(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386571
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】強度の増加された経口投与型医薬用吸着剤
(51)【国際特許分類】
A61K 47/04 20060101AFI20180827BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20180827BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20180827BHJP
C01B 32/30 20170101ALI20180827BHJP
A61K 9/18 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
A61K47/04
B01J20/20 B
B01J20/28 Z
C01B32/30
A61K9/18
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-549559(P2016-549559)
(86)(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公表番号】特表2017-507126(P2017-507126A)
(43)【公表日】2017年3月16日
(86)【国際出願番号】KR2014009103
(87)【国際公開番号】WO2015119352
(87)【国際公開日】20150813
【審査請求日】2017年9月25日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0014409
(32)【優先日】2014年2月7日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509148935
【氏名又は名称】テウォン ファーム カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】515283839
【氏名又は名称】ピュアスフィア カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094570
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼野 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】カン セヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ウンジン
(72)【発明者】
【氏名】ソン セヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン セイル
(72)【発明者】
【氏名】イ フンウ
(72)【発明者】
【氏名】パク チャンス
(72)【発明者】
【氏名】ナム ウグン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジング
【審査官】
横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−314415(JP,A)
【文献】
特開昭54−089010(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/001485(WO,A1)
【文献】
特開2013−035781(JP,A)
【文献】
特開2011−084454(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/039380(WO,A1)
【文献】
国際公開第2005/095276(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/121202(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K47/00−47/69
A61K9/00−9/72
A61K33/44
B01J20/20
B01J20/28
C01B32/30
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性活性炭からなる経口投与型医薬用吸着剤であり、多孔性活性炭の気孔直径7.5〜15000nmの気孔容積が0.01mL/g以上0.10mL/g未満であり、
気孔直径20〜15000nmの気孔容積が0.005mL/g以上0.04mL/g未満であることを特徴とする経口投与型医薬用吸着剤。
【請求項2】
多孔性活性炭の気孔直径7.5〜15000nmの気孔容積が0.03mL/g以上0.08mL/g未満であり、
気孔直径20〜15000nmの気孔容積が0.01mL/g以上0.03mL/g未満であることを特徴とする請求項1に記載の経口投与型医薬用吸着剤。
【請求項3】
多孔性活性炭の選択吸着率が3.0以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の経口投与型医薬用吸着剤。
【請求項4】
多孔性活性炭素のインドールの初期吸着率が80%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の経口投与型医薬用吸着剤。
【請求項5】
多孔性活性炭は、10N/sphere以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の経口投与型医薬用吸着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口投与型医薬用吸着剤に係り、更に詳しくは、強度の増加された多孔性活性炭からなる経口投与型医薬用吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
腎機能や肝機能の欠損患者は、それらの臓器機能障害に伴って血液中などの体内に有害な毒性物質が蓄積されたり生成されたりするため、尿毒症や意識障害などの脳症を引き起こす。これらの患者数は年々増加する傾向にあるため、これらの欠損臓器の代わりに、毒性物質を体外に除去する機能を有する臓器代用機器又は治療薬の開発が重要な課題となっている。現在、人工腎臓としては、血液の透析による有毒物質の除去方式が最も広く普及している。しかしながら、このような血液透析型人工腎臓においては、特殊な装置を用いるため、安全管理の側面からみて、専門技術者を必要とし、血液の体外抽出による患者の肉体的、精神的及び経済的な負担が大きいなどの欠点を有しているため、必ずしも満足のいくものではない。
【0003】
これらの欠点を解消する手段として、経口服用が可能であり、腎臓や肝臓の機能障害が治療可能な経口吸着剤が開発されて用いられている。表面改質球状活性炭からなる経口吸着剤は、一般に、上部小腸管内における滞留時間が約3〜5時間である。このため、有害物質と接触した後の約3時間内における吸着能力が高く、初期吸着性能に優れた表面改質球状活性炭が望ましい。
【0004】
なお、生体内の毒性物質を大量に且つ速やかに吸着し、除去することも重要であるが、有毒物質に対しては優れた吸着性を示し、腸内有益成分の吸着が少ない選択吸着率も重要である。胃、小腸などの消化管は、糖、タンパク質などの生理機能に欠かせない化合物及び障壁から分泌される酵素など種々の物質が混在する環境である。このため、生理機能に欠かせない化合物の吸着を抑えながらも、尿毒症の原因物質を吸着する選択吸着率を有する薬用活性炭が求められる。
【0005】
大韓民国公開特許第10−2004−0032320号は、経口投与用吸着剤に関する発明であり、同公報には、20〜15000nmの気孔容積が0.04mL/g以上0.10mL/g未満の特定の範囲において、高い選択吸着率を有する経口投与用吸着剤が記載されている。
【0006】
また、大韓民国公開特許第10−2005−0039592号には、経口吸着剤が吸着する有害物質の量は、7.5〜15000nmの気孔容積が0.25mL/g以上の領域において増加し、比表面積の増加とは相関関係を示さない旨が記載されている。
【0007】
これは、従来の経口投与用吸着剤が主として石油系ピッチを炭素源とするためであり、前記先行技術に記載の発明によれば、なお一層細かく、しかも、効果的な選択吸着率を有する経口投与型医薬用吸着剤の開発が困難になる。
【0008】
特に、従来経口投与型医薬用吸着剤として知られている製品は、散剤として服用されるが、従来の多孔性活性炭の場合、圧縮強度が著しく低いため、固形の単位剤形に製剤化しようとする場合、例えば、カプセルに充填する場合は、充填過程において活性炭が壊れてしまうという問題があった。すなわち、これまでは、上述したように、選択吸着率及び特定の尿毒物質(例えば、インドール化合物)に対する吸着力の増加にのみフォーカスをあて、技術開発が行われてきたため、主として活性炭の微細気孔の直径及び容積、比表面積、又は屈折率に関する研究がなされてきたに過ぎず、これにより、球状活性炭自体の圧縮強度が著しく低下するという点に着目して、これを改善しようとする試みはなされなかった。
【0009】
ところが、経口吸着剤は1回の服用量が数gに達するため、これを散剤として服用する場合、嘔吐など投薬の困難を引き起こす場合が多く、これに起因して、実際の投薬現場では、オブラートなどの補助手段を用いた投与が行われているのが現状である。
【0010】
この理由から、投薬の利便性を大幅に高める単位固形製剤へのニーズが高いが、上述したように、活性炭自体の圧縮強度が低いが故に、これまで実現されたことはないと思われる。
【0011】
このため、本発明者らは、経口投与型医薬用吸着剤に関して研究を重ねるうちに、経口投与型医薬用吸着剤が従来の技術の常識及び限界を超えて新たに開発可能であるということを見出し、本発明を完成するに至った。特に、本発明は、従来の技術においては、選択吸着率の増加、又はインドール吸着力の増加にフォーカスをあてているに過ぎず、選択吸着率の増加及びインドール吸着力の増加を両立できる手段については、いかなる報告もなされていないということに着目して、選択吸着率及びインドール吸着力を両立できる新規な経口投与型医薬用吸着剤を提供する。なお、このような選択吸着率の増加及びインドール吸着力の増加とあいまって、本発明による多孔性活性炭は、従来知られている球状活性炭に比べて非常に高い強度を有しており、これにより、散剤として投与可能なだけではなく、カプセルに充填して経口投与できるというメリットがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、強度の増加された多孔性活性炭からなる経口投与型医薬用吸着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、強度の増加された多孔性活性炭からなる経口投与型医薬用吸着剤を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、強度の増加された多孔性活性炭からなる経口投与型医薬用吸着剤は、従来、当業界において知られていない新たな事実に基づいて、インドール吸着力及びインドール吸着速度を極大化させることができ、且つ、尿毒物質に対する選択吸着率を最大化させることができる。また、10N/sphere以上の強度を有することから、製造の歩留まりが高まるだけではなく、製造及び流通過程において、活性炭の形状が壊れてしまうという問題を解決することができる。また、強度を高めることにより、静電気の発生を抑えることができ、製造工程中に発生する異物による球状活性炭の汚染を防ぐことができる。市販製剤の場合、服用に当たって、静電気の発生により球状活性炭が付着するため、不都合をもたらすのに対し、本願発明の球状活性炭は、静電気の発生を抑えて服用の利便性を高めるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、強度の増加された多孔性活性炭からなる経口投与型医薬用吸着剤を提供する。
【0017】
本発明による強度の増加された多孔性活性炭は、平均粒径が0.1〜0.5mmであり、好ましくは、0.3〜0.4mmである。
【0018】
本発明による強度の増加された多孔性活性炭は、気孔直径7.5〜15000nmの気孔容積が0.01mL/g以上0.10mL/g未満であり、さらに好ましくは、0.03mL/g以上0.08mL/g未満である。
【0019】
これに対し、大韓民国特許公報第10−2005−0039592号には、平均粒子径が0.01〜1mmであり、且つ、気孔直径7.5〜15000nmの気孔容積が0.25〜1.0mL/gである表面改質球状活性炭からなることを特徴とする経口投与用吸着剤が開示されている。前記文献には、経口吸着剤の吸着能、すなわち、経口吸着剤が吸着する有害物質の量は、上記の気孔容積が0.25mL/g以上の領域において増加し、比表面積の増加とは相関関係を示さない旨が記載されており、選択吸着率よりは有害物質の吸着量を増加させることに注目する。
【0020】
しかしながら、本発明者らの研究によれば、上記文献の記載とは異なり、本発明による強度の増加された多孔性活性炭からなる経口投与型医薬用吸着剤の場合、気孔直径7.5〜15000nmの気孔容積が0.01mL/g以上0.10mL/g未満であり、さらに好ましくは、0.03mL/g以上0.08mL/g未満においてインドール吸着力及びインドール吸着速度が増加するという知見を得た。
【0021】
このため、本発明による球状フラン樹脂を炭素源とする多孔性活性炭からなる経口投与型医薬用吸着剤は、気孔直径7.5〜15000nmの気孔容積が0.01mL/g以上0.10mL/gの範囲において尿毒物質であるインドールの吸着を最大化させることができる。
【0022】
本発明による強度の増加された多孔性活性炭は、気孔直径20〜15000nmの気孔容積が0.005mL/g以上0.04mL/g未満であり、さらに好ましくは、0.01mL/g以上0.03mL/g未満である。
【0023】
これに対し、大韓民国特許公報第10−2004−0032320号には、直径が0.01〜1mmであり、且つ、気孔直径20〜15000nmの気孔容積が0.04mL/g以上0.10mL/g未満である多孔性球状炭素質物質からなることを特徴とする経口投与用吸着剤が開示されている。前記文献には、気孔直径20〜15000nmの気孔容積が0.04mL/g以上0.10mL/g未満である範囲内において、優れた選択吸着率を示し、且つ、上記の気孔容積が0.05mL/g以上0.10mL/g未満である範囲内においてなお一層優れた選択吸着率を示すという旨が記載されている。
【0024】
しかしながら、本発明の一例によれば、本発明による強度の増加された多孔性活性炭からなる経口投与型医薬用吸着剤の場合、気孔直径20〜15000nmの気孔容積が0.005mL/g以上0.04mL/g未満であり、さらに好ましくは、0.01mL/g以上0.03mL/g未満において選択吸着率が増加するということが分かる。
【0025】
すなわち、本発明の強度の増加された多孔性活性炭からなる経口投与型医薬用吸着剤は、従来の技術常識とは異なり、気孔直径7.5〜15000nmの気孔容積が0.01mL/g以上0.10mL/gであり、気孔直径20〜15000nmの気孔容積が0.005mL/g以上0.04mL/g未満を満たすとき、選択吸着率が増加すると共に、インドール吸着力及び吸着速度も同時に増加するという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0026】
本発明において、強度の増加された多孔性活性炭とは、少なくとも10N/sphere以上の圧縮強度を有する多孔性活性炭を意味する。本発明の多孔性活性炭の強度は、従来の活性炭の強度に比べて、少なくとも2倍〜最大10倍以上の強度を有する。本発明の強度の増加された多孔性活性炭は、フラン樹脂を炭素源として製造可能である。
【0027】
本発明による強度の増加された多孔性活性炭は、塩基消費量が0.1〜1.0mmol/gであり、酸消費量が0.3〜1.0mmol/gである。
【0028】
要するに、本発明の経口投与型医薬用吸着剤は、気孔直径7.5〜15000nmの気孔容積が0.01mL/g以上0.10mL/g未満であり、さらに好ましくは、0.03mL/g以上0.08mL/g未満であり、気孔直径20〜15000nmの気孔容積が0.005mL/g以上0.04mL/g未満であり、さらに好ましくは、0.01mL/g以上0.03mL/g未満であり、圧縮強度が10N/sphere以上である場合、最適化された尿毒物質の除去能を発揮する。
【0029】
本発明による経口投与型医薬用吸着剤は、選択吸着率が3.0以上である。
【0030】
本発明による経口投与型医薬用吸着剤は、インドールの初期吸着率が80%以上である。
【0031】
本発明の経口投与型医薬用吸着剤は、慢性腎不全、急性腎不全、慢性腎盂腎炎、急性腎盂腎炎、慢性腎炎、急性腎炎症候群、急性進行型腎炎症候群、慢性腎炎症候群、ネフローゼ症候群、間質性腎炎、リポイドネフローゼ、糖尿病性腎症、腎血管性高血圧、又は透析前の軽度腎不全、慢性肝炎、アルコール性肝炎、肝線維症、肝硬変、薬剤アレルギー性肝障害又は原発性胆汁性肝硬変よりなる群から選ばれる一種以上の疾病の予防又は治療用に使用可能であるが、経口投与型医薬用吸着剤の尿毒物質の吸着により改善又は治療可能な疾病であれば、特に前記疾患に限定されるものではない。
【0032】
本発明による経口投与型吸着剤として用いる表面改質球状活性炭が有する各物性値、すなわち平均粒子径、比表面積、気孔容積、酸消費量、塩基消費量、選択吸着率及び強度は下記の方法を用いて測定する。
【0033】
(1)平均粒子径
レーザ回折式粒度分布粒度測定装置(シンパテック社製、HELOS Particle Size Analysis)を用いて体積を基準とする粒度累積線図を作成し、体積平均径(Volume Mean Diameter;VMD)に相当する粒子径を平均粒子径とした。
【0034】
(2)比表面積(BET法による計算法)
ガス吸着法による比表面積測定器(マイクロメリティクス社製、ASAP 2420)を用いて球状活性炭のガス吸着量を測定し、BET式を用いて比表面積を計算した。
【0035】
具体的に、球状活性炭を試料管に充填し、300℃で減圧乾燥した後に重量を測定した。試料管を−196℃まで冷却させ、窒素を取り込んで球状活性炭に窒素を吸着させ、窒素分圧と吸着量との関係(吸着等温線)を測定した。試料管を室温にし、球状活性炭から離脱した窒素量を熱伝導型検出器を用いて測定し、ガス吸着量(v)とした。
【0036】
BET式から導き出された近似式
vm=1/{v×(1−x)}
を用いて、液体窒素温度における窒素吸着による1点法(相対圧力x=0.3)により、vm(m
2/g)を求め、
下記式
比表面積=4.35×vm
を用いて、球状活性炭の比表面積を計算した。前記各計算式において、vは実際に測定されるガス吸着量(m
2/g)であり、xは相対圧力である。
【0037】
(3)水銀圧入法による気孔容積
水銀気孔測定器(マイクロメリティックス社製、AUTOPORE IV 9500)を用いて気孔容積を測定した。球状活性炭を試料容器に入れ、30分間脱気した。水銀を試料容器内に取り込み、徐々に加圧して水銀を球状活性炭の気孔に押し込んだ。このときの圧力と水銀の圧入量との関係から、以下の各計算式を用いて球状活性炭試料の気孔容積分布を測定した。
【0038】
具体的に、最低圧力0.5psiaから最高圧力61,000psiaまでの範囲内において、球状活性炭に押し込まれた水銀の体積を測定した。気孔直径の算出は、直径(D)の筒状の気孔に水銀を圧力(P)で押し込む場合、水銀の表面張力を『γ』とし、水銀及び気孔壁間の接触角を『θ』とすると、表面張力及び気孔断面に働く圧力のバランスから、下記式−πDγcosθ=π(D/2)
2×Pが成り立つ。このため、D=(−4γcosθ)/Pとなる。
【0039】
水銀の表面張力を485dynes/cmとし、水銀と炭素との接触角を130°として、圧力Pをpsiaとし、気孔直径Dをμmと表示して、下記式D=180.8/Pを用い、圧力Pと気孔直径Dとの関係を求めた。
【0040】
例えば、本発明において、気孔直径7.5〜15000nmの範囲の気孔容積とは、水銀押込圧12.05psiaから24106.6psiaまで押し込まれた水銀の体積に相当する。
【0041】
(4)酸消費量
球状活性炭1.0gを100mLのフラスコに取った後、酸消費量用の塩酸試液50mLを入れて、37±1℃において24時間かけて震とう器を用いて震とうさせた。室温において、フラスコの中身をろ過した後、前記溶液20mLを取って検液とし、0.1mol/Lの水酸化カリウム溶液に滴定した(指示薬:ブロモフェノールブルー試液2滴)。上記と同様の方法で空試験を行い補正した。下記式を用いて酸消費量を計算した。
【0042】
【数1】
A:検液の0.1mol/Lの水酸化カリウムの消費量(mL)
B:空試験液の0.1mol/Lの水酸化カリウムの消費量(mL)
C:検体の量(g)
f:0.1mol/Lの水酸化カリウムのファクター
【0043】
(5)塩基消費量
球状活性炭1.0gを100mLのフラスコに取った後、塩基消費量用の塩酸試液50mLを入れて、37±1℃において24時間かけて震とう器を用いて震とうさせた。室温においてフラスコの中身をろ過した後、前記溶液20mLを取って検液とし、0.1mol/Lの塩酸を用いて滴定した(指示薬:フェノールフタレイン試液2滴)。 上記と同様の方法で空試験を行い補正した。下記式を用いて塩基消費量を計算した。
【0044】
【数2】
A:検液の0.1mol/Lの塩酸消費量(mL)
B:空試験液の0.1mol/Lの塩酸消費量(mL)
C:検体の量(g)
f:0.1mol/Lの塩酸のファクター
【0045】
(6)選択吸着率
選択吸着率は、下記の通り計算する。
【0047】
乾燥させた本発明による多孔性球状活性炭2.5gを100mLのフラスコに取った後、DL−β−アミノイソ酪酸の100mg/Lの濃度のpH7.4のリン酸塩緩衝液50mL(原液)を入れ、37±1℃において200rpmで3時間かけて震とうさせた。フラスコの中身をろ過した後に検液とし、日本薬典の一般試験法の有機体炭素試験法に従い、有機体炭素を測定した後、下記式を用いてDL−β−アミノイソ酪酸の残存濃度を計算した。
【0048】
【数4】
T
t:検液の有機体炭素量
T
s:標準液(原液)の有機体炭素量
【0049】
乾燥させた球状活性炭2.5gを100mLのフラスコに取った後、α−アミラーゼの100mg/Lの濃度のpH7.4のリン酸塩緩衝液50mL(原液)を入れ、37±1℃において200rpmで3時間かけて震とうさせた。フラスコの中身を0.65μmのメンブレンフィルターを用いてろ過して検液とし、pH7.4のリン酸塩緩衝液を対照として、紫外可視部吸光度測定法に従い、波長282nmにおける吸光度を測定した後、下記式を用いてα−アミラーゼの残存濃度を計算した。
【0050】
【数5】
A
t:検液の吸光度
A
s:標準液(原液)の吸光度
【0052】
多孔性活性炭の強度は、圧縮強度器(デジテック社製、AFK−500TE)を用いて下記の通り測定した。
測定しようとする球状活性炭試料1錠を圧縮強度器チップの中間にくるように置いた後、圧縮強度器を20mm/分の速度で下降させ、最初の球状活性炭が破壊される強度を圧縮強度値とした。上記と同様の方法で球状活性炭試料22錠をそれぞれ測定した後、最大値及び最小値を除く20錠の値を平均として圧縮強度値を求めた。
【0053】
発明の実施のための形態
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0054】
実施例1
球状フラン樹脂(株式会社ピュアスフィア社製)100gを金属製試料容器(内容量:1.5L)に収容した後、電気炉を用いて窒素ガス下で500℃の温度において1時間加熱して炭化させた。球状フラン樹脂炭化物をロータリー式外熱炉を用いて、水蒸気下で900℃の温度において140分加熱して活性化させることにより、球状活性炭を製造した。球状活性炭をロータリー式外熱炉を用いて酸素濃度を3vol%に調整した酸素−窒素混合ガス下で470℃の温度において5時間かけて酸化処理した後、窒素ガス下で900℃の温度において15分間還元処理を行って、多孔性球状活性炭を得た。
【0055】
実施例2
実施例1における水蒸気活性化時間を160分とし、それ以外は実施例1と同様にして多孔性球状活性炭を製造した。
【0056】
実施例3
実施例1における水蒸気活性化時間を180分とし、それ以外は実施例1と同様にして多孔性球状活性炭を製造した。
【0057】
実施例4
実施例1における水蒸気活性化時間を180分とし、且つ、炭化温度を450℃において1時間かけて行った以外は、実施例1と同様にして多孔性球状活性炭を製造した。
【0058】
比較例1
球状フラン樹脂100gを金属製試料容器(内容量1.5L)に収容した後、電気炉を用いて窒素ガス下で400℃の温度において1時間加熱して炭化させた。球状フラン樹脂炭化物をロータリー式外熱炉を用いて、水蒸気下で900℃の温度において180分加熱して活性化させることにより、球状活性炭を製造した。球状活性炭をロータリー式外熱炉を用いて酸素濃度を3vol%に調整した酸素−窒素の混合ガス下で470℃の温度において5時間かけて酸化処理した後、窒素ガス下で900℃の温度において15分間還元処理を行って、多孔性球状活性炭を得た。
【0059】
比較例2
球状フェノール樹脂100gを金属製試料容器(内容量1.5L)に収容した後、電気炉を用いて窒素ガス下で450℃の温度において1時間加熱して炭化させた。球状フェノール樹脂炭化物をロータリー式外熱炉を用いて、水蒸気下で900℃の温度において180分間加熱して活性化させることにより、球状活性炭を製造した。球状活性炭をロータリー式外熱炉を用いて酸素濃度を3vol%に調整した酸素−窒素の混合ガス下で470℃の温度において5時間かけて酸化処理した後、窒素ガス下で900℃の温度において15分間還元処理を行って、多孔性球状活性炭を得た。
【0060】
実験例:選択吸着率、インドール吸着力及びインドール吸着速度
実施例及び比較例のインドール吸着力を評価するために、インドールが1.0mg/mLの濃度で含有されているpH7.4のリン酸塩緩衝液900mLに多孔性球状活性炭300mgを投入し、回転数100rpmで3時間かけて溶出試験(溶出器:アジレント社製、708−DS)を行った。なお、選択吸着率は、DL−β−アミノイソ酪酸の除去及びα−アミラーゼの除去能に対する比較を用いて計算した。インドールの吸着速度は、下記のようにして求めるインドールの初期吸着率(%)で示す。
【0062】
本発明の実施例、比較例及び従来の市販品であるクレメジンに対する実験結果を下記表1に示す。
【0064】
上記表から明らかなように、本発明の気孔容積の要件を満たしていないクレメジン及び比較例1〜2は、選択吸着率及びインドール吸着力の両方を同時に満たしていない。なお、ピッチを炭素源とするクレメジン及びフェノール樹脂を炭素源とする比較例2は、多孔性活性炭の圧縮強度が著しく低下するため、固形単位の剤形、例えば、カプセルに充填し難いということが分かった。