【実施例】
【0021】
以下、
図1〜
図7を参照して本発明の具体的実施形態について説明する。1は、本発明の転写具である。本発明における転写具1は、筐体2内に、転写媒体が塗布された基材(=転写テープ)が巻装された送出軸部3、転写テープのうちの基材を巻き取る巻取軸部4、及び転写テープのうちの転写媒体を被転写体へ転写する転写部5を備えている。
【0022】
なお、改めて、以下の説明では、特に転写媒体、転写テープと記さない限り、送出側及び巻取側の経路上で搬送されるのは基材(送出側ではこの基材に転写媒体が塗布されている、巻取側では基材だけが搬送される)であることから、全般的に「基材」と記して説明することとする。
【0023】
転写具1は、送出軸部3と巻取軸部4のそれぞれを転写部5の基材搬送面の幅方向中央C(以下、「中央C」と記す)に向けて鋭角状に傾けて、該送出軸部3の基材巻装端面と該巻取軸部4の基材巻装端面とが積層されるように配置しており、この点が大きな特徴である。
【0024】
図2に示すように、筐体2は、例えば送出軸部3側と巻取軸部4側に2分割しており、送出軸部3側の筐体2Aと、巻取軸部4側の筐体2Bとにおけるそれぞれの内面には、該送出軸部3と該巻取軸部4とを枢支する枢支軸2Aa,2Baが各々突設されている。
【0025】
この枢支軸2Aa,2Baは、後述する送出軸部3と巻取軸部4の各々の筒状の軸体3A,4Aにそれぞれ嵌入して該送出軸部3と該巻取軸部4を枢支している。枢支軸2Aa,2Baは、本例では、
図3に示すように筐体2A,2Bの送出軸部3と巻取軸部4の収納部位の外形(内面)が予め傾斜され、これら内面に、若干角度を設けて(ほぼ垂直状)それぞれ突設している。
【0026】
なお、枢支軸2Aa,2Baは、筐体2のデザイン上、例えば外形を傾斜させていない形状とし、内面に対して枢支軸2Aa,2Baを(上記より大きく)傾斜させて設けるようにしていもよい。いずれにしても、筐体2の内部において、
図4に示すように、送出軸部3と巻取軸部4が中央Cに向けて鋭角状に傾けて、それぞれの基材の巻装端面とが積層されるよう配置できるならば限定しない。
【0027】
また、筐体2B(巻取軸部4側)の内面において、送出軸部3と巻取軸部4が位置する部位(以下、「駆動部位」という)から転写部5までの空間には、基材の搬送経路を送り出し側と巻き取り側とに区画すると共に、駆動部位から転写部5までの筐体2の補強部材として機能するリブ2Cが形成されている。
【0028】
筐体2Bの駆動部位の内面には、後述する巻取軸部4に形成されたラチェット爪4bが噛合するラチェット歯2Bbが形成されている。このラチェット歯2Bbは、巻取軸部4の回転方向には斜面が、逆転方向には垂直面が、それぞれ形成されている。該巻取軸部4の正転時はラチェット爪4bが斜面を乗り越えて正転を許容し、逆転時はラチェット爪4bが垂直面で係止して逆転を防止する。
【0029】
さらに、筐体2A,2Bの転写部5が設けられる部分は開口2aが形成されており、該開口2aには本例ではローラ5Aが該筐体2A,2Bの開口2a部位に回転可能に枢支されている。また、筐体2B側の該開口2a部位における基材の送り出し側には、ローラ5Aを覆うカバー5Bがヒンジ5aを介して開閉可能に設けられている。
【0030】
送出軸部3は、対向するフランジ同士の間を繋ぐよう形成された筒状の軸体3Aの外周面に基材(送出軸部3に巻装されるときは基材に転写媒体が塗布された転写テープ)が巻装されている。
【0031】
送出軸部3の軸体3Aは、
図5及び
図7に示すように、巻取軸部4との積層側の内周に凹部3aが形成されている。この凹部3aは、軸体3Aの内周が、巻取軸部4との積層側から離間する方向(以下、「反積層側」という)へ軸方向に伸びて径外方向へ弾性変更により拡がる4本の柱体3Aaと、反積層側から巻取軸部4との積層側へ軸方向に伸びて径外方向へ弾性変形により拡がる4本の柱体3Abと、により構成される。
【0032】
柱体3Aaと柱体3Abは、周方向に交互に配置され、柱体3Aaは反積層側における端部に、柱体3Abは積層側における端部に、それぞれ爪部3bが形成されている。そして、柱体3Aaと柱体3Abは、それぞれ爪部3bが形成された側にやや軸中心方向に傾斜しており、上記のとおり径外方向へ弾性変形する。
【0033】
また、軸体3Aにおいて、柱体3Aaと柱体3Abにより凹部3aが形成されていない側(つまり反積層側)の内径は上記枢支軸2Aaより大径とされ、送出軸部3が自由に傾動するように構成されている。
【0034】
巻取軸部4は、
図6及び
図7に示すように、対向するフランジ同士の間をつなぐよう形成された筒状の軸体4Aの外周面に基材(巻取軸部4に巻装されるときは転写テープから転写媒体が剥離した基材)が巻装されている。
【0035】
巻取軸部の軸体4Aは、対向するフランジのうち送出軸部3と積層する側が該フランジより突出し、この突出先端部に外形が略球状の球軸4aが形成されている。この球軸4aの内部は軸体4Aと連通している。
【0036】
軸体4Aにおいて、対向するフランジのうち反積層側のフランジ周縁部には、周方向に円弧状に伸びた3本の腕部4Baが形成されており、該腕部4Baのフランジと結合していない側の端部には、ラチェット爪4bがそれぞれ形成されている。また、軸体4Aにおいて、反積層側の内径は上記枢支軸2Ba
と同等とされており、巻取軸部4が
挿入されている。
【0037】
そして、送出軸部3と巻取軸部4とは、
図7に示すように、互いの積層側のフランジを対面させ、送出軸部3の凹部3a(柱体3Aa,3Ab)に対し、巻取軸部4の球軸4aを嵌合する。球軸4aが凹部3aに嵌合される際には、該球軸4aが積層側の柱体3Abの爪部3bを押し広げて(弾性変形して)嵌合され、嵌合後は、該柱体3Abが弾性復元し、これにより球軸4aは凹部3aから軸芯に向けた一定の押圧力が付与された状態で把持される。
【0038】
上記構成の転写具1は、送出軸部3と巻取軸部4とを中央Cに向けて鋭角状に傾けて、送出軸部3と巻取軸部4の巻装端面と該巻取軸部の基材の巻装端面とを積層状に配置することで、送出軸部3から転写部5まで、転写部5から巻取軸部4まで、の各区間の搬送経路は直線状となる。
【0039】
したがって、本発明の転写具1は、段重ねタイプでありながら、基材の幅方向の一方端と他方端で張力差が生じないので、転写部5の幅方向の一方端又は他方端に極端に偏って斜行搬送されることがなく、よって搬送が安定し、基材が搬送経路を脱線しようとしたり、基材が他部材と接触して幅方向端部が破損したり、転写媒体が剥げるなどといった不具合が生じることがない。
【0040】
また、本例では、送出軸部3と巻取軸部4が同方向に回転することで基材の送り出しと巻き取りが行われるよう、送出軸部3及び巻取軸部4に基材を巻装している。これにより本例の転写具1は、駆動にギヤなど別途の部材を要せず、球軸4aと凹部3aとのスリップを許容する適度の摩擦接触により互いに連動回転するため、構造の簡素化と部材点数の削減が図れるというメリットがある。
【0041】
転写具1は、使用によりしだいに基材の搬送が重くなる(転写具1を被転写体に押し付けたまま移動させるために大きな力を要すること)が、このとき、基材は送出軸部3と巻取軸部4との間で張力が高くなることに起因して該送出軸部3と巻取軸部4との回転速度の差が生じる。
【0042】
球軸4aと凹部3aとの結合は、上記のとおりスリップを許容することで回転速度差の吸収を図る機能もあるが、本発明の場合、使用における基材の張力による送出軸部3と巻取軸部4との傾動量の変化にも対応する機能も有している。
【0043】
例えば 基材の張力が高くなると、送出軸部3と転写部5間、転写部5と巻取軸部4間では、転写部5の中央Cに向けて送出軸部3と巻取軸部4との傾斜が大きくなる、つまり相対的に転写部5の中央Cに向かって送出軸部3と巻取軸部4とが引っ張られるように傾斜が大きくなる。
【0044】
このとき、球軸4aと凹部3aがフレキシブルに対応すること、また、送出軸部3と巻取軸部4の各々の軸体3A,4Aの内径がそれぞれの枢支軸2Aa,2Baの外径より若干大径とされていること、によって送出軸部3と巻取軸部4との上記傾斜が大きくなろうとする挙動に追従するから、使用感は転写具1の使用開始から終了に至るまで安定する。