(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記蓄冷/蓄熱材が、ポリエチレングリコール、油脂、パラフィン、あるいは吸水性樹脂または多糖類のうち少なくとも一方を水に加えた混合物によって構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の恒温容器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示す保温容器は、発泡樹脂を組み込んだだけのものであるため、十分な保温効果を得ることが困難である。このためこの保温容器においては、内容物を長時間適正な温度に保持することができず、十分な温度保持性能を得ることができないという課題があった。
【0007】
また上記特許文献2に示す保温容器は、蓄熱樹脂組成物が容器内面に露出しているため、蓄熱材が溶出して内容物(飲食品類)に悪影響が及び、内容物の品質が低下することが懸念される。さらにこの保温容器では、ベース樹脂(バインダー)に蓄熱材をエマルジョン状に分散させた蓄熱樹脂組成物を、容器内面に塗布するため、内容物への悪影響を考慮すると、蓄熱材の量が制限され、上記と同様、十分な温度保持性能を得ることができないという課題も抱えている。
【0008】
本発明は、上記課題に対し、内容物を適正な温度で長時間保持できて、温度保持性能に優れるとともに、蓄熱材等による内容物への悪影響を防止でき、内容物を高い品質に保持することができる恒温容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0010】
[1]上端に開口部を有する内側容器と、前記内側容器の外側に重ね合わされるように配置され、かつ上端に開口部を有する外側容器とを備え、
前記内側容器と前記外側容器との隙間に、蓄熱材または蓄冷材のいずれか一方を含む蓄冷/蓄熱材が充填されていることを特徴とする恒温容器。
【0011】
[2]前記蓄冷/蓄熱材が、潜熱による温度保持性能を有している前項1に記載の恒温容器。
【0012】
[3]前記蓄冷/蓄熱材が、ポリエチレングリコール、油脂、パラフィン、あるいは吸水性樹脂または多糖類のうち少なくとも一方を水に加えた混合物によって構成されている前項1または2に記載の恒温容器。
【0013】
[4]前記蓄熱材の融点が15℃〜100℃である前項1〜3のいずれか1項に記載の恒温容器。
【0014】
[5]前記蓄冷材の融点が−10℃〜15℃である前項1〜3のいずれか1項に記載の恒温容器。
【0015】
[6]前記内側容器と前記外側容器との隙間が0.1mm〜5mmに設定されている前項1〜5のいずれか1項に記載の恒温容器。
【0016】
[7]前記内側容器は、金属箔の両面に樹脂層が積層された積層体によって構成されている前項1〜6のいずれか1項に記載の恒温容器。
【0017】
[8]前記外側容器の上端開口部の周縁に、外側に向けて突出する第1フランジ部が形成されるとともに、
前記内側容器の上端開口部の周縁に、外側に向けて突出し、かつ前記第1フランジ部の上面に重ね合わされるように配置される第2フランジ部が形成され、
前記第1フランジ部と前記第2フランジ部との重ね合わせ部がヒートシールによって溶着されることにより、前記外側容器および前記内側容器間に充填された前記蓄冷/蓄熱材が密封されている前項1〜7のいずれか1項に記載の恒温容器。
【0018】
[9]前記外側容器の周囲壁の上端部が、外側に拡径されることによってスタッキング用段差部が形成されるとともに、
前記内側容器の上端開口部の周縁に、外側に向けて突出し、かつ前記スタッキング用段差部の上面に重ね合わされるように配置される第2フランジ部が形成され、
前記スタッキング用段差部と前記第2フランジ部との重ね合わせ部がヒートシールによって溶着されることにより、前記外側容器および前記内側容器間に充填された前記蓄冷/蓄熱材が密封されている前項1〜7のいずれか1項に記載の恒温容器。
【0019】
[10]前記内側容器の上端開口部を閉塞するように蓋材が取り付けられている前項1〜9のいずれか1項に記載の恒温容器。
【発明の効果】
【0020】
発明[1]の恒温容器によれば、外側容器および内側容器の隙間に蓄冷/蓄熱材を充填するものであるため、蓄冷/蓄熱材が内容物に混入されることがなく、その混入による内容物の品質劣化を防止でき、内容物を高い品質に保持することができる。さらに蓄冷/蓄熱材の内容物への混入を防止しつつ、蓄冷/蓄熱材の充填量を、必要に応じて増量させることができるため、その増量によって、内容物を適正な温度で長時間、確実に保持できて、優れた温度保持性能を得ることができる。
【0021】
発明[2][3]の恒温容器によれば、温度保持性能を一層向上させることができる。
【0022】
発明[4]の恒温容器によれば、優れた保温性能を確実に得ることができる。
【0023】
発明[5]の恒温容器によれば、優れた保冷性能を確実に得ることができる。
【0024】
発明[6]の恒温容器によれば、適量の蓄冷/蓄熱材を充填することができ、温度保持性能をより一層向上させることができる。
【0025】
発明[7]の恒温容器によれば、内側容器の熱伝導性を向上させることができ、蓄冷/蓄熱材による温度保持効果をより一層確実に向上させることができる。
【0026】
発明[8]の恒温容器によれば、蓄冷/蓄熱材を確実に封入することができる。
【0027】
発明[9]の恒温容器によれば、蓄冷/蓄熱材を確実に封入することができるとともに、複数の恒温容器を安定した状態に積み重ねることができる。
【0028】
発明[10]の恒温容器によれば、温度保持性能をなお一層向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第1実施形態>
図1はこの発明の第1実施形態である恒温容器を模式化して示す断面図である。同図に示すように、本第1実施形態の恒温容器は、コップ状に形成されており、例えばコーヒー、コーヒー飲料、果汁入り飲料水、緑茶、紅茶、ウーロン茶等の清涼飲料水や、スープ等の液状の食品を入れるのに適した容器である。
【0031】
本実施形態の恒温容器は、外側容器1の内側に内側容器2が重ね合わされるように配置された二重容器を備え、その二重容器1,2の隙間50、つまり外側容器1および内側容器2間の隙間50に蓄冷/蓄熱材5が充填されている。
【0032】
外側容器1は、上端に開口部を有し、上端開口部の周縁に外側に向けて水平方向に突出する第1フランジ部12が全周にわたって一体に形成されている。さらに外側容器1の周囲壁における上端部(首回り部)が、外側に拡径するように押し広げられることにより、スタッキング用段差部15が形成されている。
【0033】
内側容器2は、上端に開口部を有し、上端開口部の周縁に外側に向けて水平方向に突出する第2フランジ部22が全周にわたって一体に形成されている。この第2フランジ部22が外側容器1のスタッキング用段差部15の上面に重ね合わされるようにして、内側容器2が外側容器1の内側に略適合した状態に収容されている。なお外側容器1と内側容器2との間には隙間50が形成されるようになっている。
【0034】
内側容器2の第2フランジ部22と、外側容器1のスタッキング用段差部15とが重なり合う領域(ヒートシール部41)は全周にわたってヒートシールにより融着(溶着)されて固定されている。このヒートシール部41によって、外側容器1と内側容器2との隙間50が密閉されている。
【0035】
二重容器1,2の隙間50内には、既述したように蓄冷/蓄熱材5が充填されている。蓄冷/蓄熱材5は、内容物の温度低下(降温)を抑制する保温機能を有する蓄熱材、または温度上昇(昇温)を抑制する保冷機能を有する蓄冷材のいずれか一方によって構成されている。
【0036】
なお、本発明の恒温容器は、ワンウェイ容器(使い切り容器)としても、リユース容器(繰り返し使用可能な容器)としても用いることができる。
【0037】
本実施形態において、外側容器1の材質は特に限定されるものではないが、射出成形や、真空成形、圧空成形、真空圧空成形等によって成形加工が容易に行えるようなプラスチック素材(樹脂材)を用いるのが好ましい。外側容器1の材質として具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の汎用樹脂を好適に用いることができる。さらに外側容器1としては、樹脂の単層構造に限られず、上記の樹脂層の中間に、バリア性を付与するためにエチレン酢酸ビニル共重合物等の中間層や、耐衝撃性を付与するために、エチレンメタアクリル酸を金属でイオン架橋したアイオノマー層等の中間層を介在した多層構造にすることもできる。
【0038】
なお、本実施形態において外側容器1の厚みは、強度や加工時の効率、コストを考慮して、0.1mm〜2mmに設定するのが好ましい。
【0039】
本実施形態において、内側容器2の材質は特に規定されるものではないが、外側容器1の材質と同じものを使用することができ、さらに熱伝導性を上げて蓄冷/蓄熱材5による潜熱効果を効率的に内容物に伝達させるために、金属層を含む積層構造によって構成するのが好ましい。すなわち
図2に示すように内側容器2として、アルミニウム箔等の金属箔25の一面(外面)に接着剤252を介して熱融着性フィルム等の樹脂層27を貼り合せ、同様に反対面(内面)に接着剤251を介して熱融着性フィルム等の樹脂層26を貼り合せた積層体を使用するのが好ましい。
【0040】
本実施形態において金属箔25の厚みは、加工の容易さやコストを考慮して20μm〜150μmとするのが好ましい。また金属箔25の材質は特に限定されるものではないが加工の容易さやコストを考慮してアルミニウム箔を用いることが好ましい。
【0041】
上記積層体における樹脂層26,27として用いられる熱融着性フィルムとしては、外側容器1の材質と同様のものを用いるか、または外側容器1や蓋材3に対し熱融着が可能なものを使用するのが良い。
【0042】
樹脂層26については、上記熱融着性フィルムに代えて、耐熱性の延伸フィルムを使用しても良い。さらに樹脂層26を貼り合せないものや、熱可塑性または熱硬化性の塗料を塗付したものも好適に使用することができる。
【0043】
また樹脂フィルム等の樹脂層26,27の厚みは、外側容器1や蓋材3に対するヒートシール時の熱伝導性や、ヒートシール後のシール強度を考慮して、10μm〜100μmに設定することが好ましい。
【0044】
また本実施形態においては、二重容器1,2の隙間50に充填される蓄冷/蓄熱材5が隙間全域に満遍なく広がるように、外側容器1と内側容器2との隙間50は、底部で0.1mm〜5mm、周側部で0.1mm〜3mmになるように、内側容器2の形状や寸法等を設定するのが良い。
【0045】
本実施形態において、内側容器2の作製方法は、特に限定されるものではないが、例えば上記の積層体(
図2参照)を材質として、深絞り成形や張出成形によって外側容器1より一回り小さいカップ状の成形品を成形し、その成形品のフランジ部を適宜切除して、内側容器2を作製する方法等を採用することができる。
【0046】
本実施形態において、二重容器1,2の隙間50に充填封入される蓄冷/蓄熱材5としては、安全性が高く、潜熱機能を有するものを使用するのが好ましい。
【0047】
蓄冷/蓄熱材5のうち、保温機能を有する蓄熱材としては、ポリエチレングリコール類や、パラフィンワックス、精製パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックスやポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、アタクチックポリプロピレンワックス等の合成ワックスの他に、木ロウ、カルナバロウ、蜜ロウなどの天然系ワックス、さらに、ココナツ油やパーム油のような植物系油脂やラード、牛脂のような動物系油脂、ゼラチン、寒天、カラギーナン等の水溶液を好適に用いることができる。特に本実施形態において蓄熱材としては、内容物を適正な温度に保つために、融点が15℃〜100℃の物質を採用するのがより一層好ましい。
【0048】
本実施形態における蓄熱材は、外気温等の影響によって飲食品類等の内容物の温度が低下する時に、液体から固体に相変化して発熱する潜熱効果によって保温性能を発揮する他に、熱伝導率が低いために保温された内容物の熱を容器外に放出されるのを抑制できて、保温性能を一層向上させることができる。
【0049】
蓄冷/蓄熱材5のうち、保冷機能を有する蓄冷材としては、例えばポリアクリル酸ナトリウムやポリビニルアルコール等の吸水性樹脂や澱粉等の多糖類を水に加えた混合物を用いた蓄冷材を使用するのが好ましい。特に本実施形態において蓄冷材としては、内容物を適正な温度に保つために、常温ではゲル状ないしは液状であり、融解温度が−10℃〜+15℃の物質を採用するのがより一層好ましい。
【0050】
本実施形態における蓄冷材は、外気温等の影響によって飲食品類等の内容物の温度が上昇する時に、ゲルないしは固体から液体に相変化して吸熱する潜熱(融解熱)効果によって保冷性能を発揮する。
【0051】
蓄冷/蓄熱材5の恒温容器への封入方法は特に限定されるものではないが、例えば外側容器1に蓄冷/蓄熱材5を注入しておいて、外側容器1にその内側に内側容器2を重ね合わせるように嵌め込み、その嵌め込み時の圧力によって蓄冷/蓄熱材5を容器全周に偏りなく行き渡らせ、その後、既述したように、内側容器2を外側容器1に溶着一体化する方法等を例示することができる。
【0052】
本実施形態の恒温容器においては、蓋材3を取り付けて、内側容器2に収容された飲食品類等の内容物を密閉するようにしても良い。
【0053】
例えば
図3(a)に示すように、外側容器1の上面全域を蓋材3によって被覆するようにしても良い。この蓋材3は、第1フランジ部12を含めた外側容器1の上面形状(平面形状)に対応する形状を有している。そしてこの蓋材3の外周縁部が第1フランジ部12の上面に配置された状態で、蓋材3の外周縁部と外側容器1の第1フランジ部12とが重なり合う領域(ヒートシール部42)でヒートシールされて融着(溶着)されている。
【0054】
さらに
図3(b)に示す蓋材3は、内側容器2の上面部分のみを被覆している。この蓋材3は、外側容器1の上端開口部よりも小さくて、第2フランジ部22を含めた内側容器2の上面形状(平面形状)に対応する形状に形成されている。そして、この蓋材3の外周縁部が第2フランジ部22の上面に配置された状態で、蓋材3の外周縁部と内側容器2の第2フランジ部22とが重なり合う領域(ヒートシール部43)がヒートシールされて融着(溶着)されている。
【0055】
また
図3(c)に示す蓋材3は、外側容器1のスタッキング用段差部15に適合するようにして外側容器1の上面全域を被覆している。すなわち、この蓋材3は、その外周縁部を除く中間部に、外側容器1の段差部15によって囲まれる部分に適合可能な凹陥部30が形成されている。この蓋材3の凹陥部30が、恒温容器における外側容器1のスタッキング用段差部15によって囲まれる部分に適合されて、蓋材3の凹陥部30の下面外周縁部が内側容器2の第2フランジ部22の上面に設置されるとともに、蓋材3の外周縁部が外側容器1の第1フランジ部12の上面に配置される。そして蓋材3の凹陥部30の外周縁部と内側容器2の第2フランジ部22とが重なり合う領域(ヒートシール部43)と、蓋材3の外周縁部と外側容器1の第1フランジ部12とが重なり合う領域(ヒートシール部42)との2箇所のヒートシール部42,43のうち、少なくともいずれか一つのヒートシール部がヒートシールされて溶着(融着)されている。
【0056】
本実施形態において、蓋材3の材質として、積層体を好適に用いることができる。例えば
図4に示すように、アルミニウム箔等の金属箔35の一面(上面)に接着剤351を介して耐熱フィルム等の樹脂層36を貼り合せ、反対面(下面)には接着剤352を介して熱融着フィルム等の樹脂層37を貼り合せた積層体を好適に用いることができる。
【0057】
また本発明において、蓋材3の構成は、特に限定されるものではなく、金属箔35として、アルミ蒸着したフィルムを使用したり、紙とプラスチックフィルムとを組み合せた複合材を蓋材3として使用しても良い。
【0058】
蓋材3として、
図3(c)に示すような凹陥部付きの成形品を用いる場合には、蓋材用の材料(積層構造のフィルム等)を、深絞り成形や張出成形によって所定の形状に形性するようにすれば良い。
【0059】
また蓋材3を恒温容器にヒートシールするに際しては、蓋材3の樹脂層37としての熱融着性フィルムが外側容器1の第1フランジ部12やスタッキング用段差部15、あるいは内側容器2の第2フランジ部22に接触させた状態で行うが、シール幅はフランジ部12,22の幅や、スタッキング段差部15の幅と同サイズか、それよりも小さく設定されることになる。具体的には、シール幅は0.5mm〜10mmに設定されるが、密封性、および開封性、容器の経済的なサイズを考慮すると、シール幅は0.5mm〜5mmに設定するのが好ましい。
【0060】
以上のように、本第1実施形態の恒温容器によれば、外側容器1および内側容器2による二重容器の隙間50に蓄冷/蓄熱材5を封入するものであるため、蓄冷/蓄熱材5が、内側容器2の内部に溶出するのを防止することができる。このため、蓄冷/蓄熱材5が飲食品類等の内容物に混入されるのを防止でき、その混入により内容物の品質が低下するのを防止でき、内容物を高い品質に保持することができる。
【0061】
さらに二重容器の隙間50の大きさを拡張することで、蓄冷/蓄熱材5の封入量を、必要に応じて適宜増量させることができる。このため例えば、隙間50を拡張し、蓄冷/蓄熱材5を増量することで、内容物を適正な温度で長時間、確実に保持できて、優れた温度保持性能を得ることができ、商品価値をより一層向上させることができる。
【0062】
<第2実施形態>
図5はこの発明の第2実施形態である恒温容器を示す断面図である。同図に示すように、この第2実施形態の恒温容器は、トレイ状に形成されており、内容物として例えばカレーやシチュー等の調理済み食品を入れるのに適した容器である。
【0063】
この第2実施形態の恒温容器は、上記第1実施形態の恒温容器に比べて、内容物を収容する部分が広くかつ浅く形成されている。
【0064】
この第2実施形態において、他の構成は、上記第1実施形態の恒温容器と実質的に同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0065】
なおこの第2実施形態の恒温容器においても、上記第1実施形態と同様、
図3(a)〜
図3(c)に示すように蓋材3を同様にして取り付けるようにしても良い。
【0066】
この第2実施形態の恒温容器においても、上記と同様に、同様の作用効果を得ることができる。
【0067】
<他の実施形態>
図6はこの発明の第3実施形態の恒温容器を示す断面図、
図7は第4実施形態の恒温容器を示す断面図である。両図に示すように、第3および第4実施形態の恒温容器は、その外側容器1にスタッキング用段差部15が形成されていない点において、
図1および
図5に示す上記第1および第2実施形態の恒温容器と大きく相違している。
【0068】
すなわち第3および第4実施形態の恒温容器は、外側容器1の周囲壁は、段差のない円筒形状に形成されている。さらに外側容器1の内側に嵌め込まれる内側容器2の第2フランジ部22は、外側容器1の第1フランジ部12の上面に重ね合わされるように配置されている。そして内側容器2の第2フランジ部22と外側容器1の第1フランジ部とが重なり合う領域(ヒートシール部41)が全周にわたってヒートシールにより溶着(融着)されることにより、二重容器の隙間50に充填される蓄冷/蓄熱材5が封入されている。
【0069】
なお第3および第4実施形態の恒温容器において、蓋材を取り付ける場合には、蓋材の外周縁部を内側容器2の第2フランジ部22にヒートシールによって溶着一体化することにより、蓋材によって内側容器2の内側を密封するようにすれば良い。
【0070】
第3および第4実施形態において、他の構成は、上記第1および第2実施形態と実質的に同様であるため、同一部分または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0071】
第3および第4実施形態においても、上記第1および第2実施形態と同様に、同様の作用効果を得ることができる。
【実施例】
【0072】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0073】
【表1】
【0074】
<実施例1>
実施例1の恒温容器(容器サンプル)は、
図1に示すようなカップ形状の容器に相当するものである。
【0075】
まず、外側容器を以下の手順で準備した。すなわち表1に示すように、周囲壁の上端部(首回り)に、空容器を重ねたときのスタック性を考慮してスタッキング用段差部が形成された容量200mlのポリプロピレン製のチルドカップ容器を射出成形によって作製し、その容器を外側容器(
図1参照)として用意した。
【0076】
内側容器を以下の手順で準備した。すなわち厚さ100μmのJIS H4000で分類されるA8079に準拠した焼鈍済みのアルミ合金箔の両面に塗布量3g/m
2の2液硬化型のポリエステルポリウレタン系接着剤を介して厚さ30μmのポリプロピレンフィルムを貼り合せて積層体(
図2参照)を作製し、その積層体を40℃下で3日間養生した。その後、その積層体を成形材料として、外側容器の形状より一回り程度小さな容量190mlの形状の雄型と雌型からなる金型で深絞り成形して、内側容器を作製した。
【0077】
なおこの内側容器のフランジ部(第2フランジ部)は、外側容器のスタッキング用段差部の幅と合わせて、全周にわたって1mm幅に設定した。
【0078】
外側容器および内側容器の隙間に充填する充填材としての蓄熱材を以下の手順で準備した。すなわち、平均分子量600(融点15℃〜25℃)のポリエチレングリコール25重量%と、平均分子量3000(融点55℃)のポリエチレングリコール75重量%とを混合して、その混合物を80℃に加熱溶解して液化し、蓄熱材(充填材)として用意した。
【0079】
上記外側容器に液状の上記蓄熱材を10ml注入した後、その上から直ぐに上記内側容器を静かに挿入し、内側容器のフランジ部分(第2フランジ部)が外側容器のスタッキング用段差部に掛止するように設置した。その後、180℃に加熱した熱板を、内側容器側(上側)から、内側容器のフランジ部分に、0.3MPaの圧力で2秒間のヒートシールを行い、外側容器のスタッキング用段差部と内側容器のフランジ部分とを熱融着して、二重容器の隙間に充填された蓄熱材を密閉した。その後、常温まで冷却して、蓄熱材を固化して、二重容器構造の実施例1の保温用容器を作製した。
【0080】
<実施例2>
表1に示すように、厚さ200μmのポリプロピレンシ−トを成形材として、真空圧空成形金型を用いて、実施例1の恒温容器における内側容器の外側寸法と同様な外側寸法を有するカップ状の成形品を成形し、その成形品を内側容器として用いた以外は実施例1と同様にして実施例2の保温用容器を作製した。
【0081】
<実施例3>
表1に示すように、充填材として、ポリエチレングリコールに代えて80℃に加熱したラード(融点30℃〜40℃)によって構成された蓄熱材を用いた以外は実施例1と同様にして実施例3の保温用容器を作製した。
【0082】
<実施例4>
表1に示すように、充填材として、1%ポリアクリル酸ナトリウム水溶液によって構成された蓄冷材10mlを用いた以外は実施例1と同様にして実施例4の保冷用容器を作製した。
【0083】
<比較例1>
表1に示すように、実施例1において外側容器として用いた容量200mlのポリプロピレン製のチルドカップを、比較例1の保温/保冷用容器として用意した。この比較例1の容器は、二重容器構造ではなく、一重容器構造であり、蓄熱材等の蓄冷/蓄熱材も設けられていない。
【0084】
<比較例2>
表1に示すように、外側容器と内側容器との隙間に、充填材等を一切充填しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の保温/保冷用容器を作製した。
【0085】
<比較例3>
表1に示すように、充填材として、水道水10mlを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例3の保温/保冷用容器を作製した。
【0086】
<保温効果の評価方法>
【0087】
【表2】
【0088】
厚さ12μmのアルミ箔の上面に接着剤を介して厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが積層されるとともに、下面に接着剤を介して暑さ30μmの無延伸ポリプロピレン(CPP)が積層された積層体(PET12/接着剤/AL12/接着剤/CPP30)によって構成された蓋材を準備した。なお蓋材用の積層体における接着剤としては、ポリエステル系二液硬化型接着剤を使用した。
【0089】
一方、常温の水道水200mlを内側容器に注入した実施例1の容器サンプルに上記蓋材を設置し、蓋材側より200℃に加熱した熱板で0.3MPaの圧力で2秒間のヒートシールを行い、容器サンプルの外側容器のフランジ部分(第1フランジ部)と、蓋材外周縁部とを融着一体化して、実施例1の容器サンプルを密封した。
【0090】
こうして密封した実施例1の容器サンプルを3つ準備し、3つ全ての容器サンプルを80℃に設定した恒温槽に1時間それぞれ静置した後、恒温層から取り出して24℃に管理された室内に放置した。
【0091】
そして表2に示すように、1つ目の容器サンプルは、恒温槽から24℃に管理された室内に取り出した直後に蓋を開封し、その環境下で静置した状態で開封直後と、開封から10分後と、開封から30分後との各時点において、温度センサーにより内側容器中央部分の水温をそれぞれ測定して容器サンプル内の温度変化を調査した。
【0092】
さらに2つ目の実施例1の容器サンプルは、恒温槽から24℃に管理された室内に取り出した後、そのまま10分間放置して蓋を開封し、その環境下で静置した状態で開封直後と、開封から10分後と、開封から30分後との各時点において、同様に容器サンプル内の水温を測定した。
【0093】
さらに3つ目の実施例1の容器サンプルは、恒温槽から24℃に管理された室内に取り出した後、そのまま30分間放置して蓋を開封し、上記と同様に、その環境下で静置した状態で開封直後と、開封から10分後と、開封から30分後との各時点において、容器サンプル内の水温を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0094】
また実施例2,3および比較例1〜3の容器サンプルに対しても、実施例1の容器サンプルと同様にして、保温効果の評価を行った。これらの結果を表2に示す。
【0095】
表2に示す通り、80℃の恒温槽から24℃に管理された室内に取り出した直後に蓋を開封した各容器サンプル内の水温変化は、本発明に関連した実施例1〜3の方が、本発明の要旨を逸脱する比較例1〜3に比べて少ない結果となり、本発明の恒温容器の保温効果が高いことが判明した。
【0096】
また、24℃に管理された室内に取り出してから10分後、30分後に蓋を開封した容器サンプル内の水温も実施例1〜3の容器サンプルの方が比較例1〜3の容器サンプルよりも高い温度を維持していることから、密封していた状態でも同様に保温効果(温度保持性能)が高いことが判明した。
【0097】
<保冷効果の評価方法>
【0098】
【表3】
【0099】
実施例4の容器サンプルに水道水200mlを注入して、上記と同様の蓋材を用いて同様に密封した。
【0100】
こうして密封した実施例4の容器サンプルを3つ準備し、3つ全ての容器サンプルを5℃に設定した冷蔵庫に3時間それぞれ静置した後、24℃に管理された室内にそれぞれ取り出した。
【0101】
そして表3に示すように、1つ目の容器サンプルは、冷蔵庫から取り出した直後に24℃に管理された室内で蓋を開封し、その環境下で静置した状態で開封直後と、開封から10分後と、開封から30分後との各時点において、温度センサーにより内側容器中央部分の水温をそれぞれ測定して容器サンプル内の温度変化を調査した。
【0102】
さらに2つ目の実施例4の容器サンプルは、冷蔵庫から取り出した後、24℃に管理された室内で蓋を開封し、その環境下で静置した状態で開封直後と、開封から10分後と、開封から30分後との各時点において、同様に容器サンプル内の水温を測定した。
【0103】
さらに3つ目の実施例4の容器サンプルは、冷蔵庫から取り出した後、24℃に管理された室内で蓋を開封し、上記と同様に、その環境下で静置した状態で開封直後と、開封から10分後と、開封から30分後との各時点において、容器サンプル内の水温を測定した。これらの結果を表3に示す。
【0104】
また比較例1〜3の容器サンプルに対しても、実施例4の容器サンプルと同様にして、保冷効果の評価を行った。これらの結果を表3に示す。
【0105】
表3に示す通り、5℃の冷蔵庫から24℃に管理された室内に取り出した直後に蓋を開封した各容器サンプル内の水温変化は、本発明に関連した実施例4の方が、本発明の要旨を逸脱する比較例1〜3に比べて少ない結果となり、本発明の恒温容器の保冷効果が高いことが判明した。
【0106】
また、24℃に管理された室内に取り出してから10分後、30分後に蓋を開封した容器サンプル内の水温も実施例4の容器サンプルの方が比較例1〜3の容器サンプルよりも低い温度維持していることから、密封していた状態でも同様に保冷効果(温度保持性能)が高いことが判明した。