(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ケースと、このケースの内部に配置されて内部に熱媒体が流通される伝熱部と、前記ケースの内部に収納されて前記伝熱部の周囲を覆う複数の潜熱蓄熱材と、これらの潜熱蓄熱材と前記ケースとの間に満たされる蓄熱用液体とを備え、
前記伝熱部は並んで配置される複数の管部を有し、これらの管部のうち隣合う管部の間の寸法を粒状の潜熱蓄熱材の寸法より小さくした
ことを特徴とする蓄熱ユニット。
ケースと、このケースの内部に配置されて内部に熱媒体が流通される伝熱部と、前記ケースの内部に収納されて前記伝熱部の周囲を覆う複数の潜熱蓄熱材と、これらの潜熱蓄熱材と前記ケースとの間に満たされる蓄熱用液体とを備え、
前記伝熱部は並んで配置される複数の管部を有し、
前記伝熱部の周囲を覆い前記潜熱蓄熱材が前記伝熱部に付着することを防止するガード部材を配置した
ことを特徴とする蓄熱ユニット。
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載された蓄熱ユニットと、この蓄熱ユニットの伝熱部の一端に接続される熱源と、前記伝熱部の他端に接続されて室内に配置される熱交換パネルとを備えたことを特徴とする冷暖房システム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態を
図1から
図6に基づいて説明する。
図1には、本実施形態にかかる冷暖房システム1が示されている。
図1において、冷暖房システム1は、ヒートポンプ21及び熱交換ユニット22と、熱交換ユニット22に接続された熱交換パネルとしてのパネルルーバー3と、パネルルーバー3と熱交換ユニット22との間に配置される蓄熱ユニット4とを備える。ヒートポンプ21及び熱交換ユニット22が熱源2を構成する。
第1実施形態では、パネルルーバー3及び蓄熱ユニット4は、断熱エリアAに配置される。断熱エリアAはパネルルーバー3が配置される室内だけでなく、蓄熱ユニット4が配置される床下空間を含んで構成される。床下空間の断熱は、床下や基礎を断熱処理することで行われる。
【0016】
ヒートポンプ21は、圧縮器や膨張弁(ともに図示せず。)などを備え、代替フロンやCO
2ガスなどの冷媒を圧縮器で圧縮した際の発熱現象、及び膨張弁で冷媒を膨張させた際の吸熱現象を利用して、熱交換ユニット22を介して後述する第二接続管72から熱交換ユニット22に戻ってくる熱媒体としての水を加熱又は冷却する。そして、ヒートポンプ21は、例えば外気温度が所定温度の場合には、熱交換ユニット22に戻ってくる水を加熱し、外気温度が所定温度を越える場合には、熱交換ユニット22に戻ってくる水を冷却する。
【0017】
熱交換ユニット22は、ヒートポンプ21の作用によって冷却された冷却水をパネルルーバー3に向けて流出する。
パネルルーバー3は、例えば住宅10の室内に配置されて室内の冷房又は暖房を行う際に用いられる。パネルルーバー3は、例えばアルミニウムで形成されて上下両端部が閉塞され、鉛直方向に沿って延びるとともに所定間隔をあけて互いに並列に配置された複数の管部材31と、複数の管部材31を取り付ける図示しない設置台とを備える。本実施形態では、管部材31は複数本、例えば6本設けられている。
【0018】
複数の管部材31の上部は、例えばアルミニウムで形成された上部接合部材32Aで接合されて連結される。管部材31の上部と上部接合部材32Aとの接合部分には、図示しない連通路が形成されている。上部接合部材32Aの内部の所定位置には、管部材31内を流れる水が所定流路から外れて流れることを防止する図示しない堰が設けられている。
また、複数の管部材31の下部は、例えばアルミニウムで形成された下部接合部材32Bで接合されて連結される。管部材31の下部と下部接合部材32Bとの接合部分には、図示しない連通路が形成されている。ただし、
図1における最も左側に配置された管部材31の下部と下部接合部材32Bとの接合部分、及び
図1における最も右側に配置された管部材31の下部と下部接合部材32Bとの接合部分には連通路は形成されていない。下部接合部材32Bの内部の所定位置には、管部材31内を流れる水が所定流路から外れて流れることを防止する図示しない堰が設けられている。
【0019】
このようなパネルルーバー3は、第一配管51や第二配管52などを介して熱交換ユニット22と接続されている。具体的には、
図1における最も左側に配置された管部材31の下部と熱交換ユニット22とが第一配管51を介して接続されており、第一配管51には、熱交換ユニット22の前面側に配置された開閉弁61と、室外に配置された切替弁62と、室内に配置された二方弁63とが設けられている。
また、
図1における最も右側に配置された管部材31の下部に第二配管52が接続されており、第二配管52には、室外に配置された三方弁64が設けられている。なお、
図1において、第二配管52のうち三方弁64と切替弁66とを接続する部分は室内の冷暖房を行う場合には利用されない。
【0020】
第一配管51における切替弁62が設けられた部分からは第一分岐管53が分岐し、第二配管52における三方弁64が設けられた部分からは第二分岐管54が分岐している。第一分岐管53と第二分岐管54とは三方弁65で合流している。三方弁65には第一接続管71が接続されている。
【0021】
図2及び
図3には、第1実施形態の蓄熱ユニット4が示されている。
蓄熱ユニット4は、アクリル製でキューブ状のケース41と、ケース41の内部に配置された伝熱部42と、ケース41の内部に収納されて伝熱部42の周囲を覆う潜熱蓄熱材43と、ケース41と潜熱蓄熱材43との間に満たされる蓄熱用液体44とを備える。
ケース41は、例えば住宅10の床下に設置可能な程度の大きさを有する。本実施形態では、ケース41は、幅500mm、奥行き500mm、高さ300mmの大きさである。
【0022】
伝熱部42は、ケース41の内部における上側部分に配置される上側伝熱部421と、ケース41の内部における下側部分に配置される下側伝熱部422と、上側伝熱部421と下側伝熱部422とを連結する連結伝熱部423とを備える。第1実施形態では、ケース41の天板部と上側伝熱部421との間の寸法がケース41の底板部と下側伝熱部422との間の寸法より大きく設定されている。
本実施形態では、潜熱蓄熱材43の伝熱部42への付着を防止するために、ガード部材としての網45が伝熱部42の周囲に配置されている(
図3参照)。
網45は、上側伝熱部421と、下側伝熱部422と、連結伝熱部423との周囲をそれぞれ覆う構成である。なお、網45は、上側伝熱部421と下側伝熱部422とを別々に覆い、連結伝熱部423を覆うことなく露出する構成としてもよい。網45は、金属製であり、その編み目の大きさは、潜熱蓄熱材43の大きさより小さい。
【0023】
上側伝熱部421は、平面長方形の板状に形成されており、互いに反対側に位置するヘッダーパイプ42Aと、これらのヘッダーパイプ42Aの間にそれぞれ端部が連通される複数の扁平管42Bと、隣合う扁平管42Bの間に介装されるコルゲートフィン42Cとを有する。
一対のヘッダーパイプ42Aのうち一方のヘッダーパイプ42Aの一端側が第一接続管71と連通されている。このヘッダーパイプ42Aの他端側は連結伝熱部423と連通されている。
【0024】
扁平管42Bの内部には流路が形成されている。
図3では、1つの扁平管42Bに1つの流路が形成されているが、図示しない仕切部を内部に設けて、1つの扁平管42Bに複数の流路が形成される構成でもよい。
扁平管42Bの両端部は、互いに反対側に配置された一対のヘッダーパイプ42Aにそれぞれ連通されている。第1実施形態では、複数の扁平管42Bに流れる水が蛇行するように、一対のヘッダーパイプ42Aの内部にそれぞれ図示しない仕切りを設ける構成とされている。なお、一方のヘッダーパイプ42Aから流入された水が複数の扁平管42Bに分岐され、他方のヘッダーパイプ42Aに集合する構成としてもよい。この場合、一方のヘッダーパイプ42Aに第一接続管71が連通され、他方のヘッダーパイプ42Aに連結伝熱部423が連通される構成となる。
【0025】
下側伝熱部422は、一方のヘッダーパイプ42Aが第二接続管72と連通されていること以外は、上側伝熱部421と同じ構造である。つまり、下側伝熱部422は、ヘッダーパイプ42A、複数の扁平管42B及びコルゲートフィン42Cを有する平面長方形の板状部材である。
連結伝熱部423は、上側伝熱部421と下側伝熱部422との互いに上下に配置されるヘッダーパイプ42Aを連通するもので、上下に延びて配置されている。
【0026】
潜熱蓄熱材43の融点は、潜熱蓄熱材43の成分を調整することで設定される。潜熱蓄熱材43は、凝固したときも融解したときもその形状を維持する。
複数の潜熱蓄熱材43は、それぞれゲル化パラフィンから形成される。このゲル化パラフィンとして、例えば、JSR株式会社製のCALGRIP(登録商標)などが用いられる。
潜熱蓄熱材43の個々の形状は、種々のものがあり、例えば、粒状、球状、キューブ状、などである。粒状の潜熱蓄熱材43の粒径は、例えば、5mm、10mm、20mmなどのものがある。なお、図では、キューブ状の潜熱蓄熱材43が図示されている。
【0027】
本実施形態では、蓄熱用液体44は、水である。水の密度は、1000kg/m
3である。
蓄熱用液体44の密度をa、潜熱蓄熱材43の融解時の密度をb、潜熱蓄熱材43の凝固時の密度をcとすると、
b<a<c
の関係が満される。
ここで、前述の密度を有する潜熱蓄熱材43を選定するにあたり、熱源2から供給される熱媒体としての水の供給温度が考慮される。例えば、熱源2から供給可能な水の温度範囲が7℃前後である場合には、当該温度範囲で相変化し、入手可能なCALGRIP(登録商標)の潜熱蓄熱材43として、相変化温度が9℃であり、融解時比重が0.94(融解時の密度が940kg/m
3)、凝固時の比重が0.92(凝固時の密度が1100kg/m
3)、潜熱量が190kJ/kgのものがある。なお、前述の関係を満たすように、潜熱蓄熱材43を別途作製するものでもよい。
【0028】
このような蓄熱ユニット4では、
図1にも示されるように、上側伝熱部421が第一接続管71に接続され、下側伝熱部422が、熱交換ユニット22の前面側に配置された切替弁66に接続された第二接続管72に接続される。これによって、伝熱部42の一端側には熱交換ユニット22及びヒートポンプ21が接続され、伝熱部42の他端側にはパネルルーバー3が接続されることになる。
図3に示すように、蓄熱ユニット4では、個々の潜熱蓄熱材43は形状を維持しており、また、伝熱部42内を流れる冷却水によって、蓄熱用液体44の内部において、伝熱部42の周囲と伝熱部42から離れた部分とで温度差が生じるため、伝熱部42の周囲には常に蓄熱用液体44が自然対流する。
【0029】
そして、伝熱部42内に冷却水を流すと、潜熱蓄熱材43が凝固して蓄冷の状態となる。このとき、潜熱蓄熱材43から放出された凝固熱は蓄熱用液体44に伝わり、蓄熱用液体44を経由して伝熱部42内の冷却水に伝わる。
本実施形態では、潜熱蓄熱材43が凝固した際には、蓄熱用液体44としての水の密度aが1000kg/m
3であり、潜熱蓄熱材43の凝固時の密度cが水の密度aより大きい1100kg/m
3であるため、
図4に示される通り、潜熱蓄熱材43がケース41の内部の下層に沈殿する。これにより、蓄熱ユニット4の下層に冷気が溜まって温度成層化される。
【0030】
図5に示される通り、第1実施形態では、網45に加えて、あるいは、網45に代えてコルゲートフィン42Cをガード部材としてもよい。ガード部材としてのコルゲートフィン42Cは、隣合う扁平管42Bの間に設けられる。
コルゲートフィン42Cの上端部は、隣合う扁平管42Bの上辺部と一致し、コルゲートフィン42Cの下端部は、隣合う扁平管42Bの下辺部と一致する。
つまり、コルゲートフィン42Cは、隣合う扁平管42Bの互いに対向する面で構成される空間を閉塞する。
【0031】
図6に示される通り、第1実施形態では、潜熱蓄熱材43が隣合う扁平管42Bの間に入り込まないようにするために、隣合う扁平管42Bの間の寸法W0を潜熱蓄熱材43の寸法W1より小さくするものでもよい。例えば、キューブ状の潜熱蓄熱材43の短辺の寸法W1や、粒状の潜熱蓄熱材43の粒径の寸法W1が20mmである場合には、隣合う扁平管42Bの間の寸法W0は、20mm未満である。
図6の例では、隣合う扁平管42Bの間からコルゲートフィン42Cが省略されているが、本実施形態では、コルゲートフィン42Cを配置してもよい。
【0032】
潜熱蓄熱材43が溶解される際に、潜熱蓄熱材43が伝熱部42に付着しようとするが、第1実施形態では、網45が伝熱部42に配置されている場合には、網45によって、潜熱蓄熱材43が伝熱部42から離れた状態となる。網45がなくても、コルゲートフィン42Cが隣合う扁平管42Bの間に設けられている状態では、潜熱蓄熱材43が隣合う扁平管42Bの間に入り込むことがない。そして、隣合う扁平管42Bの間の寸法W0を潜熱蓄熱材43の寸法W1より小さければ、コルゲートフィン42Cの有無にかかわらず、潜熱蓄熱材43が隣合う扁平管42Bの間に入り込むことがない。
【0033】
次に、
図1に戻って、パネルルーバー3を用いた室内の冷房について説明する。
パネルルーバー3を用いて冷房を行う場合には、潜熱蓄熱材43の融点が4℃以上12℃以下に調整・設定されたものが用いられる。
そして、まず、例えば気温の低い夜間などに潜熱蓄熱材43を凝固して蓄熱ユニット4を予め蓄冷の状態とする。具体的には、
図1の破線矢印で示すように、ヒートポンプ21の作用によって冷却された冷却水を熱交換ユニット22から第一配管51内に流し、切替弁62を経由して第一分岐管53内に流す。そして、冷却水を、三方弁65を経由して第一接続管71内に流し、蓄熱ユニット4の伝熱部42内に流す。伝熱部42内を流れる冷却水により、潜熱蓄熱材43が凝固し、蓄冷の状態となる。このとき、潜熱蓄熱材43から放出された凝固熱は蓄熱用液体44を経由して伝熱部42内の冷却水に伝わり、伝熱部42内の水に熱が加わる。この熱が加えられた水は、第二接続管72を通って熱交換ユニット22に戻る。本実施形態では、伝熱部42内を流れる冷却水は5〜10℃程度である。
【0034】
次に、例えば日中などに切替弁62を切り替えて、第一配管51内の水が第一分岐管53内に流れないようにする。そして、
図1の実線矢印で示すように、蓄熱ユニット4が予め蓄冷された状態で、ヒートポンプ21の作用によって冷却された冷却水を熱交換ユニット22から第一配管51内に流す。
冷却水は、開閉弁61、切替弁62及び二方弁63を経由して、
図1における最も左側に配置された管部材31内に下側から流入する。冷却水は、連通路を経由して、隣接する管部材31内を互いに上下方向が逆となるように蛇行して流れる。このとき、管部材31内を流れる冷却水が吸熱し、室内の冷房が行われる。
【0035】
その後、吸熱して温められた水が、
図1における最も右側に配置された管部材31の下部から第二配管52に流出し、三方弁64を経由して第二分岐管54内に流れ、三方弁65を経由して第一接続管71内に流れる。そして、温められた水は蓄熱ユニット4の伝熱部42内を流れ、伝熱部42内を流れる水から放出された熱が蓄熱用液体44を経由して潜熱蓄熱材43に伝わり、凝固している潜熱蓄熱材43が融解する。これにより、熱が放出されて温度が低下した水が第二接続管72を通って熱交換ユニット22に戻る。
潜熱蓄熱材43が融解した際には、潜熱蓄熱材43の融解時の密度bが水の密度aより小さい940kg/m
3であるため、沈殿している複数の潜熱蓄熱材43のうち融解されたものから順に浮上する(
図4の想像線参照)。
そして、潜熱蓄熱材43が浮上することで、伝熱部42の周囲に潜熱蓄熱材43が密着することがなくなる(
図3参照)。
そして、熱交換ユニット22に戻ってきた水はヒートポンプ21の作用によって再び冷却され、ヒートポンプ21の作用によって冷却された冷却水が、再び熱交換ユニット22から第一配管51を介してパネルルーバー3に供給される。
このような冷却水の循環によって、パネルルーバー3を用いた冷房が行われる。
【0036】
従って、第1実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
(1)蓄熱ユニット4は、伝熱部42の周囲を覆う複数個の粒状の潜熱蓄熱材43と、潜熱蓄熱材43とケース41との間に満たされる蓄熱用液体44とを備える。粒状の潜熱蓄熱材43は凝固したときも融解したときもその形状を維持するため、伝熱部42の周囲には常に蓄熱用液体44が自然対流する。このことにより、伝熱部42の外周面には、蓄熱用液体44の自然対流に起因する対流熱伝達といった伝熱が促進される効果が作用する。よって、従来のように、伝熱を促進させるための複雑な装置を設けなくても、蓄熱ユニット4において高い熱交換性を維持できる。
【0037】
(2)上側伝熱部421や下側伝熱部422を構成する複数の扁平管42Bのうち、隣合う扁平管43Bの間の寸法W0を潜熱蓄熱材43の寸法W1より小さくしたので、隣合う扁平管42Bの間に潜熱蓄熱材43が入り込むことがなく、高い熱交換率を維持することができる。
(3)潜熱蓄熱材43が伝熱部42に付着することを防止するガード部材としての網45で伝熱部42を覆ったので、伝熱部42の蓄熱用液体44と接触する面積が確保されることになり、高い熱交換性を維持することができる。
【0038】
(4)網45は、伝熱部42の外形形状に沿うように変形加工することが可能であるため、伝熱部42の形状や構造にかかわらず、伝熱部42に容易に配置することができる。
(5)コルゲートフィン42Cは、放熱効果を高めるとともに、ガード部材としても機能するので、部品点数の減少を図ることができる。
(6)潜熱蓄熱材43の融点は潜熱蓄熱材43の成分を調整することで設定されるため、このような潜熱蓄熱材43を備える蓄熱ユニット4を、パネルルーバー3を用いて冷房を行うときにも暖房を行うときにも利用できる。
【0039】
(7)蓄熱用液体の密度aと、潜熱蓄熱材の凝固時の密度cとの関係がa<cであるため、蓄冷時には、潜熱蓄熱材43がケース41の下層に沈殿することになり、下層に冷気が溜まって温度成層化される。しかも、蓄熱用液体44の密度aと潜熱蓄熱材43の溶解時の密度bとの関係がb<aであるため、放冷時には、蓄冷時に沈殿していた複数の潜熱蓄熱材43のうち融解されたものから順に浮上することになり、伝熱部42の周囲に潜熱蓄熱材43が密着することがなくなる。そのため、蓄熱用液体44と伝熱部42の内部を流通する熱媒体としての水との間の熱伝達が効率的となる。
【0040】
(8)冷暖房システム1は、蓄熱ユニット4と、蓄熱ユニット4の伝熱部42の一端に接続されるヒートポンプ21及び熱交換ユニット22と、伝熱部42の他端に接続されるパネルルーバー3とを備える。このような冷暖房システム1では、蓄熱ユニット4が高い熱交換性を維持でき、コスト高となる伝熱を促進させるための複雑な装置も設けられていないため、全体として冷暖房の維持にかかる費用が高くなることを防止できる。
【0041】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を
図7から
図10に基づいて説明する。
第2実施形態では、伝熱部の構造が第1実施形態とは異なるもので、他の構成は第1実施形態と同じである。第2実施形態の説明では、第1実施形態と同一の構成要素は同一符号を付して説明を省略する。
図7及び
図8は、第2実施形態にかかる蓄熱ユニットを示す。
図7及び
図8に示される通り、蓄熱ユニット4は、ケース41と、ケース41の内部に配置された伝熱部420と、ケース41の内部に収納されて伝熱部420の周囲を覆う潜熱蓄熱材43と、ケース41と潜熱蓄熱材43との間に満たされる蓄熱用液体44とを備える。
第2実施形態の伝熱部420は、屈曲して形成されてケース41の内部における上側部分に配置される上側伝熱部421Aと、屈曲して形成されてケース41の内部における下側部分に配置される下側伝熱部422Aと、上側伝熱部421Aと下側伝熱部422Aとを連結する連結伝熱部423Aとを備える。
【0042】
上側伝熱部421Aは、1本のアルミ製の管を蛇行させて板状に形成されている。上側伝熱部421Aの一端が第一接続管71に連通され、上側伝熱部421Aの他端が連結伝熱部423Aに連通されている。
下側伝熱部422Aは、1本のアルミ製の管を蛇行させて板状に形成されている。下側伝熱部422Aの一端が第二接続管72に連通され、下側伝熱部422Aの他端が連結伝熱部423Aに連通されている。
連結伝熱部423Aは、上下に延びたパイプである。
【0043】
潜熱蓄熱材43と蓄熱用液体44とは第1実施形態の潜熱蓄熱材43と蓄熱用液体44と同じである。つまり、潜熱蓄熱材43は、ゲル化パラフィンから形成される。このゲル化パラフィンとして、例えば、JSR株式会社製のCALGRIP(登録商標)等が用いられる。
蓄熱用液体44は、水である。蓄熱用液体44の密度a、潜熱蓄熱材43の融解時の密度b及び潜熱蓄熱材43の凝固時の密度cには、b<a<cの関係がある。
そのため、潜熱蓄熱材43が凝固した際には、
図9に示される通り、潜熱蓄熱材43がケース41の内部の下層に沈殿する。一方、潜熱蓄熱材43が融解した際には、沈殿している複数の潜熱蓄熱材43のうち融解されたものから順に浮上する(
図9の想像線参照)。
そして、潜熱蓄熱材43が浮上することで、伝熱部42の周囲に潜熱蓄熱材43が密着することがなくなる(
図8参照)。
【0044】
図8及び
図9では、伝熱部420に網等のガード部材が設けられていないが、第2実施形態では、
図10に示される通り、伝熱部420にガード部材を設ける構成としてもよい。つまり、
図10では、伝熱部420のうち上側伝熱部421Aと下側伝熱部422Aとの周囲にそれぞれ網45が配置されている。連結伝熱部423Aは、網45に覆われることなく露出されているが、
図3で示されるように、連結伝熱部423Aを含めて伝熱部420の全体を網45で覆うものでもよい。
また、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、隣合う管部42Pのうち隣合う管部42Pの間の寸法W0を潜熱蓄熱材43の寸法W1より小さくするものでもよい。
したがって、第2実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0045】
なお、本発明は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
前記各実施形態では、蓄熱用液体44の密度a、潜熱蓄熱材43の融解時の密度b及び潜熱蓄熱材43の凝固時の密度cには、b<a<cの関係があったが、本発明では、この構成に限定されるものではない。
【0046】
そして、本発明の蓄熱ユニット4は暖房を行うときも使用することができる。この場合、潜熱蓄熱材43の融点は40℃以上60℃以下に調整・設定されたものが用いられる。まず、例えば気温の高い日中などに潜熱蓄熱材43を融解して蓄熱ユニット4を予め蓄熱の状態とする。具体的には、
図1の破線矢印で示すように、ヒートポンプ21の作用によって加熱されて所定温度を有する温水を熱交換ユニット22から第一配管51内に流し、切替弁62を経由して第一分岐管53内に流す。そして、温水を三方弁65を経由して第一接続管71内に流し、蓄熱ユニット4の伝熱部42内に流す。伝熱部42内を流れる温水(40〜60℃)から放出された熱が蓄熱用液体44を経由して潜熱蓄熱材43に伝わり、潜熱蓄熱材43が融解し、蓄熱の状態となる。熱が放出されて温度が低下した水は第二接続管72を通って熱交換ユニット22に戻る。
【0047】
次に、例えば気温が低下してくる夜間などに切替弁62を切り替えて、第一配管51内の水が第一分岐管53内に流れないようにする。そして、
図1の実線矢印で示すように、蓄熱ユニット4が予め蓄熱された状態で、ヒートポンプ21の作用によって加熱されて所定温度を有する温水を熱交換ユニット22から第一配管51内に流す。温水は、開閉弁61、切替弁62及び二方弁63を経由して、
図1における最も左側に配置された管部材31内に下側から流入する。温水は、連通路を経由して、隣接する管部材31内を互いに上下方向が逆となるように蛇行して流れる。このとき、管部材31内を流れる温水から放熱され、室内の暖房が行われる。
その後、熱が放出されて温度が低下した水が、
図1における最も右側に配置された管部材31の下部から第二配管52に流出し、三方弁64を経由して第二分岐管54内に流れ、三方弁65を経由して第一接続管71内に流れる。そして、温度が低下した水は蓄熱ユニット4の伝熱部42内を流れ、蓄熱状態とされた潜熱蓄熱材43から熱が放出されて、潜熱蓄熱材43から放出された熱が蓄熱用液体44を経由して伝熱部42内の水に伝わり、伝熱部42内の水に熱が加わる。この熱が加えられた水は、第二接続管72を通って熱交換ユニット22に戻る。そして、熱交換ユニット22に戻ってきた水はヒートポンプ21の作用によって再び加熱され、ヒートポンプ21の作用によって加熱された温水が、再び熱交換ユニット22から第一配管51を介してパネルルーバー3に供給される。
このような加熱された温水の循環によって、パネルルーバー3を用いた暖房が行われる。
【0048】
前記各実施形態では、網45を用いたが、網45に代えて複数本の金属製線材をケース41の内部に掛け渡す構成を採用してもよい。この場合、複数の線材は、上側伝熱部421,421Aや下側伝熱部422,422Aを挟んで上下に複数の線材を配置し、これらの線材のうち隣合う線材の間の寸法を潜熱蓄熱材43の粒径等より小さい寸法とする。
さらに、前記各実施形態では、熱媒体として水を用いたが、これには限定されず、熱を移動させることが可能な流体であれば水以外であってもよい。