特許第6386808号(P6386808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386808
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21V 8/00 20060101AFI20180827BHJP
   F21S 8/04 20060101ALI20180827BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20180827BHJP
【FI】
   F21V8/00 330
   F21S8/04 100
   F21S8/04 130
   F21Y115:10
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-128296(P2014-128296)
(22)【出願日】2014年6月23日
(65)【公開番号】特開2016-9545(P2016-9545A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2017年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立アプライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】別井 圭一
(72)【発明者】
【氏名】村田 誠治
【審査官】 山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−064493(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0242814(US,A1)
【文献】 米国特許第02818500(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 8/00 − 15/04
F21S 8/04 − 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDと光透過性部材からなるリフレクタとを備えた照明装置であって、
LED基板上の前記複数のLEDと対向して、前記LEDから入射した光を略直角方向に反射させる前記リフレクタが配置され、
前記リフレクタの外面は、2回の全反射により光を直角方向に向けるように屋根型形状の溝が光射出方向に平行に形成されており、
前記屋根型形状の溝の存在範囲が、前記溝の稜線と前記LEDからの入射光線が臨界角以下である部分に限定されており、
前記リフレクタの反射面に、微小な凹凸を設けることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置において、
前記リフレクタが、前記複数のLEDが置かれている前記LED基板の外周部分に沿って射出方向を外向きに配置されていることを特徴とする照明装置。
【請求項3】
請求項1に記載の照明装置において、
前記リフレクタが、前記複数のLEDが置かれている前記LED基板の内周部分に沿って射出方向を内向きに配置されていることを特徴とする照明装置。
【請求項4】
請求項1に記載の照明装置において、
前記リフレクタの外面の溝の横断面の形状がV字型の溝であることを特徴とする照明装置。
【請求項5】
請求項4に記載の照明装置において、
前記リフレクタの外面の溝の横断面の形状が頂角90度のV字型の溝であることを特徴とする照明装置。
【請求項6】
複数のLEDと光透過性部材からなるリフレクタとを備えた照明装置であって、
LED基板上の前記複数のLEDと対向して、前記LEDから入射した光を略直角方向に反射させる前記リフレクタが配置され、
前記リフレクタの外面は、2回の全反射により光を直角方向に向けるように屋根型形状の溝が光射出方向に平行に形成されており、
前記リフレクタの外面の溝の横断面のV字型の面の角度が、稜線と入射光線の角度に応じて変化しており、
前記リフレクタの反射面に、微小な凹凸を設けることを特徴とする照明装置。
【請求項7】
複数のLEDと光透過性部材からなるリフレクタとを備えた照明装置であって、
LED基板上の前記複数のLEDと対向して、前記LEDから入射した光を略直角方向に反射させる前記リフレクタが配置され、
前記リフレクタの外面は、2回の全反射により光を直角方向に向けるように屋根型形状の溝が光射出方向に平行に形成されており、
前記リフレクタの外面の溝の横断面のV字型の面の角度が、稜線と入射光線の角度に応じて変化しており、
前記稜線と入射光線の角度が小さい場合には、前記V字型の面の角度を深く、前記稜線と入射光線の角度が大きくなるにつれて、前記V字型の面の角度を浅く形成したことを特徴とする照明装置。
【請求項8】
請求項に記載の照明装置において、
前記リフレクタの反射面に、微小な凹凸を設けることを特徴とする照明装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1つに記載の照明装置において、
前記リフレクタの光の射出面に、曲面または微小な凹凸を設ける、またはマイクロレンズアレイまたはプリズムアレイを設けることを特徴とする照明装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1つに記載の照明装置において、
前記複数のLEDおよび前記リフレクタを取り囲むようにセードが設けられていることを特徴とする照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED光源を用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シーリングライトやベース照明等の照明装置の光源として、環境への配慮や低消費電力化のために、従来の蛍光灯や白熱電球に代えてLEDが使用されつつある。LED光源は、従来の蛍光灯や白熱電球と異なる配光分布を有しており、光源の正面に向かって最も光度が高い。
【0003】
LED光源を用いた場合、光源の正面が明るく照射され、光源の配置方向が重要になる。例えば、照明装置において、発光面は広い範囲で均一に発光することが好ましいが、光源の正面から離れた方向には光が届かず、暗くなる問題があった。それを解決するためには、暗くなってしまう方向に向かって光源の配置方向を変更するなどの対策方法がある。ただし、光源の方向は光源が配置された光源基板の配置方向を制約してしまう。光源基板は、光源からの発熱を効率的に排熱する機能も兼ねていることが多く、光源基板は熱伝導に比較的優れた筐体やシャーシ、放熱フィンなどの構造物に広い接触面積で配置されていることが望ましい。このような事情を鑑みると、光源の配置方向を変更することは、光源基板の方向を変更することになるため、放熱性を考慮した配置が困難になり、放熱不足による照明装置の性能劣化や、放熱優先とした設計にした場合には、光源基板の配置に特化した構造設計により、構造コストの上昇を引き起こす原因となりうる。放熱、製造コストを鑑みると、光源基板は、平面基板で実現されていることが望ましい。
【0004】
光源の配置方向に関する技術として、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1には、長尺帯状の基板が略円環状に湾曲形成された光源基板と、前記光源基板に配置された複数のLED(発光ダイオード)素子と、前記光源基板に電気的接続され、前記LED素子に給電する給電手段と、を備え、前記光源基板の下部または上部のいずれか一方に、あるいは下部及び上部に、周方向に沿って矩形波状に複数の凸部が配列され、前記凸部がそれぞれ径方向に向けて、湾曲または屈曲されることにより、前記凸部に特定の方向を臨む基板面が形成され、前記特定の方向に臨む基板面に、前記LED素子が配置されていることを特徴とする照明装置を開示している(要約参照)。
【0005】
前記構成であれば、基板面を特定の方向に臨む配置を実現する必要があるため、1枚の平面基板では実現が困難であり、複数の基板に分割して配置するか、折り曲げられる基板による実現方法が考えられるが、いずれも製造コストが高くなる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−65427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の発明は、光源基板を特定の方向を臨むように配置する必要がある。光源基板の配置方向に関して制限があるため、複数の基板に分割するか、もしくは比較的高コストな材質の折り曲げられる基板を利用する必要があり、安価な照明装置の実現が困難となる。
【0008】
一方、光線の方向を曲げる方法として反射を用いる方法も考えられる。LED光源を用いた照明器具の場合は安全性の観点からLED表面を覆うように透明部材のカバーが具備されており、この透明部材を用いて反射器を構成するのが、追加の部品が不要で都合が良い。透明部材を用いた反射器としては全反射を利用するのが理想的である。しかし全反射は以下の臨界角で定義される角度より小さい角度で入射した場合には全反射は起こらず、光線の大部分は部材から外にでてしまう。たとえば、図4のような放物面の形状をした透明部材を考えるとその放物面の焦点からでた光は、臨界角以下の部分では漏れ光となってしまう。これを解決するためには、図5に示すように、入射角度を臨界角度以上に保つ必要があるため、高さが高くなり全体の形状が大きくなってしまうという課題があった。
【0009】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みて為されたものであり、LED光源の光を周辺部或いは中心部に向けることのできる、安価で小型の照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本発明は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、本発明の照明装置の一例を挙げるならば、
複数のLEDと光透過性部材からなるリフレクタとを備えた照明装置であって、LED基板上の前記複数のLEDと対向して、前記LEDから入射した光を略直角方向に反射させる前記リフレクタが配置され、前記リフレクタの外面は、2回の全反射により光を直角方向に向けるように屋根型形状の溝が光射出方向に平行に形成されており、前記屋根型形状の溝の存在範囲が、前記溝の稜線と前記LEDからの入射光線が臨界角以下である部分に限定されており、前記リフレクタの反射面に、微小な凹凸を設けることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、LED光源の光を周辺部或いは中心部に向けることのできる、安価で小型の照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る照明装置の構造を説明するための図。
図2】本発明の照明装置の基本構造を説明するための図。
図3】本発明の照明装置の透明部材からなるリフレクタの全体構造を説明するための図。
図4】放物面と臨界角を説明するための図。
図5】等角螺旋反射面を説明するための図。
図6】本発明の実施例を説明するための図。
図7】本発明の実施例1の反射面の断面構造と光線状態を説明するための図。
図8】本発明の実施例2の断面構造の変化を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。なお、実施の形態を説明するための各図において、同一の機能を有する要素には同一の名称、符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明を適用した、シーリングライトの断面構造である。シーリングライトは、器具シャーシ6上のLED実装基板12に実装されたLED素子11からの発光光を、レンズ機能を持つ透明部材からなるリフレクタ4を通して拡散し、セード14を内部から照らすことにより、セード表面を一様な明るさに保持し、室内を照明するものである。本発明はこの透明部材からなるリフレクタ(反射器)4の構造に特徴がある。
【0015】
図2は、図1のシーリングライトの本発明に関係のある部分を説明するために拡大したものである。多数配置されたLED素子11は、LED実装基板12を介して電源13に電気的に接続され、発光する。本発明の実施例の場合は、配置された多数のLED素子11のうち、特に最外周、あるいは最内周に配置されたLEDからの光線を基板面の方向から略直角方向に反射偏向する透明部材からなるリフレクタ4を配置する。リフレクタ4は略放物面形状をした反射面2を持ち、入射面1より入射した光束は反射面2で全反射され、方向を略90°変えて射出面7より射出する。
【0016】
図3に、この構造を照明装置の外周部に設定した場合の斜視図を示す。LED光源11からの光は、反射面2で全反射されて、周辺部方向に射出光線8として射出される。また、図示していないが、この構造を照明装置の内周部に設定しても良い。この場合は、LED光源からの光は、反射面で全反射されて中心部方向に射出される。
【0017】
図4に、反射面2の構造として放物面を用いた場合の反射の状態を示す。符号3は発光点を表し、リフレクタ4の内部から表面に向かって進む光が表面に到達すると、スネルの法則により屈折、反射が発生する。この際、以下の関係から定まる臨界角δcが存在する。
sinδc=1/n
ここで、nは透明部材の屈折率である。透明部材としてたとえばポリカーボネート(n=1.59)を用いた場合には、
δc=38.97°
となる。この臨界角より面法線に近い角度で入射した光線は全反射を起こさず反射面2より屈折射出する。他方、この臨界角より大きい角度で入射した光は反射面2で全反射を起こし、入射光束の100%が反射される。このように全反射はきわめて効率の高い反射方式であるが、臨界角という制限が発生するのが課題である。この例の場合には臨界角より小さい入射光線の光束は反射することなく反射面から漏れ出してしまい、所望の方向に光束を向けることはできない。
【0018】
図5は、このような臨界角より小さい入射角が存在しないように反射面2を構成した例である。この面の形状は、光源3より出た光線の入射角度がつねに臨界角δcより大きな値を保つような面を連続的に結んだ曲面である。角度が一定の場合には等角螺旋という形状となる。この面を用いた場合には、すべての光線の入射角が臨界角より大きくなるのですべて全反射することになる。しかしこの面は図からわかるように高さがどうしても高くなってしまい、隣接するLEDからの光束を遮蔽しセード上に影になるという問題が生じる。
【0019】
図6で、本発明の全反射利用の反射器を反射面2に適用した場合の実施例を説明する。本発明では反射面2の表面に稜を射出方向と平行とした略V形状の溝(屋根型形状の溝)をつくり、これを全反射プリズムとして、このV字表面で光束を2回反射させることにより、光束を略直角方向へ反射させる。本発明では、略V形状の溝によりルーフトップ形状のプリズムを形成する。
【0020】
図7に、反射面2の断面構造を示す。反射面に略V字型の尾根10と谷9を持つようなV字型の面を持つ溝を多数配置する。このようなV字型の面とすることにより、入射光線8は2回の反射で元の方向に折り返すことができる。この構造を用いれば、図6の紙面に垂直方向から見た場合に、反射面2の角度が臨界角より小さくなる場合でも、反射を2回に分解することにより、それぞれの反射時には入射角は臨界角以上となり全反射を達成することができる。このV字型の面の表面は必ずしも平面である必要はなく、光源位置および射出方向に応じて適当な曲面としたり、ある程度の拡散特性を付加するために小さな凹凸を持つような面であってもよい。
【0021】
また、反射面2の表面全面にこのV溝を付加する必要はなく、光源からみてちょうど臨界角となる点5より大きい角度になる面にはこの構造は付加しなくてもよい。
【実施例2】
【0022】
実施例2は、反射面2の位置に応じて溝形状を変化させたものである。
【0023】
図8は、上記の例の溝形状の変化を示すための図である。反射面2への入射角が小さい場合には、臨界角となるためにV溝の角度は深く必要であるが、入射角が大きくなるにつれて、V溝表面での臨界角の条件が緩和されるため溝は浅く形成できる。深いV溝のままでも紙面に平行な光については、問題は起こらないが、実際には紙面と交わる方向の光線も存在するために、V溝の面の角度は小さいほうが好ましく、その点でも紙面に平行な光束と紙面と交わる方向の光束の量に応じて、適切な角度に調整されるのが望ましい。さらに、臨界角になる点5より先ではV溝はなくても臨界角より大きい角度で入射するために全反射となる。
【0024】
もちろん、V溝は全面につけてもよいし、臨界角となる点5より先までV溝が存在してもよい。
【0025】
また、射出面7の表面は実施例では平面としているが、この面に光の方向を制御するために曲面を用いてもよいし、散乱性を付加するために微小な凹凸を設けたり、マイクロレンズアレイ、プリズムアレイを付加してもよい。
【0026】
以上のように本発明を適応すれば、効率的にLEDからの光線を直角方向に曲げる光学系を得ることができ、LEDの存在しない中央部や周辺部のセード表面を明るく照らす低損失な光学系を構成することができる。
【0027】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。たとえば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 入射面
2 反射面
3 発光点
リフレクタ(反射器)
5 臨界角位置
6 器具シャーシ
7 射出面
8 射出光線
9 反射面谷部分
10 反射面山部分
11 LED素子
12 LED実装基板
13 電源
14 セード

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8