【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するための本発明の空気吹出装置は、
空気流路及び吹出口を画成する「筐体」と、前記吹出口から吹き出される空気の流れ方向を調整可能な「風向調整板」と、前記空気流路を通る空気の量を調整可能な「通気量調整板」と、を備える。
【0008】
具体的には、前記空気流路は、
前記吹出口の中央部に開口する「第1流路」、並びに、前記第1流路を挟むように配置され且つ前記吹出口の外周部に開口する「第2流路」及び「第3流路」を含む。但し、前記第1流路の開口端の流路面積よりも、前記第2流路及び前記第3流路の各々の開口端の流路面積が大きい。
【0009】
更に、前記風向調整板は、前記第1流路内に回動可能に支持される。
【0010】
加えて、前記通気量調整板は、
「前記第1流路だけの通気を許可する“第1状態”から、前記第1流路、前記第2流路及び前記第3流路の全ての通気を許可する“第2状態”を経て、前記第1流路、前記第2流路及び前記第3流路のいずれの通気も許可しない“第3状態”に至るまでの範囲」内において、前記流量を調整可能である、ように構成されている。
【0011】
上記構成によれば、第1流路を通過して「吹出口の中央部」から吹き出される空気流と、第2流路および第3流路を通過して「吹出口の外周部」から吹き出される空気流と、が吹き出し空気流を形成する。即ち、前者の空気流が吹き出し空気流の中心部を形成し、後者の空気流が吹き出し空気流の外縁部を形成する。このように形成される吹き出し空気流の“流れ方向”は、主に前者の空気流の向き(風向調整板の回動角度)に依存する。一方、同空気流の“収束・拡散の度合い”は、主に後者の空気流の流量(通気量調整板の状態)に依存する。換言すると、空気吹出装置は、従来装置に比べて簡易な上記構成により、吹き出し空気流の“流れ方向”及び“収束・拡散の度合い”の双方を調整可能である。
【0012】
上述した吹き出し空気流の調整の原理について、以下に述べる。
【0013】
まず、通気量調整板が「第1状態」にある場合、「第1流路のみ」を通過する空気が、第1流路が開口する「吹出口の中央部」に向かって流れる。そして、その空気が、「吹出口から吹き出される空気の流れ方向を調整可能な」風向調整板の回動角度に対応した方向に吹き出される。その結果、この場合、風向調整板の回動角度に対応した方向に流れる“収束”された状態の吹き出し空気流が形成される。
【0014】
一方、通気量調整板が「第2状態」にある場合、「前記第1流路、前記第2流路および前記第3流路の全て」を空気が通過する。そして、第1流路を経て「吹出口の中央部」から吹き出される空気流と、第2流路および第3流路を経て「吹出口の外周部」から吹き出される空気流と、が前者を後者が「挟むように」接触しながら混ざり合い、吹き出し空気流が形成される。
【0015】
ここで、一般に、流路の開口端の流路面積が小さいほど、開口端を画成する壁面等と空気との摩擦等に起因し、開口端から吹き出される空気流の乱れが大きくなる。本発明においては「第1流路の開口端の流路面積よりも前記第2流路及び前記第3流路の各々の開口端の流路面積が小さい」ため、前者の空気流(第1流路を経た空気流)の乱れよりも、後者の空気流(第2流路および第3流路を経た空気流)の乱れが大きいことになる。そのため、「第2状態」における吹き出し空気流の外縁部(第2流路および第3流路を経た空気流)の乱れは、「第1状態」における同外縁部(第1流路を経た空気流)の乱れよりも大きくなる。
【0016】
よって、第2状態における吹き出し空気流は、第1状態における吹き出し空気流に比べ、空気吹出装置の周辺の空気とより強く干渉し合い(例えば、摩擦力等が大きく)、より迅速に同周辺の空気中に広がる(拡散する)ことになる。更に、第1流路の開口端の開口面積が第2流路および第3流路の開口端の開口面積よりも大きいため、吹き出し空気流の流れ方向は、第1流路を経た空気の流れ方向と実質的に等しくなる。その結果、通気量調整板が「第2状態」にある場合、風向調整板の回動角度に対応した方向に向けて、「第1状態」での吹き出し空気流に比べて“拡散”された状態の吹き出し空気流が形成される。
【0017】
更に、通気量調整板が「第3状態」にある場合、「前記第1流路、前記第2流路および前記第3流路のいずれ」も空気が通過できず、吹出口から空気は吹き出されない。その結果、この場合、風向調整板の回動角度にかかわらず、空気吹出装置からの空気の吹き出しが禁止される。
【0018】
このように、本発明の空気吹出装置は、風向調整板によって吹き出し空気流の流れ方向を調整可能であり、通気量調整板によって吹き出し空気流の収束・拡散の度合いを調整可能である。したがって、本発明の空気吹出装置は、吹き出し空気流の“流れ方向”及び“収束・拡散の度合い”を調整可能であり、且つ、従来装置のリンク機構のような部材を要さない簡易な構成を備えている。
【0019】
なお、「第1状態」における吹き出し空気流であっても、空気吹出装置の周辺の空気と干渉し合うことによって徐々に拡散する。しかし、上記説明から理解されるように、「第1状態」における吹き出し空気流と「第2状態」における吹き出し空気流とを比べれば、前者の空気流は後者の空気流よりも“収束”しており、後者の空気流は前者の空気流よりも“拡散”している。
【0020】
上記「第1流路、第2流路及び第3流路」は、上述した配置および流路面積を有していればよく、各流路の具体的な形状などは特に制限されない。但し、吹出口の開口面積に対する第1流路の開口端の流路面積の割合が大きいほど、吹き出し空気流の“流れ方向”の調整が容易になる。また、第1流路を経た空気流と、第2流路および第3流路を経た空気流と、が接触・混合する領域が広いほど、吹き出し空気流の“収束・拡散の度合い”の調整が容易になる。そこで、各流路の具体的な形状は、空気吹出装置に要求される吹き出し空気流の調整性能などを考慮して定められ得る。例えば、本発明の空気吹出装置は、第1流路の開口端を長方形状の形状とすると共に、その長辺に接するように第2流路および第3流路を設けるように構成され得る。
【0021】
上記「通気量調整板」は、上述したように各流路の通気状態を調整可能であればよく、具体的な構造などは特に制限されない。例えば、通気量調整板として、各流路の流路面積を調整可能な弁体(例えば、回動弁およびシャッタ。後述される態様4も参照。)等が採用され得る。なお、通気量調整板として用いられる弁体は、各流路の開閉が可能であればよく、従来装置のように弁体そのものに空気流を衝突させて吹き出し空気流の収束・拡散の度合いを調整する必要はない。そのため、通気量調整板として弁体が用いられる場合であっても、空気吹出装置を小型化することが可能である。
【0022】
以上、本発明の空気吹出装置の構成・効果について説明した。次いで、以下、本発明の空気吹出装置のいくつかの態様(態様1〜5)について述べる。
【0023】
・態様1
第2流路および第3流路を経た空気流の乱れが大きいほど、吹き出し空気流と空気吹出装置の周辺の空気とが強く干渉し、吹き出し空気流の拡散の度合いが大きいことになる。よって、第2流路および第3流路を経た空気流の乱れを大きくすれば、第2流路および第3流路の開口端の開口面積を小さくしても“収束・拡散の度合い”を調整する機能を維持できるため、空気吹出装置の性能を損なうことなく空気吹出装置を更に小型化できる。
【0024】
そこで、本態様の空気吹出装置は、
前記筐体が、
該筐体から前記第2流路内に突出する凸部を、前記第2流路の開口端の近傍に有し、
該筐体から前記第3流路内に突出する凸部を、前記第3流路の開口端の近傍に有する、
ように構成され得る。
【0025】
上記構成によれば、第2流路および第3流路の中に突出する「凸部」がそれら流路を通過する空気の流れを乱し、そのように乱された空気がそれら流路から吹き出される。その結果、本態様の空気吹出装置は、「凸部」が設けられない場合に比べ、第2流路および第3流路を経た空気流の乱れを大きくすることができる。
【0026】
上記「凸部」の具体的な形状、数および配置等は、第2流路および第3流路を経た空気流の乱れを促進する観点から定められればよく、特に制限されない。例えば、凸部として、各流路の開口端に出来る限り近い位置に、一又は複数の断面形状が四角形状の凸部を設けることができる。
【0027】
・態様2
更に、第2流路および第3流路を経た空気流の乱れが同程度でも、同空気流が広い範囲に吹き出されれば(即ち、吹き出される初期時点での拡散の度合いが大きければ)、上記同様、吹き出し空気流と空気吹出装置の周辺の空気とが強く干渉し、吹き出し空気流の拡散の度合いが大きいことになる。
【0028】
そこで、本態様の空気吹出装置は、
前記筐体が、
前記第2流路の開口端に近づくほど前記第2流路の流路面積を大きくするノズル形状を、前記第2流路の開口端の近傍に有し、
前記第3流路の開口端に近づくほど前記第3流路の流路面積を大きくするノズル形状を、前記第3流路の開口端の近傍に有する、
ように構成され得る。
【0029】
上記構成によれば、第2流路および第3流路の「ノズル形状」がそれら流路を通過する空気の拡散の度合いを高め、そのように拡散された空気がそれら流路から吹き出される。その結果、本態様の空気吹出装置は、「ノズル形状」が設けられない場合に比べ、第2流路および第3流路を経た空気流を広い範囲に吹き出すことができる。
【0030】
上記「ノズル」の具体的な形状は、第2流路および第3流路を経た空気流の広がりを促進する観点から定められればよく、特に制限されない。例えば、ノズル形状として、スカート状に広がるノズル面を平面または曲面で構成した形状が用いられ得る。
【0031】
・態様3
吹き出し空気流の流れ方向および収束・拡散の度合いを効率良く調整する観点から、各流路を経た空気流は、出来る限り確実に一体化する(接触・混合する)ことが望ましい。
【0032】
そこで、本態様の空気吹出装置は、
前記筐体が、
前記第1流路と前記第2流路とを隔てる第1隔壁と、
前記第1流路と前記第3流路とを隔てる第2隔壁と、を有すると共に、
前記第1隔壁の厚さが、前記吹出口の近傍において前記吹出口に近づくほど薄く、
前記第2隔壁の厚さが、前記吹出口の近傍において前記吹出口に近づくほど薄い、
ように構成され得る。
【0033】
上記構成により、第1流路を経た空気流は第1隔壁に沿って第2流路に近づくように流れ、及び/又は、第2流路を経た空気流は第1隔壁に沿って第1流路に近づくように流れる。よって、それら空気流がより確実に接触・混合される。第1流路を経た空気流および第3流路を経た空気流も、同様に、より確実に接触・混合される。その結果、本態様の空気吹出装置は、各流路を経た空気流をより確実に一体化することができる。
【0034】
・態様4
通気量調整板は、各流路の通気状態を上記「範囲内」において(具体的には、第1状態、第2状態および第3状態の順に)調整可能であればよく、具体的な構造等は特に制限されない。
【0035】
例えば、前記通気量調整板は、
前記第1流路と前記第2流路とを隔てる第1調整板と、
前記第1流路と前記第3流路とを隔てる第2調整板と、を含むと共に、
前記第1調整板及び前記第2調整板が、互いに連動して逆方向に回動可能である、
ように構成され得る。
【0036】
上記構成によれば、通気量調整板が、各流路を隔てる隔壁(例えば、態様3の第1隔壁および第2隔壁)としても機能する。よって、通気量調整板として個別の(専用の)部材を設ける場合に比べ、空気吹出装置を構成する部材の数を減少させ、空気吹出装置の製造工程を簡易化でき、空気吹出装置を更に小型化できる。更に、そのように隔壁を兼ねた各調整板を回動することによって各流路を開閉でき、各流路の通気状態の調整を実現することができる。
【0037】
・態様5
上述したように、第1流路を経た空気流の流れ方向(風向調整板の回動角度)を操作することにより、吹き出し空気流の流れ方向を調整することができる。一方、一般に、第2流路および第3流路を通過する空気の量が増えるほど、開口端を画成する壁面等と空気との摩擦等が増し、それら流路の開口端から吹き出し空気流の乱れが大きくなる。そのため、それら流路を通過する空気の量(態様4の通気量調整板の回動角度)を調整することにより、吹き出し空気流の収束・拡散の度合いを調整することができる。
【0038】
そこで、本態様の空気吹出装置は、
前記「風向調整板」の回動角度が、前記吹出口から吹き出される空気流の「目標方向」に基づいて調整され、
前記「通気量調整板」の回動角度が、前記吹出口から吹き出される空気流の「目標拡散度」に基づいて調整される、
ように構成され得る。
【0039】
上記構成により、吹き出し空気流の流れ方向および収束・拡散の度合いの双方を比較的簡易な手法によって調整できる。
【0040】
上記「目標方向」は、例えば、空気吹出装置の軸線に対する吹き出し空気流の傾き(傾斜角度)として定められ得る。更に、上記「目標拡散度」は、例えば、空気吹出装置の吹出口から所定の基準距離だけ離れた位置における吹き出し空気流の及ぶ範囲(空気流の断面積)として定められ得る。なお、目標拡散度は目標“収束”度と実質的に同義であり、目標拡散度を目標収束度と言い換え得る。