特許第6386570号(P6386570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6386570-摩耗インジケータを備えたブレーキ部材 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386570
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】摩耗インジケータを備えたブレーキ部材
(51)【国際特許分類】
   F16D 66/00 20060101AFI20180827BHJP
   F16D 66/02 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   F16D66/00 Z
   F16D66/02 D
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-549519(P2016-549519)
(86)(22)【出願日】2015年9月1日
(65)【公表番号】特表2017-512945(P2017-512945A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(86)【国際出願番号】EP2015069901
(87)【国際公開番号】WO2016037889
(87)【国際公開日】20160317
【審査請求日】2016年8月23日
(31)【優先権主張番号】102014112868.0
(32)【優先日】2014年9月8日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511198863
【氏名又は名称】テーエムデー フリクション サービシス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】ドーレ、アヒム
(72)【発明者】
【氏名】ロールベルク、ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ロートマン、ヴェルナー
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−032054(JP,A)
【文献】 特表2008−535714(JP,A)
【文献】 特表2010−506787(JP,A)
【文献】 特表2011−501051(JP,A)
【文献】 特開平05−215162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦ライニング(3)が固定された支持プレート(2)と、少なくとも1つの摩耗インジケータ(4)とを有する、ディスクブレーキ又はドラムブレーキ用のブレーキ部材であって、
前記摩耗インジケータ(4)は、前記摩擦ライニング(3)内に埋設された一容積体として構成されており、該容積体は、予め製造された一体形の容積体として、摩擦ライニングの摩耗を連続的に又は多段階的に測定するよう構成された摩耗センサ(6)と、無線信号伝送のための送受信ユニット(5)とを含み、
該送受信ユニット(5)は、前記支持プレート(2)の表面から突出しないよう埋設されること、
を特徴とするブレーキ部材。
【請求項2】
前記送受信ユニット(5)は、RFID(Radio Frequency Identification)トランスポンダ又はSAW(Sound Acoustic Wave)トランスポンダであること
を特徴とする、請求項1に記載のブレーキ部材。
【請求項3】
前記RFIDトランスポンダは、パッシブトランスポンダであること
を特徴とする、請求項2に記載のブレーキ部材。
【請求項4】
前記送受信ユニット(5)は、SAWトランスポンダであること
を特徴とする、請求項2に記載のブレーキ部材。
【請求項5】
前記摩耗センサ(6)は、複数の導体ループを有すること
を特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のブレーキ部材。
【請求項6】
前記摩耗インジケータ(4)は、追加的に温度センサ(9)を有すること
を特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のブレーキ部材。
【請求項7】
前記摩耗インジケータ(4)は、追加的に最大温度記憶要素(7)を有すること
を特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のブレーキ部材。
【請求項8】
前記摩耗インジケータ(4)は、円筒形状又は円錐形状を有すること
を特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のブレーキ部材。
【請求項9】
前記摩耗インジケータ(4)は、10〜30mmの最大直径を有すること
を特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のブレーキ部材。
【請求項10】
前記摩耗インジケータ(4)は、前記摩擦ライニング(3)と同じ材料から製造されていること
を特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のブレーキ部材。
【請求項11】
前記摩耗インジケータ(4)は、前記支持プレート(2)の通し穴に取り付けられていること
を特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のブレーキ部材。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のブレーキ部材(1)用の摩耗インジケータ。
【請求項13】
摩擦ライニングが固定された支持プレートと、少なくとも1つの摩耗インジケータとを有する、ディスクブレーキ又はドラムブレーキ用のブレーキ部材を製造するための方法であって、以下のステップ、即ち、
a)支持プレート(2)へ通し穴又は窪み部を作り込むステップ、
b)摩擦ライニング側において前記通し穴又は前記窪み部へ摩耗インジケータ(4)を嵌め込むステップ、及び、
c)前記摩耗インジケータ(4)を取り囲む摩擦材料(3)を前記支持プレート(2)に対してプレス結合させるステップ
を含み、
前記摩耗インジケータ(4)は、前記摩擦ライニング(3)内に埋設された一容積体として構成されており、該容積体は、予め製造された一体形の容積体として、摩擦ライニングの摩耗を連続的に又は多段階的に測定するよう構成された摩耗センサ(6)と、無線信号伝送のための送受信ユニット(5)とを含み、
該送受信ユニット(5)は、前記支持プレート(2)の表面から突出しないよう埋設されること、
を特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦ライニング(摩擦材部分)の領域に取り付けられ、特に摩擦ライニングの摩耗状態を検知するために用いられる手段を備えた、ブレーキシステム用のブレーキ部材(ブレーキパッドないしブレーキシュー Bremsbacke)に関する。ブレーキ部材は、ディスクブレーキ及びドラムブレーキ、好ましくはディスクブレーキに適しており、あらゆる車両タイプ、特に乗用車や商用車において使用可能である。更に本発明は、そのようなブレーキ部材の製造にも関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1から、複数の導体ループを備えた摩耗インジケータを有するブレーキ部材が既知であり、該摩耗インジケータは、接続プラグとケーブルを介して制御又は表示装置と電気的に接続されている。制御装置は、導体ループがもはや導通しないか又は場合により導通する場合に、中断された回路か又は場合により閉じた回路を検知する。そのように発生された信号は、摩擦ライニングの摩耗状態を決定するために用いられる。
【0003】
下記特許文献2は、下記特許文献1を従来技術として取り上げており、コイル回路を介して実際の摩擦ライニング内の摩耗ピル(少なくとも1本の導体ループを有するカプセル部材)と接続されたパッシブトランスポンダの形式のセンサが、ライニング支持プレートに取り付けられているブレーキ部材を記載している。この摩耗ピルは、摩擦ライニングの摩耗状態を不連続的な段階で表示することが可能である。トランスポンダが直接的に摩擦ライニング内に埋設されている場合、トランスポンダは、規定の摩擦ライニング厚に達すると破壊される。様々な摩擦ライニング厚は、摩擦ライニングの対応する深さに複数のトランスポンダを組み込むことにより表示される。
【0004】
下記特許文献2に類似し、パッシブトランスポンダの使用、ないし摩擦ライニングのライニング厚を摩耗検知又は監視するための所謂RFIDテクノロジの使用を記載する、従来技術の更なる文献は、例えば、下記特許文献3及び下記特許文献4である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP 0 754 875 B1
【特許文献2】DE 10 2008 032 818 A1
【特許文献3】DE 10 2008 011 288 A1
【特許文献4】DE 10 2008 020 425 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載されたブレーキ部材の製造及び取付けは、必要なプラグ接続とケーブル接続により妨げられ、このようなプラグ接続とケーブル接続は、日々の運転においてシステムのロバストネス(頑丈さ)に対しても不利に作用することになる。また上記特許文献2に記載されたブレーキ部材ないし摩耗検知システムの製造は、上述の複雑性が原因で依然として手間がかかり従って高価なものである。
【0007】
従って本発明の課題は、摩擦ライニングの摩耗状態をできるだけ連続的に監視するためのシステムが装備され、従来技術の欠点を十分に解消する、ブレーキ部材(ブレーキパッドないしブレーキシュー)を提供することである。それに加え、そのような装置は、頑丈であり、日常の運転において信頼性があり、またできるだけ簡単に且つ安価に製造されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明により、特許請求項1の特徴を有する上述の形式のブレーキ部材により解決される。
即ち本発明の第1の視点により、摩擦ライニングが固定された支持プレートと、少なくとも1つの摩耗インジケータとを有する、ディスクブレーキ又はドラムブレーキ用のブレーキ部材であって、前記摩耗インジケータは、前記摩擦ライニング内に埋設された一容積体として構成されており、該容積体は、予め製造された一体形の容積体として、摩擦ライニングの摩耗を連続的に又は多段階的に測定するよう構成された摩耗センサと、無線信号伝送のための送受信ユニットとを含み、該送受信ユニットは、前記支持プレートの表面から突出しないよう埋設されること、を特徴とするブレーキ部材が提供される。
また本発明の第2の視点により、前記ブレーキ部材用の摩耗インジケータが提供される。
更に本発明の第3の視点により、摩擦ライニングが固定された支持プレートと、少なくとも1つの摩耗インジケータとを有する、ディスクブレーキ又はドラムブレーキ用のブレーキ部材を製造するための方法であって、以下のステップ、即ち、
a)支持プレートへ通し穴又は窪み部を作り込むステップ、
b)摩擦ライニング側において前記通し穴又は前記窪み部へ摩耗インジケータを嵌め込むステップ、及び、
c)前記摩耗インジケータを取り囲む摩擦材料を前記支持プレートに対してプレス結合させるステップ
を含み、
前記摩耗インジケータは、前記摩擦ライニング内に埋設された一容積体として構成されており、該容積体は、予め製造された一体形の容積体として、摩擦ライニングの摩耗を連続的に又は多段階的に測定するよう構成された摩耗センサと、無線信号伝送のための送受信ユニットとを含み、
該送受信ユニットは、前記支持プレートの表面から突出しないよう埋設されること、
を特徴とする方法が提供される。
尚、本願の特許請求の範囲において付記されている図面参照符号は、専ら本発明の理解の容易化のためのものであり、図示の形態への限定を意図するものではないことを付言する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、以下の形態が可能である。
(形態1)摩擦ライニングが固定された支持プレートと、少なくとも1つの摩耗インジケータとを有する、ディスクブレーキ又はドラムブレーキ用のブレーキ部材であって、前記摩耗インジケータは、摩擦ライニングの摩耗を連続的に又は多段階的に測定するための摩耗センサと、無線信号伝送のための送受信ユニットとを有すること。
(形態2)前記ブレーキ部材において、前記送受信ユニットは、RFID(Radio Frequency Identification)トランスポンダ又はSAW(Sound Acoustic Wave)トランスポンダであることが好ましい。
(形態3)前記ブレーキ部材において、前記RFIDトランスポンダは、パッシブトランスポンダであることが好ましい。
(形態4)前記ブレーキ部材において、前記送受信ユニットは、SAWトランスポンダであることが好ましい。
(形態5)前記ブレーキ部材において、前記摩耗センサは、複数の導体ループを有することが好ましい。
(形態6)前記ブレーキ部材において、前記摩耗インジケータは、温度センサを有することが好ましい。
(形態7)前記ブレーキ部材において、前記摩耗インジケータは、最大温度記憶要素を有することが好ましい。
(形態8)前記ブレーキ部材において、前記摩耗インジケータは、円筒形状又は円錐形状を有することが好ましい。
(形態9)前記ブレーキ部材において、前記摩耗インジケータは、10〜30mmの最大直径を有することが好ましい。
(形態10)前記ブレーキ部材において、前記摩耗インジケータは、前記摩擦ライニングと同じ材料から製造されていることが好ましい。
(形態11)前記ブレーキ部材において、前記摩耗インジケータは、前記支持プレートの通し穴に取り付けられていることが好ましい。
(形態12)前記ブレーキ部材用の摩耗インジケータ。
(形態13)前記摩耗インジケータにおいて、前記摩耗インジケータは、摩擦ライニング内に埋設された一容積体として構成されていることが好ましい。
(形態14)前記ブレーキ部材を製造するための方法であって、以下のステップ、即ち、
a)支持プレートへ通し穴又は窪み部を作り込むステップ、
b)摩擦ライニング側において前記通し穴又は前記窪み部へ摩耗インジケータを嵌め込むステップ、及び、
c)前記摩耗インジケータを取り囲む摩擦材料を前記支持プレートに対してプレス結合させるステップ
を含むこと。

【0010】
本発明においては、実際の摩擦ライニング(摩擦材部分)に配設されており、好ましい形式では摩擦ライニング内に埋設された摩耗インジケータ(ウェアインジケータ)が設けられている。この摩耗インジケータは、少なくとも2つの要素を含んでいる。第1の要素は、摩擦ライニングの摩耗状態を検知するための実際のセンサである。このセンサは、摩耗状態を連続的に検知するように又は少なくとも細かく多段階で摩耗状態を検知するように設計されている。このセンサは、好ましくは、複数の導体ループ、所謂抵抗回路網から成り、これらの導体ループは、様々な長さで摩耗インジケータ内へ達し、従って様々な長さで摩擦ライニング内へ達している。摩擦ライニングの摩耗が進行するにつれて導体路が徐々に中断され、摩耗インジケータ内に配設された送受信ユニットにより発生される対応信号が、車両内に配設された又は外部の制御及び/又は読出装置により受信されて表示される。好ましくはこのセンサは、1〜10本の導体ループを有し、これらの導体ループは、好ましくは、例えば銅やアルミニウムのような金属材料から、又は例えばドープされたポリアセチレンのような当業者には既知の導電性プラスチックから製造されている。
【0011】
第2の要素として送受信ユニットは、好ましくはトランスポンダであり、好ましい実施形態においては、パッシブトランスポンダである。このトランスポンダは、無線伝送技術を用い、信号の伝送と処理を可能とする。本発明により好ましい伝送技術は、所謂RFID(Radio Frequency Identification)テクノロジであり、また特にSAW(Surface Acoustic Wave)テクノロジでもある。
【0012】
RFIDシステムのトランスポンダ又はタグは、通常、マイクロチップと、アンテナと、支持体又はハウジングと、パッシブトランスポンダでは例えばコンデンサにより構成されるエネルギー源とから構成されている。パッシブトランスポンダは、マイクロチップを給電するためのエネルギーを、受信された読取装置の電磁波から取得する。摩擦ライニング内の上述の実際の摩耗センサの相対位置により決定され且つ具体的な事例において使用目的、負荷状態、重要な安全要求に依存する、摩擦ライニングの許容摩耗限度(zulaessige Verschleissmass)に達した場合には、摩擦パートナ(被制動部)がトランスポンダないしセンサと接触することになり、それによりトランスポンダないしセンサは、その機能において変更されることになる。つまりトランスポンダから応答される信号は、摩耗センサが無傷の状態のときと比べて変更されており、制御及び/又は読取装置により適宜受信されて表示される。この際、摩耗の進行(導体路の漸進的な中断)は、マイクロチップに記憶されている信号パターンに対応し、該信号パターンは、制御及び/又は読取装置を用いて応答される。RFIDマイクロチップには、好ましくは、各ブレーキ部材タイプ(各ブレーキパッドタイプないし各ブレーキシュータイプ)のために詳細化された消去不能な識別コードが記憶されている。それにより例えば一企業(例えば運送会社)の様々な車両の摩擦ライニングの摩耗状態をセンタ(中央管理部)で記憶し、追跡し、ライニング交換を計画することが可能であり、従って最適な耐用期間と車両の最小の停止時間を保証することが可能である。
【0013】
RFIDトランスポンダ又はRFIDタグに代わり、本発明により有利な一実施形態においては、SAW効果を利用する所謂SAWタグを使用することも可能である。SAWタグにおいては、アンテナを介して入ってくるマイクロ波が最終的に表面音波(表面弾性波:SAW)に変換される。反射されたSAWは、戻されて電磁波に変換され、該電磁波は、再びタグのアンテナを介して制御又は読取装置へ伝送される。通常のRFIDシステムに対するSAWタグの主な利点は、高い耐熱性(例えば350℃まで)と、電磁誘導式のRFIDシステムよりも大きな読取距離と、機械的及び化学的に高いロバストネス(頑丈さ)とにある。
【0014】
本発明のために使用可能なRFIDタグ及びSAWタグ(トランスポンダ)並びにそれに対応する制御及び読取装置は、市販で入手可能である。
【0015】
更なる有利な一実施形態において、本発明による摩耗インジケータは、追加的に、連続的に又は非連続的に作動する温度センサを有する。この要素は、好ましくは以下の測定原理に基づいている:
− 熱抵抗効果(金属ベースの温度検出器、例えば白金抵抗センサや又は銅抵抗センサ)
− 機械効果(例えば伸張センサ又はガス圧センサ)
− 熱電効果(例えばシース熱電対、例えばNiCrNi)
− 放射線効果(例えば高温計(パイロメータ))
− 温度測定色(感温色)
− 液晶
− 熱雑音温度計、光ファイバを有する蛍光温度計
− ゼーゲルコーン
− 水晶温度計
− 音響測定法
【0016】
この際、温度センサは、全摩擦ライニングを貫いてブレーキディスクと直接的な接触状態にあるか、又は場合により設けられた中間層の摩擦材料内か又は支持プレート内で終端していてもよい。ブレーキディスクに対して直接的な接触がある場合には、温度センサないし熱電対ないし熱電対線は、その際に自身のセンサ特性を失うことなく、摩擦材料と共に摩耗する。同様に、熱電対がある特定の摩耗限度以降は破壊され、この破壊が摩擦ライニングの寿命の最後に達したことを検知するために利用されることを考慮することができる。
【0017】
このセンサ要素は、好ましくは、上述した容積体(ボリュームボディ)内に取り込まれる。この際、センサ要素は、例えば Therma Thermofuehler GmbH 社(http://www.thermagmbh.de)から取り寄せることのできる、標準的なNiCrNi熱電対タイプKとすることができる。同様に熱電対は、シリカ絶縁物とセラミック管を有する個々の熱電対線(例えば Omegatit 450 登録商標)から製造して組み込むことが可能である。
【0018】
更なる有利な一実施形態において、本発明による摩耗インジケータは、追加的に所謂最大温度記憶要素(Maximal-Temperatur-Speicherelement)を有する。この要素は、規定の融解温度を有する融解可能な導電材料から成る。この際、融解温度は、摩擦ライニングの稼働時に超過すべきではない最大温度に対応する。温度超過時(最大温度の温度超過時)には、融解により短絡が発生し、ないしコンタクトが確立され、対応信号が制御又は読取装置へ伝送され、従って車両の運転者へ伝送される。この機能方式は(融解に至るまで)基本的に、上述の実際の摩耗センサにおける機能方式に対応する。最大温度記憶要素のための融解可能な適切な導電材料は、例えば420℃の融解温度を有する亜鉛である。
【0019】
最大温度記憶要素は、好ましくは、互いに接触することなく配設されている上述の融解可能なユニットを2つ以上有する。
【0020】
本発明による摩耗インジケータの上記のコンポーネント、並びに未記述の更なるコンポーネントは、その種類と個数について基本的に自由に組み合わせ可能である。
【0021】
本発明による摩耗インジケータ又は容積体は、好ましくは、円筒形状又は円錐形状を有し、好ましくは、支持プレートの領域、又は支持プレートの通し穴又は窪み部、又は支持プレート上に取り付けられている。その直径は、典型的には10〜30mmの範囲内にあり、その高さは、最大で、支持プレート上に取り付けられている摩擦ライニングの厚さに対応するか、又は最大で、支持プレートの厚さを加算した摩擦ライニングの厚さに対応するか(この場合、容積体は支持プレートの通し穴に取り付けられている)、又は最大で、支持プレートにおける窪み部の深さを加算した摩擦ライニングの厚さに対応する。通常、容積体は、摩擦ライニングの表面に至るまで延在するのではなく、摩擦ライニングの種類と使用方式に依存する規定の摩耗限度に至るまでだけで摩擦ライニング内へ達している。
【0022】
好ましくは、摩耗インジケータ又は容積体は、摩擦材料特性を有する耐熱性の熱硬化性材料から製造されるか、又は当該材料から成る。この際、本発明においては、所望の使用目的のために設けられている摩擦コンパウンドの使用か、又は少なくとも、例えばフェノール樹脂及び/又はエポキシ樹脂及び/又は非導電性充填材のようなコンパウンドによる典型的な材料の使用が好ましい。そして当該材料へ、上述の要素(摩耗センサ、トランスポンダ、最大温度記憶要素)が埋設され、即ちこれらの要素の間の中間空間が当該材料を用いて充填され、これらの要素は、容積体の外側層をも構成する当該材料により包囲されている。
【0023】
本発明によるブレーキ部材の製造、並びに摩耗インジケータの好ましい配置構成は、基本的に上記特許文献1に記載されている方法と配置構成に対応する。特許文献1における対応の開示内容、特に段落13〜22に記載の実施形が、本明細書における説明の目的で援用されるものとする。
【0024】
本発明によるブレーキ部材は、好ましくは、支持プレートへ通し穴又は窪み部が作り込まれ、完成した摩耗インジケータが、摩擦材料のプレス結合(ないし圧着 aufpressen)前に摩擦ライニング側においてこの通し穴又は窪み部へ嵌め込まれるように製造される。その後、摩擦材料(中間層を伴うか又は伴わない並びに追加的な接着層を伴うか又は伴わない)が支持プレート(ライニング支持体)に対してプレス結合される。(この際、プレス結合とは、摩擦材料が摩擦ライニングの製造プロセスにおいてプレス(押圧力の作用の下)により支持プレートと結合ないし一体化されることを言う。)
【0025】
そのように達成された利点は、特に、摩耗インジケータが予め取り付けられた状態においてライニング支持体に対して摩擦材料をプレス結合することにより、該摩耗インジケータは、取り外し不能に摩擦材料内へ組み込まれ、摩擦ライニング内のその位置は、もはや変更不能であるということにある。
【0026】
摩耗インジケータを受容するための摩擦ライニングにおける凹部、又は本発明により考慮もされているが、2つ以上の摩耗インジケータを受容するための摩擦ライニングにおける凹部は、摩擦面が最大限に利用されるように最小化される。摩擦材料を用いた摩擦材料内の容積体の完全なカプセル化により、該容積体は、ブレーキ部材の取付け及び稼働中の損傷から保護されている。
【0027】
上述の方法により、そうでなければ、穴が開けられ、汚染物が取り除かれなくてはならないという、摩耗インジケータを後から取り付けるために必要となる作業が不要になる。支持プレートにおいて場合により必要な通し穴は、例えば必要な固定用凹部(ないし切欠き部)を作成するのと同じ打抜きプロセスにおいて作成される。
【0028】
以上の説明で述べられた並びに以下の実施例で述べられる本発明の実施形態と特徴は、本発明を限定するものではない。むろん本発明は、当業者にとって有利な内容として明らかである各々の特徴の組み合わせも含んでいる。
【0029】
以下、図面と関連して本発明の実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明によるブレーキ部材と本発明による摩耗インジケータないし容積体の横断面図を示す図である。
【実施例】
【0031】
図1に図示されたブレーキ部材(ブレーキパッドないしブレーキシュー)1は、摩擦ライニング(摩擦材部分)3が取り付けられており且つ摩擦ライニング3内に埋設された摩耗インジケータ4を有する支持プレート又はライニング支持体2から構成されている。この摩耗インジケータ4は、支持プレート2の通し穴に取り付けられており、無線送受信ユニット5(RFIDタグ又はSAWタグ)と、連続的に又は多段階的に測定可能な摩耗センサ6(ここでは複数の導体ループないし回路(Leiterschleifen)の形式で図示されている)と、最大温度記憶要素7と、温度センサ9とを有する。充填材、並びにこれらの要素5〜7及び9を取り囲み且つ摩耗インジケータ4の外被部を構成する材料8は、摩擦ライニング3自体と同じ摩擦材料から構成されている。
【符号の説明】
【0032】
1 ブレーキ部材(ブレーキパッドないしブレーキシュー)
2 支持プレート又はライニング支持体
3 摩擦ライニング
4 摩耗インジケータ
5 無線送受信ユニット
6 摩耗センサ(導体ループないし回路)
7 最大温度記憶要素
8 摩擦材料
9 温度センサ
図1