特許第6386811号(P6386811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6386811モジュール型コンベヤチェーンを備える放射線検査システムおよび当該システムを動作させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386811
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】モジュール型コンベヤチェーンを備える放射線検査システムおよび当該システムを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 7/00 20060101AFI20180827BHJP
   G01T 1/167 20060101ALI20180827BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20180827BHJP
【FI】
   G01T7/00 C
   G01T1/167 E
   G01N23/04
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-130322(P2014-130322)
(22)【出願日】2014年6月25日
(65)【公開番号】特開2015-14598(P2015-14598A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2017年5月12日
(31)【優先権主張番号】13174101.9
(32)【優先日】2013年6月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511287824
【氏名又は名称】メトラー−トレド・セーフライン・エックス−レイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】シンチー・ワーン
(72)【発明者】
【氏名】ナイジェル・ジョン・キング
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−116299(JP,A)
【文献】 特開2008−026198(JP,A)
【文献】 特開2007−132796(JP,A)
【文献】 特表2012−528060(JP,A)
【文献】 特表2006−505787(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0208972(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00−1/16
G01T 1/167−7/12
G01N 23/00−23/227
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査線を放射する放射線源(4)を備え、さらには、前記走査線を受信してそれらを検出器信号に変換する放射線検出器(5)を備え、前記検出器信号に基づいて放射線画像(50)を生成するプロセッサを備え、さらに、検査下の物品(3)を前記走査線が通り抜ける空間を通るように移送するように機能するクローズドループで一体にヒンジ留めされる同一のモジュール型セグメント(21)を備えるモジュール型コンベヤチェーン(2)を備える、放射線検査システム(1)を動作させる方法であって、前記方法が、前記放射線画像(50)から、前記モジュール型セグメント(21)と、前記放射線検出器(5)の固有の要因とによって本質的に生成される背景画像(42)を排除するように作用し、前記方法が、
C1)前記放射線源の停止中にそれぞれのダイオード電流を測定することにより、検出器アレイの個別のフォトダイオードの暗部信号D(x)が決定されることを通じてデジタル較正データを取得し、前記デジタル較正データを1次元データアレイとして保持するステップと、
C2)すぐ前のモジュール型セグメント(21)および次のモジュール型セグメント(21)の隣接する境界部分を含めた前記モジュール型セグメント(21)のうちの1つのための生画像データを取得し、第1の2次元データアレイ内に、前記モジュール型セグメント(21)の生デジタル画像として前記生画像データを保持するステップと、
C3)ステップC1)およびC2)で保持された前記デジタル較正データ及び前記生画像データを、各々の前記モジュール型セグメント(21)の前記放射線画像で等しく発生する少なくとも1つの明確に識別可能なフィーチャを基準とする正規化される較正データとなるようにデジタル処理し、較正データファイル内に、デジタルテンプレート画像として前記正規化された較正データを記憶するステップと
を含む較正モードを含み、
前記方法が
I1)上を移動する少なくとも1つの物品(3)を含めた前記モジュール型コンベヤチェーン(2)の1セクションの生デジタル画像データの形態で放射線画像を取得し、第2の2次元データアレイ内に、前記モジュール型コンベヤチェーン(2)の前記セクションの前記背景画像(42)を含めた前記物品(3)の生デジタル画像として前記生デジタル画像データを保持するステップと、
I2)前記少なくとも1つの明確に識別可能なフィーチャを基準とする正規化されるデジタル画像にするために前記生デジタル画像を演算処理し、2次元データアレイ内に、前記モジュール型コンベヤチェーン(2)の前記セクションの前記背景画像(42)を含めた前記物品(3)の前記正規化されたデジタル画像を保持するステップと、
I3)前記デジタルテンプレート画像に対応する修正を適用することにより、前記正規化されたデジタル画像から前記モジュール型コンベヤチェーン(2)の前記背景画像(42)を排除するステップと
を含む検査モードをさらに備える
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記放射線源(4)が空間的に集中する構成であり、前記放射線検出器(5)が、規則的な間隔で配置されるフォトダイオードの線形アレイ(7)を備え、前記放射線源(4)および前記放射線検出器(5)が前記モジュール型コンベヤチェーン(2)を間にして互いの方を向き、ファン形状の平坦なバンドルの前記走査線が前記放射線源(4)から前記放射線検出器(5)まで発せられ、前記ファン形状の放射線バンドルおよび前記フォトダイオードの線形アレイ(7)が、前記モジュール型コンベヤチェーン(2)の移動方向に対して実質的に垂直に延びる共通の走査平面に位置する、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
検査下の前記物品(3)が前記モジュール型コンベヤチェーン(2)上で前記走査平面を通るように移動し、スキャナ放射線が前記放射線源により放射線の連続ストリームとして生成されるとともに、前記放射線検出器が検出器信号を生成するためのパルスによって起動され、前記パルスのタイミングが前記モジュール型コンベヤチェーン(2)の移動に同期され、したがって、前記ファン形状の平坦なバンドルの放射線が前記放射線検出器の出力信号に変換されるときの時間が、前記モジュール型コンベヤチェーン(2)およびその上で移送される前記物品(3)の一様な移動間隔に対応する、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
各々の個別のトリガーパルスで、前記放射線検出器(5)の前記フォトダイオードの線形アレイ(7)によって受信される前記放射線が実質的に等距離の画像ドットの線に変換され、前記一連のトリガーパルスが画像ドットの一連の実質的に等距離の平行な線を発生させ、前記画像ドットの線が画像ドットの線およびカラムのラスタの形態の生画像を形成し、画像ドットの各線が所与の時点で発生するトリガーパルスに関連付けられ、画像ドットの各カラムが前記フォトダイオードの線形アレイ内の特定のフォトダイオードに関連付けられ、前記ラスタ内の各画像ドットが、前記モジュール型コンベヤチェーン(2)の移動方向に対して垂直な方向のラスタ間隔に関する登録座標(x)と、前記モジュール型コンベヤチェーン(2)の移動方向のラスタ間隔に関する登録座標(y)とを基準とし、x/y座標系の原点がラスタ線とラスタカラムとの任意に選択される交差点のところに配置されてよく、さらに、各画像ドットが、明度値としてデジタル形態で表現され得る明度レベルによって個別に特徴付けられる、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、
前記明度値が、
前記放射線検出器(5)内の各フォトダイオードの個別の異なる暗部信号D(x)および光感受性と、
前記放射線源(4)から各フォトダイオードまでの個別の異なる距離と、
前記モジュール型コンベヤチェーンに吸収されることを原因とする、前記放射線源から各フォトダイオードまでの線経路に沿う、個別の異なる放射線強度の損失量と、
検査下の物品(3)に吸収されることを原因とする、前記放射線源から各フォトダイオードまでの線経路に沿う、個別の異なる放射線強度の損失量と
によって決定される、方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の方法において、
各モジュール型セグメントが、前記放射線に対する実質的に一様な高い透過度を有する実質的に平坦な平坦領域を有し、前記平坦領域が実質的に長方形形状であり、前記モジュール型コンベヤチェーンの全幅にわたってx方向に延在し、1つのヒンジから次のヒンジまでy方向に延在し、前記放射線画像では、前記モジュール型セグメントの前記平坦領域が明るい領域として現れ、それに対して前記ヒンジが暗色ストライプとして現れ、したがって、前記放射線画像で、前記一連のモジュール型セグメントが、前記モジュール型コンベヤチェーンの移動方向を横断するように延びる明暗の平行なストライプのパターンを形成し、前記平行な暗色ストライプが、前記正規化された放射線画像データが基準とすることができる前記明確に識別可能なフィーチャを示す、方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法において、
ステップC1)が、
前記放射線源を停止させるステップと、
前記フォトダイオードの線形アレイの各フォトダイオードに対してダイオード電流を測定するステップと、
前記ダイオード電流をデジタル化して前記フォトダイオードの前記暗部信号D(x)として1次元メモリアレイ内に記憶するステップと
を含む、方法。
【請求項8】
請求項6または請求項6を引用先に含む請求項7に記載の方法において、
ステップC2)が、
前記放射線源(4)を動作させて前記モジュール型コンベヤチェーン(2)の移動を開始するステップと、
前記すぐ前のモジュール型セグメントおよび前記次のモジュール型セグメントを示す前記2つの暗色ストライプの全範囲を含めた前記モジュール型セグメント(21)のうちの1つのための生セグメント画像データRSI(x、y)を取得し、前記生セグメント画像データRSI(x、y)を2次元データアレイとして収集するステップと
を含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、
ステップC3)が、
各x/y位置に対して、正味のセグメント画像値NSI(x、y)を得るために、前記生セグメント画像データRSI(x、y)から前記暗部信号D(x)を差し引くステップと、
前記正味のセグメント画像値NSI(x、y)内で、前記暗色ストライプを示す部分を特定するステップであって、さらに、前記暗色ストライプの間の明るい領域を特定し、前記明るい領域内の各x位置に対して前記正味のセグメント画像値NSI(x、y)を平均化することにより線形較正アレイL(x)を計算する、ステップと、
各フォトダイオード位置xに対してゲイン係数G(x)=k/L(x)を計算するステップであって、kが正規化係数である、ステップと、
正規化されたセグメント画像値NOS(x、y)=G(x)×NSI(x、y)を得るために、前記それぞれのx位置に対して、すべての正味のセグメント画像値NSI(x、y)に前記ゲイン係数G(x)を掛け合わせるステップと、
前記正規化されたセグメント画像値NOS(x、y)に基づき、各々の前記2つの暗色ストライプ内で、前記y方向のラスタ間隔の一部における画像強度重み付きのセントロイドラインを計算するステップと、
前記正規化されたセグメント画像値NOS(x、y)を、正規化された座標ラスタ(x、y)を基準とした正規化された較正テンプレート値NCT(x、y)へと変換するステップであって、前記座標yが前記セントロイドラインから始まり、2つのセントロイドラインの間の周期的な間隔を基準として縮尺を決定され、正規化された各較正テンプレート値NCT(x、y)に割り当てられる前記明度値が、隣接し合う正規化されたセグメント画像値NOS(x、y)を補間することにより得られる、ステップと、
前記正規化された較正テンプレート値NCT(x、y)を前記デジタルテンプレート画像としてメモリアレイに記録するステップと
を含む、方法。
【請求項10】
請求項2、請求項2を引用先に含む請求項3から9のいずれかに記載の方法において、
ステップI1)が、
前記走査平面に対して物品(3)が接近することを感知するステップと、
生画像データのデータアレイRID(x、y)の形態の、前記モジュール型コンベヤチェーンの下にある背景を含めた前記物品(3)の前記放射線画像を取得するステップと
を含む、方法。
【請求項11】
請求項9を引用先に含む請求項10に記載の方法において、
ステップI2)が、
正味の画像データNID(x、y)を生成するために前記生画像データのデータアレイRID(x、y)から前記暗部信号D(x)を差し引くステップと、
正規化される画像値NOI(x、y)=G(x)×NID(x、y)を得るために、前記それぞれのx位置に対して、すべての正味の画像値NID(x、y)に前記ゲイン係数G(x)を掛け合わせるステップと、
前記正規化される画像値NOI(x、y)内で、前記暗色ストライプを示す部分を特定し、検査下の物品の前記放射線画像と重ならない前記暗色ストライプの部分に対して前記画像強度重み付きのセントロイドラインの計算を適用するステップと、
前記正規化される画像値NOI(x、y)を、下の背景内にある例えば最初の完全なモジュール型セグメントを示す前記デジタルテンプレート画像の前記座標ラスタ(x、y)を基準としたテンプレート基準の画像アレイTRI(x、y)へと変換するステップであって、隣接し合う正規化される画像値NOI(x、y)を補間することにより、前記テンプレート基準の画像アレイTRI(x、y)内の各ラスタドットに割り当てられる明度値が得られる、ステップと
を含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
ステップI3)が、
前記テンプレート基準のデジタル画像から前記ヒンジの前記背景を排除する演算プロシージャで、前記テンプレート基準の画像アレイTRI(x、y)と前記正規化された較正テンプレートNCT(x、y)とをマージするステップであって、各ラスタ位置(x、y)に対して、前記正規化された較正テンプレート値NCT(x、y)の対応する値に基づいてそれぞれのピクセル値TRI(x、y)が個別に修正され、前記モジュール型コンベヤチェーンの前記背景を含まない前記物品の最終的な放射線画像が得られる、ステップと、
前記物品内に含有される可能性がある異物を含む不規則なものの存在に関して前記最終的な放射線画像を分析するステップと
を含む、方法。
【請求項13】
請求項から12までのいずれか1項に記載の方法を実施するように動作可能である放射線検査システム(1)であって、走査線を放射する放射線源(4)と、前記走査線を受信して検出器信号へと変換するフォトダイオードアレイ(7)の形態の放射線検出器(5)と、前記検出器信号に基づいて放射線画像を生成するプロセッサと、前記放射線源(4)と前記放射線検出器(5)との間に配置され、検査下の物品(3)を移送するように機能する同一のモジュール型セグメント(21)を備えるモジュール型コンベヤチェーン(2)と、を備え、前記同一のモジュール型セグメント(21)の各々が、前記放射線画像内で明確に識別される目立つ画像フィーチャとして現れる少なくとも1つの要素を備える、放射線検査システム(1)。
【請求項14】
請求項13に記載の放射線検査システムにおいて、
各モジュール型セグメントが、放射線に対する実質的に一様な高い透過度を有する実質的に平坦な平坦領域を有し、前記平坦領域が実質的に長方形形状であり、前記モジュール型コンベヤチェーンの全幅にわたってx方向に延在し、1つのヒンジから次のヒンジまでy方向に延在し、前記放射線画像では、前記モジュール型セグメントの前記平坦領域が明るい領域として現れ、それに対して前記ヒンジが暗色ストライプとして現れ、したがって、前記放射線画像で、前記一連のモジュール型セグメントが、前記モジュール型コンベヤチェーンの移動方向を横断するように延びる明暗の平行なストライプのパターンを形成し、前記平行な暗色ストライプが、前記正規化された放射線画像データが基準とすることができる前記明確に識別可能なフィーチャを示す、放射線検査システム。
【請求項15】
請求項13または14に記載の放射線検査システムにおいて、
射線がX線を含み、X線より長い波長を有する光に対して最も高いスペクトル感受性を有する前記フォトダイオードが、前記X線を、前記フォトダイオードの前記スペクトル感受性に適合する波長の光へと変換するように設計される蛍光性コーティングを備える、放射線検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査下の物品がエンドレスループコンベヤ上でX線機械または別の放射線スキャナシステムを通るように移動する、放射線検査システムの分野に関する。詳細には、本発明は、エンドレスループコンベヤがモジュール型コンベヤチェーンである放射線検査システムを動作させる方法に関し、本発明の特定の主題は、コンベヤチェーンの透過率のばらつきがスキャナシステムによって生成される放射線画像に与える影響を打ち消すための方法である。さらに、本発明は、本方法を実行するための必要不可欠な特徴を備える放射線検査システムにも関連する。
【背景技術】
【0002】
本文脈の「コンベヤチェーン」という用語は、コンベヤベルトに類似するエンドレスループコンベヤデバイスを意味するが、コンベヤチェーンがクローズドループで互いに接続される多数の剛性セグメントまたはリンクから構成され、各リンクが後ろのリンクおよび前のリンクに連接的にヒンジ留めされる点が異なる。セグメントは互いにすべて同じか、または、異なるセグメントのグループがコンベヤチェーンを通して等しく繰り返されてよい。繰り返される個別のセグメントまたはセグメントのグループは本明細書ではモジュール型またはモジュール型セグメントと称され、したがって、コンベヤチェーンはモジュール型コンベヤチェーンと称される。
【0003】
スキャナ放射線(scanner radiation)の少なくとも一部分が、検査下の製品およびその周りの空気空間を通過することに加えて、エンドレスループコンベヤも通り抜けるような幾何学的構成を有するような検査システムでは、エンドレスループコンベヤの放射線透過率が影響する。この種類の検査システムは、例えば、ボトル詰めまたは缶詰めされる食品および飲料製品内の異物を検出することに使用される。特に問題となるのは、液体製品中に金属片およびガラス片が存在することである。このような異物は液体よりも密度が高く、容易の底部に集まる。また、容器がドーム形の底部を有する場合、傾向として、異物が容器の底部と側壁とが繋がるところの周囲部に定着する。したがって、各容器の底部表面の内部全体が走査によってカバーされるようにエンドレスループコンベヤに対して放射線スキャナシステムを構成および配置することが非常に重要である。したがって、放射線の少なくとも一部分が容器の底部を通過して、さらにそれにより、容器および検査される任意の別の物体を上に配置されるエンドレスループコンベヤの領域も通過するような、スキャナ構成を使用することが必要となる。
【0004】
通常の構成では、検査に使用される線は例えばコンベヤ経路の上方または側方に位置する供給源から発せられて側壁を斜めの角度で通過して容器に入って容器の底部を通って外に出てコンベヤを通過し、画像処理システムに接続されるカメラシステムによって受信される。別法として、例えばボトル詰めまたは缶詰めされない物体が検査される場合、放射線源はコンベヤの垂直上方に配置されてよく、放射線検出器がコンベヤの垂直下方に配置されてよい。
【0005】
放射線検査システムがX線システムである場合、線は例えばX線画像増幅器およびカメラによって受信され得るかまたはX線ラインアレイセンサによって受信され得、X線ラインアレイセンサは受信に応答して画像処理システムに信号を送信する。通常、撮像放射線は、局部的な供給源すなわちスポットサイズの放射線源からファン形状(fan−shaped)の平坦なバンドル(planar bundle)の線として発せられ、全体として検出器と称される線形アレイのフォトダイオードによって受信され、ここでは、ファン形状の放射線バンドルおよび線形アレイのフォトダイオードは走査平面とも称される共通の平面内に位置し、この平面は、検査される物品を運ぶコンベヤの移動方向に対して実質的に垂直に延びる。検査下の物品が走査平面を通過して移動するときに線形アレイのフォトダイオードが連続する一連の離散的パルスによって起動され、ここでは、検出器アレイによって受信される一連の信号が放射線源と放射線検出器との間の物質ボディの透過的影画像を示すゼロから255の明度スケールに例えば基づいて示される異なる明度値のラスタドット(raster dot)のパターンへと変換され得るようにするために、パルス周波数がコンベヤの速度に合うように調整される。走査される物品が走査される物品と比較して走査線(scanning ray)に対する透過度が低い金属片などの異物を含有する場合、放射線画像は、走査される物品の透過的影画像内により暗い領域としてこれらの異物を示すことになる。
【0006】
現況技術では、放射線検査システムの移送デバイスとして使用されるエンドレスループコンベヤは多くの場合で重合体ファブリックベルト(polymer fabric belt)である。このタイプのコンベヤは、ベルトの厚さが一定であることおよびベルトが一様であることからX線画像の品質が受ける影響が最小である、という利点を有する。しかし、重合体ファブリックベルトではなくモジュール型コンベヤチェーンを好適とする有力な主張が多数ある。これは具体的には以下のものである:
− 特にボトルおよび缶の産業では、ファブリックベルトは損傷しやすく、早期に摩耗することから、その使用に対して強い抵抗がある。対して、エンドレスループとして一体に連結される剛性プラスチック要素(通常は、アセタール樹脂またはポリプロピレン)で構成されるコンベヤチェーンはより高い強度を有し、硬質金属またはガラス容器によって損傷しにくい。
【0007】
− コンベヤチェーンは、チェーンプロファイルに直接に係合されるスプロケットを用いて駆動されることが可能であることから、チーズのブロックなどの重い物品により良好に適する。
【0008】
− コンベヤチェーンのセグメントは、チェーンが反対側に曲がることに抵抗する剛性を有しながら駆動スプロケットの周りでループするための一方向の柔軟性を有するように、一体にヒンジ留めされ得る。この特性により、継続的に使用される形では信頼性が低下する可能性があるような誘導機構の必要性が排除される。
【0009】
− コンベヤチェーンはベルトより交換および修理が容易である。その理由は、チェーンのモジュール型セグメントを一体に連結するためのヒンジピンのうちの1つを取り外すことによりチェーンが解放され得るからである。
【0010】
− コンベヤチェーンは、セルフトラッキングするように、また、コンベヤ支持構造物の面と面一となるように延在するように、設計され得る。この最後の特性は、横方向に隣接するコンベヤの間で製品を側方に容易に移動させるのを可能にすることから、重要である。
【0011】
しかし、チェーンリンクがX線画像に干渉する可能性があることから、放射線検査システムにおいて、プラスチックチェーンリンクを備える一般的なチェーンコンベヤを使用することには問題がある。これまで、コンベヤチェーン上で移動する製品にX線を当てることを望む場合、例えば、チェーンセグメント間のヒンジまたは別の接続部を原因として、あるいは、チェーンセグメントを補強するように設計されるプロファイルフィーチャを原因として、製品に重なり合うコンベヤチェーンの透過度のばらつきにより得られる画像が劣化していた。この画像干渉問題を解決することができれば、上に列記したモジュール型コンベヤチェーンの利点を放射線検査システムにも適用することができる。
【0012】
本発明と譲受人が同じであるUS2012/0128133A1では、コンベヤチェーンの幅全体を通して厚さおよび密度が一様である剛性プレートとして本質的に構成されるチェーンセグメントを有するコンベヤチェーンを用いることにより、透過度のばらつきの問題が解決されており、ここでは、セグメントがスキャナ放射線に対して一様な透過度の実質的にギャップレスのバンドを形成するように互いに重なり、また、ここでは、セグメントを一体に連結させるコネクタまたはヒンジ(セグメントの平坦領域より低い透過度を有する)がスキャナ放射線が通り抜けるバンドの外側に位置する。したがって、セグメント間の接続部は好適にはコンベヤチェーンの2つの側方境界領域内に位置する。
【0013】
上述の概念によるコンベヤチェーンでは、中央の均質バンド領域にヒンジまたは任意の別の補強フィーチャが存在しないことにより、横方向の曲げに対するチェーンセグメントの剛性が低下し、したがって実際のデザインで実現され得るコンベヤの幅が制限される。
【0014】
別の解決策が、やはり本発明と譲受人が同じであるEP2711694A1として公開される未公開欧州特許出願で提供されており、その内容全体が参照により本開示に組み込まれる。要約すると、放射線検査システムを動作させる方法が説明されており、これは、同一のモジュール型チェーンセグメントを備えるコンベヤチェーンが検査下の物品を移送するようなシステムのために特に設計される。
【0015】
欧州特許出願EP2711694A1の方法は、放射線検査システムの2つの動作モードを包含する。較正モードと称される第1のモードでは、空のコンベヤチェーンの1つのモジュール型セグメントの画像が較正データと称されるデジタルピクセルデータの形態で記録および記憶される。1つのモジュール型セグメントのみの較正データが記録される理由は、チェーンの各モジュール型セグメントにおいて較正データのセットが等しく繰り返されるからである。検査モードと称される第2のモードでは、コンベヤチェーンの背景を含めた検査下の物品の画像が生画像データと称されるデジタルピクセルデータの形態で記録される。そのすぐ後、つまり、ピクセルの各行が記録された後、生画像データが、較正データの補助によりコンベヤチェーンの干渉する背景を消すことにより鮮明な出力画像へと演算処理される。
【0016】
較正モードで収集および記憶された較正データに対して検査モードで収集された生画像データを幾何学的に相互に関連付けるのを可能にするためには、放射線画像のすべてのラスタドットをモジュール型セグメントを基準としてx/y座標に基づいて登録して、各ピクセル値をそのx/yアドレスを用いてまとめて記憶することができるようにする必要がある。
【0017】
モジュール型セグメントの横断方向(ヒンジピンに平行)の登録座標xは、単純に、放射線画像内でのその位置に関連するフォトダイオードのアレイ位置に基づいてよい。
チェーンの長手方向(すなわち、コンベヤの移動方向)の登録座標yに関しては、欧州特許出願EP2711694A1が、チェーンの一部分であるかまたはチェーンと一体に移動する物理的登録フィーチャの概念を提案している。好適な実施形態では、登録フィーチャは、モジュール型セグメント上に形成されるランプ形状の側方境界部分として実現される。動作中、ランプ形状の境界がファン形状の放射線バンドルの周縁セクタを阻害し、それにより、センサアレイによって受信される画像がランプ高さを示すようになり、そこからプロセッサにより直接に長手方向の登録座標yが計算され得る。
【0018】
欧州特許出願EP2711694A1による上述の方法および装置では、ランプとして例示される物理的登録フィーチャは通常ではコンベヤチェーンに設けられないフィーチャであり、コンベヤチェーンの長手方向yの登録基準を提供することのみを目的として追加されるものである。発明者らは、コンベヤチェーンに物理的フィーチャを追加することの代替形態として、特別な専用の物理的登録フィーチャの補助を用いずに記録された背景画像に対して検査画像を直接に登録するために既知の画像適合技術および画像補間技術を使用することにより、検査モードで収集された生画像データを較正データに幾何学的に相互に関連付けることも可能であることを思い付いた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】US2012/0128133A1
【特許文献2】EP2711694A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
放射線製品検査のプロセスで較正画像に対して検査画像を正確に登録することの問題の解決策としての、画像マッチング技術および画像補間技術に見られる大きな潜在性を考慮して、本発明の目的は、モジュール型コンベヤチェーンの背景画像に対して検査される物品の生画像を幾何学的にマッチングするために特別な専用の物理的登録フィーチャを使用することに対する実行可能な代替形態を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
言及した本発明の目的は、独立請求項1による放射線検査システムを較正して動作させる方法により、および、請求項13に記載される必要不可欠な能力を有する放射線検査システムにより、達成される。本発明の詳細な特徴および別の開発される特性が従属請求項で定義される。
【0022】
本発明による方法が、走査線を放射する放射線源を備え、さらには、走査線を受信してそれらを検出器信号に変換する放射線検出器を備え、検出器信号に基づいて放射線画像を生成するプロセッサを備え、さらには、クローズドループで接続される同一のモジュール型セグメントを装備するモジュール型コンベヤチェーンを備える、放射線検査システムで使用されるように設計され、ここでは、検査下の物品が、走査線が通り抜ける空間を通るようにモジュール型コンベヤチェーン上で移送される。本発明によると、本方法は、コンベヤチェーンセグメントと、放射線検出器の固有の要因とによって本質的に生成される背景画像を上記の放射線画像から排除するタスクを達成する。その結果、コンベヤチェーンの干渉する背景画像なしで検査下の物品を示す出力画像が得られる。
【0023】
本質的には、本方法は、放射線検査システムの2つの動作モード、すなわち、較正モードおよび検査モードを包含する。
較正モードでは、放射線源および放射線検出器さらには画像データの影響を反映する、モジュール型セグメントのうちの少なくとも1つのモジュール型セグメントのためのデータが放射線検査システムによって取得され、デジタル処理されて較正データとされてテンプレート画像として放射線検査システムのメモリに記憶される。テンプレート画像はランダムに選択されるモジュール型セグメントの任意の1つに基づいてよい。しかし、製造公差を得るために、つまり、存在する可能性があるセグメント間のわずかなばらつきのために、複数のセグメントをサンプルとして抽出してそのデータを平均化することが望ましい場合がある。この場合、テンプレートは、複数のモジュール型セグメントの複合体、またはさらには、コンベヤチェーンのモジュール型セグメントのすべてを示すことができる。
【0024】
較正モードの第1のステップC1)では、放射線源の停止中にそれぞれのダイオード電流を測定することにより、検出器アレイの個別のフォトダイオードの暗部信号(dark signal)が決定される。各ダイオードのそれぞれの「暗部電流(dark current)」が暗部レベル値(dark−level value)としてメモリに記憶される。次いで、フォトダイオードのうちの任意のダイオードによりステップC2)およびI1)で取得されるすべての明度値に関して、そのダイオードに対する記憶されたそれぞれの暗部レベル値が測定されたダイオード電流から差し引かれ、放射線源が停止されている場合のすべてのダイオードに対して得られる正味の電流値がゼロとなる。
【0025】
較正モードの第2のステップC2)で、すぐ前のモジュール型セグメントおよび次のモジュール型セグメントの隣接する境界部分を含めたモジュール型セグメントの1つに対して、生セグメント画像データが取得される。生セグメント画像データは、データアレイ内で、隣のモジュール型セグメントの隣接する境界部分を含めたモジュール型セグメントの生セグメント画像として保持される。
【0026】
較正モードの第3のステップC3)で、ステップC2)で保持されたデータがデジタル処理されて正規化されたテンプレート画像とされ、この正規化されたテンプレート画像は、各々のモジュール型セグメントの放射線画像に等しく発生する少なくとも1つの明確に識別可能なフィーチャを基準とする。正規化されたテンプレート画像はプロセッサのメモリファイルにデジタル画像アレイとして記憶される。
【0027】
検査モードで、コンベヤチェーンの背景を含めた検査下の物品の放射線画像が放射線検査システムにより生デジタル画像データの形態で取得される。生画像データが以前に記憶されたテンプレート画像データの補助により演算処理され、コンベヤチェーンの干渉する背景を含まない物品のみの鮮明な出力画像となる。
【0028】
検査モードの第1のステップI1)で、放射線画像内で物品と少なくとも部分的に重なるすべてのコンベヤチェーンセグメントを含めた、一度に1つの物品の生放射線画像が取得される。生放射線画像が2次元データアレイで保持される。
【0029】
検査モードの第2のステップI2)で、生デジタル画像が演算処理され、少なくとも1つの明確に識別可能なフィーチャを基準とする正規化されたデジタル画像となり、この正規化されたデジタル画像および正規化されたテンプレート画像が少なくとも1つの明確に識別可能なフィーチャに対して一致するように関連付けられる。
【0030】
検査モードの第3のステップI3)で、正規化されたデジタル画像および正規化されたテンプレート画像が、正規化されたテンプレート画像に対応する修正を正規化されたデジタル画像に適用することにより正規化されたデジタル画像からコンベヤチェーンの背景を排除する演算プロシージャでマージされる。
【0031】
必要不可欠な概念および専門用語に言及した後で、ステップC1)、C2)、C3)、I1)、I2)、I3)の各々を以下でより詳細に説明する。
本方法は、コンベヤチェーンが同一のモジュール型セグメントのエンドレスループによって構成されるという事実を利用する。したがって、較正モードではモジュール型セグメントのうちの任意の1つのデータを取得、処理および記憶することで十分であり、通常は数百のセグメントを備えるチェーン全体のデータを取得することはなく、仮にそのようなデータを取得する場合には較正モードでそれに相応して時間が増大し、テンプレート画像データを記憶するために法外に高いメモリ能力が必要となる。
【0032】
本発明による方法は、好適には、空間的に集中する構成の放射線源を有する放射線検査システムを用いて実施され、つまり、規則的な間隔で配置されるフォトダイオードの線形アレイの形態の局所的なスポットサイズの放射線源および放射線検出器を用いて実施され、ここでは、放射線源および放射線検出器がモジュール型コンベヤチェーンを間にして互いの方を向き、ファン形状の平坦なバンドルの走査線が放射線源から放射線検出器まで発せられ、ファン形状の放射線バンドルおよびフォトダイオードの線形アレイがコンベヤチェーンの移動方向に対して実質的に垂直に延びる共通の走査平面にある。
【0033】
さらに、本発明の方法を実施するように動作可能である放射線検査システムでは、少なくとも、物品が走査平面を通って移動するときに、放射線源により放射線の連続ストリームのスキャナ放射線が生成されるとともに、検出器信号を生成するために放射線検出器がパルスによって起動され、ここでは、パルスのタイミングがコンベヤチェーンの移動に同期され、したがって、ファン形状の平坦なバンドルの放射線が放射線検出器の出力信号を生成するときの時点がコンベヤチェーンの一様な移動間隔に一致するようになる。このようなパルスは通常はロータリエンコーダまたはリニアエンコーダによって生成され得る。
【0034】
各々の個別のトリガーパルスで、検出器アレイの個別のフォトダイオードによって受信される放射線が実質的に等距離の画像ドットの線へと変換される。トリガーパルスがコンベヤチェーンの移動に同期されると、任意の一連の連続的トリガーパルスが画像ドットの一連の実質的に等距離の平行線を生成し、この得られる平行線が画像ドットの線およびカラムのラスタとなり、ここでは、画像ドットの各線がコンベヤチェーンの移動運動の所与の点で発生するトリガーパルスに関連付けられ、画像ドットの各カラムがフォトダイオードの線形アレイ内の特定のフォトダイオードに関連付けられる。ラスタ内の各画像ドットは、コンベヤチェーンの移動方向に対して垂直な方向のラスタ間隔に関するラスタ座標xと、コンベヤチェーンの移動方向のラスタ間隔に関するラスタ座標yとを基準としてよく、x/y座標系の原点はラスタ線とラスタカラムとの任意に選択される交差点のところに配置されてよく、これは例えば、フォトダイオードアレイの一方の端部のところにあるフォトダイオードに関連付けられるラスタカラムに対してx=0を割り当て、走査平面を通って物品が移動するときの有限時間に記録される最初のラスタ線に対してy=0を割り当てることによってなされる。ラスタ内の各画像ドットは明度値B(x、y)のデジタル形態で表現され得る明度レベルによって個別に特徴付けられ、すべての明度値B(x、y)の全体が処理されて2次元データアレイとして記憶され得る。
【0035】
ラスタの位置(x、y)における画像ドットの明度値B(x、y)は以下のファクタによって決定される:
1.検出器アレイ内の各フォトオードの個別の異なる暗部信号および光感受性;
2.ファン形状の放射線バンドルの供給源から各フォトダイオードまでの個別の異なる距離;
3.コンベヤチェーンに吸収されることを原因とする、放射線源から各フォトダイオードまでの線経路に沿う、個別に異なる放射線強度の損失量;
4.検査下の物品に吸収されることを原因とする、放射線源から各フォトダイオードまでの線経路に沿う、個別に異なる放射線強度の損失量。
【0036】
したがって、本発明による方法は、生放射線画像すなわち未処理の放射線画像の4つの決定ファクタのうちの最初の3つを相殺するタスクを実施することが可能であると言うことができ、したがって、得られる処理された画像は、検査下の物品に実際に吸収された放射線の量のみを示す。
【0037】
本発明の好適な実施形態では、各モジュール型セグメントが、放射線に対する実質的に一様な高い透過度を有する実質的に平坦で比較的狭い領域を有する。この平坦領域は実質的に長方形形状であり、コンベヤチェーンの全幅にわたってx方向に延在し、また、1つのヒンジから次のヒンジまでy方向に延在する。放射線画像では、モジュール型セグメントの平坦領域が明るい領域として現れ、それに対して各々のモジュール型セグメントの放射線画像に等しく見られる上で言及した明確に識別可能なフィーチャがヒンジの画像を示す暗色ストライプで構成され、したがって、放射線検査システムの動作中に取得される任意の放射線画像では、一連のモジュール型セグメントが、コンベヤチェーンの移動方向を横断して延びる明暗の平行なストライプのパターンを形成する。
【0038】
モジュール型セグメントの平坦な部分およびヒンジが明暗の平行なストライプの放射線画像を生成するような、本発明のこのような実施形態に関して、本発明による方法のステップC1)、C2)、C3)、I1)、I2)、I3)を以下のようにより具体的に定義することができる:
較正モードのステップC1)が以下のオペレーションを伴う:
− 放射線源を停止させること、
− フォトダイオードの線形アレイの各ダイオードに対してダイオード電流を測定すること、
− アレイ位置xのところにあるダイオードに対して、ダイオード電流をデジタル化して暗部信号D(x)として1次元メモリアレイに記憶すること。
【0039】
較正モードの次のステップC2)が以下のオペレーションを伴う:
− 放射線源を動作させてコンベヤチェーンの移動を開始すること;
− モジュール型セグメントをすぐ前のモジュール型セグメントおよび次のモジュール型セグメントに接続するヒンジを示す2つの暗ストライプの全範囲を含めてモジュール型セグメントのうちの1つを包含する生セグメント画像データを取得し、2次元データアレイRSI(x、y)として生セグメント画像データを収集することであり、ここでは、例えば、フォトダイオードアレイの一方の端部のところにあるフォトダイオードに関連付けられるラスタカラムに対してx=0を割り当て、生セグメント画像データを取得するときに記録されるラスタドットの最初の線に対してy=0を割り当てることにより、x/y座標系の原点が画定され得る。
【0040】
較正モードのステップC3)が以下の一連の算術演算を伴う:
− 各x/y位置に対して、正味のセグメント画像値NSI(x、y)を得るために、生セグメント画像値RSI(x、y)から暗部信号D(x)を差し引くこと;
− データアレイNSI(x、y)内で、暗色ストライプを示す部分を特定すること;
− 暗色ストライプの間の明るい領域を特定し、上記の明るい領域内の各x位置に対して正味のセグメント画像値NSI(x、y)を平均化することにより線形較正アレイL(x)を計算すること;
− 各フォトダイオード位置xに対してゲイン係数G(x)=k/L(x)を計算することであり、ここでは、kは正規化係数(例えば、8ビットデータの場合はk=255)である;
− 正規化されたセグメント画像値NOS(x、y)=G(x)×NSI(x、y)を得るために、それぞれのx位置に対して、すべての正味のセグメント画像値NSI(x、y)にゲイン係数G(x)を掛け合わせること;
− 正規化されたセグメント画像値NOS(x、y)に基づき、各々の2つの暗色ストライプ内で、y方向のラスタ間隔の一部における画像強度重み付き(image−intensity−weighted)のセントロイドライン(centroid line)を計算すること;
− 正規化されたセグメント画像値NOS(x、y)を、正規化された座標ラスタ(x、y)を基準とした正規化された較正テンプレート値NCT(x、y)へと変換し、ここでは、座標yがセントロイドラインから始まり、2つのセントロイドラインの間の周期的な間隔(または、その一部)を基準として縮尺を決定され、またここでは、正規化された各較正テンプレート値NCT(x、y)に割り当てられる明度値が、隣接し合う正規化されたセグメント画像値NOS(x、y)を補間することにより得られる;
− 正規化された較正テンプレート値NCT(x、y)をデジタルテンプレート画像としてメモリアレイに記録すること。
【0041】
正規化された座標ラスタ(x、y)は、テンプレート画像のためのフレームを提供し、さらには、テンプレート画像内の各ラスタドットのための登録手段を提供するという点において、本発明の基本的な態様である。フレームは、隣り合うモジュール型セグメントに取り付けられるヒンジを示す2つのセントロイドラインと、検出器アレイの最初のダイオードおよび最後のダイオードをそれぞれ示すラスタドットの2つの境界カラムとによって形成される。ファン形状の平坦なバンドルの放射線がコンベヤチェーンの両方側のその幅の外側まで延びると、テンプレートのx座標の原点x=0および終点x=n(ここでは、n+1が検出器アレイ内のフォトダイオードの数である)が、コンベヤチェーンの両側のその幅の外側に位置する。つまり、テンプレート画像は、コンベヤチェーンのモジュール型セグメントのみではなく、撮像線が通り抜けるところの、コンベヤチェーンの両側の追加の幅の空気空間も示す。ラスタ間隔さらにはy軸の原点は任意に選択され得、これは例えば、テンプレートフレームを形成するセントロイドラインの間の間隔の1/100としてy縮尺間隔を定義し、走査平面を通過する最初のヒンジを示すセントロイドラインに対してy=0を割り当て、テンプレートフレームの反対側の境界に対してy=100を割り当てることによりなされ、テンプレートフレームの反対側の境界は同時に次のモジュール型セグメントのためのテンプレート座標y=0を示す。
【0042】
本明細書では検査モードと称される通常動作モードでは、走査平面を通過する各物品に対して直接に連続的に以下のステップが実施される:
ステップI1)が以下のオペレーションを含む:
− 走査平面に対して物品が接近することを感知すること;
− 放射線画像内で物品と少なくとも部分的に重なるすべてのコンベヤチェーンの全範囲を含めた物品の生放射線画像を取得し、生の明度値のデータアレイRID(x、y)の形態で生画像データを保持することであり、ここでは、x/y座標系がステップC2)に類似する手法で画定され得る。
【0043】
検査モードのステップI2)が以下のオペレーションを含む:
− 正味の画像データNID(x、y)を生成するために生画像データRID(x、y)から暗部信号D(x)を差し引くこと;
− 正規化される画像値NOI(x、y)=G(x)×NID(x、y)を得るために、それぞれのx位置に対して、すべての正味の画像値NID(x、y)にゲイン係数G(x)を掛け合わせること;
− データアレイNOI(x、y)内で、暗色ストライプを示す部分を特定し、検査下の物品の画像と重ならない暗色ストライプの部分に対して画像強度重み付きのセントロイドラインの計算を適用すること;
− 画像アレイNOI(x、y)を、下の背景内にある例えば最初の完全なモジュール型セグメントを示すテンプレート画像の座標ラスタ(x、y)を基準としたテンプレート基準の画像アレイTRI(x、y)へと変換することであって、ここでは、隣接し合う正規化された画像データ値NOI(x、y)を補間することにより、テンプレート基準の画像アレイTRI(x、y)内の各ラスタドットに割り当てられる明度値が得られる。
【0044】
検査モードのステップI3)が以下のオペレーションを含む:
− テンプレート基準のデジタル画像からヒンジの背景を排除する演算プロシージャで、テンプレート基準の画像アレイTRI(x、y)と正規化された較正テンプレートアレイNCT(x、y)とをマージすることであり、ここでは、各ラスタ位置(x、y)に対して、較正テンプレートアレイの対応する値NCT(x、y)に基づいてそれぞれのピクセル値TRI(x、y)が個別に修正され、モジュール型コンベヤチェーンの背景を含まない物品の最終的な放射線画像が得られる;
− 物品内に含有される可能性がある異物などの不規則なものの存在に関して最終的な放射線画像を分析すること。
【0045】
本発明の範囲はまた、上述の説明に含まれる態様のうちの任意の態様に従って本方法を実施するための必要不可欠な特徴および能力を備える放射線検査システムを包含する。具体的には、本発明による放射線検査システムは、一方で、同一のモジュール型セグメントを備えるモジュール型コンベヤチェーンであって、ここでは、同一のモジュール型セグメントの各々が、放射線画像内で明確に識別される目立つ画像フィーチャとして現れる少なくとも1つの要素を備える、モジュール型コンベヤチェーンを備え、さらに一方で、明確に識別される目立つ画像フィーチャに基づいてモジュール型セグメントの正規化されたテンプレートラスタおよびテンプレート画像を確立することができ、さらに、検査下の物品の画像からコンベヤチェーンの背景を排除するタスクにテンプレートを適用することができるプロセッサを装備する。
【0046】
放射線検査システムの好適な実施形態では、少なくとも1つの明確に識別される目立つ画像フィーチャが、モジュール型コンベヤチェーンの放射線画像内で平行な等距離の暗色ストライプで構成され、ここでは、暗色ストライプが、各モジュール型チェーンセグメントをコンベヤチェーンのエンドレスループ内の前のセグメントおよび次のセグメントに接続させるヒンジを示す。
【0047】
さらに、好適には、各モジュール型セグメントが、放射線に対する実質的に一様な高い透過度を有する実質的に平坦で比較的狭い領域を有する。この平坦領域は実質的に長方形形状であり、コンベヤチェーンの全幅にわたってx方向に延在し、また、1つのヒンジから次のヒンジまでy方向に延在する。放射線画像では、モジュール型セグメントの平坦領域が明るい領域として現れ、したがって、放射線検査システムの動作中に取得される任意の未処理の放射線画像内で、一連のモジュール型セグメントが、コンベヤチェーンの移動方向を横断して延びる明暗の平行なストライプのパターンを形成する。
【0048】
放射線検査システムの好適な実施形態では、放射線はX線で構成される。その理由は、可視光線に対して不透過性である物体を透過する能力を有するからである。検出器アレイのフォトダイオードは、X線より長い波長を有する光に対して最も高いスペクトル感受性を有することから、好適には、X線を、フォトダイオードのスペクトル感受性に適合する波長の光へと変換するように設計される蛍光性コーティングを担持する。
【0049】
特定の実施形態および本発明の詳細の以下の説明は添付図面の補助を受ける。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1図1は本方法を実施するための必要不可欠なフィーチャを備える放射線検査システムを示す図である。図1A図1の拡大される細部を示す図である。
図2A】本発明による放射線検査システム内にあるコンベヤチェーンの一部分を示す別の図である。
図2B】本発明による放射線検査システム内にあるコンベヤチェーンの一部分を示す別の図である。
図2C】本発明による放射線検査システム内にあるコンベヤチェーンの一部分を示す別の図である。
図3】本発明の好適な実施形態で使用される種類のモジュール型コンベヤチェーンを示す図である。
図4図4Aは、等距離の暗色ストライプがヒンジを示しており、暗色ストライプ内の狭い直線がセントロイドラインを示している、空のコンベヤチェーンの放射線画像を示す図である。図4Bは、テンプレートフレームおよびテンプレートラスタを含めた、図4Aの放射線画像から得られる正規化されたテンプレート画像を示す図である。
図5図5Aは暗色ストライプの背景を含めた、検査される物品の未処理の放射線画像を示す図である。図5Bは本発明による方法によって背景が排除された後の図5Aの画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1および1Aは、本発明による方法を実行するための適切な構成の放射線検査システム1を示す。放射線検査システム1の主要な要素は、モジュール型コンベヤチェーン2(断面で示され、見る者に向かう方向に移送方向を有する)と、コンベヤチェーン2上で移送される物品3と、放射線源4と、線形フォトダイオードアレイ7を備える検出器5とである。放射線源4はスポットサイズであり、好適には約1mmの領域にわたって延在し、撮像線を生成し、この撮像線はファン形状の平坦なバンドルとして放射線源4から検出器5のフォトダイオードアレイ7まで発せられる。撮像線のファンのセグメント8が物品3を通過して、撮像線のセグメント9が物品3を通り抜けずにコンベヤチェーン2のみを通過する。1つのトリガーパルスに反応してアレイ7内のフォトダイオードによって生成される信号が、放射線検査システム1のコンピュータまたはプロセッサ(図面には図示されない)により、モジュール型コンベヤチェーン2およびその上で移送される物品3を示すラスタ形状の放射線画像の画像ドットの線へと変換される。コンベヤチェーン2が物品3と共に継続的に移動するとき、通常はロータリエンコーダまたはリニアエンコーダによって生成されるパルスである、放射線検出器5によって受信される各トリガーパルスが、ラスタ形状の放射線画像の新しい線を生成する。
【0052】
図2Aがコンベヤチェーンの移送表面側の斜視図でモジュール型コンベヤチェーン2の2つのセグメント21を示し、図2Bが下側の斜視図を示し、図2Cがコンベヤチェーンセグメント21の側面図を示す。セグメント21が、コンベヤチェーン2の全幅にわたって延在するヒンジピン23を備えるヒンジ22により互いに接続される。ヒンジ22およびヒンジピン23は検査システムの撮像放射線に対して透過性であるべきであるが、高い信頼性で明度重み付きのセントロイドライン(図4Aを参照)を決定され得る暗色ストライプを形成するために十分な光学密度を有さなければならない。
【0053】
図3は、本発明の好適な実施形態で使用される種類のモジュール型コンベヤチェーン30を示す。この図はコンベヤチェーン30の下側を向いており、平坦な表面であるコンベヤチェーン30の上側または移送側とは異なり、コンベヤチェーン30からヒンジ32の輪郭が明確な突起部として突出する。ヒンジ32を除いて、モジュール型セグメント31は平坦であり、一様であり、薄い。
【0054】
図4Aが、較正モードの正規化手順後の、図1の検査システム1で例えば見られる、図3の空のコンベヤチェーン30の放射線画像40を示す。正規化された画像NOS(x、y)では、コンベヤチェーンセグメント31の平坦領域33が、走査放射線の一部分が通り抜ける隣接する空気空間と等しい例えば255の画像強度レベルを有し、これは、較正により、コンベヤセグメントの平坦部分に対する放射線の影響が消去されることを意味する。コンベヤチェーン30のセグメント31の大きいヒンジ部分32は暗い平行なストライプ41として現れる。未較正の生画像のラスタを基準としたこれらの暗色ストライプ41の中心線42の位置は、サブピクセルレベルの精度を有する明度重み付きのセントロイド計算によって決定される。
【0055】
図4Bは、較正モードの正規化手順でテンプレート画像45を画定する手法を示す。テンプレート画像45は、モジュール型セグメント31を隣のモジュール型セグメントに接続させるヒンジ32を示す2つの中心線42によって形成されるテンプレートフレームと、検出器アレイの最初のダイオードおよび最後のダイオードをそれぞれ示すラスタドットの2つの境界カラム46とによって境界を画定される。放射線のファン形状の平坦なバンドルがコンベヤチェーンの両側でその幅の外側まで延びると、テンプレートのx座標の原点x=0および終点x=n(ここでは、n+1が検出器アレイのフォトダイオードの数である)がコンベヤチェーンの両側でその幅の外側に位置する。つまり、テンプレート画像は、コンベヤチェーンのモジュール型セグメントのみではなく、撮像線が通り抜けるところの、コンベヤチェーンの両側の追加の幅の空気空間も示す。y軸上のラスタ間隔は、テンプレートフレームを形成する中心線42の間の間隔の例えば1/100となるように任意に選択され得、走査で記録される最初のヒンジの中心線に対して例えばy=0が設定され、テンプレートフレームの反対側の境界にy=100が設定され、反対側の境界は同時に次のモジュール型セグメント31のためのテンプレート座標y=0を示す。
【0056】
図5Aが検査される物品の中間の放射線画像50を示し、ここでは、暗色ストライプ41の中心線42が決定されており、正規化されるラスタ座標系が確立されており、したがって、テンプレート画像に対して背景を登録することができ、すなわちこの事例では、3つの完全なテンプレート画像の複合体が物品のこの画像内で背景を示すように一体に接合される。
【0057】
図5Bが、本発明による方法の結果である、背景ストライプ41を排除した後の図5Aの物品3の最終的な放射線画像51を示す。
実施形態の特定の実施例を提供しながら本発明を説明してきたが、例えば、個別の実施例の特徴を互いに組み合わせることにより、および/または、本明細書で説明される実施形態の間で個別の機能的ユニットを交換することにより、本発明の教示から数多くの別の多様な実施形態が開発され得ることは読者には明白であろう。例えば、本発明の概念は、検査下の物体さらにはコンベヤチェーンを透過することができる任意の波長の放射線に適用可能である。線形フォトダイオードアレイ以外にも、2Dフォーマット放射線検出器などの放射線検出器が使用され得、例えば、エリアフォトダイオードアレイ、画像増幅器、フラットパネル撮像プレート、または、カメラと組み合わされるシンチレーションスクリーン、さらには、画像を記録するための考えられる別の解決策などが使用され得、ここでは、放射線画像からコンベヤデバイスの背景を消す方法が継続して完全に適用可能である。このような任意の多様な実施形態も本発明の範囲内に包含されるとみなされることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0058】
1 放射線検査システム
2 モジュール型コンベヤチェーン
3 検査下の物品
4 放射線源
5 放射線検出器
7 フォトダイオードの線形アレイ
8 物品を通過する線のファンセグメント
9 チェーンのみを通過する線のファンセグメント
21 モジュール型コンベヤチェーンのセグメント
22 セグメント21を接続するヒンジ
23 ヒンジピン
30 モジュール型コンベヤチェーン
31 モジュール型セグメント
32 モジュール型セグメントのヒンジ
33 モジュール型セグメントの平坦領域
40 空のコンベヤチェーン30の放射線画像
41 平行な暗色ストライプ
42 41の中心線
45 テンプレート画像
46 ラスタドットの境界カラム
50 正規化された放射線画像
51 方法の結果:最終的な放射線画像
x 横断方向の登録座標
y 長手方向の登録座標
正規化された長手方向の登録座標
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5