特許第6386829号(P6386829)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386829
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ニューマチックケーソンの傾斜修正方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 23/08 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
   E02D23/08 F
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-162494(P2014-162494)
(22)【出願日】2014年8月8日
(65)【公開番号】特開2016-37784(P2016-37784A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 功輔
(72)【発明者】
【氏名】宮地 孝
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭48−035290(JP,B1)
【文献】 実開昭62−094126(JP,U)
【文献】 特開昭49−070409(JP,A)
【文献】 特開平09−291541(JP,A)
【文献】 特開2012−046902(JP,A)
【文献】 特開昭60−195229(JP,A)
【文献】 特開平01−017932(JP,A)
【文献】 特開昭56−108416(JP,A)
【文献】 特開昭59−061625(JP,A)
【文献】 米国特許第07921573(US,B1)
【文献】 特公昭52−020922(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 23/08
E21B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューマチックケーソン工法においてケーソンの傾斜修正を行う為の方法であって、
ケーソンと、該ケーソンの外面と対向する反力面との間に、突っ張り材を、該突っ張り材が前記ケーソンに向けて上り勾配を設けた姿勢となるように配置し、
前記ケーソンの沈降時に、前記突っ張り材が水平姿勢に遷移する際の反力によって前記ケーソンの傾斜を修正することを特徴とする、
ニューマチックケーソンの傾斜修正方法。
【請求項2】
前記ケーソンの周囲に、少なくとも一つのガイドローラをさらに設け、
前記突っ張り材とガイドローラとで、前記ケーソンを、上下方向において少なくとも二点で支持することを特徴とする、
請求項1に記載のニューマチックケーソンの傾斜修正方法。
【請求項3】
前記突っ張り材が、
前記反力面に接触する第1の接触部と、
前記ケーソンに接触する第2の接触部と、
前記第1の接触部および第2の接触部とそれぞれ垂直方向に回動自在に連結する腕部と、
を少なくとも含むことを特徴とする、
請求項1または2に記載のニューマチックケーソンの傾斜修正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニューマチックケーソン工法においてケーソンの傾斜修正を行う為の傾斜修正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニューマチックケーソン工法とは、ケーソンの下部に気密性の作業室を設け、空気圧により湧水を防ぎながら掘削作業を行い、所定の深さまでケーソンを沈設する工法である。
沈設途中に傾斜したケーソンの姿勢を修正する方法としては、(1)重量バランスの調整による修正、(2)掘削での摩擦調整による修正(特許文献1を参照。)、(3)ガイドローラとジャッキの併用による修正、などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−256652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これら従来の方法では、以下のような問題が考えられる。
(1)重量バランスの調整による修正の場合
本方法は、ケーソン内部に投入する水の重量を調整することによってケーソンの傾斜を修正する。
しかし、規模の小さなケーソンでは、ケーソン内部が掘削のための機材(マンロック、マテリアルロックなど)に占領されており、投入できる水量も限られるため、傾斜修正効果が低く、実用性に乏しい。
(2)掘削での摩擦調整による修正の場合
本方法は、ケーソン直下の掘削箇所の調整(摩擦の調整)によって傾斜修正を行う。
しかし、掘削現場が軟弱地盤の場合には、摩擦調整が非常に難しい。
(3)ガイドローラでの反力調整による修正の場合
本方法は、ケーソンの周囲にガイドローラを固定し、ジャッキを併用してニューマチックケーソンを押すことで、傾斜修正を行う。
しかし、ガイドローラは固定されるため、施工時に障害となる可能性が高い。また、施工時には随時ジャッキ調整を行うために、作業員が監視・管理を行う必要であり、作業負担増に繋がる。また、姿勢制御の効果もさほど高くない。
【0005】
よって、本発明は、簡易な構造で高い傾斜修正効果を得ることができるとともに、軟弱地盤の現場や小規模な現場でも実施可能な手段の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、ニューマチックケーソン工法においてケーソンの傾斜修正を行う為の方法であって、ケーソンと、該ケーソンの外面と対向する反力面との間に、突っ張り材を、該突っ張り材が前記ケーソンに向けて上り勾配を設けた姿勢となるように配置し、前記ケーソンの沈降時に、前記突っ張り材が水平姿勢に遷移する際の反力によって前記ケーソンの傾斜を修正することを特徴とする、ニューマチックケーソンの傾斜修正方法を提供するものである。
また、本願の第2発明は、前記第1発明において、前記ケーソンの周囲に、少なくとも一つのガイドローラをさらに設け、前記突っ張り材とガイドローラとで、前記ケーソンを、上下方向において少なくとも二点で支持することを特徴とする。
また、本願の第3発明は、前記第1発明または第2発明において、前記突っ張り材が、前記反力面に接触する第1の接触部と、ケーソンに接触する第2の接触部と、前記第1の接触部および第2の接触部とそれぞれ垂直方向に回動自在に連結する腕部と、を少なくとも含むことを特徴とする。

【発明の効果】
【0007】
本願発明によれば、以下に記載する効果を奏する。
(1)突っ張り材を活用することによって、簡易な構造で高い傾斜修正効果を得ることができる。
(2)小規模な現場や軟弱地盤の現場であっても修正作業が簡便に実施できる。
(3)修正治具の構造が簡易であるため、低コストである。
(4)ケーソンに追随して動作するため、修正作業中に逐一監視・管理を行う必要が無い。
(5)撤去が簡単であり、工事の邪魔にならない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に係る傾斜修正方法において、突っ張り材の設置態様を示す図。
図2】実施例1に係る傾斜修正方法において、傾斜を修正している状態を示す図。
図3】実施例2に係る傾斜修正方法において、ガイドローラの設置態様を示す図。
図4】実施例3に係る傾斜修正方法において、突っ張り材の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1,2を参照しながら、本発明の第1実施例について、施工手順に沿って説明する。
<1>初期状態〜突っ張り材の配置
図1では、沈降途中のケーソンAが傾斜した状態を呈している。なお、説明の便宜上、本図におけるケーソンの傾斜角度を過大に表現している。
まず、このケーソンAの傾斜側に突っ張り材Bを配置する。
より詳細に説明すると、突っ張り材は、ケーソンと、該ケーソンの外面と対向する反力面Cとの間に配置する。
【0011】
前記反力面Cとは、地盤C1や、土留壁C2、腹起C3など、いわゆる山留め側の表面を構成する面のうち、配置後の突っ張り材に反力を作用させる面である。
【0012】
突っ張り材Bの配置箇所は、なるべくケーソンAの上部側とすることが好ましい。
突っ張り材Bの配置姿勢は、該突っ張り材BがケーソンAに向けて上り勾配を設けた状態とする。
突っ張り材Bの材料または素材は、いわゆるタイコ落としや、鋼材、棒材など、長尺状の材料を用いることができる。
【0013】
突っ張り材Bの長さは、特段限定しないが、少なくとも、ケーソンAが正しい姿勢(被傾斜状態)であるときの、ケーソンAと反力面Cとの間の離隔長さと同等またはそれ以上であることが好ましい。
【0014】
<2>ケーソンの沈降作業〜傾斜の修正
図2は、ケーソンAの傾斜修正の過程を示す一部拡大図である。
突っ張り材Bを配置した状態で、通常の手順でケーソンAの沈降作業を再開する。
このとき、突っ張り材BとケーソンAとの接触箇所は不動のまま、ケーソンAのみが沈降することとなり、突っ張り材Bは、反力面Cとの接触箇所を支点として、時計回りに回転するように動作する。
この回転動作によって、ケーソンA側に上り勾配を設けるように配していた突っ張り材Bは、前記上り勾配が緩くなるように水平姿勢側へと遷移することとなる。
この突っ張り材Bの遷移動作によって、前記突っ張り材Bは、反力面Cからの反力により、ケーソンAを正しい姿勢へ復帰するように押し出す(押し返す)こととなる。この押出作用により、ケーソンAの傾斜を修正することができる。
【0015】
なお、前記したように、突っ張り材Bの長さを、ケーソンAが正しい姿勢(被傾斜状態)であるときのケーソンAと反力面Cとの間の離隔長さと同等程度にしておけば、突っ張り材Bが水平姿勢を維持した際には、ケーソンAの傾斜が修正されて正しい姿勢を呈しており、それ以上ケーソンAを押し出す事は無い。
よって、突っ張り材Bによって、必要以上にケーソンAを押し出し、反対側からの傾斜修正作業を行う必要が生じるといった無駄を排除することができる。
【0016】
本実施例に係る傾斜修正方法によれば、ケーソンAの沈降作業中にケーソンAの傾斜が確認された際に、適宜突っ張り材Bを、ケーソンAの傾斜側に盛り替えながら、ケーソンAの沈降作業を進めていくだけで、ケーソンAの傾斜を自動的に修正し、精度良くケーソンAの沈下掘削作業を行うことができる。
【実施例2】
【0017】
図3を参照しながら本発明の第2実施例について説明する。
本実施例では、前記反力面CとケーソンAとの間に、少なくとも一つのガイドローラDをさらに設けた構成を呈する。
ガイドローラDは、ニューマチックケーソン工法で用いる公知のローラ部材を使用することができる。
ガイドローラDは反力面側に固定されており、ケーソンAとの接触側に設けたローラで、ケーソンAの沈降を案内する目的で使用されている。
【0018】
本実施例によれば、前記ガイドローラDと前記突っ張り材Bとを併用することでケーソンAを上下方向において少なくとも二点で支持することとなるため、ケーソンAの姿勢安定性をより高めることができる。
【実施例3】
【0019】
図4を参照しながら本発明の第3実施例について説明する。
突っ張り材Bは、以下の構成要素を呈してなる専用治具を用いることができる。
【0020】
図4に示す突っ張り材Bは、前記反力面Cに接触する第1の接触部10と、ケーソンに接触する第2の接触部20と、前記第1の接触部10および第2の接触部20に対して、それぞれに回動自在に連結する腕部30とから構成する。
【0021】
第1の接触部10と反力面Cとの接触態様、および第2の接触部20とケーソンAとの接触態様は、当接構造、係止構造、締結構造など、公知の構造を用いる異が出来る。
本実施例では、反力面Cが腹起C1によって形成されており、第1の接触部をフック状に構成して腹起C1のフランジに係止する構造としている。
【0022】
本実施例によれば、腕部30に対して、第1の接触部10と第2の接触部20がそれぞれ回動自在であるため、ケーソンAの傾斜時からケーソンAの非傾斜時(正しい姿勢の時)への遷移途中の何れであっても、前記第1の接触部10および第2の接触部20の各接触面が、ケーソンAおよび反力面Cに全面にわたって接触した状態を維持できるため、突っ張り材Bの押出効果がより確実に発揮できる。
【符号の説明】
【0023】
A ケーソン
B 突っ張り材
C 反力面
C1 地盤
C2 土留壁
C3 腹起
D ガイドローラ
10 第1の接触部
20 第2の接触部
30 腕部
図1
図2
図3
図4