【実施例】
【0017】
図2は実施例に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。実施例に係る画像処理装置は、本実施形態を望遠カメラ監視システムに適用した例である。望遠カメラ監視システム1は望遠カメラ2と映像モニタ3とを備える。望遠カメラ2はレンズを有する撮像部21と陽炎補正部22を備える。映像モニタ3は画像表示部31を備える。撮像部21は被写体から発する光を受光し、受光した光学画像を画像データ(映像)に変換し、時系列の画像として出力する。陽炎補正部22は撮像部21から入力された映像の陽炎を補正し、補正画像を画像表示部31に出力する。画像表示部31は陽炎補正部22が出力する補正画像を液晶ディスプレイ等のモニタに表示する。望遠カメラ監視システム1においては、少なくとも所定時間、撮像対象に対しカメラの向きを固定する。すなわち、撮像部21から出力された画像は、少なくとも所定時間、同じ位置の画像である。
【0018】
図3は
図2の陽炎補正部の機能を示すブロック図である。陽炎補正部22は時系列入力画像保持部221、時間平滑画像生成部222、類似度算出部223、移動領域時間平滑画像生成部224および補正画像生成部225を備える。時系列入力画像保持部221は撮像部21から逐次入力される入力画像(IN)を時系列に保持し、類似度算出部223および移動領域時間平滑画像生成部224に供給する。時間平滑画像生成部222は撮像部21から入力される時系列の入力画像(IN)を足し込んで時間平滑画像12を生成する。平滑化の手法は様々知られているが、例えば指数移動平均、加重移動平均、単純移動平均等を適用することができる。時間平滑画像生成部222で生成された時間平滑画像(AV)12と撮像部21からの補正対象画像11、時系列入力画像保持部221が保持する時系列の入力画像(TIN)は類似度算出部223に入力され、類似度算出部223は補正対象画像(CT)11と時間平滑画像(AV)12、補正対象画像(CT)11と時系列の入力画像(TIN)10_nそれぞれとの間で類似度を計算する。移動領域時間平滑画像生成部224は類似度算出部223から類似度を取得し、移動領域の判定およびその領域に対する移動領域時間平滑画像(MAV)14を生成する。補正画像生成部225は、時間平滑画像生成部222から出力された時間平滑画像(AV)12に含まれる移動領域のみ、移動領域時間平滑画像(MAV)14で上書きし、補正画像(CO)13を生成する。言い換えると、時間平滑画像(AV)12に移動領域が含まれていない場合は、補正画像(CO)13は時間平滑画像(AV)12となる。
【0019】
以下、陽炎補正部22内の各機能ブロックについて詳細を説明する。
【0020】
図4は
図3の時間平滑画像生成部の機能を示すブロック図である。時間平滑画像生成部222は、時間平滑画像保持部2221と、乗算器2222,2223と、加算器2224と、を備える。時間平滑画像生成部222では、撮像部21から逐次入力される時系列の入力画像を指数移動平均により平滑化することで、陽炎による揺らぎを取り除いた画像を生成する。具体的には、下記式(1)に示すように、ある時刻(n番目)の入力画像(IN
n)は、乗算器2222でr倍され、一方、時間平滑画像保持部2221で保持されている時系列順で1つ前(n−1番目)の時間平滑画像(AV
(n−1))が乗算器2223で(1−r)倍され、これらの出力が加算器2224で加算される。そして、加算器2224の出力は新たな(n番目の)時間平滑画像(AV
n)として後段に出力されるとともに、時間平滑画像保持部2221の画像を更新する。
【0021】
【数1】
【0022】
図5は
図3の類似度算出部の機能を示すブロック図である。類似度算出部223は、時間平滑画像保持部2231と、入力画像保持部2232と、階調分布計算部2233と、類似度計算部2234と、を備える。時間平滑画像保持部2231は時間平滑画像生成部222から出力される時間平滑画像(AV)12を保持し、入力画像保持部2232は撮像部21から逐次入力される時系列入力画像を補正対象画像(CT)11として保持する。階調分布計算部2233は入力画像保持部2232に保持されている補正対象画像(CT)11、時間平滑画像保持部2231に保持されている時間平滑画像(AV)12および時系列入力画像保持部221から入力される複数枚の時系列入力画像(TIN)をN×N画素単位の局所領域に分割し、それぞれの局所領域に対して階調分布計算を行う。類似度算出部223の類似度評価には、例えば、類似度計算部2234で各画素におけるRGB色相空間における3原色RGB成分毎にBhattacharyya距離を利用して階調分布間の距離(B32(c))を式(2)より求め、RGBそれぞれの階調分布間距離から式(3)より類似度(R)を求めて、類似度(R)を用いる。類似度(R)は諧調分布間の距離に相当するので、Rの値が小さいほど類似度が高いことになる。式(2)におけるcは、r(R:赤)、g(G:緑)、b(B:緑)のどれかを表す。
【0023】
【数2】
【0024】
HA(I):階調分布Aにおける階調値Iの度数
HB(I):階調分布Bにおける階調値Iの度数
HSUM:階調分布のビンの総数(諧調数)
【0025】
【数3】
【0026】
類似度計算部2234は補正対象画像(CT)11と時間平滑画像(AV)12との類似度および補正対象画像(CT)11と時系列入力画像(TIN)との類似度を求める。
【0027】
図6は
図3の移動領域時間平滑画像生成部の機能を示すブロック図である。移動領域時間平滑画像生成部224は、移動領域時間平滑画像保持部2241と、乗算器2242、2243と、加算器2244と、類似度保持部2245と、読み出し領域判定部2246と、を備える。移動領域時間平滑画像生成部224では、読み出し領域判定部2246が、類似度保持部2245が保持している補正対象画像(CT)11と時間平滑画像(AV)12間の類似度から移動領域を判定し、同じく類似度保持部2245が保持している補正対象画像(CT)11と時系列入力画像(TIN)間の類似度から補正対象画像(CT)11の移動領域が時間の異なる画像内に存在する空間位置を判定し、移動領域時間平滑画像(MAV)14の生成に使う移動領域画像(MR)を時系列入力画像保持部221に指示する。移動領域時間平滑画像保持部2241は読み出し領域判定部2246からの読み出し領域指示(AR)により指示された移動領域画像(MR)を時間平滑画像生成部222と同様の指数移動平均により、陽炎による揺らぎを取り除いた画像を生成する。具体的には、上記式(1)と同様に、ある時刻(n番目)の移動領域画像(MR
n)は、乗算器2242でr倍され、一方、移動領域時間平滑画像保持部2241で保持されている時系列順で1つ前(n−1番目)の移動領域時間平滑画像(MAV
(n−1))が乗算器2243で(1−r)倍され、これらの出力が加算器2244で加算される。そして、加算器2244の出力は新たな(n番目の)時間平滑画像(MAV
n)として後段に出力されるとともに、時間平滑画像保持部2241の画像を更新する。
【0028】
図7は
図3の補正画像生成部の機能を示すブロック図である。補正画像生成部225は平滑画像合成部2251と補正画像保持部2252とを備える。平滑画像合成部2251は時間平滑画像生成部222から出力される時間平滑画像(AV)12に含まれる移動領域のみ、移動領域時間平滑画像生成部224から出力される移動領域時間平滑画像(MAV)14で上書きし、補正画像を生成する。これを補正画像(CO)として補正画像保持部2252に保持する。
【0029】
図8は
図3の陽炎補正部の処理フローチャートである。陽炎補正部22の動作処理をまとめると以下のとおりである。
【0030】
ステップS1:時間平滑画像生成部222は撮像部21から逐次入力される入力画像(IN)から時間平滑画像を生成する。
【0031】
ステップS2:類似度算出部223の階調分布計算部2233は、補正対象画像(CT)11、時系列入力画像(TIN)および時間平滑画像12のそれぞれの局所領域に対する階調分布計算を行う。
【0032】
ステップS3:類似度算出部223の類似度計算部2234は、補正対象画像(CT)11と時間平滑画像(AV)12との間の類似度(R)を計算し、補正対象画像(CT)11と時系列入力画像(TIN)との間の類似度(R)を計算する。
【0033】
ステップS4:補正対象画像(CT)11の時間平滑画像(AV)12に対する類似度(R)が低いかどうか判定する。YESの場合はステップS5に移る。NOの場合はステップS7に移る。
【0034】
ステップS5:移動領域時間平滑画像生成部224は移動領域時間平滑画像(MAV)を生成する。
【0035】
ステップS6:補正画像生成部225の平滑画像合成部2251は時間平滑画像(AV)12の移動領域に移動領域時間平滑画像(MAV)を上書きして補正画像(CO)とする
ステップS7:補正画像生成部225の平滑画像合成部2251は時間平滑画像(AV)12を補正画像(CO)とする。
【0036】
ステップS8:最後の画像かどうかを判定する。YESの場合は処理を終了し、NOの場合はステップS1に戻る。
【0037】
上記実施例の各構成、機能等は、それらの一部や全部を、例えば半導体集積回路等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記実施例の各構成、機能等は、CPU等のプロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0038】
本実施例によれば、補正対象画像11の局所領域が静止領域である場合、時間平滑画像12を用い、補正対象画像11の局所領域が移動領域である場合、比較例と異なり補正結果の画像に入力画像を用いず、移動領域時間平滑画像14を用いるため、移動領域に対する陽炎の補正を静止領域に対する陽炎の補正と同程度に行うことができる。
【0039】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態および実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0040】
補正対象画像の移動領域に対して時間の異なる時系列入力画像での同一画像領域取得の精度を向上させるため、補助的に動きベクトルやSAD(差分絶対値和)等を用いたBM(ブロックマッチング)を使用しても良い。
【0041】
実施例では、陽炎補正部を望遠カメラに設けているが、映像モニタに設けるようにしてもよい。