特許第6386709号(P6386709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社セラフトの特許一覧

<>
  • 特許6386709-ナノプラチナ粒子を含有した化粧料 図000002
  • 特許6386709-ナノプラチナ粒子を含有した化粧料 図000003
  • 特許6386709-ナノプラチナ粒子を含有した化粧料 図000004
  • 特許6386709-ナノプラチナ粒子を含有した化粧料 図000005
  • 特許6386709-ナノプラチナ粒子を含有した化粧料 図000006
  • 特許6386709-ナノプラチナ粒子を含有した化粧料 図000007
  • 特許6386709-ナノプラチナ粒子を含有した化粧料 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386709
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ナノプラチナ粒子を含有した化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20180827BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20180827BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20180827BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20180827BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20180827BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20180827BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20180827BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20180827BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   A61K8/19
   A61Q19/02
   A61K8/25
   A61K8/26
   A61K8/29
   A61K8/67
   A61K8/35
   A61K8/98
   A61K8/73
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-201529(P2013-201529)
(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公開番号】特開2015-67556(P2015-67556A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】501021678
【氏名又は名称】株式会社セラフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】特許業務法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 昌隆
(72)【発明者】
【氏名】草刈 重樹
(72)【発明者】
【氏名】塚本 秀幸
【審査官】 木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/132703(WO,A1)
【文献】 特開2009−067756(JP,A)
【文献】 特開2006−111503(JP,A)
【文献】 特開2004−238326(JP,A)
【文献】 特開昭63−156005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
C09C 1/00−3/12
C09D 15/00−17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラニン産生を抑制する化粧料であって、
粒径1〜50nmのナノプラチナ粒子と、
粒径0.01〜10μmの核粒子とを含有し、
化粧料中において、前記ナノプラチナ粒子は、
該ナノプラチナ粒子の粒径よりも大きな径の核粒子の表面に乾燥した状態で付着された複合体として存在しており、
かつ、前記複合体上のナノプラチナ粒子は、
有機物の保護膜で覆われていない状態で前記核粒子の表面に付着されているとともに、
化粧料中に0.5〜10ppm含まれていることを特徴とするメラニン産生を抑制する化粧料。
【請求項2】
前記核粒子は、
シリカ、アルミナ、酸化チタンのいずれか、又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載のメラニン産生を抑制する化粧料。
【請求項3】
前記核粒子は、
ビタミン誘導体やアスタキサンチン、プラセンタエキス、コエンザイム、ヒアルロン酸のいずれか、又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のメラニン産生を抑制する化粧料
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のメラニン産生を抑制する化粧料の製造方法であって、
前記複合体は、
水中に設置したプラチナ板にレーザを照射して微細化したナノプラチナ粒子を水中に分散させてナノプラチナ粒子水とした中に、
該粒径よりも大きな径の核粒子を混合し、該核粒子の表面にナノプラチナ粒子を付着させ、
噴霧乾燥して水素雰囲気で加熱して水分を飛散させたものであることを特徴とするメラニン産生を抑制する化粧料の製造方法
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のメラニン産生を抑制する化粧料の製造方法であって、
前記複合体は、
保護膜で覆われた状態のナノプラチナ粒子コロイド溶液中に、
該粒径よりも大きな径の核粒子を混合し、該核粒子の表面にナノプラチナ粒子を付着させ、
噴霧乾燥して酸化雰囲気で加熱して水分を飛散させるとともに前記保護膜を焼成除去したものであることを特徴とするメラニン産生を抑制する化粧料の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノプラチナ粒子を含有した化粧料に関する。特に、ポリアクリル酸などの保護膜で覆われていないナノプラチナ粒子を含有した化粧水、クリーム、乳液、フェイスマスク等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚に付着させて皮膚トラブル等を予防するものとして、化粧料がある。
化粧料には、酸化作用を抑制しかつ自身に防腐効果を付与させるため、抗酸化成分であるビタミンE関連成分、βカロチンなどが添加させ、優れた酸素除去能を有すると共に、その持続性を有するものが提供されている。
また、このような酸素除去能を有する成分に代えて、又は加えて、ナノプラチナコロイド溶液を含有する化粧料も提案されている。
【0003】
これらの、ナノプラチナコロイド溶液は、水などの溶媒中にナノプラチナ粒子を分散、懸濁し、ポリアクリル酸ナトリウム、クエン酸、アスコルビン酸などの重合体で覆ったものが一般的に知られている。すなわち、高い抗酸化能を有するナノプラチナ粒子を製造するためには、ナノプラチナ粒子同士の凝集などを避けて、ナノプラチナ粒子を溶媒中に分散させることが不可欠である。
従って、ナノプラチナコロイド溶液を作製する際には、通常、ナノプラチナ粒子の分散安定化剤(保護膜)としてポリアクリル酸ナトリウム等の保護膜を用いて、ナノプラチナ粒子の回りを覆うことにより、ナノプラチナ粒子同士の直接的な接触を抑制し、ナノプラチナ粒子の凝集や沈殿を防ぐことが行われている。
【0004】
従来技術として、ナノプラチナコロイド溶液を配合した化粧料として以下のものがある。
例えば、皮膚に作用させて皮膚の活性化が図れるナノプラチナコロイド含有化粧料が提案されている(特許文献1)。
また、白金族金属と金とのコロイドを含む抗酸化剤からなる化粧料も提案されている(特許文献2)。
さらに、皮膚、頭皮や粘膜への酸化作用を抑制した白金/銀コロイドを含有する皮膚外用剤が提案されている(特許文献3)。
また、これらの化粧料などに用いられるナノプラチナコロイド剤については、例えば、特許文献4に提案されているプラチナナノコロイド溶液はプラチナナノ粒子の安定性を確保するため、ポリアクリル酸塩を含有させてプラチナナノ粒子の表面を保護している。
また、特許文献5には、クエン酸などのヒドロキシカルボン酸を安定剤として添加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−139102公報
【特許文献2】特開2005−179500公報
【特許文献3】特開2008−63295公報
【特許文献4】国際公開WO2005/023467公報
【特許文献5】特開2008−56592公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように保護膜でプラチナ表面を覆うと、ナノプラチナナノ粒子の凝集が起こらず、コロイド状態で安定化する。すなわち、保護膜はナノプラチナ粒子を分散させ、製造時における凝集や沈殿の生成を防止し、製造後におけるナノプラチナコロイド溶液を保管する際も長期の保存が容易である。
上記のように、ナノサイズのプラチナ粒子は連続した抗酸化能を有しており、表面での反応性が高く、高い触媒能があるため各種の活性酸素を消去できるなどの利点を有するが、その一方、プラチナの表面がコロイド溶液で保護されているためコロイド剤の種類によっては、ナノプラチナ粒子のもつ触媒効果(抗酸化能)が発揮されないという問題があった。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、優れた抗酸化能を有するナノプラチナ粒子含有化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明のメラニン産生を抑制する化粧料は、
粒径1〜50nmのナノプラチナ粒子と、
粒径0.01〜10μmの核粒子とを含有し、
化粧料中において、前記ナノプラチナ粒子は、
該ナノプラチナ粒子の粒径よりも大きな径の核粒子の表面に乾燥した状態で付着された複合体として存在しており、
かつ、前記複合体上のナノプラチナ粒子は、
有機物の保護膜で覆われていない状態で前記核粒子の表面に付着されているとともに、
化粧料中に0.5〜10ppm含まれていることを特徴とする。
(2)本発明のメラニン産生を抑制する化粧料は、上記(1)において、
前記核粒子は、
シリカ、アルミナ、酸化チタンのいずれか、又はこれらの混合物であることを特徴とする。
(3)本発明のメラニン産生を抑制する化粧料は、上記(1)又は(2)において、
前記核粒子は、ビタミン誘導体やアスタキサンチン、プラセンタエキス、コエンザイム、ヒアルロン酸のいずれか、又はこれらの混合物であることを特徴とする。
(4)本発明のメラニン産生を抑制する化粧料の製造方法は、上記(1)〜(3)のいずれか1に記載のメラニン産生を抑制する化粧料の製造方法であって、
前記複合体は、
水中に設置したプラチナ板にレーザを照射して微細化したナノプラチナ粒子を水中に分散させてナノプラチナ粒子水とした中に、
該粒径よりも大きな径の核粒子を混合し、該核粒子の表面にナノプラチナ粒子を付着させ、
噴霧乾燥して水素雰囲気で加熱して水分を飛散させたものであることを特徴とする。
(5)本発明のメラニン産生を抑制する化粧料の製造方法は、上記(1)〜(3)のいずれか1に記載のメラニン産生を抑制する化粧料の製造方法であって、
前記複合体は、
保護膜で覆われた状態のナノプラチナ粒子コロイド溶液中に、
該粒径よりも大きな径の核粒子を混合し、該核粒子の表面にナノプラチナ粒子を付着させ、
噴霧乾燥して酸化雰囲気で加熱して水分を飛散させるとともに前記保護膜を焼成除去したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のナノプラチナ粒子と核粒子とを含有した化粧料は、化粧料中において、ナノプラチナ粒子の粒径よりも大きな径の核粒子の表面に付着された複合体として存在しているので、ナノプラチナ粒子同士が凝集することがなく、化粧料の中で安定して存在させることができる。
また、前記複合体上のナノプラチナ粒子は、有機物などの保護膜で覆われていない状態で核粒子の表面に付着されているので、ナノプラチナ粒子の有する優れた抗酸化能を十分に発揮させることができる。
さらに、化粧料に本発明のナノプラチナ粒子を含有させておくと、化粧料の保存中における酸化を防止することができる。すなわち、化粧料中に含まれるビタミン誘導体やアスタキサンチン、プラセンタエキス、コエンザイム、ヒアルロン酸などの寿命を伸ばすことができる。さらに、メラニン産生の抑止効果もある。
なお、本発明のナノプラチナ粒子は触媒的に機能して酸素を除去するので、酸素除去反応により消費されない。このため化粧料の使用中及び/又は保管中に酸素除去能を失わず、長期間維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、トロロックスの添加量を変化させ、各時間において作成した検量線である。
図2図2は、サンプルSM1〜SM5のDPPHラジカル消去能の測定を行った結果を示すグラフである。
図3図3は、図2に示すそれぞれのサンプルにおけるDPPH残存率(15分間静置、10分後測定)の経時変化を示すグラフである。
図4図4は、本発明の化粧料に含むナノプラチナ粒子の濃度(含有量)変化による抗酸化力に及ぼす影響を評価したグラフである。
図5図5は、ナノプラチナ粒子を担持させたアスコルビン酸と、ナノプラチナ粒子を担持させないアスコルビン酸とにおける、それぞれの自然放置による抗酸化能の劣化速度を比較評価した結果を示すグラフである。
図6図6は、ナノプラチナ粒子のメラニン産生に及ぼす影響を評価した結果を示すグラフである。
図7図7は、ナノプラチナ粒子の濃度を変化させたときの抗酸化作用を評価した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の化粧料は、ナノプラチナ粒子と核粒子とを含有した化粧料であって、
化粧料中において、ナノプラチナ粒子は、ナノプラチナ粒子の粒径よりも大きな径の核粒子の表面に付着された複合体として存在しており、かつ、複合体上のナノプラチナ粒子は、有機物などの保護膜で覆われていない状態で前記核粒子の表面に付着されている構成を有している。以下、本発明の化粧料の構成について詳細に説明する。
【0011】
<ナノプラチナ粒子>
本発明の化粧料を構成するナノプラチナ粒子の原料となるプラチナは白金族金属からなり、プラチナを99質量%以上含有するものを化粧料中に含有するナノプラチナ粒子として用いられる。
ナノプラチナ粒子の平均粒径としては、1〜50nmの範囲にあることが好ましく、さらに1〜5nmであるのがより好ましい。この範囲であると、ナノプラチナ粒子の抗酸化作用、除菌作用等の効果を十分発現せしめることができるからである。
【0012】
<レーザ微細化ナノプラチナ粒子>
上記のようなナノプラチナ粒子は、プラチナを水中に浸漬した状態でレーザ照射で微細化し、そのまま水中に分散させたナノプラチナ粒子水(レーザ微細化ナノプラチナ粒子水)の状態で保存しておくことが望ましい。ナノプラチナ粒子の凝集を抑制することができるからである。
【0013】
<レーザ微細化ナノプラチナ粒子水の製造方法>
このようなレーザ微細化ナノプラチナ粒子水は、以下のような方法によって製造される。すなわち、ナノ粒子化しようとするプラチナ板を溶媒(本実施形態では水)の中に浸漬した状態で、プラチナ板をターゲットとして、レーザ光源によるレーザ光照射と、超音波振動子による超音波照射とを同時に行う。これにより、水中でプラチナ板をレーザ照射によって微細化してナノ粒子化させるとともに、微細化したナノプラチナ粒子の凝集を超音波照射で抑制し、水中にナノプラチナ粒子が分散して浮遊した状態(レーザ微細化ナノプラチナ粒子水)の、重合剤などの有機の保護膜で覆われていないナノプラチナ粒子水を生成することができる。このような水中におけるレーザを用いた金属のナノ粒子化は、液相レーザーアブレーションの原理に基づく。
【0014】
次に、重合剤などの保護膜で覆われていないナノプラチナ粒子水の中に、ナノプラチナ粒子の粒径よりも大きな径の核粒子を混合し、核粒子の表面にナノプラチナ粒子を付着させる。水中に分散しているナノプラチナ粒子は活性化しているので、核粒子の投入により、核粒子の表面に付着させて、大きな核粒子の表面にナノプラチナ粒子を付着させることができる。
そして、その後、噴霧乾燥(スプレードライなどの方法により)した後、水素雰囲気で900℃、1時間程度加熱して水分を飛散させて、核粒子の表面にナノプラチナ粒子が付着した複合体とする。
なお、複合体に用いる核粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ジルコニア、炭化ケイ素などのセラミックス粒子が挙げられる。
また、ナノプラチナ粒子を付着させる核粒子としては、上記セラミックス粒子の他に、ビタミン誘導体やアスタキサンチン、プラセンタエキス、コエンザイム、ヒアルロン酸のいずれか、又はこれらの混合物なども挙げることができる。
なお、核粒子の大きさとしては、ナノプラチナ粒子の粒径よりも大きな径であればよく、その大きさを特定するものではないが、0.01〜10μm程度のものが取り扱い上、好ましい。
【0015】
<焼成ナノプラチナ粒子>
大きな径の核粒子の表面にナノプラチナ粒子を付着させた複合体の他の製造方法としては、従来の保護膜に覆われたコロイド状態のナノプラチナコロイド溶液を原料とすることもできる。
すなわち、従来技術で製造されるプラチナナノコロイド溶液は、水などの溶媒中にナノプラチナ粒子を分散、懸濁し、クエン酸、アスコルビン酸、ポリアクリル酸ナトリウムなどの重合体でコーティング(保護膜)されたものである。このようなコロイド状態のナノプラチナコロイド溶液は、保護膜で覆われていることで、ナノプラチナ粒子同士の凝集が抑制されて、ナノプラチナ粒子が水中にコロイド状態で分散されているものである。
このようなナノプラチナコロイド溶液は、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムを純水に溶解したものに、ヘキサクロロ白金酸結晶を加え、エタノールを入れ、窒素雰囲気に保ちながら還流することによってナノプラチナコロイド溶液を得ることができる(特許文献4参照)。
そして、このナノプラチナコロイド溶液に、ナノプラチナ粒子の粒径よりも大きな径の、シリカ、アルミナ、酸化チタンなどの、核粒子となるセラミックス粒子を混合してスラリー状態の混合液とする。その後、この混合液のスラリーをスプレードライヤー法(噴霧乾燥法)などの方法によって噴霧乾燥して、粒径の大きい核粒子(セラミックス粒子)の表面にナノプラチナコロイド粒子を付着させた噴霧複合体とする。
さらに、この噴霧複合体を電気炉などで加熱してナノプラチナコロイド粒子の表面を覆ってしているポリアクリル酸やクエン酸などの保護膜(有機物)を焼成除去する(例えば、100℃で1時間、酸化雰囲気)。
保護膜が除去された後の噴霧複合体は、前述の水中でレーザ微細化したナノプラチナ粒子を核粒子の表面に付着させた複合体と同様のものとなる。
【0016】
なお、核粒子として、ビタミン誘導体やアスタキサンチン、プラセンタエキス、コエンザイム、ヒアルロン酸のいずれか、又はこれらの混合物を用いる場合は、前述したレーザ微細化したナノプラチナ粒子水の中に、これらのビタミン誘導体やアスタキサンチンなどの核粒子を投入して、ビタミン誘導体の粒子表面にナノプラチナ粒子を付着させる。その後、これを、例えば60℃で12時間程度真空乾燥して複合体とする。
【0017】
<ナノプラチナ粒子含有化粧料の調製>
次に、上記のナノプラチナ粒子を表面に付着した複合体と、下記に示す化粧料成分を混合して化粧料とする。
なお、下記に列挙するものは一般に化粧料に含まれている成分であり、これらの中から適宜選択して化粧料成分として調整配合することができる。
【0018】
<化粧料成分>
なお、本実施形態に用いられる化粧料成分としては下記のものが挙げられる。
例えば、純水、DPG(ジプロピレングリコール)、ミネラルオイル、PPG−10メチルグルコース、シリカ、ヒアルロン酸Na、リン酸アスコルビルMg(ビタミンC誘導体)、レシチン、グリチルリチン酸、セラミド、アミノ酸、乳酸Na、グリセリン、加水分解コラーゲン、トコフェノール、クエン酸Na、天然アルブミン、EDTA−2Na、ステアリンアルコール、メチルパラベン、香料、ビタミンC誘導体、アルブチン、などである。
【0019】
<その他の添加剤>
その他、本実施形態に用いられる化粧料成分としては下記のものも化粧料に調整配合される添加剤として挙げられる。
例えば、界面活性剤、ゲル化剤、皮膜形成剤、紫外線防御剤、抗菌剤、香料、消臭剤、pH調整剤、清涼剤、血行促進剤、収斂剤、抗脂漏剤、美白剤、抗炎症剤、細胞賦活剤、保湿剤、キレート剤、角質溶解剤やナノプラチナ粒子以外の活性酸素除去剤などが挙げられる。また、精製水、温泉水、深層水等の水、エタノール等のアルコール類、オイル類などの溶剤なども挙げられる。
【0020】
化粧料の形態としては、例えば、乳液、クリーム、化粧水、美容液、パック、洗顔料、メーキヤップ化粧料、シャンプー、ヘアートリートメント、ヘアースタイリング剤、養毛剤、育毛剤などが挙げられるが、その形態を特定するものではない。
【0021】
<化粧料に占めるナノプラチナ粒子の配合割合>
複合体に、化粧料成分や添加剤を配合する割合は、ナノプラチナ粒子含有化粧料の抗酸化能を損なわない範囲とすることができるが、本実施形態では、化粧料に対して、プラチナナノ粒子が0.01〜10ppm含まれていることが好ましい。
この理由は、以下の評価の項目で詳細に述べる。
【0022】
<評価1>
本発明の化粧料に含まれるナノプラチナ粒子の抗酸化能を、一般的な評価系である、食品などの抗酸化能(1,1−diphenyl−2−picryl hydrazyl(DPPH)ラジカル消去能、以下DPPH消去能という)を用いて評価した。
ここで評価1として、DPPHラジカル消去法は以下の試験法を用いた。すなわち、DPPH(和光純薬製、1,1-ジフェニル-2-ビクリルヒドラジル)0.125mmol/Lエタノール溶液に調整する。これに、サンプルを加えた際に、サンプルに抗酸化性があれば、DPPH液のラジカルが減少し、紫色から黄色に溶液が変色する。その時のピークをDPPH液のピークから引いた値が、抗酸化力を示す値となるのである。
まず、DPPH液4mlにアスコルビン酸の2.5、5.0、7.5、10ppm濃度の標準水溶液をそれぞれ3ml入れて、標準濃度サンプルを調整して測定して検量線を作成した。
サンプル測定は、DPPH液4mlに4A濾紙で濾過したサンプル液3mlを入れて測定用サンプルを調整して測定した。
試験方法として、まず始めに、トロロックス(水溶性ビタミンE)を用いて検量線を作成した。その後、各サンプルについての測定を行い、それぞれについてサンプル1gあたりのDPPH消去能をトロロックス1mol相当に換算して、それらの値をDPPHラジカル消去能(DPPH単位/g)とした。
【0023】
<トロロックスを用いた検量線の作成>
トロロックスの添加量(水1g当たりに添加する質量(μg/g))を変化させ、各時間における検量線を作成した(図1参照)。次に、これらの検量線を用いてサンプル(SM)のDPPHラジカル消去能の算出を行った。
サンプル(SM)として、水1g当たりにSM1〜SM5に示す量を添加した。
SM1:トロロックス(水溶性ビタミンE、6μg/g)、
SM2:アスコルビン酸(水溶性ビタミンC、2μg/g)、
SM3:レーザ照射によって微細化したナノプラチナ粒子(0.5μg/g)、
SM4:ナノプラチナコロイドを加熱してコロイド保護膜を焼成除去したもの(ナノプラチナ粒子として0.5μg/g)、
SM5:コロイド保護膜(ポリアクリル酸)で覆われたままのナノプラチナ粒子(0.5μg/g)、の5種類を用意した。
【0024】
続いて、上記サンプルのDPPHラジカル消去能の測定を行った。
各サンプルのDPPH残存率(controlとして用意した水の吸光度を100%とし、算出したもの)の経時変化を図2に示す。
図2より、トロロックス(SM1)、アスコルビン酸(SM2)では、DPPH残存率の経時変化はみられず、ほぼ一定であった。
また、本発明のレーザ照射によって微細化したナノプラチナ粒子(SM3)、及び保護膜を焼成除去したナノプラチナ粒子(SM4)は、経時的にDPPH残存率が大きく減少する傾向が見られた。
なお、保護膜(ポリアクリル酸)で覆われたナノプラチナ粒子(保護膜で覆われた状態のナノプラチナ粒子コロイド溶液)であるサンプル(SM5)は時間経過とともにDPPH残存率が減少したがその傾向は鈍かった。
【0025】
次に、各時間(1,5,10分)経過後のDPPH消去能の算出を行った。
それぞれのサンプルにおけるDPPH残存率(15分間静置、10分後測定)の経時変化を図3に示した。
測定結果より、本発明の化粧料に含まれるナノプラチナ粒子(SM3、SM4)は、DPPH消去能が高いことが分かった。
【0026】
<評価2>
次に、評価2として、本発明の化粧料に含むナノプラチナ粒子の濃度(含有量)変化による抗酸化力に及ぼす影響を評価した。
DPPH溶液にナノプラチナ粒子を混合した水溶液の抗酸化力を、混合してから30分、90分経過した後に評価した。
また、ナノプラチナ粒子を混合した水溶液の濃度(ナノプラチナ粒子/水)を、0.005μg/g、0.01μg/g、0.05μg/g、0.10μg/g、0.20μg/gの5段階とした。
その結果を図4に示す。図4から分かるように、ナノプラチナ粒子の濃度が0.005μg/g以上であればナノプラチナ粒子の抗酸化力を確認できた。また、放置時間が長い程(90分)アスコルビン酸換算濃度が大きくなっており、ナノプラチナ粒子の抗酸化力が継続的に作用していることが分かる。
【0027】
<評価3>
評価3として、図5に、ナノプラチナ粒子を担持させたアスコルビン酸と、ナノプラチナ粒子を担持させないアスコルビン酸とにおける、それぞれの自然放置による抗酸化能の劣化速度を比較評価した結果を示す。
なお、ナノプラチナ粒子は前述したレーザ照射によって微細化したナノプラチナ粒子水とし、アスコルビン酸に対するナノプラチナ粒子の担持率は、0.05質量%(以下同じ質量%)、0.1%、0.2%に処理したものを、ナノプラチナ粒子1%の水溶液になるようにした。
ナノプラチナ粒子担持処理を3段階にて行い、それぞれを10ppm水溶液になるように超純水を用いて溶解させ、50℃−75%RH環境で自然放置し、毎日1回のこれらの抗酸化能成分量を測定した。
サンプリングのタイミング、詳細手順は以下のとおりとした。
・暴露試験前に初期性能を計測した。
・毎日1回のサンプリングは、正午12:00〜13:00の間に実施した。
本評価では、サンプリングした水に含まれるアスコルビン酸の抗酸化強度を分光光度計で測定した。
アスコルビン酸の抗酸化力を計測する手段として、DPPHラジカル消去法を用いた。
また、測定値は、あらかじめ既知濃度のアスコルビン酸を同時に測定し、その検量線から、サンプリングした水に含まれる抗酸化成分をアスコルビン酸換算として算出した。
抗酸化成分濃度測定では、各サンプルとも、5回測定を行い、最大値及び最小値を除く3つの値の平均を各サンプルの測定結果とした。
各サンプルの測定結果を図5に示す。図5から分かるように、アスコルビン酸にナノプラチナ粒子を担持させたものは、抗酸化成分量が相対比が下がらず抗酸化機能があることが分かる。
なお、blankはナノプラチナ粒子を担持させないアスコルビン酸である。
【0028】
<評価4>
次に、ナノプラチナ粒子のメラニン産生に及ぼす影響を評価4に示す。
評価4では、B16細胞からメラニン産生に及ぼすナノプラチナ粒子の影響(B16細胞メラニン産生抑制試験)を測定した。初発細胞密度を5×10 cells/mlとし、24well plate(2cm/well)で、B16BL6細胞の培養を行った。
培養1日目と3日目に新鮮培地と交換し、その都度、最終濃度が1ppmになるように、ナノプラチナ粒子または各種抗酸化剤(ビタミンC、レチノール、アルブチン及びアスタキサンチン)を添加した。
培養4日目にトリプシン処理により細胞を回収し、遠心することで細胞ペレットを得た。得られた細胞ペレットに、250μLの1M水酸化ナトリウム溶液を添加し、78℃で30分間インキュベートすることにより細胞を溶解した後、メラニン含量を475nmの吸光度で測定した。
各群のメラニン含量は、細胞数1×10 個あたりのメラニン含量を算出し、無添加(Untreated)群のメラニン含量に対する割合として表示した。
結果として、1ppmの濃度において、ビタミンC、レチノール、アルブチン及びアスタキサンチンは、B16細胞からのメラニン産生を抑制しなかった。
その結果を、図6に示す。図6から、ナノプラチナ粒子は、メラニン含量%が90%程度となり、メラニン産生を抑制する傾向があることが分かる。
なお、ナノプラチナ粒子は前述したレーザ照射によって微細化したナノプラチナ粒子水を用いた。
【0029】
<評価5>
次に、評価5として、ナノプラチナ粒子の濃度を変化させたときの抗酸化作用を評価した。評価5では、B16細胞からメラニン産生に及ぼすナノプラチナ粒子の濃度の影響を測定した。
まず、初発細胞密度を5×10 cells/mlとし、24wellplate(2cm/well)で、B16細胞の培養を行った。
培養1日目と3日目に新鮮培地と交換し、その都度、各濃度に調整したナノプラチナ粒子またはビタミンCを添加し、4日目にトリプシン処理により細胞を回収した。
回収した細胞懸濁液を(1mL)を遠心し、細胞ペレットに、250P1の水酸化ナトリウム溶液を添加して細胞を溶解し、メラニン含量を475nmの吸光度で測定した。
その結果を図7に示す。各群のメラニン含有量は、無添加(Untreated)群のメラニン含量に対する割合として表示した。
ナノプラチナ粒子は、B16細胞からのメラニン産生を濃度依存的に添加した。
図7から分かるように、0.05μg/g濃度以上のナノプラチナ粒子は、メラニン含有%が約60%、0.1μg/g濃度以上のナノプラチナ粒子は、メラニン含有%が50%、0.5μg/g濃度以上のナノプラチナ粒子は、メラニン含有%が42%、となり、メラニン産生を有意に抑制することが分かる。
なお、ナノプラチナ粒子は前述したレーザ照射によって微細化したナノプラチナ粒子水を用いた。
【実施例】
【0030】
本発明の化粧料を以下の実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
<実施例1>
以下の実施例に示す処方により化粧料としてクリーム組成物を得た。
[クリーム]
・複合体:0.2%(質量%、以下同じ)(水溶液でのプラチナ濃度0.5μg/g)
(シリカの表面に平均粒径2nmのナノプラチナ粒子を付着)
・自己乳化型脂肪酸モノグリセライド:0.8%
・ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタンモノステアレート:1.0%
・セタノール:1.5%
・ワセリン:3.5%
・スクワラン:4.0%
・グリセリン:6.0%
・プロピレングリコール:1.0%
・オリーブオイル:2.5%
・カルボキシビニルポリマー:0.5%
・水酸化カリウム:0.1%
・天然ビタミンE:0.05%
・オリーブ葉エキス:0.1%
・水添レシチン:0.1%
・純水:残
なお、クリーム1g当たりに占めるプラチナ濃度は0.5μgとした。上記の、複合体以外の成分を75℃に加温しながら混合して、乳化させ、その後35℃に冷却して、ナノプラチナ粒子を付着させたシリカを加えてクリームとした。
【0031】
以下の実施例に示す処方により化粧料として乳液組成物を得た。
<実施例2>
[乳液]
・複合体:0.2%(質量%、以下同じ)(水溶液でのプラチナ濃度0.5μg/g)
(シリカの表面に平均粒径2nmのナノプラチナ粒子を付着)
・ベヘニールアルコール:0.5%
・合成ゲイロウ:2.0%
・ソルビタンモノステアレート:1.2%
・ポリオキシエチレン(20E.O.)ベヘニールエーテル:1.8
・スクワラン:3.5%
・ステアリン酸:0.9%
・ブチレングリコール:9.0%
・水酸化ナトリウム:0.1%
・カルボニルビニルポリマー:0.1%
・オリーブ葉エキス:0.1%
・加水分解コラーゲン:0.1%
・トコフェロール:0.1%
・純水:残
なお、乳液1g当たりに占めるプラチナ濃度は0.5μgとした。上記の、複合体以外の成分を75℃に加温しながら混合して、乳化させ、その後35℃に冷却して、ナノプラチナ粒子を付着させたシリカを加えて乳液とした。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のナノプラチナ粒子と核粒子とを含有した化粧料は、ナノプラチナ粒子の粒径よりも大きな径の核粒子の表面に付着された複合体として存在しているので、ナノプラチナ粒子同士が凝集することがなく、化粧料の中で安定して存在させることができる。
また、前記複合体上のナノプラチナ粒子は、有機物などの保護膜で覆われていない状態で核粒子の表面に付着されているので、ナノプラチナ粒子の有する優れた抗酸化能を十分に発揮させることができる。
さらに、化粧料にナノプラチナ粒子を含有させておくと、化粧料の保存中における酸化を防止することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7