特許第6386822号(P6386822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386822
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20180827BHJP
   A61F 13/537 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   A61F13/511 100
   A61F13/537 310
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-144278(P2014-144278)
(22)【出願日】2014年7月14日
(65)【公開番号】特開2016-19616(P2016-19616A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2017年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】天野 絵美
【審査官】 木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−167212(JP,A)
【文献】 特開2009−006717(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/016343(WO,A1)
【文献】 特開2005−348937(JP,A)
【文献】 特開2013−230408(JP,A)
【文献】 特開2012−157595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップシートとバックシートとこれらの間に配された吸収体とを有するとともに、前記トップシートと前記吸収体との間にセカンドシートが配された吸収性物品であって、
前記セカンドシートは、トップシート側から不織布層とプラスチックフィルム層とを有する積層体から構成され、複数の貫通孔が形成されており、
前記不織布層は熱エンボスされた不織布から構成され、前記各貫通孔は、前記熱エンボスにより形成されたエンボス部よりも大きな大きさで形成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
トップシートとバックシートとこれらの間に配された吸収体とを有するとともに、前記トップシートと前記吸収体との間にセカンドシートが配された吸収性物品であって、
前記セカンドシートは、トップシート側から不織布層とプラスチックフィルム層とを有する積層体から構成され、複数の貫通孔が形成されおり、
前記不織布層は短繊維不織布から構成され、当該不織布の構成繊維が吸収性物品の長手方向に配向していることを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
前記不織布層は短繊維不織布から構成され、当該不織布の構成繊維が吸収性物品の長手方向に配向している請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記セカンドシートは、前記貫通孔に前記不織布層が貫入している請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記セカンドシートのバックシート側表面は、前記貫通孔の外縁に沿ってバックシート側に突出している請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記不織布層と前記プラスチックフィルム層は接着剤により互いに接合されている請求項1〜のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記不織布層は、前記トップシートよりも低い目付で形成されている請求項1〜のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記トップシートは、熱エンボスされた不織布から構成されている請求項1〜のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ、尿パッド(失禁パッドを含む)、生理用ナプキン等の吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トップシートとバックシートとこれらの間に配された吸収体とを有し、トップシートと吸収体との間にセカンドシートが配された吸収性物品が知られている。セカンドシートは吸収性物品での尿等の吸収性能を高めるために設けられ、例えば特許文献1には、表面に凹凸形状が付与された不織布から構成されたセカンドシートが設けられた吸収性物品が開示され、特許文献2には、中空繊維を有する不織布から構成されたセカンドシートが設けられた吸収性物品が開示され、特許文献3には、合成繊維から構成された不織布からなり、トップシート側に低密度層を有し吸収体側に高密度層を有する2層構造からなるセカンドシートが設けられた吸収性物品が開示され、特許文献4には、プラスチックフィルムからなり、トップシート側からバックシート側に突出する側壁を備えた多数の開孔部が形成されたセカンドシートが設けられた吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−140015号公報
【特許文献2】特開2011−55959号公報
【特許文献3】特開2008−113857号公報
【特許文献4】特開2012−5744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、従来様々なセカンドシートが提案されているが、吸収性物品としての性能をさらに向上することができるセカンドシートが求められている。本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、セカンドシートが配された吸収性物品であって、尿等の吸収性能に優れ、トップシートの濡れ性を低減することができる吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決することができた本発明の吸収性物品とは、トップシートとバックシートとこれらの間に配された吸収体とを有するとともに、トップシートと吸収体との間にセカンドシートが配された吸収性物品であって、セカンドシートは、トップシート側から不織布層とプラスチックフィルム層とを有する積層体から構成され、複数の貫通孔が形成されているところに特徴を有する。本発明の吸収性物品は、このように構成されたセカンドシートがトップシートと吸収体との間に配されているため、トップシートに吸収された尿等が不織布層によって速やかにセカンドシートに引き込まれ、セカンドシートに移行した尿等はさらに貫通孔を通って吸収体に移行することができる。一方、吸収体に移行した尿等は、プラスチックフィルム層によってトップシート側に逆戻りすることが防止される。そのため、本発明の吸収性物品は、尿等の吸収性能に優れるとともに、トップシートの濡れ性が低減され、着用感が良好なものとなる。
【0006】
不織布層は、熱エンボスされた不織布から構成されていることが好ましい。不織布層を構成する不織布が熱エンボスされていれば、不織布層による尿等の引き込み効果を確保しつつ、不織布層の嵩を抑えて、尿等が不織布層に滞留する量を減らすことができる。そのため、不織布層からトップシートへ尿等が逆戻りする量が減り、トップシートの濡れ性を低減することができる。
【0007】
セカンドシートの各貫通孔は、熱エンボスにより形成されたエンボス部よりも大きな大きさで形成されていることが好ましい。貫通孔がエンボス部よりも大きい大きさで形成されていれば、尿等がエンボス部で留まることなく貫通孔に移行しやすくなり、また、貫通孔を通って吸収体に移行しやすくなる。
【0008】
セカンドシートは、貫通孔に不織布層が貫入していることが好ましい。このように貫通孔が形成されていれば、尿等が不織布層から貫通孔にスムーズに移行しやすくなる。その結果、尿等が貫通孔を通って吸収体にスムーズに移行しやすくなり、トップシートの濡れ性をさらに低減することができる。
【0009】
セカンドシートのバックシート側表面は、貫通孔の外縁に沿ってバックシート側に突出していることが好ましい。このようにセカンドシートが形成されていれば、貫通孔を通過した尿等が、貫通孔の外縁に沿ってバックシート側に突出した部分を伝って吸収体にスムーズに移行しやすくなる。その結果、トップシートの濡れ性をさらに低減することができる。
【0010】
不織布層は短繊維不織布から構成され、当該不織布の構成繊維が吸収性物品の長手方向に配向していることが好ましい。このように不織布層が構成されていれば、トップシートの濡れ性低減効果を高めることができるとともに、不織布層では尿等が吸収性物品の幅方向よりも長手方向に拡散しやすくなるため、吸収体全体が尿等の吸収に効果的に寄与しやすくなる。
【0011】
不織布層とプラスチックフィルム層は接着剤により互いに接合されていることが好ましい。これにより、例えば不織布層とプラスチックフィルム層とを熱接着する場合と比べて、プラスチックフィルム層の破断強度を確保しやすくなる。また、プラスチックフィルム層の熱硬化を防止して、セカンドシートの柔軟性を確保することができる。
【0012】
不織布層は、トップシートよりも低い目付で形成されていることが好ましい。不織布層がトップシートよりも低い目付で形成されていれば、セカンドシートの不織布層に残った尿等がトップシートに逆戻りしても、逆戻り量を低く抑えて、トップシートを比較的ドライに維持することが可能となる。
【0013】
トップシートは、熱エンボスされた不織布から構成されていることが好ましい。トップシートが熱エンボスされた不織布から構成されていれば、トップシートが比較的薄く形成されるため、尿等がトップシートを速やかに透過しやすくなるとともに、トップシートに尿等が液残りしにくくなる。そのため、トップシートの濡れ性を低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の吸収性物品は、トップシート側から不織布層とプラスチックフィルム層とを有する積層体から構成され、複数の貫通孔が形成されたセカンドシートを備えているため、トップシートに吸収された尿等が速やかにセカンドシートに引き込まれて、吸収体に移行することができるとともに、吸収体に吸収された尿等がトップシート側に逆戻りすることが防止される。そのため本発明の吸収性物品は、尿等の吸収性能に優れたものとなるとともに、トップシートの濡れ性を低減することができ、着用感が良好なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の吸収性物品の一例として、尿パッドをトップシート側から見た平面図を表す。
図2図1に示した吸収性物品のII−II断面図を表す。
図3図1および図2に示した吸収性物品のセカンドシートの拡大斜視図を表す。
図4図3に示したセカンドシートのVI−VI断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の吸収性物品は、トップシートとバックシートとこれらの間に配された吸収体とを有するとともに、トップシートと吸収体との間にセカンドシートが配されている。本発明の吸収性物品は、例えば、使い捨ておむつ、尿パッド(失禁パッドを含む)、生理用ナプキン等に適用できる。
【0017】
吸収性物品は、長手方向と幅方向とを有する。長手方向とは、吸収性物品を着用者が着用した際、着用者の股間の前後方向に延びる方向を意味する。幅方向とは、吸収性物品と同一面上にあり長手方向と直交する方向を意味し、吸収性物品を着用した際の着用者の左右方向に相当する。また、長手方向と幅方向から形成される面に対して平行方向を平面方向とし、垂直方向を厚み方向とする。
【0018】
吸収性物品の形状は特に限定されない。吸収性物品が、尿パッドや生理用ナプキンである場合、吸収性物品の形状としては、略長方形、長円形、砂時計形、ひょうたん形等が示される。
【0019】
吸収性物品が使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつは、例えば、前側部と後側部とこれらの間に位置し吸収体が備えられた股部とから構成される。使い捨ておむつは、例えば、前側部と後側部とこれらの間に位置する股部とを有するパンツ部材の股部に、トップシートとバックシートの間に吸収体が配された積層体が備えられて構成される。使い捨ておむつはまた、トップシートとバックシートの間に吸収体が配された積層体が、前側部と後側部とこれらの間に位置する股部とを有するパンツ形状に形成されていてもよい。
【0020】
前側部は、使い捨ておむつを着用の際に着用者の腹側に当てる部分に相当し、後側部は、使い捨ておむつを着用の際に着用者の背側に当てる部分に相当する。股部は、前側部と後側部との間に位置し、着用者の股間に当てる部分に相当する。
【0021】
使い捨ておむつは、後側部の左右側端に一対の止着部材が設けられ、当該止着部材により着用時にパンツ形状に形成するオープンタイプ(テープタイプ)の使い捨ておむつであったり、前側部と後側部とが接合されることによりウェスト開口部と一対の脚開口部とが形成されたパンツタイプの使い捨ておむつであってもよい。
【0022】
トップシートは、吸収性物品の着用の際に着用者側に位置するシートであり、液透過性であることが好ましい。トップシートとしては、例えば、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維から形成された不織布や;ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布であって、疎水性繊維の表面が界面活性剤により親水化されたもの等を用いることができる。また、トップシートとして、織布、編布、有孔プラスチックフィルム等を用いてもよい。
【0023】
バックシートは、吸収性物品の着用の際に着用者とは反対側、すなわち外側に位置するシートであり、液不透過性であることが好ましい。バックシートとしては、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布や、プラスチックフィルム等を用いることができる。また、不織布とプラスチックフィルムとの積層体を用いてもよい。本発明において、液不透過性とは撥水性の意味も含まれる。
【0024】
トップシートやバックシートとして不織布を用いる場合、不織布としては、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、メルトブロー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、SMS不織布等を用いることが好ましい。
【0025】
吸収体は、尿等の排泄物を吸収できる吸収性材料を含むものであれば特に限定されない。吸収体としては、例えば、吸収性材料を所定形状に成形した成形体を用いたり、あるいは当該成形体を紙シート(例えば、ティッシュペーパーや薄葉紙)や液透過性不織布シート等の被覆シートで覆ったものを用いることができる。吸収性材料としては、例えば、パルプ繊維等の親水性繊維や、ポリアクリル酸系、ポリアスパラギン酸系、セルロース系、デンプン・アクリロニトリル系等の吸水性樹脂等が挙げられる。また、吸水性材料には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維や、PET等のポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の熱融着性繊維が含まれてもよい。これらの熱融着性繊維は、尿等との親和性を高めるために、界面活性剤等により親水化処理がされていてもよい。
【0026】
吸収性材料は、尿等の吸収速度を高める点から、親水性繊維を含むことが好ましい。また、吸収容量を高める点からは、吸収性材料は吸水性樹脂を含むことが好ましい。従って、吸収体は親水性繊維(特にパルプ繊維)と吸水性樹脂を含むことが好ましい。この場合、例えば、親水性繊維の集合体に吸水性樹脂を混合または散布したものを用いることが好ましい。
【0027】
吸収体は、シート状吸収体であってもよい。シート状吸収体としては、不織布間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないように形成されたものが挙げられる。このように形成されたシート状吸収体は、不織布間に吸水性樹脂を有するため、高い吸収容量を実現できる。また、シート状吸収体は不織布間にパルプ繊維を有しないため、嵩張らず薄型に形成することができる。
【0028】
シート状吸収体としては、吸収性材料として吸水性繊維を用いてもよい。この場合もまた、シート状吸収体は嵩張らず薄型に形成される。吸水性繊維としては、プロトン化または塩形成したカルボキシル基を含有する繊維が挙げられる。例えば、特公昭52−42916号公報に開示されるように、アクリル繊維を加水分解して、アクリル繊維に含まれるニトリル基をカルボキシル基に変換することにより、吸水性繊維を得ることができる。このとき、吸水性繊維に含まれるカルボキシル基は、アルカリ金属塩またはアンモニア塩を形成していることが好ましい。また吸水性繊維は、親水性繊維をアクリル酸に浸漬し、繊維表面でアクリル酸を析出させることにより製造することができる。
【0029】
吸収体の形状(平面形状)は特に限定されない。吸収体の形状は、用途に応じて適宜決定すればよく、例えば、略長方形、砂時計形、ひょうたん形、羽子板形等が挙げられる。
【0030】
セカンドシートは、トップシートと吸収体との間に配されるシートである。本発明では、セカンドシートは、トップシート側から不織布層とプラスチックフィルム層とを有する積層体から構成され、複数の貫通孔が形成されている。すなわちセカンドシートは、不織布層とプラスチックフィルム層が積層一体化されて構成され、不織布層がトップシート側に位置し、プラスチックフィルム層がバックシート側に位置するように配され、セカンドシートをトップシート側表面からバックシート側表面に貫通するように複数の孔が形成されている。
【0031】
本発明の吸収性物品は、このように構成されたセカンドシートがトップシートと吸収体との間に配されているため、着用者から排泄されトップシートを透過した尿等を速やかに吸収体に引き込むことができるとともに、トップシートの濡れ性を低減することができる。すなわち、セカンドシートのトップシート側表面に不織布層が存在しているため、不織布層の毛細管効果によって、トップシートに吸収された尿等がセカンドシートに速やかに移行し、セカンドシートに移行した尿等はさらにセカンドシートに形成された貫通孔を通ってセカンドシートを通過し、吸収体に移行することができる。一方、吸収体に移行した尿等は、セカンドシートのプラスチックフィルム層によってトップシート側に逆戻りすることが防止される。そのため、本発明の吸収性物品は、尿等の吸収性能に優れたものとなるとともに、トップシートの濡れ性が低減され、着用感が良好なものとなる。
【0032】
不織布層を構成する不織布の種類は特に限定されないが、親水性であることが好ましい。不織布層を構成する不織布としては、トップシートに使用可能な不織布を用いることができる。なお、不織布層を構成する不織布は、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の熱融着性繊維から形成されていることが好ましく、これにより、後述するように、不織布に熱エンボスによるエンボス部を形成することが容易になる。不織布の構成繊維は、単一成分からなるものでもよく、多成分からなるもの(すなわち複合繊維)であってもよい。
【0033】
不織布層を構成する不織布としては、例えば、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布等が挙げられる。なお、トップシートからの尿等の引き込み力を高めるために、不織布層を構成する不織布の繊維間結合には接着剤が用いられないことが好ましく、熱(自己融着を含む)や水流により繊維どうしが結合または交絡された不織布を用いることが好ましい。従って、不織布層は、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、またはスパンレース不織布から構成されていることが好ましい。また、尿等の引き込み力を高めるためには、不織布層の繊維間空隙がある程度大きく形成されることが好ましく、従って不織布層は、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、またはスパンレース不織布から構成されていることが好ましい。
【0034】
不織布層は、熱エンボスされた不織布から構成されていることが好ましい。不織布層を構成する不織布が熱エンボスされていれば、不織布層による尿等の引き込み効果を確保しつつ、不織布層の嵩を抑えて、尿等が不織布層に滞留する量を減らすことができる。そのため、セカンドシートからトップシートへ尿等が逆戻りする量を減らすことができる。
【0035】
熱エンボスされた不織布の種類は特に限定されないが、例えばポイントボンド不織布は、熱融着性の短繊維ウェブをエンボスロールで熱圧着することにより、繊維どうしが結合され、不織布に形成されるため、ポイントボンド不織布を用いれば熱エンボスされた不織布を簡単に形成することができる。またスパンボンド不織布は、溶融紡糸された長繊維をコンベアベルト上に集積してウェブ状に形成し、これをエンボスロールで熱圧着することにより繊維どうしが結合され、不織布に形成されるが、スパンボンド不織布を用いた場合も、熱エンボスされた不織布を簡単に形成することができる。もちろん、熱エンボスされた不織布は、製造した状態では熱エンボスされていないものの、その後熱エンボスすることにより得られるものであってもよい。しかしながら、製造容易性の点からは、不織布層は、熱エンボスされた不織布として、ポイントボンド不織布またはスパンボンド不織布を用いることが好ましい。
【0036】
熱エンボスにより形成されるエンボス部の形状や配置は特に限定されないが、エンボス部は任意の形状で散点状に設けられることが好ましい。エンボス部の1つ1つの形状は、円形、楕円形、長円形、多角形、波形、星形等、特に限定されず、これらは規則的な配置パターンで設けられてもよく、ランダムな配置パターンで設けられてもよい。エンボス部が規則的な配置パターンで設けられる場合、エンボス部は、任意の格子の各格子点に配置されることが好ましい。エンボス部は、例えば、1つ当たりの面積が0.05mm2〜10mm2であることが好ましく、また隣接するエンボス部間の平均離間距離が0.5mm〜10mmとなるように設けられることが好ましい。なお、ここで説明したエンボス部の形状や配置は、貫通孔が形成されない状態で規定されるものとする。
【0037】
不織布層は短繊維不織布から構成されていることが好ましい。不織布層が短繊維不織布から構成されていれば、セカンドシートの不織布層に移行した尿等が速やかに貫通孔を通って吸収体に移行しやすくなる。例えば、不織布層が長繊維不織布から構成されている場合は、尿等が不織布層で長繊維の繊維配向方向に沿って広く拡散しやすくなり、その結果、セカンドシートから吸収体への尿等の移行が遅くなりやすくなる。また、不織布層で尿等が広く拡散する結果、尿等がセカンドシート上の貫通孔の形成されない部分で広範囲にわたって残りやすくなり、尿等のトップシートへの逆戻り量が増えるおそれがある。しかし、不織布層が短繊維不織布から構成されていれば、長繊維不織布を用いた場合よりも尿等の平面方向への拡散が抑えられ、その結果、貫通孔を通ってセカンドシートから吸収体へより多くの尿等が移行しやすくなり、トップシートの濡れ性低減効果を高めることができる。
【0038】
不織布層が短繊維不織布から構成されている場合、当該不織布の構成繊維は吸収性物品の長手方向に配向していることが好ましい。このように不織布層が構成されていれば、トップシートの濡れ性低減効果を高めることができるとともに、不織布層では尿等が吸収性物品の幅方向よりも長手方向に拡散しやすくなるため、吸収体全体が尿等の吸収に効果的に寄与しやすくなる。なお、不織布層が長繊維不織布から構成されている場合も、当該不織布の構成繊維は長手方向に配向していることが好ましい。
【0039】
従って、不織布層はポイントボンド不織布から構成されていることが特に好ましく、またポイントボンド不織布の構成繊維は、吸収性物品の長手方向に配向していることが好ましい。
【0040】
プラスチックフィルム層は、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の樹脂から形成されたフィルムを用いることができる。プラスチックフィルム層は疎水性であることが好ましいが、界面活性剤等により親水処理されていてもよい。プラスチックフィルム層はエンボスされていないことが好ましく、これによりプラスチックフィルム層が破断しにくくなる。
【0041】
プラスチックフィルム層は不織布層のバックシート側に配され、不織布層と積層一体化されている。不織布層とプラスチックフィルム層は接着剤により互いに接合されていることが好ましく、これにより、例えば不織布層とプラスチックフィルム層とを熱接着する場合と比べて、プラスチックフィルム層の破断強度を確保しやすくなる。また、プラスチックフィルム層の熱硬化を防止して、セカンドシートの柔軟性を確保することができる。不織布層とプラスチックフィルム層は、全面塗工された接着剤により互いに接合されていることがより好ましく、これにより不織布層とプラスチックフィルム層の間に尿等が滞留することを防止しやすくなる。
【0042】
貫通孔は、不織布層とプラスチックフィルム層の積層体を貫通するように設けられたものであれば、貫通孔の形成方法は特に限定されない。貫通孔は、不織布層とプラスチックフィルム層の積層体に針や凸型で孔を開けたり、抜き型で孔を開けることにより形成すればよい。また貫通孔は、不織布層とプラスチックフィルム層の積層体に、レーザーを照射して焼いたり、高圧空気を当てることにより形成してもよい。貫通孔は、セカンドシートの全体にわたって多数設けられることが好ましい。
【0043】
貫通孔の形状(平面形状)は特に限定されないが、吸収性物品の長手方向に長い形状で形成されていることが好ましい。貫通孔の形状としては、円形、楕円形、長円形、多角形、亜鈴形等が挙げられる。貫通孔が吸収性物品の長手方向に長い形状で形成されていれば、セカンドシートで尿等が幅方向よりも長手方向に拡散しやすくなり、吸収体全体が尿等の吸収に効果的に寄与しやすくなる。
【0044】
各貫通孔は、熱エンボスにより形成されたエンボス部よりも大きな大きさで形成されていることが好ましい。貫通孔がエンボス部よりも大きい大きさで形成されていれば、尿等がエンボス部で留まることなく貫通孔に移行しやすくなり、また、貫通孔を通って吸収体に移行しやすくなる。各貫通孔の面積は、例えば、0.1mm2〜10mm2程度であればよい。さらにセカンドシートは、所定面積(例えば5cm×5cmの領域)当たりの貫通孔の全面積がエンボス部の全面積よりも大きくなるように形成されることが好ましく、これにより尿等が貫通孔を通って吸収体に移行しやすくなる。
【0045】
セカンドシートは、貫通孔に不織布層が貫入していることが好ましい。すなわちセカンドシートは、不織布層がプラスチックフィルム層の貫通孔に入り込んでいることが好ましい。このように貫通孔が形成されていれば、プラスチックフィルム層においても貫通孔の内面が不織布で覆われ、尿等が不織布層から貫通孔にスムーズに移行しやすくなる。その結果、尿等が貫通孔を通って吸収体にスムーズに移行しやすくなり、トップシートの濡れ性をさらに低減することができる。
【0046】
セカンドシートのバックシート側表面は、貫通孔の外縁に沿ってバックシート側に突出していることが好ましい。このようにセカンドシートが形成されていれば、貫通孔を通過した尿等が、貫通孔の外縁に沿ってバックシート側に突出した部分を伝って吸収体にスムーズに移行しやすくなる。その結果、トップシートの濡れ性をさらに低減することができる。
【0047】
上記のような貫通孔をセカンドシートに形成する方法としては、不織布層とプラスチックフィルム層の積層体に不織布層側から針や凸型を挿入して、孔を開ける方法が挙げられる。このように貫通孔を形成することにより、不織布層が貫通孔に貫入し、またバックシート側表面が貫通孔の外縁に沿ってバックシート側に突出したセカンドシートを簡単に得ることができる。
【0048】
セカンドシートは、トップシートに隣接して設けられることが好ましい。また、セカンドシートは、吸収体に隣接して設けられることが好ましい。さらに、セカンドシートは吸収体よりも幅方向と長手方向に狭く形成されることが好ましい。
【0049】
セカンドシートがトップシートに隣接して設けられる場合、セカンドシートはトップシートに接合・固定していることが好ましく、これにより、吸収性物品の構造安定性が向上する。この場合、セカンドシートはトップシートに接着剤により接合されることが、吸収性物品の製造容易性の点から好ましい。
【0050】
トップシートとセカンドシートが接着剤により互いに接合される場合、トップシートとセカンドシートは線状に塗工された接着剤により互いに接合されていることが好ましい。接着剤の塗工パターンとしては、例えば、直線状、蛇行線状、スパイラル状が挙げられる。トップシートとセカンドシートがこのように接合されていれば、トップシートを透過した尿等がスムーズにセカンドシートに移行しやすくなる。
【0051】
トップシートは、熱エンボスされた不織布から構成されていることが好ましい。トップシートが熱エンボスされた不織布から構成されていれば、トップシートが比較的薄く形成されるため、尿等がトップシートを速やかに透過しやすくなるとともに、トップシートに尿等が液残りしにくくなる。そのため、トップシートの濡れ性を低減することができる。また、トップシートを構成する不織布が熱エンボスされることにより、不織布の構成繊維の毛羽立ちが抑えられ、肌触りを向上させることができる。熱エンボスされた不織布としては、上記に説明したセカンドシートの不織布層に使用可能な熱エンボスされた不織布を用いればよい。熱エンボスにより形成されるエンボス部の形状や配置についても、上記に説明した通りである。好ましくは、トップシートは、ポイントボンド不織布またはスパンボンド不織布から構成される。
【0052】
トップシートは長繊維不織布から構成されていることが好ましい。本発明の吸収性物品は、セカンドシートの存在によって、トップシートを透過した尿等を速やかに吸収体に引き込むことが可能となる。一方、トップシートの濡れ性を低減する点からは、上記に説明したように、セカンドシートでの尿等の拡散性はあまり高めない方が好ましい。従って、吸収性物品全体として平面方向への拡散性を確保するためには、トップシートを長繊維不織布から構成し、トップシートでの尿等の拡散性を高めることが好ましい。トップシートを長繊維不織布から構成することにより、尿等がトップシートで長繊維の繊維配向方向に沿って拡散しやすくなり、吸収性物品全体として見たときに、平面方向への尿等の拡散性を確保することができる。トップシートが長繊維不織布から構成される場合、当該不織布の構成繊維は吸収性物品の長手方向に配向していることが好ましく、これにより、吸収体全体が尿等の吸収に効果的に寄与しやすくなる。従って、トップシートは、スパンボンド不織布から構成されることが特に好ましい。
【0053】
セカンドシートの不織布層は、トップシートよりも低い目付で形成されていることが好ましい。本発明の吸収性物品は、セカンドシートの存在によって、吸収体からの尿等の逆戻りを防止することができるが、セカンドシートの不織布層に残った尿等は、着用者によって圧迫されることにより、一部がトップシートに逆戻りするおそれがある。しかし、セカンドシートの不織布層をトップシートよりも低い目付で形成すれば、セカンドシートの不織布層に残った尿等がトップシートに逆戻りしても、トップシートの保水能力に比べて逆戻り量を低く抑えて、トップシートを比較的ドライに維持することが可能となる。
【0054】
次に、本発明の吸収性物品について、尿パッドを例に挙げ、図1図4を参照して説明する。図1は、本発明の吸収性物品の一例として、尿パッドをトップシート側から見た平面図を表す。図2は、図1に示した吸収性物品のII−II断面図を表す。図3は、図1および図2に示した吸収性物品のセカンドシートの拡大斜視図を表す。図4は、図3に示したセカンドシートのVI−VI断面図を表す。図面では、矢印xが幅方向を表し、矢印yが長手方向を表し、矢印zが厚み方向を表す。なお本発明の吸収性物品は、図面に示された実施態様に限定されない。
【0055】
吸収性物品1は、トップシート2とバックシート3とこれらの間に配された吸収体4とを有し、トップシート2と吸収体4との間にセカンドシート10が配されている。トップシート2は、着用者の股部の肌に面するように配置され、尿等の液体の排泄物を透過する。トップシート2を通過した尿等の排泄物は、セカンドシート10を通って吸収体4に移行し、吸収体4に収容される。バックシート3は、排泄物が外部へ漏れるのを防いでいる。
【0056】
トップシート2の幅方向xの両側には、長手方向yに延在する一対のサイドシート5が設けられている。サイドシート5はトップシート2に接合され、幅方向xの内方端に起立用弾性部材7が設けられている。サイドシート5は、起立用弾性部材7の収縮力によりサイドシート5の内方端が着用者の肌に向かって立ち上がり、これにより立ち上がりフラップ6が形成され、尿等の排泄物の横漏れが防止される。
【0057】
セカンドシート10は、トップシート2側から不織布層11とプラスチックフィルム層12とを有する積層体から構成され、複数の貫通孔13が形成されている(図3および図4を参照)。吸収性物品1は、このように形成されたセカンドシート10が配されているため、トップシート2に吸収された尿等が不織布層11によって速やかにセカンドシート10に引き込まれ、セカンドシート10に移行した尿等はさらに貫通孔13を通って吸収体4に移行することができる。一方、吸収体4に移行した尿等は、プラスチックフィルム層12によってトップシート2側に逆戻りすることが防止される。そのため吸収性物品1は、尿等の吸収性能に優れたものとなり、またトップシート2の濡れ性が低減され、着用感に優れたものとなる。
【0058】
不織布層11は、熱エンボスにより形成されたエンボス部14を有する不織布から構成されている。図3では、エンボス部14は、長手方向yと幅方向xに複数並んで配置されている。不織布層11が熱エンボスされた不織布から構成されていれば、不織布層11による尿等の引き込み効果を確保しつつ、不織布層11の嵩を抑えて、尿等が不織布層11に滞留する量を減らすことができる。そのため、尿等のトップシート2への逆戻り量を減らすことができる。
【0059】
セカンドシート10は、図4に示すように、貫通孔13に不織布層11が貫入していることが好ましい。このように貫通孔13が形成されていれば、尿等が不織布層11を伝って貫通孔13にスムーズに移行しやすくなる。図3では、各貫通孔13が長手方向yに長い長方形で形成され、貫通孔13が長手方向yと幅方向xに複数並んで配置されている。
【0060】
セカンドシート10のバックシート側表面10Bは、貫通孔13の外縁13Eに沿ってバックシート側に突出しており、これにより、貫通孔13を通過した尿等が、貫通孔13の外縁13Eに沿ってバックシート側に突出した部分を伝って吸収体4にスムーズに移行しやすくなる。一方、セカンドシート10のトップシート側表面10Aは、貫通孔13の外縁13Eでバックシート側に向かって貫通孔13の中心側に傾斜していることが好ましく、これにより、尿等が貫通孔13にスムーズに移行しやすくなる。
【符号の説明】
【0061】
1: 吸収性物品(尿パッド)
2: トップシート
3: バックシート
4: 吸収体
10: セカンドシート
11: 不織布層
12: プラスチックフィルム層
13: 貫通孔
14: エンボス部
図1
図2
図3
図4