(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車のエンジンや火力発電の燃料等として、石油等よりも燃焼時の二酸化炭素等の排出量が少ないクリーンエネルギーである天然ガスが利用されている。天然ガスは、炭素と水素からなる多種のガス成分(メタン、エタン、プロパン、ブタン等)が含まれている。これらの多種のガス成分を含む天然ガスは、ガス成分の構成や濃度比率が産地等によって異なっている。天然ガスを燃料としたエンジン制御等を行う場合、ガス成分の構成や濃度比率が判らないと、最適な燃焼を行えず、排気ガスや燃費等に影響を及ぼす。そのため、天然ガスの燃焼を効率良く行うためには、使用している天然ガスのガス成分の各濃度を高精度に検出する必要がある。
【0005】
しかし、特許文献1に開示されるガス成分センサでは2種のガス成分の濃度しか検出できず、天然ガスに含まれる多種のガス成分の各濃度を検出することができない。また、従来の周知のガスセンサは、その殆どが1種のガス成分を検出するセンサである。そのため、多種のガス成分の濃度を検出するためには、複数のガスセンサが必要となったり、センサの構成が複雑となり、高コストとなる。
【0006】
そこで、本技術分野においては、単一のセンサにより複数のガス成分の各濃度を簡易な構成で検出できるガスセンサが要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係るガスセンサは、被検ガスに含まれる複数のガス成分の各濃度を検出するガスセンサであって、
被検ガスは酸素と反応して発熱する複数のガス成分を含み、酸素を含むガス側に配置され
る第1電極と、被検ガス側に配置され
る第2電極と、
第1電極及び第2電極に電気的に接続され電圧が印加されて酸素イオンを第1電極側から第2電極側へ移動させることができる固体電解質と、固体電解質の温度を調整する温度調整部と、を備え、
固体電解質の温度を温度調整部によって被検ガスに含まれる複数のガス成分と酸素とが反応し易い各温度に順次調整し
てガス成分の濃度を検出する。
【0008】
このガスセンサは、酸素供給部の両端部に電極がそれぞれ設けられ、その一方の端部の第1電極側が酸素を含むガス(例えば、大気)にさらされ、他方の端部の第2電極側が被検ガスにさらされている。その電極間に電源から電圧が印加されると、酸素供給部では、酸素を含むガスにさらされている第1電極(マイナス極)側から第2電極(プラス極)側へ酸素(特に、第1電極で電子を受け取って酸素イオンになった状態)が移動し、第2電極側に酸素を供給する。第2電極側では、その酸素と被検ガスに含まれるガス成分とが化学反応し、発熱する。各ガス成分は、この酸素との反応において反応し易い温度をそれぞれ有している。このガス成分毎の反応し易い各温度を利用することにより、各温度における各ガス成分の酸素との反応によって変化する様々な量から各ガス成分の濃度を検出することが可能である。そこで、ガスセンサでは、温度調整部によって、酸素供給部の温度をガス成分と酸素とが反応し易い各温度に順次調整する。そして、ガスセンサでは、その各温度になる毎に、反応によって変化する量(例えば、酸素供給部で供給された酸素量、反応で発生した熱量)から反応で消費されたガス量(すなわち、ガス成分の濃度)を検出する。この検出を、被検ガスに含まれる複数のガス成分の酸素と反応し易い各温度について繰り返し行う。この温度を順次変化させる際に、高い温度から低い温度の順に行ってもよいしあるいは低い温度から高い温度の順に行ってもよい。このように、このガスセンサは、被検ガスに含まれる複数のガス成分の酸素と反応し易い各温度に順次変えて、その各温度における化学反応から各ガス成分の濃度を順次検出することにより、単一のセンサにより複数のガス成分の各濃度を簡易な構成で検出できる。
【0009】
なお、被検ガスは、複数のガス成分(不純物となるガス成分の場合もある)を含むガスであり、例えば、天然ガス、排気ガスである。但し、本発明に係るガスセンサによって濃度を検出可能なガス成分は、酸素と化学反応して発熱し、その化学反応において反応し易い温度を有するガスである。酸素供給部は、電圧を付加すると酸素(特に、酸素イオン)が移動し、酸素を供給できるものであり、例えば、固体電解質(ジルコニア等)である。
【0010】
一形態のガスセンサでは、第1電極と前記第2電極との間に流れる電流を検出する電流検出部を備え、
固体電解質の温度を温度調整部によって
各温度に順次調整し、当該調整された温度のときに電流検出部で検出した電流値に基づいて
固体電解質で供給された酸素量を導出し、当該導出された酸素量からガス成分の濃度を検出する。
【0011】
このガスセンサでは、酸素供給部の温度がガス成分と酸素とが反応し易い各温度になる毎に、電流検出部によって電極間を流れた電流値を検出する。この電流値に応じた電子を受け取って酸素から酸素イオンになるので、ガスセンサでは、検出した電流値から酸素供給部で供給された酸素量を導出し、その酸素量から化学反応で消費されたガス量(すなわち、ガス成分の濃度)を検出する。このように、ガスセンサは、酸素供給部から供給される酸素量に対応する電流値を用いることにより、化学反応で使われた酸素量(ひいては、ガス成分の濃度)を簡単に検出することができる。特に、この検出方法の場合、ガス成分の濃度を検出する過程で環境における影響を受け易い熱量を用いていないので、検出精度が高い。
【0012】
一形態のガスセンサでは、ガス成分と酸素との反応で増加する熱量を検出する熱量検出部を備え、
固体電解質の温度を温度調整部によって
各温度に順次調整し、当該調整された温度のときに熱量検出部で検出した熱量からガス成分の濃度を検出する。
【0013】
このガスセンサでは、酸素供給部の温度がガス成分と酸素とが反応し易い各温度になる毎に、熱量検出部によって化学反応での発熱で増加する熱量を検出する。そして、ガスセンサでは、その増加した熱量から化学反応で消費されたガス量(すなわち、ガス成分の濃度)を検出する。このように、ガスセンサは、化学反応で増加した熱量を用いることにより、化学反応で消費されたガス成分の濃度を簡単に検出することができる。特に、この検出方法の場合、熱量検出部としては温度調整部で用いる温度センサ等を共用できるので、より簡易な構成が可能となる。
【0014】
一形態のガスセンサでは、
固体電解質の温度を温度調整部によって
各温度のうちの高温側から低温側の各温度に順次調整する。このように、このガスセンサは、温度を順次変化させる際に高温側から低温側の各温度に順次変えることにより、ガス成分と酸素の反応で発生する熱による温度上昇による影響をガス成分の濃度を検出する際に受け難くなり、検出精度が向上する。
【0015】
一形態のガスセンサでは、
固体電解質の温度を温度調整部によって被検ガスに含まれる任意のガス成分と酸素とが反応し易い温度に調整する毎に
電圧の印加を開始し、当該任意のガス成分の濃度の検出が終了する毎に
電圧の印加を終了する。このように、このガスセンサは、各ガス成分の反応し易い温度に調整されて濃度検出をする毎に
電圧の印加開始/印加停止することにより、ガスセンサによる消費電力を低減できる。
【0016】
一形態のガスセンサでは、ガスセンサによる検出中は
電圧を印加し続ける。このように、このガスセンサは、検出中は
電圧を印加し続けることにより、各ガス成分の反応し易い温度の前後の温度領域についても検出できるので、それらの温度領域での濃度も加味して各ガス成分の濃度をより高精度に検出でき、検出精度が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、単一のセンサにより複数のガス成分の各濃度を簡易な構成で検出できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係るガスセンサの実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
本実施の形態では、本発明に係るガスセンサを、天然ガス(特に、圧縮天然ガス(CNG[CompressedNatural Gas]))を燃料とする天然ガス自動車において用いられるガスセンサに適用する。本実施の形態に係るガスセンサは、燃料として用いられる天然ガスに含まれる各ガス成分の濃度を検出し、これらの各濃度からガス成分の濃度比率を導出する。本実施の形態に係るガスセンサは、エンジンで使用される前の燃料となるガスを被検ガスとする場合でもよいし、エンジンで使用された後の排気となるガスを被検ガスとする場合(排気の場合は燃焼されずに残った未燃焼のガス成分の濃度を検出することになる)でもよいし、そのいずれの場合でもよい。したがって、本実施の形態に係るガスセンサは、天然ガス(CNG)を蓄える燃料タンクや天然ガスをエンジンに供給する配管、排気管等における所定箇所に取付けられる。
【0021】
本実施の形態では、天然ガスに含まれるガス成分としてメタン(CH
4)、エタン(C
2H
6)、プロパン(C
3H
8)、ブタン(C
4H
10)の4種の濃度検出を行うものとする。但し、天然ガスに含まれるこの4種以外のガス成分の濃度も検出することも可能であり、あるいは、この4種のうちの3種又は2種を検出するだけでもよい。また、本実施の形態では、ガス濃度比率(各ガス成分のガス濃度)を検出するタイミングとしては、エンジン始動時のみに行ってもよいし、エンジンの作動中は常時行ってもよいし、あるいは、タンクへのCNG補給時、複数本のタンクにCNGを蓄えている場合には燃料で使用するタンクを切り替る時などの天然ガスに含まれるガス成分のガス濃度比率が変わる可能性があるタイミングのときに行ってもよい。
【0022】
本実施の形態には、3つの形態があり、第1の実施の形態が低い温度側から高い温度側の各温度に順次調整しかつ熱量から濃度を検出する形態であり、第2の実施の形態が低い温度側から高い温度側の各温度に順次調整しかつ電流値から濃度を検出する形態であり、第3の実施の形態が高い温度側から低い温度側の各温度に順次調整しかつ電流値から濃度を検出する形態である。
【0023】
なお、ガスセンサで検出されるガス成分の濃度比率は、天然ガス自動車のエンジン制御(例えば、最適な燃焼条件(燃料噴射量等)の設定、フィードバック制御、エンジンの故障診断)に用いられる。燃料として用いる天然ガスのガス成分の濃度比率が変わると、シリンダ内での燃焼状態が変わり、シリンダ内の圧力が変化する。また、その燃焼状態が悪化すると、排気ガス、燃費、エンジン出力、エンジンの耐久性等に影響を及ぼすので、燃料として使用中の天然ガスのガス成分の濃度比率を把握しておくことは、エンジン制御において非常に重要である。
【0024】
図1〜
図3を参照して、第1の実施の形態に係るガスセンサ1について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係るガスセンサ1の構成を模式的に示す図である。
図2は、天然ガスに含まれる各ガス成分の酸素との反応し易い温度を示す図である。
図3は、ガス濃度−発熱量マップの一例である。
【0025】
ガスセンサ1は、天然ガスに含まれるガス成分の濃度を検出するために、ガス成分と酸素(酸素イオン)との化学反応を利用する。特に、ガスセンサ1は、4種のガス成分の濃度を順次検出するために、各ガス成分が酸素と反応して酸化・燃焼し易い温度を低い温度から順に高い温度に変化させ、その温度毎に反応熱で増加する熱量を導出し、その増加熱量からガス成分の濃度を検出する。そのために、ガスセンサ1は、酸素ポンプ10、基準電極11、電極12、電源13、スイッチ14、ヒータ15、温度センサ16、制御部21を備えている。
【0026】
なお、第1の実施の形態では、酸素ポンプ10が特許請求の範囲に記載する酸素供給部に相当し、基準電極11が特許請求の範囲に記載する第1電極に相当し、電極12が特許請求の範囲に記載する第2電極に相当し、電源13が特許請求の範囲に記載する電源に相当し、ヒータ15、温度センサ16及び制御部21での処理が特許請求の範囲に記載する温度調整部に相当し、温度センサ16及び制御部21での処理が特許請求の範囲に熱量検出部に相当する。
【0027】
酸素ポンプ10は、一方側で酸素と電子を受け取り、一方側から他方側に酸素イオンを移動させ、他方側に酸素イオンを供給するポンプである。酸素ポンプ10は、固体電解質のジルコニアからなる。ジルコニア(固体電解質)は、外部から加えられた電場によってイオンを移動させることができる固体であり、イオンの移動によって電流が流れる。特に、ジルコニアに電圧が印加され、ジルコニアの一方側に酸素が存在すると、酸素が電子と結合して酸素イオンとなり、酸素イオンが他方側に移動し、他方側に酸素イオンを供給できる。酸素ポンプ10は、例えば、直方体や立方体の形状である。
【0028】
基準電極11は、酸素ポンプ10の一方の端面に設けられる電極であり、電子を受け取るマイナス極となる。基準電極11は、酸素ポンプ10の一方の端面の全面又は一部に取付けられ、全面の場合には酸素が通過できるように多孔質の物質がよく、一部の場合には多孔質の物質でなくてもよい。酸素ポンプ10の一方の端面に取付けられる基準電極11側は、
図1に示すように、酸素(O
2)を含むガス(例えば、大気)にさらされるように、酸素を含むガス中に配置されたり、配管で酸素を含むガスが導入されたりする。
【0029】
電極12は、酸素ポンプ10の他方の端面に設けられる電極であり、電子を放出するプラス極となる。電極12は、酸素ポンプ10の他方の端面(基準電極11が取り付けられている一方の端面に対向する面)の全面又は一部に取付けられ、全面の場合には酸素イオンや天然ガスに含まれるガス成分が通過できるように多孔質の物質がよく、一部の場合には多孔質の物質でなくてもよい。酸素ポンプ10の他方の端面に取付けられる電極12側は、
図1に示すように、4種のガス成分(メタン(CH
4)、エタン(C
2H
6)、プロパン(C
3H
8)、ブタン(C
4H
10))を含む天然ガスにさらされるように、天然ガスが蓄えられる燃料タンク内に配置されたり、天然ガス(あるいは排気ガス)が流れる配管内に配置されたりする。
【0030】
電源13は、基準電極11と電極12との間(ひいては、酸素ポンプ10)に直流の電圧を印加する電源である。電源13は、マイナス側が基準電極11に接続され、プラス側がスイッチ14を介して電極12に接続される。電源13の電圧値は、酸素ポンプ10に用いられるジルコニアの特性に応じて決められる。
【0031】
スイッチ14は、電源13による電圧の印加/印加停止を行うためのスイッチである。スイッチ14は、電源13のプラス側と電極12との間に接続される。スイッチ14は、制御部21によってON/OFFされる。
【0032】
なお、スイッチ14がONし、電源13から基準電極11と電極12との間(酸素ポンプ10)に電圧が印加されると、電子(e
―1)が流れる。基準電極11側では、下記の式(1)に示すように、酸素(O
2)が電子(e
―1)を受け取り、酸素イオン(O
2−)となる。酸素ポンプ10では、この酸素イオン(O
2−)を電極12側に移動させる。電極12側では、例えば、下記の式(2)に示すように、メタン(CH
4)の場合、メタン(CH
4)が酸素(O
2)と反応して酸化・燃焼することにより、二酸化炭素(CO
2)と水(H
2O)に変化するとともに反応熱が発生する。この反応熱により周囲の温度が上昇する。この際、電極12側では、式(1)に示すように、酸素イオン(O
2−)が酸素(O
2)と電子(e
―1)になり、電子(e
―1)を放出する。
【数1】
【0033】
ヒータ15は、酸素ポンプ10を加熱するヒータである。ヒータ15は、酸素ポンプ10内に設けてもよいしあるいは酸素ポンプ10外に設けてもよい。ヒータ15としては、従来の周知のものが適用されるが、ガス成分(メタン、エタン、プロパン、ブタン)のうちの酸素と反応し易い温度の中で最も高い温度よりも高い温度まで温度上昇させることができるヒータを適用する。ヒータ15は、制御部21によってON(電力供給)/OFFされる。
【0034】
温度センサ16は、酸素ポンプ10の温度を検出するヒータである。温度センサ16は、酸素ポンプ10内(特に、電極12の周辺)に設けられる。但し、温度センサ16が温度調整用と熱量検出用の2個ある場合、温度調整用の温度センサを酸素ポンプ10内に設け、熱量検出用の温度センサを電極12の近傍の酸素ポンプ10内又は酸素ポンプ10外に設ける。温度センサ16としては、従来の周知のものが適用されるが、ガス成分(メタン、エタン、プロパン、ブタン)うちの酸素と反応し易い温度の中で最も高い温度よりも高い温度まで検出可能な温度センサを適用する。温度センサ16は、検出した温度の情報を制御部21に出力する。
【0035】
なお、電極12で酸素イオンが供給され、電極12側で酸素と各ガス成分(メタン、エタン、プロパン、ブタン)とが化学反応するので、酸素ポンプ10内でも電極12の周辺の温度を上昇させ、電極12の周辺の温度(ひいては、熱量)を検出する必要がある。
【0036】
制御部21は、ガスセンサ1の制御部であり、エンジンのECU[Electronic Control Unit]等における1つの機能として構成されてもよいしあるいはガスセンサ1専用の制御装置でもよい。制御部21で行う処理としては、温度調整処理、ガス濃度導出処理、ガス濃度比率導出処理がある。
【0037】
温度調整処理について説明する。4種のガス成分(メタン、エタン、プロパン、ブタン)は、酸素と反応し易い温度(反応温度)がそれぞれ異なっている。
図2には、4種のガス成分(メタン、エタン、プロパン、ブタン)の酸素と反応し易い温度のピークをそれぞれ示しており、ブタンのピークの温度T1<プロパンのピークの温度T2<エタンのピークの温度T3<ブタンのピークの温度T4となる。各ガス成分は、このピークの温度T1,T2,T3,T4で酸素と最も反応し易く、このピークの温度T1,T2,T3,T4から離れるほど反応し難くなり、温度T1,T2,T3,T4をピークとする反応温度領域を有している。したがって、酸素ポンプ10(特に、反応が起こる電極12の周辺)の温度が各温度T1,T2,T3,T4になると、ブタン、プロパン、エタン、ブタンが酸素と最も反応し易くなり、その反応を利用してガス濃度を検出することができる。
【0038】
制御部21では、検出開始時に、ヒータ15をON(電力供給)し、ヒータ15による加熱を開始する。制御部21では、温度センサ16から酸素ポンプ10内の温度の情報を取得する。温度Tを取得する毎に、制御部21では、温度Tが上記の各温度Tx(x=1,2,3,4)になったか否かを順に判定し、酸素ポンプ10内の温度を各温度Txに調整する。まず、最も低い温度T1になったかを判定し、その後は、T2,T3,T4の順に判定していく。この際、制御部21では、最も高い温度T4になるまでヒータ15による加熱を続け、検出が終了するとヒータ15をOFF(電力供給停止)する。なお、酸素ポンプ10内の温度が各温度T1,T2,T3,T4に調整され、そのときに各ガス成分の濃度を検出している間は、ヒータ15の加熱による温度上昇を一時的に抑えるために、ヒータ15による加熱を一時的に停止あるいはヒータ15の出力を調整できる場合には出力を抑制するようにしてもよい。
【0039】
ガス濃度導出処理について説明する。各ガス成分(メタン、エタン、プロパン、ブタン)は酸素と反応して熱を発生させるので、反応で消費されたガスの量(ガス濃度)に応じてその発熱量が変化する。
図3には、メタンの場合のガス濃度と発熱量との関係(ガス濃度の発熱量依存性)を示すマップを示しており(酸素と天然ガスとの空燃比が一定であり、メタンが酸素と反応して完全燃焼した場合のマップ)、ガス濃度と発熱量との間には比例関係がある。メタン以外のエタン、プロパン、ブタンもガス濃度と発熱量との間には比例関係がある。このようなガス濃度−発熱量マップを各ガス成分(メタン、エタン、プロパン、ブタン)について実験等で予め求めておき、制御部21に記憶させておく。
【0040】
各温度Tx(x=1,2,3,4)に調整される毎に、制御部21では、温度センサ16からの温度の情報により、酸素ポンプ10内の温度が各温度Txになる前(各ガス成分の反応前)の電極12の周辺の温度TAを取得するとともに、各温度Txになった後(各ガス成分の反応後)の電極12の近傍の温度TBを取得する。そして、制御部21では、反応前の温度TAと反応後の温度TBから反応前後の温度差(TB−TA)を算出する。この温度差(TB−TA)は、ガス成分の酸素との反応によって発生した熱によって上昇した温度分に相当すると考えられる。制御部21では、この温度差(TB−TA)から反応前後で増加した熱量(反応による発熱量)を算出する。そして、制御部21では、温度Txに対応するガス成分のガス濃度−発熱量マップに基づいて、その増加熱量(発熱量)に応じたガス濃度[ppm]を導出する。なお、ヒータ15によって加熱している場合、ヒータ15による加熱でも温度上昇するので、上記したようにヒータ15による加熱を一時的に抑えたほうがよい。
【0041】
ガス濃度比率導出処理について説明する。4種のガス成分(メタン、エタン、プロパン、ブタン)の全てのガス濃度を導出すると、制御部21では、メタン、エタン、プロパン、ブタンの各ガス濃度から、そのガス濃度比率を算出する。このガス濃度比率が、エンジンの制御に用いられる。
【0042】
なお、制御部21では、スイッチ14に対するON/OFFを行って、電源13からの基準電極11と電極12との間(酸素ポンプ10)への電圧の印加開始/印加終了させている。このスイッチ14に対するON/OFFについては、ガス濃度の検出を行っている間は常時ONし、全ての検出が終了するとOFFするようにしてもよい。このように電圧を常時印加した場合(つまり、酸素ポンプ10で酸素を常時供給可能な状態とした場合)、各ガス成分の反応し易い温度の前後の温度領域についても各ガス成分の濃度を検出できるので、それらの温度領域でのガス濃度も加味して各ガス成分のガス濃度をより高精度に導出することも可能となり、検出精度を向上させることができる。あるいは、各温度Tx(x=1,2,3,4)に調整する毎にスイッチ14をONし、各ガス濃度の検出が終了する毎にスイッチ14をOFFするようにしてもよい。このように各ガス成分の反応し易い各温度Txに調整される毎に電源13による電圧の印加開始/印加停止を行う場合(つまり、各温度Txに調整されてガス濃度を検出するときだけ酸素ポンプ10で酸素を供給可能な状態とした場合)、ガスセンサ1による消費電力を低減できる。
【0043】
図1〜
図3を参照して、ガスセンサ1によるガス濃度比率検出する際の動作について
図4のフローチャートに沿って説明する。
図4は、ガスセンサ1によるガス濃度比率検出の流れを示すフローチャートである。
【0044】
ガス濃度比率検出が開始すると、まず、制御部21では、変数xを1に初期化する(S10)。変数xは、各ガス成分の酸素と反応し易いピークの温度Tx(x=1,2,3,4)のxに対応した変数である。この例では、変数xは1,2,3,4であるが、検出するガス成分の数に応じて変わる。最も低い温度T1(ブタン)から検出するので、xを1で初期化している。この際、スイッチ14は制御部21によってONされ、電源13から基準電極11と電極12との間(酸素ポンプ10)に電圧が印加される。ヒータ15では、制御部21によってON(電力が供給)され、酸素ポンプ10を加熱する。温度センサ16では、酸素ポンプ10の温度を検出し、その温度の情報を制御部21に出力する。
【0045】
制御部21では、一定時間(例えば、制御部21の制御周期)毎に、温度センサ16から酸素ポンプ10の温度Tを取得する(S11)。そして、制御部21では、その取得した温度Tが各ガス成分の酸素と反応し易い温度Tx(x=1,2,3,4)になったか否かを判定する(S12)。この判定では、まず、最も低い温度T1について判定し、温度T1になった後は次の温度T2について判定し、温度T2になった後は次の温度T3について判定し、温度T3になった後は次の温度T4について判定し、温度T4になった場合にはこの温度判定は終了となる。S12の判定で温度Tが温度Txになっていないと判定すると、ヒータ15による加熱が続けられ(S13)、酸素ポンプ10の温度が上昇する。
【0046】
S12の判定で温度Tが温度Txになったと判定すると、制御部21では、温度センサ16から反応後の温度TBを取得する(S14)。また、制御部21では、温度センサ16から反応前の温度TAも既に取得している(S11)。そして、制御部21では、反応前の温度TAと反応後の温度TBから反応前後の温度差(TB−TA)を算出し、この温度差(TB−TA)から増加熱量(発熱量)を算出する(S15)。さらに、制御部21では、このときの温度Txに対応するガス成分のガス濃度−発熱量マップにより、発熱量に応じたガス濃度を導出する(S16)。
【0047】
制御部21では、変数xが4か否かを判定する(S17)。S17の判定で変数xが4ではないと判定した場合、制御部21では、変数xに1を加算する(S18)。そして、次に反応し易い温度が高い温度Txのガス成分のガス濃度を検出するために、上記のS11〜S17の動作が繰り返される。
【0048】
S17の判定で変数xが4と判定した場合、制御部21では、メタン、エタン、プロパン、ブタンの各ガス濃度からガス濃度比率を算出する(S19)。これで、ガス濃度比率の検出が終了する。この際、スイッチ14は制御部21によってOFFされ、電源13からの電圧印加が終了する。ヒータ15は、制御部21によってOFFされ、加熱が終了する。
【0049】
このガスセンサ1によれば、天然ガスに含まれる各ガス成分の酸素と反応し易い各温度に順次変えて、その各温度での化学反応から各ガス成分の濃度を順次検出することにより、単一のセンサにより複数のガス成分の各ガス濃度(ひいては、複数のガス成分のガス濃度比率)を簡易な構成で検出できる。このガス濃度比率を用いてエンジン制御を行うことにより、最適なエンジン制御ができ、シリンダ内での燃焼状態が良好となり、排気ガス、燃費、エンジン出力、エンジンの耐久性等に好影響を及ぼす。また、一つの簡易な構成のガスセンサ1によって多種のガス成分の濃度を検出できるので、コストを低減できる。
【0050】
また、ガスセンサ1によれば、ガス濃度を導出するために酸素との反応で増加した熱量を用いることにより、ガス成分の濃度を簡単に検出することができる。特に、この検出方法の場合、増加熱量を検出するために温度調整で用いる温度センサ16を共用できるので、より簡易な構成が可能となる。
【0051】
図5〜
図7を参照して、第2の実施の形態に係るガスセンサ2について説明する。
図5は、第2の実施の形態に係るガスセンサ2の構成を模式的に示す図である。
図6は、酸素量−電流値マップの一例である。
図7は、ガス濃度−酸素量マップの一例である。
【0052】
ガスセンサ2は、第1の実施の形態に係るガスセンサ1と比較すると、ガス成分の濃度の導出方法が異なる。ガスセンサ2は、各ガス成分の酸素と反応し易い温度毎に反応中に流れた電流値を計測することにより、その電流値から反応中に供給された酸素量を導出し、その供給酸素量からガス成分の濃度を検出する。そのために、ガスセンサ2は、酸素ポンプ10、基準電極11、電極12、電源13、スイッチ14、ヒータ15、温度センサ16、電流センサ17、制御部22を備えている。
【0053】
なお、酸素ポンプ10、基準電極11、電極12、電源13、スイッチ14、ヒータ15、温度センサ16については第1の実施の形態で説明したので、電流センサ17、制御部22についてのみ説明する。第2の実施の形態では、ヒータ15、温度センサ16及び制御部22での処理が特許請求の範囲に記載する温度調整部に相当し、電流センサ17が特許請求の範囲に電流検出部に相当する。
【0054】
電流センサ17は、基準電極11と電極12との間に流れる電流値を検出するセンサである。電流センサ17は、スイッチ14と電極12との間に接続される。電流センサ17としては、従来の周知のものが適用される。電流センサ17は、検出した電流値の情報を制御部22に出力する。
【0055】
制御部22は、ガスセンサ2の制御部であり、エンジンのECU等における1つの機能として構成されてもよいしあるいはガスセンサ2専用の制御装置でもよい。制御部22で行う処理としては、温度調整処理、ガス濃度導出処理、ガス濃度比率導出処理がある。温度調整処理とガス濃度比率導出処理については第1の実施の形態に係る制御部21での各処理と同様の処理であるので、ガス濃度導出処理についてのみ説明する。
【0056】
ガス濃度導出処理について説明する。基準電極11側では、上記の式(1)で示すように、酸素(O
2)が酸素イオン(O
2−)になるために電子(e
―1)を受け取っており、この受け取られた電子(e
―1)の量が電流値に相当する。電極12側では、この電子(e
―1)に対応する酸素イオン(O
2−)の量に応じて酸素(O
2)を供給し、その供給した酸素(O
2)の量に応じたガス量のガス成分が反応している。したがって、電流値に応じて供給した酸素量を導出でき、その酸素量に応じて反応で消費されたガス量(すなわち、ガス成分の濃度)を導出することができる。
【0057】
図6には、流れた電流値と供給した酸素量との関係(酸素量の電流値依存性)を示すマップを示しており、電流値と酸素量との間には比例関係がある。このような酸素量−電流値マップを実験等で予め求めておき、制御部22に記憶させておく。また、
図7には、メタンの場合のガス濃度と酸素量との関係(ガス濃度の酸素量依存性)を示すマップを示しており(酸素と天然ガスとの空燃比が一定であり、メタンが酸素と反応して完全燃焼した場合)、ガス濃度と酸素量との間には比例関係がある。メタン以外のエタン、プロパン、ブタンもガス濃度と酸素量との間には比例関係がある。このようなガス濃度−酸素量マップを各ガス成分(メタン、エタン、プロパン、ブタン)について実験等で予め求めておき、制御部22に記憶させておく。
【0058】
各温度Tx(x=1,2,3,4)に調整される毎に、制御部22では、電流センサ17から電流値を取得する。そして、制御部22では、酸素量−電流値マップに基づいて、その電流値に応じて供給されている酸素量を導出する。さらに、制御部22では、温度Txに対応するガス成分のガス濃度−酸素量マップに基づいて、その酸素量に応じたガス濃度[ppm]を導出する。
【0059】
図5〜
図7を参照して、ガスセンサ2によるガス濃度比率検出する際の動作について
図8のフローチャートに沿って説明する。
図8は、ガスセンサ2によるガス濃度比率検出の流れを示すフローチャートである。
【0060】
ガス濃度比率検出が開始すると、第2の実施の形態に係るガスセンサ2では、第1の実施の形態に係るガスセンサ1の動作で説明したS10〜S13と同様に、S20〜S23の動作を行う。
【0061】
S22の判定で温度Tが温度Tx(x=1,2,3,4)になったと判定すると、制御部22では、電流センサ17から電流値を取得する(S24)。そして、制御部22では、酸素量−電流値マップにより、その電流値に応じた供給酸素量を導出する(S25)。さらに、制御部22では、このときの温度Txに対応するガス成分のガス濃度−酸素量マップにより、供給酸素量に応じたガス濃度を導出する(S26)。
【0062】
これ以降、第2の実施の形態に係るガスセンサ2では、第1の実施の形態に係るガスセンサ1の動作で説明したS17〜S19と同様に、S27〜S29の動作を行う。この際、S27の判定で変数xが4ではないと判定された場合、S21〜S27の動作が繰り返される。
【0063】
このガスセンサ2は、第1の実施に係るガスセンサ1と同様の効果(ガス濃度を導出するために熱量を用いることによる効果を除く)を有しており、以下の効果も有している。ガスセンサ2によれば、酸素ポンプ10から供給される酸素量に対応する電流値を用いることにより、化学反応で使われた酸素量(ひいては、ガス成分の濃度)を簡単に検出することができる。特に、この検出方法の場合、ガス成分の濃度検出過程で環境における影響を受け易い熱量を用いていないので、検出精度が高い。
【0064】
図5〜
図7を参照して、第3の実施の形態に係るガスセンサ3について説明する。
図5は、第3の実施の形態に係るガスセンサ3の構成を模式的に示す図である。
【0065】
ガスセンサ3は、第2の実施の形態に係るガスセンサ2と比較すると、温度の調整方法が異なる。ガスセンサ3は、各ガス成分が酸素と反応し易い温度のうちの最も高い温度よりも上昇させ、高い温度から順に低い温度に変化させる。そのために、ガスセンサ3は、酸素ポンプ10、基準電極11、電極12、電源13、スイッチ14、ヒータ15、温度センサ16、電流センサ17、制御部23を備えている。
【0066】
なお、酸素ポンプ10、基準電極11、電極12、電源13、スイッチ14、ヒータ15、温度センサ16、電流センサ17については第1、第2の実施の形態で説明したので、制御部23についてのみ説明する。第3の実施の形態では、ヒータ15、温度センサ16及び制御部23での処理が特許請求の範囲に記載する温度調整部に相当する。
【0067】
制御部23は、ガスセンサ3の制御部であり、エンジンのECU等における1つの機能として構成されてもよいしあるいはガスセンサ3専用の制御装置でもよい。制御部23で行う処理としては、温度調整処理、ガス濃度導出処理、ガス濃度比率導出処理がある。ガス濃度導出処理とガス濃度比率導出処理については第2の実施の形態に係る制御部22での各処理と同様の処理であるので、温度調整処理についてのみ説明する。
【0068】
温度調整処理について説明する。制御部23では、検出開始時に、ヒータ15をON(電力供給)し、ヒータ15による加熱を開始する。制御部23では、温度センサ16から酸素ポンプ10内の温度の情報を取得する。温度Tを取得する毎に、制御部23では、温度Tが温度Tx(x=1,2,3,4)の中で最も高い温度T4より高くなったか否かを判定する。この際、制御部22では、最も高い温度T4よりも高くなるまでヒータ15による加熱を続け、温度T4よりも高くなるとヒータ15をOFF(電力供給停止)する。この後、自然に温度が低下していくので、温度Tを取得する毎に、制御部23では、温度Tが温度Tx(x=1,2,3,4)になったか否かを順に判定し、酸素ポンプ10内の温度を各温度Txに調整する。まず、最も高い温度T4になったかを判定し、その後は、T3,T2,T1の順に判定していく。このように、第1、第2の実施の形態に係るガスセンサ1,2とは逆方向に、高い温度側から低い温度側に温度調整する。
【0069】
図5〜
図7を参照して、ガスセンサ3によるガス濃度比率検出する際の動作について
図9のフローチャートに沿って説明する。
図9は、ガスセンサ3によるガス濃度比率検出の流れを示すフローチャートである。
【0070】
ガス濃度比率検出が開始すると、まず、制御部23では、変数xを4に初期化する(S30)。最初に、最も高い温度T4よりも高い温度まで上昇させるので、xを4で初期化している。スイッチ14は制御部23によってONされ、電源13から基準電極11と電極12との間(酸素ポンプ10)に電圧が印加される。ヒータ15では、制御部23によってON(電力が供給)され、酸素ポンプ10を加熱する。温度センサ16では、酸素ポンプ10の温度を検出し、その温度の情報を制御部23に出力する。
【0071】
制御部23では、一定時間毎に、温度センサ16から酸素ポンプ10の温度Tを取得する(S31)。そして、制御部23では、その取得した温度Tが温度T4よりも高くなったか否かを判定する(S32)。
【0072】
S32の判定で温度Tが温度T4よりも高くなっていないと判定すると、ヒータ15による加熱が続けられ(S33)、酸素ポンプ10の温度が上昇する。S32の判定で温度Tが温度T4よりも高くなったと判定すると、ヒータ15は制御部23によってOFF(電力が供給停止)される(S34)。これ以降、酸素ポンプ10の温度は自然に低下していく。
【0073】
制御部23では、一定時間毎に、温度センサ16から酸素ポンプ10の温度Tを取得する(S35)。そして、制御部23では、その取得した温度Tが温度Tx(x=1,2,3,4)になったか否かを判定する(S36)。この判定では、まず、温度T4について判定し、温度T4になった後は次の温度T3について判定し、温度T3になった後は次の温度T2について判定し、温度T2になった後は次の温度T1について判定し、温度T1になった場合にはこの温度判定は終了となる。S36の判定で温度Tが温度Txになっていないと判定すると、次回の判定まで待つ。
【0074】
S36の判定で温度Tが温度Txになったと判定すると、制御部23では、電流センサ17から電流値を取得する(S37)。そして、制御部23では、酸素量−電流値マップにより、その電流値に応じた供給酸素量を導出する(S38)。さらに、制御部23では、このときの温度Txに対応するガス成分のガス濃度−酸素量マップにより、供給酸素量に応じたガス濃度を導出する(S39)。
【0075】
制御部23では、変数xが1か否かを判定する(S40)。S40の判定で変数xが1ではないと判定した場合、制御部23では、変数xから1を減算する(S41)。そして、次に反応し易い温度が低い温度Txのガス成分のガス濃度を検出するために、上記のS35〜S40の動作が繰り返される。
【0076】
S40の判定で変数xが1と判定した場合、制御部23では、メタン、エタン、プロパン、ブタンの各ガス濃度からガス濃度比率を算出する(S42)。これで、ガス濃度比率の検出が終了する。この際、スイッチ14は制御部23によってOFFされ、電源13からの電圧印加が終了する。
【0077】
このガスセンサ3は、第2の実施に係るガスセンサ2と同様の効果を有しており、以下の効果も有している。ガスセンサ3によれば、温度を順次変化させる際に高温側から低温側の各温度に順次変えることにより、ガス成分と酸素の反応で発生する熱による温度上昇の影響をガス濃度検出する際に受け難くなり、検出精度が向上する。ちなみに、低温側から高温側の各温度に順次変える場合、あるガス成分のガス濃度を検出している際に反応温度が近いガス成分が存在すると、ヒータ15による加熱に加えて反応熱(外乱)によって温度が上昇するとその反応温度が近いガス成分も酸素と反応するので、高精度な検出が難しくなる可能性がある。しかし、高温側から低温側の各温度に順次変える場合、あるガス成分のガス濃度を検出している際に反応温度が近いガス成分が存在しても、反応温度が高い側のガス成分のガス濃度は既に検出されているので、反応熱(外乱)による影響を受け難く、高精度な検出が可能性となる。また、既に検出されている反応温度が高い側のガス成分の濃度を考慮して、ガス成分の濃度を精度良く検出することも可能となる。
【0078】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0079】
例えば、本実施の形態では被検ガスとして天然ガスを適用したが、酸素と化学反応して発熱しかつ化学反応し易い各温度を有する複数のガス成分を含む被検ガスであれば適用可能であり、不純物となるガス成分を含む被検ガスにも適用可能である。
【0080】
また、本実施の形態では天然ガス自動車で用いるガスセンサに適用したが、火力発電等の自動車以外の天然ガスを用いる各用途で適用できる。
【0081】
また、本実施の形態では酸素ポンプ(酸素供給部)としてジルコニアを適用したが、電圧を付加すると電極間で酸素イオンが移動し、酸素イオンを供給できる物質であれば他の物質(ジルコニア以外の固体電解質等)を適用してもよい。
【0082】
また、本実施の形態では各ガス成分の濃度から濃度比率まで導出する構成としたが、濃度比率まで導出しない構成でもよい。あるガス成分の濃度が0の場合、そのガス成分は天然ガスに含まれないことになるので、各ガス成分の濃度が0か否かにより、天然ガスに含まれるガス成分構成を導出することも可能である。
【0083】
また、本実施の形態では各ガス成分のピークの温度Tx(x=1,2,3,4)に調整されると、その温度Txで酸素と反応し易いガス成分のみを考慮して熱量や電流値からガス濃度を導出したが、温度Txのときでも、温度Txに近い反応温度である他のガス成分も酸素と反応している可能性があるので(酸素と反応する温度領域が複数のガス成分で重なる場合があるので)、反応温度の近い他のガス成分も考慮して、各ガス成分の濃度を導出するようにしてもよい。そのために、各ガス成分のピークの温度Tx(あるいは、その周辺の温度領域も含めて)において、酸素と反応している全てのガス成分の割合等を実験等で予め求めておき、その割合等を加味してガス濃度を導出するようにするとよい。これによって、より検出精度が向上する。
【0084】
また、第1の実施の形態では各ガス成分が酸素と反応し易い温度の低温側から高温側に温度を変化させて、各温度での熱量からガス成分の濃度を検出する構成としたが、第3の実施の形態のように、高温側から低温側に温度を変化させて、各温度での熱量からガス成分の濃度を検出する構成としてもよい。この場合も、反応熱による温度上昇の影響を抑えることができるので、検出精度が向上する。
【0085】
また、第3の実施の形態では最初に各ガス成分の酸素と反応し易い温度のうちの最も高い温度よりも高い温度まで上昇させ、自然に温度が下がるのを待って各温度に調整する構成としたが、水冷や空冷等の冷却手段を用いて温度を下げる構成としてもよい。