特許第6386815号(P6386815)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6386815マルチトール混合脂肪酸エステルからなる油ゲル化剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386815
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】マルチトール混合脂肪酸エステルからなる油ゲル化剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20180827BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20180827BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20180827BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20180827BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   C09K3/00 103M
   A61Q1/04
   A61K8/37
   A61K8/31
   A61K8/34
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-133072(P2014-133072)
(22)【出願日】2014年6月27日
(65)【公開番号】特開2016-11354(P2016-11354A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】390003001
【氏名又は名称】川研ファインケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】大志田 翔
(72)【発明者】
【氏名】久保 正昭
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−328673(JP,A)
【文献】 特表2013−501097(JP,A)
【文献】 特開平06−158021(JP,A)
【文献】 特開2010−070595(JP,A)
【文献】 特開2001−247846(JP,A)
【文献】 特開2010−235476(JP,A)
【文献】 特開2009−155210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
A61K 8/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)マルチトール1モルに対して
(B)下記の特定の混合アシル化剤を0.3〜0.8モルの割合で反応させて得られる特定のマルチトール混合脂肪酸エステルよりなり、
(B1)成分のアシル化剤のアシル基に少なくとも1つの不飽和結合を有する不飽和アシル化剤の比率が(B1)成分全体の50%以上である、油ゲル化剤。
(B1)一般式(1)で示されるアシル化剤 85%〜99.9%
【化1】

〔但し式中Xは水酸基、アルコキシ基、ハロゲン基、RCOO−からなり
COは不飽和を含んで良い炭素数14〜22であるアシル基を示す。]
(B2)一般式(2)で示される二塩基酸から誘導されるアシル化剤 0.1〜15.0%
【化2】

[但し、Yは水酸基、アルコキシ基、ハロゲン基からなり
pは2〜20の整数を示す。]
【請求項2】
成分(B)のアシル化剤が、(B1)一塩基酸メチルエステル及び(B2)二塩基酸メチルエステルである請求項記載の油ゲル化剤。
【請求項3】
油性成分100重量部に対して請求項1または2記載の油ゲル化剤を5〜30重量添加することにより得られる油ゲル状組成物。
【請求項4】
請求項記載の油ゲル状組成物と、油溶性エモリエント剤とを含むリップグロス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
動植物油類、鉱物油類、炭化水素類、脂肪酸エステル類等に用いられる油ゲル化剤は、化粧料をはじめとして医薬品、食品、塗料、インク等の様々な分野で広く利用されている。
一般的にはポリアミド樹脂、12−ヒドロキシステアリン酸、脂肪酸デキストリン、脂肪酸イヌリン、脂肪酸グリセリン、ジベンジリデン−D−ソルビトール、アシルアミノ酸エステル(例えば特許文献1)などが知られている。
しかし、これらのゲル化剤は、幅広く種々の油剤に対してゲル化能を発揮することはできず、ゲル化できても、安定性にかけたり透明性を保てないなどの問題があった。
【0002】
一方、マルチトール脂肪酸モノエステル脂肪酸エステルは、多価アルコール、及び液状油を含有する増粘ゲル化組成物を形成することが開示されているが(特許文献2)、このゲルの経時安定性、透明性は必ずしも十分でなく、その改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭53−20438号公報
【特許文献2】特開平09−328673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、油剤と形成するゲルが安定性に優れ、透明領域が広い油ゲル化剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、油剤に対して優れた増粘性と透明性、安定性を同時に供与できる油ゲル化剤に関して鋭意検討した結果、マルチトールをアシル化する際、二塩基酸から誘導されるアシル化剤と不飽和結合を有して良い炭素数14〜22のアシル化剤と併用してアシル化することにより、その目的が達成されることを見出した。
【0006】
即ち、本発明は下記の発明を提供する。
(A)マルチトールに対して
(B)下記の特定の混合アシル化剤を反応させて得られる
(B1)一般式(1)で示されるアシル化剤 85%〜99.9%
【化1】
〔但し式中Xは水酸基、アルコキシ基、ハロゲン基、RCOO−からなり
COは不飽和を含んで良い炭素数14〜22であるアシル基を示す。]
(B2)一般式(2)で示される二塩基酸から誘導されるアシル化剤 0.1〜15.0%
【化2】

[但し、Yは水酸基、アルコキシ基、ハロゲン基からなり
pは2〜20の整数を示す。]
特定のマルチトール混合脂肪酸エステルよりなる油ゲル化剤に関するものである。
【0007】
成分(A)マルチトール1モルに対して(B)混合アシル化剤0.3〜0.8モルの割合で反応させることが好ましい。
成分(B)のアシル化剤の(B1)成分のアシル組成が不飽和結合を少なくとも1つ含む不飽和アシル化剤50%以上で構成される(B1)成分からなるマルチトール混合脂肪酸エステルよりなる油ゲル化剤がより好ましい。
【0008】
また、油性成分100重量部に対してマルチトール混合脂肪酸エステルよりなる油ゲル化剤を5〜30重量添加することを特徴とする油ゲル状組成物に関する。さらに油溶性エモリエント剤が添加される油ゲル状組成物からなるリップグロスに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の油ゲル化剤を用いた油ゲル状組成物は、安定性に優れ、透明領域が広いので、化粧料用油ゲル化剤、化粧料用油増粘剤として優れている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の油ゲル化剤の原料であるマルチトール (maltitol) は、糖アルコールの一種であり、酵素糖化法によって澱粉からつくられる二糖類のマルトースを原料として高圧下で接触還元して得られるカルボニル基を持たない糖アルコールでありその構造は以下の様な構造を有している。
【化3】

本発明の油ゲル化剤は、上述したマルチトールにアシル化剤を反応させ、マルチトール脂肪酸エステルを形成することにより製造できるが、この時使用するアシル化剤に二塩基酸から誘導されるアシル化剤を含む混合アシル化剤でマルチトールをアシル化することに特徴がある。
【0011】
混合アシル化剤としては、一般式(1)及び一般式(2)で示される脂肪酸、脂肪酸から誘導されるアルキルエステル、酸ハライド、酸無水物から選択され
(B1)一般式(1)で示されるアシル化剤 85%〜99.9%
【化4】
〔但し式中Xは水酸基、アルコキシ基、ハロゲン基、RCOO−からなり
R1COは不飽和を含んで良い炭素数14〜22であるアシル基を示す。]
(B2)一般式(2)で示される二塩基酸から誘導されるアシル化剤 0.1〜15.0%
【化5】
[但し、Yは水酸基、アルコキシ基、ハロゲン基からなり
pは2〜20の整数を示す。]
を含有することを特徴とするものである。
【0012】
マルチトール1モルに対して混合アシル化剤は、0.3〜0.8モルの割合で反応させることが好ましい。
マルチトール1モルに対して混合アシル化剤を0.3モル未満の反応生成物は、化粧品油剤への溶解時に結晶析出の懸念があり、0.8モルより大きいアシル化剤の反応は化粧品油剤に対する増粘構築が困難であるので好ましくない。
【0013】
混合アシル化剤は、(B1)成分及び(B2)成分からなるが、(B1)及び(B2)成分は混合して、一度にマルチトールに縮合しても良いし、(B1)反応後に(B2)乃至は(B2)反応後に(B1)を反応せしめても良い。
【0014】
(B1)成分として有用なアシル化剤としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、リノール酸メチル、ミリスチン酸クロライド、パルミチン酸クロライド、ステアリン酸クロライド、オレイン酸クロライド、リノール酸クロライド、無水ミリスチン酸、無水パルミチン酸、無水ステアリン酸、無水オレイン酸、無水リノール酸等が挙げられる。
また、(B1)成分のアシル化剤のアシル基に少なくとも1つの不飽和結合を有する不飽和アシル化剤の比率が(B1)成分全体の50%以上ある場合、本発明油ゲル化剤を用いた油ゲル状組成物の透明領域が最大となるためより好ましい。
【0015】
(B2)成分としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、エイコサン二酸、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、ピメリン酸ジメチル、スベリン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、セバシン酸ジメチル、エイコサン二酸ジメチルが好ましい。
【0016】
(B1)成分(B2)成分ともに入手の容易性等より脂肪酸メチルエステル及びジカルボン酸ジメチルエステルを使用することがより好ましい。
【0017】
本発明油ゲル化剤は、アシル基の一部が二塩基酸から誘導されているため、一般式(4)様な構造を有する成分含有するため本発明のゲル化能、ゲルの安定性及び広い透明領域が発現していると推定される。
【化6】
[式中pは2〜20の整数、maltitolはマルチトール乃至はマルチトール脂肪酸エステルのマルチトール部分から二塩基酸から誘導されたアシル化剤がエステル結合した水酸基を取り除いたマルチトール残基乃至はマルチトール脂肪酸エステル残基を示す。]
【0018】
本発明ゲル化剤と油剤からなる油ゲル組成物に関して述べる
油剤100重量部に対して、本発明ゲル化剤を5重量部以上添加すると油剤の粘度を上げることができ、油剤の種類によっても異なるが5〜30重量部以上添加するとゲル状組成物になる。
油剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0019】
流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、ポリブテン、水添ポリイソブテン等の炭化水素類
パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸類;アボガド油、アマニ油、アーモンド油、エノ油、カヤ油、菜種油、オリーブ油、コーン油、ヒマシ油、サフラワー油、ヒマワリ油、綿実油、ホホバ油、マカデミアンナッツ油、小麦胚芽油、大豆油、落花生油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、ツバキ油、月見草油等の植物油類
ミンク油、魚油等の動物油類
【0020】
汎用性、安定性、入手のしやすさより流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、ポリブテン、水添ポリイソブテン等の炭化水素類を使用することがより好ましい。
【0021】
本発明油ゲル化剤と油剤からなる油ゲル組成物にエモリエント剤を更に添加することにより、ゲルの伸び性改善と使用感の改善が可能で、より優れたリップグロス等の油ゲル状化粧料となるため好ましい。
【0022】
エモリエント剤としては、高級アルコール類、脂肪酸エステル類、アシルアミノ酸エステル類から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。エモリエント剤は油溶性であることが好ましく、この成分を油ゲル状化粧料中5%〜50%配合することにより伸び良い、ツッパリ感の無い油ゲル状化粧料となる。その効果の点でアシルアミノ酸エステル類をエモリエント剤として使用することがより好ましい。
高級アルコール類としては、2-オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、セタノール等が挙げ似られる。
脂肪酸エステル類としては、リンゴ酸ジイソステアリル、2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル等が挙げられる。
【0023】
アシルアミノ酸エステル類としては
一般式(5)及び/又は一般式(6)で示されるアシルアミノ酸エステルが好ましい
【化7】
[但し、式(5)中、Z及びQの一方は、フィトステロール、コレステロール、ラノステロール、スチグマステロール、その水素化物、及びその誘導体から成る群から選択されるステロールのエステル残基であり、他方は、H、8〜30個の炭素を有するアルキル又はアルケニル、及び12〜38個の炭素を有する一価固体アルコールのエステル残基から選択され、R2COは8〜22個の炭素を有する長鎖アシル基であり、xは1又は2の整数である。
また、式(6)中、R3COは8〜22個の炭素を有する長鎖アシル基であり、R4は、−(CH2)y−COOW基又はヒドロキシル基を含んで良い炭素数1〜3のアルキル基から選択され、yは1〜3の整数、Wは炭素数2〜4の分岐を含んで良いアルキル基を示す。]
であることが好ましい。
【0024】
好適例としては、ラウロイルサルコシンイソプロピル、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)等が挙げられる。
【0025】
本発明ゲル化剤と油剤を含有する油ゲル状組成物には、その効果を損なわない範囲で、動物、植物、魚貝類、微生物由来の抽出物、粉末成分、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、被膜剤、紫外線吸収剤、消炎剤、金属封鎖剤、低級アルコール、糖類、アミノ酸類、有機アミン類、合成樹脂エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン類、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料及び海洋深層水を必要に応じて1種乃至は2種以上用いてもよい。

【実施例】
【0026】
本発明の効果に関して以下の実施例によりさらに詳細に説明する。
以下の方法により本件発明の一般式(1)に関わる物質を製造した。
【0027】
製造例1
オレイン酸メチル(0.13mol)とセバシン酸ジメチル(0.02mol)、マルチトール(0.30mol)、触媒として炭酸カリウム(0.03mol)をDMF中で混合し、80℃まで昇温した。マルチトールが溶解した後、減圧下で6時間エステル化を行った。所定量のメタノールが留去させたのを確認した後、DMFを留去し濃縮を行った。n−ブタノールと飽和食塩水によって水洗処理を行った後、有機層を濃縮した。取り上げた固体のIR測定を行うことにより目的物であることを確認した。
【0028】
製造例2
オレイン酸メチル(0.085mol)とステアリン酸メチル(0.065mol)並びにセバシン酸ジメチル(0.023mol)、マルチトール(0.30mol)、触媒として炭酸カリウム(0.03mol)をDMF中で混合し、80℃まで昇温した。マルチトールが溶解した後、減圧下で6時間エステル化を行った。所定量のメタノールが留去させたのを確認した後、DMFを留去し濃縮を行った。n−ブタノールと飽和食塩水によって水洗処理を行った後、有機層を濃縮した。取り上げた固体のIR測定を行うことにより目的物であることを確認した
【0029】
製造例3
オレイン酸メチル(0.085mol)とステアリン酸メチル(0.065mol)並びにエイコサン二酸ジメチル(0.023mol)、マルチトール(0.30mol)、触媒として炭酸カリウム(0.03mol)をDMF中で混合し、80℃まで昇温した。マルチトールが溶解した後、減圧下で6時間エステル化を行った。所定量のメタノールが留去させたのを確認した後、DMFを留去し濃縮を行った。n−ブタノールと飽和食塩水によって水洗処理を行った後、有機層を濃縮した。取り上げた固体のIR測定を行うことにより目的物であることを確認した。
【0030】
製造例4
オレイン酸メチル(0.15mol)とマルチトール(0.30mol)、触媒として炭酸カリウム(0.03mol)をDMF中で混合し、80℃まで昇温した。マルチトールが溶解した後、減圧下で6時間エステル化を行った。所定量のメタノールが留去させたのを確認した後、DMFを留去し濃縮を行った。n−ブタノールと飽和食塩水によって水洗処理を行った後、有機層を濃縮した。取り上げた固体のIR測定を行うことにより目的物であることを確認した。
【0031】
製造例5
ステアリン酸メチル(0.15mol)とマルチトール(0.30mol)、触媒として炭酸カリウム(0.03mol)をDMF中で混合し、80℃まで昇温した。マルチトールが溶解した後、減圧下で6時間エステル化を行った。所定量のメタノールが留去させたのを確認した後、DMFを留去し濃縮を行った。n−ブタノールと飽和食塩水によって水洗処理を行った後、有機層を濃縮した。取り上げた固体のIR測定を行うことにより目的物であることを確認した。
【0032】
製造例6
セバシン酸ジメチル(0.15mol)とマルチトール(0.30mol)、触媒として炭酸カリウム(0.03mol)をDMF中で混合し、80℃まで昇温した。マルチトールが溶解した後、減圧化で6時間エステル化を行った。所定量のメタノールが留去させたのを確認した後、DMFを留去し濃縮を行った。n−ブタノールと飽和食塩水によって水洗処理を行った後、有機層を濃縮した。取り上げた固体のIR測定を行うことにより目的物であることを確認した。
【0033】
また、配合原料、配合比を変更した実施例4〜6比較例4〜6についても、上記と同様な製造方法であるエステル交換反応により生成物を得た。配合比率の詳細は表1に示す。
【0034】
ゲル形成の確認
各種サンプルを流動パラフィンに15重量%溶解後、一晩静置し、ゲル化しているか否かと外観を確認した。
評価は表1中の以下の略称で示している。なお、ソフトゲル(SG)に関しては、容器を傾けた時の流動性によって次のように区別した。実施例1を基準(表記はSG)として、流動性が低いサンプルをSG+、流動性の高いサンプルをSG-とした。また、外観は、透明・クスミ・白濁・分離で判断した。

Sol 容器を30秒間傾けた時、流動性を帯びており油剤に可溶化しているもの。
SG(ソフトゲル) 容器を傾けた時に流動性がないものの、容易に指で押すことができるゲル状のもの。
HG(ハードゲル) 容器を傾けた時に流動性が無く、指で押しても硬いもの。
Sep 相分離を起こしているもの。
【0035】
ゲル状組成物の安定性の確認
調製し、一晩静置したゲル状組成物に対し、スパチュラを用いて撹拌し静置を繰り返すことで、ゲル状組成物の崩壊由来の減粘や離油の有無を確認した。なお、繰り返し数は10回とした。本操作によって減粘や離油が見られず安定なゲル状組成物であったものを「○」、それ以外を「×」で判断した。
【0036】
表1は、ゲル化剤の原料比率と、得た生成物を流動パラフィンに溶解した時のゲル状組成物の状態、外観並びに安定性を一覧に示す。
【表1】
【0037】
実施例1と比較例1、2を比較すると明らかなように、マルチトールのアシル化剤に成分B1と請求項の範囲内の成分B2を用いることでオイルゲルサンプルの粘性増加と安定性の向上が確認された。
また実施例2〜6の様に、成分B1の脂肪酸の不飽和脂肪酸の割合を50%以上とすることで粘性増加と、透明性が維持されている。反対に飽和脂肪酸の割合が50%以上である比較例4より、外観の悪化と安定性の低下が引き起こる。マルチトール成分B2のみでアシル化した場合の比較例3からも明白であるが、マルチトールと二塩基酸からなる成分にはオイルのゲル化能はない。
また、成分B2のアシル化剤の比率の範囲外となる比較例5にもゲル化能がない。また、マルチトールに対し、混合アシル化剤の比率の範囲外である比較例6にもゲル化能がない。以上の事より、本発明のオイルゲル状組成物は、任意のアシル化剤配合比率とするとこで、オイルゲルサンプルの透明性や安定性を与えるものとする。
【0038】
本発明油ゲル化剤を用いて油ゲル状組成物を配合した
いずれの処方も塗布時の伸び、安定性に優れており、透明性が高く、ツッパリ感が無い優れた性能を示した。
【0039】
実施例 8 リップグロス
製造例1の化合物 10%
オクチルドデカノール 20%
リンゴ酸ジイソステアリル 17%
シクロペンタシロキサン 3%
水添ポリイソブテン 50%
【0040】
実施例 8 クレンジングジェルオイル
製造例2の化合物 10%
トリイソステアリン酸PEG−20グリセリル 10%
ミネラルオイル 40%
エチルヘキサン酸セチル 35%
フェニルトリメチコン 5%
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、特定のマルチトール混合脂肪酸エステルからなる油ゲル化剤に関するものである。
更に油剤成分を含有する油ゲル状組成物に関する。
本発明の油ゲル状組成物は、安定性に優れ、透明領域が広いので、化粧料用油ゲル化剤、化粧料用油増粘剤として優れている。本発明の油ゲル状化粧料組成物は、安定性に優れ、透明性に優れ、唇等の弱い表皮に塗布しても違和感を感じることが無く、リップグロス等の口唇用化粧料として優れている。