(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
不動体に設けられた開口部の少なくとも一部に対して開閉可能となっている止水パネルと、この止水パネルに、前記止水パネルの上端から下端に向かって切り込み状態で形成され、人が跨ぐことにより前記止水パネルを通過するための切欠部と、この切欠部を開放可能に閉鎖する閉鎖部材と、を有する止水装置において、
前記閉鎖部材の一部が前記止水パネルに結合されており、
前記閉鎖部材は、上下方向と、左右方向と、これらの上下方向及び左右方向に対する斜めの方向とのうち、少なくとも一つの方向へ延びる辺部を有しており、この辺部において前記閉鎖部材は前記止水パネルに結合されており、
前記閉鎖部材は、前記辺部がヒンジにより前記止水パネルに開閉可能に結合されている扉であり、
前記止水パネルには、水圧を受けたときの前記扉が当たる戸当り部が設けられていることを特徴とする止水装置。
不動体に設けられた開口部の少なくとも一部に対して開閉可能となっている止水パネルと、この止水パネルに、前記止水パネルの上端から下端に向かって切り込み状態で形成され、人が跨ぐことにより前記止水パネルを通過するための切欠部と、この切欠部を開放可能に閉鎖する閉鎖部材と、を有する止水装置において、
前記閉鎖部材の一部が前記止水パネルに結合されており、
前記閉鎖部材は、上下方向と、左右方向と、これらの上下方向及び左右方向に対する斜めの方向とのうち、少なくとも一つの方向へ延びる辺部を有しており、この辺部において前記閉鎖部材は前記止水パネルに結合されており、
前記閉鎖部材は、防水性を有するシート部材であり、
前記シート部材の下辺部と上辺部のうち、一方が前記止水パネルに結合されている前記辺部であり、前記シート部材は、前記止水パネルに密着する左右辺部を有していることを特徴とする止水装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の止水装置では、切欠部を開放可能に閉鎖するための閉鎖部材は、閉鎖部材全体が止水パネルに対して取り外されるものとなっている。このため、止水装置を施工現場で施工作業等するときは、止水パネルと閉鎖部材をそれぞれ個別に取り扱うことになる。
【0005】
本発明の目的は、施工現場で施工作業等を行うときは、止水パネルと閉鎖部材をそれぞれ個別に取り扱う必要がなく、これらを一体化されたものとして取り扱うことができるようになる止水装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る止水装置は、不動体に設けられた開口部の少なくとも一部に対して開閉可能となっている止水パネルと、この止水パネルに、前記止水パネルの上端から下端に向かって切り込み状態で形成され、人が跨ぐことにより前記止水パネルを通過するための切欠部と、この切欠部を開放可能に閉鎖する閉鎖部材と、を有する止水装置において、前記閉鎖部材の一部が前記止水パネルに結合されていることを特徴とするものである。
【0007】
この止水装置では、閉鎖部材の一部が止水パネルに結合されているため、止水装置を施工する現場等において、止水パネルと閉鎖部材をそれぞれ個別に取り扱う必要がなくなり、これらを一体化されたものとして取り扱うことができるため、施工作業等を容易に行うことができる。
【0008】
本発明において、止水パネルで少なくとも一部が開閉される不動体の開口部の形状は、任意であり、この開口部の形状に応じて、止水パネルの正面視の全体形状を、例えば、四角形や台形等としてもよい。
【0009】
また、止水パネルに、この止水パネルの上端から下端に向かって切り込み状態で形成され、閉鎖部材で開放可能に閉鎖される切欠部の形状も、U字形状や略U字形状、V字形状や略V字形状等の任意の形状でよく、この切欠部の形状に応じて、閉鎖部材の正面視の全体形状を、例えば、四角形や台形、三角形、逆三角形等としてもよい。
【0010】
そして、閉鎖部材が、上下方向と、左右方向と、これらの上下方向及び左右方向に対する斜めの方向とのうち、少なくとも一つの方向へ延びる辺部を有している場合には、この辺部において閉鎖部材を止水パネルに結合してもよい。
【0011】
このように閉鎖部材が、上下方向と、左右方向と、これらの上下方向及び左右方向に対する斜めの方向とのうち、少なくとも一つの方向へ延びる辺部を有している場合に、この辺部において閉鎖部材を止水パネルに結合する場合には、閉鎖部材を、前記辺部がヒンジにより止水パネルに開閉可能に結合された扉とすることができる。
【0012】
このように閉鎖部材を、ヒンジにより止水パネルに開閉可能に結合された扉とする場合には、止水パネルには、水圧を受けたときの扉が当たる戸当り部を設けることが好ましい。
【0013】
これによると、扉が水圧を受けると、この扉は止水パネルに設けられた戸当り部に当るため、扉は水圧によって止水パネルに密着して切欠部を閉鎖することになり、これにより、閉鎖部材による切欠部の閉鎖を一層確実のものとすることができる。
【0014】
また、閉鎖部材は、上記扉のようにパネル状のものでよく、シート状のものでもよい。
【0015】
閉鎖部材をシート状のもの、言い換えると、シート部材とした場合には、例えば、このシート部材の下辺部と上辺部とのうち、一方を止水パネルに結合される前記辺部とし、シート部材を、止水パネルに密着する左右辺部を有するものとすることができる。
【0016】
これによると、シート部材の下辺部と上辺部とのうち、一方が止水パネルに結合され、シート部材の左右辺部が止水パネルに密着するため、止水パネルに形成されている前記切欠部をシート部材により閉鎖することができ、また、シート部材の左右辺部を止水パネルから離間させることにより、切欠部を開放することができる。
【0017】
また、このようにシート部材の下辺部と上辺部とのうち、一方が止水パネルに結合され、シート部材の左右辺部を止水パネルから離間可能とするためには、一例として、シート部材の下辺部を止水パネルに結合された前記辺部とするとともに、シート部材を、巻取軸に繰り出し可能に巻き取られたものとし、この巻取軸を、水位の上昇により、シート部材を繰り出しながら上側へ移動可能とすればよい。
【0018】
さらに、巻取軸を、水位の上昇により、シート部材を繰り出しながら上側へ移動可能とするためには、例えば、巻取軸をフロート部材に連結手段を介して連結し、水位の上昇によってフロー部材が上昇することにより、巻取軸がシート部材を繰り出しながら上側へ移動するように構成すればよい。
【0019】
このように巻取軸をフロート部材に連結手段を介して連結し、水位の上昇によってフロー部材が上昇することにより、巻取軸がシート部材を繰り出しながら上側へ移動するように構成するためには、巻取軸とフロート部材と連結手段を、止水パネルの表裏両面のうち、水圧が作用する側の面に配置してもよく、あるいは、止水パネルの内部を、水が侵入する空洞部とし、この空洞部に、巻取軸とフロート部材と連結手段とを収納配置してもよい。
【0020】
後者によると、巻取軸とフロート部材と連結手段は止水パネルの内部に配置されるため、これらの巻取軸とフロート部材と連結手段を、止水パネルにより予期できない外部力等から保護することができる。
【0021】
また、以上説明した本発明において、不動体に形成されている前記開口部を止水パネルにより一層確実に水密状態で閉じることができるようにするために、これらの止水パネルと不動体のうち、少なくとも一方に水密性のシール部材を取り付けてもよい。
【0022】
また、止水パネルに形成されている切欠部を閉鎖部材で一層確実に水密に閉鎖することができるようにするために、これらの止水パネルと閉鎖部材のうち、少なくとも一方に水密性のシール部材を取り付けてもよい。
【0023】
さらに、本発明に係る止水装置は、不動体に形成されている開口部の少なくとも一部を止水パネルで閉じるための任意の装置に適用することができ、その一例は、地下鉄の駅や地下街等へ通じる地上の出入口の少なくとも一部を水密状態に閉鎖するための装置であり、また、他の例は、建物の出入口の少なくとも一部を水密状態に閉鎖するための装置である。
【0024】
そして、不動体には、開口部を閉じたときの止水パネルを受けるために設けられるものであって、開口部を開閉する止水パネルに対して不動となっている受け部材が含まれる。
【0025】
また、本発明において、止水パネルを不動体の開口部に対して開閉移動させるための手段は任意であり、この手段は、止水パネルに端部が結合されたワイヤー等の紐状部材を巻取軸で巻き取り、繰り出す構造のものでもよく、スプロケットホイールで走行するチェーンを用いた構造のものでもよく、ラックアンドピニオンを用いた構造のものでもよく、シリンダの伸縮作動するピストンを用いた構造のものでもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、止水装置の施工現場で施工作業等を行うときは、止水パネルと閉鎖部材をそれぞれ個別に取り扱う必要がなく、これらを一体化されたものとして取り扱うことができるという効果を得られる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係る止水装置は、地下鉄の駅等へ通じる地上の出入口の下部箇所を水密状態に閉鎖するためのものである。
図1には、地下鉄の駅や地下街等の地下施設へ通じる出入口2が形成された地上構造物1が示されており、本実施形態における不動体となっているこの地上構造物1の開口部である出入口2から地下施設へ行き来するための階段3が延設されている。地上構造物1は、屋根部4と、左右の側壁部5と、これらの側壁部5の先端部に設けられた左右2本の柱部6とを有し、屋根部4の先端部と左右2本の柱部6とで囲まれた箇所が、出入口2となっている。
【0029】
図2は、地上構造物1の側断面図である。屋根部4の先端部下面にはケース7が取り付けられており、このケース7の内部には、本実施形態に係る止水パネル10を上下に開閉移動させるための開閉移動手段が収納されている。この開閉移動手段は、巻取軸11を有するものであり、この巻取軸11は、ケース7の左右の側面部に配置されたブラケット7Aに回転自在に支持されている。巻取軸11には、紐状部材となっている左右2本のワイヤー12の上端が結合され、これらのワイヤー12は、左右の側壁部5の内面に配置された方向転換ローラ13で水平方向から下向きに方向が転換され、そして、これらのワイヤー12の下端は、止水パネル10の下端部に結合されている。
【0030】
左右の側壁部5の内面には、左右2本のワイヤー12が移動自在に収納された左右一対のガイドレール8が取り付けられており、止水パネル10の左右端部の端面には、上下2個のガイドローラ14が回転自在に取り付けられ、これらのガイドローラ14が、断面チャンネル形状となっているガイドレール8の内部に回転自在に挿入可能となっている。また、それぞれのガイドレール8の下端には、上下長さを有する止水パネル受け部材15の上端が接続されており、これらの止水パネル受け部材15は、左右の柱部6における階段3側の内面に取り付けられている。
【0031】
図2に示されているように、止水パネル10が出入口2の下部箇所を閉じる全閉位置に達しているときには、
図2のS3−S3線断面図である
図3に示されているように、止水パネル10の左右端部及びこれらの左右端部の端面に取り付けているガイドローラ14は、出入口2側(左右方向の内側)に向かって開口した断面チャンネル形状となっているそれぞれの止水パネル受け部材15の内部に収納されている。この受け部材15は、前後のフランジ部15A,15Bと、これらのフランジ部15A,15Bにおける側壁部5側の端部である外端部同士を連結しているウェブ部15Cとを有する。
【0032】
このため、巻取軸11が正回転してワイヤー12が巻取軸11に巻き取られることにより、止水パネル10は受け部材15から脱出し、この後に、ガイドレール8でガイドローラ14が案内されることにより、止水パネル10は上方へ開き移動する。また、巻取軸11が逆回転してワイヤー12が巻取軸11から繰り出されることにより、ガイドレール8でガイドローラ14が案内されることにより、止水パネル10はガイドレール8に案内されて下方へ閉じ移動し、次いで、この止水パネル10は、止水パネル10の左右端部及びガイドローラ14が止水パネル受け部材15の内部に収納された上述の全閉位置に達する。
【0033】
図2で示したケース7の内部には、地上構造物1に配設された操作装置19での操作にしたがって巻取軸11を正回転、逆回転、回転停止させるための駆動装置35が収納されており、巻取軸11と接続されているこの駆動装置35からの駆動力等により、巻取軸11は正回転等を行う。
【0034】
このため、通常時の止水パネル10は、操作装置19の操作により、ガイドローラ14がガイドレール8の内部に収納されている全開位置で停止しており、このときの止水パネル10は、出入口2の略全体を開放している。そして、大雨等により、出入口2から水が前述の地下施設へ流入するおそれが生じたときは、操作装置19が操作されることにより、止水パネル10は全閉位置まで降ろされる。
【0035】
図4は、
図3のS4−S4線断面図である。この
図4から分かるように、それぞれの止水パネル受け部材15の内部には、止水パネル押圧部材16が収納固定されている。上下方向の長さを有するこの止水パネル押圧部材16は、上端部から長さ方向途中まで延びる傾斜面16Aを有し、この傾斜面16Aは、下向きに延びながら出入口2の内側へ、すなわち、前述の階段3側へ向かって傾斜している面となっており、この傾斜面16Aの下側は、傾斜面16Aと連続して鉛直下向きに延びる鉛直面16Bとなっている。
【0036】
このため、前述したように巻取軸11の逆回転により止水パネル10が全閉位置に向かって閉じ移動し、止水パネル10の左右端部が止水パネル受け部材15の内部に侵入すると、
図4の二点鎖線で示されているように、この止水パネル10の左右端部の下端部が止水パネル押圧部材16の傾斜面16Aに当ることにより、止水パネル10は出入口2の内側へ移動しながら閉じ移動し、そして、止水パネル10が全閉位置に達したときには、
図4の実線で示されているように、この止水パネル10の左右端部は、鉛直面16Bの押圧作用により、止水パネル受け部材15の前述した前後のフランジ部15A,15Bのうち、階段3側のフランジ部となっている後フランジ部15Bの内面に押圧される。
【0037】
そして、止水パネル10の左右端部の表裏両面のうち、このように後フランジ部15Bの内面に押圧される面となっている裏面には、水密性を有するシール部材17が取り付けられており、また、止水パネル10の下面にも、水密性を有するシール部材18が取り付けられている。このため、止水パネル10が全閉位置に達したときには、シール部材17が後フランジ部15Bの内面に押圧され、シール部材18が出入口2の床(路面)9に止水パネル10の重量で押圧され、これにより、止水パネル10で閉じられた出入口2の下部箇所は、水密状態に閉鎖されることになる。
【0038】
なお、止水パネル受け部材15は、前述の不動体となって地上構造物1に取り付けられているため、この止水パネル受け部材15は不動体の一部を構成するものとなっている。
【0039】
図1に示されているように、止水パネル10には、扉20で開閉される切欠部30が形成されている。
図5は、扉20を含めて止水パネル10の全体を示す正面図であり、
図6は、扉20を含めて止水パネル10の全体を示す平面図である。また、
図7は、扉20を除いて示す止水パネル10だけの全体正面図であり、
図8は、扉20を除いて示す止水パネル10だけの全体平面図であり、
図9は、扉20を除いて示す止水パネル10だけの全体斜視図である。
図9から分かるように、止水パネル10に形成されている切欠部30は、この止水パネル10の上端から下端に向かって切り込み状態でU字形状又は略U字形状に設けられたものとなっており、この切欠部30が扉20により開閉可能となっている。このため、この扉20は、切欠部30を開放可能に閉鎖するための閉鎖部材になっている。
【0040】
止水パネル10には、切欠部30の左右端部と下部において、止水パネル10の表面10A(出入口2の外側の面)から裏面10B(出入口2の内側の面、又は階段3側の面)に向かって窪んだ窪み部31が形成されており、切欠部30の形状に倣った正面形状を有するこの窪み部31は、切欠部30の左右端部において上下方向へ形成され、切欠部30の下部において左右方向に形成されている。また、窪み部31の窪み量、言い換えると、窪み部31についての止水パネル10の厚さ方向の深さ寸法は、扉20の厚さ寸法と対応する寸法になっている。また、扉20の全体正面形状及び全体正面寸法は、窪み部31を含めた切欠部30の全体正面形状及び全体正面寸法と対応するものになっている。そして、止水パネル10には、窪み部31により、切欠部30の左右端部と下部において、薄厚部32が設けられている。
【0041】
なお、出入口2の外側とは、水が流入する場合における上流側のことであり、出入口2の内側とは、この上流側とは反対側であって、この上流側から水が流入してくる側のことであり、水が流入してくることを阻止又は抑制したい側のことである。
【0042】
図1及び
図5に示されているとおり、正面形状が四角形となっている扉20の左右の側辺部のうち、一方の側辺部は、上下2個のヒンジ21により、止水パネル10に結合されている。このように扉20の上下方向に延びる辺部となっている側辺部が、ヒンジ21により止水パネル10に結合されることにより、扉20は、左右方向に開閉するために止水パネル10に対して回動自在となっており、扉20が止水パネル10に対して閉じ回動することにより、切欠部30が扉20により閉鎖される。
【0043】
図9に示されているように、止水パネル10には、上述の窪み部31の窪み方向の先端部において、水密性を有するシール部材22,23,24が取り付けられている。さらに、ヒンジ21は、例えば、グラビティヒンジであるため、扉20が切欠部30を開放したときには、ヒンジ21の自動閉鎖作用により、扉20には自ずと閉じ回動力が生ずるようになっている。これにより、扉20が切欠部30を閉鎖したときには、切欠部30の左右端部と下部において、窪み部31によって止水パネル10に形成されている上述の薄厚部32に扉20がシール部材22,23,24を介して当ることになり(
図6を参照)、このため、この薄厚部32は、扉20が当るための戸当り部となっている。また、このようにして扉20が薄厚部32で受けられたときには、扉20の裏面は、シール部材22,23,24に当ることになる。
【0044】
図5及び
図6に示されているように、扉20と止水パネル10には、切欠部30を閉鎖した扉20をこの閉鎖状態に維持させるための閉鎖手段が設けられている。この閉鎖手段は、扉20に配置されたラッチ装置25と、止水パネル10に配置されたラッチ受け部材26とを有するものである。
図10には、これらのラッチ装置25とラッチ受け部材26の平断面図が示されている。ラッチ装置25は、扉20内に配置されたケース27と、このケース27の内部に収納された弾発部材となっているばね28と、ケース27の内部に左右方向にスライド自在に収納され、ばね28から扉20の外部へ突出する方向の弾発力を受けているラッチ部材29とを有し、また、ラッチ受け部材26は、扉20が切欠部30を閉鎖しているときに、ラッチ部材29と左右方向に対向する止水パネル10の内部箇所に配置されている。
【0045】
ラッチ部材29におけるラッチ受け部材26側の先端部29Aは、止水パネル10及び扉20の厚さ方向両側の面がラッチ受け部材26側に延びるにしたがって止水パネル10及び扉20の厚さ方向の寸法が次第に小さくなる先細り形状となっており、また、ラッチ受け部材26におけるラッチ部材29側の先端部26Aも、止水パネル10及び扉20の厚さ方向両側の面がラッチ部材29側に延びるにしたがって止水パネル10及び扉20の厚さ方向の寸法が次第に小さくなる先細り形状となっている。
【0046】
このため、前述したヒンジ21の自動閉鎖作用により、切欠部30を開放していた扉20が切欠部30を閉鎖するためにヒンジ21を中心に閉じ回動したときには、ラッチ受け部材26の先端部26Aに先端部29Aが当接したラッチ部材29は一旦後退した後に、ばね28からの弾発力で前進し、これにより、ラッチ部材29の先端部29Aとラッチ受け部材26の先端部26Aとが当接することにより、切欠部30を閉鎖した扉20は、この閉鎖状態に維持することになる。また、扉20が切欠部30を閉鎖しているときに、この扉20の裏面(階段3側の面)を押したときには、ラッチ部材29はラッチ受け部材26に対して後退するため、扉20はヒンジ21を中心に開き回動して切欠部30を開放する。
【0047】
通常時の扉20は、
図10に示されているように、ラッチ部材29の先端部29Aとラッチ受け部材26の先端部26Aとが当接していることにより、切欠部30を閉鎖している。
【0048】
前述したように大雨等のときに出入口2の下部箇所が全閉位置に達している止水パネル10により閉鎖されているときであって、大雨等による水位が、切欠部30の高さ位置まで達していないときにおいて、前述の地下鉄の駅や地下街等の地下施設に居て階段3により出入口2の近くまで来た人が、扉20を、扉20の裏面側から押すことにより、扉20を開き回動させて切欠部30を開放することができ、これにより、上記人は、切欠部30を跨ぐことにより、止水パネル10を通過して出入口2の外側へ脱出することができる。そして、この後に扉20は、前述のグラビティヒンジ等であるヒンジ21の自動閉鎖力により、このヒンジ21を中心に自動的に閉鎖回動することになり、これにより、切欠部30は扉20により閉鎖される。
【0049】
また、
図6で示されている止水パネル10の表裏両面10A,10Bのうち、表面(階段3側とは反対側の面)10Aに大雨等による水圧が作用し、そして、水位が上昇し、この水位が扉20の高さ位置まで達したときには、水圧により、扉20は止水パネル10に取り付けられている前述のシール部材22,23,24に圧接することになる。このため、人が止水パネル10を通過できるように止水パネル10に設けられている切欠部30を、水圧が作用する扉20により一層水密状態に閉鎖できる。
【0050】
また、本実施形態では、ラッチ部材29はドアノブ等の操作部材の操作により横方向にスライドするものではない。このため、扉20には、ドアノブ等の操作部材のように外部に突出する部材を設けなくてもよい。
【0051】
さらに、切欠部30を閉鎖したときの扉20は、止水パネル10に戸当り部として設けられている前述の薄厚部32に当接するため、水圧が作用している扉20を止水パネル10によって有効に受けることができ、また、この水圧により、扉20はシール部材22,23,24に強く押し付けられるため、これらのシール部材22,23,24により、扉20による切欠部30に対する水密の密閉性を向上させることができる。
【0052】
以上説明した本実施形態では、切欠部30を開放可能に閉鎖するための閉鎖部材となっている扉20は、この扉20の上下方向に延びる辺部となっている側辺部において、ヒンジ21により止水パネル10に結合されているため、本実施形態に係る止水装置を施工する現場等において、止水パネル10と扉20がそれぞれ個別に取り扱われることはなく、止水パネル10と扉20を一体化されたものとして取り扱うことができるため、施工作業等を容易に行うことができる。
【0053】
以上説明した実施形態の止水装置では、
図2に示されている方向転換ローラ13が用いられていたが、この方向転換ローラ13を省略し、そして、ガイドレール8の形状を、
図2と異なり、ケース7から止水パネル受け部材15まで鉛直又は略鉛直に延びる形状としてもよい
図11〜
図14は、別実施形態に係る止水パネル50を示す。
図11は、止水パネル50を示す全体正面図であり、
図12は、止水パネル50の内部構造を示す全体正断面図であり、
図13は、
図11のS13−S13線断面図である。この実施形態の止水パネル50の左右端部の端面にも、ガイドレール8及び止水パネル受け部材15の内部に挿入されるガイドローラ14が取り付けられ、また、止水パネル50の表裏両面のうち、階段3側の面である裏面に、水密性を有するシール部材17が取り付けられているとともに、止水パネル50の下面に、水密性を有するシール部材18が取り付けられている。
【0054】
図13から分かるように、止水パネル50の内部は空洞となっている。このため、止水パネル50は、表裏両面を形成している表面部51及び裏面部52と、これらの表面部51と裏面部52との間に設けられ、表面部51と裏面部52との間の止水パネル50の厚さ方向の間隔を維持するための部分となっている間隔維持部53とを有し、この間隔維持部53は、
図11及び
図12に示されているように、止水パネル50の左右端部に設けられた左右端部53A,53Bと、止水パネル50の下端部に設けられた下端部53Cと、止水パネル50の上端部に設けられた上端部53Dとからなる。
【0055】
図11及び
図12から分かるように、止水パネル50の表面部51及び裏面部52には、これらの表面部51及び裏面部52の上端から下端に向かって窪んだ凹部51A,52Aが設けられ、これにより、止水パネル50には、この止水パネル50の上端から下端に向かって切り込み状態で形成されているU字形状又は略U字形状の切欠部70が形成されており、この切欠部70は、止水パネル50の厚さ方向に貫通したものとなっている。そして、間隔維持部53のうち、上端部53Dは、切欠部70により左右に分割されたものとなっている。
【0056】
止水パネル50の内部の空洞部には、切欠部70を開放可能に閉鎖するための閉鎖部材となっていて、防水性を有しているシート部材60と、軸方向が水平方向又は略水平方向となっていて、シート部材60が上下方向に繰り出し自在に巻き取られている巻取軸61と、フロート部材62とが収納配置されており、シート部材60を繰り出す前の巻取軸61の高さ位置は、フロート部材62の高さ位置よりも高くなっている。また、切欠部70の左右端部から左右の外側へ離れた箇所において、上記空洞部には、それぞれ左右2個ずつの第1回転部材63と第2回転部材64と第3回転部材65とが、左右方向の位置を一致又は略一致させて上下方向の間隔をあけて配置されている。第2回転部材64は、同軸で一体結合された小径回転部材64Aと大径回転部材64Bとからなる。
【0057】
大径回転部材64Bと、この大径回転部材64Bと同じ直径を有する第1回転部材63とには、第1無端走行部材66が掛け回され、小径回転部材64Aと、この小径回転部材64Aと同じ直径を有する第3回転部材65とには、第2無端走行部材67が掛け回されている。第1無端走行部材66のうち、切欠部70側の部分には、巻取軸61の両端部が連結されており、この連結は、巻取軸61が回転自在となって行われている。また、第2無端走行部材67のうち、切欠部70側の部分には、フロート部材62が連結されており、このフロート部材62は、左右方向に延びる細長部材となっている。
【0058】
シート部材60の下辺部60Aは、フラットバー等の補強部材で補強されているとともに、シート部材60のそれぞれの辺部のうち、左右方向に延びる辺部となっているこの下辺部60Aは、ビスや接着等により止水パネル50の裏面部52に水密状態で結合されている。この下辺部60Aが裏面部52に結合されている高さ位置は、この裏面部52に形成されている前述の凹部52Aよりも下側の位置である。また、シート部材60の左右方向の幅寸法は、切欠部70の左右方向の幅寸法よりも大きくなっている。このため、
図14に示されているように、巻取軸61が回転しながら上方へ移動することにより、シート部材60は巻取軸61から繰り出されるとともに、このシート部材60により、止水パネル50の裏面部52に形成されている凹部52Aが下側から上側に次第に遮閉され、これにより、切欠部70も下側から上側に次第に閉鎖されるようになっている。
【0059】
シート部材60には、止水パネル50の裏面部52と接触する左右端部において、この裏面部52に密着しかつ可撓性を有する水密性シール部材68が取り付けられている。このため、シート部材60が巻取軸61から繰り出されたときには、この水密性シール部材68が、止水パネル50の裏面部52に帯状となって水密状態で密着し、これにより、切欠部70が、シート部材60により水密状態で閉鎖されるようになっている。このため、下辺部60Aが止水パネル50に結合されているシート部材60の左右辺部は、止水パネル50の裏面部52に水密状態で密着する箇所となっている。
【0060】
なお、水密性シール部材68は、例えば、マグネットテープである。また、第1〜第3回転部材63〜65は、例えば、スプロケットホールやプーリーであり、第1及び第2無端走行部材66,67は、例えば、ローラーチェーンやベルトである。
【0061】
そして、止水パネル50の表面部51と裏面部52のうち、水圧が作用する面となっている表面部51には、
図11に示されているように、前述のシール部材18に近い下部において、水導入口69が形成されている。
【0062】
止水パネル50には、前述した実施形態の止水パネル10と同様に、
図1の巻取軸11に上端が結合されているワイヤー12の下端が連結されているため、巻取軸11の正逆回転により、止水パネル50は上下に移動し、全閉位置に達した止水パネル50により、
図1等で示されている出入口2の下部箇所が閉じられる。
【0063】
このように止水パネル50が全閉位置に達しているときであって、大雨等による水位が水導入口90の高さ位置まで達していないとき、又は水導入口90の高さ位置まで達しているが、この水導入口90から止水パネル50の内部の空洞部に流入した水の高さがフロート部材62の高さ位置まで達していないときにおいて、前述の地下鉄の駅や地下街等の地下施設に居て階段3により出入口2の近くまで来た人は、切欠部70を跨ぐことにより、止水パネル50を通過して出入口2の外側へ脱出することができる。
【0064】
また、止水パネル50の表面部51と裏面部52のうち、大雨等による水圧が作用する面となっている表面部51において、水位が上昇し、この水位が水導入口90の高さ位置に達すると、この水導入口90から水が止水パネル50の内部の空洞部に侵入する。この空洞部での水位がさらに上昇すると、フロート部材62は浮力によって上昇し、これにより、第2無端走行部材67が走行して第1〜第3回転部材63〜65が回転するため、第1無端走行部材66も走行する。
【0065】
このため、第1無端走行部材66に端部が回転自在に連結されている巻取軸61が上側へ移動することになり、これにより、
図14に示されているように、巻取軸61からシート部材60が繰り出され、このため、前述したように、止水パネル50に人が通過できるように形成されている切欠部70は、シート部材60の上下方向に延びる辺部となっている左右辺部がシール部材68を介して止水パネル50の裏面部52に密着することにより、水密状態で閉鎖される。
【0066】
また、止水パネル50の表面部51での水位が、この表面部51に形成されている前述の凹部51Aの高さ位置に達すると、水はこの凹部51Aから止水パネル50の内部の空洞部に流入するが、このときには、このときの水位よりも高い位置まで巻取軸61が上昇していて、シート部材60は、止水パネル50の裏面部52に形成されている凹部52Aを閉鎖しているため、水が止水パネル50を通過して階段3側へ流入することはない。
【0067】
そして、本実施形態では、第1無端走行部材66が掛け回されている第1回転部材63及び第2回転部材64の大径回転部材64Bの直径は、第2無端走行部材67が掛け回されている第3回転部材65及び第2回転部材64の小径回転部材64Aの直径より大きいため、フロート部材62の上昇量よりも巻取軸61を上側に大きく移動させることができ、これにより、シート部材60により閉鎖することができる切欠部70の上下長さを長くできる。
【0068】
また、止水パネル50の内部の空洞部での水位が低下すると、フロート部材62は下降するため、下側へ移動する巻取軸61によりシート部材60は巻き取られ、したがって、切欠部70は開放される。このため、シート部材60は、切欠部70を開放自在に閉鎖するための閉鎖部材になっている。さらに、第1〜第3回転部材63〜65と、第1及び第2無端走行部材66,67とにより、巻取軸61とフロート部材62とを連結するための連結手段が構成されている。
【0069】
この実施形態では、閉鎖部材となっているシート部材60の下辺部60Aが止水パネル50に結合されているため、この実施形態に係る止水装置を施工する現場等において、止水パネル50とシート部材60がそれぞれ個別に取り扱われることはなく、止水パネル10とシート部材60を一体化されたものとして取り扱うことができるため、施工作業等を容易に行うことができる。
【0070】
さらに、止水パネル50の内部は水が侵入する空洞部となっており、この空洞部に、シート部材60と、巻取軸61と、フロート部材62と、上述の連結手段とが収納されているため、これらを外力等から保護することができる。
【0071】
以上説明したそれぞれの実施形態は、不動体が地下鉄の駅等へ通じる出入口を形成するための地上構造物の場合であったが、この不動体は、地下鉄の駅等の地下施設とは無関係の又は地下施設と関係するビル等の建物でもよく、また、例えば、敷地内への水の侵入を止水パネルで阻止するために、道路等に隣接する敷地等に、開閉扉と共に門や壁等として設置されたものでもよい。また、本発明に係る止水装置は、例えば、道路への又は道路からの水の侵入を阻止するためにも用いることができる。