(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明する。以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。なお、以下の実施の形態において、その構成要素(処理ステップ等も含む)は、特に明示した場合及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須ではない。
【0025】
また、以下の実施の形態における各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路その他のハードウェアとして実現しても良い。また、後述する各構成、機能、処理部、処理手段等は、コンピュータ上で実行されるプログラムとして実現しても良い。すなわち、ソフトウェアとして実現しても良い。各構成、機能、処理部、処理手段等を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、ICカード、SDカード、DVD等の記憶媒体に格納することができる。また、ハードウェアとソフトウェアとが協働して各構成要素を形成するのではなく、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成してもよい。
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一または関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0027】
<第一実施形態>
第一実施形態は、運搬車両としての無人ダンプ1が前進走行中及び走行準備中であるか、又は後退走行中であるかによって前方監視状態と後方監視状態とを切り替える態様である。加えて、前進走行中に検出範囲の位置をより前方に変位させる態様も含む。まず
図1及び
図2を参照して本実施形態に係る無人ダンプ及びライダーの取り付け構造について説明する。
図1は、無人ダンプの概略構成図である。
図2は、ライダーの取り付け構造及び検出範囲を前方・後方に切り替える動作状態を示す概略斜視図である。
【0028】
図1に示すように、無人ダンプ1は、車両本体1aと、車両本体1aの前側上方に設けられた運転席1bと、車両本体1a上に起伏可能に設けられた作業部としてのベッセル1cと、車両本体1aを走行可能に支持する左右の前輪1d及び後輪1eとを備える。前輪1dは従動輪であり、後輪1eは駆動輪である。前輪1dは2輪、後輪1eは4輪で構成される。そして、後輪は、車両本体1aの側面よりも車体幅方向に沿って外側に位置する。従って、無人ダンプ1の車体幅方向の最も外側に位置する最外端面は、後輪1eの側面である。
【0029】
運転席1bは、オペレータが運転席に乗り込む等するための略平板状の上側デッキ1f上に設置されている。上側デッキ1fは、前輪1dを覆うように、前輪1dの上端部より上方に設けられている。また、上側デッキ1fは、車両本体1aの前側に設けられ、車両本体1aの幅方向の全体に亘った大きさとされている。上側デッキ1fの下側の中央部には、建屋1gが設けられる。建屋1gは、左側面板1g_Lと、左側面板1g_Lと間隔をもって対面した右側面板1g_Rと、これら左,右の側面板1g_L,1g_Rの上端部間に架渡された上面板1g_Uとにより大略構成され、これら左,右の側面板1g_L,1g_Rと上面板1g_Uとによって囲まれた四角形の枠状に形成されている。
【0030】
そして、建屋1gの内部には、ラジエータ等の熱交換装置1hが収容される構成となっている。
【0031】
建屋1gの外側には、エアクリーナ1iがそれぞれ取り付けられている。各エアクリーナ1iは、上側デッキ1fの下側であって、上側デッキ1fと建屋1gとにより仕切られた角部に取り付けられている。各エアクリーナ1iには、空気中のダストを捕捉するための円筒状のフィルタエレメント1jが取り付けられている。各フィルタエレメント1jは、一端側を上側デッキ1fの前側の端部よりも前方に突出させた状態とされて各エアクリーナ1iに取り付けられている。
【0032】
上側デッキ1fの前部両端、即ち上側デッキ1fの車体幅方向の両端部の其々に、無人ダンプ1の周囲物体(被検出体)の相対位置を検出するための2台の周囲物体検出装置を備える。周囲情報取得装置は、車両の周辺空間のうちの一部を検出範囲とし、当該検出範囲内に存在する被検出体までの距離情報を取得するものである。本実施形態では、周囲情報取得装置としてライダー(LIDAR Sensor)を用いるが、可視光カメラでもよい。可視光カメラを用いる場合には周囲環境を撮像する撮像部の向きを、ライダーを用いる場合には、レーザを照射して散乱光を受光するレーザ照射・受光部(
図7参照)の向きを変えることで検出範囲の向きを変える。以下では、周囲情報取得装置をライダー2−1、2−2と称して説明する。
【0033】
周囲情報取得装置2−1、2−2は、それぞれの検出範囲が前向き又は後向きになるように鉛直軸まわりに回転する雲台3a−1、3b−1を介して上側デッキ1f取り付けられている。雲台3a−1、3b−1は、周囲情報取得装置2−1、2−2の検出範囲の向きを、無人ダンプ1の進行方向が前後のどちらであるかを示す前後情報に基づいて切り替える検出切替機構の構成要素である。前後情報は、無人ダンプ1に備えられた変速機(
図7参照)におけるギアの回転方向の設定情報又は車輪の回転方向を示す情報を用いてもよい。
【0034】
検出切替機構は各雲台3a−1、3a−2のそれぞれを独立又は連動して回転させる2台の回転駆動装置3b−1、3b−2と、回転駆動装置3b−1、3b−2の駆動制御を行う検出範囲制御装置3cとを更に含む(
図7参照)。検出範囲制御装置3cは、無人ダンプ1の走行方向、及び停車中にあっては走行を開始する方向を示す前後方向を用いて、回転駆動装置3b−1、3b−2を回転駆動する。以下では、周囲物体検出装置2−1、2−2を総称する際には周囲物体検出装置2、雲台3a−1、3a−2を総称する際に雲台3、回転駆動装置3b−1、3b−2を総称する際に回転駆動装置3と称する。
【0035】
周囲情報取得装置2は、無人ダンプ1が前進走行しながら前方路面の側方に位置する路肩を検出する際に、スキャン面40−1、40−2内に車両本体1の前面から突出して設けられている各フィルタエレメント1j、エアクリーナ1I、建屋1gが入り込まない位置に取り付けられている。また、周囲情報取得装置2は、前輪1dの上端部より高い位置であって、車両本体1aの走行方向側である前側左右に、等しい高さ位置で設置されている。具体的には、周囲情報取得装置2は、例えば前輪1dの下端部から4mほどの高さ位置に、水平高さを等しくして設置されている。
【0036】
次に
図2を参照して周囲情報取得装置の取り付け構造について説明する。周囲情報取得装置2−1、2−2の取り付け構造は同一であるので、周囲情報取得装置2−1について説明し、周囲情報取得装置2−2については重複説明を省略する。
【0037】
図2に示すように、上側デッキ1fの下部左側には、車両本体1aの最外端面(
図2では最外端面位置を符号Moで示す)、即ち後輪1eの側面よりも車体幅方向外側に突出した保持体3d−1を備える。運台3a−1は、保持体3d−1の開放端側に鉛直軸ax_vを回転軸として回転可能に取り付けられる。運台3a−1には周囲情報取得装置2−1が固定され、雲台3a−1の回転とともに周囲情報取得装置2−1も回転する。鉛直軸ax_vを回転軸として運台3aー1を後ろ方向に回転させると後方監視状態に変位し(
図2中段)、運台3aー1を前方向に回転させると前方監視状態に変位する(
図2下段)。
【0038】
周囲情報取得装置2−1は、レーザ光を所定の角度毎に照射して路面を扇状にスキャンして走査し、周囲物体(前方監視時は路肩、後方監視時は検出した路肩を車止めとして認識させる)に反射して生じた散乱光を受光する。
【0039】
周囲情報取得装置2−1は、実際にはレーザ光41の光軸を、照射方向を予め定めた所定の角度、例えば0.25度毎に徐々に変化させて360°走査する。所定角度毎に走査ながら照射し散乱光を受光するが、周囲情報取得装置2−1は、にレーザ光41を遮蔽する部材及びこの部材の一部に形成した開口部を備えることによりレーザの照射範囲及び散乱光の受光範囲(検出範囲)が限定される。以下、遮蔽部材のうちの開口部を検出窓2cという。検出窓2cの開口領域の大きさがレーザ光41の照射範囲、ひいては検出範囲を規定する。
【0040】
周囲情報取得装置2の取り付け構造の他例について
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は、傾斜軸を傾けて取り付けた状態を示す図であって、(a)は前方監視状態を、(b)は後方監視状態を示す。
図4は車軸と直交する水平軸を中心に回転させる取り付け構造を示し、(a)は前方監視状態を、(b)は後方監視状態を示す。
【0041】
図3に示すように、
図2の鉛直軸ax_vを水平面s_hに対して傾斜角度αで傾ける軸傾斜台3e−1を備えてもよい。そして、鉛直軸ax_vの回転角度を速度に応じて変えることで、後方(
図3の(a))から前方(
図3の(b))に切り替えることができる。また、軸傾斜台3e−1の高さ又は傾斜角度αを可変する機構(不図示)を備え、高さ又は傾斜角度αを速度に応じて変えることで、前方監視状態において、速度に応じて無人ダンプ1から前方に向けて離れた位置にスキャン面を位置させることができる。速度は、例えば無人ダンプ1に備えられた車輪(
図7参照)の回転数を走行速度情報として取得し、これを用いてもよい。
【0042】
また、
図4に示すように、水平面内において車軸方向ax_frに直交する水平軸ax_hを回転軸として周囲情報取得装置2を回転、すなわち俯仰方向に回転させて
図4の(a)の前方監視状態から、
図4の(b)の後方監視状態へと変異させてもよい。
図4の(a)の前方監視状態において、速度に応じて俯仰角度を調整するだけで、計測点の位置を、無人ダンプ1を基準として遠近に調整することができる。
【0043】
図5を参照して前方監視時の位置及び後方監視時における検出範囲の向きについて詳述する。
図5は、前方監視時の位置及び後方監視時における検出範囲の向きを示す図である。
図5の後方監視状態を示す図を用いてスキャン面について説明する。スキャン面s_opは、レーザ光41の光軸ax_Opを360°走査して形成される。光軸ax_Opの回転軸を走査軸という。
図1の符号40−1、40−2は、スキャン面s_opの一部領域である。
図5の符号v1は、スキャン面s_opの法線ベクトルを表す。法線ベクトルは走査軸に平行である。前方監視状態では、法線ベクトルv1が車軸方向ax_frに対して略平行かつ無人ダンプ1の前方を向くように、雲台3aを、鉛直軸ax_vを回転軸として回転させる。また、後方監視状態では、法線ベクトルv1が車軸方向ax_frに対して略垂直方向を向くように、鉛直軸ax_vを回転軸として雲台3aを回転させる。以下の説明では回転角度は、後方監視時の状態、即ちスキャン面s_opが車体本体1aの側面と平行な状態を基準として回転角度Θ=0で表し、前方監視時の回転角度Θを正の値で示す。
【0044】
次に、
図6を参照して、検出範囲の位置を変位させる際の回転軸(鉛直軸)の回転角度について説明する。
図6は、検出範囲の位置を変位させる際の回転軸(鉛直軸)の回転角度について説明する図であって、(a)は2段階切替状態を示し、(b)は速度に応じてリニアに切り替えた状態を示し、(c)は速度に応じてステップ状に切り替えた状態を示す。
【0045】
スキャン面s_opを、前方監視時位置又は後方監視時位置の二つの位置のどちらに選択的に変位させる場合、速度0にて切替を行うと停車時に頻繁に運台の向きが変更される現象が生じる。そこで、回転角度の変位条件にヒステリシス特性(不感帯)を持たせる。
図6の(a)にヒステリシス特性を含んだ回転角度Θの変位条件を示す。矢印方向に沿って速度及び回転角度Θは変位する。例えば後進状態(速度が負の値)から停車(速度0)を経て前進状態(速度が正の値)に遷移後、しばらくしてから回転角度Θは負の値から正の値に変位する。同様に、前進状態(速度が正の値)から停車(速度0)を経て後進状態(速度が負の値)に遷移後、しばらくしてから回転角度Θは正の値から負の値に変位する。また、後述するように、無人ダンプ1が備える変速機からの出力情報に基づいて、停止中に前方監視状態又は後方監視状態を選択してもよい。
【0046】
速度に応じて検出範囲の位置を変位させる場合について
図3の傾斜角度αを例に挙げて説明する。この場合も、回転角度の変位状態にヒステリシス特性を持たせる。傾斜角度αは水平面を基準とし、時計回りに正の値として定義する。この場合、速度が0未満(後退走行状態)の場合は、傾斜角度αは90°よりも大きく180°未満の値とし、速度が0以上(無人ダンプが停止状態及び前進準備・前進走行状態)では傾斜角度αは0°よりも大きく90°未満の値とする。このうち、前進走行時に、例えば車輪速情報を基にリニア(無段階)に傾斜角度αを調整する場合を
図6の(b)に図示し、例えば変速機のギア比の設定情報を基にステップ状に傾斜角度αを調整する場合を
図6の(c)に図示する。
【0047】
検出範囲の向きを前後に変位させる他例として、雲台3に周辺物体検出装置2の本体を直接設置せず、ミラーを設置してもよい。
【0048】
次に
図7を参照して、本実施形態に係る周囲物体検出システムの機能構成について説明する。
図7は、本実施形態に係る周囲物体検出システムの機能構成を示す機能ブロック図である。
【0049】
図7に示すように、本実施形態に係る周囲物体検出システム100は、周囲物体に対する車両本体1aの向き、及び周囲物体までの距離を計測するための周囲物体検出装置としての2台のライダー2−1、2−2と、ライダー2−1、2−2のそれぞれの検出範囲の向きを変位させる検出範囲切替機構3と、ライダー2−1、2−2からの測距結果を基に周囲物体の形状及び周囲物体に対する車体の向きを検出する周囲物体演算装置21と、を備える。
【0050】
また、車両本体1aには、車両本体1aの位置及び姿勢を計測するための自己位置計測装置22と、路面の路幅や対向車の存在により、車両本体1aの周囲物体からの距離や速度を変更させる車体運動制御装置23と、車体運動制御装置23の制御により駆動する車体駆動装置24と、を備えている。
【0051】
ライダー2−1は、既述のレーザ光を照射するとともに周囲物体(被検出体)に反射して生じた散乱光を受光するレーザ照射・受光部2a−1と、レーザ照射・受光部2a−1が受光した光の周波数を基に、ライダー2−1と周囲物体との距離、及び周囲物体に対するライダー2−1の接近方向(近づいているか遠ざかっているか)を検出する信号処理部2b−1とを含む。ライダー2−2は、ライダー2−1と同様の構成であるので説明を省略するが、レーザ照射・受光部2a−1、2a−2、及び信号処理部2b−1、2b−2を総称する際は、レーザ照射・受光部2a、及び信号処理部2bと記載する。
【0052】
信号処理部2b−1は、各レーザ照射・受光部2a−1の各照射角度において生じた散乱光を受光して測距処理を行う。信号処理部2b−1は、例えば0.25度の角度分解能を有し、30m離れた地点での計測点間の分解能が0.13mである。レーザ光が路面上で反射される点が路面を検出する際の計測点となる。
【0053】
上述の通り2台の雲台3a―1、3a―2のそれぞれと各レーザ照射・受光部2a−1、2a−2とは機械的に接続され、一体となって回転する。
【0054】
周囲物体演算装置21は、事前に計測して得られた路面の周囲の外部座標系(3次元実座標)内での周囲物体の位置情報や、周囲物体の形状情報(例えば周囲物体が路肩の場合にその直線状又は曲線状の形状情報)を含む周囲物体の参照情報を記憶する参照情報記憶部21aと、信号処理部2b−1、2b−2が生成した距離情報及び参照情報に含まれる周囲物体や無人ダンプ1の位置情報や形状情報を比較して、周囲物体に対する車両本体1の向き及び周囲物体までの距離とを計測する周囲物体演算部21bと、を含む。
【0055】
自己位置計測装置22は、車両本体1の車輪、例えば前輪1dの回転速度を計測するための車輪速情報取得部22aと、車両本体1aの運転席1bに設けられたハンドル(図示せず)の操舵角度を計測するための操舵角情報取得部22bと、車輪速情報取得部22aにて計測した回転速度結果及び操舵角情報取得部22bにて計測した操舵角結果に基づいて、車両本体1aの走行速度、前輪1dの角速度、地面に固定された座標系での車両本体1aの位置及び姿勢を算出するための自己位置演算部22cとを備える。
【0056】
車輪速情報取得部22aは、例えば前輪1dの回転速度を検出するための速度センサ等である。
【0057】
操舵角情報取得部22bは、ハンドルの操舵角を検出することができる変位センサ等である。
【0058】
自己位置計測装置22は、車両本体1aの自己位置を補正するための自己位置補正装置22dを更に備えている。自己位置補正装置22dは、車両本体1aの位置及び姿勢をより高精度に計測するためのものであり、例えば慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)や、GPS(Global Positioning System)等で構成されている。
【0059】
車輪速情報取得部22a、操舵角情報取得部22b及び自己位置補正装置22dは、自己位置演算部22cにそれぞれ接続されている。車輪速情報取得部22aが出力した車輪の回転方向を示す情報は、検出範囲制御装置3cに入力される。また、車輪の回転数を示す情報も検出範囲制御装置3cに入力されてもよい。この場合、回転数を示す情報は、走行速度情報として用いられる。更に操舵角情報取得部22bが取得した情報も検出範囲制御装置3cに入力されてもよい。この場合、検出範囲制御装置3cが操舵角情報を用いてレーザ照射・受光部2aを回転させ、車体幅方向に検出範囲を変異させてもよい。
【0060】
車体運動制御装置23は、車体駆動装置24の駆動制御を行うものであり、車両制御装置23a及び走行路の経路やその路面Aの路幅、経路属性(走行路、放土場など)等の地図情報が記憶された地図情報記憶部23bと、を含む。
【0061】
上記地図情報は、走行路上の各地点(ノード)及び隣接するノード間を連結するリンクの座標に加え、走行路の側部に設けられている路肩形状等の路肩情報も記憶されている。
【0062】
車体駆動装置24は、車両本体1aの走行速度を低下させたり停止させたりするための制動装置24aと、無人ダンプ1の後輪1eに対する回転トルク指令値を制限するための駆動トルク制限装置24bと、車両本体1aの路肩Bからの距離を変更するための操舵制御装置24cと、車輪の回転速度及び方向(前進又は後退)とトルク変換を行う変速機24dと、を備える。
【0063】
車両制御装置23aには、地図情報記憶部23bに記憶されている地図情報、自己位置演算部22cにて演算された自己位置情報、及び周囲物体演算部21bにて計測された路肩情報が入力される。車両制御装置23aは、制動装置24a、駆動トルク制動装置24b、操舵制御装置24c、及び変速機24dのそれぞれに接続されている。そして、車両制御装置23aは、地図情報記憶部23bに記憶された地図情報に基づき、車両本体1aの路肩Bまでの距離や走行速度を制限することを目的として、制動装置24aによる制動量、駆動トルク制限装置24bによる制限量、操舵制御装置23cによる制御量を算出し、それらの算出値を制動装置24a、駆動トルク制限装置24b、及び操舵制御装置23cにそれぞれ出力する。制動装置24a、駆動トルク制限装置24b、及び操舵制御装置24cは、入力された算出値を基に動作する。
【0064】
また、車両制御装置23aは、変速機24dに対して、車両の進行方向(前進/後退)や速度に応じたギアを設定する。変速機24dは車両制御装置23aから入力されたギアの設定情報を基に動作する。ギアの設定情報は、検出範囲制御装置3cに入力される。
【0065】
制動装置24aは、例えば後輪1eの回転を制動させるディスクブレーキ等の機械的構造のメカニカルブレーキである。
【0066】
駆動トルク制限装置24bは、例えば後輪1eの回転に対して電気的な抵抗を掛けて制動させる電気ブレーキ等のリターダブレーキである。
【0067】
操舵角制御装置24cは、車体の向きが走行路に沿うようにステアリング角度を変更する。
【0068】
変速機24dは、変速ギア(前進ギア及び後退ギアを含む)や推進軸を含んで構成され、歯車の組合せにより前進又は後退の選択、回転速度及びトルクの変換を行い、回転動力を動力源から他の装置に伝達する。
【0069】
図8を参照して本実施形態に係る周囲物体検出システムを搭載した無人ダンプの動作の流れを説明する。
図8は、本実施形態に係る周囲物体検出装置を搭載した無人ダンプの動作の流れを示すフローチャートである。
【0070】
無人ダンプ1のエンジンを始動すると(S801)、検出範囲制御装置3cは、変速機24dからギア設定情報を取得する。ギア設定情報が前進を示す場合(S802/Yes)、検出範囲制御装置3cは回転駆動装置3bを駆動して、レーザ照射・受光部2aの検出範囲が前方に向くように雲台3aを回転させる。これにより前方監視状態に移行する(S803)。
【0071】
ギア設定情報が後退を示す場合(S802/No)、検出範囲制御装置3cは回転駆動装置3bを駆動して、レーザ照射・受光部2aの検出範囲の向きが後方に向くように雲台3aを回転させる。これにより後方監視状態に移行する(S804)。前方監視状態及び後方監視状態における処理の詳細については後述する。
【0072】
無人ダンプ1が前進走行を開始すると(S805)、検出範囲制御装置3cは車輪速情報取得部22aから車輪の回転速度(車輪速度情報)を取得する。検出範囲制御装置3cは車輪速度情報を無人ダンプ1の走行速度情報として用い、回転駆動装置3bを駆動してレーザ照射・受光部2aの水平面に対する傾斜角度α(俯角)を速度に応じて調整する(S806)。無人ダンプ1が前進走行中(S807/No)はステップS806に戻り処理を繰り返す。
【0073】
無人ダンプ1が走行を停止し(S807/Yes)、エンジンが停止していない場合(S808/No)、ステップS802へ戻りギア設定情報を再取得し処理を繰り返す。
【0074】
エンジンが停止すると(S808/Yes)、処理を終了する。
【0075】
次に
図9及び
図10を参照して、前方監視状態における処理について説明する。
図9は、無人ダンプの前進走行状態を示す図である。
図10は、前方監視状態の処理を示す図である。
【0076】
図9に示すように、無人ダンプ1は、鉱山に予め設けられた走行路等の路面Aを自律して前進走行する。この前進走行中は前方監視状態となる。鉱山の路面Aの側部には、路面Aに沿って被検出体である路肩Bが設けられている。路肩Bは、少なくとも無人ダンプ1が走行する側、例えば走行方向左側に設けられ、所定の高さ寸法及び幅寸法を有する構造の盛土である。
【0077】
採掘物を積み込んだ無人ダンプ1が走行路を通り放土場付近に到達すると、
図10に示すように、崖下に設置された放土場Dsに対して後ろ向きに走行し(後退し)、車止めCの位置で停止し、放土する。この後退走行中は後方監視状態となる。なお、
図10では、無人ダンプ1は、直交座標系のx軸方向に後退する。また、車止めCは盛土で形成される。なお、周囲物体演算装置21は、車止めと路肩とが同一形状である場合、前方監視状態で認識した路肩形状体は路
肩と、後方監視状態で認識した路肩形状体は車止めと認識する。
【0078】
次いで、周囲物体検出システム100による周囲物体検出処理について、
図11から
図13を参照して説明する。
図11は、前方監視状態においてスキャン面を交差させた状態を示す図である。
図12は、前方監視状態での処理を示す図であり、(a)は計測点列の位置例を示し、(b)は路肩検出処理を示す。
図13は、後方監視状態での処理を示す図であり、(a)は計測点の位置例を示し、(b)は車止め検出処理を示す。
【0079】
図11は、前方監視状態におけるスキャン面40−1、40−2の位置の例を示す。本実施形態では、スキャン面40−1、40−2を点Gで交差させる。より詳しくは、
図12の(a)に示すように、無人ダンプ1のレーザ照射・受光部2a−1から照射されるレーザ光が路面Aと交わる点(計測点)をNであらわす。レーザ光を走査すると計測点はNi−1、Ni、Ni+1と位置がずれる。これらの計測点を結ぶ線を計測線L1−1で表す。また、路肩Bの斜面上に形成された計測点を結ぶ線を計測線L2−1で表す。同様に、レーザ照射・受光部2a−2から照射されるレーザ光が路面Aと交わる点(計測点)を結ぶ線を計測線L1−2、路肩B上の計測点を結ぶ線をL2−2で表す。
【0080】
周囲物体演算部21bは、路肩位置の検出に際し、
図12の(b)に示すように、計測線L1−1とL2−1の交点Pa、計測線にL1−2とL2−2の交点Pb(不図示)を求め、これらの交点Pa、Pbを結ぶことで路肩位置wを求める。
【0081】
図13は、無人ダンプ1の周囲物体検出システム100による後方検出を説明するための模式図である。
図13の(a)はダンプトラックの側面図であり、(b)はダンプトラックの上面図である。
図13の(a)、(b)は、無人ダンプ1が放土場の車止めCを検出しながら後退する様子を示す。
図13の(a)の点線矢印は、レーザ光が被検出体(車止め)に照射される状態を示し、距離Dは後輪1eの後端部から車止めCまでの距離を示す。
図13の(b)は車止めを検出する際に用いるパラメータを示すが、詳細は後述する。
【0082】
次に、前方及び後方監視処理の流れについて
図14及び
図15を参照して説明する。
図14は、前方監視状態での処理の流れを示すフローチャートである。
図15は、後方監視状態での処理の流れを示すフローチャートである。
【0083】
前方監視状態では、
図14に示すように、まず、自己位置演算部22cは、無人ダンプ1の現在位置と、地図情報記憶部23bに記録されている地図情報に含まれる経路属性とを比較し、現在位置が走行路であると判断すると(ステップS1401)、判断結果を示す情報が検出範囲制御装置3cに出力される。検出範囲制御装置3cは、その情報を基に回転駆動装置3bを制御して雲台3aをそれぞれ鉛直軸まわりに回転させて、検出範囲を前向きにする(S1402)。
【0084】
左右のレーザ照射・受光部2a−1、2a−2は路面A及び路肩Bを計測し、これら路面A及び路肩Bの測距データを取得する(S1403)。
【0085】
周囲物体演算部21bは、S1403にて取得した測距データに基づいて、
図11の(a)に示すように、各レーザ照射・受光部2a−1、2a−2によるスキャン面40−1、40−2と路面Aとが交差する各交線L1−1、L1−2を算出する(S1404)。
【0086】
更に周囲物体演算部21bは、ライダー2−1、2−2から取得した測距データ中の路肩Bの傾斜面B1上の測定点から、スキャン面40−1、40−2と路肩Bの傾斜面B1(
図11参照)との交線であるレーザスキャンラインL2−1、L2−2を算出する(S1405)。
【0087】
この後、周囲物体演算部21bは、S1404にて算出した交線L1−1、L1−2と、S1405にて算出したレーザスキャンラインL2−1、L2−2との交点を求める。これらの交点が、路肩計測点である路肩検出点P(Pa、Pb)に相当する(S1406)。すなわち、
図11の(b)に示すように、周囲物体演算部21bは、交線L1−1とレーザスキャンラインL2−1とが交わる点を路肩検出点Paとして求める。更に周囲物体演算部21bは、交線L1−2とレーザスキャンラインL2−2とが交わる点を、路肩検出点Pbとして求める。
【0088】
さらに、周囲物体演算部21bは、路肩検出点Pa、Pbを基に路肩位置wを求めるとともに、現在位置における路肩形状を参照情報記憶部21aに記憶された参照情報と比較して相対位置関係を求める。そして周囲物体演算部21bは、比較結果を基に、無人ダンプ1の路肩Bに対する向きαと、路肩Bまでの距離Dとを算出する(S1407)。算出結果は車両制御装置23aに出力される。
【0089】
一方、自己位置演算部22cは、車輪速情報取得部22aにて計測した回転速度結果と、操舵角情報取得部22bにて計測した操舵角結果とに基づき推定した自己位置に対し、自己位置補正装置22dからの情報に基づいて無人ダンプ1の走行速度、前輪1dの角速度、地面に固定された座標系での無人ダンプ1の位置及び姿勢を補正して自己位置推定を行う。推定結果は車両制御装置23aに出力される。車両制御装置23aは、推定結果とS1407にて算出された向きα及び距離Dとを比較し、これが等しいか判断する(S1408)。
【0090】
車両制御装置23aは、ステップS1408において自己位置演算部22cにて求めた向き及び距離が、ステップS1407において算出された向きα及び距離Dと等しい(S1408/Yes)と判断すると路肩検出処理が終了となる。一方、ステップS1408で否定と判断されると(S1408/No)、ステップS1407にて算出した向きα及び距離Dが、予め定めた所定の範囲内で連続的に変化しているか判断される(S1409)。
【0091】
ステップS1409において、車両制御装置23aがステップS1407により算出した向きα及び距離Dが所定の範囲内で連続的に変化していると判断すると(S1409/Yes)、ステップS1406にて求めた路肩検出点Pa、Pbの外部座標系での検出位置を周囲物体演算部21bにて算出し、この算出した情報を不図示の周囲物体記憶部に格納する(S1410)。一方、ステップS1409により、車両制御装置23aがステップS1407にて算出した向きα及び距離Dが所定の範囲内で連続的に変化しておらず不連続(No)と判断すると(S1409/No)、自己位置計測装置22での計測、すなわち自己位置演算部22cでの無人ダンプ1の位置及び姿勢の演算に異常が生じている可能性があるので、車両制御装置23aが制動装置24a及び駆動トルク制限装置24bを制御して無人ダンプ1の走行を停止、すなわち停車させ(S1411)、処理を終了する。
【0092】
次に、
図15を参照して車両後方の車止めを検出対象とした場合の周囲物体検出処理につい説明する。
【0093】
図15に示すように、自己位置演算部22cが算出した無人ダンプ1の現在位置において、地図情報記憶部23bに記録されている経路属性が放土場を示す場合(S1501/Yes)、検出範囲制御装置3cは、回転駆動装置3bを駆動制御して運台3aを回転させる。このときの回転方向は、左右のレーザ照射・受光部2a−1、2a−2の検出範囲が後方に向く向きである(S1502)。
【0094】
周囲物体演算装置21が車止めを検出すると(S1503/YES)、以下の処理を実行する。周囲物体演算部21bは、周囲情報取得装置2−1.2−2により取得した結果に基づき左右の車輪から車止めまでの距離DL、DR(
図12の(b))を算出し、さらに、DL、DRのうち小さいほうを無人ダンプ1までの距離Dとして得る(S1504)。
【0095】
また、周囲物体演算部21bは、車止めからみた無人ダンプ1の向きαを、ライダー2−1、2−2のレーザ照射面間の距離Lを用いて、次の式(1)で計算する(S1505)。
β=sin−1(DR−DL)/L・・・(1)
ただし、βは
図12の(b)において、反時計まわりを正とした。ここで、βは、車止めCの長手方向(水平方向)に垂直な面1Sと無人ダンプ1の左右の前輪1dを連結する車軸50Sに垂直な面2Sとがなす角度を示す運搬機械角度である。
【0096】
周囲物体演算部21bは、ステップS1504で得られた向きβが、ある閾値Kβ以上であるか否かを判別する(S1505)。そして、ステップS1504で得られた向きβが、ある閾値K
β以上の場合には(S1505/YES)、無人ダンプ1が車止めに対して斜めに後退していることを表しているため、車両制御装置23aは、無人ダンプ1の速度を制限する(S1506)。これにより、無人ダンプ1の向きを修正する時間的余裕が確保される。
【0097】
ステップS1505で得られた向きβが、ある閾値Kβよりも小さい場合には(S1505/NO)、周囲物体演算部21bは、ステップS1504で得られた距離Dがある閾値K
D以下であるか否かを判別する(S1507)。
【0098】
距離Dが、ある閾値K
D以下である場合(S1507/YES)、無人ダンプ1が車止めに対して接近していることを表しているため、車両制御装置23aは、無人ダンプ1の速度を制限する(ステップS1508)。これにより、無人ダンプ1を安全に停止できる。
【0099】
次に車両制御装置23aは、ステップS1504で得られた距離Dが目標距離k以下であるか否かを判別する(S1509)。ここで、目標距離kは閾値K
Dよりも小さい。無人ダンプ1がさらに車止めに近づき、ステップS1504で得られた距離Dが目標距離k以下となった場合(S1509/YES)、車両制御装置23aは、無人ダンプ1を停止させ(S1510)、処理を終了する。ステップS1507、ステップS1509で否定と判断された場合には、ステップS1504へ戻る。またステップS1501、ステップS1503で否定と判断された場合は、後方監視処理を終了する。
【0100】
次いで、周囲物体検出システム100による自律走行処理について、
図16を参照して説明する。
図16は、無人ダンプによる自律走行処理を示すフローチャートである。
【0101】
車両制御装置23aは、自己位置計測装置22から無人ダンプ1の自己位置情報を取得する(S1601)。次いで、車両制御装置23aは、地図情報記憶部23bに記憶させている地図情報を参照し、この地図情報中の路面Aの路幅情報と、S1601にて取得した自己位置情報とに基づいて、周囲物体に対する無人ダンプ1の向き、及び周囲物体までの距離を算出する(S1602)。
【0102】
この後、車両制御装置23aは、周囲物体に対する無人ダンプ1の向きα、及び無人ダンプ1から周囲物体までの距離Dに関する情報を取得する(S1603)。
【0103】
車両制御装置23aは、S1602にて取得した向き及び距離と、S1603にて取得した向きβと距離Dとを比較し、算出した向きβ及び距離Dが自己位置演算部22cにて演算した自己位置情報(向き及び距離)に等しいか判断する(S1604)。
【0104】
ステップS1604において、算出した向きβ及び距離Dが自己位置演算部22cにて演算した向き及び距離と異なると判断された場合は(S1604/No)、自己位置計測装置22での計測、すなわち自己位置演算部22cでの無人ダンプ1の位置及び姿勢の演算に異常が生じているとし、車両制御装置23aが制動装置24a及び駆動トルク制限装置24bを制御して無人ダンプ1を停車させる(S1605)。
【0105】
一方、ステップS1604において、算出した向きβ及び距離Dが自己位置演算部22cにて演算した向き及び距離と等しいと判断された場合は(S1604/Yes)、車両制御装置23aは地図情報記憶部23bに記憶されている地図情報を取得する(S1606)。
【0106】
そして、車両制御装置23aは、この取得した地図情報中の走行路の経路情報と、S1601にて取得した自己位置とを比較する。これら経路情報と自己位置とのずれに基づいて、車両制御装置23aは操舵制御装置24cや駆動トルク制限装置24b等を適宜制御して無人ダンプ1の走行位置を、予め定めた所定の走行位置に走行制御する(S1607)。
【0107】
上記の各処理に加え、雲台3aの故障をいち早く検出するため、駐機時や積み込み時、放土時、一時停止時など、無人ダンプ1が停車しており周囲環境を認識する必要がない間、雲台3aを回転させ、故障などによる動作不良を検出してもよい。
【0108】
以上により、上記第1実施形態に係る周囲物体検出システム100によれば、車両本体1aの前方に設置したライダー2−1、2−2のそれぞれの検出範囲の向きを前方又は後方に向けることにより、各ライダー2−1、2−2が前方監視及び後方監視を行うことができる。つまり、各レーザ照射・受光部が前方及び後方の双方を監視することができるので、低コストで前後監視を行うことができる。
【0109】
更に本実施形態では、車両本体1aの走行方向前の左右に二台のライダー2−1、2−2を設置し、これらのライダーで求めた測距情報を用いて車体の向き及び距離を計測するので、1台のライダーだけを用いる場合に比べ、周囲情報の複合的な考慮や相互補完が可能となり、計測精度を向上できる。その結果、周囲物体演算部21bによる路肩の検知の精度を向上でき、無人ダンプの自律走行をより適切かつ精度良くできる。
【0110】
ここで、
図17は、無人ダンプ1のライダー2−1、2−2の取り付け位置に伴う作用を示す図であり、(a)は前輪1dの高さ位置より低い位置にライダー2−1、2−2を取り付けた場合の状況を、(b)は前輪1dの高さ位置より高い位置にライダーを取り付けた場合の状況を示す。
【0111】
走行路が乾いた土の場合は、この走行路を無人ダンプ1が走行する際に、無人ダンプ1の前輪1dまたは後輪1eの回転によって、土埃Eが撒き上がり、
図17に示すように、対向車両Fが撒き上げた土埃Eが無人ダンプ1と路肩Bとの間に漂うおそれがある。この状況において、
図17の(a)に示すように、無人ダンプ1の下部にライダー2−1、2−2が設置されている場合には、ライダー2−1、2−2と路肩Bとの間に土埃Eが介在してしまうため、ライダー2−1、2−2が路肩Bまでの距離を正確に検出できないだけではなく、ライダー2−1、2−2の検出窓2cが土埃Eにて汚れてしまい、路肩Bまでの距離を検出できなくなるおそれがある。
【0112】
そこで、上記第1実施形態に係る無人ダンプ1においては、走行路の路面A上に舞い上がった土埃Eが、ライダー2−1、2−2の検出窓2cに付着する頻度を抑えつつ、舞い上がった土埃Eの上方から路肩Bまでの距離を検出できるように、ライダー2−1、2−2を無人ダンプ1の前輪1dの上端部よりも高い位置に設置している。この結果、対向車両Fのみならず、自車両または他車両の走行時に土埃Eが撒き上がった場合であっても、この撒き上がった土埃Eの上方からライダー2−1、2−2により路肩Bまでの距離を検出できるため、ライダー2−1、2−2による路肩検出をより確実にできる。また同時に、ライダー2−1、2−2の検出窓2cへの土埃Eの付着頻度を抑制できるため、検出精度の低下を抑制できる。
【0113】
さらに、設置位置が上側デッキ1fからのアクセスが容易な位置、すなわち上側デッキ1fの下側であるため、上側デッキ1fからライダー2−1、2−2を点検等でき、これらライダー2−1、2−2のメンテナンス性を確保している。また、2台のライダー2−1、2−2を等しい高さ位置に設置し、検出結果に対称性を持たせている。したがって、これらライダー2−1、2−2の高さ位置を異ならせる場合に比べ、路面A上での分解能の相違を無くすことができ、検出誤差を少なくできる。
【0114】
次に、
図18を参照して、ライダー2−1、2−2の後部に配置した比較例を説明する。
図18ライダー2−1、2−2を無人ダンプ1の後部に配置した比較例を示す説明図であって、(a)は、レーザ照射・受光部2a−1、2a−2を無人ダンプ1の後部に配置した状態を示す側面図であり、(b)は、土埃Eが撒きあがる状態を示す側面図である。
【0115】
無人ダンプ1の走行路面が乾いた土の場合、タイヤの回転によって土埃が撒きあがり、後退時のブレーキ操作や風向きなどの影響で土埃が無人ダンプ1の周囲に漂うことがある。また、他車両による放土作業によって、無人ダンプ1の後方に土埃が舞い上がることがある。その場合、
図18の(b)に示すように、無人ダンプ1の後方、例えばベッセルの下部にライダー2−3を設けると、自車両が巻き上げた土煙Eがライダー2−の検出面を汚してしまい、車止めCまでの距離を正しく測定できないことがある。
【0116】
これに対し、本発明の実施形態では、後輪から離れた無人ダンプ1の上側デッキ1fの下側にライダーを取り付ける。これにより、自車両が舞い上げた土埃がライダーの検出窓に付着する頻度を抑えることができる。
【0117】
<第二実施形態>
以下、
図19を参照して第二実施形態について説明する。
図19は、第二実施形態に係る無人ダンプ1のライダー2の検出範囲(スキャン面40−1、40−2)を示す概略平面図である。
【0118】
第二実施形態が前述した第一実施形態と異なるのは、第一実施形態は、ライダー2−1、2−2のスキャン面40−1、40−2は、放土場、走行路など、エリアが切り替わる時及び走行速度に応じてのみ雲台3a−1、3a−2を回転させるのに対し、第二実施形態は、それらに加えて操舵角度に応じても雲台3a−1、3a−2を回転させる点である。そのために第二実施形態は、
図7の機能構成図において、操舵角情報取得部22b及び検出範囲制御装置3cを電気的に接続し、操舵角情報取得部22bから検出範囲制御装置3cに対して操舵角情報が入力される。そして検出範囲制御装置3cは、操舵角情報に基づいて運台3a−1、3a−2を、鉛直軸を回転中心として回転させる。
【0119】
例えば、第二実施形態においては、
図19に示すように、建物60のために見通しが悪い交差点に近づくと、スキャン面40−1、40−2が建物60の角61の近傍を通り、かつ、スキャン面40−1、40−2が建物60で遮られないように、雲台3a−1、3a−2を回転させる。この結果、雲台を操舵角に応じて回転させない第一実施形態と比較して、交差車両70をより早く検出することができる。
【0120】
<第三実施形態>
以下、
図20及び21を参照して第三実施形態について説明する。
図20は、第二実施形態において前方監視状態でのスキャン面の位置を示す図である。
図21は、第三実施形態が前述した第一実施形態と異なる点は、第一実施形態は、ライダー2−1、2−2のスキャン面40−1、40−2は無人ダンプ1の前方で交差させているのに対し、第三実施形態では、
図20に示すように、車両の斜め前方でより路肩寄りの位置で交差させている点である。
【0121】
第三実施形態では、参照情報記憶部21aに、無人ダンプ1の走行経路上のノードの座標と、このノード座標における運台3a−1、3a−2の回転角度とを対応付けた参照情報を格納する。この回転角度は、
図21に示すように無人ダンプ1の位置(ノード座標)と、そのノードから路幅方向の距離D、走行方向前方に距離L_fw離れた路肩上の点80でスキャン面40−1、40−2が交差するように雲台を回転させるための回転角度である。
【0122】
本実施形態によれば、第1実施形態と比較して、路肩Bの形状をより詳細に検出することが可能となり、路肩までの距離の計測精度を向上させることができる。
【0123】
上記各実施形態は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更態様がありうる。例えば上記実施形態では、ライダーを2台備えたが、1台のライダーを備える場合であっても本発明を適用することより、前方及び後方を1台のライダーで監視することで、前後それぞれにライダーを付ける場合と比べて低コストで前後方向の周囲監視が行える。
【0124】
また、路肩の検出に際し、
図12では交線L1、L2を算出しその交点Pa、Pbを求めたが、各ライダーにおいて光軸の回転角度とその回転角度における測距結果(各ライダーと計測点との間の距離)とを対応づけて求め、距離の変化率の変化を基に交点Paを求めてもよい。
図20に、光軸回転角度に対応した測距結果を示すプロファイルを示す。
図4のようにライダーの光軸をN−1、N、N+1と走査すると、計測点は無人ダンプ1に近づき(距離は減少関数を示す)、無人ダンプ1に最も近づいた後、計測点は無人ダンプから遠ざかる(距離は増加関数を示す)。そして、路肩Bの斜面にレーダが照射されると、路面Aよりも路肩Bの斜面の方がz軸方向に立ち上がっているため、その高さに応じて光軸との交点(計測点)までの距離が短くなる。従って
図20のプロファイルではレーザの照射位置が路面Aから路肩Bに移動すると、距離の増え方が緩やかになる。そこで、距離の増加率Δdが、正の値の範囲かつ増加率が減少した点を交点Pとして検出してもよい。