(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386705
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ロール製品用プロテクター
(51)【国際特許分類】
B65D 85/66 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
B65D85/66
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-178158(P2013-178158)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-44619(P2015-44619A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】393030958
【氏名又は名称】村角株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(74)【代理人】
【識別番号】100076820
【弁理士】
【氏名又は名称】伊丹 健次
(74)【代理人】
【識別番号】100150326
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 知久
(72)【発明者】
【氏名】村角 英彦
【審査官】
長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−100133(JP,A)
【文献】
特開2010−163177(JP,A)
【文献】
特表2008−515727(JP,A)
【文献】
特開2005−324836(JP,A)
【文献】
特開2006−182522(JP,A)
【文献】
独国実用新案第202011110038(DE,U1)
【文献】
特開2010−173731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール製品の端面を保護するために該端面に装着されるロール製品用プロテクターであって、
基板部と、前記基板部から突設されロール製品の芯材の中に嵌入される芯材受けと、該芯材受けの内部に形成されたシャフト挿通用凹部を有し、前記芯材受けの内部のシャフト挿通用凹部から前記基板部の端縁に向かってテーパー状に広がるように切設されたシャフト導路を有し、
前記シャフト導路を閉鎖するシャッターを備えていることを特徴とするロール製品用プロテクター(ただし、該シャッターによって該シャフト導路の一部のみが閉鎖されるものを除く)。
【請求項2】
シャッターはシャフト導路の内側面を摺動させることにより設けられていることを特徴とする請求項1に記載のロール製品用プロテクター。
【請求項3】
シャッターはシャフト導路の端縁にヒンジ部を介して設けられていることを特徴とする請求項1に記載のロール製品用プロテクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム等の長尺物を芯材に巻回したロール製品を輸送、保管するためのロール製品用プロテクターに関し、更に詳しくは、プロテクターを装着したロール製品の芯材の中に挿通したシャフトによりロール製品のみを吊り上げて裁断機や印刷機等のところまで運び、これらにセットできるとともに、前記シャフトを通過させるためにプロテクターに設けたシャフト導路から、虫や埃等が侵入するのを防ぐことができるロール製品用プロテクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プラスチックフィルム、プラスチックシート、紙等の長尺物を保護、輸送、保管する場合には、これらの長尺物を芯材に巻回してロール製品を形成し、長尺物の端面及び周面が汚れたり損傷したりするのを防止するため、該ロール製品の端面の両側にいわゆるプロテクターを装着した上でケースに収納して輸送、保管されていた。
【0003】
そして、大型で重量の大きなロール製品の場合、収納ケースへの収納や取り出しや、使用する際のロール製品の裁断機や印刷機等加工機への取り付けには、クレーン等の吊り上げ手段が用いられる。
【0004】
例えば、支持板に突起を設け、該突起に吊り下げ具を固定しロール製品を吊り上げ外装材に収容するロール製品の梱包方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、案内溝を有する軸芯受け部にロール製品より突出した軸芯両端部を支持させて収納するコンテナが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−124021号公報
【特許文献2】特開2002−80087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の梱包方法では、支持板、即ち、プロテクターごとロール製品を吊り上げるため、梱包方法としては問題がないものの、使用する際において、プロテクターを取り外し、ロール製品だけを裁断機や印刷機にセットする場合には不適当であり、別途、プロテクターを取り外す作業が必要である。しかし、大型で重量の大きいロール製品の場合は、プロテクターを取り外す作業は容易ではない。
また、上記特許文献2のコンテナでは、ロール製品より突出した軸芯の両端部を軸芯受け部に支持させて収納するため、ロール製品より突出した軸芯を有していないロール製品(軸芯端部とロール製品の端面とが面一のロール製品)には適用できない。
本発明はかかる実情に鑑み、上記従来技術の問題点を解消し、予めロール製品からプロテクターを取り外す作業が不要で、プロテクターに設けたシャフト導路からロール製品にプロテクターを装着したままロール製品のみを吊り上げることができ、また、ロール製品の輸送や保管中に該プロテクターのシャフト導路から埃や虫等が侵入するのを防ぐことができるロール製品用プロテクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するためになされたもので、本発明の特徴は、ロール製品の端面を保護するために該端面に装着されるロール製品用プロテクターであって、基板部と、前記基板部から突設されロール製品の芯材の中に嵌入される芯材受けと、該芯材受けの内部に形成されたシャフト挿通用凹部を有し
、前記芯材受けの内部のシャフト挿通用凹部
から前記基板部の端縁に向かってテーパー状に広がるように切設されたシャフト導路を有し、前記シャフト導路を閉鎖するシャッターを備えているロール製品用プロテクター
(ただし、該シャッターによって該シャフト導路の一部のみが閉鎖されるものを除く)である。
【0008】
本発明の他の特徴は、シャッターはシャフト導路の内側面を摺動させて設けられている上記のロール製品用プロテクターである。
【0009】
本発明の更に他の特徴は、シャッターはシャフト導路の端縁にヒンジ部を介して設けられている上記のロール製品用プロテクターである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のロール製品用プロテクターは、ロール製品がプロテクターで保護された状態でシャフトを挿通してロール製品だけを吊り上げするためのシャフト導路を有するとともに、当該シャフト導路を閉鎖するためのシャッターを備えているので、ロール製品を裁断機や印刷機等のところまで運んでこれらにセットすることが容易であり、また、ロール製品の輸送中や保管中において、プロテクターのシャフト導路から虫や埃等が侵入しロール製品の商品価値が低下するのを防止することができる。
シャッターの構造としては、シャフト導路の内側面を摺動させることにより設ける構造や、シャッターをシャフト導路の縁部にヒンジ部を介して設ける構造が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は本発明のロール製品用プロテクターの一例を示し、シャフト導路からシャッターを分離させシャフト導路を開放した状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は
図1のロール製品用プロテクターにおいて、シャフト導路をシャッターで閉鎖した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は本発明のロール製品用プロテクターをロール製品に装着して、芯材にシャフトを挿通した状態を示す概略図である。
【
図4】
図4(a)は
図2のロール製品プロテクターの平面図であり、(b)は
図2のA−A断面図である。
【
図5】
図5(a)は本発明のロール製品用プロテクターの別の例を示す断面図である。
【
図6】
図6は本発明のロール製品用プロテクターの更に別の例を示す平面図である。
【
図7】
図7はロール製品用プロテクターの使用状態を示し、シャフト導路を開放して芯材及びシャフト導路の下部切り欠き部にシャフトを挿通した状態を示す概略断面図である。
【
図8】
図8はシャフトをシャフト導路を経由してロール製品を吊り上げた状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のロール製品用プロテクターは、ロール製品の端面を保護するために該端面に装着されるものであり、
図1〜
図4に示すように、基板部2と、前記基板部2から突設されロール製品Pの芯材Cの中に嵌入される芯材受け3と、前記基板部2の端縁から前記芯材受け3の内部に切設されたシャフト導路4を有し、前記シャフト導路4を閉鎖するシャッター5を備えていることを特徴とする。4dは、シャフト導路4の下部で且つ芯材受け3の内部に形成されたシャフト挿通用凹部である。
【0013】
本発明のロール製品用プロテクター1は、
図1及び
図2に示すように、基板部2と芯材受け3を有しており、シャフト導路4が切設されている。
本発明における基板部2及び芯材受け3は、シャフト導路4により一部が切り欠かれていることを除けば、端面から芯材の端部が突設していないタイプのロール製品を保護するために用いられる一般的なプロテクターと同様である。本発明における典型例について説明すれば、基板部2は後述するシャフト導路4の切り欠きを除いて概ね多角形状(図示した例では四角形状)で表面が平らな板状体であり、表面の平らな面をロール製品の端面に押し当てることにより、芯材に巻回された長尺物が竹の子状に変形するのを防止するとともに、異物が当接して端面に傷が付くのを防止する。
【0014】
本発明における芯材受け3は、前記基板部2から突設され、
図3に示すように、ロール製品Rの芯材Cに嵌着される部分である。芯材受け3の位置はロール製品Rの芯材Cに嵌着できる位置であれば特に限定されないが、通常は基板部2の内面側中央部に設けられる。芯材受け3の形状もロール製品Rの芯材Cに嵌着できる形状であれば特に限定されないが、通常は、外径が芯材Cの内径とほぼ同じか僅かに大きく形成され、後述するシャフト導路4下部に形成されるシャフト挿通用凹部4dを除いて概ね円筒状の短い突出部とされる。
この芯材受け3の内側又は外側には、図示するように、当該芯材受け3を補強するためのリブを設けてもよく(
図3では内側)、あるいは芯材の中に挿入しやすくなるように先端側をアール状またはテーパ状に形成してもよい。
【0015】
本発明におけるシャフト導路4は、ロール製品から予めプロテクター1を取り外すことなく、ロール製品がプロテクター1を装着した状態でロール製品をシャフトSで吊り上げるためのものである。詳述すれば、
図3の使用状態に示すように、シャフト導路4は芯材受け3の内部にまで切設され、下部のシャフト挿通用凹部4dは芯材受け3の内部に入り込んでいる。それゆえ、ロール製品Rはプロテクター1を装着した状態でシャフト導路4の下部のシャフト挿通用凹部4dに挿通される。また、シャフト導路4は基板部2の端縁から芯材受け3の内部に切設され、下部のシャフト挿通用凹部4dが形成されているので、ロール製品Rはシャフト挿通用凹部4dにシャフトSを挿通させた状態でシャフト導路4を経由してクレーン等(図示せず)で吊り上げられ、裁断機や印刷機等に運ばれセットされる。
シャフト導路4の形状は、基板部2の縁部から芯材受け3の内部に連通してシャフトSを上方に誘導し得る限り特に限定されないが、U字状に切設した形状が好ましく、また
図1〜
図4に示した例のように、入り口側をテーパー状に広くしたU字状とすればシャフトSをシャフト導路4を経由してロール製品Rを吊り上げしやすくなるので好ましい。
【0016】
本発明のロール製品用プロテクター1は、ロール製品をプロテクターを装着した状態で輸送や保管されている際に、前記のシャフト導路4を閉鎖するためのシャッター5が備えられている。
シャッター5の構造は特に限定されず、シャフト導路4を閉鎖することができるかぎりどのような構造でも採用できるが、
図1〜
図4に示した例では、シャッター5がシャフト導路4よりもやや大きい形状で、厚さは基板部2の約三分の一程度であり、シャフト導路4の内側面には前記シャッター5が摺動できる程度の溝4aが設けられており、基板部2の端縁から芯材受け3側に向かってシャッター5を挿入するようにして、シャフト導路4を閉鎖するように構成されている。尚、シャッター5の側面に溝を設け、シャフト導路4の内側面に該溝に嵌合する筋状突起を設けることもできる。
また、
図5に示すように、シャフト導路4の内側表面に凸部4bを設け、この部分にシャッター5を押し込み当該シャッターを弾性変形させてこの凸部4bを乗り越えさせ、嵌め込む構造とすることもできる。
更に、
図6に示すように、基板部2とシャッター5をヒンジ部4cを介して接続し、開き戸状に開閉できる構造とすることもできる。必要に応じ、シャッター5を両側に開く観音開き状に開閉できるようにしてもよい。
【0017】
本発明のロール製品用プロテクターの材質は特に限定されないが、加工が容易で、且つ軽量である点で樹脂が好ましく、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン- スチレン共重合樹脂)、AAS樹脂(アクリロニトリル/アクリルゴム/スチレン樹脂)、AES樹脂(アクリロニトリル/エチレンプロピレンゴム/スチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル/スチレン樹脂)、PS樹脂(ポリスチレン樹脂)、PMMA樹脂(ポリメチルメタクリレート樹脂)、PVC樹脂(ポリ塩化ビニリデン樹脂)、MS樹脂(メチルメタクリレート/スチレン樹脂)、PP樹脂(ポリプロピレン樹脂)、PE樹脂(ポリエチレン樹脂)、PBT樹脂(ポリブチレンテレフタレート樹脂)およびPC樹脂(ポリカーボネート樹脂)等が使用可能である。更に、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート、ポリアミド11、ポリヒドロキシ酪酸等の生分解性プラスチック、バイオマスプラスチック等も使用可能である。生分解性プラスチックを用いた場合は、化石資源の使用を減少させ、特に、バイオマスプラスチックは植物由来の素材からなるので焼却処分しても植物が固定したCO
2 が排出されるだけであるので、CO
2 排出量が増えないカーボンニュートラルが達成され、環境に優しく地球温暖化防止に寄与する利点がある。
【0018】
図7、
図8は、本発明のロール製品用プロテクターの使用状態を示す概略図である。
図7に示すように、プロテクターPを装着したロール製品Rの該プロテクターPのシャッター5(図示せず)を取り外してシャフト導路4を開放する。次に、シャフト導路4の下部で芯材受け3の内部のシャフト挿通用凹部4dにシャフトSを挿通し、クレーン等(図示せず)でシャフト導路4に沿ってシャフトSを持ち上げ、
図8に示すようにロール製品Rのみを吊り上げ、ロール製品の裁断機や印刷機等の場所まで運び、これらにセットされ、裁断や印刷等に供される。
【産業上の利用可能性】
【0019】
上記したとおり、本発明のロール製品用プロテクターは、シャフト導路を有し、当該シャフト導路を閉鎖するためのシャッターを備えているので、ロール製品をプロテクターを装着したままでシャフトを挿通し、ロール製品だけを吊り上げ裁断機や印刷機等の加工機に運びセットすることができるばかりでなく、輸送や保管中にプロテクターのシャフト導路から虫や埃等が侵入し、ロール製品の商品価値を低下させるのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0020】
1 ロール製品用プロテクター
2 基板部
3 芯材受け
4 シャフト導路
4a 溝
4b 凸部
4c ヒンジ部
4d シャフト挿通用凹部
5 シャッター
R ロール製品
C 芯材
S シャフト
P 従来のプロテクター
P1 シャフト導路
P2 芯材受け
P3 シャフト挿通用凹部