特許第6386831号(P6386831)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386831
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】転写シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B44C 1/17 20060101AFI20180827BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20180827BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20180827BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20180827BHJP
   B41M 5/00 20060101ALN20180827BHJP
【FI】
   B44C1/17 H
   B44C1/17 M
   B32B27/00 M
   B32B15/08 H
   G09F3/02 T
   G09F3/02 G
   G09F3/02 F
   !B41M5/00 100
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-164486(P2014-164486)
(22)【出願日】2014年8月12日
(65)【公開番号】特開2016-40101(P2016-40101A)
(43)【公開日】2016年3月24日
【審査請求日】2017年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】595064670
【氏名又は名称】株式会社箔一
(74)【代理人】
【識別番号】100123021
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 元幸
(72)【発明者】
【氏名】浅野 達也
【審査官】 樋口 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−124841(JP,A)
【文献】 特開2003−305997(JP,A)
【文献】 特開2011−219646(JP,A)
【文献】 特開2000−111660(JP,A)
【文献】 特開2010−234639(JP,A)
【文献】 特開2009−160757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C1/16−1/175
B32B1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被貼着体に絵柄を転写する転写シートであって、
柔軟性と不水溶性を有する透明な樹脂フィルムでシール台紙上に積層される保護コート層と、
前記保護コート層上に積層され、噴霧されたカラーインクにより所定の絵柄が印刷されてなるカラー印刷層と、
前記カラー印刷層上に積層され、金属箔を支持するための粘着剤からなる下地層と、
前記下地層の上に載置され、所定の絵柄パターンを有する金属箔からなる金属箔絵柄層と、
前記金属箔絵柄層の上に積層され、前記被貼着体に貼り付けるための粘着剤で形成される粘着剤層とを備え、
前記シール台紙と前記保護コート層の間に、平均粒径が10μm以下の粉末状物質からなるパウダー層を介在させた
ことを特徴とする転写シート。
【請求項2】
前記カラー印刷層と前記下地層との間に、
前記カラー印刷層上に積層され、噴霧された白色系インクにより形成されるホワイト印刷層を介在させる
ことを特徴とする請求項1記載の転写シート。
【請求項3】
被貼着体に絵柄を転写する転写シートの製造方法であって、
シール台紙上に平均粒径が10μm以下の粉末状物質を粉蒔きしてパウダー層を形成する工程と、
パウダー層が形成されたシール台紙上に柔軟性と不水溶性を有する透明な樹脂フィルムを積層して保護コート層を形成する工程と、
形成された保護コート層の上に、インクジェット方式により液滴の径が12〜48μmのカラーインクを噴霧させ所定の絵柄を印刷してカラー印刷層を形成する工程と、
形成されたカラー印刷層の上に粘着剤を積層して金属箔を支持するための下地層を形成する工程と、
下地層の上に金属箔を貼着して所定の絵柄パターンの金属箔絵柄層を形成する工程と、
金属箔絵柄層に前記被貼着体に貼り付けるための粘着剤を積層して粘着剤層を形成する工程とを含む
ことを特徴とする転写シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被貼着体に絵柄を転写する転写シートに関し、特に金属箔の絵柄を人体の皮膚に転写する転写シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体の皮膚などの被貼着体に絵柄を転写する転写シートとしては、柔軟性と不水溶性を有する透明な樹脂フィルムでシール台紙上に積層される保護コート層上に粉末状物質のパウダー層を積層し、さらに、金属箔を支持する粘着剤からなる下地層と、金属箔からなる金属箔絵柄層と、被貼着体に貼り付けるための粘着剤で形成される粘着剤層とを備える転写シートがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−160757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
確かに、上記特許文献1の転写シートによれば、貼り付け面における優れた柔軟性とフレキシブル性とを発揮しつつ金属箔独特の高輝性を演出することは可能である。
【0005】
しかしながら、昨今、金属箔の高輝性だけではなくカラー印刷等を施して意匠性をより向上させることが求められつつある。この点、従来の転写シートではスクリーン印刷によりカラー印刷層を形成することが行われるところ、上記特許文献1の転写シートにこれを用いると、金属箔表面には微細なピンホールが存在しているため、密着性が著しく低下してしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、金属箔と高精細なカラー印刷との共存と密着力強化による耐久性能の向上を両立させることができる転写シートを提供することを目的とする。また、かかる意匠的装飾効果と耐久性に優れた転写シートを製造可能な転写シートの製造方法を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る転写シートは、被貼着体に絵柄を転写する転写シートであって、柔軟性と不水溶性を有する透明な樹脂フィルムでシール台紙上に積層される保護コート層と、前記保護コート層上に積層され、インクジェット方式により液滴の径が12〜48μm程度のカラーインクを噴霧させ所定の絵柄を印刷することで形成されるカラー印刷層と、前記カラー印刷層上に積層され、金属箔を支持するための粘着剤からなる下地層と、前記下地層の上に載置され、所定の絵柄パターンを有する金属箔からなる金属箔絵柄層と、前記金属箔絵柄層の上に積層され、前記被貼着体に貼り付けるための粘着剤で形成される粘着剤層とを備えることを特徴とする。
【0008】
これによれば、インクジェット印刷で形成されたカラーインク層がカラー印刷絵柄を表現し、金属箔絵柄層が金属箔独特の高輝性を表現するので、金属箔と高精細なカラー印刷とを共存させた意匠性に優れた転写シートが実現される。さらに、インクジェットで噴霧されたインクと金属箔表面のピンホールとのアンカー効果が向上して密着性が高まるので、耐久性にも優れた転写シートが得られる。
【0009】
ここで、前記カラー印刷層と前記下地層との間に、前記カラー印刷層上に積層され、インクジェット方式により液滴の径が12〜48μm程度の白色系インクを噴霧させることで形成されるホワイト印刷層を介在させるのが好ましい。
【0010】
これによれば、ホワイト印刷層がカラー印刷層の発色を良くするので、カラー印刷層が形成する印刷絵柄をより鮮明に映えさせることにより意匠的装飾効果を高めることができる。
【0011】
また、前記シール台紙と前記保護コート層の間に、平均粒径が10μm以下の粉末状物質からなるパウダー層を介在させるとしてもよい。
【0012】
これによれば、パウダー層が光の乱反射を促進させるので、金属箔独特の高輝性を演出することができ、優れた意匠的装飾効果を発揮することができる。
【0013】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る転写シートの製造方法は、被貼着体に絵柄を転写する転写シートの製造方法であって、シール台紙上に柔軟性と不水溶性を有する透明な樹脂フィルムを積層して保護コート層を形成する工程と、形成された保護コート層の上に、インクジェット方式により液滴の径が12〜48μm程度のカラーインクを噴霧させ所定の絵柄を印刷してカラー印刷層を形成する工程と、形成されたカラー印刷層の上に粘着剤を積層して金属箔を支持するための下地層を形成する工程と、下地層の上に金属箔を貼着して所定の絵柄パターンの金属箔絵柄層を形成する工程と、金属箔絵柄層に前記被貼着体に貼り付けるための粘着剤を積層して粘着剤層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
これにより、上記のような優れた意匠的装飾効果と、優れた耐久性能を両立させた転写シートが製造可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る転写シートによれば、インクジェット方式でカラー印刷層を形成することで、高精細なカラー印刷絵柄を表現するので、金属箔独特の高輝性と高精細なカラー印刷意匠とにより、意匠性に優れた転写シートを実現することができる。また、インクジェットで噴霧されたインクと金属箔表面のピンホールとのアンカー効果が向上するので、密着力が強化され耐久性にも優れた転写シートが実現可能となる。
【0016】
また、本発明に係る転写シートの製造方法により、装飾効果と耐久性に優れた転写シートが製造可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る転写シートの部分平面図である。
図2図1のA−A線における部分断面図である。
図3】転写シートの製造手順を示すフロー図である。
図4】変形例に係る転写シートの部分平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る転写シート及びその製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態1に係る転写シートの部分平面図である。
【0020】
転写シート1は、金、銀、プラチナ、銅錫、アルミニウム等の単金属あるいはこれらの金属の合金からなる金属箔を用いて形成された絵柄とカラー印刷を用いて形成された絵柄とを、被貼着体に転写して被貼着体の装飾を図るものである。図1には、金属箔による絵柄の例として、アルファベットの「A」、「B」及び「C」の金属箔絵柄7a、7b、7cと、カラー印刷による絵柄の例として印刷絵柄4a、4b、4cが示されている。
【0021】
転写シート1の被貼着体としては人体の皮膚が代表的であるが、ネイルアート等に使用するネイルシールとして手足の指の爪、椀や重箱等の食器類や箸、スプーン等の食器小物類、コースター、盆等の間接食器類、花生け、時計等の装飾品、ペン、名刺入れ等の文房具類、タンス、屏風等の家具調度品、髪飾り、ペンダント等のアクセサリー類、窓ガラス、化粧壁等の建築物等、転写シート1を貼着可能な平面を有する物品であれば被貼着体となりうる。
【0022】
図2は、図1のA−A線における部分断面図である。
【0023】
図2に示すように、転写シート1は、シール台紙2、保護コート層3、カラー印刷層4、ホワイト印刷層5、下地層6、金属箔絵柄層7、粘着剤層8及びシリコン離型紙9が積層された構成を有している。
【0024】
シール台紙2は、転写シート1が被貼着体に貼り付けられるまで、積層された保護コート層3からシリコン離型紙9までを保持しておくための台紙であり、従来のシール用台紙を用いることができる。
【0025】
保護コート層3は、柔軟性と不水溶性を有する透明な樹脂フィルムで構成される、10〜20μm程度の薄さの層であり、金属箔絵柄層7を保護してその耐摩耗性を高めると共に、皮膚の動きに追従するフレキシブル性を高めるために設けられる。保護コート層3を構成する樹脂フィルムとしては、例えば、アクリル系、セルロース系、ブチラール系、ウレタン系、エポキシ系樹脂フィルム等が挙げられる。
【0026】
カラー印刷層4は、フルカラーインクを用いて絵柄を印刷することで形成される層である。カラー印刷層4は、液滴の径が12〜48μm程度のインクを吐出、噴霧させて定着させるインクジェット方式により形成されている。インクジェット方式とすることによって、インクをつぶすことなく、微細な網点化(ドット化)を図ることができ、高精細(1800×1800dpi)な印刷絵柄を表現することが可能になっている。また、網点化することで、インクの液滴が柔軟な弾力性を発揮し、被貼着体の皮膚などの弾力や伸び縮みに追随させることもできる。なお、ここで用いるインクは、柔軟性を備えたUVインクなどを用いるのが好ましい。インクが柔軟性を備えていることで、さらに被貼着体の皮膚などの弾力や伸縮に追従させることができるからである。
【0027】
また、後述する金属箔絵柄層7を構成する金属箔の表面にある微細な孔(ピンホール)の径は平均すると約13μmであることから、上記の径のインクをつぶすことなくインクジェット方式で吐出、噴霧するとインクとピンホールとのアンカー効果の向上を図ることができ、転写シート1の密着性を高め、耐久性能の飛躍的な効果を実現することができる。
【0028】
ホワイト印刷層5は、白色系のインクを用いて、カラー印刷層4と同様に、インクジェット方式により印刷することで形成される層である。このホワイト印刷層5は、カラー印刷層4の発色を良くするので、必要に応じて、例えば、カラー印刷層4が形成する印刷絵柄をより鮮明に映えさせる場合などに設けられる。反対に、後述する金属箔絵柄層7が形成する金属箔絵柄の特有の意匠性を際立たせる場合のように、あえて設けない方が好ましいこともある。
【0029】
下地層6は、10〜20μm程度の薄さの層であり、下記のような組成の透明な粘着剤で構成される。金属箔絵柄層7の絵柄形態と相応するパターンとなるように形成され、金属箔絵柄層7の金属箔を支持する。
【0030】
(下地層6の粘着剤の組成)
アクリル酸エステル共重合体樹脂 20.0重量%
ソルベッソ150(石油系溶剤、商品名) 48.0重量%
キレート系架橋剤 2.0重量%
ソルフィット(石油系溶剤、商品名) 30.0重量%
【0031】
金属箔絵柄層7は、下地層6に貼着され、所定の絵柄形態に形成された金属箔からなる層である。ここにいう金属箔とは、伝統工芸技術を活かした箔打ち製造方法により得られる箔又はシート、圧延ローラ等の工業的圧延加工技術により得られる箔又はシート、蒸着技術により得られる箔又はシートを含むものである。なお、金属箔の厚みは、0.1〜5.0μmの範囲とするのが好ましい。0.1μmに満たない極薄の金属箔は製造が困難であり、仮に製造できたとしても耐摩耗性に欠けるからである。また、人体の皮膚の色が金属箔を透過してしまい、金属箔の発する光沢が低減して意匠的効果を期待できないことになる。一方、5.0μmを超える金属箔は、厚すぎてフレキシブル性に欠け、皮膚への追従性が悪くシールし難く、経済的にも不利となる。
【0032】
この金属箔絵柄層7を蒸着技術により形成する例を説明すると、金属箔絵柄層7は、下地層6の上に真空蒸着手段を用いて厚さ4.0μmの蒸着箔を載せて軽く押さえた後、蒸着箔を剥離すると、下地層6が形成されている部分にのみ蒸着箔が粘着して残存し、所望の絵柄形態が形成されるようになっている。
【0033】
粘着剤層8は、10〜20μm程度の薄さの層であり、例えば人体の皮膚など、被貼着体に貼り付けるための粘着剤で構成される層である。粘着剤層8を構成する粘着剤としては、例えば下記の組成のものを用いることができるが、市販の粘着剤ならほとんど使用可能である。但し、被貼着体が皮膚の場合には、皮膚に接触するものであるから強い刺激性を有するものは使用に適さないことはいうまでもない。
【0034】
(粘着剤層8の粘着剤の組成)
アクリル酸エステル樹脂 25.0重量%
メトキシブタノール(溶剤) 41.5重量%
キレート系架橋剤 3.5重量%
ダイアセトンアルコール 30.0重量%
【0035】
シリコン離型紙9は、ブロッキング防止のために設けられるシートであり、従来のものを利用することができる。
【0036】
このように構成される転写シート1を人体の上腕部の皮膚に貼り付ける場合、まずシリコン離型紙9を剥離した後、皮膚に貼り付けるための粘着剤層8を上腕部に押し当てて、シール台紙2の裏面から水をシール台紙2にたっぷり染み込ませる。すると、20〜40秒後にはシール台紙2が簡単に取れて皮膚面に絵柄が転写される。その絵柄の上からティッシュペーパー等で余分な糊・水分を拭き取れば、金属箔絵柄層7の金属箔とカラー印刷層4とによって人体の上腕部を綺麗に装飾することができる。
【0037】
次に、このような構成を有する転写シート1の製造方法について説明する。
【0038】
図3は、転写シート1の製造手順を示すフロー図である。
【0039】
まず、シール台紙2の上面に糊状の澱粉を塗布し乾燥させた後、保護コート層3を構成する樹脂をシルクスクリーン印刷することにより、シール台紙2上に保護コート層3を形成する(ステップS10)。
【0040】
次に、形成された保護コート層3の上に、インクジェット方式により高精細なフルカラーインクを吐出、噴霧させて定着させて絵柄を印刷し、カラー印刷層4を形成する(ステップS20)。
【0041】
この後、ホワイト印刷層5を形成する場合は、カラー印刷層4の上にインクジェット方式により高精細な白色系インクを吐出、噴霧させて定着させ、ホワイト印刷層5を形成する(ステップS30)。
【0042】
続いて、ホワイト印刷層5の上に、または、ホワイト印刷層5を形成しない場合はカラー印刷層4の上に、既述した金属箔支持用の透明な粘着剤をスクリーン印刷により、金属箔絵柄層7が所望の絵柄形態に形成されるよう相応するパターンで下地層6を形成する(ステップS40)。
【0043】
そして、従来と同様に下地層6を構成する粘着剤の乾燥時間(約1日)を空けてから、金属箔を下地層6の上に載せて軽く押さえた後、金属箔を剥がして金属箔絵柄層7を形成する(ステップS50)。
【0044】
最後に、金属箔絵柄層7の上に、被貼着体に貼り付けるための粘着剤を、スクリーン印刷を用いて保護コート層3と同じパターンとなるように積層させて粘着剤層8を形成し(ステップS60)、ブロッキング防止のためのシリコン離型紙9を貼付して転写シート1が完成する。
【0045】
このような手順で製造される転写シート1は、カラー印刷層4をインクジェット方式で形成することで、高精細なカラー印刷絵柄を表現するとともに、噴霧されたインクと金属箔表面のピンホールとのアンカー効果を高めるので、金属箔と高精細なカラー印刷意匠とを共存させることができ、かつ、密着力を強化して耐久性を向上させることができる。
【0046】
続いて、本実施の形態1に係る転写シートの変形例について説明する。
【0047】
図4は、変形例に係る転写シートの部分平面図である。
【0048】
変形例に係る転写シート1aは、シール台紙2と保護コート層3との間にパウダー層10を備える点で、実施の形態に係る転写シートと異なる。
【0049】
パウダー層10は、平均粒径が10μm以下の粉末状物質(パウダー)で構成される層であり、金属箔絵柄層7を形成する金属箔の光沢を高めるために設けられる。パウダー層10によって金属箔の光沢が高められるのは、粉末状物質が光の乱反射を促進させるからである。また、パウダー層10を形成することにより金属箔絵柄層7を構成する金属箔がシール台紙2に付着することを防止する効果も期待できる。このパウダー層10は、シール台紙2の上面に糊状の澱粉を塗布し乾燥させた後で粉蒔きして形成される。
【0050】
パウダー層10を構成する粉末状物質としては、例えば、タルクを主成分とするベビーパウダーを使用することができ、その他、酸化チタン等を主成分とする粉末状物質を使用することも可能である。
【0051】
このパウダー層10を備えることで、転写シート1aは、パウダー層10が光の乱反射を促進させるので、金属箔の光沢がより高められ、カラー印刷層4によるカラー印刷の装飾的効果と相俟って、極めて高い意匠性を発揮することができる。
【0052】
このパウダー層10は、金属箔の光沢を高めるという観点からは、保護コート層3とカラー印刷層4との間に形成するとしてもよい。
【0053】
ただ、パウダー層10を保護コート層3の形成前に、つまり、保護コート層3よりも下層のシール台紙2と保護コート層3との間に形成することにより、次のような効果が得られる。
【0054】
まず、保護コート層3とカラー印刷層4との間にパウダー層10を設けると、噴霧されたインクと金属箔のピンホールとのアンカー効果を阻害するおそれがあるため、アンカー効果を存分に発揮させる上で、パウダー層10は保護コート層3よりも下層とするのが好ましい。
【0055】
また、カラー印刷層4による印刷絵柄をより鮮明に表現するためにはパウダー層10を極力薄くして、少ない量のパウダーで構成することが必要となる。この点、保護コート層3の形成後にパウダーを粉蒔きすると保護コート層3に混入されてしまう量が増えるところ、保護コート層3の形成前にパウダーを粉蒔きする構成とすれば、適切な量のパウダーでパウダー層10を形成することが可能となる。さらに、このことはシール台紙2に余分な箔や粉が付着することを防止することができるという効果にもつながっている。
【0056】
以上、本発明に係る転写シートについて各実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、その範囲を逸脱することなく本発明の趣旨に沿って様々の変形または修正が可能であることはいうまでもない。
【0057】
例えば、上記各実施の形態では、シール台紙の上に保護コート層を積層する構成としたが、シール台紙と保護コート層の間に金属箔との嫌密着性を有する樹脂からなる付着防止層を形成するとしてもよい。これにより、パウダー層と相俟って、金属箔絵柄層の加飾中に発生する余分な金属箔がシール台紙に付着することを効果的に防止することができる。
【0058】
また、保護コート層と粘着剤層とを、他の層、すなわちカラー印刷層、ホワイト印刷層、下地層及び金属箔絵柄層よりも幅広となるように積層し、さらに、粘着剤層が保護コート層よりも幅広に形成するようにしてもよい。このように、保護コート層と粘着剤層とを他の層よりも幅広にすることにより、保護コート層と粘着剤層とが他の層を挟んで被覆するので、金属箔の耐摩耗性を向上させ、より耐久性に優れた転写シートを実現することができる。また、粘着剤層を保護コート層よりも幅広に形成することにより、残りの層全体がホールドされるので、耐久性をより向上させることができる。さらに、粘着剤層が最も幅広となるので、柔軟性及びフレキシブル性も向上させることができ、皮膚への追随性に優れた転写シートが実現可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る転写シートは、被貼着体に絵柄を転写して装飾的効果を高めるシートとして有用であり、特に人体の皮膚に絵柄を転写するタトゥーシートとして有用である。
【符号の説明】
【0060】
1,1a 転写シート
2 シール台紙
3 保護コート層
4 カラー印刷層
4a,4b,4c 印刷絵柄
5 ホワイト印刷層
6 下地層
7 金属箔絵柄層
7a,7b,7c 金属箔絵柄
8 粘着剤層
9 シリコン離型紙
10 パウダー層

図1
図2
図3
図4