(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御情報は、アクティブデカップル回路、プリアンプ、デジタル変換部、前記磁気共鳴信号の送信を行う変調処理部、当該変調処理部の後段の増幅回路のうち、少なくとも一つの動作を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置及び高周波コイルを説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置100の構成を示す機能ブロック図である。なお、以下では、磁気共鳴イメージング装置をMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置と称する。
【0011】
図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石101と、静磁場電源102と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源104と、寝台105と、寝台制御部106と、WB(Whole Body)コイル107と、送信部108と、受信コイル109と、無線通信部110と、受信部111と、生成部112と、シーケンス制御部120と、計算機130とを備える。なお、MRI装置100に、被検体P(例えば、人体)は含まれない。また、
図1に示す構成は一例に過ぎない。
【0012】
静磁場磁石101は、中空の略円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に静磁場を発生する。静磁場磁石101は、例えば、超伝導磁石等であり、静磁場電源102から電流の供給を受けて励磁する。静磁場電源102は、静磁場磁石101に電流を供給する。なお、静磁場磁石101は、永久磁石でもよく、この場合、MRI装置100は、静磁場電源102を備えなくてもよい。また、静磁場電源102は、MRI装置100とは別に備えられてもよい。
【0013】
傾斜磁場コイル103は、中空の略円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石101の内側に配置される。傾斜磁場コイル103は、互いに直交するx、y、及びzの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、傾斜磁場電源104から個別に電流の供給を受けて、x、y、及びzの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生する。傾斜磁場コイル103によって発生するx、y、及びzの各軸の傾斜磁場は、例えば、スライスエンコード傾斜磁場G
SE(若しくはスライス選択傾斜磁場G
SS)、位相エンコード傾斜磁場G
PE、及び周波数エンコード傾斜磁場G
ROである。傾斜磁場電源104は、傾斜磁場コイル103に電流を供給する。
【0014】
寝台105は、被検体Pが載置される天板105aを備え、寝台制御部106による制御の下、天板105aを、被検体Pが載置された状態で、傾斜磁場コイル103の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、寝台105は、長手方向が静磁場磁石101の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御部106は、計算機130による制御の下、寝台105を駆動して天板105aを長手方向及び上下方向へ移動する。
【0015】
WBコイル107は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、送信部108からRF(Radio Frequency)パルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。送信部108は、対象とする原子の種類及び磁場強度で定まるラーモア周波数に対応するRFパルスをWBコイル107に供給する。
【0016】
受信コイル109は、磁気共鳴信号(以下、適宜「MR(Magnetic Resonance)信号」)を受信する。例えば、受信コイル109は、被検体に装着される高周波コイルであり、被検体の体表面に取り付けられる表面コイル、若しくは複数の表面コイルから構成されるフェーズドアレイコイル(PAC:Phased Array Coil)等である。
【0017】
ここで、第1の実施形態に係る受信コイル109は、受信したMR信号を無線通信により送信する。例えば、受信コイル109は、MR信号を受信すると、受信したMR信号を無線通信にてMRI装置100本体側の無線通信部110へ送信する。無線通信部110は、受信コイル109から受信したMR信号を受信部111に出力する。
【0018】
なお、第1の実施形態では、WBコイル107が送信用のRFコイルであり、受信コイル109が受信用のRFコイルである場合を説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、受信コイル109は、頭部コイル等、RFパルスを送信する機能を更に備えた送受信用RFコイルであっても良い。すなわち、受信コイル109は、少なくとも受信機能と無線通信機能を備える高周波コイルであれば良い。また、受信コイル109とは別に、MR信号を有線通信によって伝送するRFコイルを併用しても良い。また、WBコイル107は、MR信号を受信する機能を備え、被検体Pから発せられるMR信号を受信し、受信したMR信号を受信部111に出力しても良い。この場合、WBコイル107と受信部111との間の通信は、有線通信によって行われる。
【0019】
受信部111は、無線通信部110から出力されたMR信号を検出し、検出したMR信号に基づいてMRデータを生成する。具体的には、受信部111は、無線通信部110から出力されるMR信号をデジタル変換することによってMRデータを生成する。また、受信部111は、生成したMRデータをシーケンス制御部120へ送信する。
【0020】
生成部112は、受信コイル109の繰り返し期間を最小単位とする期間内の動作が定義された制御情報を生成する。この生成部112の処理については後述する。
【0021】
シーケンス制御部120は、計算機130から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源104、送信部108及び受信部111を駆動することによって、被検体Pの撮像を行う。ここで、シーケンス情報は、撮像を行うための手順を定義した情報である。シーケンス情報には、傾斜磁場コイル103に供給する電流の強さや電流を供給するタイミング、送信部108がWBコイル107に供給するRFパルスの強さやRFパルスを印加するタイミング、受信部111がMR信号を検出するタイミング等が定義される。例えば、シーケンス制御部120は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等の電子回路である。
【0022】
また、シーケンス制御部120は、傾斜磁場電源104、送信部108、受信部111及び生成部112を制御して被検体Pを撮像した結果、受信部111からMR信号データを受信すると、受信したMR信号データを計算機130へ転送する。
【0023】
計算機130は、MRI装置100の全体制御や、MR画像の生成等を行う。例えば、計算機130は、操作者から入力される撮像条件に基づいてシーケンス制御部120に撮像シーケンスを実行させる。また、計算機130は、シーケンス制御装置120から送信されたMR信号データに基づいて画像を再構成する。計算機130は、再構成された画像を記憶部に格納したり、表示部に表示したりする。なお、計算機130は、例えば、コンピュータ等の情報処理装置である。
【0024】
ところで、無線通信によってMR信号を受信部111に送信するRFコイル(受信コイル109)を用いる場合には、RFコイルの各種の動作を制御するための信号が無線通信によってRFコイルへ送信されることとなる。
【0025】
例えば、MR信号の受信において、送信RFパルスから受信用のRFコイルを保護するために、アクティブデカップルを行う場合がある。このアクティブデカップルは、例えば、送信RFパルスの送信タイミングでRFコイルのエレメントの共振周波数をずらすことで、送信RFパルスのパワーを受け難くする。この場合、送信RFパルスの送信タイミングでアクティブデカップルを行うための制御信号を、MRI装置100本体側(シーケンス制御部120等)からRFコイルに送信して、RFコイルでアクティブデカップルを行う。
【0026】
ここで、MRI装置100本体側からの制御信号を有線で受信する有線式のRFコイルでは、制御信号によるRFコイルの動作精度は許容範囲内である。例えば、有線式のRFコイルの動作遅延は、最大でも、アクティブデカップルを行うための回路のPINダイオードの応答時間の遅れ程度である。
【0027】
これに対して、無線式のRFコイルでは、様々な要因によりRFコイルの動作精度が低下してしまう。例えば、無線通信にかかるソフトウェアの処理遅延や、フレーム単位で無線伝送する場合の再処理に伴う遅延、若しくはプロトコルスタックの処理遅延は、有線式の場合より大きく、許容できるものではない。
【0028】
図2は、無線通信によるRFコイルの課題を説明するための図である。
図2には、無線式のRFコイルの動作の一例を示す。具体的には、
図2には、パルスシーケンスと、アクティブデカップルの動作タイミングと、無線通信による通信タイミングとの関係を例示する。
【0029】
図2において、横軸は時間を示す。また、「RFパルス振幅」は、RFパルス(90度パルス及び180度パルス)を印加するタイミングを示す。また、「エコー信号振幅」は、エコー信号のタイミングを示す。また、「デカップリング」は、アクティブデカップルの動作タイミングを示す。矩形波が高い状態は「アクティブデカップルON」の状態を表し、矩形波が低い状態は「アクティブデカップルOFF」の状態を表す。また、「制御用通信期間」は、RFコイルがMRI装置100本体側から制御信号を無線通信にて受信する期間を示す。また、「エコー用通信期間」は、RFコイルが受信部111へエコー信号を無線通信にて送信する期間を示す。なお、図示の期間は、1TR(Repetition Time)に対応する。
【0030】
図2に示す例では、RF励起パルスとして、まず、90度パルスR0が印加される。また、90度パルスR0に続いて複数の180度パルスR1,R2,R3,R4,R5が所定間隔で印加される。これら複数の180度パルスR1,R2,R3,R4,R5によって、エコー信号E1,E2,E3,E4,E5がそれぞれ発生する。
【0031】
このようなパルスシーケンスのもと、アクティブデカップルを行う場合には、90度パルスR0及び180度パルスR1〜R5のタイミングでアクティブデカップル回路が動作する。具体的には、90度パルスR0及び180度パルスR1に対応する動作タイミングTD1と、180度パルスR2,R3,R4,R5にそれぞれ対応する動作タイミングTD2,TD3,TD4,TD5とでアクティブデカップル回路が動作する。
【0032】
ここで、アクティブデカップル回路を動作させるため、それぞれの動作タイミングTD1,TD2,TD3,TD4,TD5の前の期間T1’,T3’,T5’,T7’,T9’において、制御信号が伝送される。
【0033】
しかしながら、このように伝送された制御信号の処理に上述した各種遅延が生じた場合には、アクティブデカップルの動作精度が低下して、アクティブデカップルの機能やエコー信号の受信に影響が出る恐れがある。
【0034】
また、制御用通信期間T1’,T3’,T5’,T7’,T9’において、制御信号が伝送されることにより、エコー用通信期間が間欠的になり(期間T2’,T4’,T6’,T8’,T10’)、エコー信号の伝送量を十分に確保できない場合がある。
【0035】
そこで、第1の実施形態に係るMRI装置100は、無線通信による動作精度を高めるために、以下の処理を実行する。なお、以下では、一例として、MRI装置100がアクティブデカップルの動作を制御する場合を説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。
【0036】
図3は、第1の実施形態に係る無線通信によるRFコイルの動作制御について説明するための図である。
図3には、無線式のRFコイル(受信コイル109)におけるパルスシーケンスと、アクティブデカップルの動作タイミングと、無線通信による通信タイミングとの関係を例示する。
図3において、「RFパルス振幅」、「エコー信号振幅」、「デカップリング」、「制御用通信期間」、及び「エコー用通信期間」の説明は、
図2に示した各項目の説明と同様である。なお、図示の期間は、撮像を行う一連のパルスシーケンスから抜き出した1TRに対応する。
【0037】
図3に示す例では、
図2と同様に、90度パルスR0と、複数の180度パルスR1,R2,R3,R4,R5とが所定間隔で印加される。そして、これらの180度パルスR1,R2,R3,R4,R5によって、エコー信号E1,E2,E3,E4,E5がそれぞれ発生する。
【0038】
また、アクティブデカップル回路の動作タイミングについても、
図2と同様である。すなわち、90度パルスR0及び180度パルスR1に対応する動作タイミングTD1と、180度パルスR2,R3,R4,R5にそれぞれ対応する動作タイミングTD2,TD3,TD4,TD5とでアクティブデカップル回路を動作させる。
【0039】
ここで、第1の実施形態に係るMRI装置100は、パルスシーケンスに基づいて、図示の1TR内の動作タイミングTD1,TD2,TD3,TD4,TD5が定義された制御情報を生成する。つまり、この制御情報は、受信コイル109の動作が時系列で定義された情報である。そして、MRI装置100は、生成した制御情報を期間T1の間に受信コイル109へ伝送する。受信コイル109は、MRI装置100から伝送された制御情報に基づいて、1TR内の動作を行う。例えば、受信コイル109は、それぞれの動作タイミングTD1,TD2,TD3,TD4,TD5でアクティブデカップル回路を動作させる。
【0040】
このように、MRI装置100は、動作タイミングTD1〜TD5より前の期間T1において制御情報を伝送する。言い換えると、MRI装置100は、少なくとも最初の励起パルスに対応するアクティブデカップル回路の動作タイミングTD1の前までに、制御情報を伝送する。このため、MRI装置100は、上述した各種遅延の発生に関わらず、制御情報に定義された動作タイミングTD1〜TD5でアクティブデカップルを動作させることができるので、無線通信による動作精度を高めることができる。
【0041】
また、MRI装置100は、受信コイル109の1TR内の動作が定義された制御情報を、期間T1の間に受信コイル109に伝送するので、エコー信号E1が発生する以降の期間T2をエコー用通信期間として利用できる。このため、MRI装置100は、エコー信号の伝送量を十分に確保することができるので、無線通信による動作精度を高めることができる。
【0042】
このように、MRI装置100は、無線通信による動作精度を高めることができる。なお、
図3では、90度パルス及び180度パルスによってエコー信号が生じるパルスシーケンスの場合を例示したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、他のパルスシーケンスが用いられる場合であっても良い。以下、第1の実施形態に係るMRI装置100の詳細な構成について説明する。
【0043】
図4は、第1の実施形態に係るMRI装置100の詳細な構成を示す機能ブロック図である。
図4に示すように、受信コイル109は、無線アンテナ11,12と、検波部13と、キャリア信号生成部14と、コイル用クロック信号生成部15と、制御信号生成部16と、制御部17と、アクティブデカップル回路18と、受信エレメント19A,19Bと、プリアンプ20A,20Bと、デジタル変換部21と、変調処理部22と、アンプ23とを備える。また、無線通信部110は、無線アンテナ41,42と、変調部43と、キャリア信号生成部44と、変調処理部45と、アンプ46と、復調処理部47とを備える。
【0044】
なお、無線通信部110は、クロック信号生成部5からのクロック信号の供給を受けて動作する。このクロック信号生成部5は、所定の周波数で振幅変化を繰り返す基準クロック信号を生成する。例えば、クロック信号生成部5は、水晶振動子を用いて構成された発振器であり、計算機130に備えられている(
図1では図示を省略)。
【0045】
図4では、アクティブデカップル回路18の動作制御と、無線通信によるエコー信号の伝送とについて、順に説明する。
【0046】
(アクティブデカップル回路18の動作制御)
まず、アクティブデカップル回路18の動作制御について説明する。生成部112は、撮像条件に基づいて、制御情報を生成する。そして、生成部112は、生成した制御情報をその動作の開始までに無線通信にて受信コイル109に送信する。
【0047】
例えば、シーケンス制御部120は、MRI装置100の操作者によって入力されたパルスシーケンスに基づいて、送信RFパルスの種別及びRFパルスの発生タイミングを決定する。一例としては、シーケンス制御部120は、
図3の90度パルスR0と、複数の180度パルスR1,R2,R3,R4,R5とが発生する発生タイミングを決定する。
【0048】
そして、生成部112は、シーケンス制御部120によって決定された送信RFパルスの種別及びRFパルスの発生タイミングに基づいて、アクティブデカップル回路18を動作させる動作タイミングを算出する。一例としては、生成部112は、
図3の動作タイミングTD1,TD2,TD3,TD4,TD5をそれぞれ算出する。
【0049】
そして、生成部112は、算出した動作タイミングに基づいて、制御情報を生成する。一例としては、生成部112は、
図3の動作タイミングTD1,TD2,TD3,TD4,TD5でアクティブデカップル回路を動作させる制御情報を生成する。
【0050】
そして、生成部112は、生成した制御情報を、その制御情報により制御される動作が開始される前(例えば、期間T1)に、無線通信部110を介して受信コイル109へ伝送する。なお、生成部112の処理は、上記の処理に限定されるものではない。例えば、生成部112は、制御情報として、1TR内の動作のみを定義するのではなく、複数のTR内の動作を定義しても良い。すなわち、制御情報は、TR(繰り返し期間)を最小単位とする期間内の動作が定義された情報である。また、生成部112が制御情報を生成するために用いるのは、パルスシーケンスの情報に限らず、例えば、他の撮像条件(使用するRFコイルの情報、撮像部位の情報、スライス選択幅等)を用いても良い。例えば、生成部112は、感度領域内にあるRFコイルに対して制御情報を送信するために、使用するRFコイルの情報、撮像部位の情報、RFコイルの位置情報等を用いて、使用する受信コイル109のみに制御情報を送信しても良い。
【0051】
無線通信部110において、変調部43は、クロック信号生成部5から発生されるクロック信号を用いて、生成部112によって生成された制御情報に絶対時間の情報を付与する。
【0052】
変調処理部45は、変調部43によって絶対時間の情報が付与された制御情報に対して、キャリア信号生成部44から発生されるキャリア周波数を用いて変調処理を行い、制御情報の伝送用信号を生成する。そして、変調処理部45は、制御情報の伝送用信号をアンプ46で増幅し、増幅した制御情報の伝送用信号を無線アンテナ41から送信する。
【0053】
受信コイル109は、無線通信にて制御情報を受信して、受信した制御情報に基づいて、制御情報に定義された動作を行う。例えば、受信コイル109は、生成部112によって定義された制御情報に基づいて、アクティブデカップルを行う。
【0054】
受信コイル109において、無線アンテナ11は、無線アンテナ41から送信された制御情報の伝送用信号を受信する。検波部13は、キャリア信号生成部14から発生されるキャリア周波数を用いて、無線アンテナ11によって受信された制御情報の伝送用信号から制御情報を検波する。
【0055】
そして、制御信号生成部16は、コイル用クロック信号生成部15から供給される絶対時間の情報を用いて、制御情報に定義された動作タイミングでアクティブデカップル回路18を動作させる制御信号を生成する。
【0056】
ここで、コイル用クロック信号生成部15は、クロック信号生成部5と同様に、所定の周波数で振幅変化を繰り返す基準クロック信号を生成する。また、第1の実施形態において、コイル用クロック信号生成部15及びクロック信号生成部5は、絶対時間を共有している。すなわち、コイル用クロック信号生成部15は、クロック信号生成部5と同じ時間軸を共有する。言い換えると、コイル用クロック信号生成部15は、クロック信号生成部5と同じ時間軸で基準クロック信号を生成する。このため、制御信号生成部16において生成される制御信号は、生成部112によって生成された制御情報に定義された動作タイミングで生成可能となる。
【0057】
制御部17は、制御信号生成部16によって生成された制御信号をアクティブデカップル回路18に順次送る。これにより、アクティブデカップル回路18は、生成部112によって生成された制御情報に定義された動作タイミングでアクティブデカップルを行う。
図3の例では、アクティブデカップル回路18は、動作タイミングTD1,TD2,TD3,TD4,TD5において、アクティブデカップルを行う。
【0058】
このように、生成部112は、撮像条件に基づいて、制御情報を生成する。そして、生成部112は、生成した制御情報をその動作の開始までに無線通信にて受信コイル109に送信する。受信コイル109は、無線通信にて制御情報を受信して、受信した制御情報に基づいて、制御情報に定義された動作を行う。
【0059】
(無線通信によるエコー信号の伝送)
次に、無線通信によるエコー信号の伝送について説明する。受信コイル109において、被検体Pから発せられるMR信号は、受信エレメント19A,19Bによって受信され、プリアンプ20A,20Bによって増幅される。そして、それぞれの受信エレメント19A,19Bによって受信されたMR信号は、デジタル変換部21に入力される。
【0060】
デジタル変換部21は、コイル用クロック信号生成部15から供給されるクロック信号を用いて、入力されたMR信号をA/D変換してMRデータを生成する(サンプリング)。
【0061】
そして、変調処理部22は、デジタル変換部21によって生成されたMRデータに対して、キャリア信号生成部14から発生されるキャリア周波数を用いて変調処理を行い、MRデータの伝送用信号を生成する。そして、変調処理部45は、MRデータの伝送用信号をアンプ23で増幅し、増幅したMRデータの伝送用信号を無線アンテナ12から送信する。
【0062】
そして、無線通信部110において、無線アンテナ42は、無線アンテナ12から送信されたMRデータの伝送用信号を受信する。そして、復調処理部47は、キャリア信号生成部44から発生されるキャリア周波数を用いて、無線アンテナ42によって受信されたMRデータの伝送用信号からデジタルのMRデータを復調する。
【0063】
そして、受信部111は、復調されたMRデータを、シーケンス制御部120を経由して計算機130へ送信する。
【0064】
このように、MRI装置100において、受信コイル109は、無線通信によってエコー信号の伝送を行う。なお、
図4は一例に過ぎない。例えば、受信コイル109は、プリアンプ20A,20Bとデジタル変換部21との間に、フィルタリングのための帯域通過フィルタ(BPF)を備えていても良い。また、受信エレメント19A,19Bは、必ずしも2個ではなく、少なくとも1つあれば良い。
【0065】
上述してきたように、第1の実施形態に係るMRI装置100において、生成部112は、撮像条件に基づいて、受信コイル109の繰り返し期間を最小単位とする期間内の動作が定義された制御情報を生成する。そして、生成部112は、生成した制御情報をその動作の開始までに無線通信にて受信コイル109に送信する。受信コイル109は、制御情報を無線通信にて受信して、受信した制御情報に基づいて、制御情報に定義された動作を行う。このため、MRI装置100は、無線通信による動作精度を高めることを可能にする。
【0066】
例えば、MRI装置100においては、生成部112が、アクティブデカップル回路18の動作を制御する制御情報を生成し、生成した制御情報を、少なくとも最初の励起パルスに対応するアクティブデカップル回路18の動作タイミングの前までに受信コイル109に伝送しておく。そして、受信コイル109においては、MRI装置100本体側のクロック信号と絶対時間が共有しているクロック信号に基づいて、制御部17が、伝送された制御情報に定義された動作をアクティブデカップル回路18に実行させる。このため、MRI装置100は、各種遅延の発生に関わらず、制御情報に定義された動作タイミングで受信コイル109の動作を制御することができる。
【0067】
また、例えば、MRI装置100においては、生成部112が、1TR内の動作が定義された制御情報を、その動作の開始までに受信コイル109に伝送しておく。このため、受信コイル109は、その動作の開始以降をエコー用通信期間として利用できる。したがって、MRI装置100は、エコー信号の伝送量を十分に確保することができる。
【0068】
(その他の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、これ以外にも、種々の異なる形態にて実施されて良い。
【0069】
(アクティブデカップル回路以外の処理部の制御)
例えば、第1の実施形態では、MRI装置100がアクティブデカップル回路18の動作を制御する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、MRI装置100は、プリアンプ20A,20B、デジタル変換部21、変調処理部22、及びアンプ23の各処理部のON/OFFを制御しても良い。
【0070】
図3に示した例では、これらの処理部は、エコー用通信期間T2の間だけONであれば良い。このため、例えば、シーケンス制御部120は、パルスシーケンスに基づいて、180度パルスR1〜R5が発生する発生タイミングを決定する。そして、シーケンス制御部120は、180度パルスR1〜R5によってそれぞれ発生するエコー信号E1〜E5の発生期間を決定する。生成部112は、シーケンス制御部120によって決定されたエコー信号E1〜E5の発生期間に基づいて、エコー用通信期間T2を算出する。そして、生成部112は、算出したエコー用通信期間T2において、プリアンプ20A,20B、デジタル変換部21、変調処理部22、及びアンプ23の各処理部がONになるように制御情報を生成し、受信コイル109へ伝送する。これにより、受信コイル109は、エコー用通信期間T2において、プリアンプ20A,20B、デジタル変換部21、変調処理部22、及びアンプ23の各処理部がONになるように制御する。このため、MRI装置100は、例えば、受信コイル109における使用電力を減らすことができる。無線通信により動作する受信コイル109は、通常、受信コイル109に内蔵のバッテリーで動作するため、使用電力を減らすことで撮像中のバッテリー切れのリスクを低減することができる。
【0071】
(制御用通信期間について)
例えば、第1の実施形態では、生成部112が期間T1に制御情報を伝送する場合を説明したが(
図3)、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、生成部112は、制御情報が対象とする繰り返し期間よりも前の繰り返し期間において、制御情報を伝送しても良い。ただし、この場合、繰り返し期間のうちエコー用通信期間は避けることが好ましい。すなわち、生成部112は、制御情報によって定義された繰り返し期間よりも前の繰り返し期間のうち、エコー用通信期間とは異なる期間において、その制御情報を送信する。
【0072】
言い換えると、生成部112は、エコー用通信期間以外の期間には制御情報を伝送可能である。ただし、生成部112は、各制御情報に定義された動作の開始前までに伝送する必要がある。したがって、例えば、生成部112は、複数の繰り返し期間を跨って制御情報を伝送する場合もある。このため、MRI装置100は、エコー信号の伝送量を十分に確保しつつ、制御情報を動作の開始までに送信することができる。
【0073】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、無線通信による動作精度を高めることを可能にする。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。