(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
可撓性フィルムを用いて外周縁をシールして、表裏の面を有して扁平長方形状に形成された可撓性袋体内に液体が収納可能とされ、且つ、前記液体を導出する導出口が前記可撓性袋体の長手方向における一端の先端部側の前記長手方向と直交する幅方向の中央に予め設けられており、外装箱内に収納する液体収納容器において、
前記可撓性袋体の先端部と、該先端部に連なり前記長手方向に延在する前記可撓性袋体の一対の側部との各隅部に、前記幅方向の左右に分かれて一対の補強溶着部を形成し、
前記可撓性袋体の先端部側とは反対の前記長手方向における前記可撓性袋体の他端の後端部側の底部に、2箇所の突状シール部を前記幅方向の中央部位を挟んで間隔を隔てて設け、
前記外装箱に前記液体収納容器が収納された場合に、前記可撓性袋体が前記外装箱の内面に接触することで擦れてピンホールが発生する部位が前記可撓性袋体の表裏の面に生じるような逆V字状の大きな折れが、前記可撓性袋体の底部の前記幅方向における略中央部位に発生するのを抑制するために、前記可撓性袋体内に前記液体を収納して前記底部が変形した際、前記2箇所の突状シール部と対応した前記底部の部位に、逆V字状に凹んだ2つの逆V字状の折れが発生するように、前記2箇所の突状シール部が構成されていることを特徴とする液体収納容器。
【背景技術】
【0002】
一般的に、飲料用液体や、家庭用の液体洗剤などは、可撓性フィルムを用いて表裏の面を有して扁平袋状に形成された可撓性袋体内に収納されている。また、インクジェット印刷装置に適用されるイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)などのインクも、インク色ごとに可撓性袋体内に収納されている。
【0003】
上記した可撓性袋体は、弾性変形可能で可撓性を有する可撓性フィルムを用いて、外周縁を熱溶着などによりシールして表裏の面を有する縦長の扁平袋状に形成されている。
【0004】
また、可撓性袋体は、この内部に収納した液体を流出させるための液体導出口が、先端部側の外周縁の所定箇所に予め設けられている。
【0005】
この種の液体収納容器の一例として、本出願人は、可撓性袋体に振動や衝撃などの外力が加わってこの可撓性袋体内の液体に大きな流動が発生しても、可撓性袋体の可撓性フィルムに損傷が生じないように構成した液体収納容器を先に提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ここで、上記した特許文献1に開示された従来の液体収納容器について、
図9〜
図11を用いて簡略に説明する。
【0007】
図9は従来の液体収納容器を平面的に示している。また、
図10は従来の液体収納容器において、可撓性袋体内に液体を収納した液体収納容器を重力方向に吊り下げたときの状態を斜視的に示している。更に、
図11は従来の液体収納容器において、可撓性袋体内に液体としてインクを収納し、且つ、この可撓性袋体を外装箱内に収納したときの状態を斜視的に示している。
【0008】
図9に示す如く、特許文献1に開示された従来の液体収納容器50は、液体を内部に収納する可撓性袋体51と、この可撓性袋体51の先端部側に設けられて液体を導出する導出口52aを有する筒状の導出部材52とで構成されている。
【0009】
そして、従来の液体収納容器50では、液体としてインクを収納した場合に不図示のインクジェット印刷装置に適用されており、この液体収納容器50はインクジェット印刷装置に対して略水平方向(矢印方向)に着脱自在であり、且つ、ダンボール材を用いて直方形状に形成された外装箱53(
図11のみ図示)内に収納されている。
【0010】
この際、可撓性袋体51は、長方形状に形成された一対の可撓性フィルムを用いて互に対向させ、且つ、一対の可撓性フィルム中で外周縁となる一対の長側辺51a,51bのそれぞれの対向辺同士及び一対の短側辺51c,51dのそれぞれの対向辺同士を熱溶着などによりシールして、表裏の面を有する扁平長方形状の袋体に形成されている。
【0011】
尚、一対の短側辺51c,51dのうちで先端部側を先端辺51c、後端部側を後端辺51dと以下呼称して説明する。
【0012】
また、可撓性袋体51は、先端辺51cの幅方向の略中央部位に液体を導出するための導出部材52が設けられている。
【0013】
更に、可撓性袋体51は、導出部材52を設けた先端辺51cと、これに連なる一対の長側辺51a,51bとの各隅部側で長手方向と直交する幅方向の左右に分かれて、一対の補強溶着部51e,51fが略三角形状に形成されている。
【0014】
そして、可撓性袋体51の先端部側に一対の補強溶着部51e,51fを形成することで、可撓性袋体51の先端部側において可撓性フィルムの溶着幅が大きくなり強度が増すので、可撓性袋体51の先端部側の外周縁部分の耐衝撃性が高まる。
【0015】
これにより、可撓性袋体51内にインクなどの液体を収納したときに、一対の可撓性フィルムが液体の量に応じて押し広げられて膨らむように変形しても、可撓性袋体51の先端部側において可撓性フィルムの変形により加わる負荷で生じる損傷を防ぐことができ、且つ、可撓性袋体51に外力(振動や衝撃)が加わっても可撓性袋体51の破袋を防ぐことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、特許文献1に記載の液体収納容器50では、前述したように、可撓性袋体51の先端部側に一対の補強溶着部51e,51fを形成することで、可撓性袋体51の先端部側において、液体を収納して変形した時に破袋等に対する耐性を高めることができるが、可撓性袋体51の先端辺51c側と間隔を隔てて対向する後端辺51d側の底部においては破袋等に対する耐性を高める考慮が図られてない。
【0018】
即ち、
図10に示す如く、従来の液体収納容器50において、可撓性袋体51内に液体LQを収納した場合に、扁平長方形状に形成された可撓性袋体51は液体LQの量に応じて一対の可撓性フィルムが押し広げられて膨らむように変形する。
【0019】
そして、液体LQを収納した可撓性袋体51が膨らんだ状態でこの可撓性袋体51の先端部に設けた導出部材52を上に向け、液体収納容器50の長手方向を重力方向に向けて吊り下げると、可撓性袋体51の後端辺51d側の底部のうちで長手方向と直交する短手方向(幅方向)の略中央部位が、液体LQの重量などの影響により上方の先端辺51c側に押し上げられて「Vの字」の上下を逆にした逆V字状に大きく屈曲する。
【0020】
この逆V字状の屈曲により、可撓性袋体51の底部の幅方向の略中央部位に、先端部側に向かって逆V字状に大きく凹んだ逆V字状の折れ51gが1つ発生すると共に、この逆V字状の大きな折れ部位の表裏の面に膨らみが発生する。
【0021】
この際、逆V字状の折れ51gの大きさ(高さサイズ)は、液体LQの重量によって底部が変形した後端辺51dの最下点を基準にして、この最下点から先端部側に向かう逆V字状頂点までの間の高さが略30mm以上となる。そして、逆V字状の折れ51gは、表裏の面に対して膨らみを持ちながら先端部側に向かって逆V字状に大きく凹んでいる。
【0022】
これにより、可撓性袋体51の底部の幅方向の略中央部位に生じた逆V字状の大きな折れ部位の表裏の面が何らかの剛体に接触して亀裂の発生により可撓性袋体51の底部側で破袋したり、あるいは、逆V字状の大きな折れ部位の表裏の面が擦れてピンホールが発生して液体LQが漏れ出すなどの問題が生じてしまう。
【0023】
更に、
図11に示す如く、従来の液体収納容器50において、可撓性袋体51内に液体LQとしてインクを収納して、この液体収納容器50をインクジェット印刷装置(図示せず)に適用する場合に、前述したように、可撓性袋体51はインクジェット印刷装置に対して着脱自在な外装箱53内に収納されている。
【0024】
この際、外装箱53は、小型化を図るために直方形状の長手方向と直交する幅方向の寸法が、可撓性袋体51の長手方向と直交する幅方向の寸法よりも一回り小さく形成されているので、外装箱53を略水平に設置しても、外装箱53内で可撓性袋体51の表裏の面を形成する一対の可撓性フィルムが液体LQの量に応じて押し広げられて膨らむように変形する。
【0025】
これに伴って、外装箱53内で可撓性袋体51の後端辺51d側の底部の幅方向の略中央部位に逆V字状の大きな折れ51gが1つ発生すると共に、この逆V字状の大きな折れ部位の表裏の面に膨らみが発生する。
【0026】
これにより、可撓性袋体51の底部の幅方向の略中央部位に生じた逆V字状の大きな折れ部位の表裏の面が外装箱53の上下の内面53a,53bに接触して、可撓性袋体51に亀裂が発生して可撓性袋体51の底部側で破袋したり、あるいは、逆V字状の大きな折れ部位の表裏の面が擦れてピンホールが発生して液体LQが漏れ出すなどの問題が生じてしまう。
【0027】
特に、外装箱53内に液体収納容器50を収納した状態で輸送したり、持ち運びする時に、可撓性袋体51に外力(振動や衝撃)が加わると、逆V字状の大きな折れ51gの部位に対して亀裂やピンホールが顕著に発生するので問題となっている。
【0028】
そこで、可撓性袋体内に液体を収納してこの可撓性袋体が変形した時に、可撓性袋体の底部の幅方向の略中央部位に逆V字状の大きな折れが発生するのを抑制できる液体収納容器を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、第1の発明は、可撓性フィルムを用いて外周縁をシールして、表裏の面を有して扁平長方形状に形成された可撓性袋体(11)内に液体(LQ)が収納可能とされ、且つ、前記液体(LQ)を導出する導出口(12a)が前記可撓性袋体(11)
の長手方向における一端の先端部
側の前記長手方向と直交する幅方向の中央に予め設けられて
おり、外装箱内に収納した状態で持ち運びされる液体収納容器(
10)におい
て、
前記可撓性袋体(11)の先端部と、該先端部に連なり前記長手方向に延在する可撓性袋体(11)の一対の側部(11a,11b)との各隅部に、前記幅方向の左右に分かれて一対の補強溶着部(11e,11f)を形成し、
前記可撓性袋体(11)
の前記長手方向における前記可撓性袋体(11)の他端の後端部側とは反対の後端部側の底部に、2箇所の突状シール部(11h,11i)を前
記幅方向の中央部位を挟んで間隔(K)を隔てて設け、
前記外装箱に前記液体収納容器(10)が収納された場合に、前記可撓性袋体(11)が前記外装箱の内面に接触することで擦れてピンホールが発生する部位が前記可撓性袋体の表裏の面に生じるような逆V字状の大きな折れが、前記可撓性袋体の底部の前記幅方向における略中央部位に発生するのを抑制するために、前記可撓性袋体(11)内に前記液体(LQ)を収納して前記底部が変形した際、前記2箇所の突状シール部(11h,11i)と対応した前記底部の部位に、逆V字状に凹んだ2つの逆V字状の折れ(11j,11k)が発生するように、前記2箇所の突状シール部(11h,11i)が構成されていることを特徴とする液体収納容器(10)である。
【0030】
また、第2の発明は、
可撓性フィルムを用いて外周縁をシールして、表裏の面を有して扁平長方形状に形成された可撓性袋体(11)内に液体(LQ)が収納可能とされ、且つ、前記液体(LQ)を導出する導出口(12a)が前記可撓性袋体(11)の長手方向における一端の先端部側の前記長手方向と直交する幅方向の中央に予め設けられている液体収納容器(10)において、
前記可撓性袋体(11)の先端部と、該先端部に連なり前記長手方向に延在する可撓性袋体(11)の一対の側部(11a,11b)との各隅部に、前記幅方向の左右に分かれて一対の補強溶着部(11e,11f)を形成し、
前記可撓性袋体(11)の前記長手方向における前記可撓性袋体(11)の他端の後端部側とは反対の後端部側の底部に、2箇所の突状シール部(11h,11i)を前記幅方向の中央部位を挟んで間隔(K)を隔てて設け、
前記可撓性袋体(11)内に前記液体(LQ)を収納して前記底部が変形した際、前記2箇所の突状シール部(11h,11i)と対応した前記底部の部位に、逆V字状に凹んだ2つの逆V字状の折れ(11j,11k)が発生するように、前記2箇所の突状シール部(11h,11i)が構成されており、
前記可撓性袋体(11)の長手方向の互に対向する一対の長側辺(11a,11b)を一対の長側辺シール部(11a1,11b1)でシールすると共に、前記底部側の後端辺(11d)を後端辺シール部(11d1)でシールして、前記2箇所の突状シール部(11h,11i)の各突部頂点を前記先端部側に向け、且つ、各底辺を前記後端辺シール部(11d1)の内側端部に接触させて前記2箇所の突状シール部(11h,11i)を設けた際に、
前記可撓性袋体(11)の
前記幅方向の幅W(mm)と、
前記2箇所の突状シール部(11h,11i)の各突部頂点と前記一対の長側辺シール部(11a1,11b1)の各内側端部との間の距離A(mm)と、
前記2箇所の突状シール部(11h,11i)の各突部頂点と前記後端辺シール部(11d1)の内側端部との間の高さB(mm)と、
前記一対の長側辺シール部(11a1,11b1)の幅D(mm)と,
前記後端辺シール部(11d1)の幅E(mm)と、
をそれぞれ演算パラメータとして、各演算パラメータを用いて下記の式1及び式2に基づいてX及びYを求めてXY座標上にプロットしたときに、
前記2箇所の突状シール部(11h,11i)は、0.25≦X≦0.5でY≦16.7X−2.1を満たし、且つ、0.5≦X≦0.66で2≦Yを満たすように構成されていることを特徴とする液体収納容器(10)である。
【0031】
X=(A+D)/(W/2) ………(式1)
Y=(B+E)/E ………(式2)
また、第3の発明は、
可撓性フィルムを用いて外周縁をシールして、表裏の面を有して扁平長方形状に形成された可撓性袋体(11)内に液体(LQ)が収納可能とされ、且つ、前記液体(LQ)を導出する導出口(12a)が前記可撓性袋体(11)の長手方向における一端の先端部側の前記長手方向と直交する幅方向の中央に予め設けられている液体収納容器(10)において、
前記可撓性袋体(11)の先端部と、該先端部に連なり前記長手方向に延在する可撓性袋体(11)の一対の側部(11a,11b)との各隅部に、前記幅方向の左右に分かれて一対の補強溶着部(11e,11f)を形成し、
前記可撓性袋体(11)の前記長手方向における前記可撓性袋体(11)の他端の後端部側とは反対の後端部側の底部に、2箇所の突状シール部(11h,11i)を前記幅方向の中央部位を挟んで間隔(K)を隔てて設け、
前記可撓性袋体(11)内に前記液体(LQ)を収納して前記底部が変形した際、前記2箇所の突状シール部(11h,11i)と対応した前記底部の部位に、逆V字状に凹んだ2つの逆V字状の折れ(11j,11k)が発生するように、前記2箇所の突状シール部(11h,11i)が構成されており、
前記可撓性袋体(11)の長手方向の互に対向する一対の長側辺(11a,11b)を一対の長側辺シール部(11a1,11b1)でシールすると共に、前記底部側の後端辺(11d)を後端辺シール部(11d1)でシールして、前記2箇所の突状シール部(11h,11i)の各突部頂点を前記先端部側に向け、且つ、各底辺を前記後端辺シール部(11d1)の内側端部に接触させて前記2箇所の突状シール部(11h,11i)を設けた際に、
前記可撓性袋体(11)の
前記幅方向の幅W(mm)と、
前記2箇所の突状シール部(11h,11i)の各突部頂点と前記一対の長側辺シール部(11a1,11b1)の各内側端部との間の距離A(mm)と、
前記2箇所の突状シール部(11h,11i)の各突部頂点と前記後端辺シール部(11d1)の内側端部との間の高さB(mm)と、
前記一対の長側辺シール部(11a1,11b1)の幅D(mm)と,
前記後端辺シール部(11d1)の幅E(mm)と、
をそれぞれ演算パラメータとして、各演算パラメータを用いて下記の式1及び式2に基づいてX及びYを求めてXY座標上にプロットしたときに、
前記2箇所の突状シール部(11h,11i)は、0.25≦X≦0.5でY≦16.7X−2.1を満たし、且つ、0.5≦X≦0.66で2≦Y≦6を満たすように構成されていることを特徴とする液体収納容器(10)である。
【0032】
X=(A+D)/(W/2) ………(式1)
Y=(B+E)/E ………(式2)
【発明の効果】
【0033】
第1の発明の液体収納容器によれば、可撓性袋体の後端部側の底部に、2箇所の突状シール部を可撓性袋体の長手方向と直交する幅方向の中央部位を挟んで間隔を隔てて設け、可撓性袋体内に液体を収納して底部が変形した際、2箇所の突状シール部と対応した底部の部位に、逆V字状に凹んだ2つの逆V字状の折れが発生するように、2箇所の突状シール部が構成されている。
【0034】
これにより、可撓性袋体の底部の幅方向の左右に設けた2箇所の突状シール部と対応した底部の部位に分散して生じた2つの逆V字状の折れは、可撓性袋体の底部の幅方向の略中央部位に従来生じていた1つの逆V字状の折れよりも小さくなる。
【0035】
従って、2つの逆V字状の折れが、何らかの剛体や、液体収納容器を収納した外装箱の上下の内面に接触しないので、可撓性袋体の底部側で破袋が発生しない。これに伴って、本発明に係る液体収納容器は、輸送や持ち運びするときの振動や、落下させたときの衝撃に対しても耐性を高めることができるために、品質の良い液体収納容器を安心して提供することができる。
【0036】
また、第2の発明の液体収納容器によれば、2箇所の突状シール部によって2つの逆V字状の折れが分散して生じたときに、可撓性袋体の底部側が破袋しないので、液体収納容器の使用を許容できる。
【0037】
また、第3の発明の液体収納容器によれば、2箇所の突状シール部によって2つの逆V字状の折れが分散して生じ、且つ、2つの逆V字状の折れの大きさが小さくなり、これらの折れ近傍に亀裂やピンホールが発生しないために可撓性袋体を良好に形成できると共に、液体の収納量も良好に保つことができるので、品質及び信頼の良い液体収納容器が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に本発明に係る液体収納容器を実施する形態について、
図1〜
図8を参照して詳細に説明する。
【0040】
図1は本発明の一実施形態に係る液体収納容器を平面的に示している。また、
図2は本発明に係る液体収納容器において、可撓性袋体内に液体を収納した液体収納容器を重力方向に吊り下げたときの状態を斜視的に示している。
【0041】
図1に示す如く、本発明の一実施形態に係る液体収納容器10は、飲料用液体や家庭用の液体洗剤とかインクなどの液体を内部に収納可能とする可撓性袋体11と、この可撓性袋体11の先端部側に設けられて液体を導出する導出口12aを有し且つ内部に開閉弁(図示せず)を有する筒状の導出部材12とで構成されている。
【0042】
この実施形態では、可撓性袋体11の先端部側に導出部材12を必要に応じて設けているが、これに限ることなく、可撓性袋体11を液体詰め替え用として用いる場合に、可撓性袋体11の先端部側の外周縁の所定箇所に使用時に開封される液体導出口を予め形成しておいても良いので、この場合には可撓性袋体自体が液体収納容器となる。
【0043】
従って、液体収納容器10は、可撓性袋体11の先端部側に液体を導出する導出口が予め設けられていれば良いものである。
【0044】
上記した可撓性袋体11は、長方形状に形成された一対の可撓性フィルムを用いて互に対向させ、且つ、一対の可撓性フィルム中で外周縁となる一対の長側辺11a,11bのそれぞれの対向辺同士及び一対の短側辺11c,11dのそれぞれの対向辺同士を熱溶着などによりシールして、表裏の面を有する扁平長方形状の袋体に形成されている。
【0045】
尚、一対の短側辺11c,11dのうちで先端部側を先端辺11c、後端部側を後端辺11dと以下呼称して説明する。
【0046】
この際、可撓性袋体11の外周縁に沿って熱溶着などによりシールされる部分は、一対の長側辺11a,11bと対応した一対の長側辺シール部11a1,11b1と、先端辺11cと対応した先端辺シール部11c1と、後端辺11dと対応した後端辺シール部11d1とからなり、各シール部11a1,11b1,11c1,11d1は各辺11a,11b,11c,11dに沿いながら内側に向かってそれぞれ所定の幅を持ってシールされている。
【0047】
また、可撓性袋体11は、先端辺11cの幅方向の略中央部位に液体を導出するための導出部材12が、一対の可撓性フィルム間に挟み込まれてこの外周囲を先端辺シール部11c1によりシールされた状態で設けられている。
【0048】
更に、可撓性袋体11は、導出部材12を設けた先端辺11cと、これに連なる一対の長側辺11a,11bとの各隅部側で長手方向と直交する幅方向の左右に分かれて、一対の補強溶着部11e,11fが略三角形状に形成されている。
【0049】
ここまでにおける本発明の一実施形態に係る液体収納容器10の構成及び可撓性袋体11の形状は、先に
図9を用いて説明した従来例と同じであるので、可撓性袋体11内に液体を収納してこの可撓性袋体11が変形した時に、可撓性袋体11の先端部側における破袋等に対する耐性を高めることができる。
【0050】
一方、可撓性袋体11の後端辺11d側の底部に対して破袋等に対する耐性を高める対策を施していない場合には、先に
図10を用いて説明した従来例と同じように、液体を収納した可撓性袋体11が膨らんだ状態でこの可撓性袋体11の長手方向を重力方向に向けて吊り下げると、可撓性袋体11の幅方向の略中央部位に、先端部側に向かって逆V字状に大きく凹んだ逆V字状の折れ(11g…図示せず)が1つ発生してしまう。この逆V字状の折れ(11g)は、先に
図10で示した逆V字状の大きな折れ51gに相当する。
【0051】
尚、可撓性袋体11の底部に生じる逆V字状の折れ変形は、可撓性袋体11の幅方向に対する発生箇所や数量が可撓性袋体11の剛性や縦横比などに起因して変わる。
【0052】
しかしながら、ここでは、可撓性袋体11の底部の左右に後述する2箇所の突状シール部11h,11iが形成されてなく、可撓性袋体11内に液体を収納した状態でこの可撓性袋体11を重力方向に吊り下げたときに、可撓性袋体11の変形によりこの底部の幅方向の略中央部位に逆V字状の折れ(11g)が1つ生じるように可撓性袋体11の剛性や縦横比が予め設定されているものとする。
【0053】
そこで、この実施形態では、可撓性袋体11内に液体を収納したときに、液体の重量などの影響により可撓性袋体11の底部の幅方向の略中央部位に逆V字状の大きな折れ(11g)が1つ生じるのを抑制できるように改良を図っている。
【0054】
即ち、本発明の一実施形態に係る液体収納容器10において、可撓性袋体11は、後端辺11d側の底部の左右に2箇所の突状シール部11h,11iが、長手方向と直交する幅方向の中央部位を挟んで略左右対称に間隔Kを隔てて設けられている。
【0055】
上記した2箇所の突状シール部11h,11iは略三角形状に形成されており、略三角形状の各突部頂点を可撓性袋体11の先端部側に向け、且つ、各底辺を後端辺シール部11d1の内側端部に接触させた状態で表裏の面を熱溶着などによりシールして設けられている。
【0056】
尚、2箇所の突状シール部11h,11iは略三角形状に限定されるものではなく、可撓性袋体11の先端部側に向かう各突部が凸形状であれば良い。
【0057】
この際、2箇所の突状シール部11h,11iは、この実施形態の要部となるものであり、2箇所の突状シール部11h,11iの具体的な実施例については後で詳述する。
【0058】
そして、
図2に示す如く、本発明の液体収納容器10において、可撓性袋体11内に液体LQを収納した状態でこの可撓性袋体11を重力方向に吊り下げたときに、扁平長方形状に形成された可撓性袋体11は液体LQの量に応じて一対の可撓性フィルムが押し広げられて膨らむように変形する。
【0059】
このとき、可撓性袋体11が膨らむように変形しても、可撓性袋体11の後端辺11d側の底部の左右に2箇所の突状シール部11h,11iを幅方向の中央部位を挟んで間隔Kを隔てて設けることで、可撓性袋体11の底部の幅方向の略中央部位に逆V字状の大きな折れ(11g)が1つ生じるときの応力が左右2箇所の突状シール部11h,11iの部位に2分して分散される。
【0060】
これにより、液体LQの重量などによって可撓性袋体11の底部の幅方向の略中央部位が広がるよりも先に左右2箇所の突状シール部11h,11iと対応した底部の部位に、先端部側に向かって逆V字状に凹んだ2つの逆V字状の折れ11j,11kが発生する。
【0061】
言い換えると、可撓性袋体11内に液体LQを収納して底部が変形した際、先端部側に向かって逆V字状に凹んで生じる逆V字状の折れ11j,11kを2箇所の突状シール部11h,11iと対応した底部の部位に分散させていることになる。
【0062】
この際、
図2に示す如く、可撓性袋体11の底部の幅方向の略中央部位にかかる応力を底部の幅方向の左右2箇所に分散させているために、2つの逆V字状の折れ11j,11kが最適となる大きさ(高さサイズ)は、液体LQの重量によって底部が変形した後端辺11dの最下点を基準にして、この最下点から先端部側に向かう逆V字状頂点までの間の各高さが先に
図10を用いて説明した従来例(30mm以上)よりも低く20mm以下となる。
【0063】
即ち、2箇所の突状シール部11h,11iは、この部位と対応して発生する2つの逆V字状の折れ11j,11kの各最適な高さが、2箇所の突状シール部11h,11iを設けないときに底部の幅方向の略中央部位で生じる1つの逆V字状の折れ(11g,又は51g)の高さの2/3以下になるように設けられているので、可撓性袋体11内に液体LQを収納した際に、可撓性袋体11の底部側での破袋を防止できる。
【0064】
なお、左右2箇所の突状シール部11h,11iに対する最適な設置条件については後述の実施例で説明する。
【0065】
この結果、可撓性袋体11の底部の幅方向の略中央部位に逆V字状の大きな折れ(11g)が発生しないために、可撓性袋体11の底部の幅方向の略中央部位の剛性が強化される。一方、左右2箇所の突状シール部11h,11iの部位に生じる2つの逆V字状の小さな折れ11j,11kは、何等かの剛体や、この可撓性袋体11を不図示の外装箱(
図3及び
図11に示した外装箱13,53に相当する)内に収納した場合に外装箱の上下の内面に接触しない。
【0066】
従って、先に
図10及び
図11を用いて従来例で説明したように、可撓性袋体11の底部の幅方向の略中央部位に生じる1つの逆V字状の大きな折れ(11g)に起因する亀裂やピンホールが発生せず、応力が2箇所の突状シール部11h,11iの部位に分散されることにより、可撓性袋体11の底部側が破袋しないようにでき、且つ、振動や衝撃などの外力に対して強い液体収納容器10を提供することができる。
【0067】
そして、上記のように構成した本発明の一実施形態に係る液体収納容器10において、可撓性袋体11内に液体としてインクを収納した場合に、この液体収納容器10を内蔵したインクカートリッジをインクジェット印刷装置に適用した場合について、
図3を用いて簡略に説明する。
【0068】
図3は本発明に係る液体収納容器を適用したインクジェット印刷装置の概略構成を示している。
【0069】
図3に示す如く、インクジェット印刷装置(以下、単に印刷装置と記す)20では、この印刷装置20内に設けたカートリッジ取付部21に支持されたジョイント部22に、本発明の一実施形態に係る液体収納容器10を内蔵したインクカートリッジ15が着脱自在に接続されている。
【0070】
この際、カートリッジ取付部21は、前板部21aの下方に連接してカートリッジ載置部21bが一体的に形成されており、このカートリッジ載置部21b上にインクカートリッジ15が印刷装置20に向かってインクIKが流れるように約2°程度傾斜して搭載されている。尚、この傾斜は一例であり、水平に載置してインクカートリッジ15からインクIKが流れるような構成であっても良い。
【0071】
上記したインクカートリッジ15は、液体LQとしてインクIKを収納した可撓性袋体11と、この可撓性袋体11の先端部側に設けた導出部材12とを備えた液体収納容器10がダンボール材を用いて直方形状に形成された外装箱13で覆われている。
【0072】
また、外装箱13の外側には、インクIKに関する情報(型番,製造年月日,インク量,色情報)などを無線で送受信するためのICタグ14が印刷装置20内に設けたICタグ受信機23と対向して取り付けられている。
【0073】
この印刷装置20内では、例えば、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)など多色のインクIKを色ごとに収納した複数のインクカートリッジ15が装着されているが、ここでは一つのインクカートリッジ15に対して図示して以下説明する。
【0074】
そして、印刷装置20内に設けたジョイント部22にインクカートリッジ15を接続したときに、インクカートリッジ15からのインクIKは、液体収納容器10内の導出部材12からジョイント部22を経由してインク補給経路24を通して電磁開閉弁25の開閉操作によりインクタンク26に充填されている。
【0075】
また、インクタンク26には、充填されたインクIKの量を測定する液面センサSが設けられており、この液面センサSの検出結果に応じて電磁開閉弁25の開閉が不図示の制御部を介して制御されている。
【0076】
この後、インクタンク26に充填されたインクIKは、インク供給路27を通じてインク分配器28に送られて、このインク分配器28で複数のインクジェットヘッド29に分配される。そして、複数のインクジェットヘッド29からインクIKを用紙Pに向けて吐出させることで、用紙P上に画像や文字を印刷できるように構成されている。
【0077】
ここで、可撓性袋体11の後端辺11d側の底部の左右に形成した2箇所の突状シール部11h,11iの具体的な実施例について以下詳述する。
(実施例)
図4は実施例の液体収納容器において、可撓性袋体の寸法関係を説明するために一部破断して平面的に示している。また、
図5(a)〜(c)は
図4に示した2箇所の突状シール部を略三角形状に設ける場合に、寸法Amm,Bmm,Cmmをそれぞれ可変したときの実験結果を示している。
【0078】
図4に示す如く、実施例の液体収納容器10において、可撓性袋体11は、厚みが130μm程度の多層熱可塑性フィルム材料からなる可撓性フィルムを用いて、長手方向の長さLが例えば390mm、長手方向と直交する短手方向(幅方向)の幅Wが例えば122mmで、表裏の面を有する扁平長方形状の袋体に形成されている。
【0079】
尚、以下の可撓性袋体11では、長手方向の互に対向する一対の長側辺11a,11bと対応した一対の長側辺シール部11a1,11b1と、後端辺11dと対応した後端辺シール部11d1とで三方をシールされた三方シール袋の状態に対して説明する。
【0080】
そして、この実施例においても前述したと同様に、可撓性袋体11の底部の幅方向の左右に2箇所の突状シール部11h,11iが形成されてなく、可撓性袋体11内に液体を収納した状態でこの可撓性袋体11を重力方向に吊り下げたときに、可撓性袋体11の変形によりこの底部の幅方向の略中央部位に逆V字状の折れ(11g)が1つ生じるように可撓性袋体11の剛性や縦横比が予め設定されているものとする。
【0081】
また、可撓性袋体11は、一対の長側辺11a,11b及び後端辺11dをシールした三方シール状態において、一対の長側辺シール部11a1,11b1の各幅Dがそれぞれ内側に向かって例えば4mmに設定され、且つ、後端辺シール部11d1の幅Eが内側に向かって例えば4mmに設定されている。
【0082】
更に、可撓性袋体11の底部側で発生する破袋状態を判定するときに、2箇所の突状シール部11h,11iの設置位置及び三角形状に対して寸法Amm,Bmm,Cmmを可変し、Amm,Bmm,Cmmに対していくつかの組み合わせを用意した。
【0083】
そして、可撓性袋体11内に例えば水などの液体を1000ml収納して、この可撓性袋体11を重力方向に吊り下げたときに、寸法Amm,Bmm,Cmmに対してどの組み合わせが良好であるか否かの実験を行い、例えば、1つの逆V字状の折れ(11g)が生じるか、2つの逆V字状の折れ11h,11iに分散するか、液体収納量が所定量に達するか?の評価を行った。
【0084】
上記した寸法Ammは、2箇所の突状シール部11h,11iの各突部頂点と一対の長側辺シール部11a1,11b1の各内側端部との間の距離を示す。
【0085】
また、上記した寸法Bmmは、2箇所の突状シール部11h,11iの各突部頂点と後端辺シール部11d1の内側端部との間の高さを示す。
【0086】
また、上記した寸法Cmmは、略三角形状に形成された2箇所の突状シール部11h,11iの各底辺が後端辺シール部11d1の内側端部に接触した長さを示す。
【0087】
ここで、
図5(a)〜(c)中では、
図4中に示した寸法Amm,Bmm,Cmmを可変して、2箇所の突状シール部11h,11iに対する設置条件に対して評価基準を○印,△印,×印を用いて表示している。
【0088】
上記した○印は、2箇所の突状シール部11h,11iと対応した底部の部位に2つの逆V字状の折れ11j,11k(
図2)が分散して生じ、且つ、2つの逆V字状の折れ11j,11kの各高さが先に
図10を用いて説明した従来例(30mm以上)よりも低く20mm以下となるように2箇所の突状シール部11h,11iが良好に設けられ、液体の収納量も低下しない場合である。
【0089】
また、上記した△印は、2箇所の突状シール部11h,11iと対応した底部の部位に2つの逆V字状の折れ11j,11k(
図2)が分散して生じても可撓性袋体11の底部側が破袋しないが、2つの逆V字状の折れ11j,11kによって液体の収納量が低下する場合である。
【0090】
この際、液体収納量についての評価が、○印であるか、△印であるかについては、可撓性袋体11の収納限界まで液体を収納した場合に対して、所定%以下になると、最大容量が減ることで破袋に対しても影響があり、目に見えて破袋しやすくなるため、△印にしている。
【0091】
ここでは、一例として、最大容量(可撓性袋体11の収納限界まで液体を収納した量)は約1200mlとなっており、液体を収納される量が1100mlくらい(現行の92%くらい)になると破袋性が悪くなるため、可撓性袋体11内に収納される液体収納量が1100ml以下の場合に△印としている。
【0092】
また、×印は、2箇所の突状シール部11h,11iを設けたにもかかわらず、可撓性袋体11の底部の略中央部位に逆V字状の折れ(11g)が1つ生じ、この逆V字状の折れ(11g)の大きさが大きいので不良となる場合である。
【0093】
まず、
図5(a)に示す如く、可撓性袋体11に対して後端辺11d側の底部に2箇所の突状シール部11h,11iを略三角形状に設けるにあたって、2箇所の突状シール部11h,11iの三角形の底辺の長さCを8mmに固定した上で、寸法A,Bを図示した各値に可変して実験を行った。
【0094】
ここで、
図4及び
図5を併用して実験結果について説明する。
【0095】
まず、
図5(a)に示す如く、寸法Aの値が例えば6mm程度で小さく、2箇所の突状シール部11h,11iが可撓性袋体11の幅方向の左右に設けた一対の長側辺シール部11a1,11b1に接近している場合には、2箇所の突状シール部11h,11iが一対の長側辺シール部11a1,11b1と略等価みなされる。このため、2箇所の突状シール部11h,11iを設けても、2箇所の突状シール部11h,11iを形成しない場合と略同じ結果になり、可撓性袋体11の底部の略中央部位に逆V字状の折れ(11g)が1つ生じてしまい、寸法Bを可変しても不良(×印)となることが判明した。
【0096】
また、寸法Aの値が例えば46mm程度で大きく、2箇所の突状シール部11h,11iが可撓性袋体11の底部の幅方向の中央部位に接近している場合には、2箇所の突状シール部11h,11iで生じる2つの逆V字状の折れ11j,11kが可撓性袋体11の底部の略中央部位で互に重なりあって1つになるために、寸法Bを可変しても全て不良(×印)となることが判明した。
【0097】
また、寸法Bの値が例えば2mm程度に極端に低い場合には、2箇所の突状シール部11h,11iの作用効果が発揮できずに、可撓性袋体11の底部の略中央部位に逆V字状の折れ(11g)が1つ生じてしまい、寸法Aの値に関係なく全て不良(×印)となることが判明した。
【0098】
また、A,Bの各値が(11,6),(11,11),(16,11),(21,16),(21,20),(21,26),(21,36),(21,56)の組み合わせの場合では、A,Bの各値の相互作用により可撓性袋体11の底部の略中央部位に逆V字状の折れ(11g)が1つ生じてしまい、不良(×印)となることが判明した。
【0099】
一方、A,Bの各値が(26,26),(26,36),(26,56),(36,26),(36,36),(36,56)の組み合わせの場合では、可撓性袋体11の底部の幅方向の左右に設けた2箇所の突状シール部11h,11iの部位と対応して2つの逆V字状の折れ11j,11kが分散して生じることが判明した。しかしながら、この場合に、2箇所の突状シール部11h,11iの高さBが高く、これに伴って2つの逆V字状の折れ11j,11kの大きさが大きくなることから液体の収納量が低下することが判明したが、破袋が生じず使用上支障をきたさないので△印と判定した。
【0100】
また、上記以外のA,Bの組み合わせの場合には、2箇所の突状シール部11h,11iの部位で2つの逆V字状の折れ11j,11kが分散して生じ、且つ、2つの逆V字状の折れ11j,11kの各高さが低く、液体収納量の低下もないので、良好(○印)な結果が得られることが判明した。
【0101】
更に、
図5(c)では、
図5(a)中の網点箇所に対して三角形の底辺の長さCを可変したときの結果をプロットしている。この
図5(c)から明らかなように、三角形の底辺の長さCをC=8に対して上下に大きく可変しても影響のないことが判明した。
【0102】
次に、
図5(b)に示す如く、
図5(a)に示した実験結果に対して、可撓性袋体11の幅方向の幅Wmmと、一対の長側辺シール部11a1,11b1の幅Dmmと、後端辺シール部11d1の幅Emmとを考慮して、後述する数1及び数2で得られた各結果をプロットしている。
【0103】
尚、
図5(b)において、2箇所の突状シール部11h,11iは、可撓性袋体11の幅方向の中央部位を中心にして略左右対称に設けられているので、幅寸法はW/2とする。
また、この実施例では、先に説明したように、Wは122mm、Dは4mm、Eも4mmにそれぞれ設定されているものとするが、これらに限定されるものではなく、W.D,Eは2箇所の突状シール部11h,11iによって2つの逆V字状の折れ11j,11kが分散して生じるようにそれぞれ適宜な値に設定することも可能である。
【0104】
そして、
図5(b)中では、上記した寸法A(mm)〜E(mm)をそれぞれ演算パラメータとして、各演算パラメータを用いて下記の式1及び式2に基づいてX及びYを求めている。具体的には、
図5(a)に示した各寸法Aに対して下記の数1に示した式1からXを求め、且つ、
図5(a)に示した各寸法Bに対して下記の数2に示した式2からYを求めている。
[数1]
X=(A+D)/(W/2)=(A+4)/61 ………(式1)
この式1は、可撓性袋体11の長辺11b(又は11a)への突状シール部11i(又は11h)の突部頂点の近づき方を示している。
[数2]
Y=(B+E)/E=(B+4)/4 ………(式2)
この式2は、突状シール部11i(又は11h)の部位と対応して生じる逆V字状の折れ11k(又は11j)の2箇所への分散度合を示している。
【0105】
上記した式1,式2から得られた結果を、
図5(a)と対応させて
図5(b)に○印,△印,×印を用いて表示している。
【0106】
更に、
図5(b)に示した結果を、
図6〜
図8中に示したXY座標軸上にわかり易く示しており、各Xの各値は横軸に、各Yの各値は縦軸に沿ってそれぞれプロットしている。
【0107】
この際、
図6は
図5(b)中に示した○印,△印,×印を全て表示している。また、
図7は
図5(b)中に示した○印,△印を表示している。更に、
図8は
図5(b)中に示した○印のみを表示している。
【0108】
ここで、
図6〜
図8に示した評価結果を参照して、この実施形態の要部となる2箇所の突状シール部11h,11iを良好に設ける設置条件(応力が2箇所に分散し、且つ、液体の収納量の減り具合が少ない)について説明する。
【0109】
まず、
図6中から×印を除去すると、
図7に示した状態となる。この
図7では、2箇所の突状シール部11h,11iに対して○印及び△印が得られる場合を示している。
【0110】
この際、
図7中において、X=0.49及びX=0.66のときに△印となる場合には、応力集中部がYの値が大きくなるにつれて、応力集中部の集中度合いは変化せず、上方にシフトするので、△印に対してYの値は上限値がない。
【0111】
その理由は、XとYの位置関係で、2箇所の突状シール部11h,11iの部位と対応して2つの逆V字状の折れ11j,11kが分散して生じるようにしているが、可撓性袋体11の剛性と液体が可撓性袋体11内にある程度満たされた状態であれば、可撓性袋体11を重力方向に吊り下げたときに、XとYの位置関係で、Yの値を所定値以上にすると、2箇所分散になるような皺が発生し、応力集中部の集中度合いはYの値にかかわらず、変化しないためである。
【0112】
また、
図7中において、Y=16.7X−2.1の傾斜線は、XY座標軸上の点(0.25,2)と、点(0.49,6)とを結んで得られたものである。
【0113】
そして、
図7に示す如く、○印及び△印が得られるときの○印及び△印条件の場合に、2箇所の突状シール部(11h,11i)は、0.25≦X≦0.5でY≦16.7X−2.1を満たし、且つ、0.5≦X≦0.66で2≦Yを満たすように構成されている。
【0114】
上記した○印及び△印○△条件を言い換えると、Y=2の直線,Y=6の直線,Y=16.7X−2.1の傾斜線,X=0.66の直線で囲まれた台形領域と、Y=6の直線,Y=6以上(∞)の直線,X=0.49の直線,X=0.66の直線とで囲まれた長方形領域とを合わせた領域内にXの値及びYの値が存在していれば良いことになる。
【0115】
この結果、上記した○印及び△印条件を満たして2箇所の突状シール部11h,11iを設けた場合には、2箇所の突状シール部11h,11iによって2つの逆V字状の折れ11j,11kが分散して生じたときに、可撓性袋体11の底部側が破袋しないので、液体収納容器10の使用を許容できる。
【0116】
次に、
図6中から△印及び×印を除去すると、
図8に示した状態となる。この
図8では、2箇所の突状シール部11h,11iに対して○印のみが得られる場合を示している。
【0117】
この際、
図8中においても、Y=16.7X−2.1の傾斜線は、XY座標軸上の点(0.25,2)と、点(0.49,6)とを結んで得られたものである。
【0118】
そして、
図8に示す如く、○印が得られるときの○印条件の場合に、2箇所の突状シール部(11h,11i)は、0.25≦X≦0.5でY≦16.7X−2.1を満たし、且つ、0.5≦X≦0.66で2≦Y≦6を満たすように構成されている。
【0119】
上記した○印条件を言い換えると、Y=2の直線,Y=6の直線,Y=16.7X−2.1の傾斜線,X=0.66の直線で囲まれた台形領域内にXの値及びYの値が存在していれば良いことになる。
【0120】
この結果、上記した○印条件を満たして2箇所の突状シール部11h,11iを設けた場合には、2箇所の突状シール部11h,11iによって2つの逆V字状の折れ11j,11kが分散して生じ、且つ、2つの逆V字状の折れ11j,11kの大きさが小さくなり、これらの折れ近傍に亀裂やピンホールが発生しないために可撓性袋体11を良好に形成できると共に、液体の収納量も良好に保つことができるので、品質及び信頼の良い液体収納容器10が得られる。
【0121】
以上詳述したように、本発明に係る液体収納容器10によれば、可撓性袋体11の後端部側の底部に、2箇所の突状シール部11h,11iを可撓性袋体11の長手方向と直交する幅方向の中央部位を挟んで間隔Kを隔てて設け、可撓性袋体11内に液体LQを収納して底部が変形した際、2箇所の突状シール部11h,11iと対応した底部の部位に、逆V字状に凹んだ2つの逆V字状の折れ11j,11kが発生するように、2箇所の突状シール部11h,11iが構成されている。
【0122】
これにより、可撓性袋体11の底部の幅方向の左右に設けた2箇所の突状シール部11h,11iと対応した底部の部位に分散して生じた2つの逆V字状の折れ11j,11kは、可撓性袋体11の底部の幅方向の略中央部位に従来生じていた1つの逆V字状の折れ51g(
図10)よりも小さくなる。
【0123】
従って、2つの逆V字状の折れ11j,11kが、何らかの剛体や、液体収納容器を収納した外装箱の上下の内面に接触しないので、可撓性袋体11の底部側で破袋が発生しない。これに伴って、本発明に係る液体収納容器10は、輸送や持ち運びするときの振動や、落下させたときの衝撃に対しても耐性を高めることができるために、品質の良い液体収納容器10を安心して提供することができる。