(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態である真空ポンプ(ネジ溝ポンプ並行流タイプ)の断面図である。
【0022】
図1の真空ポンプP1は、例えば、半導体製造装置、フラット・パネル・ディスプレイ製造装置、ソーラー・パネル製造装置におけるプロセスチャンバやその他の密閉チャンバのガス排気手段等として利用される。
【0023】
同図の真空ポンプP1において、その外装ケース1は、複数のポンプ構成部品、例えば回転翼13と固定翼14により気体を排気する翼排気部Ptと、ネジ溝19A、19Bを利用して気体を排気するネジ溝排気部Psと、これらの駆動系などを内包している。
【0024】
外装ケース1は、筒状のポンプケース1Aと有底筒状のポンプベース1Bとをその筒軸方向に締結ボルトで一体に連結した有底円筒形になっており、ポンプケース1Aの上端部側はガスを吸気するための吸気口2として開口し、また、ポンプベース1Bの下端部側面には、ネジ溝排気部Psで圧縮したガスを外装ケース1の外へ排気する手段として、排気ポート3を設けてある。
【0025】
吸気口2は、ポンプケース1A上縁のフランジ1Cに設けた図示しない締結ボルトにより、例えば半導体製造装置のプロセスチャンバ等、高真空となる図示しない密閉チャンバに接続される。排気ポート3は、図示しない補助ポンプに連通接続される。
【0026】
ポンプケース1A内の中央部には各種電装品を内蔵する円筒状のステータコラム4が設けられている。
図1の真空ポンプP1では、このステータコラム4をポンプベース1Bの内底に一体に立設しているが、これとは別の実施形態として、例えば、ポンプベース1Bとは別部品としてステータコラム4を形成してポンプベース1Bの内底にネジ止め固定してもよい。
【0027】
ステータコラム4の内側には回転軸5が設けられており、回転軸5は、その上端部が吸気口2の方向を向き、その下端部がポンプベース1Bの方向を向くように配置してある。また、回転軸5の上端部はステータコラム4の円筒上端面から上方に突出するように設けてある。
【0028】
回転軸5は、支持手段としての2組のラジアル磁気軸受10、10と1組のアキシャル磁気軸受11により径方向と軸方向が回転可能に支持されており、この支持状態で、駆動手段としての駆動モータ12により回転駆動されるように構成してある。なお、ラジアル磁気軸受10、10、アキシャル磁気軸受11及び駆動モータ12は公知であるため、その詳細説明は省略する。
【0029】
ステータコラム4の外側には回転体としてロータ6が設けられている。ロータ6は、ポンプケース1A及びポンプベース1Bに内包され、ステータコラム4の外周を囲む円筒形状であって、その略中間に位置する環状板体の連結部60により、直径の異なる2つの筒体(第1の筒体61と第2の筒体62)をその筒軸方向に連結した形状になっている。
【0030】
第1の筒体61の上端には、その上端面を構成する部材として、端部材63が一体に設けられており、この端部材63を介して、前記ロータ6は、回転軸5に固定されるとともに、回転軸5を介して、ラジアル磁気軸受10、10及びアキシャル磁気軸受11で、その軸心(回転軸5)周りに回転可能に支持されるように構成してある。
【0031】
図1の真空ポンプP1におけるロータ6は、一つのアルミ合金塊から切り出し加工することにより、第1の筒体61、第2の筒体62、連結部60及び端部材63を一部品として形成したものであるが、これとは別の実施形態として、例えば、連結部60を境にして第1の筒体61と第2の筒体62が別部品として構成される形態を採用してもよい。この場合、第1の筒体61はアルミニウム合金等の金属材料で形成し、第2の筒体62は樹脂で形成する等、第1の筒体61と第2の筒体62の構成材料をそれぞれ異なるものとしてもよい。
【0032】
《翼排気部Ptの詳細》
図1の真空ポンプP1では、ロータ6の略中間より上流(具体的には、連結部60からロータ6の吸気口2側端部までの範囲)が翼排気部Ptとして機能する。以下、この翼排気部Ptを詳細に説明する。
【0033】
ロータ6の略中間より上流側のロータ6外周面、具体的には第1の筒体61の外周面には、複数の回転翼13が一体に設けられている。これら複数の回転翼13は、当該ロータ6の回転中心軸(回転軸5)若しくは外装ケース1の軸心(以下「真空ポンプ軸心」という)を中心として放射状に並んで配置されている。
【0034】
一方、ポンプケース1Aの内周側には複数の固定翼14が設けられており、これら複数の固定翼14もまた、真空ポンプ軸心を中心として放射状に並んで配置されている。
【0035】
そして、
図1の真空ポンプP1では、前記のように放射状に配置された回転翼13と固定翼14とが真空ポンプ軸心に沿って交互に多段で配置されることによって、真空ポンプP1の翼排気部Ptが構成されている。
【0036】
いずれの回転翼13も、ロータ6の外径加工部と一体的に切削加工で切り出し形成したブレード状の切削加工品であって、ガス分子の排気に最適な角度で傾斜している。いずれの固定翼14も、ガス分子の排気に最適な角度で傾斜している。
【0037】
《翼排気部Ptによる排気動作説明》
以上の構成からなる翼排気部Ptでは、駆動モータ12の起動により、回転軸5、ロータ6および複数の回転翼13が一体に高速回転し、最上段の回転翼13が吸気口2から入射したガス分子に下向き方向(吸気口2から排気ポート3へ向かう方向)の運動量を付与する。この下向き方向の運動量を有するガス分子が固定翼14によって次段の回転翼13側へ送り込まれる。以上のようなガス分子への運動量の付与と送り込み動作とが繰り返し多段に行われることにより、吸気口2側のガス分子はロータ6の下流に向かって順次移行するように排気される。
【0038】
《ネジ溝排気部Psの詳細》
図1の真空ポンプP1では、ロータ6の略中間より下流(具体的には、連結部60からロータ6の排気ポート3側端部までの範囲)がネジ溝排気部Psとして機能する。以下このネジ溝排気部Psを詳細に説明する。
【0039】
ロータ6の略中間より下流側のロータ6部分、具体的にはロータ6を構成する第2の筒体62は、ネジ溝排気部Psの回転部材として回転する部分であって、ネジ溝排気部Psを構成する内外2重円筒形のネジ溝排気部ステータ18A、18B間に、所定のギャップを介して挿入・収容されている。
【0040】
内外2重円筒形のネジ溝排気部ステータ18A、18Bのうち、内側のネジ溝排気部ステータ18Aは、その外周面が第2の筒体62の内周面と対向するように配置された円筒形の固定部材であって、第2の筒体62の内周によって囲まれるように配置してある。外側のネジ溝排気部ステータ18Bは、その内周面が第2の筒体62の外周面に対向するように配置された円筒形の固定部材であって、第2の筒体62の外周を囲むように配置してある。
【0041】
内側のネジ溝排気部ステータ18Aの外周部には、前記ロータ6の内周側(具体的には第2の筒体62の内周側)にネジ溝排気通路R1を形成する手段として、深さが下方に向けて小径化したテーパコーン形状に変化するネジ溝19Aを形成してある。このネジ溝19Aは内側ネジ溝排気部ステータ18Aの上端から下端にかけて螺旋状に刻設してあり、このようなネジ溝19Aを備えた内側ネジ溝排気部ステータ18Aにより、第2の筒体62の内周側には、ガス排気のためのネジ溝排気流路(以下「内側ネジ溝排気流路R1」という)が形成される。
【0042】
外側のネジ溝排気部ステータ18Bの内周部には、前記ロータ6の外周側(具体的には第2の筒体62の外周側)にネジ溝排気通路R2を形成する手段として、前記ネジ溝19Aと同様のネジ溝19Bを形成してある。このようなネジ溝19Bを備えた外側ネジ溝排気部ステータ18Bにより、第2の筒体62の外周側には、ネジ溝排気流路(以下「外側ネジ溝排気流路R2」という)が形成される。
【0043】
図示は省略するが、先に説明したネジ溝19A、19Bを第2の筒体62の内周面又は外周面若しくはその両面に形成することで、前記のようなネジ溝排気流路R1、R2が設けられるように構成してもよい。また、これらのネジ溝排気流路R1、R2はロータ6の内周側と外周側の一部に設けられてもよい。
【0044】
ネジ溝排気部Psでは、ネジ溝19Aと第2の筒体62の内周面でのドラッグ効果やネジ溝19Bと第2の筒体62の外周面でのドラック効果により、気体を圧縮しながら移送するため、ネジ溝19Aの深さは、内側ネジ溝排気流路R1の上流入口側(吸気口2に近い方の流路開口端)で最も深く、その下流出口側(排気ポート3に近い方の流路開口端)で最も浅くなるように設定してある。このことはネジ溝19Bも同様である。
【0045】
外側ネジ溝排気流路R2の入口(上流端側)は、多段に配置されている固定翼14のうち最下段の固定翼14Eと後述する連通開口部Hの上流端との間の隙間(以下「最終隙間G1」という)に連通している。また、同流路R2の出口(下流端側)は、ポンプ内排気口側の流路S(以下「ポンプ内排気口側流路S」という)を通じて、排気ポート3に連通している。
【0046】
内側ネジ溝排気流路R1の入口(上流端側)は、ロータ6の略中間で該ロータ6の内周面(具体的には、連結部60の内面)に向って開口している。また、同流路R1の出口(下流端側)は、ポンプ内排気口側流路Sを通じて、排気ポート3に連通している。
【0047】
前記ポンプ内排気口側流路Sは、ロータ6やネジ溝排気部ステータ18A、18Bの下端部とポンプベース1Bの内底部との間に所定の隙間(
図1の真空ポンプP1では、ステータコラム4の下部外周を一周する形態の隙間)を設けることによって、ネジ溝排気流路R1、R2の出口から排気ポート3に至るように形成してある。
【0048】
ロータ6の略中間には連通開口部Hが開設されており、連通開口部Hは、ロータ6の表裏面間を貫通するように形成されることで、ロータ6の外周側に存在する気体の一部を内側のネジ溝排気流路R1へ導くように機能する。かかる機能を備えた連通開口部Hは、例えば、
図1のように連結部60の内外面を貫通するように形成してもよい。また、
図1の真空ポンプP1では、前記連通開口部Hを複数設け、これら複数の連通開口部Hが真空ポンプ軸心に対して点対称となるように配置してある。
【0049】
《ネジ溝排気部Psにおける排気動作説明》
先に説明した翼排気部Ptの排気動作による移送で最終隙間G1やネジ溝排気流路R2の入口(上流端)に到達したガス分子は、ネジ溝排気流路R2や連通開口部Hからネジ溝排気流路R1に移行する。移行したガス分子は、ロータ6の回転によって生じる効果、すなわち第2の筒体62の外周面とネジ溝19Bでのドラッグ効果や、第2の筒体62の内周面とネジ溝19Aでのドラッグ効果によって、遷移流から粘性流に圧縮されながらポンプ内排気口側流路Sに向かって移行する。そして、ポンプ内排気口側流路Sに到達したガス分子は、排気ポート3に流入し、図示しない補助ポンプを通じて外装ケース1の外へ排気される。
【0050】
《隔壁の説明》
図1の真空ポンプP1では、ポンプ内排気口側流路Sの内壁の一部を形成しているポンプベース1Bの内底に隔壁設置スペースを設け、かかるスペースに隔壁21を設置することで、ポンプ内排気口側流路Sを覆う隔壁21が設けられる構成を採用している。特に
図1の真空ポンプP1では、かかる隔壁21の具体的な構造例として、内側ネジ溝排気部ステータ18Aの排気口側端部が延長部18A−1として延長されて隔壁21の一部をなすものとした。前記延長部18A−1とステータコラム4外壁との間に隙間G4があり断熱が確保されている。
【0051】
隔壁21は、熱の良導体(例えば、アルミニウム合金等)からなり、ポンプ内排気口側流路Sの内壁の一部を形成し、ポンプ内排気口側流路S内を外装ケース1から覆う手段として機能する。
【0052】
隔壁21とポンプベース1Bの内底(ポンプ内排気口側流路Sの内壁の一部)との間には断熱のための空隙G2を設けている。また、この隔壁21は、それ以外のポンプ構成部品(
図1の例では、ポンプベース1Bの内周段部)に、熱の不良導体(例えば、ステンレス合金、セラミック等)からなる断熱材22を介して接合されている。シール手段T1は空隙G2を通じて排気ポート3からネジ溝排気部Ps上流へのガスの逆流を防止する手段として機能する。断熱材22は、排気ポート3からネジ溝排気部Ps上流へのガスの逆流を防止する機能を兼ねても良い。
【0053】
図1の真空ポンプP1では、隔壁21からポンプベース1Bへの熱の移動は前述の空隙G2や断熱材22によって阻止されるから、隔壁21を高温に保ち、ポンプ内排気口側流路S内の温度を高めることができると同時に、外装ケース1(ポンプベース1B、ポンプケース1A)やステータコラム4の温度上昇を効果的に防止することができる。
【0054】
《加熱手段の説明》
図1の真空ポンプP1では、内側と外側のネジ溝排気部ステータ18A、18Bを締結ボルトで隔壁21に取付けることにより、ネジ溝排気部ステータ18A、18Bを位置決め固定する構成、及び、加熱手段として棒状のヒータHTを隔壁21に埋設することにより、当該ヒータHT自身の発熱で隔壁21を加熱するとともに、隔壁21からの熱伝導でネジ溝排気部ステータ18A、18Bを加熱する構成を採用している。
【0055】
図1の真空ポンプP1において、ネジ溝排気流路R1、R2でガスを圧縮したときに発生する熱(ガス圧縮熱)は、ネジ溝排気部ステータ18A、18Bを通じて隔壁21に伝わること、および、その伝わった熱は空隙G2や断熱材22によって隔壁21で保持されることから、ガス圧縮熱だけでも隔壁21の温度は上昇し、これに応じてポンプ内排気口側流路S内の温度も上昇する。
【0056】
これに加えて更に、同図の真空ポンプP1では、ヒータHTで隔壁21を加熱できるので、外装ケース1やステータコラム4の温度上昇を防止しつつ、ポンプ内排気口側流路S内の温度をより一層高めることができ、ポンプ内排気口側流路S内での生成物の付着・堆積を効果的に防止し得る。
【0057】
ところで、
図1の真空ポンプP1において、先に説明した最終隙間G1やステータコラム4外壁部付近は低い圧力に保たれるので、その温度を低温に保っても生成物が堆積するリスクは低いという特徴がある。
【0058】
《排気ポートの詳細》
図1の真空ポンプP1では、排気ポート3の具体的な構成として、ポンプベース1Bの外側面から隔壁21を貫通してポンプ内排気口側流路Sに連通する構成の貫通穴23を形成し、この貫通穴23にポート部材として筒体24を外装ケース1に取付けている。
【0059】
また、
図1の真空ポンプP1においては、隔壁21の貫通部21Aに熱の良導体(例えば、アルミニウム合金等)からなる筒体25の一端部を接合することで、当該筒体25を隔壁21に取り付けるとともに、取り付けた筒体25の他端部を前記筒体24内に挿入することで、排気ポート3を内外の筒体24、25からなる多重筒構造とし、排気ポート3の入口(上流端)から出口(下流端)までの全範囲に亘って当該筒体25が配置される構成を採用した。内側の筒体25は、外側の筒体24やポンプベース1Aと接しておらず、それらの外装部品から断熱的に配置されている。
【0060】
前記のような排気ポート3の構成によると、隔壁21の熱によって内側の筒体25の温度が上昇し、この温度上昇を通じて排気ポート3の出口付近が高温化されるため、排気ポート3の出口付近における生成物の付着・堆積も効果的に防止することができる。なお、排気ポート3の出口に接続される配管が温度管理されて高温化している場合は、内側の筒体25を省略してもよい。
【0061】
図2から
図9は、本発明の他の実施形態である真空ポンプの断面図である。それぞれの図の真空ポンプP2〜P9の基本的な構成は
図1の真空ポンプP1と同様であるため、それぞれの図において
図1と同一部材には同一符号を付し、その詳細説明は省略し、以下異なる部分のみを説明する。
【0062】
《
図2の真空ポンプP2の特徴》
図1の真空ポンプP1では、外側のネジ溝排気部ステータ18Bと隔壁21を別部品として形成しているが、これに代えて、
図2の真空ポンプP2では、そのネジ溝排気部ステータ18Bと隔壁21を一部品として形成することで、部品点数や組立工数の削減を図っている。
【0063】
《
図3の真空ポンプP3の特徴》
図3の真空ポンプP3では、
図1のポンプ内空間G3(外側のネジ溝排気部ステータ18Bとポンプベース1Bとの間の隙間)に隔壁21の一部を延設してなる延設部26を設けている。この延設部26は、外側のネジ溝排気部ステータ18Bからガスを介してポンプベース1B側へ逃げる熱量を低減する手段として機能する。
【0064】
すなわち、
図1の真空ポンプP1において、翼排気部Ptの排気動作による移送で最終隙間G1やネジ溝排気流路R2の入口(上流端)に到達したガス分子は、ポンプ内空間G3にも流入する。このポンプ内空間G3内に流入するガス量が多ければ多いほど、ポンプ内空間G3内のガスを介して外側のネジ溝排気部ステータ18Bからポンプベース1B側に逃げる熱量が多くなる。この点、
図3の真空ポンプP3では、そのようなポンプ内空間G3に隔壁21の延設部26が存在するので、ポンプ内空間G3に流入するガス量が減少し、これに伴い、外側のネジ溝排気部ステータ18Bからポンプベース1B側へ逃げる熱量も減る。
【0065】
また、
図3の真空ポンプP3では、ロータ6と堆積した生成物との接触によりロータ6が破損したときの破壊トルクで隔壁21が回らないようにする手段として、ポンプベース1Bの内底面に回止めコマMを立設する一方、これに対応して隔壁21に凹部Nを設け、その凹部Nに回止めコマMが配置されるように構成してある。なお、回止めコマMは凹部Nに接触していない。これは、隔壁21から回止めコマMを介してポンプベース1B側に熱が逃げることを防止するためである。
【0066】
《
図4の真空ポンプP4の特徴》
図1の真空ポンプP1では、ロータ6の下端やネジ溝排気部ステータ18A、18Bの下端より低い位置に、排気ポート3を設けているが、
図4の真空ポンプP4では、それより高い位置の一例として、排気ポート3の下部とロータ6の下端やネジ溝排気部ステータ18A、18Bの下端とが略並ぶように、当該排気ポート3を設けることで、ポンプ内排気口側流路Sの高さを低く設定し、真空ポンプ軸心方向において真空ポンプP4全体の短縮・小型化を図っている。
【0067】
《
図5の真空ポンプP5の特徴》
図1の真空ポンプP1では、外側のネジ溝排気部ステータ18Bと隔壁21とを別部品として構成したが、
図5の真空ポンプP5では、そのネジ溝排気部ステータ18Bと隔壁21を一部品として鋳物等により一体形成することによって、部品点数の削減を図っている。
【0068】
《
図6の真空ポンプP6の特徴》
図1の真空ポンプP1では、排気ポート3の具体的な構成として、ポンプベース1Bの貫通穴23にポート部材として筒体24を嵌込み装着しているが、これに代えて、
図6の真空ポンプP6では、かかる貫通穴23を拡大し、貫通穴23と当該筒体24とが非接触の状態になるように構成するとともに、当該筒体24の入口(上流端)側を隔壁21の貫通部21Aまで延長して該貫通部21Aに嵌込み接合することで、隔壁21に当該筒体24を直接取付けている。この場合、排気ポート3は、筒体24のみからなり、隔壁21以外のポンプ構成部品とは非接触で設置された構成になる。
【0069】
このような排気ポート3の構成によると、筒体24自体が隔壁21の熱で加熱されるから、先に説明した
図1の筒体25を省略することができ、部品点数や組立工数の削減を図れる。
【0070】
なお、
図6の真空ポンプP6において、シール手段T1、T2は、貫通穴23からポンプ内への大気の流入を防止する真空シールとして機能している。
【0071】
《
図7の真空ポンプP7の特徴》
図7の真空ポンプP7では、測温手段27として、サーミスタ・熱電対・白金抵抗体等からなる温度測定素子27Aを隔壁21に埋設し、温度測定素子27Aでの測定値を基に加熱手段(ヒータHT)を制御する図示しない制御手段を設けることで、隔壁21を温度管理し、ポンプ内の過熱防止を図れるように構成してある。
【0072】
前記加熱手段(ヒータHT)の制御手段については、例えば、ヒータHTに流す電流値を増減する電流制御と、ポンプベース1Bに設置されている冷却管Cの図示しないバルブを調整することで冷却管Cを流れる冷却媒体の流量を増減する流量制御と、を併用してもよい。
【0073】
前記測温手段27や制御手段については、
図1から
図6の真空ポンプP1〜P6にも適用可能である。また、前記測温手段27は、ネジ溝ポンプステータ18a、18bに設置してもよい。この点は加熱手段(ヒータHT)も同様である。
【0074】
《
図8の真空ポンプP8の特徴》
図7の真空ポンプP7においては、測温手段27の具体的な設置例として、真空ポンプ軸心方向に略沿わせて測温手段27を隔壁21に埋設しているが(縦置タイプ)、これに代えて、
図8の真空ポンプP8では、真空ポンプ軸心方向と略直交する方向に沿わせて測温手段27を隔壁21に埋設している(横置タイプ)。
【0075】
前記のような温度測定素子27Aの縦置タイプでは、少なくとも温度測定素子27Aの長さより高い隔壁21が必要となる一方、温度測定素子27Aの横置タイプでは、そのように高い隔壁21は不要であるため、隔壁21の高さを低く設定することができ、真空ポンプ軸心方向において真空ポンプP7全体の短縮・小型化を図ることが可能である。
【0076】
《
図9の真空ポンプP9の特徴》
図1の真空ポンプP1では、加熱手段の具体例として、ヒータHT自身の発熱で隔壁21を加熱する構成を採用したが、これに代えて、
図9の真空ポンプP9では、コイル30を用いた電磁誘導加熱方式で隔壁21を加熱する構成を採用した。
【0077】
この電磁誘導加熱方式は、隔壁21の外底面に発熱用コア28として設置した電気抵抗の小さい強磁性体と、その発熱用コア28に対向するヨーク29としてポンプベース1Bに設置した電気抵抗の大きい強磁性体と、ヨーク29内に収容したコイル30とで構成される。この構成は一例であり、必要に応じて適宜、電磁誘導加熱方式の構成を変更してもよい。
【0078】
前記のような構成の電磁誘導加熱方式では、コイル30に交流電流を流すと、発熱用コア28の内部に渦電流が発生し、発熱用コア28自身が発熱して隔壁21を加熱する。なお、ヨーク29は電気抵抗が大きいため、この電磁誘導加熱方式によるヨーク29自体の発熱は無視できるほど小さい。よって、ヨーク29の発熱でポンプベース1Bが高温になることもない。
【0079】
以上説明した実施形態の真空ポンプP1〜P9では、その具体的な構成として、ネジ溝排気流路R1、R2の出口から排気ポート3に至るポンプ内排気口側流路Sに隔壁21を設け、かかる隔壁21がポンプ内排気口側流路S内を外装ケース1から覆う構成を採用した。このため、ポンプ内排気口側流路Sやネジ溝排気流路R1、R2の出口付近を通過するプロセスガスの温度低下が生じ難いこと、および、ポンプ内排気口側流路Sやネジ溝排気流路R1、R2の出口付近の壁面温度を高く保つことが可能となる点で、ネジ溝排気流路R1、R2の出口付近やポンプ内排気口側流路Sでのプロセスガスの温度低下による生成物の堆積を防止できる。
【0080】
また、真空ポンプP1〜P2によると、ポンプ内排気口側流路Sと外装ケース1との間での熱の出入りは隔壁21によって妨げられることから、ポンプ内排気口側流路Sやネジ溝排気流路R1、R2出口付近だけを効率よく加熱することができ、また、その加熱によって外装ケース1の温度上昇が生じることもない。よって、外装ケース1と連結しているステータコラム4やこのステータコラム4に内蔵されている電装部品(ラジアル磁気軸受10、10や駆動モータ12等)の温度上昇を防止でき、かかる電装部品の過熱によるトラブルを低減できる。また、ステータコラム4やステータコラム4に内蔵されている電装部品を保護するために外装ケース1に冷却手段を設けて外装ケース1を冷却しても、ポンプ内排気口側流路Sの温度が低下することはない。
【0081】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により多くの変形が可能である。
【0082】
例えば、本発明は、先に説明した本実施形態の真空ポンプにおいて翼排気部Ptを省略した形式の真空ポンプにも適用することができる。