(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する。)について、図面を参照(言及図以外の図面も適宜参照)しながら説明する。なお、本実施形態における「上」、「下」、「左」、「右」、「手前(正面、前)」、「奥(背面、後)」の各方向は、
図1などに示した通りである。
【0010】
[メダル計数機1の全体構成]
本実施形態のメダル計数機1は、遊技者が獲得した、スロットマシン用のメダルを計数する装置であって、遊技機島の端部に配置されている。
図1に示すように、メダル計数機1は、本体部10と、操作表示部20と、案内部材30と、4つの計数ユニット100とを備えて構成されている。
【0011】
本体部10は、メダル計数機1の外形を構成しており、略直方体を呈している。本体部10の上部前側は上方に開放されており、計数しようとするメダルを受け入れる受け入れ口となる。本体部10は、左右方向に並設された計数ユニット100を本体部10の内側に収容することができる。本体部10の正面には、前後に動かして開閉可能な正面扉11が備えられている。
【0012】
操作表示部20は、主に遊技場の店員が、遊技者が獲得したメダルを計数するときに操作するインターフェイスである。操作表示部20は、メダル計数機1の上部奥側に配置されており、操作表示部20の上面は、手前に向かって下方に傾斜している。操作表示部20は、液晶ディスプレイ21と、スタートボタン22と、呼出ボタン23と、制御部24とを備えて構成されている。
【0013】
液晶ディスプレイ21は、計数ユニット100によって計数されたメダル数を遊技者が獲得したメダル数として表示する。
スタートボタン22は、メダルの計数を開始するために押下するボタンである。
呼出ボタン23は、メダルの計数の際、遊技者が店員を呼び出すために押下するボタンである。
【0014】
制御部24は、メダル計数機1の動作を制御することができ、例えば、操作表示部20内に配置された集中端子板上の制御回路によって実現される。制御部24は、操作表示部20が備える各部と、計数ユニット100と通信線(図示せず)を介して通信可能に接続されている。なお、前記集中端子板上には、制御部24の制御に関する信号、データ、情報、処理結果を記憶するためのメモリが備えられている。
【0015】
案内部材30は、本体部10の上部前側に配置されており、遊技場の店員が投入したメダルを、本体部10の内部に収容されている計数ユニット100の各々が有するメダルの受け入れ口へ案内する。案内部材30の詳細は、後記する。
【0016】
計数ユニット100は、スタートボタン22が押下された場合に、遊技者が獲得したメダルを計数する。計数ユニット100は、左右方向に並設されており、メダル計数機1の本体部10の内側に収容されている。
図2および
図3に示すように、計数ユニット100は、計数機器121と、貯留部122と、ベース部材123とを含んで構成されている。
【0017】
[計数ユニット100の詳細]
計数機器121は、メダルを一枚ずつカウントする機器である。カウントされたメダル数は、制御部24に記憶される。計数機器121は、計数回転盤131と、誘導通路132と、フォトセンサ133と、磁気センサ134と、振分けソレノイド135と、ディップスイッチ136(設定部)と、シュート137とを含んで構成されている。なお、計数回転盤131と、フォトセンサ133と、磁気センサ134と、振分けソレノイド135と、ディップスイッチ136とは、通信線(図示せず)によって通信可能に接続されており、制御部24と通信可能に接続されている。
【0018】
計数回転盤131は、円板状を呈し、計数機器121の上部に配置される。計数回転盤131には、板厚方向に貫通し、メダルよりも若干大きな外径からなる複数のメダル収納孔131aが形成されている。各遊技場で使用されているメダルは、小径メダルが大半であるが、大径メダルもある。前記メダル収納孔131aの大きさは、大径メダルも収納できる大きさであり、小径メダルも収納できる。前記メダル収納孔131aは、本実施形態では3個形成されている。
【0019】
計数回転盤131は、計数機器121内部に配置されている駆動モータ(図示せず)によって周方向に正逆回転する。計数回転盤131は、周方向に回転することにより、貯留部122に貯留されたメダルをメダル収納孔131aに一時的に収納する。計数回転盤131がさらに周方向に回転すると、メダル収納孔131aに収納されたメダルは、メダルの進行方向、つまり誘導通路132の奥端部に向かって放出される方向に計数回転盤131から少しずつ押し出されるが、放出ローラ(図示せず)によって一時的に阻止される。その後メダルは、放出ローラを付勢力に抗して押し広げて外方に向けて計数回転盤131から放出され、放出ローラの元へ戻ろうとする付勢力により弾き出され、誘導通路132上を通過する。
【0020】
誘導通路132は、計数機器121の上部にて、計数回転盤131の背面側から下方向誘導部材12にまでメダルの進行方向に延在している。誘導通路132のうち、磁気センサ134の後方、かつ、振分けソレノイド135の下方に位置する一部領域は、使用不可メダルが落下するために切欠かれている。
【0021】
なお、遊技機に投入されるメダルは、使用可能メダルと前記使用不可メダルの2つに分類することができる。「使用可能メダル」とは、1台または複数台の遊技機で使用することが許可されたメダルである。このような遊技機は、例えば、1つの遊技場内に配置され、現金からメダルへの交換率が同一となる遊技機である。同一の使用可能メダルが使用される複数台の遊技機間では、その使用可能メダルをどの遊技機でも使用できる。また、1台の遊技機で使用される使用可能メダルは、1種類または複数種類あってもよい。一方、「使用不可メダル」とは、1台または複数台の遊技機で使用される使用可能メダル以外のメダルである。このような使用不可メダルは、例えば、他の遊技場から持ち込んだメダルや、自身の遊技場内であっても現金からメダルへの交換率が異なる遊技機で使用される使用可能メダルが該当する。
【0022】
フォトセンサ133は、メダルの進行方向において磁気センサ134の手前側に配置されており、放出ローラの動きを検知することで、計数回転盤131から放出されたメダルを検知する。フォトセンサ133がメダルを検知すると、磁気センサ134は、メダルの真贋判定のための処理を開始する。
【0023】
磁気センサ134は、メダルが通過したことにより発生する電圧を検出する。磁気センサ134は、略直方体を呈する箱体を備えており、メダルの進行方向に貫通する孔を前記箱体の中心に有する。前記孔は、誘導通路132の一部を構成しており、メダル(大径メダルも含む)を通過させる。磁気センサ134は、磁気センサ134を駆動する回路と、前記孔の周りに多重に巻かれているコイルと、前記コイルに流れる電流による電圧値を計測する電圧計測器といったハードウェアが、前記箱体に収容される。前記コイルは、メダルを検知する環状(中空部を取り囲む形状)の検知部分であり、前記コイルの中空部は、前記孔に一致する(
図4参照)。なお、検知部分は、円形の環状であってもよいし、四角形の環状であってもよい。
【0024】
メダルは、磁気センサ134が備える環状の検知部分の中空部を通過し、つまりコイルの中を通過し、誘導通路132に沿って放出される。このとき、磁気センサ134は、メダルがコイルの中を通過したことに起因する電磁誘導により発生した電圧を検出できる。つまり、前記電圧計測器は、内部をメダルが通過したコイルに流れた電流の電圧値を計測する。
【0025】
図5を参照すると、磁気センサ134は、信号取得部141、142と、判定部143と、計数部144という機能構成部を含む。
【0026】
信号取得部141は、磁気センサ134が備える環状の検知部分の中空部を通過するメダルから、そのメダルを特徴付ける材質、外径、厚さという3つの要素のうちの第1の要素を特定するための第1の磁気信号を取得する。信号取得部141は、第1の要素を特定することに長けた磁気回路を有するセンサ素子として実装されている。信号取得部141に関する詳細は後記する。
【0027】
信号取得部142は、磁気センサ134が備える環状の検知部分の中空部を通過するメダルから、そのメダルを特徴付ける材質、外径、厚さという3つの要素のうちの第2の要素を特定するための第2の磁気信号を取得する。信号取得部142は、第2の要素を特定することに長けた磁気回路を有するセンサ素子として実装されている。信号取得部142に関する詳細は後記する。
【0028】
判定部143は、第1の磁気信号と、第2の磁気信号とを用いて磁気センサ134が備える環状の検知部分の中空部を通過するメダルが使用可能メダルであるか使用不可メダルであるかを判定する。また、判定部143は、第1の要素について使用可能メダルから予め取得した第3の磁気信号(基準磁気信号)と、第2の要素について使用可能メダルから予め取得した第4の磁気信号(基準磁気信号)とを記憶しており、メダルが使用可能メダルであるか使用不可メダルであるかの判定に用いることができる。判定部143は、前記判定の判定結果を、振分けソレノイド135と、計数部144とに送信する。振分けソレノイド135に送信される判定結果は、例えば、後記する規制部材135aの動きを制御する制御信号である。
【0029】
計数部144は、磁気センサ134が備える環状の検知部分の中空部を通過したメダル(以下、「通過メダル」と称する場合がある)を計数するとともに、判定部143の判定結果に基づいて、使用可能メダルと、使用不可メダルとを計数する。計数部144は、通過メダルの総枚数と、使用可能メダルの枚数と、使用不可メダルの枚数のうち少なくとも1つを、計数結果として出力し、前記計数結果を制御部24に送信する。
【0030】
図2、
図3に戻って、振分けソレノイド135は、磁気センサ134を通過したメダルが使用不可メダルであった場合に、そのメダルを使用可能メダルと振分ける。振分けソレノイド135は、誘導通路132のうち磁気センサ134の後方で切欠かれた一部領域の上方に配置されている。振分けソレノイド135は、判定部143の判定結果に応じて上下に移動可能な規制部材135aを有しており、規制部材135aを上下に動かすことで、使用可能メダルをメダルの進行方向に通過させ、使用不可メダルを前記一部領域から落下させる。
【0031】
ディップスイッチ136は、メダルの設定用スイッチであって、複数種類あるメダルから1つ以上のメダルを使用可能メダルとして設定するために用いられる。ディップスイッチ136は、計数機器121の左側面上に取り付けられている。ディップスイッチ136は、例えばオン・オフを切り替えることが可能な8つのスイッチを備えており、各スイッチを、遊技場で通常使用されている1種類のメダルに対応させることができる。
【0032】
貯留部122は、計数機器121の上に形成され、中空部を備えた箱状体である。貯留部122の上部は開放されており、上方から受け入れたメダルは貯留部122に貯留される。貯留部122の下部も開放されており、計数機器121内にメダルが落下する。
【0033】
ベース部材123は、計数機器121の下部に形成される部材であって、計数ユニット100の高さ調節のための部材である。ベース部材123は、シュート137を含んで構成されている。
【0034】
シュート137は、判定部143により判定され、振分けソレノイド135によって落下してきた使用不可メダルを計数ユニット100の手前側へ導く。
【0035】
[案内部材30の詳細]
図6および
図7に示すように、案内部材30は、案内部材30の外枠を構成する外枠部31と、外枠部31の内側に配置されている3つの中枠部32、33、34とを備える。外枠部31は、後傾斜部31aと、側壁部31b、31bと、前壁部31cとを備える。
【0036】
後傾斜部31aは、手前に向かって下方に傾斜しており、後傾斜部31aの傾斜面は、操作表示部20の上面と略面一となる。側壁部31b、31bは、左右両側で立設しており、本体部10の左右側面と面一となる。前壁部31cは、前側で立設しており、本体部10の前面と面一となる。よって、外枠部31は、計数ユニット100の各々が有するメダルの受け入れ口、つまり、貯留部122の上方にて中空部を形成する。
【0037】
なお、外枠部31の後傾斜部31a、側壁部31b、31bおよび前壁部31cの下端部にはそれぞれ、凹条部(または凸条部)が形成されており、外枠部31は、貯留部122の上端部の一部領域に形成されている凸条部(または凹条部)と嵌合することができる。また、メダル計数機1の本体部10の受け入れ口を構成する本体部10の上端面にて凸条部(または凹条部)を形成し、外枠部31が本体部10と嵌合するよう構成してもよい。
【0038】
中枠部32、33、34は、前後方向に延在しており、それらの両端は、後傾斜部31aの傾斜面と前壁部31cの内側面とに当接している。よって、中枠部32、33、34は、計数ユニット100の各々が有するメダルの受け入れ口と1対1で連通するように、外枠部31が形成する中空部を分割する。
【0039】
中枠部32、33、34の各々は、中枠部32、33、34の中央から左右両側(外側)に向かって下方に傾斜している傾斜面32a、33a、34aを形成している。
【0040】
左右方向に並設されている計数ユニット100の各々は当接していてもよいが、所定の間隔だけ空くようにして計数ユニット100を並設してもよい。例えば、
図7に示すように、互いに隣り合う計数ユニット100(より具体的には、計数ユニット100の貯留部122)同士が間隔Cだけ空いている場合、中枠部32の傾斜面32a、32aは、前記間隔Cを上方から覆うことができる程度に、中枠部32の中央から左右両側(外側)に向かって下方に延在していることが好ましい。
【0041】
図7に示すように、3つの中枠部32、33、34のうち中央の中枠部33の上部は、中枠部32、34の上部よりも高い位置にある。なお、3つの中枠部32、33、34のうち少なくとも1つの上部が、中枠部32、33、34の残りの上部よりも高い位置にあるように構成してもよい。このように中枠部32、33、34の上部の高さ位置を違える構成をとることで、3つの中枠部32、33、34の上部の高さ位置を同一にした構成と比較して、中枠部32、33、34によって分割された外枠部31の中空部が形成する上部開口領域を広くすることができる。
なお、中枠部32、33、34の下部の高さ位置は、外枠部31の下部の高さ位置と略同じである。中枠部32、33、34の下部は、中枠部32、33、34の下方にある、計数ユニット100の貯留部122の上部の一部分と当接または隣接している。
【0042】
[メダル計数機1の作用]
遊技場の店員がメダル計数機1のスタートボタン22を押下すると、計数ユニット100の各々は計数処理を実行するために始動する。遊技場の店員は、遊技者が獲得した複数枚のメダルを案内部材30の上方から流し込む。案内部材30の中空部を通過するメダルの大部分は、中枠部32、33、34の傾斜面32a、33a、34aに沿って落下するので、流し込まれたメダルは左右方向に略均一に分散して、計数ユニット100の各々の貯留部122に受け入れられる。よって、計数ユニット100の各々に略同量のメダルが行き渡り、計数ユニット100のすべてが有効に計数処理を実行することができ、その結果、メダル計数機1によるメダルの計数の実効速度を向上させることができる。
【0043】
所定の間隔(例えば、
図7に示す間隔C)だけ空くようにして計数ユニット100を並設している場合であっても、案内部材30の中枠部32、33、34は、前記間隔を上方から覆っている。よって、中枠部32、33、34は、遊技場の店員によって流し込まれたメダルが間隔Cに落下することを防止することができる。また、中枠部32、33、34の下部は、中枠部32、33、34の下方にある、計数ユニット100の貯留部122の上部の一部分と当接または隣接している。このため、中枠部32、33、34の下部と、貯留部122の上部の前記一部分との間にメダルが入り込むことができず、遊技場の店員によって流し込まれたメダルが前記間隔Cに落下することはない。
【0044】
遊技場の店員が極めて多くのメダルを短時間に流し込むことで、計数ユニット100の貯留部122にメダルが貯留されるに止まらず、案内部材30の中枠部32、33、34の上部を超えて高い位置にまで一時的にメダルが積み上がる場合がある。このような場合であっても、中央の中枠部33の上部の位置を中枠部32、34の上部の位置よりも高くし、中枠部32、33、34によって分割された外枠部31の中空部が形成する上部開口領域を広くすることで、前記上部開口領域を経由して短時間に多くのメダルを流下させることができる。つまり、中枠部32、33、34の上部の高さ位置を違えることで、流し込まれたメダルの落下を速くすることができる。
【0045】
案内部材30の中空部を経由して流し込まれたメダルは、4つの計数ユニット100の貯留部122のうちの1つの中に受け入れられる。スタートボタン22の押下によって計数ユニット100の計数機器121の計数回転盤131は周方向に回転しており、貯留部122内のメダルは、計数回転盤131のメダル収納孔131aに収納される。
【0046】
図3に示すように、計数機器121の計数回転盤131のメダル収納孔131a(
図2参照)から放出ローラ(図示せず)によって弾き出されたメダルは、誘導通路132に沿ってフォトセンサ133付近を通過する。フォトセンサ133は、放出ローラの動きを検知することでメダルを検知すると、メダル検知信号を磁気センサ134に送信することで、磁気センサ134にメダルの真贋判定の処理をさせる。
【0047】
もし、フォトセンサ133がメダルを一定時間検知しない場合、例えば、制御部24の制御により、計数ユニット100内部の環境温度変化などに対する磁気センサ134のキャリブレーション(較正)が行われる。
【0048】
フォトセンサ133付近を通過したメダルは、磁気センサ134が備える環状の検知部分の中空部を通過する。すると、信号取得部141、142は、磁気センサ134の電圧計測器が計測した、コイルに電流が流れたときの電圧値を用いて、第1の磁気信号、第2の磁気信号をそれぞれ取得する。第1の磁気信号、第2の磁気信号は、所定のサンプリング間隔(メダルが、磁気センサ134の検知部分の中空部に進入してから、その中空部を通過し終えるまでの時間長よりも非常に短い間隔)で電圧計測器が計測した電圧値(信号強度)の集まりからなる波形を有する。
【0049】
従来の磁気センサは、その磁気センサの近傍(例えば、下方または側方)をメダルが通過するように配置されていたので、従来の磁気センサは、例えば通過したメダルをカウントすることしかできない。本実施形態の磁気センサ134は、メダルが磁気センサ134の検知部分の中空部を通過できる構成を有しているので、立体的に全方位の磁束の変化に起因する電圧を検出することができる。そのため、磁気センサ134は、単に通過したメダルをカウントするだけでなく、メダルの材質、外径、厚さを特定するための詳細な情報も取得できる。メダルの材質、外径、厚さが異なると、第1の磁気信号、第2の磁気信号の波形も異なるからである。一般的には、メダルに用いる金属の誘電率が大きいほど磁気信号のピーク強度が大きくなる。また、メダルの外径が大きいほど磁気信号の検知時間長が大きくなる。また、メダルの厚さが大きいほど磁気信号のピーク強度が大きくなる。
【0050】
なお、メダルの厚さは、概ね1.6mmであるが、磁気センサ134は、メダルの表面全領域および裏面全領域の各位置の厚さを求めることができる。よって、磁気センサ134は、メダルの表面および裏面に描かれた模様を、異なる厚さの集まりとして識別できるとともに、メダルの一部領域に貫通して形成された孔も識別できる。
【0051】
メダルの外径についても、磁気センサ134は、立体的に全方位の磁束の変化に起因する電圧を検出することができるため、メダルの外径が小径または大径であることを識別できるし、メダルの側面に刻まれた溝の凹凸なども識別できる。
【0052】
メダルの材質に関しては、ステンレス、洋白、真鍮、バイメタルなど多数使用されており、さらにメッキが施されているメダルもあるので、メダルの種類は多岐に亘る。そして、そのような材質も第1の磁気信号、第2の磁気信号の波形を変える要因になるので、本実施形態の磁気センサ134は、そのようなさまざまな材質を識別できる。
【0053】
信号取得部141、142が取得した第1の磁気信号と、第2の磁気信号とは、判定部143に送信される。例えば、判定部143は、サンプリングタイミングごとの第1の磁気信号の信号強度と第2の磁気信号の信号強度とを、メダル識別用のアルゴリズム(所定のアルゴリズム)に適用して、メダル固有の2元的なメダル識別用パラメータ(値)を出力、解析することで、磁気センサ134を通過したメダルを識別できる。例えば、判定部143は、予め記憶している第3の磁気信号と第4の磁気信号に対応する2元的なメダル識別用パラメータ(値)を出力し、双方のメダル識別用パラメータが一致するか否かで(所定の比較)、磁気センサ134を通過するメダルが使用可能メダルか使用不可メダルかを判定できる。
【0054】
また、判定部143は、例えば、第1の磁気信号と、予め記憶している第3の磁気信号との波形の相関度を算出し、かつ、第2の磁気信号と、予め記憶している第4の磁気信号との波形の相関度を算出する。判定部143は、算出した2つの波形の相関度が所定の閾値を超えるか否かを判定して(所定の比較)、ともに所定の閾値を超えるときには、磁気センサ134を通過するメダルが使用可能メダルと判定し、そうでなければ使用不可メダルと判定する。
【0055】
判定部143による判定結果は、振分けソレノイド135と、計数部144とに送信される。前記判定結果は、磁気センサ134を通過したメダルが使用可能メダルであるか、または使用不可メダルであることである。振分けソレノイド135は、判定部143から、使用可能メダルであるという判定結果を受信したときには、規制部材135aを下方に動かさない。その結果、使用可能メダルと判定されたメダルは、誘導通路132の奥端部に到達し、メダル回収システムに回収される。
【0056】
一方、振分けソレノイド135は、判定部143から、使用不可メダルであるという判定結果を受信したときには、規制部材135aを下方に動かす。その結果、使用不可メダルと判定されたメダルは、誘導通路132の奥端部に到達することなく、誘導通路132の切欠かれた一部領域から落下し、シュート137を経由して計数ユニット100の手前側へ導かれる。なお、並設されている複数の計数ユニット100の手前側、つまりメダル計数機1の正面扉11の裏側には、使用不可メダルを回収する1つの回収ボックス(図示せず)が配置されている。前記回収ボックスは、各計数ユニット100のシュート137と連通する受入口を有しており、シュート137を経由した使用不可メダルを回収することができる。
【0057】
メダル計数機1は、前記回収ボックスに回収された使用不可メダルが所定枚数に達した場合には、例えば制御部24を介して、メダル計数機1からアラームを出力させることができる。前記回収ボックス内に積み上がった使用不可メダルの高さを検知する高さ検知センサを用いて、積み上がった使用不可メダルの高さが所定の高さに達した場合に前記アラームを出力してもよい。遊技場の店員は、前記アラームに対して、メダル計数機1の正面扉11を開け、前記回収ボックスを取り出し、前記回収ボックス内の使用不可メダルを回収する。
【0058】
計数部144は、通過メダルを計数し、通過メダルの総枚数を計数結果として出力し、制御部24に送信する。また、計数部144は、判定部143の判定結果に基づいて、使用可能メダルおよび使用不可メダルを計数し、使用可能メダルの枚数および使用不可メダルの枚数を計数結果として出力し、制御部24に送信する。
【0059】
なお、計数部144については、通過メダルを計数しないように設定できる。また、使用可能メダルを計数しないように設定できるし、使用不可メダルを計数しないように設定できる。このようなさまざまな計数の有無の設定は、例えば、制御部24から計数部144に対して指令することで実現できる。
【0060】
メダル計数機1の制御部24は、計数部144が出力した計数結果を、計数ユニット100の各々から取得する。制御部24は、計数結果を解析して、計数ユニット100で計数された通過メダルの数を足し合わせることでメダル計数機1が受け入れたメダルの数(総数)を決定する。また、制御部24は、計数ユニット100で計数された使用可能メダルを足し合わせることでメダル計数機1が受け入れた使用可能メダルの数を決定し、計数ユニット100で計数された使用不可メダルを足し合わせることでメダル計数機1が受け入れた使用不可メダルの数を決定する。
【0061】
メダル計数機1の制御部24からの指示により、操作表示部20の液晶ディスプレイ21は、メダル計数機1が受け入れた、メダルの総数と、使用可能メダルの数と、使用不可メダルの数とを表示する。なお、制御部24からの指示により、メダル計数機1が受け入れた、メダルの総数と、使用可能メダルの数と、使用不可メダルの数のうち少なくとも1つを表示してもよい。
【0062】
本実施形態によれば、メダル計数機1の計数ユニット100の各々において、磁気センサ134の判定部143は、磁気センサ134が備える環状の検知部分の中空部を通過するメダルを特徴付ける材質、外径、厚さという3つの要素のうち異なる2つの要素を特定するための第1の磁気信号および第2の磁気信号を用いて前記異なる2つの要素についての2元的なメダルの識別を行う。このため、メダルに関する1つの要素(例えば材質)についてメダルの識別を行っていた従来技術と比較して、遊技者が獲得したメダルを高精度で識別でき、メダルの真贋判定を高精度で行うことができる。
【0063】
また、メダルの真贋判定の従来技術のなかには、遊技に使用されたメダルの画像データをカメラなどで取得し、使用可能メダルの画像データとのマッチング判定を行う技術がある(例えば、特許文献1参照)。しかし、計数のために所定の箇所へ誘導されるメダルをカメラで撮像すること、およびその後のパターンマッチングなどの画像処理は、たとえ一旦停止することなくメダルを撮影するとしても、概して多くの時間を要する。よって、マッチング判定によってメダルの真贋判定を行う従来のメダル計数機に関して、メダルの計数を速くすることには限度があった。
【0064】
本実施形態の計数ユニット100の磁気センサ134による、メダルからの磁気信号の取得は、メダルの撮像および画像処理と比較して非常に短時間に行われる。よって、計数ユニット100によるメダルの真贋判定は非常に短時間で済み、計数ユニット100の計数を速くすることができ、その結果、本実施形態のメダル計数機1のメダルの計数を速くすることができる。
【0065】
以上の説明から、本実施形態によれば、メダル計数機1のメダルの計数を速くすることと、メダルの真贋判定を高精度で行うこととを両立することができる。
【0066】
また、メダルの真贋判定のためのカメラを用いる場合、カメラに対して、度重なる使用によるメダルの汚れが大きく影響してしまうため、メダルの洗浄などの定期メンテナンスが必要となり煩雑であった。本実施形態のメダルの真贋判定は、その判定に用いる磁気信号がメダルの汚れの影響をほとんど受けないので、前記定期メンテナンスは基本的には必要ない。
【0067】
また、本実施形態の磁気センサ134には磁石を使用しないので、例えば磁気センサ134に外部からの磁性粉が付着して磁気センサ134におけるメダルの識別処理に支障をきたすことは無い。
【0068】
また、本実施形態によれば、メダル計数機1の制御部24は、計数ユニット100の各々から取得した計数結果を用いて、メダル計数機1が受け入れた、メダルの総数と、使用可能メダルの数と、使用不可メダルの数のうち少なくとも1つを決定するので、遊技者が獲得したメダルの最終的な数を確定することができる。例えば、メダル計数機1が受け入れたメダルの総数をそのまま遊技者が獲得したメダルの数とすることもできるし、メダル計数機1が受け入れた使用可能メダルの数を、遊技者が獲得したメダルの数とすることもできる。さらに、決定された使用不可メダルの数が所定枚数を超えていれば、不正行為の蓋然性が高いとして、遊技者が獲得したメダルの数を特別に減らすなどの懲罰的な措置をとることもできる。
【0069】
さらに、本実施形態の計数ユニット100は、判定部143がメダルの真贋判定の判定結果を、例えば、制御部24を経由させることなく、振分けソレノイド135に直接送信する。このため、振分けソレノイド135による使用不可メダルの振分けを迅速かつ確実に行うことができる。その結果、計数ユニット100によるメダルの計数を速くすることができ、ひいては、メダル計数機1によるメダルの計数を速くすることができる。
【0070】
ただし、本発明に関して、遊技場の店員のメダル投入ペースを追従できるなどの条件を満たすことができれば、計数ユニット100単体が信号取得部141、142と、判定部143と、計数部144とを備えることを必須としない。例えば、判定部143という機能部を制御部24に備える形態でもよい。この場合、磁気センサ134の信号取得部141、142が取得した第1の磁気信号、第2の磁気信号を制御部24に送信してメダルの真贋判定が実行される。その後、判定結果が、制御部24から計数ユニット100の振分けソレノイド135に送信される。
【0071】
遊技場の店員は、メダル計数機1から計数ユニット100をすべて取り出して、すべての計数ユニット100のディップスイッチ136のスイッチの1つ以上をオンに切り替え、他のスイッチをオフに切り替えた後、メダル計数機1内にすべての計数ユニット100を配置する。このような操作によって、オンに切り替えたスイッチに対応しているメダルを、メダル計数機1に使用する使用可能メダルとして設定することができる。
【0072】
ディップスイッチ136によって使用可能メダルが設定されたとき、使用可能メダルの設定情報がディップスイッチ136から磁気センサ134に送信される。よって、磁気センサ134の判定部143は、使用可能メダルがどのような種類のメダルに設定されているかを認識することができ、設定された使用可能メダルから予め取得した第3の磁気信号と、第4の磁気信号とを新たに記憶することができる。なお、すでに市場に普及している任意の種類のメダルに対する第3の磁気信号と、第4の磁気信号とは、事前に生成され、例えばホールコンピュータなどの上位装置に記憶されており、必要に応じてメダル計数機1の制御部24を経由して、磁気センサ134の判定部143に送信される。
【0073】
このように、本実施形態の計数ユニット100は、ディップスイッチ136を備えることで、遊技に使用される使用可能メダルをメダル計数機1に対して容易に設定することができる。遊技に別の使用可能メダルを使用してメダル計数機1内に計数ユニット100を配置するときは、遊技場の店員は、ディップスイッチ136を操作して、前記別の使用可能メダルに対応するスイッチをオンにし、他のスイッチをオフにするだけでよい。なお、例えば、メダル計数機1の操作表示部20にディップスイッチ136と同等の機能を有するスイッチを備えてもよい。
【0074】
また、ディップスイッチ136を用いて、特定の遊技場内でのみ使用する独自のメダルを使用可能メダルとして設定することができる。前記独自のメダルは、各遊技場で使用されているメダルに対して、特有の模様を施したり、所定領域に1または複数の穴を空けたりなどして、他の遊技場では用いられることの無いメダルである。そのように作製された独自のメダルに対して、磁気センサ134を用いてティーチングを行い、第1の磁気信号と、第2の磁気信号とに対応する磁気信号を事前に取得しておく。そして、ディップスイッチ136の1つのスイッチを、前記独自のメダルに予め対応させておく。
【0075】
遊技場の店員が前記独自のメダルを、遊技に使用する使用可能メダルにすると決めた場合には、メダル計数機1内のすべての計数ユニット100のディップスイッチ136を操作して、前記独自のメダルに対応するスイッチをオンにし、他のスイッチをオフにすればよい。
【0076】
このように、本実施形態の計数ユニット100は、ディップスイッチ136を備えることで、特定の遊技場内でのみ使用する独自のメダルも使用可能メダルとして容易に設定できる。
【0077】
(その他)
本実施形態では、メダルを特徴付ける複数の要素として、メダルの材質、外径、厚さという3つの要素を採り上げた。しかしながら、本実施形態で取り扱う、メダルを特徴付ける要素は上記に限定されず、例えば、メダルの重量を前記要素としてもよい。また、本実施形態のメダルの識別を行うのに必要とする要素の個数は、2つでもよいし、4つ以上でもよい。
【0078】
また、本実施形態では、第1の磁気信号と、第2の磁気信号という、少なくとも2種類の磁気信号を用いて、磁気センサ134が備える環状の検知部分の中空部を通過するメダルの識別が行われる。しかしながら、3種類以上の磁気信号を用いてメダルの識別が行われてもよく、したがって、メダルを特徴付けるすべてまたは一部の要素を用いてメダルの識別が行われてもよい。
【0079】
また、本実施形態の計数ユニット100は、磁気センサ134が備える環状の検知部分の中空部をメダルが通過するように構成されている。しかしながら、磁気センサ134が第1の磁気信号および第2の磁気信号を取得できるのであれば、磁気センサ134の検知部分が環状であること、検知部分の中空部をメダルが通過すること、は必須の発明特定事項ではなく、磁気センサ134の検知部分をメダルが通過するように構成することも可能である。例えば、磁気センサ134の検知部分は、コ字状、またはC字状であってもよい。
【0080】
メダル計数機1が備える計数ユニット100は、4つに限定されず、2つ、3つ、あるいは5つ以上であってもよい。また、メダル計数機1が計数ユニット100については、左右方向に並設するだけでなく、前後方向に並設すること、2以上の列に並設すること、などさまざまな並べ方にしてもよい。また、計数ユニット100の並べ方に応じて、メダル計数機1におけるメダルの十分大きな受け入れ口が開放されるようにして案内部材30の材質、形状、配置などを変更することができる。
【0081】
メダル計数機1の正面扉11を、使用不可メダルを回収可能な箱体とすることができる。この場合において、前記正面扉11は、各計数ユニット100のシュート137と連通する受入口を有しており、シュート137を経由した使用不可メダルを回収することができる。また、前記正面扉11は、回収した使用不可メダルを前記正面扉11の手前に返却するための返却口を有してもよい。
【0082】
また、
図2、
図3を参照すると、計数回転盤131および誘導通路132などは、奥方向に向かって下方に進むように、計数機器121の上部が傾斜している。しかしながら、例えば、計数機器121の上部が水平であっても、本発明を適用できる。
【0083】
なお、
図1などに示されている計数ユニット100は、遊技媒体を使用して機能する遊技媒体使用機の具体例の1つである。遊技媒体使用機の他の具体例としては、遊技媒体貸出機内に配置されている払い出しホッパーおよび計数ホッパー、遊技機内に配置されている払い出しホッパーなどがある。遊技媒体使用機が遊技機内に配置されている払い出しホッパーである場合には、磁気センサ134と同等の磁気センサを、前記払い出しホッパーの払い出し口に配置するとよい。
【0084】
本実施形態で説明した技術を組み合わせた技術を実現できる。
その他、本発明の装置を構成する部材の材質、形状、配置などは、適宜変更できる。