特許第6386564号(P6386564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386564
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】人工心臓弁膜の弁葉の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
   A61F2/24
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-544096(P2016-544096)
(86)(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公表番号】特表2017-500976(P2017-500976A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】CN2014073977
(87)【国際公開番号】WO2015100858
(87)【国際公開日】20150709
【審査請求日】2016年7月26日
(31)【優先権主張番号】201310752640.3
(32)【優先日】2013年12月31日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516178077
【氏名又は名称】金仕生物科技(常熟)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100183232
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 敏行
(72)【発明者】
【氏名】鐘 生平
(72)【発明者】
【氏名】金 昌
(72)【発明者】
【氏名】劉 静
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第02/053069(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0238167(US,A1)
【文献】 特表2007−530242(JP,A)
【文献】 特表2013−525039(JP,A)
【文献】 特表2002−536110(JP,A)
【文献】 特表2010−527249(JP,A)
【文献】 特開2011−005043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
A61L 27/36
A61L 27/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工心臓弁膜の弁葉の製造方法であって、動物組織膜を冷凍するステップと、冷凍状態での前記動物組織膜が所定の厚さとなるように加工されるステップとを備え
冷凍状態での前記動物組織膜が所定の厚さとなるように加工される前記ステップとは、前記動物組織膜の全体の厚さを所定の厚さに小さくする、又は必要に応じて前記動物組織膜の異なる部位を異なる厚さに加工することであることを特徴とする人工心臓弁膜の弁葉の製造方法。
【請求項2】
液体窒素を用いて前記動物組織膜を冷凍することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記動物組織膜を液体窒素に浸漬して前記加工を行うことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記加工は研削、切削、削り取り、フライス及び研磨のうちの1種又は複数種であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記動物組織膜が冷凍される前に、又は前記冷凍状態での動物組織膜が所定の厚さになるように加工された後に、前記動物組織膜を人工心臓弁膜の弁葉に必要な形状に製造するステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記動物組織膜は、人工心臓弁膜の弁葉の厚さの分布に対応する金型に配置され、そして前記動物組織膜は冷凍されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記動物組織膜が冷凍される前に、冷凍保護剤を用いて前記動物組織膜に対して前処理を行うステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記加工とは、前記動物組織膜の全体の厚さを前記所定の厚さに小さくするように、前記動物組織膜を、凹型金型の溝の深さが前記所定の厚さである凹型金型に配置して加工することであることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記動物組織膜は、哺乳動物の心包、隔膜又は硬脳膜であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記加工は前記動物組織膜の粗面に対して行うことを特徴とする請求項1又はに記載の方法。
【請求項11】
前記動物組織膜は架橋結合処理した動物組織膜であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人工心臓弁膜の弁葉の製造方法に関し、医療器具技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
心臓弁膜の疾病は、現在では心臓病の主な種類の一つであり、心臓の重大な機能障害を引き起こす可能性があり、また、最終的に人工心臓弁膜を用いて自体の心臓弁膜を置き換える必要がある。生物弁膜は現在ではよく用いられる一種類の人工心臓弁膜である。生物弁膜の弁尖は通常、動物組織膜が用いられることで製造されており、例えば、豚の動脈弁膜又は牛の心包は、架橋結合と石灰化防止処理を行った後、人工心臓弁膜の弁フレームに縫製されることが挙げられる。
【0003】
弁膜の機能を満たすために、それぞれの弁膜の弁尖が特定の指標を満たす必要があり、例えば、ある場合には、同一の弁膜の異なる弁尖の厚さを一致させることが必要である。外科で植え込んだ生物弁膜について、弁膜の寸法の違いに基づき、弁尖の厚さに通常0.3〜0.6mmであることが要求されている。しかし、現在では屠殺場から採取した牛の心包の厚さは通常0.1〜0.8mmであり、また、それぞれの牛の心包における各点の厚さも一致していない。そのため、各心包から、通常1〜2枚の合格の弁尖しか製作されることができず、歩留まりが低い。皮を経由して介入された生物弁膜は、血管を経由する搬送性を向上させるために、介入弁膜のプリ装着の直径を小さくする必要があることから、使用する動物組織膜がより薄いことが要求されており、通常、0.25mmより小さいことが必要であるため、皮を経由し介入された生物弁膜に用いる可能である動物組織膜が少なく、歩留まりがさらに減少している。
【0004】
他の場合には、特定の機能を満たすために、人工心臓弁膜の弁尖における各点にて異なる厚さを有することが必要であるが、上述した処理方法はその要求を満足することが難しいである。
【0005】
そのため、弁膜の弁葉の厚さに対する要求を満たすように、動物組織膜に対して加工を行うことが必要である。特許US7141064には、架橋結合の期間に加圧する方法を用いて、厚さが均一である又は厚さが薄い動物組織膜を得ることで、歩留まりを向上させることができる。しかし、この方法は動物組織膜(例えば、牛の心包)における波紋状の繊維を容易に直線状に変え、その弾力性を低下させ、さらに心臓が拡張収縮するときに、弁尖の屈曲伸ばし効果に影響を与える上に、各点の厚さが一致しない弁尖の獲得が難しい。特許US2013110097、US20130116676及びUS20130310929において、レーザを用いる除去、削り取り、研磨などの方法で架橋結合又は半架橋結合状態の組織を処理して、その厚さを均一に又は小さくし、且つ、各点の厚さが異なる弁尖構造を得ることができる。しかし、人工心臓弁膜に用いられる動物組織膜が軟体組織であることが多いため、上記方法により加工するときに、変形又は皺が生じやすく、容易に操作できなくて、且つ加工後、組織に残留した砕屑を除去し難いである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明によれば、人工心臓弁膜の弁葉の製造方法が提供されている。該方法は、動物組織膜を冷凍して加工を行うことにより、所要な厚さの人工心臓弁膜の弁葉を便利に得ることができるため、動物組織膜弁尖の歩留まりを向上させ、且つ、動物組織膜の原始の弾性繊維層を保持することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、人工心臓弁膜の弁葉の製造する方法が提供されている。該方法は、動物組織膜を冷凍するステップと、冷凍状態での動物組織膜が所定の厚さとなるように加工されるステップとを備える。当業者が理解できるのは、前記動物組織膜は、広げた又は平らに広げた状態で冷凍されると、上記加工にさらに有利である。
さらに、液体窒素を用いて前記動物組織膜を冷凍する。
さらに、前記動物組織膜を液体窒素に浸漬して前記加工を行う。
さらに、前記加工は研削、切削、削り取り、フライス及び研磨のうちの1種又は複数種である。
さらに、前記動物組織膜を冷凍する前に、又は前記冷凍状態での動物組織膜が所定の厚さになるように加工された後に、前記動物組織膜を人工心臓弁膜の弁葉に必要な形状に製造するステップをさらに備える。
さらに、前記動物組織膜は、人工心臓弁膜の弁葉の厚さの分布に対応する金型に配置され、そして前記動物組織膜は冷凍される
さらに、前記動物組織膜が冷凍される前に、冷凍保護剤を用いて前記動物組織膜に対して前処理を行うステップをさらに備える。
さらに、冷凍状態での前記動物組織膜が所定の厚さとなるように加工される前記ステップとは、前記動物組織膜の全体の厚さを所定の厚さに小さくする、又は必要に応じて前記動物組織膜の異なる部位を異なる厚さに加工することである。
さらに、前記加工とは、前記動物組織膜の全体の厚さを前記所定の厚さに小さくするように、前記動物組織膜を、深さが前記所定の厚さである凹型金型に配置して加工することである。
さらに、前記動物組織膜は、哺乳動物の心包、隔膜又は硬脳膜である。
さらに、前記加工は、前記動物組織膜の粗面に対して行う。
さらに、前記動物組織膜は架橋結合処理した動物組織膜である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の技術方案の実施は、少なくとも下記のメリットを有する。
1.本発明により提供される方法は、所要な厚さの人工心臓弁膜の弁葉を得ると共に、動物組織膜を容易に固定して加工し、しかも動物組織膜の損傷を減少させることができ、人工心臓弁膜の弁葉の厚さの精度を向上させる。
2.本発明により提供される方法は、人工心臓弁膜の弁葉の歩留まりを向上させることができ、さらに、原材料の使用コストを低下させる。
3.本発明により提供される方法は動物組織膜(例えば、哺乳動物の心包)における波紋状の繊維層の弾性機能を保持することができるとともに、心臓が拡張収縮するときに人工心臓弁膜の弁葉の屈曲伸ばし効果を確保しました。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】人工心臓弁膜に介入する構造を示す模式図である。
図2】本発明における一つの実施例で製造され、図1における人工心臓弁膜の介入に使用可能な弁尖を示す図である。
図3A】本発明におけるもう一つの実施例で製造された弁尖を示す図である。
図3B】本発明におけるもう一つの実施例で製造された弁尖を示す図である。
図4】本発明が提出している人工心臓弁膜の弁葉の製造方法のステップを示す図である。
図5】本発明における一つの実施例に係る人工心臓弁膜の弁葉の製造方法を示す模式図である。
図6】本発明におけるもう一つの実施例に係る人工心臓弁膜の弁葉の製造方法示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明における実施例の図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。しかし、本発明は多くの異なる形態で実施されることができ、本明細書に記載された実施例に限定されると理解すべきではない。
【0011】
本発明が人工心臓弁膜の弁葉の製造方法を提供し、冷凍動物組織膜を冷凍してから加工することにより、必要な厚さの人工心臓弁膜の弁葉を便利に得ることができ、動物組織膜弁尖の歩留まりを向上させ、且つ、動物組織膜の原始の弾性を保持することができる。
【0012】
<冷凍前の前処理>
使用する動物組織膜には一定の水が含まれているため、通常、該動物組織膜に対して冷凍前の前処理を行い、動物組織膜の構造の完全性の保護にさらに有利であるようにする必要があり。冷凍前の前処理は、直接的に動物組織全体に対して行ってもよい、弁尖形状に裁断された動物組織に対して行ってもよい。冷凍前の前処理とは、該動物組織膜を冷凍保護剤に浸漬して処理することを意味する。上記冷凍保護剤はグリセリン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール又はプロピレングリコールなどの物質であってもよい。
【0013】
<冷凍>
冷凍前の前処理を行った後、動物組織膜が加工時に変形せず加工可能になるまで、該動物組織膜を冷凍装置(例えば、液体窒素タンクなどの容器)に配置して冷凍する。上記加工にさらに有利であるようにするため、上記動物組織膜は、広げた又は平らに広げた状態で冷凍される。冷凍前に動物組織膜を弁尖の厚さ分布と対応する金型に平らに広げて配置してもよい。例えば、中心が突起し、四方が突起部に対して窪んだ金型を用いることにより、動物組織膜が冷凍中に金型と貼り合わせるようにすることができ、後続加工のときに、直接的に動物組織膜における、金型と貼り合わせていない一つの面を平面に加工するとともに、上記動物組織膜における、金型の中央突起部位に貼り合わせる部位の厚さを小さくし、四方の、金型の凹み部位と貼り合わせる部位の厚さを大きくし、これにより、対応的な厚さ分布を有する弁尖を製造することができる。
【0014】
本発明において、市販の液体窒素が用いられることが可能であり、温度が一般的に−196℃前後であり、急速に冷凍することができる。
【0015】
<加工>
動物組織膜を冷凍した後、冷凍状態で動物組織膜の一つの表面を加工する。まず動物組織膜において、弁尖に製造される領域を確定してよい、弁尖における各部位の、実際に必要である厚さ(即ち、所定の厚さ)が一致するときに、上記加工とは、該領域における動物組織膜が厚い部位の厚さを減少させ、動物組織膜の該領域における厚さを均一にするものである又は、所定の厚さが小さい弁尖の場合、さらに加工して、所定の厚さを満たすように、動物組織膜全体の厚さをさらに減少させることもできる。弁尖における各部位の所定の厚さが一致しないときに、直接的に各部位にて要求されている所定の厚さに応じて、直接に加工を行うことができる。又は、動物組織膜全体の厚さを、弁尖における各部位にて要求されている所定の厚さよりもやや大きくなるまで加工してから、動物組織膜において、弁尖に製造される領域を確定し、必要に応じて該領域内における動物組織膜に対して厚さの加工を行う。
【0016】
該動物組織膜の加工が完了した後、冷凍状態で機械的な切断などの方式により、弁尖に必要な形状に加工してもよい、解凍の後に機械又はレーザなどの方式により弁尖に必要な形状に加工してもよい。
【0017】
又は、冷凍の前に、通常の方式で該動物組織膜を弁尖の上記形状に製造してから冷凍し、その後、冷凍状態において必要に応じて加工して、該領域における、動物組織膜が厚い部位の厚さを減少させ、その厚さを均一にする。又は、幾つかの所定の厚さが小さい弁尖の場合、さらに加工を行い、動物組織膜全体の厚さをより小さい所定の厚さに満たすようにさらに減少させることができる。また、各部位にて要求されている所定の厚さに応じて直接的に加工してもよい。
【0018】
ここで、冷凍状態での上記加工は研削、切削、削り取り、フライス及び研磨などの、一部又は全部の組織の厚さを減少させる他の任意の方法から選択してもよい、上記方法を組み合わせて使用してもよい。例えば、動物組織膜を治具に固定し、治具とともに液体窒素に入れて冷凍し、その後、治具が付いている冷凍後の動物組織膜を加工する。当然ながら、まず冷凍してから固定し、その後加工を行うこともできる。上記加工は、研削(例えば、グラインダー)、フライス(例えば、フライス盤)又は切削(例えば、平削り盤)の装置に固定して加工を行うことが可能である、又は手動の研削ツール、研磨ツール、又はスクレーパーなどで加工することも可能である。
【0019】
本発明において、使用する動物組織膜は人工心臓弁膜の弁葉に使用可能な任意の動物組織膜であってもよく、例えば、哺乳動物である牛、馬の心包(或いは、心包片と称する)などが挙げられる。上記動物組織膜は通常に一つの粗い表面と一つの相対的に平滑な表面を有し、その粗い表面は、通常に、生物体内の他の組織と繋がっている表面であるが、平滑な表面に類似する部分は、通常に、該動物組織膜内部に被覆された組織であり、通常に、コラーゲンなどからなる波紋状の弾性繊維層である。具体的な実施形態において、動物組織膜の粗面を選択的に加工を行うことができ、このように加工した後、弾性繊維層を保持することに有利であり、粗面が平滑且つ平坦になる。
【0020】
場合によって、弁尖における異なる部位に異なる厚さを持たせることができる。これにより、弁尖の固定具との接続固定に有利であり、弁尖の耐久性を向上させ、又は弁尖を崩れないように支持するなどが挙げられる。本発明において、上記の要求に応じて、動物組織膜を加工することができる。例えば、弁尖における、弁フレームとの縫合接続が必要な部位としては、大きい厚さを保持しても良い。又は、人体生理弁膜の厚さ構造と力学特徴を模倣して、動物組織膜は、人体生理弁膜と同じ又は類似する厚さの分布を有する厚さ構造に加工されることができる。
【0021】
本発明において、上記のように冷凍状態において加工する場合、加工が必要である組織又は弁尖は、直接的に液体窒素に浸漬されることができるとともに、治具により固定されることもできる。又は、冷凍した組織又は弁尖は、液体窒素を用いて冷却する装置又は液体窒素を用いて冷却する装置の表面に配置されることにより、その冷凍状態の維持に有利であると共に、加工操作にも便利である。
【0022】
本発明において、必要な所定の厚さは一致する厚さである場合に、加工する際に動物組織膜を凹型金型内に配置してもよい、上記凹型金型は所要な厚さと形状の溝を有し、溝の深さは所要な所定の厚さと一致し、作業表面が凹型金型の幅よりもやや大きい加工ツール(例えば、手動スクレーパー又は研磨ツール)を用いて加工を行い、凹型金型の表面を用いて位置制限して、このように、加工ツールが凹型金型の外表面に沿って動作させ、厚さが一致する動物組織膜を得ることができる。凹型金型を用いて加工すると、より容易に操作することができるとともに、厚さがより均一な動物組織膜を得ることに有利である。
【0023】
以下、図面に合わせて、本発明における具体的な実施形態について説明する。
<実施例1>
本実施例によれば、人工心臓弁膜の弁葉の製造方法が提供される。図1は人工介入弁膜の構造を示す模式図である。該弁膜は円柱形状のフレーム100と、三つの弁尖を有する弁尖構造200と、縫合裾300を備える。弁尖構造200は円柱形フレーム100の内部に設置されており、ここで、各弁尖は図2に示された形状を有し、縫合糸により円柱形フレーム100に固定される。縫合裾300は周方向に沿って、円柱形フレーム100と弁尖構造200との間に設置されている。
【0024】
ここで、弁尖20の製造フローは図4に示すように、弁尖として用いられる採取した牛の心包片1(その厚さが0.3〜0.8mmである)に対して、冷凍前の前処理を行い、そしてバスケット2内に入れて、上記の心包片1は、架橋結合された心包片であり、心包片の組織の安定性の向上に有利にしてもよい。そして、バスケット2を液体窒素タンク3内に入れて冷凍する。冷凍した心包片1を液体窒素タンク3とバスケット2から取り出し、液体窒素冷却装置の表面31に固定し、該表面は加工時厚さを測定する基準平面とするため、それが平坦であり、固定時に心包片1の平滑面を下向きにする必要がある。
【0025】
図5に示すように、固定した心包片1の粗い表面を研削の方式で研磨し、心包片1の厚さを均一にするように、その厚さを0.25mmまで研磨する。そして、研磨した心包片1を取り外して洗浄を行い、これにより、研磨後の砕屑と残渣を除去する。そして、解凍して弁尖の寸法に応じて、適切な領域を選び、必要な弁尖形状に加工し、最終的に弁尖20を得る。
【0026】
<実施例2>
本実施例によれば、人工心臓弁膜の弁葉の製造方法が提供され、実施例1に記載された介入弁膜に用いることができ、動物心包片膜を弁尖として用いる他の生物弁膜に応用することもできる。
【0027】
ここで、弁尖20の製造方法も図4に示されたように、牛の心包片を弁尖形状に裁断し、各部位の厚さがいずれも最終的に所要な所定の厚さよりも大きく弁尖形状を有する心包片1を選び、冷凍前の前処理を行う。そして、弁尖形状を有する該心包片1を図6に示す凹型金型内に入れて、入れるときに、心包片1の平滑面を下向きにする。上記凹型金型における溝の形状が弁尖の外形と同じであり、溝の深さは弁尖の所定の厚さである。そして、該心包片1を凹型金型と共にバスケット2内に入れ、バスケット2を液体窒素タンク3内に入れて冷凍する。冷凍した凹型金型を該心包片1と共に取り出し、凹型金型を液体窒素冷却装置の表面31に固定する。
【0028】
図6に示すように、削り取りの方式で加工を行う場合、使用するスクレーパーの作業用表面の寸法は溝の幅より大きく、該心包片1の厚さが溝の深さ(即ち、弁尖の所定の厚さ)と等しくなるまで、弁尖形状を有する該心包片1を1層ずつ削り取ることにより、弁尖を得る。スクレーパーの寸法が大きいため、凹型金型の周縁は位置制限の機能を果たすことができ、これは最終的な弁尖の厚さの精度を制御することに有利であり、その厚さの均一性を向上させる。加工完了後、得た弁尖を取り外して洗浄を行い、研磨後の砕屑と残渣を除去し、その後に解凍する。
【0029】
<実施例3>
本実施例によれば、異なる厚さの弁尖の製造方法が提供される。異なる厚さの弁尖の構造については、特許US20130116676に開示された弁尖を参照することができ、図3Aに示すように、弁フレームと縫合されるときの強度を増大させるために、その弁尖の外周は中心部位に対して厚くなっている。また、その中心部位には、補強リブを設置することが可能であり、弁尖が薄いときに弁尖を支持する作用を発揮する。図3Bに示すように、人体生理弁膜と類似する厚さの分布を有してよい、即ち、弁尖の中心部位が薄く、外周が中心部位に対して徐々に厚くなっている。
【0030】
ここで、弁尖20の製造方法も図4に示すように、牛の心包片1を弁尖形状に裁断し、各部位の厚さがいずれも最終的に所要な所定の厚さよりも大きく弁尖形状を有する心包片1を選び、冷凍前の前処理を行う。そして、弁尖形状を有する該心包片1を図6に示す凹型金型内に入れて、入れるときに心包片1の平滑面を下向きにする。上記の凹型金型における溝の形状が弁尖の外形と同じであり、溝の深さは弁尖の最も薄い部位の所定の厚さであってもよい。そして、該心包片1を凹型金型と共にバスケット2内に入れて、バスケット2を液体窒素タンク3内に入れて冷凍する。冷凍後の凹型金型を該心包片1と共に取り出し、凹型金型を液体窒素冷却装置の表面31に固定する。
【0031】
図6に示すように、削り取りの方式で加工を行い、又は図5に示すように、研削の方式で加工を行う。削り取り又は研削のときに、小さいツールビット又は研削ヘッドを用いることができ、局所の厚さを減少させることに有利であり、加工しながら、各部位に対して測定を行い、各部位がいずれも所要な所定の厚さとなるまで加工を行うことにより、弁尖20を得る。加工完了後、弁尖20を取り外して洗浄を行い、研磨後の砕屑と残渣を除去し、その後に解凍する。
【0032】
最後に説明すべきのは、上記実施例は本発明の技術方案を説明するためのものに過ぎず、それを限定するものではない。上記実施例を参照しながら本発明について詳しく説明したが、当業者が理解すべきのは、依然として上記各実施例に記載された技術方案に対して、変更及び変形を行い、又は技術的特徴の一部又は全部に対して等価置換を行うことができるが、これらの変更又は置換は、対応する技術方案の本質を本発明に係る各実施例における技術考案の範囲から逸脱させない。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6