特許第6386599号(P6386599)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386599
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】アルファ/ベータチタン合金の処理
(51)【国際特許分類】
   C22F 1/18 20060101AFI20180827BHJP
   C22C 14/00 20060101ALI20180827BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20180827BHJP
【FI】
   C22F1/18 H
   C22C14/00 Z
   !C22F1/00 602
   !C22F1/00 623
   !C22F1/00 624
   !C22F1/00 625
   !C22F1/00 626
   !C22F1/00 630A
   !C22F1/00 630K
   !C22F1/00 682
   !C22F1/00 685A
   !C22F1/00 685Z
   !C22F1/00 683
   !C22F1/00 684C
   !C22F1/00 686A
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 691C
   !C22F1/00 694A
   !C22F1/00 694B
   !C22F1/00 692A
【請求項の数】19
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-10494(P2017-10494)
(22)【出願日】2017年1月24日
(62)【分割の表示】特願2013-520720(P2013-520720)の分割
【原出願日】2011年6月27日
(65)【公開番号】特開2017-128807(P2017-128807A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2017年2月22日
(31)【優先権主張番号】12/838,674
(32)【優先日】2010年7月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501187033
【氏名又は名称】エイティーアイ・プロパティーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン,デヴィッド・ジェイ
【審査官】 河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−501903(JP,A)
【文献】 特開平05−059510(JP,A)
【文献】 特開平03−134124(JP,A)
【文献】 特開平04−103737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/00 − 49/14
C22F 1/00 − 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲温度〜260℃(500°Fの範囲の温度でα+βチタン合金ワークピースを冷間引抜することと、および
371〜649℃(700°F〜1200°Fの範囲の温度で前記冷間引抜したα+βチタン合金ワークピースを直接時効することと、
を含み、前記α+βチタン合金が、質量百分率で2.90〜5.00のアルミニウム、2.00〜3.00のバナジウム、0.40〜2.00の鉄、0.10〜0.30の酸素、残部のチタンおよび不可避的不純物からなりそして前記α+βチタン合金が、周囲温度において、1138MPa(165ksi)超の極限引張強度、1069MPa(155ksi)超の降伏強度、および8%超の伸びを有する、
プロセス。
【請求項2】
20%〜60%の面積低下まで前記α+βチタン合金ワークピースを冷間引抜することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記α+βチタン合金の前記冷間引抜が、少なくとも2つの引抜サイクルを含み、各引抜サイクルが、少なくとも10%の面積低下まで前記α+βチタン合金ワークピースを冷間引抜することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
周囲温度で前記α+βチタン合金ワークピースを冷間引抜することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
427℃〜593℃(800°F〜1100°Fの範囲の温度で前記α+βチタン合金ワークピースを直接時効することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
0.5〜10時間の間、前記α+βチタン合金ワークピースを直接時効することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記α+βチタン合金のβトランザス温度より167℃〜14℃(300°F〜25°F低い範囲の温度で前記α+βチタン合金ワークピースを熱間加工することをさらに含み、前記熱間加工が、前記冷間引抜の前に実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
816℃〜968℃(1500°F〜1775°Fの範囲の温度で前記α+βチタン合金ワークピースを熱間加工することをさらに含み、前記熱間加工が、前記冷間引抜の前に実施される請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
649℃〜816℃(1200°F〜1500°Fの範囲の温度で前記α+βチタン合金を焼鈍することをさらに含み、前記焼鈍が、前記熱間加工と前記冷間引抜との間に実施される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
前記冷間引抜および直接時効が、周囲温度において、1138MPa(165ksi)を超え1379MPa(200ksi)以下の範囲の極限引張強度および8%〜20%の範囲の伸びを有する、ビレット、棒、ロッド、チューブ、スラブ、板、および締結具からなる群から選択されるα+βチタン合金物体を形成する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
α+βチタン合金物体が、1.27cm(0.5インチ超の直径または厚さ、1138MPa(165ksi超の極限引張強度、1069MPa(155ksi超の降伏強度、および12%超の伸びを有する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
周囲温度〜260℃(500°Fの範囲の温度でα+βチタン合金ワークピースを冷間加工することと、および
371〜649℃(700°F〜1200°Fの範囲の温度で前記α+βチタン合金ワークピースを直接時効することと、
を含み、前記α+βチタン合金が、質量百分率で2.90〜5.00のアルミニウム、2.00〜3.00のバナジウム、0.40〜2.00の鉄、0.10〜0.30の酸素、残部のチタンおよび不可避的不純物からなりそして前記α+βチタン合金が、周囲温度において、1138MPa(165ksi)超の極限引張強度、1069MPa(155ksi)超の降伏強度、および8%超の伸びを有する、
プロセス。
【請求項13】
前記α+βチタン合金を冷間加工することが、圧延、鍛造、押出、ピルガー圧延、揺動、および引抜からなる群から選択される少なくとも1つの操作による冷間加工を含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
0.5〜10時間の間、前記α+βチタン合金ワークピースを直接時効することを含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
前記α+βチタン合金のβトランザス温度より167℃〜14℃(300°F〜25°F低い範囲の温度で前記α+βチタン合金ワークピースを熱間加工することをさらに含み、前記熱間加工が、前記冷間加工の前に実施される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項16】
649℃〜816℃(1200°F〜1500°Fの範囲の温度で前記α+βチタン合金を焼鈍することをさらに含み、前記焼鈍が、前記熱間加工と前記冷間加工との間に実施される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記冷間加工及び前記直接の時効が、周囲温度において、1138MPa(165ksi)を超え1379MPa(200ksi)以下の範囲の極限引張強度および8%〜20%の範囲の伸びを有するα+βチタン合金物体を形成し、そして前記α+βチタン合金物体がビレット、棒、ロッド、チューブ、スラブ、板、および締結具からなる群から選択される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項18】
前記α+βチタン合金物体が、1.27cm(0.5インチ超の直径または厚さ、1138MPa(165ksi超の極限引張強度、1069MPa(155ksi超の降伏強度、および12%超の伸びを有する、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
816℃〜968℃(1500°F〜1775°Fの範囲の温度で、α+βチタン合金ワークピースを熱間加工することと、
前記α+βチタン合金ワークピースを649℃〜816℃(1200°F〜1500°Fの温度で焼鈍することと、
20%〜60%の面積低下まで前記α+βチタン合金を周囲温度で冷間加工することと、および
前記冷間加工されたα+βチタン合金ワークピースを427℃〜593℃(800°F〜1100°Fの範囲の温度で直接時効することと、
を含み、前記α+βチタン合金が、質量百分率で2.90〜5.00のアルミニウム、2.00〜3.00のバナジウム、0.40〜2.00の鉄、0.10〜0.30の酸素、残部のチタンおよび不可避的不純物からなりそして前記α+βチタン合金が、周囲温度において、1138MPa(165ksi)超の極限引張強度、1069MPa(155ksi)超の降伏強度、および8%超の伸びを有する、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高強度なアルファ/ベータ(α+β)チタン合金を生成するためのプロセスおよび開示されているプロセスによって生成される生成物を対象とする。
【背景技術】
【0002】
チタンおよびチタン系合金は、これらの材料の比較的高い強度、低い密度、および良好な耐食性に起因して、種々の用途に用いられる。例えば、チタンおよびチタン系合金は、この材料の強度対重量比および耐食性が高いため、航空宇宙産業において広く用いられる。種々の用途において広範に用いられることが知られているチタン合金の一群は、重量基準で6%のアルミニウム、4%のバナジウム、0.20%未満の酸素、およびチタンの組成式を構成するアルファ/ベータ(α+β)Ti−6Al−4V合金である。
【0003】
Ti−6Al−4V合金は、最も一般的なチタン系の製造された材料の1種であり、チタン系材料市場全体の50%超を占めると推定される。Ti−6Al−4V合金は、低温ないし中程度の温度において高強度であり、軽量であり、耐食性であるという合金の組み合わせの利益を享受する数多くの用途で用いられる。例えば、Ti−6Al−4V合金は、航空機エンジンの構成要素、航空機の構造的な構成要素、締結具、高性能の自動車の構成要素、医療デバイス用構成要素、スポーツ用品、海洋用途用構成要素、および化学処理装置用構成要素を生成するのに用いられる。
【0004】
Ti−6Al−4V合金の粉砕生成物は、粉砕焼鈍された状態または溶体化処理および時効された(STA)状態のいずれかで一般に用いられる。比較的低い強度のTi−6Al−4V合金の粉砕生成物は、粉砕焼鈍された状態で提供されてもよい。本明細書に用いられる場合、「粉砕焼鈍された状態」は、ワークピースが高温(例えば、1200〜1500°F/649−816℃)で約1〜8時間焼鈍され、静止空気中で冷却される「粉砕焼鈍」熱処理後のチタン合金の状態を称する。粉砕焼鈍熱処理は、ワークピースがα+β相領域において熱間加工された後に実施される。粉砕焼鈍された状態にあるTi−6Al−4V合金は、室温において、特定された最小の極限引張強度が130ksi(896MPa)であり、特定された最小の降伏強度が120ksi(827MPa)である。例えば、参照により本明細書に組み込まれるAerospace Material Specifications(AMS)4928および6931Aを参照されたい。
【0005】
Ti−6Al−4V合金の強度を増加させるために、該材料は、一般に、STA熱処理に付される。STA熱処理は、ワークピースがα+β相領域において熱間加工された後に一般に実施される。STAは、βトランザス温度(例えば、1725〜1775°F/940〜968℃)未満の高温において比較的短い温度における時間(例えば、約1時間)にわたってワークピースを熱処理し、次いで水または同等の媒体でワークピースを迅速に急冷することを称する。急冷されたワークピースは高温(例えば、900〜1200°F/482〜649℃)で約4〜8時間時効され、静止空気中で冷却される。STA状態にあるTi−6Al−4V合金は、STA処理された物体の直径および厚さ寸法に応じて、室温において、特定された最小の極限引張強度が150〜165ksi(1034〜1138MPa)であり、特定された最小の降伏強度が140〜155ksi(965〜1069MPa)である。例えば、参照により本明細書に組み込まれるAMS4965およびAMS6930Aを参照されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、Ti−6Al−4V合金において高強度を達成するためにSTA熱処理を用いることにおいては数多くの制限がある。例えば、材料の特有の物理的特性およびSTA処理の間の迅速な急冷のための要件が、高強度を達成することができる物体のサイズおよび寸法を制限し、かつ、比較的大きな熱応力、内部応力、反り、および寸法歪みを示す場合がある。本開示は、ある一定のα+βチタン合金を処理して、STA状態にあるTi−6Al−4V合金の特性に匹敵するまたはこれより優れるが、STA処理による制限に悩まされない機械的特性を提供するための方法を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示されている実施形態は、α+βチタン合金から物体を形成するためのプロセスを対象とする。このプロセスは、周囲温度〜500°F(260℃)の範囲の温度でα+βチタン合金を冷間加工することと、冷間加工ステップ後に、700°F〜1200°F(371〜649℃)の範囲の温度でα+βチタン合金を時効することとを含む。α+βチタン合金は、重量百分率で、2.90%〜5.00%のアルミニウム、2.00%〜3.00%のバナジウム、0.40%〜2.00%の鉄、0.10%〜0.30%の酸素、不可避的不純物、およびチタンを含む。
【0008】
本明細書に開示および記載されている発明は、この発明の概要に開示されている実施形態に限定されないことが理解される。
【0009】
本明細書に開示および記載されている種々の非限定的な実施形態の特徴は、添付の図を参照することによってより良好に理解される場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、引抜されたままの状態にある冷間引抜されたα+βチタン合金棒に関する、平均極限引張強度および平均降伏強度対、面積低下の百分率(%RA)として定量化された冷間加工のグラフである。
図2図2は、引抜されたままの状態にある冷間引抜されたα+βチタン合金棒に関する、引張伸び百分率として定量化された平均延性のグラフである。
図3図3は、本明細書に開示されているプロセスの実施形態によって冷間加工され直接時効された後のα+βチタン合金棒に関する、極限引張強度および降伏強度対伸び百分率のグラフである。
図4図4は、本明細書に開示されているプロセスの実施形態によって冷間加工され直接時効された後のα+βチタン合金棒に関する、平均極限引張強度および平均降伏強度対平均伸びのグラフである。
図5図5は、20%の面積低下まで冷間加工し、温度において1時間または8時間時効したα+βチタン合金棒に関する平均極限引張強度および平均降伏強度対時効温度のグラフである。
図6図6は、30%の面積低下まで冷間加工し、温度において1時間または8時間時効したα+βチタン合金棒に関する平均極限引張強度および平均降伏強度対時効温度のグラフである。
図7図7は、40%の面積低下まで冷間加工し、温度において1時間または8時間時効したα+βチタン合金棒に関する平均極限引張強度および平均降伏強度対時効温度のグラフである。
図8図8は、20%の面積低下まで冷間加工し、温度において1時間または8時間時効したα+βチタン合金棒に関する平均伸び対時効温度のグラフである。
図9図9は、30%の面積低下まで冷間加工し、温度において1時間または8時間時効したα+βチタン合金棒に関する平均伸び対時効温度のグラフである。
図10図10は、40%の面積低下まで冷間加工し、温度において1時間または8時間時効したα+βチタン合金棒に関する平均伸び対時効温度のグラフである。
図11図11は、20%の面積低下まで冷間加工し、850°F(454℃)または1100°F(593℃)において時効したα+βチタン合金棒に関する平均極限引張強度および平均降伏強度対時効時間のグラフである。
図12図12は、20%の面積低下まで冷間加工し、850°F(454℃)または1100°F(593℃)において時効したα+βチタン合金棒に関する平均伸び対時効時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
読者は、本開示による種々の非限定的な実施形態の以下の詳細な説明を考慮する際、上記の詳細ならびにその他を理解するであろう。読者は、本明細書に記載されている実施形態を実施および使用する際にさらなる詳細を理解する場合がある。
【0012】
開示されている実施形態の説明は、明確化の目的で他の特徴および特性を排除しながら、開示されている実施形態の明確な理解に関連する特徴および特性のみを説明するために単純化されていることが理解されるべきである。当業者は、開示されている実施形態のこの説明を考慮する際、他の特徴および特性が、開示されている実施形態の特定の実施または適用において望ましい場合があることを認識するであろう。しかし、かかる他の特徴および特性は、開示されている実施形態のこの説明を考慮する際に当業者によって容易に確認および実施されてもよいため、開示されている実施形態の完全な理解に必要ではないことから、かかる特徴、特性などの記載は本明細書において提供されない。そのため、本明細書に記載の説明は、開示されている実施形態の単なる例示および説明であること、ならびに特許請求の範囲によって定義されている発明の範囲を限定することは意図されていないことが理解されるべきである。
【0013】
本開示において、別途指示されていない限り、全ての数値パラメータが、全ての場合において用語「約」によって前置されかつ変更されるとして理解されるべきであり、ここで、数値パラメータは、パラメータの数値を決定するのに用いられる基本的な測定技術の特有の可変的特性を有する。少なくとも、かつ特許請求の範囲の範囲に均等論を適用することを限定することを意図せずに、本説明に記載されている各数値パラメータは、報告されている有効桁数に照らして、および通常の端数処理技法を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。
【0014】
また、本明細書に記載されている任意の数値範囲が、記載されている範囲内に包含される全てのサブ範囲を含むことも意図される。例えば、「1〜10」の範囲は、記載されている最小値の1と記載されている最大値の10と(およびこれらを含む)の間の全てのサブ範囲、すなわち、最小値の1以上と最大値の10以下とを有する全てのサブ範囲を含むことが意図される。本明細書に記載されている任意の最大の数値限界は、その中に包含される全てのより低い数値限界を含むことが意図され、本明細書に記載されている任意の最小の数値限界は、その中に包含される全てのより高い数値限界を含むことが意図される。したがって、出願人は、特許請求の範囲を含めた本開示を補正して、本明細書に明示的に記載されている範囲内に包含される任意のサブ範囲を明示的に記載する権利を保有する。全てのかかる範囲は、任意のかかるサブ範囲を明示的に記載するための補正が米国特許法第112条第1段落および米国特許法第132(a)条の要件を満たすように本明細書内に本質的に開示されることが意図される。
【0015】
文法上の冠詞「1つの(one)」、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、本明細書に用いられる場合、別途指示されない限り「少なくとも1つ」または「1つ以上」を含むことが意図される。したがって、これらの冠詞は、1または1を超える(すなわち、「少なくとも1つの」)、その冠詞の文法上の対象を称するのに本明細書において用いられる。例として、「1つの構成要素(a component)」は、1つ以上の構成要素を意味し、したがって、場合により、1を超える構成要素が企図され、説明されている実施形態の実施において使用されまたは用いられてもよい。
【0016】
本明細書において参照により組み込まれると言及されている任意の特許、出版物、または他の開示材料は、別途指示されない限り、その全体が本明細書に組み込まれるが、組み込まれている材料が、本説明において明示的に記載されている既存の定義、記述または他の開示材料と矛盾しない程度までにおいてのみである。そのため、必要な程度までにおいて、本明細書に記載されている明確な開示は、本明細書において参照により組み込まれるあらゆる矛盾する材料に優先する。本明細書において参照により組み込まれると言及されているが、本明細書に記載されている既存の定義、記述または他の開示材料と矛盾している任意の材料またはその一部は、組み込まれている材料と既存の開示材料との間で矛盾が生じない程度までのみ組み込まれる。出願人は、本開示を補正して、本明細書において参照により組み込まれる任意の対象またはその一部を明示的に記載する権利を保有する。
【0017】
本開示は、種々の実施形態の説明を含む。本明細書に記載されている種々の実施形態は、例示的、説明的、かつ非限定的であることが理解されるべきである。そのため、本開示は、種々の例示的、説明的、かつ非限定的な実施形態の説明により限定される。むしろ、本発明は、本開示において明示的にもしくは本質的に記載されている、または本開示によって別途明示的にもしくは本質的に支持されている任意の特徴または特性を記載するために補正されてもよい、特許請求の範囲によって定義される。さらに、出願人は、特許請求の範囲を補正して、先行技術において存在する場合がある特徴または特性を肯定的に放棄する権利を保有する。したがって、任意のかかる補正は、米国特許法第112条第1段落および米国特許法第132(a)条の要件を満たす。本明細書に開示および説明されている種々の実施形態は、本明細書に様々に記載されている特徴および特性を含む、これらからなる、またはこれらから本質的になることができる。
【0018】
本明細書に開示されている種々の実施形態は、Ti−6Al−4V合金と異なる化学組成を有するα+βチタン合金から物体を形成するための熱機械的プロセスを対象とする。種々の実施形態において、α+βチタン合金は、重量百分率で、2.90〜5.00のアルミニウム、2.00〜3.00のバナジウム、0.40〜2.00の鉄、0.20〜0.30の酸素、不可避的不純物、およびチタンを含む。これらのα+βチタン合金(本明細書において「Kosaka合金」と称される)は、参照により本明細書に組み込まれる、Kosakaへの米国特許第5,980,655号に記載されている。Kosaka合金の工業的な組成式は、重量百分率で、4.00のアルミニウム、2.50のバナジウム、1.50の鉄、0.25の酸素、不可避的不純物、およびチタンから構成され、Ti−4Al−2.5V−1.5Fe−0.25O合金と称されてもよい。
【0019】
米国特許第5,980,655号(「’655特許」)は、Kosaka合金インゴットから板を形成するための、α+β熱機械的処理の使用を記載する。Kosaka合金は、弾道装甲板用途のためのTi−6Al−4V合金の低コストの代替として開発された。’655特許に記載されているα+β熱機械的処理は:
(a)Kosaka合金の組成を有するインゴットを形成することと;
(b)合金のβトランザス温度を超える温度で(例えば、1900°F(1038℃)を超える温度で)インゴットをβ鍛造して中間スラブを形成することと;
(c)合金のβトランザス温度未満の温度であるがα+β相領域において、例えば、1500〜1775°F(815〜968℃)の温度で中間スラブをα+β鍛造することと;
(d)合金のβトランザス温度未満の温度であるがα+β相領域において、例えば、1500〜1775°F(815〜968℃)の温度でスラブを最終板厚までα+β圧延することと;
(e)1300〜1500°F(704〜815℃)の温度で粉砕焼鈍することと
を含む。
【0020】
’655特許に開示されているプロセスに従って形成された板は、Ti−6Al−4V板に匹敵するまたはこれより優れた弾道特性を示した。しかし、’655特許に開示されているプロセスに従って形成された板は、STA処理後のTi−6Al−4V合金によって達成される高い強度未満の室温引張強度を示した。
【0021】
STA状態にあるTi−6Al−4V合金は、室温において、約160〜177ksi(1103〜1220MPa)の極限引張強度および約150〜164ksi(1034〜1131MPa)の降伏強度を示す場合がある。しかし、Ti−6Al−4Vのある一定の物理的特性、例えば、比較的低い熱伝導率に起因して、STA処理を経てTi−6Al−4V合金によって達成することができる極限引張強度および降伏強度は、STA処理を経たTi−6Al−4V合金物体のサイズに依存する。この点に関して、Ti−6Al−4V合金の比較的低い熱伝導率は、STA処理を用いて完全に硬化/強化することができる物体の直径/厚さを限定する、なぜなら、大きな直径または厚い断面の合金物体の内側部分は急冷の間に十分な速度で冷却されず、アルファ−プライム相(α’相)を形成するからである。このようにして、大きな直径または厚い断面のTi−6Al−4V合金のSTA処理は、同レベルの析出硬化を伴わず比較的弱いコアの周囲に析出硬化した表面を有する物体を生成し、これは、物体の全体強度を大幅に低下させる可能性がある。例えば、Ti−6Al−4V合金物体の強度は、約0.5インチ(1.27cm)を超える小寸法(例えば、直径または厚さ)を有する物体では低下し始め、STA処理は、約3インチ(7.62cm)を超える小寸法を有するTi−6Al−4V合金物体にはいかなる利益も提供しない。
【0022】
STA状態にあるTi−6Al−4V合金の引張強度のサイズ依存性は、AMS6930Aなどの材料仕様書では、物体サイズの増加に相当する強度最小値の低下において明らかであり、ここで、STA状態にあるTi−6Al−4V合金に関する最大の強度最小値は、0.5インチ(1.27cm)未満の直径または厚さを有する物体に相当する。例えば、AMS6930Aでは、STA状態にある、0.5インチ(1.27cm)未満の直径または厚さを有するTi−6Al−4V合金物体に関して、最小の極限引張強度が165ksi(1138MPa)であり、最小の降伏強度が155ksi(1069MPa)であると特定されている。
【0023】
さらに、STA処理は、比較的大きな熱応力および内部応力を誘発する場合があり、急冷ステップの間にチタン合金物体の反りを引き起こす場合がある。これらの制限にもかかわらず、STA処理は、Ti−6Al−4V合金において高強度を達成する標準的な方法である、なぜなら、Ti−6Al−4V合金は、一般に冷間変形可能ではなく、そのため、効果的に冷間加工して強度を増加させることができないからである。理論によって拘束されることを意図しないが、冷間変形可能性/加工可能性の欠如は、Ti−6Al−4V合金におけるすべり帯現象に起因すると一般に考えられている。
【0024】
Ti−6Al−4V合金のアルファ相(α相)は、コヒーレントなTiAl(アルファ2)粒子を析出させる。これらのコヒーレントなアルファ2(α)析出物は合金の強度を増加させるが、コヒーレントな析出物は、塑性変形の間の可動転位によってせん断されるため、析出物は、合金のマイクロ構造内で、顕著で平面的なすべり帯の形成を結果としてもたらす。さらに、Ti−6Al−4V合金結晶は、アルミニウムおよび酸素原子の短距離秩序の局所領域、すなわち、結晶構造内のアルミニウムおよび酸素原子の均一な分布からの局所偏向を形成することが示されている。エントロピーが低下したこれらの局所領域は、Ti−6Al−4V合金のマイクロ構造内で、顕著で平面的なすべり帯の形成を促進することが示されている。Ti−6Al−4V合金内のこれらのマイクロ構造および熱力学特徴の存在は、すべり転位の絡み合いを引き起す場合がある、または他の場合には、転位が変形の間にすべることを防止する場合がある。これが起こると、すべりは、すべり帯と称される、合金における顕著な平面領域に局在する。すべり帯は、延性の損失、亀裂核形成、および亀裂伝播を引き起こし、これにより、冷間加工の間にTi−6Al−4V合金の破壊に至る。
【0025】
結果として、Ti−6Al−4V合金は、一般にαソルバス温度を超える高温で一般に加工される(例えば、鍛造され、圧延され、引抜され、などする)。Ti−6Al−4V合金は、効率的に冷間加工されて強度を増加させることはできない、なぜなら、冷間変形の間に亀裂(すなわち、ワークピース欠陥)が多発するからである。しかし、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2004/0221929号に記載されているように、Kosaka合金が、相当な程度の冷間変形可能性/加工可能性を有することが予想外にも発見された。
【0026】
Kosaka合金は、冷間加工の間にすべり帯を示さず、したがって、Ti−6Al−4V合金と比べて、冷間加工の間に示される亀裂が大幅に少ないことが判明した。理論によって拘束されることを意図しないが、Kosaka合金におけるすべり帯の欠失は、アルミニウムおよび酸素の短距離秩序の最小化に起因し得ると考えられる。加えて、α相の安定度は、α相のソルバス温度(米国ウィスコンシン州マディソンのCompuTherm LLCのPandatソフトウェアを用いて求めると、Ti−6Al−4V(最大0.15重量%の酸素)では1305°F/707℃、Ti−4Al−2.5V−1.5Fe−0.25Oでは1062°F/572℃)の平衡モデルによって実証されているように、Kosaka合金では、例えばTi−6Al−4Vと比較して低い。結果として、Kosaka合金は、冷間加工されて、高強度を達成し、加工可能なレベルの延性を保持する場合がある。加えて、Kosaka合金は、冷間加工および時効されて、冷間加工のみに対して向上された強度および向上された延性を達成することができることが見出された。このように、Kosaka合金は、STA処理を必要とせず、該処理の制限も無いが、STA状態にあるTi−6Al−4V合金に匹敵するまたはこれより優れた強度および延性を達成することができる。
【0027】
一般に、「冷間加工」は、材料の流動応力が大幅に減少する温度未満の温度で合金を加工することを称する。開示されているプロセスと関連して本明細書において用いられるとき、「冷間加工」、「冷間加工された」、「冷間形成」などの用語、または特定の加工または形成技術と関連して用いられる「冷間」は、表面が約500°F(260℃)以下の温度である場合があるときに加工することまたは加工された特性を称する。したがって、例えば、周囲温度〜500°F(260℃)の範囲の温度でKosaka合金のワークピースにおいて実施される引抜操作は、冷間加工すると本明細書においてみなされる。また、用語「加工する」、「形成する」、および「変形する」は、一般に、用語「加工可能性」、「形成可能性」、「変形可能性」などの用語であるのと交換可能に本明細書において用いられる。本出願に関連して「冷間加工」、「冷間加工された」、「冷間形成」などの用語に適用される意味は、他の文脈においてまたは他の発明と関連してこれらの用語の意味を限定することを意図していないことおよび限定しないことが理解されよう。
【0028】
種々の実施形態において、本明細書に開示されているプロセスは、周囲温度から最大で500°F(260℃)の範囲の温度でα+βチタン合金を冷間加工することを含んでもよい。冷間加工操作の後に、α+βチタン合金は、700°F〜1200°F(371〜649℃)の範囲の温度で時効されてもよい。
【0029】
機械的操作、例えば、冷間引抜パスなどが、特定された温度においてまたは特定された温度範囲内で行われ、実施されるなどとして本明細書に記載されているとき、機械的操作は、機械的操作の開始時に特定された温度におけるまたは特定された温度範囲内にあるワークピースにおいて実施される。機械的操作の過程の間に、ワークピースの温度は、機械的操作の開始時にワークピースの初期温度から変動する場合がある。例えば、ワークピースの温度は、断熱加熱に起因して上昇してもよく、あるいは、加工操作の間の伝導、対流、および/または放射冷却に起因にして低下してもよい。機械的操作の開始時の初期温度からの温度変動の規模および方向は、種々のパラメータ、例えば、ワークピース上に実施される加工のレベル、加工が実施されるステイン速度、機械的操作の開始時のワークピースの初期温度、および周辺環境の温度などに依存する場合がある。
【0030】
時効熱処理などの熱操作が、特定された温度で特定された期間にわたってまたは特定された温度範囲および時間範囲内で行われるとして本明細書に記載されているとき、この操作は、温度においてワークピースを維持しながら特定された時間の間実施される。時効熱処理などの熱操作に関して本明細書に記載されている期間は、例えば、ワークピースのサイズおよび形状に依存する場合がある、加熱および冷却時間を含まない。
【0031】
種々の実施形態において、α+βチタン合金は、周囲温度〜最高で500°F(260℃)の範囲、または、例えば、周囲温度〜450°F(232℃)、周囲温度〜400°F(204℃)、周囲温度〜350°F(177℃)、周囲温度〜300°F(149℃)、周囲温度〜250°F(121℃)、周囲温度〜200°F(93℃)、もしくは周囲温度〜150°F(65℃)などのその中の任意のサブ範囲の温度で冷間加工されてもよい。種々の実施形態において、α+βチタン合金は、周囲温度で冷間加工される。
【0032】
種々の実施形態において、α+βチタン合金の冷間加工は、引抜、深絞り、圧延、ロールフォーミング、鍛造、押出、ピルガ、揺動、流動回転、せん断スピン、液圧成形、バルジ成形、加締、衝撃押出、爆発成形、ゴム成形、後方押出、穿孔、スピン、張り出し成形、プレス曲げ、電磁成形、圧造、圧搾、およびこれらの任意の組み合わせを含むが、必ずしも限定されない形成技術を用いて実施されてもよい。本明細書に開示されているプロセスの観点において、これらの形成技術は、500°F(260℃)以下の温度で実施されるとき、α+βチタン合金に冷間加工を付与する。
【0033】
種々の実施形態において、α+βチタン合金は、20%〜60%の面積低下まで冷間加工されてもよい。例えば、α+βチタン合金ワークピース、例えば、インゴット、ビレット、棒、ロッド、チューブ、スラブ、または板などは、例えば、冷間引抜、冷間圧延、冷間押出、または冷間鍛造操作において塑性的に変形されてもよく、その結果、ワークピースの断面積は、20%〜60%の範囲の百分率で低下する。円筒形のワークピース、例えば、丸形インゴット、ビレット、棒、ロッド、およびチューブなどでは、面積低下は、引抜ダイ、押出ダイなどを経てワークピースの移動方向に一般に垂直である、ワークピースの円形または環状の断面について測定される。同様に、圧延されたワークピースの面積低下は、圧延装置などの圧延を経てワークピースの移動方向に一般に垂直であるワークピースの断面について測定される。
【0034】
種々の実施形態において、α+βチタン合金は、20%〜60%の面積低下まで、または例えば、30%〜60%、40%〜60%、50%〜60%、20%〜50%、20%〜40%、20%〜30%、30%〜50%、30%〜40%、もしくは40%〜50%などのその中の任意のサブ範囲まで冷間加工されてもよい。α+βチタン合金は、観察可能なエッジ亀裂または他の表面亀裂を伴わずに20%〜60%の面積低下まで冷間加工される場合がある。冷間加工は、いかなる中間の応力緩和焼鈍も無しで実施されてもよい。このようにして、本明細書に開示されているプロセスの種々の実施形態は、逐次的な冷間加工操作、例えば、冷間引抜装置を通る2つ以上のパスなどの間にいかなる中間の応力緩和焼鈍も伴わずに最大で60%の面積低下を達成することができる。
【0035】
種々の実施形態において、冷間加工操作は、少なくとも2つの変形サイクルを含んでもよく、ここで、各変形サイクルは、少なくとも10%の面積低下までα+βチタン合金を冷間加工することを含む。種々の実施形態において、冷間加工操作は、少なくとも2つの変形サイクルを含んでもよく、ここで、各変形サイクルは、少なくとも20%の面積低下までα+βチタン合金を冷間加工することを含む。少なくとも2つの変形サイクルは、いかなる中間の応力緩和焼鈍も伴わずに最大で60%の面積低下を達成することができる。
【0036】
例えば、冷間引抜操作において、棒は、20%超の面積低下まで周囲温度で第1引抜パスにおいて冷間引抜されてもよい。20%超の冷間引抜棒は、次いで、20%超の第2の面積低下に至るまで周囲温度で第2引抜パスにおいて冷間引抜されてもよい。2つの冷間引抜パスは、2つのパスの間のいかなる中間の応力緩和焼鈍も伴わずに実施されてもよい。このようにして、α+βチタン合金は、少なくとも2つの変形サイクルを用いて冷間加工されて、全体としてより大きな面積低下を達成することができる。冷間加工操作の所与の実施において、α+βチタン合金の冷間変形に必要とされる力は、例えば、ワークピースのサイズおよび形状、合金材料の降伏強度、変形の程度(例えば、面積低下)、ならびに特定の冷間加工技術を含めたパラメータに依存する。
【0037】
種々の実施形態において、冷間加工操作後、冷間加工されたα+βチタン合金は、700°F〜1200°F(371〜649℃)の範囲、または、例えば、800°F〜1150°F、850°F〜1150°F、800°F〜1100°F、もしくは850°F〜1100°F(すなわち、427〜621℃、454〜621℃、427〜593℃、もしくは454〜593℃)などのその中の任意のサブ範囲の温度で時効されてもよい。時効熱処理は、例えば、特定された極限引張強度、特定された降伏強度、および/または特定された伸びなどの機械的特性の特定された組み合わせを提供するのに十分な温度および時間で実施されてもよい。種々の実施形態において、時効熱処理は、例えば、温度において最大で50時間まで実施されてもよい。種々の実施形態において、時効熱処理は、温度において0.5〜10時間、または温度において例えば1〜8時間などのその中の任意のサブ範囲で実施されてもよい。時効熱処理は、温度制御された炉、例えば、オープンエア型のガス炉などにおいて実施されてもよい。
【0038】
種々の実施形態において、本明細書に開示されているプロセスは、冷間加工操作の前に実施される熱間加工操作をさらに含んでもよい。熱間加工操作は、α+β相領域において実施されてもよい。例えば、熱間加工操作は、α+βチタン合金のβトランザス温度より300°F〜25°F(167〜15℃)低い範囲の温度で実施されてもよい。一般に、Kosaka合金は、約1765°F〜1800°F(963〜982℃)のβトランザス温度を有する。種々の実施形態において、α+βチタン合金は、1500°F〜1775°F(815〜968℃)の範囲、または、例えば、1600°F〜1775°F、1600°F〜1750°F、もしくは1600°F〜1700°F(すなわち、871〜968℃、871〜954℃、もしくは871〜927℃)などのその中の任意のサブ範囲の温度で熱間加工されてもよい。
【0039】
冷間加工操作の前に熱間加工操作を含む実施形態において、本明細書に開示されているプロセスは、熱間加工操作と冷間加工操作との間に任意選択の焼鈍または応力除去熱処理をさらに含んでもよい。熱間加工されたα+βチタン合金は、1200°F〜1500°F(649〜815℃)の範囲、または例えば、1200°F〜1400°Fもしくは1250°F〜1300°F(すなわち、649〜760℃もしくは677〜704℃)などのその中の任意のサブ範囲の温度で焼鈍されてもよい。
【0040】
種々の実施形態において、本明細書に開示されているプロセスは、α+β相領域において実施される熱間加工操作の前にβ相領域において実施される任意選択の熱間加工操作を含んでもよい。例えば、チタン合金インゴットは、β相領域において熱間加工されて、中間物体を形成してもよい。中間物体は、α+β相領域において熱間加工されて、α+β相マイクロ構造を発生してもよい。熱間加工後、中間物体は、応力除去焼鈍され、次いで周囲温度〜500°F(260℃)の範囲の温度で冷間加工されてもよい。冷間加工された物体は、700°F〜1200°F(371〜649℃)の範囲の温度で時効されてもよい。β相領域における任意選択の熱間加工は、合金のβトランザス温度を超える温度で、例えば、1800°F〜2300°F(982〜1260℃)の範囲、または例えば、1900°F〜2300°Fもしくは1900°F〜2100°F(すなわち、1038〜1260℃もしくは1038〜1149℃)などのその中の任意のサブ範囲の温度で実施される。
【0041】
種々の実施形態において、本明細書に開示されているプロセスは、周囲温度において、155ksi〜200ksi(1069〜1379MPa)の範囲の極限引張強度および8%〜20%の範囲の伸びを有するα+βチタン合金物体の形成によって特徴付けられてもよい。また、種々の実施形態において、本明細書に開示されているプロセスは、周囲温度において、160ksi〜180ksi(1103〜1241MPa)の範囲の極限引張強度および8%〜20%の範囲の伸びを有するα+βチタン合金物体の形成により特徴付けられていてもよい。さらに、種々の実施形態において、本明細書に開示されているプロセスは、周囲温度において、165ksi〜180ksi(1138〜1241MPa)の範囲の極限引張強度および8%〜17%の伸びを有するα+βチタン合金物体の形成により特徴付けられていてもよい。
【0042】
種々の実施形態において、本明細書に開示されているプロセスは、周囲温度において、140ksi〜165ksi(965〜1138MPa)の範囲の降伏強度および8%〜20%の伸びを有するα+βチタン合金物体の形成により特徴付けられていてもよい。加えて、種々の実施形態において、本明細書に開示されているプロセスは、周囲温度において、155ksi〜165ksi(1069〜1138MPa)の範囲の降伏強度および8%〜15%の伸びを有するα+βチタン合金物体の形成により特徴付けられていてもよい。
【0043】
種々の実施形態において、本明細書に開示されているプロセスは、周囲温度において、155ksi〜200ksi(1069〜1379MPa)の範囲内に包含される任意のサブ範囲の極限引張強度、140ksi〜165ksi(965〜1138MPa)の範囲内に包含される任意のサブ範囲の降伏強度、および8%〜20%の範囲内に包含される任意のサブ範囲の伸びを有するα+βチタン合金物体の形成により特徴付けられていてもよい。
【0044】
種々の実施形態において、本明細書に開示されているプロセスは、周囲温度において、155ksi超の極限引張強度、140ksi超の降伏強度、および8%超の伸びを有するα+βチタン合金物体の形成により特徴付けられていてもよい。種々の実施形態に従って形成するα+βチタン合金物体は、周囲温度において、166ksi超、175ksi超、185ksi超、または195ksi超の極限引張強度を有してもよい。種々の実施形態に従って形成するα+βチタン合金物体は、周囲温度において、145ksi超、155ksi超、または160ksi超の降伏強度を有してもよい。種々の実施形態に従って形成するα+βチタン合金物体は、周囲温度において、8%超、10%超、12%超、14%超、16%超、または18%超の伸びを有してもよい。
【0045】
種々の実施形態において、本明細書に開示されているプロセスは周囲温度における極限引張強度、降伏強度、および伸びを有するα+βチタン合金物体の形成により特徴付けられていてもよくこの極限引張強度、降伏強度、および伸びは、溶体化処理および時効された(STA)状態にあるTi−6Al−4V合金からなる、ということ以外は同一の物体の周囲温度における極限引張強度、降伏強度、および伸びと少なくとも同じ大きさである。
【0046】
種々の実施形態において、本明細書に開示されているプロセスは、重量百分率で、2.90%〜5.00%のアルミニウム、2.00%〜3.00%のバナジウム、0.40%〜2.00%の鉄、0.10%〜0.30%の酸素、および不可避的元素、およびチタンを含む、これらからなる、またはこれらから本質的になるα+βチタン合金を熱機械的に処理するのに用いられてもよい。
【0047】
本明細書に開示されているプロセスに従って熱機械的に処理されたα+βチタン合金中のアルミニウム濃度は、2.90〜5.00重量%の範囲内、または例えば、3.00%〜5.00%、3.50%〜4.50%、3.70%〜4.30%、3.75%〜4.25%、もしくは3.90%〜4.50%などのその中の任意のサブ範囲内にあってもよい。本明細書に開示されているプロセスに従って熱機械的に処理されたα+βチタン合金中のバナジウム濃度は、2.00〜3.00重量%の範囲内、または例えば、2.20%〜3.00%、2.20%〜2.80%、もしくは2.30%〜2.70%などのその中の任意のサブ範囲内にあってもよい。本明細書に開示されているプロセスに従って熱機械的に処理されたα+βチタン合金中の鉄濃度は、0.40〜2.00重量%の範囲内、または例えば、0.50%〜2.00%、1.00%〜2.00%、1.20%〜1.80%、もしくは1.30%〜1.70%などのその中の任意のサブ範囲内にあってもよい。本明細書に開示されているプロセスに従って熱機械的に処理されたα+βチタン合金中の酸素濃度は、0.10〜0.30重量%の範囲内、または例えば、0.15%〜0.30%、0.10%〜0.20%、0.10%〜0.15%、0.18%〜0.28%、0.20%〜0.30%、0.22%〜0.28%、0.24%〜0.30%、もしくは0.23%〜0.27%などのその中の任意のサブ範囲内にあってもよい。
【0048】
種々の実施形態において、本明細書に開示されているプロセスは、4.00重量%のアルミニウム、2.50重量%のバナジウム、1.50重量%の鉄、および0.25重量%の酸素、チタン、および不可避的不純物の組成式(Ti−4Al−2.5V−1.5Fe−0.25O)を含む、これらからなる、またはこれらから本質的になるα+βチタン合金を熱機械的に処理するのに用いられてもよい。組成式Ti−4Al−2.5V−1.5Fe−0.25Oを有するα+βチタン合金は、Allegheny Technologies IncorporatedからATI 425(登録商標)合金として市販されている。
【0049】
種々の実施形態において、本明細書に開示されているプロセスは、チタン、アルミニウム、バナジウム、鉄、酸素、不可避的不純物、および0.50重量%未満のいずれかの他の意図的な合金用の元素を含む、これらからなる、またはこれらから本質的になるα+βチタン合金を熱機械的に処理するのに用いられてもよい。種々の実施形態において、本明細書に開示されているプロセスは、チタン、アルミニウム、バナジウム、鉄、酸素、ならびに0.50重量%未満の、意図的な合金用の元素を含めた任意の他の元素、および不可避的不純物を含む、これらからなる、またはこれらから本質的になるα+βチタン合金を熱機械的に処理するのに用いられてもよい。種々の実施形態において、チタン、アルミニウム、バナジウム、鉄、および酸素以外の全ての元素(不可避的不純物および/または意図的な合金用添加物)の最大レベルは、0.40重量%、0.30重量%、0.25重量%、0.20重量%、または0.10重量%であってもよい。
【0050】
種々の実施形態において、本明細書に記載されているように処理されたα+βチタン合金は、参照により本明細書に組み込まれ、表1において提供されている組成(重量百分率)を特定するAMS6946A、セクション3.1に従った組成を含んでも、これから本質的になっても、これからなってもよい。
【表1】
【0051】
種々の実施形態において、本明細書に記載されているように処理されたα+βチタン合金は、チタン、アルミニウム、バナジウム、鉄、および酸素以外の種々の元素を含んでもよい。例えば、かかる他の元素、およびこれらの重量百分率は、以下、すなわち(a)クロム、最大0.10%、一般に0.0001%〜0.05%、もしくは最大で約0.03%、(b)ニッケル、最大0.10%、一般に0.001%〜0.05%、もしくは最大で約0.02%、(c)モリブデン、最大0.10%、(d)ジルコニウム、最大0.10%、(e)スズ、最大0.10%、(f)炭素、最大0.10%、一般に0.005%〜0.03%、もしくは最大で約0.01%、および/または(g)窒素、最大0.10%、一般に0.001%〜0.02%、もしくは最大で約0.01%のうちの1つ以上を含んでもよいが、これらに必ずしも限定されない。
【0052】
本明細書に開示されているプロセスは、例えば、ビレット、棒、ロッド、ワイヤ、チューブ、パイプ、スラブ、板、構造部材、締結具、リベットなどの物体を形成するのに用いられてもよい。種々の実施形態において、本明細書に開示されているプロセスは、周囲温度において、155ksi〜200ksi(1069〜1379MPa)の範囲の極限引張強度、140ksi〜165ksi(965〜1138MPa)の範囲の降伏強度および8%〜20%の範囲の伸びを有し、0.5インチ超、1.0インチ超、2.0インチ超、3.0インチ超、4.0インチ超、5.0インチ超、または10.0インチ超(すなわち、1.27cm、2.54cm、5.08cm、7.62cm、10.16cm、12.70cm、または24.50cm超)の最小寸法(例えば、直径または厚さ)を有する物体を生成する。
【0053】
さらに、本明細書に開示されているプロセスの実施形態の種々の利点の1つは、高強度のα+βチタン合金物体を、STA処理の特有の制限であるサイズ制限を伴わずに形成することができることである。結果として、本明細書に開示されているプロセスは、物体の小寸法(例えば、直径または厚さ)の最大値における特有の制限を伴わずに、周囲温度において、165ksi(1138MPa)超の極限引張強度、155ksi(1069MPa)超の降伏強度、および8%超の伸びを有する物体を生成することができる。したがって、最大サイズの制限は、本明細書に開示されている実施形態に従って冷間加工を実施するのに用いられる冷間加工装置のサイズ制限によってのみ押し進められる。対照的に、STA処理は、室温で少なくとも165ksi(1138MPa)の極限引張強度および少なくとも155ksi(1069MPa)の降伏強度を示すTi−6Al−4V物体に対して高強度を達成することができる物体の小寸法の最大値について特有の限界、例えば最大0.5インチ(1.27cm)を置く。AMS6930Aを参照されたい。
【0054】
加えて、本明細書に開示されているプロセスは、低いまたはゼロの熱応力と、STA処理を用いて生成される高強度の物体よりも良好な寸法公差とを有して、高強度を有するα+βチタン合金物体を生成することができる。本明細書に開示されているプロセスによる冷間引抜および直接時効は、α+βチタン合金物体のSTA処理によって生じることが知られている、問題となる内部熱応力をもたらさず、物体の反りを引き起こさず、物体の寸法歪みを引き起こさない。
【0055】
本明細書に開示されているプロセスはまた、冷間加工のレベルおよび時効処理の時間/温度に応じて広範囲内にある機械的特性を有するα+βチタン合金物体を形成するのにも用いられてもよい。種々の実施形態において、極限引張強度は、約155ksi〜180ksi超(約1069MPa〜1241MPa超)の範囲であってもよく、降伏強度は、約140ksi〜約163ksi(965〜1124MPa)の範囲であってもよく、伸びは、約8%〜19%超の範囲であってもよい。異なる機械的特性は、冷間加工および時効処理の異なる組み合わせによって達成することができる。種々の実施形態において、より高いレベルの冷間加工(例えば、低下)は、より高い強度およびより低い延性に相関する場合がある一方で、より高い時効温度は、より低い強度およびより高い延性に相関する場合がある。このようにして、冷間加工および時効サイクルは、α+βチタン合金物体において制御された再現可能なレベルの強度および延性を達成するように、本明細書に開示されている実施形態に従って特定されてもよい。これにより、調整可能な機械的特性を有するα+βチタン合金物体の生成を可能にする。
【0056】
以下に続く説明的かつ非限定的な例は、実施形態の範囲を制限することなく、種々の非限定的な実施形態をさらに記載することが意図される。当業者は、実施例の変形が、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にある可能性があることを認識するだろう。
実施例
実施例1
【0057】
表2に提示した平均化学組成を有する(不可避的不純物を除く)、2種の異なる加熱による合金の直径5.0インチの円筒形ビレットを1600°F(871℃)の温度でα+β相領域において熱間圧延して、直径1.0インチの丸棒を形成した。
【表2】
【0058】
1.0インチの丸棒を1275°Fの温度で1時間焼鈍し、周囲温度まで空冷した。焼鈍された棒を、引抜操作を用いて周囲温度で冷間加工し、棒の直径を低減させた。冷間引抜操作の間に棒において実施した冷間加工の量を、冷間引抜の間の丸棒の円形断面積の百分率低下として定量化した。達成された冷間加工の百分率は、20%、30%、または40%の面積低下(RA)であった。引抜操作を、中間焼鈍を伴わずに、20%の面積低下では単一の引抜パスを用いて、30%および40%の面積低下では2つの引抜パスを用いて実施した。
【0059】
極限引張強度(UTS)、降伏強度(YS)、および伸び(%)を、各冷間引抜棒(20%、30%、および40%のRA)について、ならびに冷間引抜されていない(0%RA)直径1インチの棒について周囲温度で測定した。平均結果を表3ならびに図1および図2に提示する。
【表3】
【0060】
極限引張強度は、概して、冷間加工レベルの増加に伴って増加したが、伸びは、概して、最大で約20〜30%の冷間加工までの冷間加工レベルの増加に伴って減少した。30%および40%まで冷間加工された合金は、極限引張強度が180ksiを超えて190ksiに近づきつつ、約8%の伸びを保持した。30%および40%まで冷間加工された合金はまた、150ksi〜170ksiの範囲の降伏強度も示した。
実施例2
【0061】
表1に提示した加熱X(βトランザス温度:1790°F)の平均化学組成を有する直径5インチの円筒形ビレットを、実施例1に記載のように熱機械的に処理し、百分率が20%、30%、または40%の面積低下の冷間加工百分率を有する丸棒を形成した。冷間引抜後、棒を、表4に提示した時効サイクルの1つを用いて直接時効し、続いて周囲温度まで空冷した。
【表4】
【0062】
極限引張強度、降伏強度、および伸びを、冷間引抜され時効された各棒について周囲温度で測定した。生のデータを図3に提示し、平均化したデータを図4および表5に提示する。
【表5】
【0063】
冷間引抜され時効された合金は、冷間加工レベルおよび時効処理の時間/温度サイクルに応じて様々な範囲の機械的特性を示した。極限引張強度は、約155ksi〜180ksi超の範囲であった。降伏強度は、約140ksi〜約163ksiの範囲であった。伸びは、約11%〜19%超の範囲であった。したがって、異なる機械的特性は、冷間加工レベルおよび時効処理の異なる組み合わせによって達成することができる。
【0064】
より高いレベルの冷間加工は、概して、より高い強度およびより低い延性に相関した。より高い時効温度は、概して、より低い強度に相関した。これを、面積低下がそれぞれ20%、30%、および40%の冷間加工百分率の、強度(平均UTSおよび平均YS)対温度のグラフである図5図6、および図7に示す。より高い時効温度は、概して、より高い延性と相関した。これを、面積低下がそれぞれ20%、30%、および40%の冷間加工百分率の、平均伸び対温度のグラフである図8図9、および図10に示す。時効処理の継続時間は、面積低下が20%の冷間加工百分率のそれぞれ強度対時間および伸び対時間のグラフである図11および図12に図示されているように、機械的特性に有意な影響を及ぼしているようには見えない。
実施例3
【0065】
表1に提示した加熱Xの化学組成を有し、直径0.75インチであり、実施例1および例2に記載のように処理され、引抜操作の間の面積低下が40%までである冷間引抜された丸棒を、NASM1312−13(参照により本明細書に組み込まれるAerospace Industries Association、2003年2月1日)に従って二面せん断試験に付した。二面せん断試験は、高強度の締結具ストックの製造のための、合金化学と熱機械的処理との組み合わせの適用の評価を提供する。丸棒の第1セットを引抜したままの状態で試験し、丸棒の第2セットを、850°Fで1時間時効処理し、周囲温度(850/1/AC)まで空冷した後に試験した。二面せん断強度の結果を極限引張強度、降伏強度、および伸びの平均値と共に表5に提示する。比較目的で、Ti−6Al−4V締結具ストックのこれらの機械的特性に関して特定された最小値も表6に提示する。
【表6】
【0066】
冷間引抜され時効された合金は、Ti−6Al−4V締結具ストック用途に関して特定された最小値よりも優れた機械的特性を示した。そのため、本明細書に開示されているプロセスは、STA処理を用いてTi−6Al−4V物体の生成に対して、より効果的な代替を提案することができる。
【0067】
本明細書に開示されている種々の実施形態に従って、重量百分率で、2.90〜5.00のアルミニウム、2.00〜3.00のバナジウム、0.40〜2.00の鉄、0.10〜0.30の酸素、およびチタンを含むα+βチタン合金の冷間加工および時効は、例えば、一般の航空宇宙用途および締結具用途を含めた種々の用途に関して、Ti−6Al−4V合金の特定された最小の機械的特性を超える機械的特性を有する合金物体を生成する。先に記述したように、Ti−6Al−4V合金は、例えば、航空宇宙用途などの重要な用途のために要求される必要な強度を達成するには、STA処理を必要とする。そのため、高強度のTi−6Al−4V合金は、材料の特有の物理的特性およびSTA処理の間の迅速な急冷のための要件に起因して、物体のサイズが制限される。対照的に、高強度の、冷間加工され時効されたα+βチタン合金は、本明細書に記載されているように、物体のサイズおよび寸法の点において限定されない。さらに、高強度の、冷間加工され時効されたα+βチタン合金は、本明細書に記載されているように、STA処理の間の、より厚い断面のTi−6Al−4V合金物体の特性である場合がある大きな熱応力および内部応力または反りを経験しない。
【0068】
本開示を、種々の例示的、説明的、かつ非限定的な実施形態を参照して記述した。しかし、開示されている実施形態(またはその一部)のいずれかの種々の置換、変更または組み合わせが本発明の範囲から逸脱することなくなされてもよいことが当業者によって認識されるだろう。したがって、本開示が、本明細書に明示的に記載されていないさらなる実施形態を包含することが企図および理解される。かかる実施形態は、例えば、本明細書に記載されている実施形態の開示されているステップ、構成要素、要素、特徴、態様、特性、限定などのいずれかを組み合わせ、変更し、または再構成することによって得られてもよい。この点に関して、出願人は、手続き処理の間に特許請求の範囲を補正して本明細書に様々に記載されている特徴を添加する権利を保有する。
[発明の態様]
[1]
α+βチタン合金から物体を形成するためのプロセスであって、
周囲温度〜500°Fの範囲の温度で前記α+βチタン合金を冷間加工することと、
前記冷間加工後に700°F〜1200°Fの範囲の温度で前記α+βチタン合金を時効することと、
を含み、前記α+βチタン合金が、重量百分率で2.90〜5.00のアルミニウム、2.00〜3.00のバナジウム、0.40〜2.00の鉄、0.10〜0.30の酸素、チタン、および不可避的不純物を含む、プロセス。
[2]
前記冷間加工および時効が、周囲温度において、155ksi〜200ksiの範囲の極限引張強度および8%〜20%の範囲の伸びを有するα+βチタン合金物体を形成する、1に記載のプロセス。
[3]
前記冷間加工および時効が、周囲温度において、165ksi〜180ksiの範囲の極限引張強度および8%〜17%の範囲の伸びを有するα+βチタン合金物体を形成する、1に記載のプロセス。
[4]
前記冷間加工および時効が、周囲温度において、140ksi〜165ksiの範囲の降伏強度および82%〜20%の範囲の伸びを有するα+βチタン合金物体を形成する、1に記載のプロセス。
[5]
前記冷間加工および時効が、周囲温度において、155ksi〜165ksiの範囲の降伏強度および8%〜15%の伸びを有するα+βチタン合金物体を形成する、1に記載のプロセス。
[6]
前記冷間加工および時効が、溶液処理および時効された状態にあるTi−6Al−4V合金からなる、それ以外は同一の物体の周囲温度における極限引張強度、降伏強度、および伸びと少なくとも同じ大きさである、周囲温度における極限引張強度、降伏強度、および伸びを有するα+βチタン合金物体を形成する、1に記載のプロセス。
[7]
20%〜60%の面積低下まで前記α+βチタン合金を冷間加工することを含む、1に記載のプロセス。
[8]
20%〜40%の面積低下まで前記α+βチタン合金を冷間加工することを含む、1に記載のプロセス。
[9]
前記α+βチタン合金の前記冷間加工が、少なくとも2つの変形サイクルを含み、各サイクルが、少なくとも10%の面積低下まで前記α+βチタン合金を冷間加工することを含む、1に記載のプロセス。
[10]
前記α+βチタン合金の前記冷間加工が、少なくとも2つの変形サイクルを含み、各サイクルが、少なくとも20%の面積低下まで前記α+βチタン合金を冷間加工することを含む、1に記載のプロセス。
[11]
周囲温度〜400°Fの範囲の温度で前記α+βチタン合金を冷間加工することを含む、1に記載のプロセス。
[12]
周囲温度で前記α+βチタン合金を冷間加工することを含む、1に記載のプロセス。
[13]
前記冷間加工後に800°F〜1150°Fの範囲の温度で前記α+βチタン合金を時効することを含む、1に記載のプロセス。
[14]
前記冷間加工後に850°F〜1100°Fの範囲の温度で前記α+βチタン合金を時効することを含む、1に記載のプロセス。
[15]
最大で50時間の間、前記α+βチタン合金を時効することを含む、1に記載のプロセス。
[16]
0.5〜10時間の間、前記α+βチタン合金を時効することを含む、15に記載のプロセス。
[17]
前記α+βチタン合金のβトランザス温度より300°F〜25°F低い範囲の温度で前記α+βチタン合金を熱間加工することをさらに含み、前記熱間加工が、前記冷間加工の前に実施される、1に記載のプロセス。
[18]
1200°F〜1500°Fの範囲の温度で前記α+βチタン合金を焼鈍することをさらに含み、前記焼鈍が、前記熱間加工と前記冷間加工との間に実施される、17に記載のプロセス。
[19]
1500°F〜1775°Fの範囲の温度で前記α+βチタン合金を熱間加工することを含む、17に記載のプロセス。
[20]
前記α+βチタン合金が、重量百分率で、2.90〜5.00のアルミニウム、2.00〜3.00のバナジウム、0.40〜2.00の鉄、0.10〜0.30の酸素、不可避的不純物、およびチタンからなる、1に記載のプロセス。
[21]
前記α+βチタン合金が、重量百分率で、3.50〜4.50のアルミニウム、2.00〜3.00のバナジウム、1.00〜2.00の鉄、0.10〜0.03の酸素、およびチタンから本質的になる、1に記載のプロセス。
[22]
前記α+βチタン合金が、重量百分率で、3.70〜4.30のアルミニウム、2.20〜2.80のバナジウム、1.20〜1.80の鉄、0.22〜0.28の酸素、およびチタンから本質的になる、1に記載のプロセス。
[23]
前記α+βチタン合金を冷間加工することが、圧延、鍛造、押出、ピルガ、揺動、および引抜からなる群から選択される少なくとも1つの操作による冷間加工を含む、1に記載のプロセス。
[24]
前記α+βチタン合金を冷間加工することが、前記α+βチタン合金を冷間引抜することを含む、1に記載のプロセス。
[25]
1に記載のプロセスによって形成されるα+βチタン合金物体。
[26]
ビレット、棒、ロッド、チューブ、スラブ、板、および締結具からなる群から選択される、25に記載の物体。
[27]
0.5インチ超の直径または厚さ、165ksi超の極限引張強度、155ksi超の降伏強度、および12%超の伸びを有する、25に記載の物体。
[28]
3.0インチ超の直径または厚さ、165ksi超の極限引張強度、155ksi超の降伏強度、および12%超の伸びを有する、25に記載の物体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12