特許第6386647号(P6386647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6386647
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】貸金庫用保護箱の施錠忘れ防止機構
(51)【国際特許分類】
   E05B 65/00 20060101AFI20180827BHJP
   E05B 37/02 20060101ALI20180827BHJP
   E05G 1/026 20060101ALI20180827BHJP
   E05G 1/00 20060101ALI20180827BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   E05B65/00 E
   E05B37/02 D
   E05G1/026 B
   E05G1/00 Z
   B65G1/00 521E
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-183106(P2017-183106)
(22)【出願日】2017年9月25日
【審査請求日】2017年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】307011510
【氏名又は名称】株式会社熊平製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸田 康則
【審査官】 小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−203710(JP,A)
【文献】 特開2007−2570(JP,A)
【文献】 特開2009−52219(JP,A)
【文献】 特開昭58−210258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
E05G 1/00−7/00
B65G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全自動貸金庫システムの利用者が物品を収容する保護箱本体と、
上記保護箱本体に設けられ、該保護箱本体が有する物品投入及び取り出し用開口部を開閉する蓋と、
上記蓋を閉状態で施錠するダイヤル錠とを備え、上記全自動貸金庫システムが有する開閉扉付き保護箱利用口に収容される貸金庫用保護箱の施錠忘れ防止機構において、
上記保護箱利用口に収容されている上記保護箱の上記ダイヤル錠が解錠状態にある場合に上記開閉扉が閉状態になるのを阻止する阻止手段を備えていることを特徴とする貸金庫用保護箱の施錠忘れ防止機構。
【請求項2】
請求項1に記載の貸金庫用保護箱の施錠忘れ防止機構において、
上記ダイヤル錠は、利用者の操作によって解錠及び施錠を切り替えるための操作ツマミと、該操作ツマミに連動する連動部材とを備え、
上記阻止手段は、上記操作ツマミが解錠状態とされたときに上記連動部材の動作によって後退位置から進出位置に切り替えられて上記保護箱の表面から突出し、かつ、閉じられようとしている上記開閉扉に接触する進退部材を備えていることを特徴とする貸金庫用保護箱の施錠忘れ防止機構。
【請求項3】
請求項2に記載の貸金庫用保護箱の施錠忘れ防止機構において、
上記操作ツマミは、上記保護箱の上面から露出するとともに、上下方向に延びる軸周りに回動可能に配設され、
上記連動部材は、上記保護箱本体の内部に収容されるとともに、上記操作ツマミに固定されて該操作ツマミの回動動作によって回動するように配設され、
上記進退部材は、上記保護箱の上下方向に進退可能に該保護箱に支持されて進出位置にあるときに上記保護箱の上面から突出するように配設され、
上記保護箱本体の内部には、上記進退部材に連結され、該進退部材を操作する操作部材が上下方向に揺動可能に設けられ、
上記操作ツマミが施錠状態から解錠状態とされると、上記進退部材が進出位置となるまで上記連動部材が上記操作部材を上方へ揺動させるように構成されていることを特徴とする貸金庫用保護箱の施錠忘れ防止機構。
【請求項4】
請求項3に記載の貸金庫用保護箱の施錠忘れ防止機構において、
上記操作部材には、上記連動部材が接触するローラ部材が回転可能に設けられ、
上記ローラ部材の回転方向は、上記連動部材の回動方向と対応していることを特徴とする貸金庫用保護箱の施錠忘れ防止機構。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1つに記載の貸金庫用保護箱の施錠忘れ防止機構において、
上記操作ツマミ及び上記連動部材は、上記蓋及び上記保護箱本体の一方に設けられ、
上記連動部材は、上記操作ツマミが施錠状態にあるときに上記蓋及び上記保護箱本体の他方に係止して該蓋の開放を阻止する一方、上記操作ツマミが解錠状態にあるときに上記蓋及び上記保護箱本体の他方から離脱して該蓋の開放を許容するロック部材であることを特徴とする貸金庫用保護箱の施錠忘れ防止機構。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1つに記載の貸金庫用保護箱の施錠忘れ防止機構において、
上記操作ツマミと、上記進退部材とは、上記保護箱の幅方向に並ぶように配置されていることを特徴とする貸金庫用保護箱の施錠忘れ防止機構。
【請求項7】
請求項1に記載の貸金庫用保護箱の施錠忘れ防止機構において、
上記保護箱には、上記ダイヤル錠の施錠状態及び解錠状態を検出する施解錠検出センサーが設けられ、
上記阻止手段は、上記施解錠検出センサーの出力信号に基づいて上記ダイヤル錠が解錠状態にあると判定される場合には、上記保護箱利用口の上記開閉扉を駆動する駆動部を、上記開閉扉が閉じないように制御する制御装置を有していることを特徴とする貸金庫用保護箱の施錠忘れ防止機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば各種金融機関等に設けられる貸金庫用保護箱の施錠忘れ防止機構に関し、特に、保護箱を利用者がダイヤル錠で施錠する構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来から、全自動貸金庫システムは、利用者毎に用意された保護箱と、多数の保護箱を収容する貸金庫室と、貸金庫室にある保護箱を利用者のブースまで搬送する搬送機構と、ブースに設置された保護箱利用口とを備えている。利用者がブースで所定の呼び出し操作を行うことで搬送機構が当該利用者の保護箱をブースの保護箱利用口まで搬送する。保護箱が保護箱利用口まで搬送されると、保護箱利用口のシャッター扉が開放されて利用者が保護箱利用口から保護箱を利用することができるようになる。そして、利用者は保護箱を開けて用事を済ませた後、保護箱を閉じると保護箱利用口のシャッター扉が閉じ、保護箱が搬送機構によって貸金庫室の所定場所まで搬送されて収容される(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
また、一般に、各種扉の施錠機構としては、数字等が記載されたダイヤルを操作して解錠及び施錠を行うことができるダイヤル錠が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−97434号公報
【特許文献2】特開2007−23668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、保護箱の蓋には第三者による不正使用を回避するために施錠機構を設ける必要がある。この保護箱の蓋の施錠機構としてダイヤル錠を設けることで、利用者は鍵を持ち歩くことなく、保護箱を利用できるので利便性が向上する。
【0006】
ここで、鍵による施錠の場合は施錠操作を行うまで鍵を鍵穴から抜けないようにする機構が従来からあるので、そのような機構を設けることで施錠忘れを防止することができ、利用者が施錠を忘れて保護箱から立ち去るといったことは起こり難いと考えられる。
【0007】
しかしながら、ダイヤル錠の場合、鍵を使用せずにダイヤルを回す及びツマミを操作するだけなので、利用者がダイヤル錠の施錠を忘れて保護箱から立ち去ってしまう可能性が鍵の場合に比べて高い。保護箱が施錠されないままであると、金融機関の従業員等による保護箱の不正開放が疑われてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ダイヤル錠を備えた保護箱を解錠状態で返却しようとした場合に、利用者に施錠を促すことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、保護箱のダイヤル錠が施錠されていない場合には保護箱利用口が閉じないようにした。
【0010】
第1の発明は、全自動貸金庫システムの利用者が物品を収容する保護箱本体と、上記保護箱本体に設けられ、該保護箱本体が有する物品投入及び取り出し用開口部を開閉する蓋と、上記蓋を閉状態で施錠するダイヤル錠とを備え、上記全自動貸金庫システムが有する開閉扉付き保護箱利用口に収容される貸金庫用保護箱の施錠忘れ防止機構において、上記保護箱利用口に収容されている上記保護箱の上記ダイヤル錠が解錠状態にある場合に上記開閉扉が閉状態になるのを阻止する阻止手段を備えていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、全自動貸金庫システムの利用者が保護箱のダイヤル錠を操作して蓋の解錠及び施錠をすることが可能になるので、利用者が鍵を持ち歩くことなく、保護箱を利用することができ、利便性が向上する。
【0012】
仮に、利用者が保護箱を返却する際にダイヤル錠を施錠することなく全自動貸金庫システムの保護箱利用口に収容したままにすると、阻止手段によって保護箱利用口の開閉扉が閉じなくなる。一般に、保護箱利用口の開閉扉が閉じないまま利用者がその場から立ち去ることはないと考えられるので、保護箱のダイヤル錠が施錠されていないことに利用者が気付きやすくなり、利用者にダイヤル錠の施錠を促すことができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、上記ダイヤル錠は、利用者の操作によって解錠及び施錠を切り替えるための操作ツマミと、該操作ツマミに連動する連動部材とを備え、上記阻止手段は、上記操作ツマミが解錠状態とされたときに上記連動部材の動作によって後退位置から進出位置に切り替えられて上記保護箱の表面から突出し、かつ、閉じられようとしている上記開閉扉に接触する進退部材を備えていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、利用者がダイヤル錠の操作ツマミの操作を操作すると、操作ツマミに連動して連動部材が動作することになる。操作ツマミが解錠状態とされたときには、後退位置にある進退部材が連動部材の動作によって保護箱の表面から突出する進出位置に切り替えられる。この進出位置にある進退部材は、閉じられようとしている保護箱利用口の開閉扉に接触するので、開閉扉が物理的に閉じないようにすることが可能になるとともに、開閉扉が閉じないということを利用者に視覚的に知らせることが可能になる。
【0015】
また、ダイヤル錠の操作ツマミの操作と、進退部材の進出動作とが連動するので、ダイヤル錠が解錠状態にあるときに進退部材を確実に進出位置にして開閉扉が閉じないようにすることが可能になる。
【0016】
第3の発明は、第2の発明において、上記操作ツマミは、上記保護箱の上面から露出するとともに、上下方向に延びる軸周りに回動可能に配設され、上記連動部材は、上記保護箱本体の内部に収容されるとともに、上記操作ツマミに固定されて該操作ツマミの回動動作によって回動するように配設され、上記進退部材は、上記保護箱の上下方向に進退可能に該保護箱に支持されて進出位置にあるときに上記保護箱の上面から突出するように配設され、上記保護箱本体の内部には、上記進退部材に連結され、該進退部材を操作する操作部材が上下方向に揺動可能に設けられ、上記操作ツマミが施錠状態から解錠状態とされると、上記進退部材が進出位置となるまで上記連動部材が上記操作部材を上方へ揺動させるように構成されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、操作ツマミが保護箱の上面から露出しているので、操作ツマミの操作性が良好になる。そして、操作ツマミが施錠状態から解錠状態になると、操作ツマミの回動動作によって連動部材が回動する。この連動部材の回動動作により、操作部材が上方へ揺動して進退部材が後退位置から進出位置となるまで上昇する。つまり、回動可能な操作ツマミの操作性を良好にしながら、進退部材をその操作ツマミに連動させて上下方向に進退させることができる。
【0018】
第4の発明は、第3の発明において、上記操作部材には、上記連動部材が接触するローラ部材が回転可能に設けられ、上記ローラ部材の回転方向は、上記連動部材の回動方向と対応していることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、操作ツマミの回動動作によって連動部材が回動し、この連動部材が操作部材のローラ部材に接触する。このとき、ローラ部材の回転方向が、連動部材の回動方向と対応しているので、連動部材と操作部材との間の摩擦が小さくなり、動きがスムーズになる。
【0020】
第5の発明は、第2から4のいずれか1つの発明において、上記操作ツマミ及び上記連動部材は、上記蓋及び上記保護箱本体の一方に設けられ、上記連動部材は、上記操作ツマミが施錠状態にあるときに上記蓋及び上記保護箱本体の他方に係止して該蓋の開放を阻止する一方、上記操作ツマミが解錠状態にあるときに上記蓋及び上記保護箱本体の他方から離脱して該蓋の開放を許容するロック部材であることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、操作ツマミを施錠状態にすると連動部材が蓋の開放を阻止し、操作ツマミを解錠状態にすると連動部材が蓋の開放を許容する。つまり、蓋をロックするためのロック部材によって進退部材を進退させることができる。
【0022】
第6の発明は、第2から5のいずれか1つの発明において、上記操作ツマミと、上記進退部材とは、上記保護箱の幅方向に並ぶように配置されていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、操作ツマミと進退部材とを近づけることが可能になるので、操作ツマミに連動する連動部材によって進退部材を操作し易くなる。
【0024】
第7の発明は、第1の発明において、上記保護箱には、上記ダイヤル錠の施錠状態及び解錠状態を検出する施解錠検出センサーが設けられ、上記阻止手段は、上記施解錠検出センサーの出力信号に基づいて上記ダイヤル錠が解錠状態にあると判定される場合には、上記保護箱利用口の上記開閉扉を駆動する駆動部を、上記開閉扉が閉じないように制御する制御装置を有していることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、保護箱のダイヤル錠の施錠状態及び解錠状態を施解錠検出センサーによって検出することができる。そして、ダイヤル錠が解錠状態にあると判定される場合には、保護箱利用口の開閉扉が閉じないように駆動部が制御される。
【発明の効果】
【0026】
第1の発明によれば、ダイヤル錠を備えた保護箱を解錠状態のままにすると保護箱利用口の開閉扉が閉じなくなるので、保護箱のダイヤル錠が施錠されていないことに利用者が気付きやすくなり、利用者にダイヤル錠の施錠を促して施錠させることができる。よって、金融機関の従業員等による保護箱の不正開放が疑われ難くなる。
【0027】
第2の発明によれば、ダイヤル錠の操作ツマミに連動する連動部材の動作によって進退部材を進出位置に切り替えることで、閉じられようとしている保護箱利用口の開閉扉に進退部材が確実に接触して開閉扉が物理的に閉じないようにすることできるとともに、開閉扉が閉じないということを利用者に視覚的に知らせることもできる。
【0028】
第3の発明によれば、回動可能な操作ツマミを保護箱の上面から露出するように配設して操作ツマミの操作性を良好にする場合に、操作ツマミの操作に連動させて進退部材を上下方向に進退させることができる。
【0029】
第4の発明によれば、連動部材が接触するローラ部材を操作部材に設けたので、連動部材と操作部材との間の摩擦を小さくすることができ、動きをスムーズにすることができる。
【0030】
第5の発明によれば、蓋をロックするためのロック部材によって進退部材を進退させることができるので、部品構成をシンプルにすることができる。
【0031】
第6の発明によれば、操作ツマミと進退部材とが保護箱の幅方向に並ぶように配置されているので、操作ツマミと進退部材とを近づけることができ、操作ツマミに連動する連動部材によって進退部材を操作し易くなる。
【0032】
第7の発明によれば、ダイヤル錠の施錠状態及び解錠状態を施解錠検出センサーで検出し、ダイヤル錠が解錠状態にあると判定される場合には、開閉扉が閉じないように駆動部を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施形態1に係る全自動貸金庫システムの概略構成を示す図である。
図2】開閉扉が開いた状態にあるブース機器の保護箱利用口近傍を拡大して示す斜視図である。
図3】ダイヤル錠が解錠状態にある保護箱を上方から見た斜視図である。
図4】蓋を開けた保護箱を上方から見た斜視図である。
図5】蓋の分解斜視図である。
図6】ダイヤル錠が施錠状態にある場合の蓋を裏側から見た図である。
図7】ダイヤル錠が解錠状態にある場合の蓋を裏側から見た図である。
図8】ダイヤル錠が施錠状態にある保護箱を上方から見た斜視図である。
図9】ダイヤル錠が解錠状態にある保護箱が保護箱利用口に収容されている場合を示す図2相当図である。
図10】保護箱利用口の開閉扉がシャフトに接触した状態を示す図9相当図である。
図11】実施形態2に係る保護箱の蓋を開けた状態を示す斜視図である。
図12】実施形態3に係る保護箱のダイヤル錠近傍を拡大して示す平面図である。
図13】実施形態3に係る保護箱を左側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0035】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る全自動貸金庫システム100の概略構成を示すものである。全自動貸金庫システム100は、利用者だけで自分の保護箱1を取り出して物品の収容等を行った後、返却することができるシステムである。すなわち、全自動貸金庫システム100は、複数の保護箱1と、保護箱1を収容する貸金庫室101と、利用者が保護箱1に物品の出し入れを行うクーポンブース102と、クーポンブース102に設けられたブース機器103と、保護箱1を貸金庫室101及びクーポンブース102の間で搬送する搬送機構104とを備えている。この全自動貸金庫システム100は、例えば銀行等の金融機関等に導入されて使用されるものである。
【0036】
保護箱1の詳細については後述するが、略直方体形状をなしており、内部に利用者の物品を収容することができるようになっている。保護箱1は利用者ごとに決められている。貸金庫室101は、クーポンブース102に隣接するように設けられており、図示しないが、複数の保護箱1を縦横に並べて収容することができるように構成されている。クーポンブース102には、予め登録された利用者のみが認証操作を行うことによって入室することができる。尚、貸金庫室101とクーポンブース102とは、例えば別の階に設置されるなどして、離れている場合もあるが、いずれの構成であってもよい。
【0037】
ブース機器103は、タッチパネル式表示装置105と、保護箱利用口106を有する保護箱投入用デスク107とを有している。タッチパネル式表示装置105は、利用者がパスワード等を入力することができるように構成されている。タッチパネル式表示装置105に入力されたパスワードや、別途設けられているIDカード認証装置等に基づいて利用者が正規の利用者であることが特定されると、利用者による保護箱1の取り出し操作が行われる。搬送機構104は、その利用者の保護箱1を貸金庫室101から保護箱投入用デスク107の保護箱利用口106の内部まで搬送する。タッチパネル式表示装置105に限らず、タッチパネルを有しない表示装置を設けてもよい。
【0038】
保護箱利用口106は、保護箱投入用デスク107の上面に開口するように設けられている。この保護箱利用口106は開閉扉108付きのものであり、開閉扉108が保護箱投入用デスク107の奥行き方向に移動することで開状態となって保護箱利用口106を開放する。一方、開閉扉108が保護箱投入用デスク107の手前方向に移動することで閉状態となって保護箱利用口106を閉じる。開閉扉108の移動方向は上述した方向に限られるものでなく、反対に移動するものであってもよいし、左右方向に移動するものであってもよい。
【0039】
開閉扉108は、ブース機器103が有する駆動部110によって駆動されるようになっている。駆動部110は、ブース機器103が有する制御装置111によって制御される電動機等を内蔵したものである。制御装置111は、利用者がクーポンブース102内に存在しないときには開閉扉108が常時閉状態となるように駆動部110を制御し、利用者がクーポンブース102内で保護箱1の取り出し操作を行って搬送機構104がその利用者の保護箱1を貸金庫室101から保護箱投入用デスク107の保護箱利用口106の内部まで搬送したことを検出すると、開閉扉108が開状態となるように駆動部110を制御する。また、利用者が利用を終え、タッチパネル式表示装置105等を利用して返却指示を行うと、制御装置111は、開閉扉108が閉状態となるように駆動部110を制御する。
【0040】
また、開閉扉108に何か挟まった場合のように、駆動部110に所定以上の負荷がかかると、駆動部110の電流変化等を検出することによって駆動部110を停止または反転させるように、制御装置111が駆動部110を制御する。
【0041】
以上の構成、利用者による操作及び各部の動作は、従来から周知の全自動貸金庫システム100と同じである。以下、上記全自動貸金庫システム100に設けられる貸金庫用保護箱の施錠忘れ防止機構について説明する。
【0042】
尚、この実施形態の説明では、利用者から見て手前となる側を保護箱1の手前側といい、利用者から見て奥となる側を保護箱1の奥側といい、利用者から見て左側となる側を保護箱1の左側といい、利用者から見て右側となる側を保護箱1の右側というものと定義するが、これは実施形態の説明の便宜を図るために定義するだけであり、使用時における保護箱1の方向を限定するものではない。
【0043】
(保護箱1の全体構成)
図3及び図4に示すように、保護箱1は、全自動貸金庫システム100の利用者が物品を収容する保護箱本体2と、保護箱本体2に設けられ、該保護箱本体2が有する物品投入及び取り出し用開口部2aを開閉する蓋3と、該蓋3を閉状態で施錠するダイヤル錠4と、ダイヤル錠4による施錠忘れを防止する施錠忘れ防止機構5(図5図7に示す)とを備えている。図2に示すように、保護箱1は、全自動貸金庫システム100が有する開閉扉108付き保護箱利用口106に収容されるものである。基本的には、保護箱1を保護箱利用口106に収容したままで使用し、利用者が保護箱1を保護箱利用口106から取り出すことはしない。
【0044】
保護箱1の形状や大きさは特に限定されるものではないが、この実施形態では、略直方体であり、奥行き方向の寸法が幅方向の寸法よりも長く、かつ、上下方向の寸法が奥行き方向の寸法及び幅方向の寸法よりも短くなるような形状とされている。保護箱1は様々なサイズのものを用意することができ、いずれの保護箱1に対しても本発明を適用することができる。例えば、保護箱1の上下方向の寸法が幅方向の寸法よりも長くなる形状等を挙げることができる。
【0045】
(保護箱本体2の構成)
保護箱本体2は、底壁部20と、底壁部20の周縁部から上方へ延びる周壁部21と、周壁部21における奥側の一部にのみ設けられた上壁部22とを有している。上壁部22の前後方向の寸法は、保護箱本体2の前後方向の寸法の1/4ないし1/5程度とされており、上壁部22が設けられた範囲は狭くなっている。上壁部22は、底壁部20に固定されている。この保護箱本体2は、金属製の板材で構成することができる。上壁部22は、蓋3の一部とすることもできる。尚、上壁部22の前後方向の寸法と、保護箱本体2の前後方向の寸法との比率は特に限定されるものではないが、一例として挙げると、上壁部22の前後方向の寸法を保護箱本体2の前後方向の寸法の1/4以下にすることができる。
【0046】
図4に示すように、物品投入及び取り出し用開口部2aは、保護箱本体2の上面に開口するように形成されている。すなわち、物品投入及び取り出し用開口部2aは、周壁部21の手前側の縁部と、上壁部22の手前側の縁部との間において保護箱本体2の左端から右端に亘る広い範囲に開口しており、略矩形状となっている。物品投入及び取り出し用開口部2aは、利用者が物品を保護箱本体2の内部に収容する際、及び保護箱本体2の内部に収容されている物品を取り出す際に使用される開口である。保護箱本体2の周壁部21における手前側の内面には、掛け金受け部材24(図4にのみ示す)が設けられている。掛け金受け部材24には、後述する連動部材43が下から係合して引っ掛かるようになっている。
【0047】
(蓋3の構成)
蓋3は、利用者が開閉操作するものである。蓋3は、物品投入及び取り出し用開口部2aと略相似な矩形状をなしており、物品投入及び取り出し用開口部2aを閉じた状態で保護箱本体2の上壁部22の上面と略同じ高さに位置するように配置される。蓋3も金属製の板材で構成することができる。
【0048】
蓋3の奥側の縁部には、左右両側にそれぞれ開方向への力を付与するように構成されたトルクヒンジ3aが設けられている。トルクヒンジ3aを介して蓋3の奥側が、保護箱本体2の上壁部22の手前側に対して左右方向に延びる軸周りに回動可能に連結されている。従って、利用者が蓋3の手前側を持ち上げるようにすることで、図4に示すように蓋3がトルクヒンジ3aの軸周りに上方へ回動して物品投入及び取り出し用開口部2aが開放された状態になり、一方、開放された状態から蓋3をトルクヒンジ3aの軸周りに下方へ回動させることにより、図3等に示すように物品投入及び取り出し用開口部2aが閉じられた状態になる。尚、トルクヒンジ3aの代わりに、開方向への力を付与しない通常のヒンジを使用することができる。
【0049】
(ダイヤル錠4の構成)
この実施形態1では図4に示すようにダイヤル錠4が蓋3に設けられている。図5に示すように、蓋3には、ダイヤル錠4を取り付けるためのダイヤル錠取付孔3bが形成されている。ダイヤル錠取付孔3bは、蓋3の手前側において左右方向に長い形状とされており、蓋3の左右方向中央部に対して右側に偏位している。また、蓋3におけるダイヤル錠取付孔3bの周囲は下方へ窪むように形成されている。これにより、ダイヤル錠取付孔3bに取り付けられたダイヤル錠4を蓋3の上面よりも下に位置付けることができる。このダイヤル錠取付孔3bの位置や形状は、ダイヤル錠4の形状等によって変更することができる。
【0050】
ダイヤル錠4は、従来から周知の構造のものを用いることができ、複数の数字が記載された複数のダイヤル40(図3等に示す)と、これらダイヤル40を回転可能に支持するケース41と、利用者の操作によって解錠及び施錠を切り替えるための操作ツマミ42と、該操作ツマミ42に連動する連動部材43(図5図7に示す)とを備えている。ケース41は、ダイヤル錠取付孔3bの形状に対応するように蓋3の左右方向に長い形状とされており、ダイヤル錠取付孔3bに取り付けられた状態で、保護箱1の内部に収容されるようになっている。また、図3に示すように、操作ツマミ42は、蓋3の上面、即ち、保護箱1の上面から露出するとともに、上下方向に延びる軸42a(図5図7に示す)に固定され、該軸42aの軸心を回動中心として軸心周りに回動可能に配設されている。操作ツマミ42が保護箱1の上面から露出しているので、操作ツマミ42の操作性が良好になる。
【0051】
連動部材43は、保護箱本体2の内部に収容されるとともに、操作ツマミ42に対し固定されて該操作ツマミ42の回動動作によって回動するように配設されている。この連動部材43の回動中心となる回動中心部には、上記軸42aの下端部が固定されており、これにより、操作ツマミ42の回動力が軸42aを介して連動部材43に伝達される。図5図6に示すように、連動部材43は、回動中心部から軸42aの径方向に延びる取付板部43aと、取付板部43aの先端部から該取付板部43aに交差する方向に突出する第1突出板部43b及び第2突出板部43cとを有している。第1突出板部43bの取付板部43aからの突出方向と、第2突出板部43cの取付板部43aからの突出方向とは反対方向であり、従って、連動部材43は平面視で略T字に近い形状となっている。
【0052】
操作ツマミ42を右に回動させることで連動部材43も右に回動する。連動部材43が右に回動すると、図7に示すように、取付板部43aが軸42aより左側に位置するとともに、第1突出板部43b及び第2突出板部43cも軸42aより左側に位置し、第1突出板部43b及び第2突出板部43cが図4に示す掛け金受け部材24から離脱してダイヤル錠4が解除状態になる。一方、解除状態にあるダイヤル錠4の操作ツマミ42を左に回動させることで連動部材43も左に回動する。連動部材43が左に回動すると、図6に示すように、取付板部43aが軸42aより手前側に位置するとともに、第1突出板部43b及び第2突出板部43cも軸42aより手前側に位置する。この状態で第1突出板部43b及び第2突出板部43cが図4に示す掛け金受け部材24に対して下方から係合するように配置されるので、蓋3を開こうとしても連動部材43が掛け金受け部材24に対して下方から係合して引っ掛かった状態になり、蓋3を開くことができなくなる。
【0053】
すなわち、連動部材43は、操作ツマミ42が施錠状態にあるときに保護箱本体2に係止して蓋3の開放を阻止する一方、操作ツマミ42が解錠状態にあるときに保護箱本体2から離脱して蓋3の開放を許容するロック部材である。
【0054】
図6図7に示すように、ケース40の裏面には利用者が複数桁の暗証番号を設定するための暗証番号設定用レバー40aが設けられている。利用者が暗証番号設定用レバー40aを操作して暗証番号を予め設定しておけば、以後、ダイヤル40を回転させて暗証番号と完全に一致する数字の列を作ることでケース40の内部のロック機構(図示せず)が解除状態になる。ロック機構が解除状態になると、操作ツマミ42を右に回動させること、即ち、ダイヤル錠4を解除することが可能になる。一方、ダイヤル40の操作によって作られた数字の列が暗証番号と一致しない場合には、ロック機構が解除状態にはならず、ロック状態で保持される。ロック機構がロック状態であると、操作ツマミ42を右に回動させようとしても回動させることはできないので、ダイヤル錠4が施錠状態のままになる。また、操作ツマミ42を右に回動させてダイヤル錠4を解錠状態にした後、操作ツマミ42を左に回動させると、ダイヤル40が原点(例えば0)に自動的に戻ってロック機構がロック状態になるゼロリセット機構が組み込まれている。上述した構成は様々なダイヤル錠で使用されていて、従来から周知のものであるため、詳細な説明は省略する。
【0055】
(施錠忘れ防止機構5の構成)
施錠忘れ防止機構5は、ダイヤル錠4が解錠状態にある場合に保護箱利用口106の開閉扉108が閉まらないようにするための機構であり、蓋3の裏側に設けられている。図5に示すように、蓋3の裏側には、施錠忘れ防止機構5を取り付けるための取付座3cが保護箱1の内方へ向けて突出するように設けられている。この取付座3cには蓋3を貫通するように貫通孔3dが形成されている。貫通孔3dは、ダイヤル錠4の左側に位置付けられている。
【0056】
図6及び図7に示す施錠忘れ防止機構5は、固定板50と、シャフト(進退部材)51と、シャフト支持板52と、操作部材53と、ローラ部材54と、引っ張りバネ55とを備えている。図6に示すように、固定板50は、取付座3cに固定される部材であり、取付座3cよりも蓋3の奥側へ向けて延びていて、貫通孔3dの開口に達するように形成されている。固定板50における貫通孔3dに対応する部分には、シャフト51が挿通されるシャフト挿通孔50aが貫通孔3dと一致するように形成されている。
【0057】
シャフト51は、保護箱1の上下方向に進退可能に該保護箱1に対して固定板50及びシャフト支持板52を介して支持されており、上記連動部材43の動作によって後退位置と進出位置とに切り替えられる部材である。シャフト51は強度の高い部材で構成されており、例えば金属製部材等で構成することができる。シャフト51はピン状の部材であり、円形断面を有するように成形することができるが、この形状に限られるものではない。また、シャフト51と操作ツマミ42とは保護箱1の幅方向(左右方向)に並ぶように配置されている。
【0058】
シャフト51は、進出位置にあるときに、保護箱1の上面、具体的には保護箱1の一部を構成している蓋3の上面から突出するように配置される(図3等に示す)。一方、シャフト51は、その軸方向に後退して後退位置にあるときには、蓋3の上面から突出しないように配置される(図8に示す)。
【0059】
また、進出位置にあるシャフト51は、図10に示すように保護箱利用口106の開閉扉108が閉じられようとしているときに、該開閉扉108に接触するように配置される。具体的には、シャフト51が進出位置にあると、閉じられようとしている開閉扉108の端部がシャフト51の外周面に当接するように、シャフト51の進出量が設定されている。シャフト51が後退したときには、開閉扉108に接触しなければよいので、シャフト51の先端が蓋3の上面から多少突出していてもよい。
【0060】
図6及び図7に示すように、シャフト支持板52は、シャフト51が挿通するシャフト挿通孔52aを有している。シャフト支持板52のシャフト挿通孔52aは、固定板50のシャフト挿通孔50aと同心上に位置し、かつ、固定板50のシャフト挿通孔50aから下方に離れて配置されている。シャフト51がシャフト支持板52のシャフト挿通孔52a及び固定板50のシャフト挿通孔50aに挿通された状態で、シャフト51の外周面がシャフト挿通孔50a、52aの内周面に対して軸方向に摺動可能となっている。
【0061】
操作部材53は、シャフト51に連結されており、該シャフト51を操作するための部材である。操作部材53の一端部は、固定板50に設けられている支持板部50bに対して支軸53aを介して設けられている。支軸53aは左右方向に延びており、操作部材53は支軸53a周りに上下方向に揺動可能となっている。操作部材53の他端部(支軸53aと反対側の端部)には、連結板部53bが設けられている。連結板部53bには、シャフト51の基端部が挿入された状態で連結される連結孔53cが形成されている。連結孔53cは、蓋3の奥行き方向に長い形状とされている。シャフト51の基端部には、連結孔53cの周縁部に対して係合するリング部材51aがシャフト51の基端面から軸方向に間隔をあけて固定されており、リング部材51aとシャフト51の基端面との間に、連結板部53bの連結孔53cの周縁部が配置されている。リング部材51aとシャフト51の基端面との間を、連結板部53bの連結孔53cの周縁部が該連結孔53cの長手方向に相対移動可能となっている。
【0062】
操作部材53の支軸53aと連結板部53bとの間には、上記連動部材43が接触するローラ部材54が回転可能に設けられている。操作ツマミ42が施錠状態にあるときには、図6に示すように連動部材43がローラ部材54に接触せず、操作ツマミ42が解錠状態にあるときには、図7に示すように連動部材43の第1突出板部43b及び第2突出板部43cがローラ部材54の外周面に接触するように、ローラ部材54の位置が設定されている。
【0063】
ローラ部材54の回転中心線は、蓋3の左右方向に延びており、従ってローラ部材54は上方向及び下方向に回転可能となっている。このローラ部材54の回転方向は、連動部材43の回動方向と対応している。すなわち、連動部材43は上下方向に延びる軸42aの軸心を回動中心として回動するようになっており、この方向に回動する連動部材43がローラ部材54の外周面に接触すると、ローラ部材54を連動部材43によって回動させることができるようになっている。このように、連動部材43と操作部材53との間にローラ部材54を介在させることにより、連動部材43と操作部材53との間の摩擦が小さくなり、動きがスムーズになる。
【0064】
連動部材43がローラ部材54の外周面に接触していないときには、図6に示すようにシャフト51の重量によって操作部材53が下方へ揺動した状態となっている。このときのローラ部材54の下端部は、連動部材43の第1突出板部43b及び第2突出板部43cの上面よりも下に位置している。そして、操作ツマミ42が施錠状態から解錠状態になると連動部材43が回動して図7に示すように第1突出板部43b及び第2突出板部43cの上面がローラ部材54の外周面に接触する。第1突出板部43b及び第2突出板部43cの上面がローラ部材54の外周面に接触すると、ローラ部材54には上向きの力が作用するように、ローラ部材54の高さが設定されている。ローラ部材54に上向きの力が作用すると、操作部材53が上方に揺動してシャフト51が進出位置に切り替わる。このとき、リング部材51aとシャフト51の基端面との間を、連結板部53bの連結孔53cの周縁部が該連結孔53cの長手方向に相対移動する。
【0065】
引っ張りバネ55は省略することができるものであるが、この実施形態では、引っ張りバネ55の一端部を操作部材53の支軸53a近傍に連結し、引っ張りバネ55の他端部を蓋3に連結している。この引っ張りバネ55により、操作部材53に対して下方へ揺動する方向の力を常時作用させている。操作部材53を連動部材43の動作によって上方に揺動させる際には、引っ張りバネ55の付勢力に抗して揺動させることができる。
【0066】
(機構カバー59の構成)
施錠忘れ防止機構5は、図4及び図5に示す機構カバー59によって保護箱1の内部から覆われている。機構カバー59は、上記連動部材43も覆うことができるように形成されている。機構カバー59には、連動部材43が出入りするスリット59aが形成されている。操作ツマミ42が右に回動した状態では、連動部材43の全体が機構カバー59の内部に収容される。一方、操作ツマミ42が左に回動すると連動部材43の第1突出板部43b及び第2突出板部43cが機構カバー59のスリット59aから外部に出て、掛け金受け部材24に係合可能に配置される。
【0067】
(実施形態の作用効果)
次に、上記のように構成された貸金庫用保護箱1の施錠忘れ防止機構5の作用効果について説明する。保護箱利用口106の内部まで保護箱1が搬送されてくると、図1図2に示すように保護箱利用口106の開閉扉108が開状態となるので、保護箱1を利用者が利用可能になる。利用者は、保護箱1のダイヤル錠4のダイヤル40を回転させて暗証番号と完全に一致する数字の列を作ると内部のロック機構が解除状態になる。その後、図3に示すように、操作ツマミ42を右に回動させると、連動部材43も右に回動し、このことで連動部材43の第1突出板部43b及び第2突出板部43cが掛け金受け部材24から離脱してダイヤル錠4が解除状態になる。次いで利用者が蓋3の手前側を持ち上げるようにすることで、図4に示すように蓋3がトルクヒンジ3aの軸周りに上方へ回動して物品投入及び取り出し用開口部2aが開放される。
【0068】
連動部材43が右に回動することで、図6に示す状態から図7に示す状態になり、連動部材43の第1突出板部43b及び第2突出板部43cの上面が操作部材53に設けられているローラ部材54の外周面に接触して該ローラ部材54に対して上向きの力が作用する。これにより、操作部材53が上方に揺動してシャフト51が進出位置に切り替わる(図3に示す)。
【0069】
連動部材43に第1突出板部43b及び第2突出板部43cが設けられていることで、ダイヤル錠4が施錠状態になる前にシャフト51が後退位置にならないようにすることができる。言い換えると、ダイヤル錠4が解錠状態にあるときには、第1突出板部43b及び第2突出板部43cをローラ部材54に接触させておくことができるように、第1突出板部43b及び第2突出板部43cの形状を設定しており、ダイヤル錠4が完全に施錠状態になると、第1突出板部43b及び第2突出板部43cがローラ部材54から外れるようになっている。
【0070】
利用者が物品投入や取り出しを終えたら、図9に示すように、蓋3をトルクヒンジ3aの軸周りに下方へ回動させることにより、物品投入及び取り出し用開口部2aを閉じることができる。その後、利用者がダイヤル錠4の施錠を忘れた状態で保護箱利用口106の開閉扉108を閉じようと操作した場合、図10に示すように施錠忘れ防止機構5のシャフト51が進出位置にあるので、閉じられようとしている開閉扉108の端部がシャフト51の外周面に当接する。これにより開閉扉108の駆動部110に所定以上の負荷がかかるので、駆動部110が制御装置111によって制御されて停止または反転する。つまり、保護箱利用口106に収容されている保護箱1のダイヤル錠4が解錠状態にある場合に開閉扉108が閉状態になるのをシャフト(阻止手段)51によって阻止することができ、保護箱利用口106の開閉扉108が閉じなくなる。
【0071】
このとき、閉じられようとしている保護箱利用口106の開閉扉108にシャフト51が接触することになるので、開閉扉108が物理的に閉じないようにすることができるとともに、開閉扉108が閉じないということを利用者に視覚的に知らせることができる。保護箱利用口106の開閉扉108が閉じないまま利用者がその場から立ち去ることはないので、保護箱1のダイヤル錠4が施錠されていないことに利用者が気付きやすくなり、利用者にダイヤル錠4の施錠を促すことができる。よって、金融機関の従業員等による保護箱1の不正開放が疑われ難くなる。
【0072】
また、蓋3によって物品投入及び取り出し用開口部2aを閉じた後、ダイヤル錠4の操作ツマミ42を左へ回動させると、連動部材43が左に回動して連動部材43の第1突出板部43b及び第2突出板部43cが掛け金受け部材24に対して下方から係合するように配置される。これにより、蓋3を開こうとしても連動部材43が掛け金受け部材24に対して下方から係合して開くことができなくなる。
【0073】
連動部材43が左に回動すると、連動部材43の第1突出板部43b及び第2突出板部43cがローラ部材54の外周面に接触しなくなるので、シャフト51の重量及び引っ張りバネ55の付勢力によって操作部材53が下方へ揺動する。すると、図2に示すように、シャフト51が後退位置に切り替わるので、保護箱利用口106の開閉扉108と接触することはなく、開閉扉108を閉じることができる。
【0074】
(実施形態2)
図11は、本発明の実施形態2に係る保護箱1を示すものである。この実施形態2では、ダイヤル錠4及び施錠忘れ防止機構5が保護箱本体2に設けられている点で実施形態1のものと異なっているが、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0075】
ダイヤル錠4及び施錠忘れ防止機構5は、保護箱本体2の手前側に収容されていて、該保護箱本体2に固定されている。蓋3には、操作ツマミ42及びダイヤル40を露出させるための開口部3eが形成されている。また、図示しないが、ダイヤル錠4の連動部材が係合する掛け金受け部材は蓋3に設けられている。
【0076】
したがって、実施形態2の場合も、実施形態1と同様に、利用者がダイヤル錠4の施錠を忘れた状態で保護箱利用口106の開閉扉108を閉じようと操作した場合、施錠忘れ防止機構5のシャフト51が進出位置にあるので、閉じられようとしている開閉扉108の端部がシャフト51の外周面に当接する。これにより保護箱利用口106の開閉扉108が閉じなくなるので、保護箱1のダイヤル錠4が施錠されていないことに利用者が気付きやすくなり、利用者にダイヤル錠4の施錠を促すことができる。よって、金融機関の従業員等による保護箱1の不正開放が疑われ難くなる。
【0077】
また、実施形態2では、ダイヤル錠4及び施錠忘れ防止機構5が蓋3に無いので、蓋3を軽くすることができる。
【0078】
(実施形態3)
図12及び図13は、本発明の実施形態3に係る保護箱1を示すものである。この実施形態3では、ダイヤル錠4が解錠状態にある場合に開閉扉108が閉状態になるのを阻止する阻止手段の構成が実施形態1とは異なっているが、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0079】
保護箱1には、ダイヤル錠4の施錠状態及び解錠状態を検出する施解錠検出センサー60と、データ通信部61とが設けられている。施解錠検出センサー60は、例えば操作ツマミ42や連動部材43の位置を検出する近接センサー、リミットスイッチ等を使用することができる。データ通信部61は、施解錠検出センサー60の出力信号をブース機器103の制御装置111に無線送信するための機器である。尚、施解錠検出センサー60の出力信号をブース機器103の制御装置111に対して有線で送信するように構成することもできる。例えば、保護箱1の外面に接点(またはコネクタ)を設けておき、この接点と、ブース機器103に設けた接点(またはコネクタ)とを接続して導通状態にし、信号の送受信を行うことができる。
【0080】
実施形態3の阻止手段は図13に示す制御装置111を有しており、この制御装置111、施解錠検出センサー60及びデータ通信部61によって施錠忘れ防止機構が構成されている。制御装置111は、施解錠検出センサー60の出力信号に基づいてダイヤル錠4が解錠状態にあると判定される場合には、保護箱利用口106の開閉扉108を駆動する駆動部110を、開閉扉108が閉じないように制御する。すなわち、操作ツマミ42や連動部材43の位置を施解錠検出センサー60が検出し、その検出結果がデータ通信部61から制御装置111に送信されると、制御装置111は、ダイヤル錠4が解錠状態にあるか否かを判定する。そして、ダイヤル錠4が解錠状態にあると判定される場合には、利用者にダイヤル錠4の施錠を促すべく、開閉扉108を閉じないようにする。これにより、実施形態1のシャフト51や操作部材53のような複数の可動部品を設けることなく、電気的に制御することができ、しかも、実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。
【0081】
また、実施形態3において、タッチパネル式表示装置105にダイヤル錠4が解錠状態であることを表示させ、利用者に通知するようにしてもよい。
【0082】
(その他の実施形態)
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0083】
上記実施形態1〜3において、開閉扉108が閉じないことを検出可能な制御装置111としておき、制御装置111が、開閉扉108が閉じないことを検出した場合に、タッチパネル式表示装置105にダイヤル錠4の施錠を促す表示や、ダイヤル錠4の施錠忘れであることの表示をさせるようにしてもよい。
【0084】
また、ダイヤル錠4の構造は上述した構造に限られるものではなく、例えば蓋3を閉めると自動的に施錠する構造であってもよく、この自動施錠タイプのダイヤル錠4にも本発明に係る施錠忘れ防止機構を組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上説明したように、本発明に係る貸金庫用保護箱の施錠忘れ防止機構は、例えば、金融機関の全自動貸金庫システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 保護箱
2 保護箱本体
2a 物品投入及び取り出し用開口部
3 蓋
4 ダイヤル錠
5 施錠忘れ防止機構
42 操作ツマミ
43 連動部材
51 シャフト(阻止手段、進退部材)
53 操作部材
54 ローラ部材
60 施解錠検出センサー
100 全自動貸金庫システム
106 保護箱利用口
108 開閉扉
110 駆動部
111 制御装置(阻止手段)
【要約】
【課題】ダイヤル錠を備えた保護箱を解錠状態で返却しようとした場合に、利用者に施錠を促すことができるようにする。
【解決手段】保護箱1は、全自動貸金庫システムの利用者が物品を収容する保護箱本体2と、保護箱本体2が有する物品投入及び取り出し用開口部2aを開閉する蓋3と、蓋3を閉状態で施錠するダイヤル錠4とを備えている。保護箱1は、開閉扉108付き保護箱利用口106に収容される。保護箱利用口106に収容されている保護箱1のダイヤル錠4が解錠状態にある場合に開閉扉108が閉まらないようにする。
【選択図】図10
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13