特許第6386823号(P6386823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6386823立軸回転電機の固定子枠と固定子ベースとの結合構造と立軸回転電機と立軸回転電機の運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386823
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】立軸回転電機の固定子枠と固定子ベースとの結合構造と立軸回転電機と立軸回転電機の運転方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/00 20060101AFI20180827BHJP
   H02K 5/26 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   H02K5/00 A
   H02K5/26
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-144504(P2014-144504)
(22)【出願日】2014年7月14日
(65)【公開番号】特開2016-21816(P2016-21816A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2017年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】星 麻美
(72)【発明者】
【氏名】安 信行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忠利
(72)【発明者】
【氏名】長田 大
【審査官】 服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭48−000303(JP,U)
【文献】 特許第4473649(JP,B2)
【文献】 特開2013−130143(JP,A)
【文献】 特開平08−098476(JP,A)
【文献】 特開昭50−121707(JP,A)
【文献】 実開昭54−001760(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/00
H02K 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立軸回転電機の固定子枠と、その荷重を支持する固定子ベースとの間の接合部に固定子取付けボルトが配設され、前記固定子枠と、前記固定子ベースとの間が前記固定子取付けボルトによって取り付けられる固定子枠と固定子ベースとの結合構造であって、
前記固定子取付けボルトは、ボルト頭部の軸心部に軸方向に延設された軸方向穴と、前記軸方向穴から前記ボルトの外周面に向けて放射状に抜ける突き抜け穴とを有する給油穴を有し、
前記固定子ベースと前記固定子枠との接触面のうち少なくとも前記固定子ベース側の接触面に、前記固定子取付けボルトのボルト穴同士をつなぐように配列した給油溝を有することを特徴とする固定子枠と固定子ベースとの結合構造。
【請求項2】
前記固定子取付けボルトは、前記立軸回転電機の回転軸に対する周方向に複数本が配列されてなり、
前記給油溝は、前記固定子取付けボルトよりも内周側にて前記複数本の前記固定子取付けボルトの配列方向に伸びる第1給油溝と、当該第1給油溝から前記複数本の前記固定子取付けボルトのボルト穴のそれぞれを貫通するように伸びる第2給油溝と、を有することを特徴とする請求項1記載の固定子枠と固定子ベースとの結合構造。
【請求項3】
立軸回転電機の固定子枠と、その荷重を支持する固定子ベースとの間の接合部に固定子取付けボルトが配設され、前記固定子枠と、前記固定子ベースとの間が前記固定子取付けボルトによって取り付けられる固定子枠と固定子ベースとの結合構造であって、
前記固定子枠を前記固定子ベースからジャッキアップするための油圧ジャッキと、
前記立軸回転電機の駆動時に前記固定子枠の変位を計測するための変位センサと、
前記変位センサの検出結果に応じて前記油圧ジャッキを駆動するコントローラとを設けたことを特徴とする固定子枠と固定子ベースとの結合構造。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の固定子枠と固定子ベースとの結合構造であって、
前記給油溝に潤滑剤を注入するための高圧油配管を有することを特徴とする固定子枠と固定子ベースとの結合構造。
【請求項5】
請求項4に記載の固定子枠と固定子ベースとの結合構造であって、
前記立軸回転電機の駆動時に前記固定子枠の変位を計測するための変位センサと、
前記高圧油配管のへの前記潤滑剤の注入を制御する制御弁と、
前記変位センサの検出結果に応じて前記制御弁を動作させるコントローラとをさらに設けたことを特徴とする固定子枠と固定子ベースとの結合構造。
【請求項6】
前記請求項1乃至のいずれか1の固定子枠と固定子ベースとの結合構造を有する立軸回転電機。
【請求項7】
立軸回転電機の負荷運転を開始する負荷運転開始ステップと、
前記負荷運転開始ステップの後に前記立軸回転電機の固定子枠の変位を計測する変位計測ステップと、
前記変位計測ステップで計測した前記固定子枠の前記変位の検出結果に応じて、前記固定子枠の荷重を支持する固定子ベースの上に前記立軸回転電機の周方向に複数配置されて前記固定子枠を前記固定子ベースからジャッキアップするための油圧ジャッキに対して制御信号を出力する制御信号出力ステップと、
を備えることを特徴とする立軸回転電機の運転方法。
【請求項8】
立軸回転電機の負荷運転を開始する負荷運転開始ステップと、
前記負荷運転開始ステップの後に前記立軸回転電機の固定子枠の変位を計測する変位計測ステップと、
前記変位計測ステップで計測した前記固定子枠の前記変位の検出結果に応じて、前記固定子枠の荷重を支持する固定子ベースと前記固定子枠との接触面のうち少なくとも前記固定子ベース側に設けられた給油溝に対する潤滑剤の注入を制御する注入動作制御ステップと、
を備えることを特徴とする立軸回転電機の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、立軸回転電機の固定子枠と固定子ベースとの結合構造と立軸回転電機と立軸回転電機の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立軸回転電機(例えば水車発電機)では、固定子枠が固定子ベースにより支持される。通常は、基礎コンクリート上に設置された固定子ベースに固定子枠がボルト止めされている。発電機運転時、固定子枠は熱膨張により変形する。ここで、固定子が過度に拘束されていると、固定子の真円度が低下する。そのため、固定子枠と固定子ベース間の摩擦力の低減が求められている。固定子を分解することなく固定子ベースと固定子枠との接触面に潤滑剤を供給する手段として、固定子枠と固定子ベースとの締結時に、予め潤滑剤供給用の穴のあいたボルトを使用するものがある。
【0003】
また、固定子の真円度が低下した場合に固定子を外部に吊り出すことなく真円度を修正する手段として、固定子枠の外周側に固定子枠の周方向に沿って複数の電動サーボモータを配置した固定子の最適位置調整装置がある。ここでは、各電動サーボモータのロッドの先端に取り付けた圧力センサからの検出結果に基づいて各電動サーボモータの動作を制御して固定子枠の周方向の複数の位置で固定子枠の熱伸びが均等になるようにバランスさせる構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4473649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように固定子枠と固定子ベースとのボルト止め部分に潤滑剤供給用の穴のあいたボルトを使用する場合は、ボルトに設けた潤滑剤供給用の穴より潤滑剤を接触面へ供給することになる。この場合、潤滑剤供給用の穴から供給された潤滑剤を固定子ベースと固定子枠との接触面全体へ浸透させることが難しい。
【0006】
また、偏芯する固定子の最適位置調整装置においては、固定子の外周側へ周方向に沿って複数の電動サーボモータを配置する構成になっているので、発電機外径が大きくなる。さらに、固定子の熱伸びによる変形量を事前に把握する必要がある。また、固定子枠外側より固定子枠の変形を抑制するのみであるため、例えば固定子の熱伸びが不均等で真円度が低下した際、熱伸びできていない一部分の熱伸びを促進することによる真円度の修正が不可能である。
【0007】
実施形態は、固定子の真円度を維持することのできる立軸回転電機の固定子枠と固定子ベースとの間の取付け構造と立軸回転電機と立軸回転電機の運転方法を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、立軸回転電機の固定子枠と、その荷重を支持する固定子ベースとの間の接合部に固定子取付けボルトが配設される。前記固定子枠と、前記固定子ベースとの間が前記固定子取付けボルトによって取り付けられる固定子枠と固定子ベースとの結合構造である。前記固定子取付けボルトは、ボルト頭部の軸心部に軸方向に延設された軸方向穴と、前記軸方向穴から前記ボルトの外周面に向けて放射状に抜ける突き抜け穴とを有する給油穴を有する。前記固定子ベースと前記固定子枠との接触面のうち少なくとも前記固定子ベース側の接触面に、前記固定子取付けボルトのボルト穴同士をつなぐように配列した給油溝を有する。

【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態の立軸回転電機の固定子ベースと固定子枠との結合部分の概略構成を示す要部の縦断面図。
図2】第1の実施の形態の立軸回転電機の固定子枠と固定子ベースとの間の締め付けボルトの連結部分を示す平面図。
図3図2のIII−III線断面図。
図4】第2の実施の形態の立軸回転電機の固定子枠と固定子ベースとの間の締め付けボルトの連結部分を示す要部の縦断面図。
図5】第3の実施の形態の立軸回転電機の固定子枠と固定子ベースとの間の締め付けボルトの連結部分を示す要部の縦断面図。
図6図5のVI−VI線断面図。
図7】第4の実施形態の立軸回転電機の固定子ベースに配置された油圧ジャッキの制御系を示す概略構成図。
図8】第4の実施形態の立軸回転電機に設けられた変位センサの設置位置を示す要部の縦断面図。
図9】第4の実施形態の立軸回転電機の固定子枠の真円度の調整時の油圧ジャッキの動作を説明するためのフローチャート。
図10】第5の実施形態の立軸回転電機に配置された油圧ジャッキの装着状態を示す側面図。
図11】第6の実施形態の立軸回転電機に配置された高圧油配管の配設状態を示すもので、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は要部の縦断面図。
図12】第6の実施形態の立軸回転電機の変形例による固定子枠の真円度の調整時の高圧油の注入動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
(構成)
以下、図面に示す実施の形態を詳細に説明する。図1乃至図3は、第1の実施の形態を示す。図1は、本実施の形態の立軸回転電機の一例である立軸発電機1の要部構成を示す縦断面図である。立軸発電機1は、図示しない回転軸に取付けられた回転子2と、この回転子2にエアギャップを存して配置された固定子3とを有する。固定子3は、固定子枠4などで構成されている。また、基礎コンクリート5上には、固定子枠4の周方向に沿って複数の固定子ベース6が埋設されている。固定子枠4は、この固定子ベース6に支持されている。ここで、固定子枠4と、固定子ベース6との間は、図2に示すように複数の締め付けボルト(固定子取付けボルト)7によってボルト止めされる状態で締結されている。
【0011】
各締め付けボルト7は、図3に示すように潤滑剤12を給油する際に使用される給油穴8を有する。この給油穴8は、1つの軸方向穴8aと、複数の突き抜け穴8bとを有する。軸方向穴8aは、締め付けボルト7のボルト頭部7aの軸心部に軸方向に延設されている。複数の突き抜け穴8bは、軸方向穴8aの終端部からボルト7の外周面に向けて放射状に抜ける状態で形成されている。また、固定子枠4と、固定子ベース6には、各締め付けボルト7を挿通する複数のボルト穴11がそれぞれ形成されている。
【0012】
本実施の形態では、上記構造において、固定子枠4と、固定子ベース6との間の接合面に潤滑剤による潤滑機能を高める潤滑機能の活性化手段9を設けている。この活性化手段9は、固定子ベース6と固定子枠4との接触面のうち少なくとも固定子ベース6側の接触面に、給油溝10を設けている。この給油溝10は、固定子ベース6に形成された複数のボルト穴11間をつなぐように配列したものである。
【0013】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態の立軸発電機1によれば、締め付けボルト7の給油穴8より供給した液状の潤滑剤12を、固定子ベース6の給油溝10へと流入させることができる。これにより、液状の潤滑剤12を固定子枠4と、固定子ベース6との間の接合面の広い面積に浸透させることができる。そのため、立軸発電機1の駆動時に、固定子枠4が熱伸びした際に、固定子ベース6の給油溝10に流入した液状の潤滑剤12を、熱伸びによる摺動によって、固定子ベース6と固定子枠4との接触面に塗り広げることができ、固定子ベース6と固定子枠4との接触面の摩擦力を低減することができる。
【0014】
(効果)
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態の立軸発電機1では、締め付けボルト7の給油穴8より供給した液状の潤滑剤を固定子枠4と、固定子ベース6との間の接合面の広い面積に浸透させることができる。そのため、固定子3が熱伸びをした際に、固定子枠4と固定子ベース6の摺動面の摩擦力が低減され、固定子枠4の熱伸び量が均等になるので、固定子3の真円度を維持することができる。
【0015】
[第2の実施の形態]
(構成)
図4は、第2の実施の形態を示す。本実施の形態は、第1の実施の形態(図1乃至図3参照)の立軸発電機1の構成を次の通り変更した変形例である。なお、図4中で、図1乃至図3と同一部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0016】
本実施の形態では、潤滑機能の活性化手段として固定子ベース6と固定子枠4との接触面のほぼ全面に潤滑剤との親和性を高める表面処理を施した表面処理部21をそれぞれ設けたものである。なお、表面処理部21は、必ずしも固定子ベース6と固定子枠4との接触面の両方に設ける必要はなく、固定子ベース6と固定子枠4との接触面のうち少なくともいずれか一方の面に設ける構成にしてもよい。この表面処理部21は、固定子ベース6と固定子枠4との接触面であるそれぞれの金属面に、例えばプラズマ照射や、二酸化チタンなどの被膜の形成により親水(親油)化処理を施したものである。
【0017】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態によれば、締め付けボルト7の給油穴8より液状の潤滑剤12を供給した際に、液状の潤滑剤12を固定子ベース6と固定子枠4との接触面の表面処理部21によって固定子ベース6と固定子枠4との接触面全体の広い範囲にわたり浸透が促される。そのため、従来の潤滑剤の供給時よりも、固定子ベース6と固定子枠4との接触面全体の広い範囲に潤滑剤を塗り広げることができるので、固定子ベース6と固定子枠4との接触面の摩擦力を低減することができる。
【0018】
(効果)
本実施の形態では、固定子ベース6と固定子枠4との接触面に潤滑剤との親和性を高める表面処理を施した表面処理部21をそれぞれ設けている。これにより、本実施の形態でも第1実施形態と同様に締め付けボルト7の給油穴8より供給した液状の潤滑剤を固定子枠4と、固定子ベース6との間の接合面の広い面積に浸透させることができる。そのため、固定子3の熱伸びを促進することができるので、固定子3の真円度を維持することができる効果がある。
【0019】
なお、本実施の形態の表面処理部21に替えて固定子ベース6と固定子枠4との接触面に表面テクスチャを形成する構成にしてもよい。この表面テクスチャは、フェムト秒レーザを照射することで形成されるサブミクロンオーダーの微細な表面周期構造の微細加工面を設けたものである。このように固定子ベース6と固定子枠4との接触面などの摺動部品にマイクロテクスチャ加工した場合、穴や溝が潤滑油の「油だまり」の役割を果たし、摩擦抵抗や摩耗を減らせる。本変形例では、液状の潤滑剤12が表面テクスチャの凹部へ保持され、摩擦力を低減することができる。
【0020】
[第3の実施の形態]
(構成)
図5および図6は、第3の実施の形態を示す。なお、図5および図6中で、図1乃至図3と同一部分には同一の符号を付してその説明を省略する。本実施の形態では、立軸発電機1の固定子ベース6における固定子枠4との接触面に固体潤滑剤装着用の凹部31を設け、この凹部31に固体潤滑剤32を装着したものである。この凹部31は、固定子ベース6におけるボルト穴11の周囲を囲む状態で、固定子枠4との接触面のほぼ全体にわたり広い面積に形成されている。固体潤滑剤32は、例えばPTFEや、グラファイトなどである。
【0021】
(作用・効果)
本実施例によれば、立軸発電機1の駆動時に、固定子枠4が熱伸びし、固定子ベース6と摺動した際の摩擦力を固体潤滑剤32により低減することができる。また、本実施の形態では、第1実施形態の効果に加え、液状の潤滑剤12を使用する際に必要な、定期的な潤滑剤の注入作業を行うことなく、固体潤滑剤32により固定子ベース6と前記固定子枠4との摩擦力を低減することができる。
【0022】
なお、本実施の形態では、固体潤滑剤32を固定子ベース6の凹部31に装着した構成を示したが、固定子枠4における固定子ベース6との接触面に固体潤滑剤装着用の凹部31を設け、この凹部31に固体潤滑剤32を装着する構成にしてもよい。また、固定子枠4と、固定子ベース6との間の接触面の両方に設ける構成や、固定子枠4と固定子ベース6へは凹部31を設けず、間に個体潤滑剤32の薄板を挟む構成でもよい。
【0023】
また、固定子ベース6と固定子枠4との接触面に、炭素の拡散浸透層を形成することや、DLC被膜をコーティングすることによっても、固体潤滑効果によって摩擦力を低減することができる。
【0024】
[第4の実施の形態]
(構成)
図7乃至図9は、第4の実施の形態を示す。なお、図7乃至図9中で、図1乃至図3と同一部分には同一の符号を付してその説明を省略する。本実施の形態では、図7に示すように固定子枠4を固定子ベース6からジャッキアップするための複数の油圧ジャッキ41と、固定子枠4の変位を計測するための複数の変位センサ42と、変位センサ42の検出結果に応じて油圧ジャッキ41を駆動するコントローラ43とを設けている。
【0025】
油圧ジャッキ41は、固定子ベース6上に固定子3の周方向に沿って複数個所に並設されている。油圧ジャッキ41でジャッキアップすることにより固定子枠4を支持可能である。例えば、油圧ジャッキ41の駆動部の電磁弁は、例えばCPUとその周辺回路で構成されるコントローラ43に接続されている。
【0026】
変位センサ42は、例えば固定子枠4の外側に固定子3の周方向に沿って複数個所に並設されている。各変位センサ42は、コントローラ43に接続されている。そして、変位センサ42の検出信号がコントローラ43に入力され、変位センサ42の検出結果に応じてコントローラ43から油圧ジャッキ41に制御信号が出力される。
【0027】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。図9は、本実施の形態の立軸発電機1の固定子枠4の真円度の調整時の油圧ジャッキ41の動作を説明するためのフローチャートである。立軸発電機1の駆動時には、ステップS1で負荷運転が開始されると、固定子3の熱伸びが開始される(ステップS2)。そして、固定子3の周方向に沿って複数個所に並設されている複数の変位センサ42のいずれかのON動作(ステップS3)により、固定子3の不均等な熱伸び発生が検出される(ステップS4)。このとき、固定子枠4と、固定子ベース6との間の摩擦により熱伸びが遅れている箇所が検出される。
【0028】
ここで、熱伸びが遅れている箇所の油圧ジャッキ41にコントローラ43から制御信号が出力され、油圧ジャッキ41によりジャッキアップされる(ステップS5)。これにより、固定子3と固定子ベース6との接触面の凝着が引き剥がされることで、再度、熱伸びが開始される(ステップS6)。この動作が繰り返されることで固定子3の熱伸び量が固定子3の周方向に沿って均等になるよう自動調整される(ステップS7)。
【0029】
(効果)
本実施例によれば、固定子枠4が熱伸びをした際、変位センサ42により熱伸び量を計測している。そして、固定子ベース6と固定子枠4との接触面の摩擦力が不均等であることにより、熱伸び量が不均等であることを変位センサ42により検知すると、油圧ジャッキ41により固定子枠4の、熱伸び量が不足している部分をジャッキアップする。この油圧ジャッキ41をジャッキアップする動作により、固定子ベース6と固定子枠4との接触面の凝着による摩擦力を低減することができる。そのため、油圧ジャッキ41によってジャッキアップされた部分の熱伸びが促進されるので、固定子枠4の熱伸び量が固定子3の周方向に沿って均等になり、不均等な熱伸びにより低下した真円度を修正することができる。
【0030】
[第5の実施の形態]
(構成)
図10は、第5の実施の形態を示す。本実施の形態は第4の実施の形態(図7乃至図9参照)の変形例である。ここでは、複数の油圧ジャッキ41は、図10に示すように基礎コンクリート5上に設置した固定子ベース6とは異なる台51上に設置されている。また、変位センサ42は、第4の実施の形態と同様に、例えば固定子枠4の外側に固定子3の周方向に沿って複数個所に並設されている。そして、変位センサ42の検出結果に応じてコントローラ43による複数の油圧ジャッキ41の制御も第4の実施の形態と同様に行われる。
【0031】
(作用・効果)
本実施の形態の構成でも第4の実施の形態と同様の効果が得られる。さらに、締め付けボルト7の周囲にあらかじめ液状の潤滑剤12を注入しておくことや、給油穴8をあけた締め付けボルト7を固定子ベース6と固定子枠4の締結に用いれば、油圧ジャッキ41のジャッキアップ時に固定子枠4と、固定子ベース6との間の接触面へ潤滑油を注入することができ、より大きな効果を得ることができる。
【0032】
[第6の実施の形態]
(構成)
図11(A)〜(C)は、第6の実施の形態を示す。本実施の形態は、図11(A)〜(C)に示すように固定子ベース6に液状の潤滑剤12を注入することのできる高圧油配管61を接続している。この高圧油配管61は図示しない制御弁の開閉動作によって潤滑剤12の注入動作が制御されるようになっている。
【0033】
さらに、固定子ベース6には、高圧油配管61の接続部から固定子枠4との接触面へと繋がる油通路62と、第1の実施の形態(図1図3参照)と同様の給油溝10とが設けられている。
【0034】
(作用・効果)
本実施例によれば、固定子ベース6と固定子枠4を分解することなく、定期的もしくは始動前に高圧油配管61を通じて液状の潤滑剤12を固定子ベース6と固定子枠4との接触面へ注入することができるため、固定子ベース6と固定子枠4との接触面の摩擦力を低減させることができる。
【0035】
[第6の実施の形態の変形例]
(構成)
固定子ベース6の外周面に固定子ベース6と同数の高圧油配管61を接続している。各高圧油配管61の接続部は、固定子3の周方向に沿って複数個所に並設されている。各高圧油配管61は図示しない制御弁の開閉動作によって潤滑剤12の注入動作が制御されるようになっている。
【0036】
また、本変形例では、第4の実施の形態(図7乃至図9参照)と同様に、固定子枠4の変位を計測するための複数の変位センサ42と、変位センサ42の検出結果に応じて各高圧油配管61の制御弁を駆動するコントローラ43とを設けている。
【0037】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。図12は、本変形例の立軸発電機1の固定子枠4の真円度の調整時の高圧油の注入動作を説明するためのフローチャートである。立軸発電機1の駆動時には、ステップS11で負荷運転が開始されると、固定子3の熱伸びが開始される(ステップS12)。そして、固定子3の周方向に沿って複数個所に並設されている複数の変位センサ42のいずれかのON動作(ステップS13)により、固定子3の不均等な熱伸び発生が検出される(ステップS14)。このとき、固定子枠4と、固定子ベース6との間の摩擦により熱伸びが遅れている箇所が検出される。
【0038】
ここで、コントローラ43から制御信号が出力され、熱伸びが遅れている箇所の高圧油配管61と対応する制御弁を開く動作が行われる(ステップS15)。このとき、固定子枠4と固定子ベース6との接触面へ潤滑剤を強制注入する(ステップS16)。これにより、固定子3と固定子ベース6との接触面の凝着が引き剥がされることで、再度、熱伸びが開始される(ステップS17)。この動作が繰り返されることで固定子3の熱伸び量が固定子3の周方向に沿って均等になるよう自動調整される(ステップS18)。
【0039】
(効果)
そこで、上記構成のものにあっては、固定子3の周方向に沿って複数個所に変位センサ42を設置し、固定子枠4が熱伸びをした際、接触面の摩擦力が不均等であることにより熱伸び量が不均等であることを検知すると、熱伸び量が不足している部分の接触面へ高圧油配管61を通じて液状の潤滑剤12を注入することができる。潤滑剤12が注入されることで固定子ベース6と固定子枠4との接触面の摩擦力が低減されるため、熱伸び量が少なく潤滑剤12が注入された部分の熱伸びが促進される。その結果、固定子枠4の熱伸び量が均等になり、不均等な熱伸びにより低下した真円度を修正することができる。
【0040】
これらの実施形態によれば、固定子の真円度を維持することのできる立軸回転電機の固定子枠と固定子ベースとの結合構造と立軸回転電機を提供することができる。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1…立軸発電機、2…回転子、3…固定子、4…固定子枠、5…基礎コンクリート、6…固定子ベース、7…締め付けボルト、7a…ボルト頭部、8…給油穴、8a…軸方向穴、8b…突き抜け穴、9…活性化手段、10…給油溝、11…ボルト穴、12…潤滑剤、21…表面処理部、31…凹部、32…固体潤滑剤、41…油圧ジャッキ、42…変位センサ、43…コントローラ、51…台、61…高圧油配管、62…油通路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12