(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386772
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】パッキン一体型逆止弁
(51)【国際特許分類】
F16K 15/06 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
F16K15/06
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-87196(P2014-87196)
(22)【出願日】2014年4月21日
(65)【公開番号】特開2015-206407(P2015-206407A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2017年3月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201593
【氏名又は名称】前澤給装工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073623
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 幸吉
(72)【発明者】
【氏名】荻野 真二
(72)【発明者】
【氏名】金子 晃
【審査官】
山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−115147(JP,A)
【文献】
特開2004−183847(JP,A)
【文献】
実開平06−055915(JP,U)
【文献】
特開平11−100750(JP,A)
【文献】
実開昭49−035427(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3181540(JP,U)
【文献】
特開2004−156681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00−1/54
F16K 15/00−15/20
F16K 17/00−17/168
F16K 17/18−17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道用のパッキン一体型逆止弁において、弁座収容部と弁軸の摺動支持部及びこれを連結する支柱を構成する外殻本体を金属によって形成し、その弁軸の摺動支持部における弁体を支持する合成樹脂製の弁軸を進退可能に挿通する摺動支持孔の内周壁を合成樹脂面に形成したことを特徴とするパッキン一体型逆止弁
【請求項2】
外殻本体の2次側に固定されたケージ中央部に開口する円環状ボス部に、弁軸を挿通して案内する金属製の摺動支持体を形成し、その内周壁に合成樹脂製スリーブを挿入着合するように構成した請求項1記載のパッキン一体型逆止弁
【請求項3】
外殻本体の2次側に固定されたケージ中央部円環状ボス部の開口部に、合成樹脂製スリーブの端部を挿入着合するように構成した請求項1記載のパッキン一体型逆止弁
【請求項4】
合成樹脂製スリーブの成形型に、金属製外殻本体をセットし、金属製ボス部と合成樹脂製スリーブを一体成形により成形着合するように構成した請求項1記載のパッキン一体型逆止弁
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外殻本体を金属としたパッキン一体型逆止弁において、弁体を支持する合成樹脂製の弁軸を進退可能に挿通する摺動支持孔の内周壁を合成樹脂面に形成するようにしたパッキン一体型の逆止弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、逆止弁は、水道メーター2次側の接続継手の内径部に設定され、2次側からの逆流が水道メーター内から1次側に逆流するのを防止してきたが、配管内に逆流防止機能を付加することを目的として、例えば、特許文献1に提案されるように、シート側にフランジ状にガスケットを嵌着したパッキンを形成してメーターパッキンと同様に設置できるパッキン一体型逆止弁が用いられるようになっている。
【0003】
一方、パッキン一体型逆止弁のシート部に形成されるフランジ体については、鍔付管継手の鍔との干渉やフランジパッキンの過変形を防止するため、特許文献2のようにパッキンに管継手の鍔との干渉を防ぐ逃げ部と、弁シート部の凹部にパッキンの過変形を防止する規制部を設ける工夫がなされるが、逆止弁の外殻本体が破損すると水流に対する位置固定構造が失われ、逆止弁がそのまま下流に流されて配管を詰まらせる問題が発生し、外殻本体に堅牢性が求められる。
【0004】
これに対して、弁体を収容する合成樹脂製のケージに対して、合成樹脂の射出成型時に金属製の補強部材を挿入する特許文献3による提案がなされ、更に、具体的な文献は存在しないが、金属の棒材を切削加工して弁座を収容する環状ケース体と弁軸の摺動端を支持するボス部を連結する3本の支柱を削り出した外殻本体に、合成樹脂製の弁体を組付けたものが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
主要な特許文献としては、上記した特許文献1乃至3が存在する。
【特許文献1】実開平6−12879号公報
【特許文献2】特開2009−115147号公報
【特許文献3】特開2010−276037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パッキン一体型逆止弁は、弁座を収容する環状ケース体と弁軸の摺動端を支持するボス部を連結する複数本の支柱によって弁体作動部を保護するケージと外殻が構成されるが、その外殻本体は合成樹脂成形によって形成され、弁体の移動に伴うケージへの衝撃や鍔付管継手の鍔との干渉等によって破損し易く、これが破損すると逆止弁の交換だけでなく、逆止弁体の配管内への流失による詰まり等、多くの問題が発生する。
【0007】
前記の通り、金属の棒材を切削加工して金属製の外殻本体を形成したものは存在するが、その削り出し加工には、高度の熟練技術を要し、多大な時間と労力を要するため、余り普及していないのが現況である。また、合成樹脂の射出成型時に金属製の補強部材を挿入するものは、補強部材挿入のタイミング等、作業工程が複雑化するほか、支柱部にしか適用できない問題もある。
【0008】
また、従来の金属加工ケージによる逆止弁は、加工上の問題から弁座収容部の2次側内径端が軸芯に対して直角な水平面となっていたため、弁体を押圧して2次側に流れる水流が内径の口角部に衝合して円滑な流れを妨げ流圧エネルギーを消耗させる恐れがある。
【0009】
そこで、本願出願人は、弁座収容部と弁軸の摺動支持部及びこれを連結する支柱を構成する外殻本体を鋳造金属の切削加工によって形成するパッキン一体型逆止弁についての提案を行っているが、弁体を支持する合成樹脂製の弁軸を進退可能に挿通する摺動支持孔が金属製であることにより、合成樹脂製の弁軸が逆止弁の進退作動により摩耗し、細くなって作動に支障を生じるほか、逆止弁の耐久性に大きく影響してくる問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記した課題に対応しようとするものであり、弁座収容部と弁軸の摺動支持部及びこれを連結する支柱を構成する外殻本体が金属によって形成し、弁体を支持する合成樹脂製の弁軸を進退可能に挿通する摺動支持孔の内周壁を合成樹脂面に形成するようにしたものである。
【0011】
すなわち、外殻本体の2次側に固定されたケージ中央部に開口する円環状ボス部に、弁軸を挿通して案内する金属製の摺動支持体を形成し、その内周壁に合成樹脂製スリーブを挿入着合し、或は、外殻本体の2次側に固定されたケージ中央部円環状ボス部の開口部に、合成樹脂製スリーブの端部を挿入着合するように構成した。
【0012】
また、合成樹脂製スリーブの成形型に、金属製外殻本体をセットし、金属製ボス部と合成樹脂製スリーブを一体成形により成形着合するようにした。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以上のように構成したので、金属製外殻本体の堅牢性を維持しながら、軽量で柔軟性のある合成樹脂製弁軸と同質の摺動支持体によって弁体の進退作動を支持案内するようにしたので、弁体の進退作動を円滑にすると共に、摺動に伴う弁軸の摩耗負荷を大幅に軽減し逆止弁の耐久性を増進することができた。
【0014】
また、合成樹脂製スリーブの成形型に、金属製外殻本体をセットし、金属製ボス部と合成樹脂製スリーブを一体成形により成形着合するようにすれば、スリーブ成形の射出成型により構造的に安定した外殻本体を一挙に加工成形することができ、手作業による面倒な工程を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例を示すもので、閉弁状態における従来からのパッキン一体型逆止弁の全体構造を示す縦断面図
【
図2】同じく、開弁状態における従来からのパッキン一体型逆止弁の全体構造を示す縦断面図
【
図3】同じく、本発明によるパッキン一体型逆止弁の1つの実施例を示すもので、合成樹脂製の弁軸を挿通する摺動支持孔の内周壁を合成樹脂面としたパッキン一体型逆止弁の全体構造を示す縦断面図
【
図4】同じく、本発明によるパッキン一体型逆止弁の1つの実施例を示すもので、合成樹脂製スリーブ着合前における金属製外殻本体の構造を示す縦断面図
【
図5】同じく、1つの実施例を示すもので、
図4の金属製外殻本体に合成樹脂製スリーブを着合した状態を示す縦断面図
【
図6】同じく、他の実施例によるパッキン一体型逆止弁の1つの実施例を示すもので、合成樹脂製スリーブ着合前における金属製外殻本体の構造を示す縦断面図
【
図7】同じく、
図6の金属製外殻本体に合成樹脂製スリーブを着合した状態を示す縦断面図
【
図8】同じく、本発明によるパッキン一体型逆止弁の1つの実施例を示すもので、合成樹脂製スリーブの成形型に、金属製外殻本体をセットし、金属製ボス部と合成樹脂製スリーブを一体成形により成形着合する実施例における合成樹脂製スリーブ着合前における金属製外殻本体の構造を示す縦断面図
【
図9】同じく、
図8の金属製外殻本体に合成樹脂製スリーブを成形着合した状態を示す縦断面図
【
図10】同じく、本発明によるパッキン一体型逆止弁の1つの実施例を示すもので、合成樹脂製スリーブの成形型に、金属製外殻本体をセットし、金属製ボス部と合成樹脂製スリーブを一体成形により成形着合する他の実施例における合成樹脂製スリーブ着合前における金属製外殻本体の構造を示す縦断面図
【
図11】同じく、
図10の金属製外殻本体に合成樹脂製スリーブを成形着合した状態を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明すると、1は逆止弁カートリッジの外殻を構成する外殻本体で、1次側に弁座12を嵌合し、同弁座12に接触開閉する弁体2をスプリング3によって1次側に付勢させて支持収納する弁機構収容ケージ4と、端部に螺合するフランジ躯体13と、同フランジ躯体13のフランジ部13aに嵌装されるゴム等の弾性素材によるガスケット13bによって構成されるフランジ体11とから成る。
【0017】
弁機構収容ケージ4の2次側頂部には、中央部に円環状ボス部41に、弁軸21を挿通して案内する金属製の摺動支持体42が形成され、摺動支持体42の中心部に弁軸挿通孔43が貫通する。
【0018】
5は合成樹脂製のスリーブで、例えば、
図5に示すように、弁軸挿通孔43の内周に対応して密着着合する外径と、弁軸21の外径に対応してこれを挿通する内径の筒状をなし、必要に応じて端部にフランジ51が形成される。
【0019】
このように形成されたスリーブ5は、弁軸挿通孔43の内周に雌ねじ、スリーブ5の外周に雄ねじを刻設することによる螺合、弁軸挿通孔43の内径に対してスリーブ5の外径を僅かに太く構成することによる圧入、若しくは、何れかの内周或は外周に塗布する接着剤による接着によって弁軸挿通孔43の内周に着合されるものである。
【実施例2】
【0020】
実施例2は、例えば、
図6、7に示すように、弁機構収容ケージ4の2次側頂部に摺動支持体42を形成することなく、円環状ボス部41に開口する通孔44に、弁軸21を挿通する内径の弁軸挿通体を形成する合成樹脂製スリーブ6を、通孔44の内周に雌ねじ、スリーブ6端部に形成する着合部61の外周に雄ねじを刻設することによる螺合、通孔44の内径に対してスリーブ6端部着合部61の外径を僅かに太く構成することによる圧入、若しくは、何れかの内周或は外周に塗布する接着剤による接着によって通孔44に合成樹脂製スリーブ6を着合するものである。
【実施例3】
【0021】
実施例3は、合成樹脂製スリーブ7の成形型に、金属製の弁機構収容ケージ4をセットし、金属製ボス部と合成樹脂製スリーブを一体成形により成形着合するように構成するもので、例えば、
図8に示すように、円環状ボス部41に、弁軸21を挿通して案内する金属製の摺動支持体42が形成され、摺動支持体42の中心部に弁軸挿通孔43が貫通する摺動支持体42の2次側端部に、射出成形によって成形されるスリーブ7を摺動支持体42内に支持する2次側端部のフランジ71を成形する環状凹陥溝42aを形成した金属製の弁機構収容ケージ45を合成樹脂製スリーブ7の成形型にセットする。
【0022】
セットされた金属製の弁機構収容ケージ45の摺動支持体42の内周部には、スリーブ7本体を成形するためのコアピン(図示しない。)がセットされ、樹脂材料の射出成形によって、
図9に示すように、フランジ71とスリーブ7本体が一気に成形加工され、摺動支持体42の内周部に合成樹脂面が形成されるものである。
【実施例4】
【0023】
実施例4は、合成樹脂製スリーブ7の成形型に、金属製の弁機構収容ケージ46をセットし、金属製ボス部と合成樹脂製スリーブを一体成形により成形着合するように構成する他の実施例を示すもので、
図10に示すように、弁機構収容ケージ46の2次側頂部に摺動支持体42を形成することなく、円環状ボス部41に開口する通孔44に、射出成形によって成形される弁軸挿通体を形成するスリーブ8を通孔44内に支持するフランジ81を成形する環状凹陥溝44aを形成した金属製の弁機構収容ケージ46を合成樹脂製スリーブ8の成形型にセットする。
【0024】
セットされた金属製の弁機構収容ケージ46の通孔44の2次側端部には、スリーブ8本体を成形するためのコアピン(図示しない。)がセットされ、樹脂材料の射出成形によって、
図11に示すように、フランジ81とスリーブ8本体が一気に成形加工され、通孔44の2次側端部に合成樹脂製スリーブ8が形成されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係るパッキン一体型逆止弁は、破損し易い従来の合成樹脂製の外殻本体を金属製とし、逆止弁本体の構造を強化すると共に、弁体を支持する合成樹脂製の弁軸を挿通する摺動支持孔が金属製であることにより、合成樹脂製の弁軸が逆止弁の進退作動により摩耗し、細くなって作動に支障を生じる問題を解決し、合成樹脂製スリーブの特性を活かした形成加工手段により極めて能率的に加工成形できる製造品を提供するものであるので、水道施設産業上に高度の利用価値を有するものである。
【符号の説明】
【0026】
1 逆止弁外殻本体
11 フランジ躯体のフランジ体
12 逆止弁の弁座
13 弁機構収容ケージ開口側端部に着合するフランジ躯体
13a フランジ躯体のフランジ部
13b フランジ部に嵌装されるガスケット
2 逆止弁の弁体
21 逆止弁の弁軸
3 付勢スプリング
4 弁機構収容ケージ
41 弁機構収容ケージの2次側頂部の円環状ボス部
42 弁軸を挿通して案内する金属製の摺動支持体
42a 金属製の摺動支持体2次側端部に成形される環状凹陥溝
43 摺動支持体の中心部に挿通する弁軸挿通孔
44 弁機構収容ケージの2次側頂部の円環状ボス部通孔
44a 円環状ボス部通孔に成形される環状凹陥溝
45 合成樹脂製スリーブ成形型内にセットされる金属製弁機構収容ケージ
46 合成樹脂スリーブ成形型内にセットされる他の実施例による金属製弁機構収容ケージ
5 弁軸挿通孔を形成する合成樹脂製スリーブ
51 合成樹脂製スリーブのフランジ
6 弁軸挿通体を形成する合成樹脂製スリーブ
61 合成樹脂製スリーブ端部の着合部
7 弁軸挿通孔を形成する合成樹脂製スリーブ
71 合成樹脂製スリーブ2次側端部のフランジ
8 弁軸挿通体を形成する合成樹脂製スリーブ
81 合成樹脂製スリーブ端部の着合部