(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1画像のヒストグラムと前記第2画像のヒストグラムとの間でヒストグラムマッチングを行い、前記第2画像とグレースケール範囲が近い第1画像を取得するヒストグラムマッチング部をさらに備え、
前記変形場計算部は、前記第2画像とグレースケール範囲が近い第1画像の前記第2画像に対する変形場を計算することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の医用画像処理装置。
計算して得られた変形場に対して弾性制限を行う弾性制限部、及び/又は、計算して得られた変形場に対して粘性制限を行う粘性制限部をさらに備えたことを特徴とする請求項7に記載の医用画像処理装置。
前記第1画像及び前記第2画像は、医用画像診断装置により得られたデータに基づいて生成された医用画像であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一つに記載の医用画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明の基本的な理解のために、本発明の幾つかの実施形態についての概要を紹介する。この概要は、本発明のキーになる領域又は重要な領域を確定するものではなく、また本発明の範囲を限定するものでもない。その目的は、ただ簡略的に説明することによって、その後に説明する更に詳細な記述のイントロダクションのために説明するものである。
【0010】
本発明の目的は、画像の運動部位をフリーズさせて画像ノイズを減少させることができる医用画像処理装置、医用画像診断装置及び画像処理方法を提供することである。
【0011】
本出願の一実施形態に係る医用画像処理装置は、変形場計算部と、変形場重み付け部と、画像変形部とを備える。変形場計算部は、対象物の第1画像の第2画像に対する変形場を計算する。変形場重み付け部は、上記対象物の各部位の動き量に応じて上記変形場における重み付けを行う。画像変形部は、重み付けが行われた変形場を用いて上記第1画像を変形する。
【0012】
本出願の一実施形態に係る画像処理方法は、対象物の第1画像の上記基準画像に対する変形場を計算するステップと、上記対象物の各部位の動き量に応じて上記変形場における重み付けを行うステップと、重み付けが行われた変形場を用いて上記第1画像を変形するステップとを含む。
【0013】
また、本出願の他の一実施形態によれば、上記画像処理方法を実現するためのコンピュータプログラムを提供する。
【0014】
さらに、本出願の他の一実施形態によれば、上記画像処理方法を実現するためのコンピュータプログラムのコードを記憶した少なくともコンピュータ読み出し可能な記録媒体の形でプログラム製品を提供する。
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
以下、図面を参照しながら本実施形態の説明することにより、さらに本実施形態の目的、特徴、メリットを理解し易くすることができる。図面中の構成は、ただ本実施形態の原理を示すためのものである。図面において、同じ又は類似の技術的特徴又は構成は、同様の又は類似の図面表記を用いて表現することとする。
【0017】
以下、図面を参照しながら本実施形態について説明をする。なお、説明において、一つの図面又は一つの実施形態において記載した構成や特徴は、一つ又は複数の他の図面又は実施形態において示した構成や特徴の組み合わせることができる。さらに、明瞭にするため、図面や説明において本実施形態と無関係な内容や、当業者にとって周知の構成や処理については、表示や記載を省略する。
【0018】
図1Aは、本発明の一実施形態に基づく医用画像処理装置100を示すブロック図である。
【0019】
図1Aに示すように、医用画像処理装置100は、変形場計算部110、変形場重み付け部120及び画像変形部130を含む。
【0020】
変形場計算部110は、対象物の第1画像の第2画像に対する変形場を計算する。例えば、変形場計算部110は、対象物の第2画像を基準画像とし、非剛性レジストレーションに基づいて該対象物の第1画像の基準画像に対する変形場を計算する。
【0021】
例えば、対象物は、心臓と同一位置で良い。言い換えれば、第1画像と第2画像とは、ある物体の同一位置に対して得られる画像で良い。例えば、ある物体に対して同一方向の連続したマルチスライス画像でも良い。この他、ある物体の異なる方向に連続したマルチスライス画像でも良く、この場合、本文中の医用画像処理装置で処理する前に、同一方向へ揃えるようないくつかの画像変換が必要である。ただし、物体は心臓に限定されず、人体のその他の部位でも適用可能である。なお、ここで言う「同一位置」は、二次元又は三次元で表される同一の領域で良く、二次元又は三次元で表される心臓全体であって良い。
【0022】
例えば、第1画像と第2画像とは、医用画像診断装置により得られたデータに基づいて生成された医用画像であって良い。また、各画像は二次元画像に限定されず、三次元画像であっても良い。
【0023】
画像レジストレーションは、空間変換関係に基づいて、剛体レジストレーション(rigid registration)及び非剛体レジストレーション(non-rigid registration)の2種類に大別できる。剛体レジストレーションは、画像に対する全体的な変形であり、例えば画像全体にわたる回転、平行移動、拡大等であって、剛体レジストレーションには画像における局所的な変形によるアライメント処理は含まれない。一方、非剛体レジストレーションは、画像に対する各種局所的な変形であって、非剛体レジストレーションは、画像の局所的な変形(たとえば、画像の局所的なねじれ)を利用してアライメント処理を行うものである。
【0024】
この他、例えば、Demons計算法を採用して非剛性レジストレーションを行うことができる。ただし、Demons計算法に限定されず、適宜その他の非剛体レジストレーション法を適用することができる。例えば、基本関数に基づいて変形領域を描出させてレジストレーションを行う方法でも良く、薄板スプラインやB−スプラインのレジストレーションや、弾性変形に基づく物理的模型のレジストレーション等の非剛体レジストレーション法を適用することができる。ここでは逐一列挙はしない。
【0025】
この他、第2画像を基準画像として使用することには限定されず、第1画像を基準画像とした非剛性レジストレーションを適用して、該対象物の第2画像の基準画像としての第1画像に対する変形場を計算しても良い。
【0026】
心臓で言えば、取得された心臓の画像シリーズにおいて、拡張末期(end diastolic)の心臓の画像を選んで選択する。なぜなら、拡張末期の心臓の画像はその他のタイミングの心臓の画像よりも明瞭だからである。人体の心臓以外の部位で言えば、必要に応じて部位を指定して、取得されたあるタイミングの画像を基準画像とする、又は、任意の指定されたあるタイミングの画像を基準画像として、その他の画像をその画像とレジストレーションするようにすれば良い。
【0027】
変形場重み付け部120は、対象物の各部位の動き量に応じて変形場における重み付けを行う。
【0028】
言い換えれば、対象物の運動部位をフリーズさせて画像のノイズを減少させるため、区別して変形場における運動部位に対応する部分と変形場における非運動部位に対応する部分を処理する。例えば、変形場重み付け部120は、対象物の運動部位の変形場の重みを1とし、非運動部位の変形場の重みを1より小さくする(例えば、非運動部位の変形場の重みを0と設定する)。
【0029】
例えば、動き量が第1閾値よりも大きい部位を運動部位とし、動き量が第2閾値よりも小さい部位を非運動部位とする。ここで、第1閾値は第2閾値値よりも大きいとする。このような状況において、動き量が第1閾値と第2閾値との間の値である部位を移行部位とすることができる。例えば、変形場重み付け部120は、対象物の運動部位と非運動部位との間の移行部位の変形場の重みを、運動部位の変形場の重みと非運動部位の変形場の重みとの間の値とすることができる。
【0030】
当然ながら、運動部位と非運動部位との境界はこれに限らない、例えば、第1閾値が第2閾値と等しい状況下で、動き量が該特定の閾値よりも大きい部位を運動部位とし、動き量が該特定の閾値よりも小さい部位を非運動部位としても良い。変形場重み付け部120は、同じように、対象物の運動部位の変形場の重みを1とし、非運動部位の変形場の重みを1よりも小さく(例えば、非運動部位の変形場の重みを0とする)とするようにできる。
【0031】
ここで、閾値に基づいて運動部位と非運動部位とを区別し、各部位の動き量の値と比例関係を成すように変形場の対応する部分の重みを設定する以外の方法でも良いが、重みの最大値は1である。
【0032】
また、例えば、変形場重み付け部120は、第2画像と複数の第1画像における各部位の動き量が反映される分散画像に基づいて、運動部位と非運動部位とを定め、変形場における重み付けを行ってもよい。
【0033】
なお、ここで用いられる分散画像は、例えば、第2画像及び複数の第1画像のグレースケールの分散画像でも良い。しかし、ここで用いられる分散画像はこれに限られず、対象物の各部位の動き量を反映できるものであれば良い。
【0034】
以下の数式(1)により、分散画像の各点における分散値が計算できる:
【0036】
ここで、(i,j,k)は位置を表し,D(i,j,k)は分散値を表し,Nは画像の総数を表す。
【0037】
R
n(i,j,k)は、第n番目の画像における(i,j,k)でのグレースケール値を表し、R( ̄付き)(i,j,k)は、(i,j,k)でのグレースケールの平均値を表す。以下の数式(2)により、平均値R( ̄付き)(i,j,k)が計算できる。
【0039】
分散値を算出した後に、以下の数式(3)及び(4)により、重み付けが行われた変形場が計算できる。
【0042】
ここで、(i,j,k)は、位置を表し、WF(i,j,k)は、運動重み付けの前の変形場を表し、WF
new(i,j,k)は、運動重み付けの後の変形場を表す。また、MW(i,j,k)は、分散値D(i,j,k)及び動き量を示す運動重みを表す。fは、運動重みMWが特定の動向を示すようにすることができる関数(例えば、分散画像の正規化関数又は運動/非運動領域の非線形関数)である。
【0043】
図1Bは、変形場における重み付けを行う際に適用する重みの特定の動向を示す曲線図である。例えば、
図1Bに示すように、運動部位の重みを1とし、非運動部位の重みを0とし、移行部位の重みを0と1との間の線形値とする。
【0044】
図1Cは、変形場における重み付けを行う際に適用する重みの他の特定の動向を示す曲線図である。
図1Cに示すように、運動部位の重みを1とし、非運動部位の重みを0とし、移行部位の重みを0と1との間の非線形値とする。
図1Cに示すような重みを適用した場合、得られる第3画像では、運動部位は移行部位との間で接続され、かつ、移行部位は非運動部位との間で接続されるので、さらに滑らかになる。
【0045】
しかし、fは、
図1Bに示す特定の動向に限らず、動き量が大きくなるほど重みが大きくなるようになっていれば、任意の適切な動向で良いが、重みの最大値は1である。例えば、運動部位の重みを1とし、非運動部位の重みを0.5とし、移行部位の重みを0.5と1との間(例えば、移行部位の重みを0.5と1との間の線形値又は非線形値)にするようにしても良い。
【0046】
画像変形部130は、重み付けが行われた変形場を用いて第1画像を変形する。例えば、画像変形部130は、変形場重み付け部120によって重み付けが行われた変形場を用いて第1画像を変形して、第3画像を得る。
【0047】
変形場の計算において、第1画像に基づいて得られる変形場は、第1画像におけるノイズの影響又は変形場の計算方法そのものの欠陥によって、対象物の実際の運動部位で変形が生じるだけでなく、対象物の実際の非運動部位でも変形が生じる可能性がある。例えば、変形場の全ての部分を区別せずに第1画像に適用すれば、得られる第3画像では、実際には運動していない部位にノイズ(変形すべきでない部分にまで変形をしてしまう)が混入する、又は、もともとあるノイズを強調させてしまう。本出願で開示する重み付けにより、すなわち、変形場において運動部位に対応する部分の重みを変形場における非運動部位に対応する部分の重みよりも大きくし、非運動部位と移行部位に対して受け得る変形場の作用を消し去ることによって、変形すべきでない部分まで変形が及ぶ、又は、ノイズが強調されてしまうといった事態をある程度回避することが可能である。言い換えれば、このようにして得られる各第3画像において、運動部位はフリーズされ(変形により、第1画像における運動部位を第2画像において相対する位置又は相対位置の付近まで変形する)、非運動部位と移行部位に対して、新たなノイズの発生又はもともと存在するノイズの強調を抑制することができる。
【0048】
その上さらに、以下に記載するように、複数の第3画像を統合する際に、非運動部位に対して小さい重みを設定することによってノイズに対する変形効果を抑制することができ、変形により同じ又は近い位置まで変形されることによるノイズを回避し(複数の第1画像における類似のノイズは変形場計算法によりノイズの運動と誤って認識される)、さらに、複数の第1画像におけるノイズの相乗強調も回避できる。また、第1画像においてもともと存在したノイズのランダム性は維持されるので、複数の第3画像を統合するとノイズ低減の効果が期待できる。
【0049】
以下、心臓のPET(Positron Emission Tomography)及び/又はSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)によるイメージングの場合を例にして説明する。
【0050】
心臓に対してPET及び/又はSPECTイメージングする場合、通常は一定の時間が必要であり、画像を得るまでに、例えば数分間、長い場合は十数分間かかってしまう。
【0051】
この時間に呼吸や心臓の動きによって患者が動いてしまい、動いた部分の画像が不鮮明になってしまう。
【0052】
この問題を解決するために、心臓運動の一周を複数の時間間隔で分割し、各時間間隔に対応する画像データを取得するという技術がある。しかし、各時間間隔において取得した画像におけるSN比は小さくなり、フォトンカウント数も低い。
【0053】
この状況において、変形場計算部110により、変形場重み付け部120及び画像変形部130は、取得された複数の画像に対して上記の処理を行う。具体的には、例えば、運動部位(例えば、心壁等)の変形場の重みを1とし、非運動部位(その他の部位)の変形場の重みを1より小さい値(例えば、0)として運動部位をフリーズさせ、非運動部位と移行部位とは部分的にフリーズ又はフリーズしないようにする。これにより、重み付けが行われた変形場を用いて変形後に得られた画像において、運動部位(例えば、心壁等)の空間上のそれぞれのつなぎ目をつないで、非運動部位と移行部位は空間上で交差する。これらの画像を統合すれば、運動部位(例えば、心壁等)は鮮明で、非運動部位と移行部位とは平均値によりノイズが除去された画像が得られる。
【0054】
なお、この処理における第1画像及び第2画像はフォトンカウント数が低く、SN比が低い画像であったが、他の画像であっても、運動をフリーズしてノイズ低減の作用を引き起こすことができる。
【0055】
なお、この処理における画像は心臓の画像に限らず、その他の動く臓器に対して応用してもよく、例えば、肝臓、肺、胆嚢等の器官に関する画像でも良い。
【0056】
また、この処理における画像は医用画像に限らず、類似の運動をする物体に対する非医用画像であっても適用できる。
【0057】
実施形態において、第2画像と複数の第1画像とを統合することができる。画像統合の実施形態については、後述にて
図7を参照しながら説明する。
【0058】
図2は、本発明の他の一実施形態に基づく医用画像処理装置200のブロック図である。
【0059】
図2に示すように、医用画像処理装置200は、変形場計算部210、変形場重み付け部220及び画像変形部230を含む。
【0060】
図2に示す医用画像処理装置200と
図1Aに示す医用画像処理装置100との違いは、
図2に示す変形場重み付け部220が、アトラス識別部221と変形場重み付け部222とを含む点である。
【0061】
アトラス識別部221は、アトラスに基づいて第1画像における対象物の各部位を識別する。ここで、アトラスとは、人間の臓器の標準的な形状を表すデータである。
【0062】
対象物の各部位を識別する場合、例えば、各部位に対応する動き量情報を含むルックアップテーブルを準備し、そのルックアップテーブルに基づいてこれらの部位の運動情報を探し出すことができる。
【0063】
又は、アトラス中に各部位に対応する動き量情報を含ませておき、識別した対象物の各部位に対応する動き量情報を取得することができる。
【0064】
変形場重み付け部222は、アトラス識別部221によって識別された各部位の動き量の空間分布に基づいて、変形場における重み付けを行う。
【0065】
図3は、本発明の他の一実施形態に基づく医用画像処理装置のブロック図である。
【0066】
図3に示す通り、医用画像処理装置300は、変形場計算部310、変形場重み付け部320、画像変形部330及びヒストグラムマッチング部340を含む。
【0067】
図3に示す医用画像処理装置300と
図1Aに示す医用画像処理装置100との違いは、医用画像処理装置300はさらにヒストグラムマッチング部340を含む点である。
【0068】
ある物体(例えば、心壁)に基づいて取得した画像において、グレースケールは大きく変化する。この状況において、変形場を計算する前に第1画像と第2画像との間でヒストグラムマッチングを行い、第1画像と第2画像とのグレースケール範囲を近づける。
【0069】
ヒストグラムマッチング部340は、第1画像のヒストグラムを第2画像のヒストグラムとの間でヒストグラムマッチングを行い、第2画像とグレースケール範囲が近い第1画像を取得する。その状況において、変形場計算部310は、第2画像とグレースケール範囲が近い第1画像の第2画像に対する変形場を計算できる。なお、グレースケール範囲が近いということは、言い換えると、グレースケール範囲の差が小さいことである。
【0070】
図4は、本発明の他の一実施形態に基づく医用画像処理装置400のブロック図である。
【0071】
図4に示す通り、医用画像処理装置400は変形場計算部410、変形場重み付け部420及び画像変形部430を含み、変形場計算部410は力場計算部411、変形場計算部412、画像変形部413及び制御部414を含む。
【0072】
力場計算部411は、第1画像の基準画像としての第2画像に対する力場を計算する。
【0073】
Demons計算法を適用した場合、以下の数式(5)により力場v( ̄付き)を計算する。
【0075】
ここで、定数Kは、勾配下降速度を制御するための量であり、rは、基準画像としての第一画像のグレースケールである。また、fは、第1画像のグレースケールであり、sは、前回の反復計算時の計算によって出された変形場である。
【0076】
変形場計算部412は、力場計算部411によって算出された力場に基づいて変形場を計算する。
【0077】
第n回の変形場をWF
n、第n−1回の変形場をWF
n-1とすると、それらは以下の数式(6)を満足する。
【0079】
ここで、Δ
nは、第n回の反復時の変形場の増加量を表す。例えば、増加量Δ
nは、群最適化(group optimization)を用いて、力場に基づいて算出することができる。
【0080】
画像変形部413は、変形場計算部412によって算出された変形場を用いて第1画像を変形する。
【0081】
制御部414は、力場計算部411、変形場計算部412及び画像変形部413を制御し、変形前の第1画像に替えて変形後の第1画像を用いて、所定の条件を満足するまで上記処理を繰り返し行って、最終的な変形場を取得する。
【0082】
実際に、非剛体レジストレーションの過程において、反復回数の増加にしたがって、第1画像と第2画像の対応する部分の空間位置はどんどん近くなり、両者の画像間の相似度(例えば、正規化に関する係数)はどんどん増加するが、増加の動向は緩やかになっていく。しかし、時には、相似度は反復回数の増加に伴ってわずかに減少することもある。そこで、以下の3つの所定の条件の中の少なくとも一つを採用する。
【0083】
第1の条件は、反復回数である。例えば、反復回数は4〜20の間で選択できる。ただし、反復回数はこれに限らず、その他の適切な反復回数を選択することはできる。
【0084】
第2の条件は、相似度の減少量である。例えば、正規化の関係係数の減少量である。正規化の関係係数が素早く減少しているか否かを判断する。例えば、その減少量が閾値より大きいかどうかを判断する。もし、減少量が該閾値より大きい場合は、その条件を満足していると判断する。
【0085】
第3の条件は、最近の何回かの反復(例えば、4回)における相似度の増加量である。例えば、正規化の関係係数の増加量である。もし、最近の何回かの反復の正規化の関係係数の平均増加量が所定の閾値(例えば、0.001)よりも小さい場合、その条件は満足していると判断する。
【0086】
この他、制御部414は、力場計算部411を制御して力場に対して粘性制限を行わないようにする。
【0087】
制御部414は、変形場計算部412を制御して変形場に対する弾性制限を行わないようにする。すなわち、変形場計算部412が最終的な変形場を取得する前に、変形場に対して弾性制限を行わない。
【0088】
言い換えれば、変形場計算部410が行うレジストレーションの反復処理において、弾性制限及び/又は粘性制限を除去する。
【0089】
取得した画像のフォトンカウント数が低い、及び/又は、画像が小さい状況において、弾性制限及び/又は粘性制限を除去することにより、変形が弱くなるのを回避することができる。
【0090】
例えば、心臓のPET及び/又はSPECT画像について言えば、二次元的に観察し、心臓の収縮末期の画像における心壁(myocardium)及び血液プール(blood pool)等の部分はいくつかの画素の厚みを有する。同時に、心臓の収縮拡張運動により隣接画素の運動も異なる方向を向いている可能性がある。このような状況において、弾性制限及び/又は粘性制限を除去することにより、血液プール等の部分の変形が弱くなるのを回避することができる。
【0091】
図5は、本発明の他の一実施形態に基づく医用画像処理装置500のブロック図である。
【0092】
図5に示すように、医用画像処理装置500は、変形場計算部510、弾性制限部550、粘性制限部560、変形場重み付け部520及び画像変形部530を含む。
【0093】
図5に示す医用画像処理装置500と
図1Aに示す医用画像処理装置100との違いは、医用画像処理装置500は弾性制限部550と粘性制限部560を含む点である。
【0094】
弾性制限部550は、変形場計算部510が算出した変形場に対して弾性制限を行う。例えば、弾性制限はガウスフィルタで良い。ただし、これに限らず、任意のその他の適切な弾性制限であれば良い。
【0095】
粘性制限部560は、変形場計算部510が算出した変形場に対して粘性制限を行う。
【0096】
例えば、粘性制限はメディアンフィルタで良い。ただし、これに限定されず、任意の適切な粘性制限であれば良い。
【0097】
変形場計算部510におけるレジストレーションの反復処理において力場に対して粘性制限を行わず、かつ、変形場に対して弾性制限を行わずに、レジストレーションの反復処理の後に変形場に対して弾性制限及び粘性制限を行うことにより、変形場における異常点を除去又は減少させることができる。
【0098】
実施形態において、弾性制限部550と粘性制限部560は異なるタイミングで機能させることができる。必要に応じて、弾性制限部550又は粘性制限部560だけを機能させることができる。
【0099】
この他、実施形態において、必要に応じて、先に粘性制限部560により粘性制限を行い、そして弾性制限部550により弾性制限を行うことができる。
【0100】
図6は、本発明の他の一実施形態に基づく医用画像処理装置600のブロック図である。
【0101】
医用画像処理装置600は、変形場計算部610、変形場重み付け部620、弾性制限部650、粘性制限部660及び画像変形部630を含む。
【0102】
図6に示す医用画像処理装置600と
図5に示す医用画像処理装置500との違いは、弾性制限部650は変形場重み付け部620が重み付けを行った変形場に対して弾性制限を行い、粘性制限部660は変形場重み付け部620が重み付けを行った変形場に対して粘性制限を行い、弾性制限部550は変形場計算部510が計算して出した変形場に対して弾性制限を行い、粘性制限部560は変形場計算部510が計算して出した変形場に対して粘性制限を行う点である。
【0103】
変形場計算部610が行うレジストレーションの反復処理において力場に対して粘性制限を行わず、かつ、変形場に対して弾性制限を行わず、レジストレーションの反復処理の後に重み付けが行われた変形場に対して弾性制限及び粘性制限を行うことにより、重み付けが行われた変形場における異常点を除去又は減少させることができる。
【0104】
実施形態において、弾性制限部650と粘性制限部660は異なるタイミングで機能させることができる。必要に応じて、弾性制限部650又は粘性制限部660だけを機能させることができる。
【0105】
この他、実施形態において、必要に応じて、先に粘性制限部660により粘性制限を行い、そして弾性制限部650により弾性制限を行うことができる。
【0106】
例えば、弾性制限は、ガウスフィルタであり、粘性制限は、メディアンフィルタであっても良い。
【0107】
図7は、本発明の他の一実施形態に基づく医用画像処理装置700のブロック図である。
【0108】
医用画像処理装置700は、変形場計算部710、変形場重み付け部720、画像変形部730及び画像統合部770を含む。
【0109】
図7に示す医用画像処理装置700と
図1Aに示す医用画像処理装置100の差は、医用画像処理装置700が画像統合部770を含む点である。
【0110】
医用画像処理装置100と同様に、変形場計算部710は、対象物の第2画像を基準画像とし、非剛性レジストレーションにより該対象物の第1画像の上記基準画像に対する変形場を計算し、変形場重み付け部720は、上記対象物の各部位の動き量に応じて上記変形場における重み付けを行い、画像変形部730は、重み付けが行われた変形場を用いて上記第1画像を変形して、第3画像を取得する。
【0111】
画像統合部770は、画像変形部730によって得られた複数の第3画像と、基準画像としての少なくとも2つの第2画像とを統合して、対象物の最終画像を取得する。
【0112】
言い換えれば、少なくとも2つの第2画像と変形により得られた第3画像とを統合して対象物の最終画像を取得する。
【0113】
重み付けが行われた変形場を用いて第1画像を変形して第3画像を取得する中で、運動部分はフリーズされ、かつ、ノイズは低減される。運動部分がフリーズされ、かつ、ノイズが低減された第3画像と第2画像とを統合し、さらに高画質の最終画像を得ることができる。例えば、医学分野において、統合して得られた最終画像において、さらに、特定部位の観察が容易となり、たとえば病変部の観察が容易になる。
【0114】
ここでの統合は、複数の画像に対して平均値フィルタリングを実行するものであるが、それに限定されることはなく、適宜任意の適切な方法によって統合することができる。
【0115】
図8は、本発明の一実施形態に基づく医用画像診断装置800のブロック図である。
【0116】
本発明の主旨と範囲を明瞭させるために、
図8において医用画像診断装置800のそのほかの可能な部材を省略する。医用画像診断装置800は医用画像処理装置810を含み、画像に対して処理を行う。
【0117】
医用画像処理装置810は医用画像処理装置100〜700の中の任意の一つとすることができる。医用画像診断装置800は、例えば、X線イメージング診断装置、超音波(UL)診断イメージング装置、コンピュータ断層スキャン(CT)装置、磁気共鳴イメージング(MRI)診断装置、又は陽電子放出断層スキャン(Positron Emission Tomography,PET)装置などであるが、特に限定はされない。
【0118】
上記医用画像処理装置を医用画像診断装置中に含める場合、用いられる具体的な手段又は方法は当業者にとって周知のものであり、ここでは重複して説明はしない。
【0119】
上文中の実施形態における医用画像処理装置の過程において、明らかな処理や方法を公開した。下文中では、上文中で既に議論された詳細な状況下における方法については重複して説明しない。ただし、記載された医用画像処理装置の過程において方法を開示したが、これらの方法は上記の部分に採用され実行されるとは限らない。例えば、部分的に又は全体的にハードウェア及び/、又はソフトウェアを用いて医用画像処理装置の実施方法を実現させ、以下の議論の画像処理方法も全体的にコンピュータを用いて実行できるプログラムにより実現でき、それらの方法も医用画像処理装置のハードウェア及び/、又はソフトウェアを採用することができる。
【0120】
図9は、本発明の一実施形態に基づく画像処理方法のフロー図である。
【0121】
図9に示す通り、ステップS910において、対象物の第2画像を基準画像とし、非剛性レジストレーションに基づいて該対象物の第1画像の基準画像に対する変形場を計算する。例えば、ステップS910は、変形場計算部110、210、310、410、510、610及び710のいずれか一つによって実行される。
【0122】
ステップS920において、対象物の各部位の動き量に応じて変形場における重み付けを行う。例えば、ステップS920は、変形場重み付け部120、220、320、420、520、620及び720のいずれか一つによって実行される。
【0123】
例えば、第2画像と複数の第1画像の対象物の各部位の動き量が反映される分散画像に基づいて、変形場における重み付けを行う。
【0124】
また、アトラスに基づいて、第1画像において対象物の各部位を識別した後、識別された各部位の動き量の空間分布に基づいて変形場における重み付けを行うことができる。
【0125】
付加される重みに関して、例えば、対象物の運動部位の変形場の重みを1とし、非運動部位の変形場の重みを1より小さく(例えば、0)とする。この他、対象物の運動部位と非運動部位との間の移行部位の変形場の重みを運動部位の変形場の重みと非運動部位の変形場の重みとの間の値にすれば良い。
【0126】
ステップS930において、ステップS920において重み付けが行われた変形場を用いて第1画像を変形する。例えば、ステップS930は、画像変形部130、230、330、430、530、630及び730のいずれか一つによって実行される。
【0127】
なお、ステップS910における変形場の計算の前に、第1画像のヒストグラムと第2画像のヒストグラムとの間でヒストグラムマッチングを行っても良く、第2画像とグレースケール範囲が近い第1画像を得ることができる。このような状況において、ステップS910において、第2画像とグレースケール範囲が近い第1画像の第2画像に対する変形場を計算することができる。
【0128】
実施形態において、該対象物の第1画像の基準画像に対する変形場を計算した後、最終的に得られる変形場に対して弾性制限及び/又は粘性制限を行うことができる。例えば、
図5を参照して記述した弾性制限部550と粘性制限部560によりそれぞれ弾性制限と粘性制限が行うことができる。
【0129】
実施形態において、変形場における重み付けを行った後、重み付けが行われた変形場に対して弾性制限及び/又は粘性制限を行う。例えば、
図6を参照して記述した弾性制限部650と粘性制限部660によりそれぞれ弾性制限と粘性制限を行うことが可能である。
【0130】
例えば、弾性制限はガウスフィルタで、粘性制限はメディアンフィルタとすることができる。
【0131】
この他、複数の第3画像を得た後、複数の第3画像と基準画像のうちの少なくとも2つを統合して対象物の最終画像を得ることができる。例えば、
図7を参照して記述した画像統合部770により該統合の処理が可能である。
【0132】
例えば、対象物は心臓の同一位置である。この他、第2画像と上記第1画像は医用画像診断装置により取得されたデータにより生成された医用画像である。
【0133】
図10は、本発明の一実施形態に基づいて変形場を計算する流れS910を示すフロー図である。
【0134】
図10に示す通り、ステップS911において、第1画像の基準画像としての第2画像に対する力場を計算する。例えば、ステップS911は、
図4を参照して説明した力場計算部411によって実行される。
【0135】
ステップS912において、ステップS911で算出された力場に基づいて変形場を計算する。例えば、ステップS912は、
図4を参照して説明した変形場計算部412によって実行される。
【0136】
ステップS913において、ステップS912で算出された変形場を用いて第1画像を変形する。例えば、ステップS913は、
図4を参照して説明した画像変形部413によって実行される。
【0137】
ステップS914において、所定の条件を満足するか否かを判定する。例えば、所定の条件を満足しない場合は(ステップS914における「No」)、変形前の第1画像に替えて変形後の第1画像を用いて、所定の条件を満足するまで上記ステップS911〜S913の処理を繰り返し、最終的な変形場を取得する。一方、所定の条件を満足する場合は(ステップS914における「Yes」)、最終的な変形場が取得され、フローは終了となる。例えば、ステップS914は、
図4を参照して説明した制御部414によって実行される。
【0138】
なお、ステップS911で計算して出された力場に対しては粘性制限を行わない、及び/又は、最終的な変形場を得る前に変形場に対して弾性制限を行わない。
【0139】
上記画像処理方法の各ステップのより具体的な詳細及び多くの可能なステップに関しては、以上の本発明の実施形態による医用画像処理装置における各部材に対する関連記述を参考することができ、ここでは重複して説明はしない。
【0140】
上記医用画像処理装置が医用画像診断装置に配置される場合、そこで用いられる具体的な手段又は方法は当業者にとって周知のものであり、ここでは重複して説明はしない。
【0141】
一例として、上記画像処理方法の各ステップ及び上記医用画像処理装置の各構成及び/又は部分はソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア又はそれらの組み合わせとして実施しても良い。ソフトウェア又はファームウェアを介して実現した場合、上記方法のソフトウェアアプログラムを実施するため、メモリ媒体から又はネットワークを介して専用のハードウェア構造のコンピュータ(例えば、
図11に示す汎用コンピュータ1100)へダウンロードして構成することができ、該コンピュータに各種プログラムがダウンロードされた状態で、各種機能等を実施することができる。
【0142】
図11において、演算処理部(即ち、CPU)1101は、読み取り専用メモリ(ROM)1102の中に記憶されているプログラム、又は、メモリ部1108から読み書き兼用メモリ(RAM)1103へ書き込まれたプログラムに基づいて、各種処理を実施する。RAM1103では、必要に応じて、CPU1101が各種処理等を実施するときに必要なデータも記憶しておく。CPU1101、ROM1102及びRAM1103は、綜合ライン1104を経由してそれぞれ接続されている。入力/出力インターフェース1105も、綜合ライン1104につながっている。
【0143】
下記の各部は、入力/出力インターフェース1105に接続されている:入力部1106(キーボード、マウス等を含む)、出力部1107(モニタ、例えば、ブラウン管(CRT)、液晶モニタ(LCD)等や、スピーカ等を含む)、メモリ部1108(キーボードを含む)、通信部1109(ネットワークインターフェースカード、例えば、LANカード、モデム等)。通信部1109は、ネットワーク(例えば、インターネット)を介して通信処理を実施する。必要に応じて、駆動器1110も入力/出力インターフェース1105に接続可能である。取り外し可能な媒体1111は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、MO、半導体メモリ等であって、必要に応じて駆動器1110に装着され、必要に応じてコンピュータプログラムを読み出して、メモリ部1108へダウンロードされる。
【0144】
ソフトウェアを介して上記システム処理を実施する場合、ネットワーク(例えば、インターネット又は記憶媒体(例えば、取外し可能な媒体1111))からプログラムをダウンロードしても良い。
【0145】
当業者においては、このような記憶媒体は
図11に示すようなプログラムを記憶した記憶媒体は、装置とは離れたところからユーザにプログラムを提供する取り外し可能な媒体1111に限らない。取り外し可能な媒体1111の例としては、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、光ディスク(CD−ROMやDVDを含む)、磁気光ディスク(MiniDisc(MD、登録商標)を含む)らを含む。また、記憶媒体はROM1102であっても良く、メモリ部1108に含まれるハードディスク等、その中にプログラムが記憶され、それらを含む装置からユーザへプログラムが送られる形態でも良い。
【0146】
本発明では、更に、メモリとして、機器読み取り可能なコマンドコードを記憶しているプログラム製品でも応用でき、上記コマンドコードが機器を介して読み取られると、本発明の実施形態における画像分割法が実施される。
【0147】
上記機器読み取り可能なコマンドコードを記憶しているプログラム製品を受け入れるための記憶媒体も本発明に適用できる。その記憶媒体は、ハードディスク、光ディスク、磁気光ディスク、メモリカード、メモリスティックには限定されない。
【0148】
上記の具体的実施形態においては、一つの実施方法に示す特徴について、同様の方法を一つ又は複数の他の実施方法の中で適用したり、その他の実施方法と組み合わせたり、又はその他の実施方法における特徴に替えるといったことも可能である。
【0149】
さらに、“包含する/含む”といった用語を使用したときは、特徴、構成、ステップ又は構造の存在を指し示す。ただし、その他の特徴、構成、ステップ又は構造の存在や付加の排除を意味するものではない。
【0150】
上記実施形態においては、数字構成の図番記号を用いて各ステップや構成を表記している。ただし、これらの図番記号は単なる説明や画図の都合への考慮によるものであって、その順序やいかなるほかの限定を表すものではない、と当業者は理解すべきである。
【0151】
このほか、本実施形態の方法は、詳細な説明の欄において説明された時間順序に沿って実施されるものに限らず、その他の時間順序に沿って、同時に、又は独立して実施されても良い。それゆえ、本願の詳細な説明において説明された方法の実施順序は、本実施形態の技術範囲に対する構成を制限するものではない。
【0152】
上記では、既に、本実施形態の具体的実施形態の説明をもって、本実施形態の説明を行っているものの、上記の全ての実施形態は全て単なる例示に過ぎず、限定するものではない。当業者は、特許請求の主旨や範囲において、本実施形態の各種手直し、改良又は同等物の設計を行うことが可能である。これらの手直し、改良又は同等物は、本実施形態の保護範囲内に含まれるものである。