間のポイントにおいてスタートする。一方、最弱の音源は、ゼロにセットされる。選択閾値は、例えば、許容ダイナミック・レンジが、各々のステップの後に増加されるように、あるいは、許容ダイナミック・レンジが、特定のステップ数が実行される毎に増加されるように、セットされることができる。代替の実施形態において、最弱の音源をゼロにセットした後に、多くの反復ステップを、音源の選択されたサブセットだけで(すなわち、減少したソリューション空間において)実行することができる。モデルに含まれた音源の選択されたサブセットだけで実行される繰返しの数は、所定数であることができる、または、繰返しの数は、プロセスの間に、所与の終了判定基準により決定することができる。ともかく、反復の前述数を実行した後に、最強の音源の選択されたサブセットを使用するのみで、以前にゼロにセットされた音源が、モデルに再導入されることがあり得る。このサブセット反復とフルセット反復との間のシフトは、数回、繰り返されることができる。
【0018】
いくつかの実施形態において、このプロセスは、許容ダイナミック・レンジが、所与のダイナミック・レンジ基準が満たされるまで増加されるように、選択閾値を更新する。この方法は、次に、基本波の更なる枝刈りなしで、あるいは、一定のダイナミック・レンジに基づいた枝刈りで進むことができる。いくつかの実施形態において、プロセスは、少なくともダイナミック・レンジ基準が満たされるまで、エラー計測を減少するために第1の最小化アルゴリズムを使用する。特に、第1のアルゴリズムは、モデル・パラメータの現在の近似から、および、エラー計測から、モデル・パラメータの更新された近似を選択するための第1の更新規則を含む。ダイナミック・レンジ基準が満たされた後に、このプロセスは、第1の最小化アルゴリズムを使用し続けることができる、または、第2の異なる最小化アルゴリズムにスイッチすることができる。特に、第2のアルゴリズムは、第1の更新規則と異なる、モデル・パラメータの現在の近似から、および、エラー計測から、モデル・パラメータの更新された近似を選択するための第2の更新規則を含む。例えば、第1の最小化アルゴリズムは、最急降下法アルゴリズムであることができ、そして、第2の最小化アルゴリズムは、共役勾配法アルゴリズムであることができる。
【0019】
モデル・パラメータは、基本音源の選択されたサブセットの位置、基本音源または基本波の各々のマグニチュード、および/または、基本音源または他の基本波のプロパティを記述する他のパラメータを含むことができ、このマグニチュードは、例えば、複素振幅として表現することができる。そのモデルを提供することは、したがって、基本音源の数と位置との初期値を選択することを含むことができる。そのモデルを提供することは、基本波のタイプ、例えば、平面波、球面波、その他を選択すること、および/または、モノポールやダイポール点光源などの基本音源のタイプを選択すること、および/またはそれらの振幅の初期値などの基本波の他のプロパティを選択することを更に含むことができる。基本波が無限の距離の音源を表すときは、モデル・パラメータは、それぞれの入射平面波の入射方向を含むことができる。すなわち、その入射方向は、基本音源の位置を表す。
【0020】
そのモデルは、前述のモデル・パラメータに依存している1つ以上の機能を含むことができ、そして、選択された目標位置における音場パラメータの計算を可能とする。音場パラメータの値を計算することは、各々の測定位置において、および、前記モデル・パラメータの関数としてその1つ以上の機能を評価することを含むことができる。一般的に、目標位置における値を計算し、目標位置における関数を評価する条件は、その値が、前述の目標位置におけるパラメータ値または関数値を示すような値の計算を指すことを意図するものである。計算を、異なる位置で実行することができることが理解される。いくつかの実施形態において、このエラー計測は、さらに、正規化項、例えば、反復最小化プロセスのソリューションの解ベクトルのマグニチュードを減少するように動作可能な正規化項を含む。例えば、正規化項は、基本波マグニチュードの解ベクトルの標準を示す関数であることができる。
【0021】
測定された音場パラメータは、例えば、音圧、音圧勾配、粒子速度、および/または、その他の音響量であることができる。したがって、各々のセンサは、いかなる適切な音響の測定デバイス、例えば、マイクロフォン、水中聴音器、圧力勾配トランスデューサ、粒子速度トランスデューサ、その他、または、それらの組合せでもあり得る。センサ・アレイは、例えば、二次元または三次元グリッドなどの規則的または不規則なグリッドに配置されるセンサのセットなど複数のセンサを備える。
【0022】
そのアレイのセンサは、計測位置のセットのうちのそれぞれのものに配置される。計測位置のセットは、例えば、単一の平面において、あるいは、2つ以上の平行した平面においてなど、1つ以上の計測平面に配置することができる。各々の平面の中で、測定位置は、規則的グリッドの上で、不規則的パターンで、あるいは、他の適当な方法で配置することができる。更にまた、ここに記述された方法は、また、非平面測定ジオメトリーに、すなわち、計測位置が1つ以上の平行した平面に位置せず、例えば曲面に位置するような配置に適用することができる。例えば、ここに記述された方法は、球面アレイ・ジオメトリーに適用されることができる。
【0023】
反復最小化プロセスは、適切な完了基準が得られるまで、例えば、エラー計測が所定閾値を下回るまで、実行することができる。各々の繰返しにおいて、このプロセスは、エラー計測を減少するように、例えば、最急降下法テクニックなどの適切なエラー降下プロセスなど、適切な更新規則にしたがって、モデル・パラメータの現在値を調整することができる。反復最小化プロセスの結果は、したがって、特に、完了基準が満たされたときに、本プロセスにより得られた基本波のマグニチュードを含むモデル・パラメータの結果として生じる値を含むことができる。反復プロセスの最後に得られた結果として生じるモデル・パラメータ値から、このプロセスは、このように、選択された目標位置における計算された音場パラメータを出力し、および/または、結果として生じる基本音源の位置やマグニチュードを出力することができる。プロセスは、得られたモデル・パラメータを格納することができる。代替的に、または、追加的に、このプロセスは、別の適切な方法で、例えば、計算された音場パラメータを位置座標の関数としての表現を表示することによって、反復プロセスの結果を出力することができる。このプロセスにより出力された音場のプロパティは、基本波の結果として生じるサブセットの1つ以上の位置とマグニチュードであることができる。代替的、または、追加的に、このプロパティは、音圧、粒子速度、音圧勾配、音強度、その他の、1つまたは複数の目標位置で計算された音場パラメータであることができる。
【0024】
上述の方法および以下で記述される方法の特徴は、少なくとも部分的には、ソフトウェアまたはファームウェアでインプリメントすることができ、コンピュータ実行可能命令などのプログラム・コード手段の実行に起因してデータ処理装置または他の処理手段で実行されることができることに留意する。ここで、そして、以下において、「処理手段」という用語は、上記の機能を実行するように充分に適合する任意の回路やデバイスを含む。特に、上記の用語は、汎用または特殊目的プログラム可能マイクロプロセッサ、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラム可能ロジック・アレイS(PLA)、フィールド・プログラム可能ゲートアレイ(FPGA)、グラフィック処理ユニット(GPU)、中央処理ユニット(CPU)、特殊目的電子回路、その他、または、それらの組合せを含む。
【0025】
本願発明の実施形態は、上述の方法を含んで、異なるように、インプリメントすることができる。および、以下において、対応するシステム、デバイスおよび製品は、各々が、最初に述べた態様に関連して記述された利益および優位点の1つ以上を生み出し、各々が、最初に述べた態様に関連して記述された、および/または、従属する請求項または本願明細書の記載において開示されるように、その実施形態に対応する1つ以上の実施形態を有する。
【0026】
特に、ここにおいて、センサのアレイから得られた複数の計測された音場パラメータから音場の少なくとも1つのプロパティを決定する処理装置の実施形態が、開示される。この処理装置は、センサ・アレイのそれぞれのセンサから、計測された音場パラメータに対応するセンサ出力信号のセットを受信するためのインタフェース、および、ここに定義される方法の実施形態のステップを実行するように構成される処理ユニットを備える。この処理装置は、ここに記述された反復最小化プロセスの決定されたソリューションのモデル・パラメータを格納するためのストレージ・メディアおよび/または、モデル・パラメータや計算されたモデル・パラメータから計算された音場の計算されたプロパティを出力するための別の出力インタフェースを更に含むことができる。出力インタフェースの例はディスプレイ、データ通信のための通信インタフェース、その他を含む。
【0027】
音響測定システムは、上で、また、以下で記載するように、処理装置、および、計測位置のセットにおける音場パラメータを計測するためのセンサのセットを含むことができ、そして、処理装置への通信接続において、計測された音場パラメータを処理装置に転送するように接続可能である。例えば、そのようなシステムは、例えば、エンクロージャまたは、エンジンで音源をローカライズするためになど、3次元空間において音源(例えば雑音源)の位置特定をするために使用することができる。センサ・アレイは、アナログまたはデジタル形式で、センサ出力を転送することができる。したがって、増幅、フィルタ処理、アナログ・デジタル変換、その他の多くの信号処理ステップのいくつかまたはすべてを、センサ・アレイによって、あるいは、処理装置によって、実行することができる。
【0028】
コンピュータ・プログラムは、データ処理システムに、プログラム・コードが、データ処理システムを介して、実行されるときに、上で、および、以下において、開示される方法のステップを実行させるように適合したプログラム・コード手段を備えることができる。このコンピュータ・プログラムは、コンピュータ読取り可能記憶媒体に格納する、または、データ信号として具体化することができ、このストレージ・メディアは、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、フラッシュ・メモリ、CD−ROM、DVD、ハードディスク、固体ディスク(SSD)、その他の磁気または光記憶装置デバイスなど、いかなるデータを格納するために適切な回路またはデバイスをも備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
上記した、および、他の態様が、以下に、図面を参照して記述される実施形態から明らかになり、説明される。ここで、
図1図1は、音響の計測システムの概略ブロック図を示す。
図2図2は、音場のプロパティを計算するプロセスの例のフローチャートを示す。
図3図3は、音場のプロパティを計算する最小化プロセスの例のフローチャートを示す。
【0030】
図面を通して、等しい参照符号は、等しいまたは対応する要素、特徴、または、コンポーネントを、可能である限り、参照する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、音響の測定システムの概略ブロック図を示す。このシステムは、音響センサ108のセットを備えるセンサ・アレイ102、および、アナライザ・ユニット103、または、センサ・アレイに接続した他の適切な処理装置を備える。典型的には、センサ・アレイは、その上にセンサが搭載されるフレームを備える。しかしながら、他の例示的実施形態は、それぞれの位置において、センサ・アレイを形成するように、複数の分離した個々のセンサを使用することができることが理解される。
【0032】
以下において、音響センサ108は、また、トランスデューサとも呼ばれる。それでも、音響センサは、マイクロフォン、水中聴音器あるいは、音圧、音圧勾配、粒子速度、または他の線形量など音響のプロパティを計測するための他の適当なデバイスであることができることが理解される。
【0033】
アレイ102のトランスデューサ108は、例えば、1次元、2次元、または、3次元グリッドなどのグリッドで構成される。トランスデューサは、規則的グリッドの上または不規則幾何形状に配置することができる。トランスデューサの数、および、アレイの幾何、例えば、トランスデューサ間隔中スペーシング、は、エンクロージャのサイズと幾何形状、または、その内部で音源の位置が特定される物体、関心対象の周波数範囲、所望の空間解像度、および/または、他の設計パラメータにしたがって、選ぶことができる。
【0034】
トランスデューサ・アレイ102は、トランスデューサ108が測定された信号を例えば、有線または無線信号接続を介してアナライザ・ユニットに転送できるように、アナライザ・ユニット103に接続される。
【0035】
アナライザ・ユニット103は、トランスデューサ・アレイ102から測定された信号を受信し、処理するためのインタフェース回路104、インタフェース回路104とのデータ通信における処理ユニット105、ストレージ・メディア112、および、処理ユニット105とのデータ通信における出力ユニット106を含む。図1において、単一の中のユニットとして示されているとしても、アナライザ・ユニット103は、例えば、取得フロント・エンドと適切にプログラムされたコンピュータなど、物理的に2つの別々のデバイスに分割することができる、または、2つより多いデバイスに分割することさえできることが理解される。同様に、アナライザ・ユニットの異なるサブ・ブロックに関係して記載される機能は、代替的または追加的な機能、あるいは、ハードウェア・ユニット/モジュールに分割することができることが理解される。
【0036】
インタフェース回路104は、トランスデューサ108から出力信号を受信するために、および、後続する処理ユニット105による分析のために、受信した信号を前処理するために適切な信号処理回路を備える。例えば、インタフェース回路は、同時に時間データ取得を実行することができ、典型的にはFFT(高速フーリェ変換)を使用して、周波数領域へのデータの変換を含む、すべての更なる処理は、次に、処理ユニット105により、行うことができる。インタフェース回路104は、受信信号を増幅するための1つ以上のプリアンプ、受信信号を1つ以上のデジタル信号に変換する1つ以上のアナログ・デジタル(A/D)コンバータ、1つ以上のフィルタ、例えば帯域幅フィルタ、その他のコンポーネントのうちの1つ以上を備えることができる。いくつかの実施形態において、インタフェース回路は、出力データとして振幅を、そして、トランスデューサの各々の周波数の関数として位相を提供することができる。
【0037】
処理ユニット105は、適切にプログラムされたマイクロプロセッサ、コンピュータの中央処理ユニット、あるいは、例えば、ASIC、DSP、GPU、FPGAその他インタフェースユニット104から受信された信号を処理するための他の任意の適切なデバイスであることができる。この処理ユニットは、ここに記述される音場のプロパティを計算するように、インタフェース回路104によって受信されたトランスデューサ信号を処理するのに適している。
【0038】
ストレージ・メディア112は、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、フラッシュ・メモリ、CD−ROM、DVD、ハードディスク、SSD、その他の磁気または光記憶装置デバイスなどのデータやコンピュータ・プログラムを格納するためのいかなる適切な回路またはデバイスを含むことができる。図1において、ストレージ・メディアは、処理ユニットとは分離して、しかし、通信接続しているように示される。しかしながら、ストレージ・メディア112は、例えば内蔵メモリとしてなど処理ユニット105の一部としても具体化できることが理解される。
【0039】
出力ユニット106は、例えば、所定の表面の中などでの異なる位置における計算された音圧のマップ(または別の音場パラメータ)など音場の計算されたプロパティの可視表現を提供するためのディスプレイ、あるいは、他の適当なデバイスまたは回路を備えることができる。適切な出力装置の例は、プリント表現を提供するためのプリンターやプリンターインターフェースを含む。代替的に、または、追加的に、出力ユニット106は、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、フラッシュ・メモリ、CDROM、DVD、ハードディスクおよびSSDなど磁気または光記憶装置デバイス、例えば、LAN、広域ネットワークおよびインターネットその他コンピュータまたは電気通信ネットワークへのインタフェースなど有線または無線データ通信インタフェース、などの計算されたプロパティを示すデータを通信および/または格納するためのいかなる適切な回路またはデバイスを含むことができる。
【0040】
アナライザ・ユニット103は、適切な信号取得ボードまたは回路を含むPCなど適切にプログラムされたコンピュータとしてインプリメントすることができる。
【0041】
動作している間に、トランスデューサ・アレイ102を、音源が位置する周囲の位置に、または、例えば、音響を放射する音源を含む物体101の表面の近く、または、エンクロージャの内部など音源を地図に精密に示す位置に配置することができる。トランスデューサの数、トランスデューサ間隔などアレイの幾何形状、および、可能性がある音源への距離は、その物体のサイズと幾何学的な複雑さまたは分析される環境、関心対象の周波数範囲、および所望の空間的解像度度にしたがって、選ぶことができる。
【0042】
アレイ102の位置は、例えば、位置検出デバイスなどによって決定することができ、そして、アナライザ・ユニット103に供給される。アレイ102のトランスデューサ108は、それらのそれぞれの位置で、音圧または別の適切な音響量を計測することができ、結果のトランスデューサ信号が、アナライザ・ユニット103に送信される。
【0043】
例えば、トランスデューサ・アレイは、統合位置検出デバイスを有する携帯型のアレイであることができ、したがって、対象物のまわりに分布する異なるアクセス可能位置において測定を可能にする。別の典型的アプリケーションは、自動車キャビンの内部である。ここでは、3Dアレイ・グリッドを使用して、すべての方向において音源を識別することができる。例えば、球面アレイ、または(8X8X2センサなどを含む)二重層アレイを、使用することができる。
【0044】
アナライザ・ユニット103は、トランスデューサにより測定された信号から、音場のプロパティを計算する。アナライザ・ユニットは、計算されたプロパティの表現、例えば、音強度のマップ、または識別された基本音源のマップ、を格納および/または出力することができる。
【0045】
音場のプロパティを計算する方法の実施形態が、図2を参照して、また、継続的に図1を参照して、記述される。特に、以下において、Mトランスデューサのアレイによる測定に基づいて音源の位置と強度とを決定するプロセスの例が記述される。その各々が、それぞれの測定位置において音圧を測定する。しかしながら、ここに記述される方法の実施形態は、また、粒子速度、エネルギー密度などの他の音場パラメータに適用することができることが理解される。例えば、アレイのトランスデューサの数は、5ないし100、あるいは、それより多いものもあり得る。トランスデューサで計測される音を放射する音源は、また、「リアル音源」とも呼ばれる。決定すべきものは、典型的には、これらのリアル音源の位置および強度である。
【0046】
最初の初期化ステップS1において、このプロセスは、トランスデューサ・アレイ、音場モデルに関係する、および、反復プロセスに関係するいくつかのパラメータを受信し、決定し、および/または、選択する。このために、いくつかの実施形態において、アナライザ・ユニットは、オペレーターに支援されるセットアップのためのユーザ・インタフェースおよび機能を提供することができる。それは、オペレーターが、例えば、モデル特性、反復パラメータ、トランスデューサ・アレイの特性、その他いくつかの初期化およびセットアップ・パラメータを入力することを可能にする。少なくともいくつかのパラメータを、適切なインタフェースを経たアナライザ・ユニットによって受信することができることが理解される。例えば、いくつかのシステムは、適切な座標系に対するアレイのトランスデューサの計測位置を決定するために位置検出デバイスを含むことができる。これらの測定位置は、したがって、オペレーターによって手動で入力することができる、または、トランスデューサ・アレイから、あるいは、別の測位システムからアナライザ・ユニットによって通信インタフェースを介して受信することができる。
【0047】
特に、初期化ステップの間に、プロセスは、1つ以上のリアル音源によって発生された音場をモデル化するための適切なモデルを規定する。この例の目的のために、この音場モデルは、周波数領域音源/フィールドモデルとして記載される。しかしながら、音場モデルの他の定式化を、使用することができることが理解される。例えば、時間領域のモデル表現である。一般的に、このモデルは、例えば、測定された音圧など測定された音場パラメータを、アレイ・トランスデューサ計測位置の各々において、任意選択的に、近傍の反射/散在する物体の影響を考慮して、そのモデルから計算することができるように選択される。リアル音源は、例えば、モノポールやダイポール点音源、または、異なる音源方向から発する平面波などの基本波の他の形式の基本音源の集合によってモデル化される。したがって、初期化ステップの間に、プロセスは、基本音源の初期セットの数、タイプと位置、および/または、基本波の他のタイプの初期パラメータを選択する。
【0048】
続くステップS2において、プロセスは、Mトランスデューサからセンサ出力信号を受信し、対応する測定された音圧PMを決定する。この決定は、周波数領域において音圧を得るように、例えば、フィルタ処理、アナログ・デジタル変換、および、フーリエ変換など従来の信号処理ステップを備えることができる。
【0049】
いくつかの実施形態において、ここに記述されるプロセスのための入力データは、M=1、2、...、Mとインデックスされ、次に、トランスデューサの間でM×Mクロス・パワー・スペクトル・マトリクスを平均することにより、Mマイクロフォンのアレイまたはトランスデューサの形式との同時取得によって得ることができる。ここで各々のマトリックス要素は、クロス・パワー・スペクトルである。本願の説明の目的で、クロス−パワー・マトリックスGが関連する単一の高周波ラインFを、選択することができる。いくつかの実施形態において、圧力−圧力クロス・パワー・スペクトル・マトリクスを、測定されるマイクロフォン信号に使用することができ、一方、他の例示的実施形態は、圧力−圧力クロス・スペクトル密度マトリクスを採用することができる。エルミート半正定値マトリックスGに対して、固有ベクトル/固有値分解を実行することができる。
【数1】
ここで、Vは、固有ベクトルVΜ、Μ=1、2、...、Mを含むカラムを有するユニタリ行列であり、そして、Sは、対角上に実非負固有値SΜを有する対角行列である。主成分ベクトルPΜは、
【数2】
として計算することができる。
【0050】
ここに記述される方法の実施形態は、次に、これらの主成分のそれぞれに独立して適用することができ、その後、それらの成分は、音場のそれぞれのインコヒーレント(非干渉性)部分を表すので、出力は、パワー・ベースに加えることができる。
【0051】
次の説明の目的のために、単一の主成分を考え、インデックスΜをスキップする。これは、入力データが、すべてのトランスデューサに対する測定された複素音圧値を有する単一ベクトルPで表されることを意味する。したがって、ステップS2は、上記したように、平均されたクロス・スペクトル・マトリクスの主成分の決定を更に含むことができる。
【0052】
本願の説明の目的のために、各々の基本音源iの複素振幅が、Qとして参照される。所与の目標位置Xにおける音圧P(X)は、したがって、
【数3】
のように計算することができる。ここで、複素関数A(X)は、他の音源が静かで、基本音源ナンバーiのユニット励起によって位置Xにおける複素音圧に対する寄与を表す。他の音場モデルを使用することができることが理解される。方向Νにおける粒子速度は、例えば、
【数4】
の方程式などに基づいて、同じソース・モデルから、同様の方法で計算することができ、そして、音圧および粒子速度から、音強度を計算することができる。
【0053】
以下において、項Am,iは、他の音源が静かで、基本音源ナンバーiのユニット励起によって、トランスデューサ番号Mの計測位置において計算された複素音圧を表すのに使用される。基本音源の複素振幅Qで、マイクロフォン番号Mにおいて計算された音圧
【数5】
は、
【数6】
となる。これは、マトリクス・ベクトル表記法で、
【数7】
と書くことができる。ここで、
【数8】
は、計算された音圧値
【数9】
の列ベクトルである。Qは、未知の複素音源振幅Qを含む列ベクトルであり、そして、Aは、要素Am,iを有するマトリクスである。トランスデューサ・アレイは、自由フィールドにある必要はないが、しかし、たとえば、堅い球体の表面上に埋め込まれたマイクロフォンのセットであり得ることが理解される。その場合、伝達マトリクスAは、堅い球体の影響を考慮しなければならない。
【0054】
トランスデューサ圧力データが、測定され、受信されたときに(先に述べたように前処理を含むことができる)、プロセスは、ステップS3に進み、そこで、そのプロセスは、計算された音圧
【数10】
が、少なくとも、測定された音圧PMにほぼ等しいように、未知の値Qを決定する。言い換えると、プロセスは、方程式
【数11】
の少なくとも近似解を求める。にここで、Pは、測定された音圧値PMの列ベクトルであり、Qは、未知の複素音源振幅Qを含む列ベクトルである。そして、Aは、Am,iを要素とするマトリクスである。
【0055】
このために、残差ベクトルRが、
【数12】
のように定義される。それゆえ、ステップS3において、プロセスは、残差ベクトルRの適切なコスト関数を最小にすることによって複素音源振幅Qの推定値を計算する。特に簡単なコスト関数は、残差ベクトルの2ノルムFを含む
【数13】
。上記の最小化タスク対する少なくとも近似解を計算する反復法は、既知であり、例えば最急降下法を含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、チーホノフ正則化または同様の正則化を、問題の不適切な性質を打ち消すために追加することができる。式(4)を、
【数14】
の形式にする。ここで、正則化パラメータΛは、小さな正の数である。ケースP=2に対して、上記の正則化スキームは、一般にチーホノフ正則化と呼ばれる。
【0057】
正則化パラメータΛの値は、初期化ステップの間に、選択することができる。Λの値は典型的には、測定雑音および不正確にあまりに影響されるソリューションを避けるために、低い残差ノルムFおよびと十分に低いソリューション・ノルム
【数15】
の両方を提供するように、選択されるいくつかの実施形態において、Λの値は、反復プロセスの間でさえ、適切な更新スケジュールを用いて、更新することができる。通常、ソリューション・ノルムを計測するために2−ノルムが使用される。すなわち、P=2であるが、しかし、例えば、M.CETIN、 D.M.MALIOUTOV、および、A S.WILLSK、「A VARIATIONAL TECHNIQUE FOR SOURCE LOCALIZATION BASED ON A SPARSE SIGNAL RECONSTRUCTION PERSPECTIVE」、PROCEEDINGS OF THE 2002 IEEE INTERNATIONAL CONFERENCE ON ACOUSTICS, SPEECH, AND SIGNAL PROCESSING, ORLANDO, FL, MAY 2002.に記載されているように、疎なソリューション・ベクトルQを得る試みにおいて、P≦1が使用できた。本願方法のいくつかの実施形態は、式(4)のエラー計測を使用する、すなわち、正規化項なしである。いくつかの実施形態において、正則化の形式を、適切な停止基準を用いて実行することができる。例えば、勾配のベクトルWの2−ノルム(下記参照)を、この目的のために使用することができる。勾配の標準がいくつかの閾値ファクタ(例えば、0.01または0.1など)掛けるQ=0におけるノルムの値より小さくなるとき、繰返しは、ストップされる。
【0058】
ステップS4において、このプロセスは、例えば、複数の目標位置Xに対する音圧マップまたは音強度マップを出力ように、Qに対して得られたソリューション、および/または、1つ以上のP(X)の値、および/または、ソリューションQから計算されたU(v)(X)を出力する。一旦、音源/音場モデルが、推定されると、それは、アレイのまわりの3D領域における全ての音場を再構築するのに使用されることができる。
【0059】
しかしながら、式(2)の問題が劣決定系であるときに、チーホノフ正則化は、最小ノルム・ソリューションを提供する傾向がある。発明者が、論文「BASIC THEORY AND PROPERTIES OF STATISTICALLY OPTIMIZED NEAR−FIELD ACOUSTICAL HOLOGRAPHY」(同上)で示すように、再構築された音場の厳しい過小評価が、平均トランスデューサ間隔が、半波長より小さいが、しかし、それに近いような周波数においてでさえ起こる。より高い周波数において、これは、さらに、もっと悪くなる。残差最小化は、まだ、トランスデューサ位置において測定された圧力の妥当な再構築建を確実にする。しかし、ソリューション・ノルム最小化は、トランスデューサの間の位置Xにおいて、最も弱い可能性がある音場を生成する傾向がある。計測領域の外において、より円滑であるが、シビアな過小評価が、このように起こり、そして、曖昧に近い問題が、ソリューション・プロセスに、シビアなゴースト音源を生成させる。
【0060】
ここに開示される方法の実施形態は、最も強いリアル音源をはじめとして反復ソリューション・プロセスにおけるリアル音源と結びついたゴースト音源を取り除くか、少なくとも、抑制する。反復ソリューション・プロセスの例が、次に、図3を参照して、より詳細に記述される。例えば、図3のプロセスは、図2の全体的なプロセスのステップS3のインプリメンテーションとして使用することができる。
【0061】
ステップS31において、プロセスは、ソリューション・ベクトルQの初期値Qを選択することによって、カウンターKを初期値K=0にセットすることによって、および、いくつかの追加的なパラメータをそれらの選択された初期値にセットすることによって、反復プロセスを初期化する。
【0062】
ステップS32において、そのプロセスは、現在の近似解Qから、k+1回目の繰返しステップで、更新された近似解Qk+1を決定する。このために、このプロセスは、ステップΔQを計算し、残差関数Fを減少する。たとえば、最急降下方向におけるステップ、
【数16】
であることができる。ここで、Wは、マイナスを加えた勾配関数F(式(4))である。
【数17】
および、
【数18】
ここで、
【数19】
【0063】
上記の式において、上付き文字Hは、マトリクスまたはベクトルの共役と転置を意味する。パラメータαは、典型的には、初期化ステップの間にセットされるが、しかし、繰返しの間に更新することができるステップ・サイズ分割を表す。α=1で、ステップは、最急降下方向において残差ノルムを最小化する。典型的には、0.5≦α≦1の範囲の値が、用いられる。
【0064】
しかしながら、式(6)のステップをとるだけで、
【数20】
は、上述のように、ゴースト音源の導入することになる。これらは、典型的には、最強のリアル音源より弱い。
【0065】
したがって、続くステップS33において、プロセスは、
【数21】
における、特定の閾値より小さいすべての成分をゼロにセットすることによって、ゴースト音源のいくつかを取り除く。
【0066】
このために、プロセスは、
【数22】
における最大の要素の振幅
【数23】
以下のデシベルの数D>0として閾値Tを計算する
【数24】
したがって、次のソリューション推定Qk+1の要素Qk+1,iは、
【数25】
のように計算される。
【0067】
続くステップS34において、プロセスは、音源のダイナミック・レンジの増加が含まれるように、閾値ファクタDを更新する。
【数26】
。K→∞に対してD→∞であるとき、ダイナミック・レンジ制限は、徐々に取り除かれる。
【0068】
特に適切であるとわかった更新戦略の1つの例は、次の初期値を(例えば、初期化ステップS31の間にセットするように)使用し、
【数27】
。(別の例において、D=1を使用することができる。)そして、次に、上限ダイナミック・レンジDmaxによって特定される選ばれた上限に達するまで、繰返し毎に、
【数28】
所定のインクリメント、たとえば1デシベルでダイナミック・レンジを増加する
【数29】
ダイナミック・レンジDは、必ずしも繰返し毎に更新する必要があるわけではなく、他の開始値(式(14))および/またはインクリメント(式(15))を使用することができる。
【0069】
小さな(例えば、0.1デシベルまたは1デシベル)ダイナミック・レンジから開始することは、まさしく最強の音源のみを保持し、一方、すべての関連したゴースト音源を取り除く傾向があることを意味する。プロセスが、ダイナミック・レンジ限定音源ベクトルを次の繰返しのための出発点として使用するとき、そのまさしく最強の音源に関連した残差ベクトルの成分は、減らされ、したがって、関連したゴースト音源は、対応して、減少される。ダイナミック・レンジの増加は、次に、リアル音源の次のレベルが含まれるようにし、一方、関連したゴースト音源その他を抑制する。
【0070】
ステップS35において、プロセスは、プロセスが、ソリューションに収束したか否かを決定する。例えば、プロセスは、式(5)のエラー計測は、所定の閾値の下で減少したか否か、および/または、勾配ベクトルWの2−ノルムが、出発点Q=0におけるその値のある分割以下に減少したかどうかを決定することができる。プロセスが、ソリューションは到達したと判断する場合には、プロセスは、計算されたソリューションQk+1を返し、さもなければ、プロセスは、ステップS36に進む。
【0071】
ステップS36において、そのプロセスは、繰返しカウンターkをインクリメントし、そして、ステップS32に戻る。
【0072】
それゆえ、依然、図3を参照すると、このプロセスの実施形態は、以下のステップにまとめることができる。
【0073】
ステップS31:初期化ステップにおいて、1つ以上のプロセス・パラメータが、それらの初期値(例えば、音源強度Qおよびダイナミック・レンジD)にセットされる。
【0074】
ステップS32:最小化プロセスの反復ステップが実行される。すなわち、最小化ステップの方向および長さが計算され、そして、音源強度の更新ベクトル
【数30】
が計算される。ステップS33:最強の音源の下のDデシベルより大きいすべての音源の振幅は、ゼロにセットされ、音源強度Qk+1の更新されて調整されたベクトルという結果になる。
【0075】
ステップS34:ダイナミック・レンジDが更新される。
【0076】
ステップS35:終了判定基準が満たされるならば、プロセスは停止し、結果として生じるモデル、および/または、モデルから計算される量を出力する。さもなければ、プロセスは、ステップS32に戻る。
【0077】
記のプロセスの多くの上バリエーションを、インプリメントすることができることが理解される。例えば、いくつかの実施形態において、ダイナミック・レンジが、その上限値Dmaxに到達した後に、プロセスは、単に、ダイナミック・レンジ制限の有無にかかわらず、ステップS35が基準に達するまで、多数の最急降下法ステップで進行することができる。代替的に、一旦、ダイナミック・レンジの上限に到達すると、プロセスは、異なる最小化プロセス、例えば共役勾配アルゴリズムにスイッチすることができる。これは、非常に小さな残差を、いかなる顕著なアーチファクト/サイドローブをも導入することなく、非常に少ない繰返しだけで提供するために見いだされたものである。
【0078】
さらに別のプロセスの変形において、特別なステップを、たとえば、ダイナミック・レンジをインクリメントすることがちょうど終わった繰返しの間のポイントにおいて、導入することができる。そのポイントにおいて、基本音源分配の良い推定Qが、達成された本願の発明者は、それから、収束が、単純なスケーリング・ステップを通して、スピードアップされることができることを発見した。
【数31】
ここで、βは、F(βQ)を最小化するように選ばれ、これは、βの単純な二次関数である。このスケーリング・ステップに先だって、空間平滑化スムージング(ローパス・フィルタリング)を、音源分布Qについて実行することができる。
【0079】
いくつかの実施形態が、詳細に記載され、示されたが、ここに開示された態様は、それらに制限されるものではなく、しかし、また、以下の請求項において規定される主題の範囲の中で、他の方法で具体化することができる。例えば、他の例示的実施形態を、利用して、構造的、機能的修正をなすことができることを理解すべきである。
【0080】
特に、ここに記載した方法と装置の実施形態は、主に、近接場音響のホログラフィを参照して記述された。しかしながら、ここに記載した方法とシステムの実施形態は、例えば、「GENERALIZED INVERSE BEAMFORMING」法など音場のプロパティを決定するため他の方法に関連して使用することもできることが理解される。この方法は、点音源モデルを使用し、そして、例えば、T. SUZUKI、「GENERALIZED INVERSE BEAMFORMING ALGORITHM RESOLVING COHERENT/INCOHERENT, DISTRIBUTED AND MULTIPOLE SOURCES」、AIAA 2008−2954, AIAA AEROACOUSTICS CONFERENCE 2008、および、P.A.G. ZAVALA他、「GENERALIZED INVERSE BEAMFORMING INVESTIGATION AND HYBRID ESTIMATION」、BERLIN BEAMFORMING CONFERENCE (BEBEC) 2010、に開示されるように、アレイ計測とマッチさせるために、これらの点音源の複素振幅について解く。これらの方法のコンテキストにおいて、本願明細書に記載した方法とシステムの実施形態は、ゴースト音源を抑制し、したがって、一種のコヒーレント・デコンボルーションを実行するのに使用することができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、無限距離における音源が使用される。その場合、各々の基本音源は、入射平面波を生成し、そして、最小化プロセスは、それぞれの平面波の複素振幅を決定しようとする。同様に、ここに記述される方法の実施形態は、平面波、ダクト波、球面波など基本波の種々のタイプに、および/または、モノポール、ダイポール、または、マルチポール音源など基本音源の種々のタイプに適用することができる。
【0082】
ここに記述される方法および装置は、例えば、マシン、モーター、エンジン、自動車などの車両、その他の音響のプロパティを分析するときなど、振動している物体など種々の音源/雑音源を識別するのに使用することができる。
【0083】
ここに記述される方法の実施形態は、いくつかの別個の要素を備えているハードウェアにより、および/または、少なくとも部分的には、適切にプログラムされたマイクロプロセッサの手段によりインプリメントすることができる。
【0084】
いくつかの手段を列挙している装置の請求項において、これらの手段のいくつかは、ハードウェアの全く同一の要素、コンポーネントまたは項目によって具体化することができる。特定の手段が、相互に異なる従属形式の請求項において、繰り返される、または、異なる実施形態の中で記述されるという単なる事実は、これらの手段の組合せは、有効に使用することができないことを示すものではない。
【0085】
「備える」という用語が、本願明細書で使用されるときには、述べられた特徴、要素、ステップ、または、コンポーネントの存在を特定するためであると解釈すべきであり、1つ以上の他の特徴、要素、ステップ、コンポーネント、または、そのグループの存在、または、追加を排除するものではないことが強調されなければならない。
図1
図2
図3