(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プリントヘッドの各ノズルは、前記画像を印刷すること、又は、前記キープウェットパターンを印刷することのいずれかによって、各印刷ジョブ中に0.5Hzよりも高い周波数で放出する、請求項1に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
ホームアンドオフィス(「SOHO」)プリンタ、ラベルプリンタ及び大判プリンタを含む多数の様々な印刷フォーマットについて、Memjet(登録商標)技術を採用したインクジェットプリンタが市販されている。Memjet(登録商標)プリンタは通常、ユーザ交換式である1以上の固定インクジェットプリントヘッドを備えている。例えば、SOHOプリンタ又は卓上ラベルプリンタは、1つのユーザ交換式多色(多色刷り)プリントヘッドを備えており、高速ウェブプリンタは、媒体(ウェブ)供給方向に沿って整列した複数のユーザ交換式モノクロプリントヘッドを備えており(例えば米国特許出願公開第2012/0092403号明細書及び米国特許第8398231号明細書を参照)、かつ、大判プリンタは、大判ページ幅の全域に広がるように交互に重なった配置で複数のユーザ交換式多色プリントヘッドを備えている(米国特許第8388093号明細書を参照)。
【0003】
インクジェットノズルは、適切に機能するために水和状態で維持されなければならない。ノズルが完全に水和されていない場合、ノズルは、インクによって詰まりやすく(「デキャップされる」)、かつ、放出信号に応答してインクの小滴を排出することができなくなる場合がある。たとえ脱水状態になったノズルが放出信号に応じてインクを依然として排出することができたとしても、排出された小滴は、誤った方向にいく場合があり、完全に水和されていない場合に小滴の容積を減少させる又は排出速度を低下させる場合があり、そのいずれも印刷品質の低下につながる場合がある。ノズル脱水の問題は、概して小さな小滴容積(例えば1〜3pL)を有するとともに樹枝状インク供給チャネルを有するMemjet(登録商標)プリンタにおいて特に深刻になる。
【0004】
インクジェットプリンタは通常、ノズルの詰まりを除去するため又はノズルを完全に水和状態に戻すために様々な方策を採用している。通常、これは、ワイピング、強制的なインク抜き(例えばノズルプレートを真空に引く又はインク供給部に正圧を加えることによって)、及び、インクつぼ内へのインク小滴の放出(「スピッティング」)を含み得る保守サイクルを包含する。スピッティングは、通常の小滴排出エネルギーを増大させてノズルからインクを強制的に押し出すことを包含する(例えば、参照によってその内容が本願に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0310149号明細書を参照)。スピッティングは、保守サイクル中に実行される、又は、印刷ジョブ中の媒体シート同士の間で実行される場合がある。
【0005】
インクジェットプリンタは、ノズルを水和状態に維持するための様々な方策をさらに採用し、それによって、必要とされる保守介入の頻度を最小限に抑え得る。ノズルを機能状態に戻すための保守介入は、時間がかかるとともにインクを無駄使いし、また、できる限り避けるべきである。従来の保守ステーションは、ウェブを切断しないと媒体経路を横切れないので、保守介入は、媒体ウェブ上に印刷する時に潜在的に問題がある。さらに、ページ間スピッティングは、連続的な媒体ウェブ上に印刷する時の選択肢にはならない。
【0006】
非放出ノズルの詰まりを最小限に抑える1つの方策は、インクの小滴を排出するために不十分なエネルギーを有するが、ノズルチャンバ内のインクを温めてそれによってその粘度を低下させるのに十分なエネルギーを有するサブ排出パルスを用いる。この方法におけるサブ排出パルスの使用は、参照によってその内容が本願に組み込まれる米国特許第7845747号明細書で説明されている。
【0007】
ノズルの詰まりを最小限に抑える別の方策は、ノズルチャンバ内のインクが連続的に再び満たされて脱水状態になる機会を有しないように、プリントヘッドの各ノズルが定期的に放出されることを確実にすることである。参照によってその内容が本願に組み込まれる米国特許第7246876号明細書は、プリントヘッドの各ノズルが、ノズルのデキャップ時間より短い時間内に放出されることを確実にするために媒体基材上に低密度のキープウェットパターン(keep-wet pattern)を印刷することを説明している。通常、キープウェットパターンによる媒体基材上のドットの密度は、1:250よりも小さく、また、可視性を最小限にするために集められていない。
【0008】
キープウェットパターンは、インクジェットプリンタにおいて、特に、ページ間のスピッティングの機会がなく保守介入のための機会が少ないインクジェットウェブプリンタにおいて良好な印刷品質を維持するために潜在的に重要な方策である。しかしながら、キープウェットパターンは、プリンタに送信される画像データの一部ではない追加のドットを印刷することによって印刷品質を逆説的に低下させる。従って、特に、ページ間のスピッティングを実行することができないインクジェットウェブプリンタにおいて、キープウェットパターンの可視性を最小限に抑え、かつ、印刷品質をさらに向上させることが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
第1態様では、複数のインク面を有するインクジェットプリントヘッドのための印刷データを生成する方法が提供され、当該方法は、
プリンタコントローラで印刷ジョブのための画像データを受信するステップと、
プリントヘッドの各インク面のためのキープウェットパターンを読み出すステップであって、読み出されたキープウェットパターンが1以上の入力パラメータを用いて決定される、ステップと、
受信した画像データに基づいてプリンタコントローラ内のプリントヘッドの各インク面のための第1印刷データを生成するステップと、
第1印刷データにキープウェットデータを結合してプリントヘッドの各インク面のための第2印刷データを提供するステップと、
第2印刷データ、又は、第2印刷データに基づく第3印刷データを、プリンタコントローラからプリントヘッドに送信し、それによって、キープウェットパターンとともに画像をプリントヘッドに印刷させるステップと、を含み、
キープウェットパターンは、プリントヘッド内の各ノズルの水和を維持するために十分な周波数で印刷される複数のドットによって規定される。
【0010】
第1態様に係る方法は、印刷ジョブに関するパラメータに従ってプリントヘッドの各インク面から排出されるキープウェットパターンを調整することによって、印刷されたキープウェットパターンの可視性を有利に最小化する。このようにして、各インク面から排出されたキープウェット小滴の周波数を、キープウェットパターンの全体の可視性を顕著に低下させる絶対最小値に維持することができる。
【0011】
好ましくは、少なくとも1つのインク面が、プリントヘッドの少なくとも1つの他のインク面と異なるキープウェットパターンを排出する。ある実施形態では、各インク面は、異なるキープウェットパターンを排出してもよい。
【0012】
好ましくは、第1印刷データにキープウェットパターンデータを結合するステップは、第1印刷データにキープウェットパターンデータを論理和するステップを含む。
【0013】
好ましくは、当該方法は、第1印刷データに結合する前にキープウェットパターンデータにオフセットを適用するステップを含む。言い換えれば、プリンタコントローラによって読み出された第1キープウェットパターンデータは、オフセットを適用することによって第1印刷データに結合するための第2キープウェットパターンデータに変換される。
【0014】
好ましくは、印刷ジョブにおける連続するページが同一のキープウェットパターンとともに印刷されないように、異なるオフセットが異なるページに適用される。従って、オフセットは、多くのページにまたがるキープウェットパターンの反復によって引き起こされる目に見えるアーチファクトを最小限に抑える。
【0015】
好ましくは、画像データは、プリントヘッドのためのプリンタドライバによってプログラミングされたコンピュータシステムから受信される。
【0016】
ある実施形態では、プリンタコントローラ(例えば印刷エンジンコントローラチップ)は、プリンタドライバからキープウェットパターンデータを読み出してもよい。言い換えれば、プリンタドライバは、印刷ジョブに関するパラメータを用いてキープウェットパターンデータを生成し、かつ、プリンタコントローラに画像データとともにキープウェットパターンデータを送信する。
【0017】
他の実施形態では、プリンタコントローラは、複数の異なるキープウェットパターンデータを記憶するメモリを備えてもよく、特定の印刷ジョブのための各インク面のためのキープウェットパターンデータがメモリから読み出される。プリンタコントローラは、印刷ジョブに関するパラメータに基づいてどのキープウェットパターンデータを採用するかを決定してもよい。代替的に、プリンタドライバは、どのキープウェットパターンデータを採用するかを決定してもよく、かつ、特定の印刷ジョブのためのそのメモリから適切なキープウェットパターンデータをプリンタコントローラが読み出すことができるようにするためにプリンタコントローラにキープウェットパターン識別子を送信してもよい。
【0018】
好ましくは、各インク面のためのキープウェットパターンデータは、
プリントヘッド内の各インク面の位置、
印刷ジョブの印刷速度、
各インク面から印刷されたインクのタイプ(例えばインク色、インク粘度、着色増量剤等)、
印刷媒体のタイプ、
印刷ジョブの長さ、
周囲湿度、
周囲温度、
画像データ、
各インク面から印刷されたキープウェットパターン同士の間の光学干渉(例えばモアレ干渉)、及び、
最小印刷品質閾値、から選択された1以上のパラメータを用いて決定される。
【0019】
好ましくは、各インク面のためのキープウェットパターンデータは、以下の、
(媒体供給方向に対する)プリントヘッド内の各インク面の位置、及び、
各インク面から印刷されたインクのタイプ、の少なくとも2つのパラメータを用いて決定される。
【0020】
好ましくは、各インク面のためのキープウェットパターンは、1以上のパラメータを重み付けしてキープウェットパターンを決定するアルゴリズムによって決定される。
【0021】
好ましくは、アルゴリズムは、プリンタファームウェア(例えば印刷エンジンコントローラチップ内のファームウェア)内に、又は、プリンタに接続されたコンピュータシステムで実行するプリンタドライバ内に、プログラミングされる。
【0022】
好ましくは、各インク面のためのキープウェットパターンはドットの疑似ランダムパターンを含む。
【0023】
好ましくは、異なるインク面のためにキープウェットパターンを規定する複数のドットはドットオンドットで印刷されない(すなわち、ドットオフドットで印刷される)。異なるインク面のためのそれぞれのキープウェットパターンにおいてドットオンドット印刷を避けることは、印刷媒体上でのドットゲインを最小化し、及び従って、可視性を最小化する。それにも関わらず、異なるインク面からのキープウェットパターンのドットオンドット印刷はある状況で適切であり、本発明はドットオフドット印刷に限定されない。
【0024】
好ましくは、印刷されたキープウェットパターンを規定するドットは、1:1000未満、1:5000未満、又は、1:10000未満の密度を有する。言い換えれば、(すべてのインク面から)印刷されたキープウェットパターンは、印刷媒体上で、0.1%未満の、0.05%未満の、又は、0.01%未満の画線比率を有することが好ましい。
【0025】
別の態様では、インクジェットプリントヘッドのための印刷データを生成するプリンタコントローラが提供され、当該プリンタコントローラは、
プリンタコントローラで印刷ジョブのための画像データを受信し、
プリントヘッドの各インク面のためのキープウェットパターンデータを読み出し、読み出したキープウェットパターンデータは1以上の入力パラメータを用いて決定され、
受信した画像データに基づいてプリンタコントローラ内のプリントヘッドの各インク面のための第1印刷データを生成し、
第1印刷データにキープウェットパターンデータを結合して、プリントヘッドの各インク面のための第2印刷データを提供し、及び、
第2印刷データ、又は、第2印刷データに基づく第3印刷データをプリンタコントローラからプリントヘッドに送信し、それによって、キープウェットパターンとともに画像をプリントヘッドに印刷させるように、構成される。
【0026】
第2態様では、複数のインク面を有する固定インクジェットプリントヘッドから印刷する方法が提供され、当該方法は、
媒体供給方向にプリントヘッドを通過するように印刷媒体を供給するステップであって、媒体供給方向は、プリントヘッドの相対的な上流及び下流を規定する、ステップと、
印刷媒体上に画像を印刷するステップであって、画像は画像データによって規定される、ステップと、
プリントヘッドの各インク面から印刷媒体上にキープウェットパターンを印刷するステップであって、プリントヘッド内の各ノズルの水和を維持するために十分な周波数で印刷された複数のドットによって規定される、ステップと、を含み、
第1インク面からの第1キープウェットパターンは、第2インク面からの第2キープウェットパターンよりも高い周波数で印刷され、第1インク面は、プリントヘッド内で最も上流にある。
【0027】
第2態様に係る方法は、インクジェットプリントヘッド内の下流のインク面に比べて、上流のインク面の局所環境を相対的により脱水することを利用する。このことは、その内容が参照によって本願に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0092403号明細書で説明されるように、高速ウェブプリンタで使用されるモノクロプリントヘッドで特に有用である。しかしながら、第2態様に係る方法は多色プリントヘッドで使用されてもよい。
【0028】
概して、印刷媒体によって媒体供給方向に生成される気流は、プリントヘッド内で最も上流に位置決めされたインク面を吹き付ける傾向にあり、また、それらのノズルに相対的により大きな脱水効果を与える。従って、上流のノズルは、媒体供給方向及び気流に対してさらに下流に位置決めされたそれらのノズルよりも、より頻繁に小滴を排出して水和されたままであることが必要である。当然の結果として、最も上流のインク面に低輝度色(例えば黄)を配置することによってキープウェットパターンの可視性を最小化することができる。相対的に高いキープウェット周波数で黄インクを印刷することは、例えば、同一のキープウェット周波数で黒又は赤紫を印刷する場合よりも視覚の影響ははるかに小さい。
【0029】
好ましくは、各インク面は1以上のノズル行を備え、同一のインク面内の各ノズル行には同一のインクが供給される。通常、各インク面は、印刷のラインにおいて偶数及び奇数のドットを印刷するための1対のノズル行を備える。プリントヘッドの各インク面はすべて、モノクロプリントヘッドの場合に同一色のインクを排出してもよい。代替的に、少なくとも1つのインク面が、多色プリントヘッドの場合に、少なくとも1つの他のインク面と異なる色のインクを排出してもよい。
【0030】
通常、隣接するインク面は、約20〜1000ミクロン、又は、30〜500ミクロン、又は、50〜100ミクロンの距離だけ互いから間隔を空けて配置される。
【0031】
好ましくは、プリントヘッドの各ノズルは、各印刷ジョブ中、0.5Hzより高い周波数(例えば1〜20Hz)で放出する。各ノズルの最小放出周波数は、画像を印刷することによって、及び/又は、画像と同一の広がりを有するキープウェットパターンを印刷することによって、保証される。
【0032】
好ましくは、キープウェットパターンは、裸眼の人間の目には実質的に見えないドットの疑似ランダムパターンを含む。各インク面及び各印刷ジョブに用いられる特定のパターンは、キープウェットパターンの全体の視覚の影響をできる限り最小化するために変更されてもよい。
【0033】
好ましくは、プリントヘッドは、第1及び第2インク面の間に位置決めされた第3インク面を備え、第3インク面は第3キープウェットパターンを印刷する。プリントヘッドはさらに、第1及び第2インク面の間に位置決めされた第4、第5及び/又は第6インク面を備えてもよい。第1及び第2インク面の間に位置決めされたそれらのインク面は概して、「中間」のインク面として参照される、通常、プリントヘッドは、4つ又は5つのインク面を備えるが、1つのプリントヘッドにおけるインク面の数は特定の数に限定されない。
【0034】
好ましくは、第2キープウェットパターンは、第1キープウェットパターンよりも低い周波数で印刷される。
【0035】
好ましくは、第3キープウェットパターンは、第1キープウェットパターンよりも低い周波数で印刷される。
【0036】
好ましくは、第3キープウェットパターンは、第1及び第2キープウェットパターンよりも低い周波数で印刷される。
【0037】
概して、隣接するインク面によって両側で側面を守られるインク面は、隣接するインク面の局所的な水和効果からの利益を受ける。さらに、上流のインク面は、気流から下流のインク面を遮蔽する傾向にある。従って、最も上流のインク面と最も下流のインク面との間に位置決めされたインク面である中間のインク面は、上流のインク面の遮蔽効果及び隣接する1対のインク面の局所的な水和効果の両方から利益を受けるので、最も低い周波数のキープウェットパターンを通常は必要とする。さらに下流のインク面は、遮蔽効果からの利益を受けるが、中間のインク面と同一の局所的な水和効果の利益を受けない。従って、最も下流のインク面は通常、中間のインク面よりも高いキープウェット周波数を必要とするが、さらに上流のインク面よりも低い周波数を必要とする。当然の結果として、高輝度色(例えば黒色)を中間のインク面に配置するとともに低輝度色(例えば黄色)を最も上流のインク面に配置することによって、キープウェットパターンの可視性を最小化することができる。
【0038】
同様に、複数の整列したモノクロプリントヘッドから構成されたプリンタは、最も上流のプリントヘッドとして最も低輝度のインク(例えば黄色)を排出するプリントヘッドから有利に利益を受け、さらに有利には、中間のプリントヘッドとして最も高輝度のインク(例えば黒色)を排出するプリントヘッドからの利益を受ける。
【0039】
従って、第3態様では、媒体供給方向に整列したモノクロの固定インクジェットプリントヘッドのアレイから構成された多色プリンタが適用され、当該プリンタは、
媒体供給方向に対して最も上流に位置決めされた第1プリントヘッドと、
媒体供給方向に対して最も下流に位置決めされた第2プリントヘッドと、
第1及び第2プリントヘッドの間に位置決めされた第3プリントヘッドと、を備え、
各プリントヘッドには多色インクセットからそれぞれのインクが供給され、
第1プリントヘッドには最も低輝度のインクセットのインクが供給され、第3プリントヘッドには最も高輝度のインクセットのインクが供給される。
【0040】
第3態様に係るプリンタでは、隣接するプリントヘッドは概して、ミクロンオーダの間隔を有するインク面とは対照的に、センチメートルオーダの距離だけ互いから間隔を空けて配置される。通常、隣接するプリントヘッドは、2〜50cm、3〜30cm、又は、5〜20cmの距離だけ互いから間隔を空けて配置される。従って、上述した遮蔽効果及び局所水和効果は、隣接するインク面とは対照的に隣接するプリントヘッドに関するプリンタではより小さい。それにも関わらず、このプリントヘッドは、印刷媒体によって生成される気流からより多くの吹き付けを受け、及び従って、アレイの最も脱水環境に位置決めされるので、最も低輝度のインクを排出するプリントヘッドがアレイ内で最も上流に位置決めされるようにプリントヘッドを配列することに大きな利点が依然としてある。
【0041】
好ましくは、第1プリントヘッドには黄色インクが供給される。
【0042】
好ましくは、第3プリントヘッドには黒色インクが供給される。
【0043】
好ましくは、1以上の他のプリントヘッドが第1及び第2プリントヘッドの間に位置決めされる。従って、プリンタは4つ以上のプリントヘッドから構成されてもよい。
【0044】
好ましくは、プリンタは、印刷媒体のウェブを媒体供給方向にプリントヘッドの各々を通過するように供給するための供給機構をさらに備える。好ましくは、供給機構は、0.5メートル毎秒より大きい、1メートル毎秒より大きい、又は、2メートル毎秒よりも大きい速度で印刷媒体のウェブを供給するように構成される。
【0045】
好ましくは、プリンタは、複数のプリントヘッドの各々に印刷データを送信するようにプログラミングされた1以上のプリンタコントローラをさらに備え、印刷データは、印刷媒体上にそれぞれのキープウェットパターンを印刷するようにプリントヘッドを構成し、各キープウェットパターンは、それぞれのプリントヘッドの各ノズルの水和を維持するのに十分な周波数で印刷される複数のドットによって規定される。
【0046】
好ましくは、第1プリントヘッドのすべてのノズルが第1平均周波数で第1キープウェットパターンを印刷するように構成され、第2プリントヘッドのすべてのノズルが第2平均周波数で第2キープウェットパターンを印刷するように構成され、かつ、第3プリントヘッドのすべてのノズルが第3平均周波数で第3キープウェットパターンを印刷するように構成される。
【0047】
好ましくは、第1平均周波数は第2平均周波数よりも高い。
【0048】
好ましくは、第1平均周波数は第3平均周波数よりも高い。
【0049】
好ましくは、第3平均周波数は第1及び第2平均周波数よりも低い。
【0050】
第4態様では、媒体供給方向に整列したモノクロの固定インクジェットプリントヘッドのアレイから構成された多色プリンタが提供され、当該プリンタは、
媒体供給方向に対して最も上流に位置決めされた第1プリントヘッドと、
媒体供給方向に対して最も下流に位置決めされた第2プリントヘッドと、
第1及び第2プリントヘッドの間に位置決めされた第3プリントヘッドと、を備え、
各プリントヘッドに多色インクセットからそれぞれのインクが供給され、
第3プリントヘッドに最も高輝度のインクセットのインクが供給される。
【0051】
本発明の実施形態を、添付の図面を参照して例示によってのみここで説明する。
【発明を実施するための形態】
【0053】
インク面ごとに調整されたキープウェットパターン
図1を参照すると、第1態様に関連して説明する方法を実行するための特定の構造を有する印刷システムが概略的に示されている。
【0054】
コンピュータシステム2は、例えば有線又は無線接続などの適切な通信リンクを介してプリンタ4と通信する。コンピュータシステム2は、印刷される予定の画像を生成する適切なアプリケーション8から圧縮画像ファイルを受信するラスタ画像プロセッサ(RIP)6を備える。圧縮画像ファイルは、例えばPDF、JPEG、TIFF、GIF等の任意の適切な画像ファイル形式であってもよく、又は、例えばPostScript、PDL等の任意の適切なページ記述言語であってもよい。RIP6は、圧縮画像データを処理し、かつ、プリンタドライバ10にビットマップ画像データを送信する。プリンタドライバ10は、プリンタ4の印刷エンジンコントローラチップ(「PEC」)12に、プリントヘッド20の各インク面のためのキープウェットパターンデータ(「キープウェットデータ」)とともにビットマップ画像データを送信する。各インク面のための適切なキープウェットパターンデータの決定は以下にさらに詳細に説明する。
【0055】
代替の構造では、アプリケーション8は、PEC12に圧縮画像データを送信するプリンタドライバ10に圧縮画像ファイルを直接送信してもよい。この代替の構造では、PEC12は、圧縮画像データを解凍してビットマップ画像データを生成する。
【0056】
さらに別の代替の構造では、プリンタドライバ10は、実際のキープウェットパターンデータに代えてPEC12に各インク面のためのパターン識別子を送信してもよい。この代替の構造では、PEC12は、各々がそれぞれのパターン識別子によってインデックスを付けられる複数の異なるキープウェットパターンデータを記憶するプリンタ4のメモリ(例えばPEC12内のメモリ)から、各パターン識別子に対応するキープウェットパターンデータを読み出す。
【0057】
さらに別の代替の構造では、プリンタドライバ10はPEC12に画像データのみを送信する。この代替の構造では、(プリンタドライバ10ではなく)PEC12が、各インク面のための適切なキープウェットパターンデータを決定し、かつ、メモリからこれらのデータを読み出す。
【0058】
以上の説明から、本発明を実施するために様々な代替の構造が当業者には容易に分かることが理解されよう。
図1に示す特定の構造は、限定的なものではなく、例示の目的のみにために示されている。
【0059】
ここで
図2を参照すると、PEC12はプリントヘッド20の各インク面のための印刷データを生成する。この場合、プリントヘッド20は5つのインク面を有しているが、プリントヘッドは任意の数のインク面を有してもよいことが理解されよう。プリンタドライバ10から受信された5つのインク面の各々のためのキープウェットデータは、PEC12の第1書き込み可能メモリ22(例えばRAM)内にロードされる一方で、画像データは、PECの同一の又は異なるメモリユニットであってもよい第2書き込み可能メモリ24内にロードされる。画像データは、異なるインク面に分割されてPEC内で処理され、各インク面のための第1印刷データを生成する。各インク面のための第1印刷データは、(第1書き込み可能メモリ22から対応のキープウェットデータを読み出すことによって)そのインク面のための対応のキープウェットデータに結合(論理和「OR」)され、第2印刷データを生成する。最終的に、印刷データは、各インク面のためのプリントヘッド20に送信される。結合ステップから生じた第2印刷データは、通常、PEC12内でさらに処理され、プリントヘッド20への送信前に第3印刷データを生成する。言うまでもなく、
図2がPEC処理に関する簡略化されたスキームを表していること、及び、明確化のため、印刷データを生成するためのいくつかの処理ステップが省略されたことが理解されよう。
【0060】
キープウェットパターンデータは、印刷画像に重畳されるドットの疑似ランダムパターンを表している。キープウェットパターンは、プリントヘッド20の各ノズルが、ノズルのデキャップ時間よりも通常は短い既定の時間内で放出されることを確実にする。キープウェットパターンは従って、たとえ印刷画像がそのノズルの放出を求めない場合であって保守介入がなかった場合であっても、プリントヘッドの各ノズルが、印刷ジョブ中に適切に水和されたままであることを確実にする。
【0061】
各インク面のキープウェットパターンにおけるドットの疑似ランダムパターンは、印刷媒体を横方向及び下方の両方に繰り返される単位セル(例えば矩形タイル)に基づいてもよい。例えば、
図3を参照すると、特定のインクチャネルのためのキープウェットパターンの各単位セルは、ページ27上でタイル表示されるm×nの矩形セル26から構成されてもよい。行n(セルの高さを表す)の数は、印刷の200〜100000ラインの範囲であってもよく、及び、列m(セルの幅を表す)の数は、100〜5000ノズルの範囲であってもよい。
図3では、印刷のラインは、ライン28として概略的に表されている一方で、ノズルは、矢印29として概略的に表されている(明確化のために2つのみを示す)。
【0062】
単位セル26は、任意の適切な形状(例えば六角形、三角形等)又は寸法を有してもよいことが理解されよう。しかしながら、相対的により大きなセル26は、キープウェットパターンにおいてより大きな程度の疑似ランダム性とより小さな全体可視性とを提供する。
【0063】
キープウェットパターンをさらにランダム化するため、同一のキープウェットパターンが各印刷ページを連続的に横断してタイル表示されないように、続きのページ上のキープウェットパターンに様々なオフセットが適用されてもよい。オフセットは、例えば全ページの縁の同一の位置にドットが現れる、ページ順に並べられた書類において目に見える反復アーチファクトを除去することを助ける。オフセットは通常、キープウェットパターンデータを第1印刷データに結合する前にPEC12によって適用される。オフセットは、p<nかつq<mの場合に、全印刷ページについてp行及び/又はq列だけキープウェットパターンを先送りする単純な命令であってもよい。通常、p及びqは各々、1〜50の独立した整数である。
【0064】
自明であるが、キープウェットパターンの印刷の欠点は印刷品質の損失であり、及び従って、キープウェットパターンの可視性をできる限り最小化することを確実にすることが重要である。
【0065】
本発明の第1態様は、プリントヘッドの各インク面のためのキープウェットパターンを特定の印刷ジョブに合わせて調整することを可能にする。通常、プリンタドライバ10は、1以上の入力パラメータに基づいて各インク面に適切なキープウェットパターンを決定し、及び、PEC12に適切なキープウェットパターンデータを送信する。プリンタドライバ10は通常、様々な入力パラメータを適切に重み付けすることによってインク面のためのキープウェットパターンの最も適切な組み合わせを決定するためのアルゴリズムを有している。上述したように、代替のシステム構造では、キープウェットパターンデータの決定はプリンタ4のPEC12によってすべてが実行されてもよい。
【0066】
各インク面のためのキープウェットパターンを決定するために用いられ得るパラメータのいくつかを以下に詳細に説明する。
【0067】
(1)プリントヘッドにおけるインク面の位置
プリントヘッドにおけるインク面の位置は、その大部分が、インク面の局所的な脱水環境を決定し、及び従って、要求されるキープウェット排出の周波数を決定する。通常、プリントヘッドのさらに上流のインク面は、プリントヘッドが受けた気流の結果として最も脱水環境にあり、及び従って、下流のインク面よりもさらに頻繁にキープウェットパターンを必要とする。このことを以下にさらに詳細に説明する。
【0068】
(2)印刷速度
印刷速度は、プリントヘッドが受けた気流の速度に直接的に関連する。印刷速度が速くなるにつれて、移動する印刷媒体によって生成される気流の速度が速くなり、このことはノズルにより大きな脱水効果を引き起こす。
【0069】
(3)インクのタイプ
インクの色は、適切なキープウェットパターンを決定する際の重要な要因である。例えば、キープウェットパターンは、例えば黒色などの高輝度インクによって最も可視性が高く、例えば黄色などの低輝度インクによって最も可視性が低い。従って、より高周波数のキープウェットパターンは通常、黒色インク面よりも黄色インク面でより良好である。実際、黄色のキープウェットパターンは、相対的に高いキープウェット周波数であっても実質的に目に見えない。
【0070】
さらに、いくつかのインクは、他のインクとは異なる脱水特性を本質的に有しており、これは、特定のインク面のために適切なキープウェットパターンを決定するための基本的な基準である。例えば、相対的に高い着色増量剤を有するインクは、相対的に低い着色増量剤を有するインクに比べて脱水効果を受けやすい。当然のことながら、すべてのインク面が同一のインクを排出するモノクロプリントヘッドでは、インクの本質的な脱水特性はプリントヘッドの各インク面において同一である。
【0071】
(4)印刷媒体のタイプ
キープウェットパターンの可視性は通常、普通の印刷媒体に印刷される時により低く、光沢のある印刷媒体に印刷される時により高い。
【0072】
(5)印刷ジョブの長さ
脱水効果は、平衡点に到達するのではなく、徐々に増大していく傾向にある。従って、印刷ジョブの長さは、適切なキープウェットパターンを決定するために重要なパラメータである。一般に、たくさんの印刷部数に関しては、変動する印刷品質を有することは望ましくなく、従って、キープウェットパターンは、印刷部数の終わりに通常はある最も大きな予測される脱水環境に基づいて決定されるべきである。
【0073】
(6)周囲湿度
プリンタ上の適切な湿度センサを用いて、かつ、プリンタドライバに周囲湿度データをフィードバックすることによって、周囲湿度が測定されてもよい。プリンタが、相対的に湿度の高い環境に位置する場合、相対的に乾燥した環境に比べて、より周波数の低いキープウェットパターンが必要とされる。
【0074】
(7)周囲温度
プリンタ上の温度センサを用いて、かつ、プリンタドライバに周囲温度データをフィードバックすることによって、周囲温度が測定されてもよい。プリンタが相対的に涼しい環境に位置する場合、相対的に温かい環境に比べて、より周波数の低いキープウェットパターンが必要とされる。
【0075】
(8)画像コンテンツ
理想的には、キープウェットドットは、できる限り、それらが印刷品質に与える影響を最小限にするように、画像に一致すべきである。同様に、高輝度(黒)キープウェットドットを画像中の低輝度の領域上に印刷することはできる限り避けるべきである。従って、各インク面のための最も適切なキープウェットパターンの決定は画像データを考慮に入れてもよい。例えば、規則的に繰り返される色のブロックを画像が包含する場合、それらの繰り返される色のブロックに一致するキープウェットパターンが最も適切であり得る。
【0076】
(9)光学干渉
プリントヘッドのインク面のいくつか又はすべてが通常、異なるキープウェットパターンを排出する。組み合わせられたキープウェットパターンの可視性は、様々なキープウェットパターン同士の間に光学干渉効果(例えばモアレ干渉効果)がある場合に意図せず増大することがある。従って、プリントヘッドのインク面のための選択されたキープウェットパターンは、印刷媒体上に一緒に印刷される時に光学干渉効果を最小限に抑える意味で、好ましくは直交すべきである。通常、キープウェットパターンは、異なるキープウェットパターンからのいかなるドットオンドット印刷も最小限に抑えるために選択される。
【0077】
(10)最小印刷品質閾値
各印刷ジョブは、エンドユーザによって設定される最小印刷品質閾値を有してもよい。印刷品質の最大化は最重要であるが、あるエンドユーザは、他者とは異なる印刷品質基準を有している場合がある。このことは、今度は、使用可能なキープウェットパターンに影響を与える。ある状況では、キープウェットパターンが、許容可能な印刷品質限界内に組み込まれ得るように、他の印刷パラメータ(例えば印刷速度又は印刷ジョブの長さ)を変更する必要があり得る。
【0078】
前述から、プリントヘッド4の各インク面のためのキープウェットパターンが、最小の可視性を有するすべての印刷されたキープウェットパターンを提供するように調整されてもよい。
【0079】
上流側のインク面において最も高いキープウェット周波数
本開示に関連して採用されたプリントヘッドは通常、複数のインク面を備える。各インク面は1以上のノズル行を備え、1つのインク面の各ノズルに同一のインクが供給される。例えば、Memjet(登録商標)プリントヘッドは、同一のインクが供給される、インク面ごとに1対のノズル行を備えており、一方のノズル行が「偶数」ドットを印刷し、他方のノズル行が「奇数」ドットを印刷して、1つのインク面のための印刷のラインを形成する。
【0080】
複数のインク面に、同一のインクが供給されても、すべて異なるインクが供給されても、又は、少なくとも1つの同一のインク及び少なくとも1つの異なるインクが提供されてもよい。例えば、5つのインク面を有するプリントヘッドでは、5つのインク面のすべてに同一のインクが供給されて、モノクロプリントヘッド(例えばCCCCC、MMMMM、YYYYY、KKKKK等)を提供してもよい。代替的に、いくつかのインク面のみに同一のインク(例えばCMYKK、CCMMY等)が供給されてもよい。代替的に、各インク面に、異なるインク(例えば、IRが赤外インクであり、Sが例えばカーキ、橙色、緑色、メタリックインク等のスポットカラーである場合に、CMYK(IR)又はCMYKS)が供給されてもよい。
【0081】
固定の又は動かないインクジェットプリントヘッドによれば、プリントヘッドの各インク面は、媒体供給方向に対して相対的に上流又は下流に位置決めされる。本発明者らは、固定されたインクジェットヘッドプリントヘッドにおける各インク面の相対的な位置決めが、印刷中のプリントヘッドにおける他のインク面に対するそのインク面の局所的な湿度に著しい影響を有することを発見した。概して、媒体供給方向に対して最も上流に位置決めされたインク面は、プリントヘッドにおける他のインク面よりも相対的により脱水環境(すなわち、湿度が低い)にあることが観察された。
【0082】
図4を参照すると、5つのインク面(32、34、36、38及び40)を備えるインクジェットプリントヘッド20の側面が概略的に示されており、各々のインク面は、1対のノズル行(32A及び32B、34A及び34B、36A及び36B、38A及び38B、並びに、40A及び40B)を備えている。インク面は、50〜100ミクロンの距離だけ各々から隔てられている。
【0083】
印刷媒体45は、媒体供給機構47によって媒体供給方向(
図4において右から左)に供給され、媒体供給機構47は、その間に規定されたニップにおいて印刷媒体を把持する1対の対向ローラの形態をとってもよい。媒体供給方向は従って、プリントヘッド20の上流側及び下流側を規定する。
【0084】
媒体供給方向における印刷媒体45の動きは、
図4に示すように、対応の方向に気流を生成する。この気流の速度は、印刷媒体の速度に依存し、かつ、ある程度は、印刷媒体のタイプに依存する。例えば、連続的なウェブは、印刷媒体の別個のシート上への印刷よりも速い気流を生成する傾向にある。
【0085】
この気流の結果、プリントヘッド20のさらに上流のインク面32が、他のインク面34、36、38及び40に比べて相対的に最も脱水環境に位置決めされる。インク面32が気流に最も曝される一方で、下流のインク面34、36、38及び40は、ノズル行32A及び32Bから排出されるインク小滴の流れによってこの脱水気流からある程度の遮蔽を享受する。
【0086】
プリントヘッドの各ノズルが印刷ジョブ中に十分に水和されることを維持するために、プリントヘッド20は、最小限に必要とされる周波数のキープウェット小滴を排出することが望ましい。要求を超えるキープウェット小滴は、インクの無駄遣いになるばかりでなく、最も重要なことに、印刷品質を不必要に低下させる。
【0087】
前述から、インク面32に必要な最小のキープウェット周波数が、他のインク面34、36、38及び40に必要な最小のキープウェット周波数よりも高いことは明らかである。この観察は、各インク面のために最小限必要なキープウェット周波数のみを確保することによってキープウェットパターンの全体の可視性を最小化するために、モノクロ及び多色のプリントヘッドの両方で用いられ得る。
【0088】
さらに、多色プリントヘッドでは、最も上流のインク面32に例えば黄色などの低輝度色を供給することが、このインク面から排出された相対的に高い周波数のキープウェットパターンの可視性を有利に最小化する。通常のCMYKインクセットでは、黄色は、他の色に比べて圧倒的に最も低い輝度を有している(白色紙上でのCMYKインクの名目上の輝度は以下のとおりである:C(30%)、M(59%)、Y(11%)及びK(100%))。従って、最も上流のインク面32に黄色インクを供給することによって、すべての色面によって排出された全キープウェットパターンの認知された可視性を顕著に低下させることができる。
【0089】
上述したように、最も上流のインク面32は、気流の遮蔽の利益を受けられないので、プリントヘッド20の局所的に最も脱水環境に位置決めされる。上流のインク面の遮蔽効果とは別に、特定のインク面の局所的な湿度を決定する補助的な要因は、隣接するインク面の数である。例えば、
図4では、インク面34、36及び38は各々、1対の隣接するインク面を有している一方で、インク面32及び40は1つの隣接するインク面しか有していない。隣接するインク面は、その間に挟み込まれたインク面の局所的な湿度を増大させる傾向にある。従って、プリントヘッド20において最も下流に位置決めされたインク面40は、インク面34、36及び38よりも相対的により脱水環境に位置決めされるが、インク面32よりも相対的に低い脱水環境に位置決めされる。その結果、プリントヘッド20に関するインク面の相対的な最小キープウェット周波数は、インク面32>インク面40>インク面34、36及び40の順であり得る。
【0090】
インク面34、36及び40は、最も低い脱水局所環境に位置決めされるので、キープウェットパターンの可視性を最小化するためにこれらの中間のインク面に対して最も高輝度のインク(通常は黒色)を供給することが好都合である。
【0091】
前述の観点から、CMYKインクが供給される5つのインク面を有するMemjet(登録商標)プリントヘッドでは、好都合な配管配置は、黄色(Y)が最も上流で黒色が中間インク面を占める状態で、Y−K−M−K−C又はY−K−C−K−Mであり得る。
【0092】
複数の整列したモノクロプリントヘッド
1つのプリントヘッド20のインク面に関連して上述した原理は、媒体供給方向に整列した複数のモノクロプリントヘッドから構成されたプリンタで適用されてもよい。
【0093】
図5は、媒体供給方向に互いに整列した5つの固定されたインクジェットプリントヘッド52、54、56、58及び60から構成された高速ウェブプリンタ50を概略的に示す平面図である。プリントヘッドは、3〜20cmの距離だけ各々から間隔を空けて配置されている。各プリントヘッドは、複数のインク面から単色のインクを排出するモノクロプリントヘッドである。例えば、5つのモノクロプリントヘッド52、54、56、58及び60は、CMYKインク(例えばCMYKK)又はCMYKSインクを排出してもよい。
【0094】
印刷媒体のウェブ62は、適切な媒体供給機構を用いて、図示される媒体供給方向にプリントヘッドの各々を通過するように供給される。米国特許出願公開第2012/0092403号明細書(参照によって本願に組み込まれる)でより詳細に説明されるこのタイプのプリンタは、例えば0.2メートル毎秒よりも速い速度、0.5メートル毎秒よりも速い速度、又は、1メートル毎秒よりも速い速度などの非常に高速で印刷することができる。
【0095】
図4に関連して上述した原理を拡張することによって、媒体供給方向に対して最も上流に位置決めされたプリントヘッド52は、他のプリントヘッド54、56、58及び60に比べて相対的に最も脱水環境にある。従って、プリントヘッド52は、他のプリントヘッドよりも高い平均キープウェット周波数を概して必要とする(各プリントヘッドの個々のインク面が異なるキープウェット周波数を有してもよいが、プリントヘッド52におけるすべてのインク面にまたがる平均最小キープウェット周波数は、他のプリントヘッド54、56、58及び60に関する平均最小キープウェット周波数よりも高いことに留意されたい)。さらに、プリントヘッド52から排出されたキープウェットパターンが最小の可視性を有するように、すなわち、黄色インクのより低い輝度が、プリントヘッド52で要求されるより高い平均キープウェット周波数を有効に補償するように、プリントヘッド52に最小輝度インク(通常は黄色)が供給されることが好都合である。
【0096】
同様に、中間のプリントヘッド54、56及び58の1以上に最大輝度インクを供給することが好都合である。これらのプリントヘッドは、2つの隣接するプリントヘッドの湿らせ効果とともに、プリントヘッド52の上流の遮蔽効果からの少なくともある程度の利益を受ける。
【0097】
プリントヘッド20内のインク面のミクロンスケールの分離とは対照的に、プリンタ50において間隔を空けて配置されたプリントヘッドはセンチメートルオーダであるので、プリンタ50における局所的な湿らせ効果は、
図4に関連して上述したものよりも小さいものである。それにも関わらず、プリンタ50において最も上流に黄プリントヘッド52を位置決めすることに実証可能な利点があり、かつ、これは、キープウェット周波数の最小化を通じて印刷品質を向上させる際に直接の効果を有している。キープウェットパターンは、ページ間のスピッティングの機会がなく、かつ、デスクトップ給紙プリンタに比べて保守介入のための機会が少ないインクジェットウェブプリンタにおいて十分な水和を維持するために事実上不可避である。従って、本発明は、例えば
図5で示すようなプリンタ50などのインクジェットウェブプリンタに関連して採用される時に最も好都合である。
【0098】
当然のことながら、本発明を例としてのみ説明したが、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲内において細部の変更がなされてもよいことが理解されよう。