(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
負の温度係数(NTC)を持つ第一のNTCサーミスタ素子と第一の電流ヒューズ素子とが直列に接続され、その節点から分岐して、第二のNTCサーミスタ素子と第二の電流ヒューズ素子の直列回路が接続され、以降同様に繰り返され、第(n-1)のNTCサーミスタ素子と第(n-1)の電流ヒューズ素子とが直列に接続され、その節点から分岐して第nのNTCサーミスタ素子と第nの電流ヒューズ素子の直列回路が接続されている回路を含み、全体に印加される電圧をVとし、
第mのNTCサースタ素子は所定温度Tcm以下の低い温度で抵抗値Rntmlを有し、Tcmより高い温度で抵抗値Rntmhの抵抗値を有する場合、第mの電流ヒューズ素子の抵抗値Rfmは、
Rfm < Rnt(m+1)h+ Rf(m+1)||{Rnt(m+2)h + Rf(m+2)||{Rnt(m+3)h+ Rf(m+3)||…||{Rntnh + Rfn}…}}
< Rnt(m+1)l + Rf(m+1)||{Rnt(m+2)l+ Rf(m+2)||{Rnt(m+3)l + Rf(m+3)||…||{Rntnl+ Rfn}…}}
の関係を有する温度履歴記憶装置。
ここでmは1≦m≦nであり、また記号:|| は並列接続の合成抵抗を示す。この温度履歴記憶装置において、第1乃至第nの電流ヒューズ素子の一部または全てはスローブローヒューズ素子の特徴を有し、第1乃至第nの電流ヒューズ素子は定格電流Ir1= Ir2 = … = Irn = Irで、溶断時間tr1 <tr2 < … < trm を有する電流ヒューズ素子である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、屋外で用いる車両の環境下においては、長期間にわたって汚れなどが付着する為、色保持機能を維持することは困難であり、実際には車両などには用いることは難しかった。
【0007】
特許文献2および特許文献3においては、詳細な温度履歴データが取得可能であるが、システムが複雑で高価なものとなり、用途や設置場所は制限されてしまう。故障原因の調査として測定対象の部位が所定の温度以上に達したか否かの温度履歴を判断する為には、より簡便な方式が望まれていた。
【0008】
特許文献4においては、前記電流ヒューズ素子は負荷装置の保護を目的とするためその定格電流は前記負荷装置に依存し、本願に記載したNTCサーミスタ素子の抵抗値との関係については開示されていない。
【0009】
本発明は、測定対象部位が、所定の温度を超える温度履歴を経たか否かを簡単に判定可能とすることを目的とする。また、温度履歴記憶装置の動作時における消費電力の低減を実現させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一観点によれば、電流ヒューズ素子(F
1)と負の温度係数(NTC)を持つNTCサーミスタ素子(NT
1)との直列回路を含み、前記直列回路に印加される電圧をVとし、前記NTCサーミスタ素子(NT
1)は、所定温度T
c以下の低い温度で抵抗値R
ntlを、前記所定温度T
cより高い温度で抵抗値R
nthを有し、電流ヒューズ素子(F
1)の内部抵抗値をR
f1とした時、前記電流ヒューズ素子(F
1)の定格電流I
rは、V / (R
f1 + R
ntl) < I
r < V / (R
f1+ R
nth)であることを特徴とする温度履歴記憶装置が提供される。
【0011】
この温度履歴記憶装置において、電流ヒューズ素子の第一の端子または第二の端子の間の抵抗が初期値よりも大きくなっていることにより、測定部位の温度履歴が所定温度T
cよりも高い温度を経たことを判断する。
【0012】
本発明は、上記に記載の直列回路が複数並列に接続され、それぞれの直列回路の前記NTCサーミスタ素子が、異なるT
cを有していることを特徴とする温度履歴記憶装置である。
【0013】
V / (R
fm + R
ntml) < I
rm < V / (R
fm + R
ntmh)
mは正の整数である。
【0014】
そして、温度履歴記憶装置において、n個の直列回路に含まれる電流ヒューズ素子の端子間の抵抗値を測定することにより、測定部位の温度履歴が所定温度T
cmよりも高い温度で、且つT
c(m+1)よりも低い温度を経たことを判断する。
【0015】
また、本発明は、上記に記載の直列回路が複数並列に接続され、それぞれの直列回路の前記電流ヒューズ素子が、異なる溶断時間t
rmを有していることを特徴とする温度履歴記憶装置である。
【0016】
V / (R
fm + R
ntml) < I
rm < V / (R
fm + R
ntmh)
mは正の整数である。
【0017】
そして、温度履歴記憶装置において、n個の直列回路に含まれる電流ヒューズ素子の端子間の抵抗値を測定することにより、測定部位の温度履歴が溶断時間t
rmより長く、且つt
r(m+1)より短い期間、所定温度T
cmよりも高い温度を経たことを判断する。
【0018】
また、本発明は、負の温度係数(NTC)を持つ第一のNTCサーミスタ素子と第一の電流ヒューズ素子とが直列に接続され、その節点から分岐して第二のNTCサーミスタ素子と第二の電流ヒューズ素子の直列回路が接続され、以降同様に繰り返され、第(n-1)のNTCサーミスタ素子と第(n-1)の電流ヒューズ素子とが直列に接続され、その節点から分岐して第nのNTCサーミスタ素子と第nの電流ヒューズ素子の直列回路が接続されている回路を含み、全体に印加される電圧をVとし、前記NTCサースタ素子は所定温度T
cm以下の低い温度で抵抗値R
ntmlを有し、T
cmより高い温度で抵抗値R
ntmhの抵抗値を有する場合、第mの電流ヒューズ素子の抵抗値R
fmは、R
fm< R
nt(m+1)h + R
f(m+1)||{ R
nt(m+2)h + R
f(m+2)||{ R
nt(m+3)h + R
f(m+3)||…||{ R
ntnh + R
fn}…}}< R
nt(m+1)l + R
f(m+1)||{R
nt(m+2)l + R
f(m+2)||{R
nt(m+3)l + R
f(m+3)||…||{R
ntnl + R
fn}…}}の関係を有する温度履歴記憶装置である。
【0019】
ここでmは1≦m≦nであり、また記号:||は並列接続の合成抵抗を示す。この温度履歴記憶装置において、第1乃至第nの電流ヒューズ素子の一部または全てはスローブローヒューズの特徴を有し、第1乃至第nの電流ヒューズ素子は定格電流I
r1 = I
r2 = … = I
rn = I
rで、溶断時間t
r1 <t
r2 < … < t
rm を有する電流ヒューズ素子である。
【0020】
この温度履歴記憶装置において、第1乃至第mの電流ヒューズ素子の各々の第一の端子または第二の端子のいずれか、もしくは両方を前記温度履歴記憶装置から電気的に切り離し、前記第1乃至第mの電流ヒューズ素子の各々の第一の端子と第二の端子の間の抵抗が初期値よりも大きくなっていることにより、測定部位の温度履歴が所定温度T
cmよりも高い温度を、少なくてもt
r1 <t
r2 < … < t
rmの期間を経たことを判断する温度履歴判定方法である。このNTCサーミスタ素子は、所定温度T
cmにおいて抵抗値が急峻に変化するCTR(Critical Temperature Resistor)特性を有するサーミスタ素子である。
【0021】
また、この温度履歴装置は、前記NTCサーミスタ素子が異なるT
cを有していることを特徴とする温度履歴記憶装置である。例えば、T
cm< T
c< T
c(m+1)とした場合、前記第1乃至第mの電流ヒューズ素子の各々の第一の端子と第二の端子の間の抵抗が初期値よりも大きくなっていることにより、測定部位の温度履歴が所定温度T
cmよりも高く、且つT
c(m+1)よりも低い温度を経たことを判断する。
【0022】
前記NTCサーミスタ素子は、酸化バナジウムを主たる成分として形成されることを特徴とする。
例えば、V
2O
5を還元する度合いにより、
図2に示すように、その特性を調整することができる。または、バナジウムまたは酸化バナジウムをターゲットとしてスパッタ成膜する際に、雰囲気ガス中の酸素濃度を調整しても、その特性を調整した薄膜を得ることができる。
【0023】
前記電流ヒューズ素子の両端間の電圧を測定するための電圧測定端子を有することを特徴とする。
前記温度履歴記憶装置は、温度履歴駆動時に、間欠的に前記電圧Vを印加する駆動回路を有することを特徴とする。
【0024】
前記温度履歴記憶装置は、温度履歴駆動時に、間欠的に前記電圧Vを印加する駆動回路を有し、前記駆動回路は、前記直列回路に保護抵抗として抵抗体と直列に接続した温度履歴記憶装置に並列に容量C
sを有するキャパシタCを接続し、前記直列回路の一方の電極は接地電位に接続され、他方の電極はインバータが複数段接続されたインバータ回路の入力に接続され、前記インバータ回路の出力は、前記一方の電極と電源との間に設けられたトランジスタのゲートに接続され、前記トランジスタのソースおよびドレイン電極の一方は前記電源電圧に接続され、他の一方は前記他方の電極に接続されていることを特徴とする。ここで前記インバータ回路が奇数段の場合は、前記トランジスタはn型であり、前記インバータ回路が偶数段の場合は、前記トランジスタはp型である。
【0025】
前記NTCサーミスタ素子に代えて、所定の温度T
c以下で非導通であり、T
cより高い温度において導通状態となるバイメタルによるスイッチに用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、測定対象部位が所定の温度を超える温度履歴を経たか否かを簡単に判定可能とすることができる。
また、温度履歴記憶装置の動作時における消費電力の低減を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態による温度履歴記憶装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
(第1の実施の形態)
図1Aは、本実施の形態による温度履歴記憶装置の一構成例を示す回路図である。
図1Aに示すように、本実施の形態による温度履歴記憶装置1は、電流ヒューズ素子(F
1)と負の温度係数を持つNTCサーミスタ素子(NT
1)の直列回路を含み、少なくとも、NTCサーミスタ素子(NT
1)が測定部位付近に設置されている。また必要に応じて、抵抗値Rを有する保護抵抗R
0を前記直列回路に直列に接続しても良い。
図1Aを用いて温度履歴記憶装置1の動作について説明する。
【0030】
電流ヒューズ素子(F
1)は定格電流I
rおよび抵抗値R
f1を有している。またNTCサーミスタ素子(NT
1)は所定温度T
c以下の低い温度で抵抗値R
ntl、T
cより高い温度で抵抗値R
nthの抵抗値を有している。電流ヒューズ素子(F
1)およびNTCサーミスタ素子(NT
1)の直列回路に電圧Vが印加されるとき、直列回路に流れる電流I
1は、T
c以下の低い温度ではI
1 =V/(R+R
f1+R
ntl)となる。この値は電流ヒューズ素子(F
1)の定格電流I
rより小さな値になるように設定しておくことにより、電流ヒューズ素子(F
1)の溶断は発生しない。
【0031】
測定部位の温度が上昇し、T
cより高い温度になった場合には、直列抵抗に流れる電流I
2は、I
2=V/( R+R
f1+R
nth)となる。NTCサーミスタ素子(NT
1)における抵抗値はR
ntl>R
nthの関係があるため、I
1<I
2となる。I
2が電流ヒューズ素子(F
1)の定格電流I
rより大きな値になるように設定しておくことにより、電流ヒューズ(F
1)素子の溶断が発生する。その後、測定部位が所定温度T
cよりも低くなっても電流ヒューズ素子(F
1)は溶断(切断)したままで保持される。
【0032】
すなわち、本実施の形態の温度履歴記憶装置では、定格電流I
rに関して、以下の(1)式の関係にある。
【0033】
V / (R + R
f + R
ntl) < I
r < V / (R + R
f + R
nth) (1)
ここで保護抵抗R
0が不要な場合には、上記(1)式においてR=0とすればよい。
【0034】
故障解析などにより当該測定部位の温度履歴を調査する場合には、電流ヒューズ素子(F
1)の両端の第一の端子と第二の端子との間の抵抗値から、溶断の有無を確認することができる。
【0035】
本実施の形態の場合は、電流ヒューズ素子(F
1)の両端の第一の端子や第二の端子を温度履歴装置から外す必要がなく、簡便に電流ヒューズ素子(F
1)の溶断の有無を確認できる。以上の方法により測定部位の温度履歴が、所定温度T
cを超えたか否かを判断することが可能となる。
【0036】
本実施の形態においては、NTCサーミスタ素子(NT
1)の抵抗値変化が起こる温度T
cをはんだ付け等の実装温度より低い温度に設定することが可能であり、従来の温度ヒューズ素子を使用した場合の技術のように実装温度による制約を受けない。
【0037】
また、NTCサーミスタ素子(NT
1)は、所定の温度T
cにおいて抵抗値が急峻に変化するCTR(Critical Temperature Resistor)特性を有するNTCサーミスタ素子であることがより好ましい。
【0038】
図2は温度と電気抵抗の関係を示す図であり、CTR特性を有するNTCサーミスタ素子の特性の一例を示す図である。
図2に示すような特性は、例えばV
2O
5を還元する度合いにより、その特性(T
cや抵抗値)を調整することができる。または、バナジウムまたは酸化バナジウムをターゲットとしてスパッタ成膜する際に、雰囲気ガス中の酸素濃度を調整することで、その特性を調整した薄膜を得ることもできる。
【0039】
測定部位の温度Tが所定の温度T
c以下の場合は、NTCサーミスタ素子の抵抗値が高いため温度履歴記憶装置1の直列回路に流れる電流は少なく、一方、TがT
cより高い温度になった場合にCTRサーミスタ素子の抵抗値が小さくなるため、温度履歴記憶装置1の直列回路に流れる電流量は増加し、電流ヒューズ素子(F
1)の溶断が発生する。その後、測定部位が所定温度T
Cよりも低くなっても電流ヒューズ素子(F
1)は溶断したままで保持される。
【0040】
図1Bは、
図1Aに示す温度履歴記憶装置の構造の一例を示す図である。
図1B(a)に示すように、温度履歴記憶装置は、絶縁性の基板11、または導電性の基板の少なくとも片側の面上に絶縁膜が堆積している基板11上に形成する。
【0041】
図1B(b)の(A)- (A´)断面構造で示すように、電流ヒューズ素子(F
1)を形成するためには、絶縁性基板、または絶縁膜が堆積されている基板11上にヒューズおよび配線層51を堆積する。
図1B(c)の平面図で示すように、電流ヒューズ素子(F
1)は、例えばCu膜のパターンが途中でくびれた形状をしている。
【0042】
図1B(d)の(B)- (B´)断面構造で示すように、NTCサーミスタ素子(NT
1)用のNT膜71には、下部電極81と上部電極91とにより、膜厚方向に電流が流れる構造とする。これによりヒューズの抵抗値(例えば1Ω程度)に対し、一般に比抵抗の高いNTC素子の抵抗値を0.1Ω〜10Ω程度にすることができる。ここでは、抵抗膜61を用いた保護抵抗素子R
0も同じ基板11上に形成されている。
図1B(e)の(B)- (B´)断面構造で示すように、下部電極81上の一部に配線層51が形成されていても良い。
【0043】
このように、
図1Aに示す温度履歴記憶装置は、基板11上に集積化することが簡単にできる。
【0044】
NCTサーミスタ素子は、
図2に実線で示すような温度−抵抗率特性を有する(出典:「温度センサ」二木久夫、村上孝一、日刊工業新聞社)。すなわち、所定の温度T
cにおいて抵抗値が大きく変化(温度上昇により抵抗値が急激に低くなる)するCTR(Critical Temperature Resistor)特性を有する。
【0045】
図2の例では、60℃以下の温度での電気抵抗値に対して、70℃以上では2桁以上電気抵抗値が小さくなる特性を有している。すなわち、
図1Aに流れる電流は2桁以上変化することになり、電流ヒューズ素子の定格電流を適切に設定することにより、所定温度より高い温度域において容易に溶断させることが可能となる。CTR特性を有するサーミスタ素子は温度に対して急峻に抵抗値変化が起きるため、測定部位の温度履歴を高い精度で記録することができる。
【0046】
図1Aにおいて、後から電流ヒューズ素子(F
1)の両端間の抵抗値を抵抗計(接続を破線で示す。)などで計測することで、電流ヒューズ素子(F
1)が切れているかどうかを判定することができ、従って、NTCサーミスタ素子(NT
1)が、T
Cより高い温度履歴を受けたかどうかを判定することが容易にできる。
【0047】
図3は、その他の測定方法の一例を示す図である。
図3(a)に示すように、電流ヒューズ素子(F
1)間において、基板11が、電流ヒューズ素子(F
1)の両端で切断するように、コの字状の領域11yが基板11から抜けるようにしても良い(
図3(b))。抜けた残りの基板11xに、
図3(c)に示すように、コの字状の領域11yと同じ形状の測定用基板11zを挿入して、電流ヒューズ素子(F
1)間の抵抗値を測定するようにすると便利である。この場合には、測定用基板11zには、抵抗計の端子が電流ヒューズ素子(F
1)の両端にそれぞれ接続されていて抵抗値を測定することができる。
【0048】
以上の方法により、本実施の形態による温度履歴記憶装置を用いると、測定部位の温度履歴が所定温度T
cを超えたか否かを簡単な構成の装置で判断することが可能となる。
【0049】
本実施の形態によれば、NTCサーミスタ素子(NT
1)の抵抗値変化が起こる温度T
cをはんだ付け等の実装温度より低い温度設定にすることが可能であり、従来の温度ヒューズを使用した場合の実装温度におけるような制約を受けない。
【0050】
また、本実施の形態におけるNTCサーミスタ素子を、バイメタルによるスイッチに置換えることも可能である。すなわち、所定の温度T
c以下で非導通し、T
cより高い温度において導通状態となるバイメタルを電流ヒューズ素子(F
1)と並列に接続しておくことにより、NTCサーミスタ素子と同様の効果を得ることが可能である。その他、NTCサーミスタ素子、ヒューズと同様な特性を有する素子を任意に組み合わせて利用することができることは言うまでもない。
【0051】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態による温度履歴記憶装置について説明する。本実施の形態による温度履歴記憶装置は、第1の実施の形態による温度履歴記憶装置1の電流ヒューズ素子(F
1)とNTCサーミスタ素子(NT
1)の直列回路に接続して温度履歴記憶装置の消費電力の低減を行う駆動回路を有しており、その詳細について以下に説明する。
【0052】
図4Aに示すように、本実施の形態による駆動回路付き温度履歴記憶装置は、電流ヒューズ素子(F
1)とNTCサーミスタ素子(NT
1)の直列回路を含み、この直列回路に必要に応じて保護抵抗として抵抗値Rを有する抵抗体(R
0)と直列に接続した温度履歴記憶装置(例えば、
図1Aに示す回路)に、並列に容量C
sを有するキャパシタCを接続し、直列回路の一方の電極Gは接地電位に接続され、他方の電極Nはインバータが奇数段(nが奇数)接続されたインバータ回路INV21の入力に接続されている。インバータ回路21の出力は、電極(N)と電源(V)間に設けられたn型トランジスタT
rのゲートに接続され、n型トランジスタT
rのソースおよびドレイン電極の一方は電源電圧Vに接続され、他の一方は前記電極Nに接続されている。
【0053】
以下に
図4Aの回路の動作について説明する。
まずn型トランジスタT
rがオン状態(通電状態)である場合を考える。この場合、n型トランジスタ T
rを経由して温度履歴記憶装置(保護抵抗R
0、および電流ヒューズ(F
1)とNTCサーミスタ素子(NT
1)の直列回路)1には電圧が印加される。
【0054】
ここで、測定部位の温度が所定の温度T
cよりも低ければ、NTCサーミスタ素子(NT
1)は高抵抗状態であるため、保護抵抗(R
0)、NTCサーミスタ素子(NT
1)、および電流ヒューズ素子(F
1)を流れる電流は小さく、電流ヒューズ素子(F
1)は溶断しない。同時に、温度履歴記憶装置1に並列に接続されたキャパシタCにも電圧が印加されキャパシタCが充電される。キャパシタCの充電により電極Nの電位V
nがインバータINV1の論理反転の閾値V
thを上回ると、インバータINV1の入力はHigh状態と認識される。そして、インバータにより論理は反転し、n段後(nは奇数)のインバータINVnの出力はLow状態となる。
【0055】
このインバータINV
nの出力は、n型トランジスタT
rのゲートに接続されているため、T
rはオフ状態(略非通電)となり、電源Vと電極Nとは略遮断状態となる。ここで、T
rがオフ状態になると、キャパシタCに充電されていた電荷は、温度履歴記憶装置1を通じで放電する。この時も、測定部位の温度が所定の温度T
cよりも低ければ、放電電流は小さく、電流ヒューズ素子(F
1)は溶断しない。
【0056】
電極Nの電位V
nは、保護抵抗R
0、NTCサーミスタ素子(NT
1)、電流ヒューズ素子(F
1)の抵抗値、およびキャパシタCの容量C
sを用いると、
図4Bに示すように、Exp { -1 / ((R + R
f + R
ntl)*C
s)} に比例し、L1に沿って、時間t
1からt
2まで低下する。キャパシタCの放電により電極Nの電位V
nがインバータINV1の論理反転の閾値V
thを下回ると、インバータINV1の入力はLow状態と認識され、奇数段後のインバータINV
nの出力はHigh状態となる。これによりT
rはオン状態となり、電源Vと電極Nとは略導通状態となる。
以下、この動作を繰り返す。
【0057】
この動作により、電極Nの電位V
nはインバータINV1の論理反転の閾値V
th付近において時間軸に沿ってキャパシタCの充放電に伴う電位変動をする(
図4B:V
thL〜V
thH)。これにより、電源Vからは、キャパシタCの充放電に伴う電荷のみを間欠的に供給すればよく、従来に比べて低い消費電力で動作が可能となる。
【0058】
V
nの電位変動の幅(V
thL〜V
thH)は、
図4Cに示すインバータINV1の遷移領域の幅ΔV
thに関係し、更にこれはインバータINVを構成するn型およびp型のトランジスタの特性に起因している。トランジスタのオフ状態からオン状態への立ち上がり特性が急峻、すなわち閾値電圧下におけるSubthreshold swing(S値)が小さければΔV
thは小さく、S値が大きければΔV
thは大きくなる。
【0059】
インバータINVを構成するn型およびp型のトランジスタのチャネル幅は、入力段側のインバータ(INV
1)では小さく、出力段側に向かって徐々に大きくし、n番目の最終段のインバータ(INV
n)の出力電圧が、インバータの電源電圧V
ddおよびV
ssと略同等の振幅を有することが望ましい。より具体的には、トランジスタのチャネル幅を2倍から3倍程度ずつ大きくすると良い。そして、実質的にはインバータの段数は3段以上であり、特に、n=5またはn=7程度が好適である。電極Nの電位は、
図4Bに示したようにV
thLからV
thHの間を変動する。
【0060】
温度履歴記憶装置1が動作状態、すなわち測定部位の温度が所定温度T
cより高くなった場合には、NTCサーミスタ素子(NT
1)の抵抗はR
nthとなり、電流ヒューズ素子(F
1)を溶断させる状態を保持するためには、電圧V
thLと電流ヒューズ素子の定格電流I
rに対して次式の関係が成り立つようにすれば良い。
I
r ≦ I
f2 = V
thL / { R + R
f + R
nth} (2)
【0061】
同時に、測定部位の温度が所定温度T
cより低い場合に電流ヒューズ素子(F
1)が溶断しない状態を保持するためには、電流ヒューズ素子の定格電流I
rに対して次式の関係が成り立つよう設計する。
I
r > I
f1 = V
thL / { R + R
f + R
ntl} (3)
これにより、電極Nの電圧がV
thL以上であれば常に測定部位の温度をモニタすることになる。
【0062】
なお、電極Nの電位がV
thHになった時のみ、前記温度履歴記憶装置を動作状態にすることも可能である。この場合には、以下の2つの式が成り立つように設計すればよい。
I
r ≦ I
f2 = V
thH / { R + R
f + R
nth} (4)
I
r > I
f1 = V
thH / { R + R
f + R
ntl} (5)
電位変動の周期がTの場合、1秒間に1/T回のみ間欠的に測定部位の温度をモニタすることになり、消費電力を一層低減することが可能となる。
【0063】
これらの応用として、V
thLとV
thHの間に温度履歴記憶装置1を動作状態の閾値を設定することも可能である。
【0064】
以上のように、測定部位の温度履歴を連続的又は間欠的にモニタし、所定温度T
cを超えたか否かを判断することが可能となる。本実施の形態によれば、外部からの制御信号等は必要なく、簡易な駆動回路によって前度履歴記憶装置を連続的又は間欠的に動作させ、当該装置の駆動の消費電力を低く抑えることができる。
【0065】
なお、本実施の形態では、T
rはn型トランジスタで、インバータINVは奇数段から構成される場合について説明したが、T
rがp型トランジスタで、インバータINVが偶数段から構成される場合についても同様の動作が可能である。
また、この駆動回路は、下記の第3、第4の実施の形態においても利用することができる。
【0066】
(第3の実施の形態)
図5は、本発明の第3の実施の形態による温度履歴装置の構成例を示す図である。第1の実施形態においては、1組の電流ヒューズ素子およびNTCサーミスタ素子の直列回路による温度履歴記憶回路について説明したが、本実施の形態では、第1の実施の形態における直列回路を並列に複数接続している。各直列回路のNTCサーミスタ素子は抵抗値変化の発生する温度が異なるものによって構成してもよい。そして、温度履歴を受けた後に、各電流ヒューズ素子の第1の端子または第2の端子のいずれかまたは両方を本温度履歴記憶装置から電気的に切り離し、各電流ヒューズ素子の第1の端子と第2の端子の間の抵抗値を測定することにより、複数の所定温度に対しての温度履歴を把握することが可能となる。
図5を例にして、直列回路をn段並列に接続した温度履歴記憶装置について説明する。
【0067】
NTCサーミスタ素子NT
1、NT
2、…NT
nは、各々T
c1、T
c2、…T
cnの温度において、抵抗値変化が発生する特性を有する。異なる特性を有するNTCサーミスタ素子は、
図6に示すように、例えばVO
2系の材料に、Ge、Si、Ni、Ag、W、Moなどの金属を加えることで、実現可能である(出典:「温度センサ」二木久夫、村上孝一、日刊工業新聞社)。
【0068】
また、この時の抵抗値は、
図1B(d)、(e)に示すNT膜71の膜厚や、上部電極91と下部電極81の平面視野における重なり面積によって調整することができる。
【0069】
m番目(1≦m≦n)の直列回路のNTCサーミスタ素子NT
mはT
cm以下の低い温度において抵抗値R
ntmlで、T
cmより高い温度において抵抗値R
ntmhである。各NTCサーミスタ素子NT
mに直列に接続されている電流ヒューズ素子F
mの定格電流はI
rm、抵抗値はR
fmである。
【0070】
これらにおいては、後述する第4の実施形態と同様に、V / (R
fm + R
ntml) < I
rm < V / (R
fm + R
ntmh) の関係を有する。本実施の形態においては、説明を分かり易くするために、T
c1 < T
c2 < …< T
cn の関係があるものとする。
【0071】
測定部位の温度Tが、T < T
c1 においては各直列回路のNT
mの抵抗値はR
ntmlと大きいため、電圧Vを印加した際に各直列回路に流れる電流はI
rmより小さく、電流ヒューズ素子F
mの溶断は発生しない。
【0072】
測定部位の温度Tが、T
cm < T < T
c(m+1)まで上昇した場合は、1番目からm番目の直列回路のNT
mの抵抗値がR
ntmhに小さくなることから、直列回路には多くの電流が流れる。この時の電流量を電流ヒューズ素子F
mの定格電流I
rm以上に設計しておくことにより、電流ヒューズ素子F
mの溶断が発生する。
【0073】
一方で、m+1番目からn番目の直列回路では、NT
(m+1)の抵抗値はR
nt(m+1)lのままで大きく、当該直列回路を流れる電流量を電流ヒューズ素子F
(m+1)の定格電流I
r(m+1)より小さいため、電流ヒューズ素子F
(m+1)の溶断は発生しない。
【0074】
測定部位の温度履歴を調査する際には、本温度履歴記憶装置に含まれる複数の電流ヒューズ素子F
mの端子間の抵抗を測定し溶断の有無を調査すればよい。これにより、測定部位の温度履歴が、所定温度T
cmよりも高い温度で、かつ、T
c(m+1)よりも低い温度を経たことを判断することが可能となる。
【0075】
また、本実施の形態においては、各直列回路の電流ヒューズ素子は溶断する時間が異なるものによって構成してもよい。そして、温度履歴を受けた後に、各電流ヒューズ素子の第1の端子または第2の端子のいずれかまたは両方を本温度履歴記憶装置から電気的に切り離し、各電流ヒューズ素子の第1の端子と第2の端子の間の抵抗値を測定することにより、測定部位が所定温度より高い温度に保持された時間の長さを把握することが可能となる。
【0076】
例えば、電流ヒューズ素子F
mの溶断時間t
rmについて、簡単のためt
r1 < t
r2 < … < t
rnの関係があるとすると、m番目までの電流ヒューズ素子F
mが非導通状態で、m+1番目までの電流ヒューズ素子F
m+1が導通状態であることを確認することによって、所定温度T
cmよりも高い温度状態であった時間は、t
rm 以上で、且つt
r(m+1)より短かったことが分かる。
【0077】
尚、第2実施形態と同様に、電流ヒューズ素子(F
1)とNTCサーミスタ素子(NT
1)の直列回路に接続した駆動回路を第3実施形態にも適用することにより消費電力の低減を実現させることもできる。
【0078】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図7は、本実施の形態による温度履歴記録装置の一構成例を示す図である。
【0079】
本実施の形態における温度履歴記憶装置では、第1の実施の形態と同様に負の温度係数(NTC)を持つ第一のNTCサーミスタ素子(NT
1)と第一の電流ヒューズ素子(F
1)とが直列に接続され、その節点から分岐して、第二のNTCサーミスタ素子と第二の電流ヒューズ素子の直列回路が接続されている。全体の回路に印加される電圧がVである。第一および第二のNTCサースタ素子は所定温度T
c以下の低い温度で各々抵抗値R
nt1lおよびR
nt2lを有し、T
cより高い温度で各々抵抗値R
nt1hおよびR
nt2hの抵抗値を有する場合、第一の電流ヒューズ素子(F
1)の抵抗値R
f1、および第二の電流ヒューズ素子(F
2)の抵抗値R
f2は、以下の関係を有する。
R
f1 < R
nt2h+R
f2 < R
nt2l+R
f2 (6)
【0080】
この温度履歴記憶装置において、少なくとも第一のNTCサーミスタ素子(NT
1)と第二のNTCサーミスタ素子(NT
2)を測定部位付近に設置し、定電圧源(V)の電圧を印加する。
以下に、本実施の形態による温度履歴記憶装置の動作について説明する。
【0081】
所定温度T
c以下の低い温度においては、第一のNTCサーミスタ素子(NT
1)を流れる電流I
nt1lおよび第一の電流ヒューズ素子(F
1)を流れる電流I
f1l、第二のNTCサーミスタ素子(NT
2)を流れる電流I
nt2lおよび第二の電流ヒューズ素子(F
2)を流れる電流I
f2lは各々以下のように表される。
【0085】
第一の電流ヒューズ素子(F
1)の定格電流をI
r1とすると、上記I
f1lがI
r1よりも小さな値になるように設定しておくことにより、第一の電流ヒューズ素子(F
1)の溶断は発生しない。定性的には、第一のNTCサーミスタ素子(NT
1)の抵抗値R
nt1lが十分大きな値であればよい。
【0086】
また第二の電流ヒューズ素子(F
2)の定格電流をI
r2とすると、上記式(6)の関係から、I
f2l < I
f1l の関係となることから、I
r1=I
r2であるならば、第二の電流ヒューズ素子(F
2)の溶断も発生しない。
【0087】
次に測定部位の温度が上昇し、T
cより高い温度になった場合について説明する。第一のNTCサーミスタ素子(NT
1)を流れる電流I
nt1hおよび第一の電流ヒューズ素子(F
1)を流れる電流I
f1h、第二のNTCサーミスタ素子(NT
2)を流れる電流I
nt2hおよび第二の電流ヒューズ素子(F
2)を流れる電流I
f2hは各々以下のように表される。
【0091】
第一の電流ヒューズ素子(F
1)の定格電流I
r1に対し、上記I
f1hが大きな値になるように設定しておくことにより、第一の電流ヒューズ素子(F
1)の溶断時間t
f1後に第一の電流ヒューズ素子(F
1)の溶断が発生する。定性的には、第一のNTCサーミスタ素子(NT
1)の抵抗値R
nt1hが十分小さな値であればよい。また、第一の電流ヒューズ素子(F
1)が溶断する前の、第二の電流ヒューズ素子(F
2)に流れる電流I
f2hは、式(6)の関係から、I
f2h < I
f1h の関係となり、I
r1=I
r2であるならば、第二の電流ヒューズ素子(F2)の溶断はこの時点では発生しない。
【0092】
その後、測定部位が所定温度T
cよりも低くなった場合には前記第一の電流ヒューズ素子(F
1)のみが溶断(切断)したままで保持される。
【0093】
また、一旦T
c以下の温度状態になった後に再び、T
cより高い温度になった場合について説明する。第一の電流ヒューズ(F
1)は溶断しているため、電流は第一のNTCサーミスタ素子(NT
1)を通って第二のNTCサーミスタ素子(NT
2)および第二の電流ヒューズ素子(F
2)に流れる。この時の電流を各々I
nt2hおよびI
f2hとすると、以下の通りとなる。
【0095】
ここでI
f2hは第二の電流ヒューズ素子(F
2)の定格電流I
r2に比べて大きくなるように設定する。定性的には第一のNTCサーミスタ素子(NT
1)の抵抗値R
nt1hおよび第二のNTCサーミスタ素子(NT
2)の抵抗値R
nt2hが十分小さな値であればよい。その結果、第二の電流ヒューズ素子(F
2)が有する溶断時間t
f2を経た後、第二の電流ヒューズ素子(F
2)は溶断(切断)する。すなわち、
図7に示す回路において、第一の電流ヒューズ素子(F
1)と第二の電流ヒューズ素子(F
2)が非導通状態であることを確認することによって、所定温度T
cより高い温度状態であった時間は、t
f1+t
f2以上であったことが分かる。
【0096】
一方、t
f2を経過する前に所定温度T
c以下の温度状態になった場合は、第二の電流ヒューズ素子(F
2)は溶断しない。すなわち第一の電流ヒューズ素子(F
1)が非導通状態で、且つ、第二の電流ヒューズ素子(F
2)が導通状態であることを確認することによって、所定温度T
cより高い温度状態であった時間は、t
f1以上で、且つt
f1+t
f2より短かったことが分かる。
【0097】
上記ではt
f1経過後に一旦T
c以下の温度に下がり、再度T
cより高い温度になった場合について説明したが、t
f1経過後も連続してT
cより高い温度状態が続いた場合についても同様である。
【0098】
故障解析などにより当該測定部位の温度履歴を調査する場合には、第一の電流ヒューズ素子(F
1)および第二の電流ヒューズ素子(F
2)の各々の第一の端子、または第二の端子のいずれか、または両方を温度履歴記憶装置から電気的に切り離し、各電流ヒューズ素子の第一の端子と第二の端子の間の抵抗値から溶断の有無を確認できる。
【0099】
尚、本実施の形態においては、電流ヒューズ素子のいずれか、または全てが溶断時間の比較的長いスローブローヒューズであることが望ましい。計測対象の温度変化の時間スケールに合わせた溶断時間を有するスローブローヒューズを用いることにより、的確に温度履歴の把握ができる。
【0100】
また、例えば第一の電流ヒューズ素子を通常の(即断)電流ヒューズとし、第二の電流ヒューズ素子にスローブローヒューズを用いるというような構成とすることも可能である。この場合、短時間でも所定の温度T
cを超える温度履歴があったか否かを第一の電流ヒューズ素子の溶断状態で判断し、T
cを超えた場合にはその継続時間について第二の電流ヒューズ素子の溶断状態により判断することが可能となる。
【0101】
また、本実施の形態において、NTCサーミスタ素子が異なるT
cを有していてもよい。例えば、NT
1のT
cはT
c1、NT
2のT
C がT
c2でT
C1<T
C2とした場合、第一乃至第二の電流ヒューズ素子の各々の第一の端子と第二の端子の間の抵抗が初期値よりも大きくなっていることにより、測定部位の温度履歴が所定温度T
c1よりも高く、且つT
c2よりも低い温度を経たことを判断することができる。
【0102】
(第5の実施の形態)
第4の本実施の形態では、第一と第二の電流ヒューズ素子およびNTCサーミスタ素子の接続について説明したが、第5の実施の形態においては、
図8に示すように、更に多くの第nまでの電流ヒューズ素子およびNTCサーミスタ素子を同様に接続することが可能である。すなわち、
図7の構成が、以降同様に繰り返され、第(n-1)のNTCサーミスタ素子と第(n-1)の電流ヒューズ素子とが直列に接続され、その節点から分岐して第nのNTCサーミスタ素子と第nの電流ヒューズ素子の直列回路が接続されている回路を含んでいる。
【0103】
1≦m≦nとした時に、第mの電流ヒューズ素子の抵抗値R
fmは以下の関係を有する。これは式(6)を拡張することで求められる。
【0104】
R
fm < R
nt(m+1)h + R
f(m+1)||{R
nt(m+2)h + R
f(m+2)||{R
nt(m+3)h + R
f(m+3)||…||{R
ntnh + R
fn}…}}
< R
nt(m+1)l + R
f(m+1)||{R
nt(m+2)l + R
f(m+2)||{R
nt(m+3)l + R
f(m+3)||…||{R
ntnl + R
fn}…}} (14)
ここで記号:||は並列接続の合成抵抗を示す。
【0105】
これにより、所定温度T
cを超えた時間の長さを広範囲に、詳細に把握する事が可能となる。例えば第一の電流ヒューズ素子(F
1)の溶断時間をt
f1とし、第nの電流ヒューズ素子(F
n)の溶断時間をt
fnとした時、
t
f1 < t
f2 < … < t
fn (15)
の関係を有し、更には適当な倍率関係を設定することにより、短い時間領域では細かく、長い時間領域では大まかに時間把握するといった設計が可能となる。また、特に前記NTCサーミスタ素子(NT)は、所定の温度T
cにおいて抵抗値が急峻に変化するCTR(Critical Temperature Resistor)特性を有するサーミスタ素子であることがより好ましい。
【0106】
また、異なる温度においてCTR特性を有するサーミスタ素子(
図6参照)を用いて、
図7に記載の回路を複数併用することにより、複数の所定温度T
cmに関する温度履歴を把握できる。
【0107】
以上の方法により測定部位の温度履歴が、所定温度T
cを超えたか否かを判断することが可能となり、更に所定温度T
cを超えた期間の長さも把握可能となる。
【0108】
本実施の形態においても、前記NTCサーミスタ素子(NT)の抵抗値変化が起こる温度T
cをはんだ付け等の実装温度より低い温度に設定することが可能であり、従来の温度ヒューズを使用した場合の実装温度による制約を受けないという利点がある。
【0109】
上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0110】
また、本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれるものである。
【0111】
本発明によれば、測定対象部位が所定の温度を超える温度履歴を経たか否かを簡単に判定可能とすることができる。
また、温度履歴記憶装置の動作時における消費電力の低減を実現させることができる。