(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
換気空調設備のダクトの途中に介挿されて前記ダクトと接続される上流側および下流側の開口部、および前記開口部とは異なる位置に設けられた開閉可能な挿入口を有するケーシングボックスと、
ゴム製の袋状の部材であって、前記挿入口から前記ケーシングボックスの内部に挿入されて、気体が供給されると前記ケーシングボックス内で膨張して前記ダクトを閉止する閉止部材と、
前記ケーシングボックスに着脱可能な膨張装置とを備え、
前記膨張装置は、膨張させる前の前記閉止部材、および、圧縮された前記気体が格納されているボンベを収納する収納部と、前記閉止部材と前記ボンベとの間に接続される配管および開閉弁とを有し、前記挿入口を覆う位置で前記ケーシングボックスに着脱可能であり、
前記膨張装置には、前記ケーシングボックスに装着された際に前記ケーシングボックスの前記挿入口が設けられている面と対向する面において、膨張させる前の前記閉止部材を挿入するための閉止部材差込口が設けられており、
前記挿入口の位置および大きさと、前記ケーシングボックスに装着された際の前記閉止部材差込口の位置および大きさとは、それぞれ略一致することを特徴とするダクト閉止装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
−−−第1の実施の形態−−−
図1〜3を参照して、本発明によるダクト閉止装置およびダクト閉止方法の第1の実施の形態を説明する。
図1は、本実施の形態のダクト閉止装置の構造、および、このダクト閉止装置によるダクトの閉止動作について説明する模式図である。本実施の形態のダクト閉止装置17は、ケーシングボックス16と、膨張装置20とを備えている。
【0009】
ケーシングボックス16は、箱状のケーシングボックス筐体16aを有する。
図1の紙面の前後方向に面したケーシングボックス筐体16aの前面および背面には、それぞれ開口部16bが設けられている。各開口部16bの外周には、換気空調設備のダクトと接続するためのフランジ部16cが設けられている。
図1の紙面の上方向に面したケーシングボックス筐体16aの上面には、挿入口16dと、つば受け部16fとが設けられている。
【0010】
挿入口16dは、後述する閉止部材14をケーシングボックス筐体16aの内部に挿入するための開口である。挿入口16dには、挿入口16dを開閉するための蓋16eが設けられている。蓋16eは、たとえばスライド式の蓋である。
【0011】
つば受け部16fは、膨張装置20の後述するつば部20bが挿通されるとつば部20bの図示上下および左右方向への規制をする受け部である。
【0012】
膨張装置20は、膨張装置筐体20aの内部に配管(ゴム管)21と開閉弁(エアバルブ)13が設けられている。また、膨張装置20は、膨張装置筐体20aの内部にガスボンベ12と閉止部材14とを収納できる。すなわち、膨張装置筐体20aはガスボンベ12および閉止部材14の収納部である。膨張装置筐体20aの底面には、閉止部材差込口15が設けられている。図示左右方向に面した膨張装置筐体20aの側面の下部には図示左右方向外側に突出するつば部20bが設けられている。
【0013】
閉止部材14は、たとえばゴム製の袋状の部材であり、気体(空気)を内部に入れるための注入口(不図示)が設けられている。閉止部材14は、注入口から空気が入れられると膨張する。ガスボンベ12は、たとえば圧縮空気が詰められたボンベであり、閉止部材14を膨張させるためのガス源として用いられる。ゴム管21は、ガスボンベ12の圧縮空気を閉止部材14に供給するための配管である。エアバルブ13は、ガスボンベ12の圧縮空気の閉止部材14への供給を許可/禁止する開閉弁である。なお、エアバルブ13の配設位置は、ゴム管21の途中でもよく、ゴム管21の端部でもよい。
【0014】
閉止部材差込口15は、後述するように膨張装置20がケーシングボックス16に装着されたときに、閉止部材14をケーシングボックス16の内部へ差し込む(挿入する)ための開口である。
【0015】
つば部20bは、後述するように膨張装置20をケーシングボックス16に装着する際に、ケーシングボックス16のつば受け部16fに挿通される部位である。
【0016】
このように構成されるダクト閉止装置17は、換気空調設備のダクトの途中に介挿されて、フランジ部16cでダクトと接続される。換気空調設備の通常の運転時には、膨張装置20はケーシングボックス16から取り外しておく。そして、ケーシングボックス筐体16aの挿入口16dを蓋16eで閉じておく。これにより、空気が外部に漏れることを防止しながらケーシングボックス16を介してダクトに空気を流すことができる。
【0017】
換気空調設備の定期的な点検やメンテナンスの際にダクトを閉止する場合には、
図1に示すように、膨張装置20をケーシングボックス16に装着する。膨張装置20の装着の具体的な一例としては、たとえば、
図1の紙面における斜め前後方向に膨張装置20を移動させて、つば部20bをケーシングボックス筐体16aの上面のつば受け部16fに挿通させることで膨張装置20をケーシングボックス16に装着できる。この際、膨張装置20の装着前に挿入口16dの蓋16eをスライドさせて挿入口16dを開放してもよく、膨張装置20の装着後に閉止部材差込口15を介して挿入口16dの蓋16eをスライドさせて挿入口16dを開放してもよい。
【0018】
そして、膨張装置20の装着後、閉止部材差込口15および挿入口16dを介して閉止部材14をケーシングボックス16の内部へ挿入する。挿入後、エアバルブ13を開いてガスボンベ12内の圧縮空気を閉止部材14に供給することで、閉止部材14をケーシングボックス筐体16aの内部で膨張させる。これにより、ケーシングボックス筐体16aの前面および背面に設けられた開口部16bが閉止部材14によってそれぞれ塞がれるので、ケーシングボックス16に接続されたダクトを閉止できる。
【0019】
ダクトの閉止を解除する場合には、閉止部材14の内部の空気を抜いて閉止部材14を萎ませる。そして、閉止部材差込口15および挿入口16dから萎んだ閉止部材を抜き取る。以降、上述した膨張装置20の装着手順とは逆の手順で膨張装置20をケーシングボックス16から取り外せばよい。なお、膨張装置筐体20aからダクトの閉止に使用した閉止部材14およびガスボンベ12を取り外し、未使用の閉止部材14およびガスボンベ12を膨張装置筐体20aに装着することで、膨張装置20は繰り返し利用できる。
【0020】
たとえば、
図2に示すように、定期的に点検やメンテナンスを必要とする機器(
図2では点検機器として示す)に接続されるダクト1の途中にケーシングボックス16をあらかじめ設置しておく。点検やメンテナンスをする際に、上述したように膨張装置20をケーシングボックス16に装着し、閉止部材14をケーシングボックス16の内部へ挿入して、
図2に示すように閉止部材14をケーシングボックス筐体16aの内部で膨張させればよい。
【0021】
図3は、ファン3を複数台(たとえば2台)設けた換気空調設備の例を示す図である。ファン3で吸引された外気は、ルーバ8を介して換気空調設備に取り込まれ、フィルタ7で濾過され、コイル6で温度調節がなされた空調空気としてダクト1を経由して各部へ送風される。
図3に示した例では、たとえば空調空気送風用の第1送風系統と第2送風系統とを有し、一方の1系統にて送風し、他方の1系統を予備の系統とする設備構成であるものとする。
【0022】
第1送風系統および第2送風系統には、それぞれ上流側から順に、吸気側ダンパ4a、ファン3、排気側ダンパ4bが設けられている。なお、ここで、吸気側ダンパ4aは、ファン3の吸気側に設けられたダンパであり、排気側ダンパ4bは、ファン3の排気側に設けられたダンパである。これらの機器同士は、送風系統毎にダクト1および伸縮継手2などでそれぞれ接続されている。第1送風系統および第2送風系統は、それぞれの排気側ダンパ4bの下流で合流している。
【0023】
図3において、符号11を付している塗りつぶし箇所は、本実施の形態のダクト閉止装置17の配設位置(配設候補箇所)の例を示した箇所である。配設候補箇所11としては、たとえば、ファン3の吸気口と伸縮継手2との間のフランジ部分や、ファン3の排気口と伸縮継手2との間のフランジ部分、排気側ダンパ4bから第1送風系統と第2送風系統との合流地点までの間の箇所、等が挙げられる。
【0024】
たとえば、第1送風系統で空調空気を送風し、第2送風系統を予備の系統としたときに、第1送風系統での送風を継続しながら第2送風系統のファン3を点検する場合について考える。この場合には、たとえば第2送風系統のファン3の排気口と伸縮継手2との間のフランジ部分(配設候補箇所11)に設けられたダクト閉止装置17によってダクト1を閉止すればよい。また、この場合には、たとえば第2送風系統の排気側ダンパ4bから第1送風系統と第2送風系統との合流地点までの間の箇所(配設候補箇所11)に設けられたダクト閉止装置17によってダクト1を閉止してもよい。
【0025】
たとえば第2送風系統の排気側ダンパ4bを点検する場合には、第2送風系統の排気側ダンパ4bから第1送風系統と第2送風系統との合流地点までの間の箇所(配設候補箇所11)に設けられたダクト閉止装置17によってダクト1を閉止すればよい。
【0026】
このように、本実施の形態のダクト閉止装置17を用いることで、たとえば点検対象機器に係る換気空調設備の系統以外の系統から点検対象機器に係る換気空調設備の系統への空気の流れ込みを防止できるので、換気空調設備の複数の系統のすべてを停止させる必要がなくなる。したがって、換気空調設備の運転を継続しながら機器の点検等を行えるので、建物内の安全性、機能性、快適性が改善され、換気空調設備の品質信頼性を向上できる。
【0027】
あらかじめケーシングボックス16を設置しておくことで、従来の閉止板を用いる場合と比べて、フランジのボルトの着脱作業が省略できる。また、閉止作業自体も簡単な作業となり短時間でダクトを閉止できる。これにより、点検等に要する時間を短縮化でき、点検等に要するコストを削減できる。
【0028】
さらに、ダクト閉止装置17の主たる構成要素がケーシングボックス16と閉止部材14であるので、簡便な構成でダクトを閉止できる。したがって、ダクト閉止装置17を設ける際のコスト増を抑制できる。また、閉止部材14の素材にたとえばゴムなどを用いることで、閉止部材14が容易に膨張すると共に、膨張時のケーシングボックス筐体16aの開口部16bの周縁部分との密着性が良好となる。これにより、ダクト閉止装置17によるダクト閉止時の気密性を向上できる。
【0029】
−−−第2の実施の形態−−−
図4を参照して、本発明によるダクト閉止装置およびダクト閉止方法の第2の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、上述したダクト閉止装置17と伸縮継手2とを一体化した点で、第1の実施の形態と異なる。
【0030】
図4は、本実施の形態のダクト閉止装置18を模式的に示した図である。本実施の形態のダクト閉止装置18は、伸縮継手2と、ケーシングボックス16と、膨張装置20とを備えている。本実施の形態では、ケーシングボックス筐体16aと伸縮継手2の一方のフランジ2Fとが一体化されている。ケーシングボックス筐体16aの、上述した伸縮継手2の一方のフランジ2Fと一体化されている面と対向する面には、フランジ取り付け部16gが設けられている。フランジ取り付け部16gとダクト1のフランジ1Fとは、締結ボルト1Bによって締結される。
【0031】
本実施の形態のダクト閉止装置18では、ダクト1のフランジ1Fとダクト閉止装置18との間に容易に隙間を設けられる。すなわち、締結ボルト1Bを外して、伸縮継手2のシッピングボルト9を締め込むことで伸縮継手2を縮退させると、フランジ2Fおよびこれと一体化されているケーシングボックス筐体16a(すなわちケーシングボックス16と膨張装置20)が図示右方向に移動する。これによりダクト1のフランジ1Fの端面と、フランジ取り付け部16gが設けられているケーシングボックス筐体16aの端面との間に隙間が生じる。したがって、ケーシングボックス16の交換等のメンテナンスを容易に実施できる。
【0032】
−−−第3の実施の形態−−−
図5〜13を参照して、本発明によるダクト閉止装置およびダクト閉止方法の第3の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態が第1の実施の形態と相違するのは、主に、閉止部材22の膨張方式である。
【0033】
図5(a)は、本実施の形態のダクト閉止装置27を模式的に示す斜視図であり、
図5(b)は、ダクト閉止装置27を側面から見た断面図である。
図5は、非使用時のダクト閉止装置27を示す。
【0034】
本実施の形態のダクト閉止装置27は、ケ−シングボックス16Aと、ケーシングボックス筐体16a内部に設けられた閉止部材22と、閉止部材圧縮解放装置26とを備えている。
―ケ−シングボックス16A―
ケ−シングボックス16Aは、第1の実施形態と同様の箱状のケーシングボックス筐体16aを有する。
図5(a)の紙面の下方向に面したケーシングボックス筐体16aの下面には、開口部16jと、開口部16jを閉鎖および開放する回動式の開閉扉16iとが設けられている。開閉扉16iの内面には閉止部材固定用フック16hが設けられている。これら開口部16j、開閉扉16i、および閉止部材固定用フック16hについては後述する。
【0035】
―閉止部材22―
閉止部材22は、たとえば、
図9(d)の断面図に示すように、袋体22aと、袋体22a内に設けられた多孔質体22bと、袋体22aの上端辺に取り付けられた閉止部材巻取シャフト22cと、袋体22の下端辺に取り付けられた閉止部材固定用取手22dとを有する。閉止部材巻取シャフト22cの両端をケーシングボックス筐体16aの側壁で回転可能に支承することにより、ケーシングボックス筐体16aの内部において、収納状態と使用状態との間で移動可能に閉止部材22が保持される。
【0036】
閉止部材22は、ダクト1を閉止しない場合、すなわち収納時には閉止部材巻取シャフト22cに巻き取られて、たとえば、
図5(a)に示すように、紙面上方向となるケーシングボックス筐体16aの上部に収納されている。
【0037】
袋体22aは、第1の実施形態と同様に、たとえばゴムなどの伸縮性、柔軟性を有する材料による袋状の部材であり、たとえばマチが設けられた封筒状の形状を呈している。袋体22aの内部に設けられたスポンジ状の多孔質体22bは、変形復元性を有する多孔質体であり、弾力性があって、外力が加えられると変形し、加えられた外力が除去されると、外力が加えられる前の形状に復元するような多孔質材料が用いられる。袋体22aは、多孔質体22bが初期の形状に復元されるとき、その外形形状に応じて膨張変形して開口部16bを閉止する弾性材料で製作されている。
【0038】
この実施形態では、
図5(a)に示すように、閉止部材収納時、袋体22aと多孔質体22bは圧縮されて巻き取られ、閉止部材使用時、
図10に示すように、袋体22aと多孔質体22bは展開されて膨張している。したがって、閉止部材22の使用時に展開された多孔質体22bの形状が初期形状である。
【0039】
多孔質体22bを初期形状へ復元させるため、
図9(a)〜(d)に示すように、袋体22aには、袋体22aの内部を外部の大気と連通するノズル19が設けられている。閉止部材22は、ノズル19を閉止する閉止栓10も備えている。閉止栓10は、たとえばゴム栓であり、
図9(b)〜(d)に示すように、チェーン10aによってノズル19の内部に固定されている。
【0040】
図9(a)、(b)を参照して、閉止部材22の圧縮と膨張の原理について説明する。
図9(a)は閉止部材22の圧縮状態を、
図9(b)は閉止部材22の膨張状態の模式図である。ノズル19を開放して多孔質体22bを内蔵した袋体22aを圧縮する。すなわち、ノズル19の閉止栓10を外しておき、
図9(a)における紙面の奥行き方向に閉止部材22を圧縮して袋体22a内の空気を排出する。そして、ノズル19に閉止栓10を装着すると、閉止部材22は、
図9(a)に示すように、多孔質体22bの復元力に抗して、圧縮された状態で保持される。
【0041】
図9(a)に示す状態から閉止栓10をノズル19から外すと、袋体22aの内部が大気と連通する。これにより、ノズル19から空気を供給しながら多孔質体22bの復元力によって袋体22aが内側から外側に向かって押し広がり、
図9(d)に示すように、閉止部材22が膨張して使用状態に変形する。
【0042】
―閉止部材圧縮解放装置26―
閉止部材22を収納状態と使用状態との間で変形させるため、第3の実施の形態では、閉止部材圧縮解放装置26を備えている。閉止部材圧縮解放装置26は、
図5(a)に示すように、一対の閉止部材絞り棒24と、絞り棒間隔変更装置29と、閉止部材巻取シャフト22cの操作ハンドル、すなわち、閉止部材巻取ハンドル25aとを備えている。閉止部材巻取ハンドル25aは、使用状態の閉止部材22を収納状態に移行させるための操作部材である。閉止部材圧縮解放装置26については後述する。
【0043】
―閉止部材巻取ハンドル25a―
閉止部材巻取ハンドル25aは、
図5(a)に示すように、ケーシングボックス筐体16aの側面から外部に突出する閉止部材巻取シャフト22cの一端に接続されている。閉止部材巻き込みハンドル25を回すことにより、閉止部材22を構成する袋体22aと多孔質体22bとを閉止部材巻取シャフト22cに巻き取ることができる。
なお、閉止部材巻取シャフト22cがケーシングボックス筐体16aの側面を貫通する部分は、たとえばグランドパッキンなどの不図示の軸封装置によって密封されている。
【0044】
第3の実施の形態では、
図6に示すように、収納状態の閉止部材22を使用状態へ移行させるための治具として引き棒28を用いる。引き棒28の先端には、上述した閉止部材22の閉止部材固定用取手22dと係合させるための係合部28aが形成されている。
上述したケーシング筐体16aの下面の開口部16jは、閉止部材22を使用状態にする際、引き棒28をケーシング筐体16aの内部に挿入するための開口である。
【0045】
(閉止部材絞り棒24)
閉止部材絞り棒24は、閉止部材22を閉止部材巻取シャフト22cで巻き取る際に、たとえば
図5(a)、
図9(a)における紙面の奥行き方向に閉止部材22を圧縮して、閉止部材22内の空気を排出させるための一対の棒状部材である。閉止部材絞り棒24は、ケーシング筐体16aの側壁の間に支承され、
図5(a)、
図9(a)における紙面の奥行き方向から閉止部材22を挟むように配設されている。一対の閉止部材絞り棒24は、ケーシング筐体16aの外部からその間隔を変更するための絞り棒間隔変更装置29により間隔調整可能とされている。
【0046】
(絞り棒間隔変更装置29)
ケーシングボックス筐体16aの両側壁には、絞り棒間隔変更装置29が設けられている。絞り棒間隔変更装置29は、
図5(a)における紙面左右方向に沿って平行に延在する1対の閉止部材絞り棒24の間隔を変更するための装置である。具体的には、絞り棒間隔変更装置29は、一対の閉止部材絞り棒24をそれら間隔を変更可能に支承する図示しない支承部と、ケーシングボックス筐体16aの側面から外部に突出し、一対の閉止部材絞り棒24を操作する操作部材29aとを備えている。なお、絞り棒間隔変更装置29は、不図示のカバーを装着することでケーシングボックス筐体16aの気密性が保たれるように構成されている。
【0047】
以上のように構成された第3の実施の形態におけるダクト閉止装置27の動作を説明する。
−−−ダクト1を閉止する場合−−−
換気空調設備の定期的な点検やメンテナンスの際にダクト1を閉止する場合には、
図5(a),(b)に示すように、閉止部材絞り棒24同士の間隔を広げる。すなわち、絞り棒間隔変更装置29の不図示のカバーを外し、絞り棒間隔変更装置29による操作部材29aの固定を解除して、1対の閉止部材絞り棒24の間隔を広げる。また、
図6(a),(b)に示すように、開閉扉16iを開けて、開口部16jから引き棒28をケーシングボックス筐体16a内へ挿入し、
図7(a),(b)に示すように、係合部28aを閉止部材固定用取手22dに係合させる。
【0048】
そして、
図8(a),(b)に示すように、閉止部材巻取シャフト22cに巻き取られている閉止部材22を図示下方へ引き伸ばして展開する。これにより、閉止部材22が、上流側の開口部16bと下流側の開口部16bとの間の気体の流路を横断した状態となる。
【0049】
この状態で、開閉扉16iを半分程度閉じ、閉止部材固定用取手22dを閉止部材固定用フック16hに係合させて、閉止部材22の下端を開閉扉16iに固定するとともに、ノズル19の下端に差し込まれた閉止栓10(
図9参照)を外して、閉止部材22内に空気を取り込み膨張させる。閉止部材22が膨張した後、ノズル19の下端に閉止栓10を装着して、
図10(a),(b)に示すように、開閉扉16iを閉じる。これにより、ケーシングボックス筐体16a内で上流側の開口部16bおよび下流側の開口部16bが、圧縮が解除された閉止部材22によって塞がれるので、ケーシングボックス16Aに接続されたダクト1が閉止される。
なお、閉止部材22の膨張が不足している場合には、ノズル19から直接ボンベ等で空気を足すようにしてもよい。この場合、供給した圧の抜け止め用開閉バルブが必要である。
【0050】
−−−ダクト1の閉止を解除する場合−−−
ダクト1の閉止を解除する場合には、
図11(a),(b)に示すように、開閉扉16iを開ける。そして、ノズル19の下端に差し込まれた閉止栓10を外すとともに、閉止部材固定用フック16hから閉止部材固定用取手22dを外す。
図12(a),(b)に示すように、閉止部材絞り棒24の間隔を狭める。すなわち、絞り棒間隔変更装置29による操作部材29aの固定を解除し、1対の閉止部材絞り棒24の間隔を狭め、再び絞り棒間隔変更装置29で操作部材29aを固定して、閉止部材絞り棒24で閉止部材22を挟み込む。
【0051】
そして、閉止部材巻取ハンドル25aを回して閉止部材22を巻き取る。袋体22aと多孔質体22bは閉止部材絞り棒24に挟圧されて多孔質体22bが圧縮されつつ閉止部材巻取シャフト22cに巻き取られる。このとき、ノズル19から内部の空気が排出され、袋体22aは多孔質体22bの圧縮による収縮に応じて収縮する。閉止部材22を巻き取り終えた後、袋体22aにチェーン10aで吊られている閉止栓10を、たとえば開口部16jを介して挿入した引き棒28でノズル19の下端に押し込んで、ノズル19を閉止し、
図13(a),(b)に示すように、開閉扉16iを閉じる。
【0052】
このように構成される本実施の形態のダクト閉止装置27では、換気空調設備の通常の運転時、すなわちダクト1を閉止しない場合には、閉止部材22を構成する袋体22aと多孔質体22bは閉止部材巻取シャフト22cに巻き取られて、ケーシングボックス筐体16a内の図示上部に収納されている。これにより、閉止部材22が上流側の開口部16bと下流側の開口部16bとの間の気体の流路から退避する。すなわち、閉止部材22は流路から外れた空間に収納される。したがって、ケーシングボックス16Aを介してダクトに空気が流れるときに、閉止部材22が空気の流れを妨げることがない。
【0053】
本実施の形態のダクト閉止装置27は、取り付け姿勢に特に制限がない。すなわち、垂直方向に延在するダクト1の途中に設けてもよく、水平方向に延在するダクト1の途中に設けてもよい。また、ダクト1の延在方向を中心としたダクト閉止装置27の取り付け角度にも特に制限はない。すなわち、たとえば、閉止部材22を鉛直上方に向かって繰り出すようにダクト閉止装置27を配設してもよく、閉止部材22を水平方向に繰り出すようにダクト閉止装置27を配設してもよい。
【0054】
本実施の形態のダクト閉止装置27において、繰り返しの使用により袋体22aが損傷したり、多孔質体22bの復元力が低下した場合には、新しい閉止部材22と交換すればよい。
【0055】
本実施の形態のダクト閉止装置では、第1および第2の実施の形態の作用効果に加えて次の作用効果を奏する。
(1) 閉止部材22を、変形復元性を有する多孔質体22bと、多孔質体22bを包む柔軟性を有する袋体22aとを有するように構成した。そして、袋体22aとともに多孔質体22bを圧縮してケーシングボックス筐体16aの上部に収納した状態では閉止部材22がダクト1を閉止しないように構成した。また、圧縮された多孔質体22bを復元させることで気体が袋体22aに供給されると、閉止部材22がケーシングボックス筐体16aの内部で膨張してダクト1を閉止するように構成した。これにより、ダクト1の閉止および閉止の解除作業が簡略化できる。
また、圧縮解放装置26と閉止部材22を繰り返し使用できるので、ダクト1の閉止のための消耗品のコストを抑制できる。
【0056】
(2) 閉止部材22が、巻取装置、すなわち、閉止部材巻取ハンドル25aで駆動される閉止部材巻取シャフト22cで巻き取られると、上流側の開口部16bと下流側の開口部16bとの間の気体の流路から退避するように構成した。また、巻き取られた状態から閉止部材22が繰り出されると上流側の開口部16bと下流側の開口部16bとの間の気体の流路を閉止部材22が横断するように構成した。そして、閉止部材22が流路を横断した状態で空気が袋体22aに供給されると、閉止部材22が膨張して流路を遮断し、ダクト1を閉止するように構成した。これにより、換気空調設備の通常の運転時にダクト1の圧力損失を増やすなどの不具合を発生させることなく、換気空調設備の定期的な点検やメンテナンスの際にダクト1を簡便、かつ、確実に閉止できる。したがって、換気空調設備の性能を損なうことなく、換気空調設備の定期的な点検やメンテナンスに要するコストを削減できる。
【0057】
(3) 捲回状態の閉止部材22を引き棒28で容易に展開できるので、作業が容易である。第3の実施の形態では、閉止部材22の取手22dを開口16jと対向配置することにより、引き棒28による引き出し操作が簡便となる。
(4) 閉止部材絞り棒24同士の間隔を変更して膨張状態の閉止部材22を巻き取りつつ圧縮できるので、作業効率が向上する。
(5) 閉止部材22の袋体22aにノズル19を設け、ノズル19を閉止栓10で閉止する構造を採用したため、バルブを使用せず、簡便な構造となり、コストを抑制できる。
【0058】
−−−変形例−−−
(1) 第1および第2の実施の形態では、ダクト閉止装置17,18には膨張装置20が備えられ、膨張装置20にガスボンベ12を収容できるように構成しているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、ダクトを閉止するという観点から、ダクト閉止装置として少なくともケーシングボックス16と閉止部材14とが設けられていればよい。この場合、たとえば、閉止部材14を膨張させるために、外部の空気コンプレッサーから圧縮空気を閉止部材14に供給するようにしてもよい。
【0059】
(2) 第1〜第3の実施の形態では、ケーシングボックス筐体16aが箱状であり、ダクト1の空気の流通方向から見ると方形断面を呈しているが、本発明はこれに限定されず、ケーシングボックス筐体16aが多角形の断面や円形の断面などを呈するように構成されていてもよい。
【0060】
(3) 第1〜第3の実施の形態では、閉止部材14の素材をゴム製であるとしているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、閉止部材14の素材として、天然ゴムや合成ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の各種のエラストマーを用いることができる。
【0061】
(4) 第3の実施の形態では、閉止部材圧縮解放装置26の操作ハンドル25により閉止部材22を手動で巻取るようにしたが、モータでシャフト22cを駆動してもよい。収納時の閉止部材を捲回構造としたが、閉止部材が流路から待避して小容量化する方式でもよい。
(5) ノズル19に対して閉止栓10を着脱する構成に代え、
図14に示すように、ノズル19にバルブ31を設け、弁操作部材32を操作してバルブ31を開閉するように構成してもよい。
なお、ノズル19を閉止栓10で閉止せずに常時開放させておいても、閉止部材22を巻き取り、繰り出することにより多孔質体22bが膨張、収縮する。
【0062】
(6)ダクト内の気流を阻害しなければ、収納状態にある閉止部材22が上流側の開口部16bと下流側の開口部16bとの間の気体の流路から完全に退避していなくてもよい。
(7) 第3実施形態のダクト閉止装置27も第2の実施形態と同様に伸縮継ぎ手と一体化してもよい。
【0063】
(8)使用時の閉止部材22を開閉扉16iのフック16hに係止する構造としたが、これ以外の係止構造でもよい。あるいは、使用時の閉止部材22が開口部16bと堅く密着している場合には係合しなくてもよい。
(9)一対の絞り棒24により閉止部材22を側面から挟圧して圧縮する方式を採用したが、絞り構造はこの構造に限定されない。棒以外の絞り部材、例えば、閉止部材が通過する経路の断面積を可変とする種々の構造を採用できる。
(10) 上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0064】
なお、本発明のダクト閉止装置およびダクト閉止方法は上述した実施の形態のものに何ら限定されず、下記のような構成のものを含む。
すなわち、本発明の第1の態様のダクト閉止装置は、換気空調設備のダクトの途中に介挿されてダクトと接続される上流側および下流側の開口部と、開口部とは異なる位置に設けられた開閉可能な挿入口とを有するケーシングボックスと、ゴム製の袋状の部材であって、挿入口からケーシングボックスの内部に挿入されて、気体が供給されるとケーシングボックス内で膨張してダクトを閉止する閉止部材とを備えるものでもよい。
【0065】
本発明の第2の態様のダクト閉止装置は、換気空調設備のダクトの途中に介挿されるケーシングボックスと、ケーシングボックス内で膨張するとダクトを閉止し、圧縮すると前記ダクトを開放する閉止部材と、閉止部材を膨張した使用状態から圧縮した収納状態へ、また、収納状態から使用状態へ移行する圧縮膨張装置とを備え、閉止部材は、変形復元性を有する多孔質体と、多孔質体を包む柔軟性を有する袋体とを有し、圧縮膨張装置は、袋体とともに多孔質体を圧縮しつつ袋体内部の空気を排出することによりケーシングボックスの内部で閉止部材を圧縮して収納状態とし、収納状態にある袋体の圧縮を解除して内部に空気を供給することにより多孔質体を復元させてケーシングボックス内で閉止部材を使用状態とするものでもよい。
【0066】
本発明の第3の態様のダクト閉止方法は、換気空調設備のダクトの途中に介挿されるケーシングボックスに対して、ケーシングボックスに設けられた開閉可能な挿入口からケーシングボックスの内部にゴム製の袋状の閉止部材を挿入し、閉止部材に気体を供給することでケーシングボックス内で閉止部材を膨張させてダクトを閉止するものでもよい。
【0067】
本発明の第4の態様のダクト閉止方法は、第3の態様のダクト閉止装置を用いてダクトの流路を遮断し、開放するダクト閉止方法において、ケーシングボックス内において閉止部材を圧縮して収納状態とし、圧縮されて収納状態にある閉止部材を展開して多孔質体の圧縮を解除することにより気体を袋体に供給して、圧縮されていた多孔質体を復元させて閉止部材を使用状態としてダクトを閉止し、使用状態から収納状態へ移行操作することにより、膨張されている多孔質体を圧縮しつつ閉止部材の内部から空気を排出させて収納状態とするものでもよい。