特許第6386840号(P6386840)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386840
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池および電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0569 20100101AFI20180827BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20180827BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20180827BHJP
   H01M 2/18 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   H01M10/0569
   H01M10/0568
   H01M4/48
   H01M2/18 Z
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-180966(P2014-180966)
(22)【出願日】2014年9月5日
(65)【公開番号】特開2015-79747(P2015-79747A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2017年6月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-191084(P2013-191084)
(32)【優先日】2013年9月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100088487
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 允之
(72)【発明者】
【氏名】山本 大
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 秀郷
(72)【発明者】
【氏名】田中 政典
(72)【発明者】
【氏名】栗山 和哉
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 秀喜
(72)【発明者】
【氏名】林田 浩孝
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−012448(JP,A)
【文献】 特開2011−091039(JP,A)
【文献】 特開2007−214120(JP,A)
【文献】 特開2012−033279(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/156011(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0569、10/0568、4/48、2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装部材と、
前記外装部材内に収納されるチタン含有酸化物を含む負極と、
前記外装部材内に収納される正極と、
前記外装部材内に収納され、前記正極及び負極の間に配置されるセパレータと、
前記外装部材内に収納される非水電解液とを含む非水電解質二次電池であって、
前記非水電解液の溶媒に少なくとも一種類以上の鎖状カーボネート類を含み、
前記鎖状カーボネートの−20℃における自己拡散係数が1.4×10−10/sec以上2.0×10−10/sec以下であり、
前記セパレータが10μm以上100μm以下の直径を有する空孔を含んでいる非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記非水電解液は、LiBF、LiBOB、LiHPO,LiHPO,LiPO,LiPO、LiFSI、LiTFSI、LiClO及びLiAsFからなる群より選ばれる1種以上及びLiPFを含む電解質を含む請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記セパレータの厚さが2μm以上30μm以下である請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記セパレータの厚さが3μm以上15μm以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記非水電解質二次電池の−20℃における1kHzの交流電圧印加時の抵抗大きさをRsol、0.1Hzの交流電圧印加時の抵抗大きさをRctとするとき、Rsol<20Ω・cmおよびRct<120Ω・cmを満たす請求項1乃至4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記非水電解質二次電池の−20℃における1kHzの交流電圧印加時の抵抗大きさをRsol、0.1Hzの交流電圧印加時の抵抗大きさをRctとするとき、Rsol/Rct>0.16を満たす請求項1乃至5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記非水電解質二次電池の−20℃における1kHzの交流電圧印加時の抵抗大きさをRsol、0.1Hzの交流電圧印加時の抵抗大きさをRctとするとき、0.3>Rsol/Rct>0.16を満たす請求項1乃至6のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池をセルとして用いた電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、非水電解質二次電池および電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、携帯機器、自動車や蓄電池などに広く用いられている。リチウムイオン二次電池は、性質上、氷点下数十度以下の低温環境下での電池性能が低下しやすいといった問題がある。そこで、低温環境下においてもより高い電池性能が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−55006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の非水電解質二次電池は、低温特性に優れる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の非水電解質二次電池は、外装部材と、外装部材内に収納されるチタン含有酸化物を含む負極と、外装部材内に収納される正極と、外装部材内に収納され、正極及び負極の間に配置されるセパレータと、外装部材内に収納される非水電解液とを含む非水電解質二次電池であって、非水電解液の溶媒に少なくとも一種類以上の鎖状カーボネート類を含み、鎖状カーボネートの−20℃における自己拡散係数1.4×10−10/sec以上2.0×10−10/sec以下であり、セパレータが10μm以上100μm以下の直径を有する空孔を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態の非水電解質二次電池の概念図である。
図2図2は、実施形態の非水電解質二次電池の拡大概念図である。
図3図3は、実施形態の電池パックの概念図である。
図4図4は、実施形態の電池パックの概念図である。
【0007】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各実施形態で共通する詳細な説明は適宜省略する。なお、明細書中の上部、下部とは、図面を基準に相対的に表している。
【0008】
(第1実施形態)
第1実施形態によれば、外装部材と、外装部材内に収納される負極と、外装部材内に収納される正極と、外装部材内に収納され、正極及び負極の間に配置されるセパレータと、外装部材内に収納される非水電解液とを含む非水電解質二次電池が提供される。
【0009】
実施形態に係る非水電解質二次電池100の一例を示した図1図2の概念図を参照してより詳細に説明する。図1は、袋状外装材102がラミネートフィルムからなる扁平型非水電解質二次電池100の断面概念図であり、図2図1のA部の拡大断面図である。なお、各図は説明のための概念図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0010】
扁平状の捲回電極群101は、2枚の樹脂層の間にアルミニウム箔を介在したラミネートフィルムからなる袋状外装材102内に収納されている。扁平状の捲回電極群101は、外側から負極103、セパレータ104、正極105、セパレータ104の順で積層した積層物を渦巻状に捲回し、プレス成型することにより形成される。最外殻の負極103は、図2に示すように負極集電体103aの内面側の片面に負極材料層103bを形成した構成を有する。その他の負極103は、負極集電体103aの両面に負極材料層103bを形成して構成されている。負極材料層103b中の活物質は、第1実施形態に係る電池用活物質を含む。正極105は、正極集電体105aの両面に正極材料層105bを形成して構成されている。
【0011】
捲回電極群201の外周端近傍において、負極端子106は最外殻の負極103の負極集電体103aに電気的に接続され、正極端子107は内側の正極105の正極集電体105aに電気的に接続されている。これらの負極端子106及び正極端子107は、袋状外装材102の開口部から外部に延出されている。例えば液状非水電解液は、袋状外装材202の開口部から注入されている。袋状外装材102の開口部を負極端子106及び正極端子107を挟んでヒートシールすることにより捲回電極群101及び液状非水電解液を完全密封している。
【0012】
負極端子106は、例えばアルミニウムまたはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子206は、負極集電体103aとの接触抵抗を低減するために、負極集電体103aと同様の材料であることが好ましい。
【0013】
正極端子107は、リチウムイオン金属に対する電位が3Vから4.25Vの範囲における電気的安定性と導電性とを備える材料を用いることができる。具体的には、アルミニウムまたはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子107は、正極集電体105aとの接触抵抗を低減するために、正極集電体105aと同様の材料であることが好ましい。
【0014】
以下、非水電解質二次電池100の構成部材である袋状外装材102、正極105、負極103、電解液、セパレータ104について詳細に説明する。
【0015】
1)負極103
負極103は、負極集電体103a及び負極材料層103b(負極活物質含有層)を含む。負極材料層103bは、集電体103aの片面若しくは両面に形成され、活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含む。
【0016】
負極活物質は、サイクル寿命の観点からチタン含有酸化物が好ましい。具体的には、スピネル構造を有するチタン酸リチウムであることが好ましい。スピネル型構造を有するLi4+xTi12(0≦x≦3)は、サイクル特性、安全性に優れる。
【0017】
負極活物質は、平均一次粒子径が1μm以下で、N吸着によるBET法での比表面積が5m/g以上50m/g以下の範囲であることが好ましい。このような平均粒子径および比表面積を有する負極活物質は、その利用率を高めることができ、実質的に高い容量を取り出すことができる。なお、Nガス吸着によるBET比表面積は例えば島津製作所株式会社のマイクロメリテックスASPA−2010を使用し、吸着ガスにはNを使用して測定することができる。
【0018】
導電剤は、活物質間の電気伝導性の補助を担う。従って、導電剤には高い電気伝導性が求められる。導電剤は、特に限定されないが、天然黒鉛や人造黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどのカーボンブラック類、カーボンナノチューブやカーボンナノファイバーなどの気相成長炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つの炭素材料粒子が好ましい。一方、ダイヤモンドライクカーボンや導電性高分子などは電気伝導性が低く、高コストにもなるため、好ましくない。
【0019】
導電剤の粒子径は特に限定されないが、平均一次粒子径が0.01μm以上5μm以下であることが好ましい。導電剤の粒子径が前記範囲内にあることにより、効率的に活物質間の電気伝導を補助することができる。平均一次粒子径は以下の方法で測定される。TEM観察により、導電剤粒子の直径を求め、任意の個数の平均値を平均一次粒子径とする。
【0020】
負極材料層103bは、結着剤を含むことができる。結着剤は、分散された負極活物質の間隙を埋めるために配合され、活物質と導電剤を結着する。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いることができる。また、結着剤は、負極活物質と集電体を結着する。
【0021】
負極材料層103b中において、負極材料層103bを100質量部とするとき、活物質、導電剤及び結着剤の含有量は、活物質が70質量部以上96質量部以下であり、導電剤が2質量部以上28質量部以下であり、結着剤が2質量部以上28質量部以下であることが好ましい。
【0022】
負極材料層103b中の導電剤量を2質量部以上にすることにより、負極材料層103bの集電性能を向上することができ、非水電解質電池において優れた大電流特性を得ることができる。また、負極材料層103b中の結着剤量を2質量部以上にすることにより、負極材料層103bと負極集電体103aの結着性を向上することができ、優れたサイクル特性を得ることができる。一方、高容量化の観点から、負極材料層103b中の負極導電剤及び結着剤は各々28質量部以下であることが好ましい。
【0023】
集電体103aは、負極活物質のリチウムの吸蔵及び放出電位において電気化学的に安定である導電性材料が用いられる。集電体103aは、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金から作られることが好ましい。集電体103aの厚さは5μm以上20μm以下であることが好ましい。このような厚さを有する集電体103aは、負極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
【0024】
負極103は、例えば負極活物質、導電剤および結着剤を汎用されている溶媒に懸濁してスラリーを調製し、調製されたスラリーを集電体103aに塗布した後に乾燥することにより負極材料層103bを形成した後、プレスを施すことにより作製される。或いは、活物質、導電剤及び結着剤をペレット状に形成して負極材料層103bとし、これを集電体103a上に形成することにより作製されてもよい。
【0025】
2)正極105
正極105は、正極集電体105a及び正極材料層105b(正極活物質含有層)を含む。正極材料層105bは、集電体105aの片面若しくは両面に形成され、活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含む。
【0026】
活物質は、例えば、酸化物、硫化物、又はポリマーを用いることができる。酸化物及び硫化物の例には、リチウムを吸蔵することが可能な二酸化マンガン(MnO)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLiMnまたはLiMnO)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLiNiO)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLiCoO)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1−yCo)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiMnCo1−y)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLiMn2−yNi)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLiFePO、LiFe1−yMnPO、LiCoPO)、硫酸鉄[Fe(SO]、バナジウム酸化物(例えばV)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物が含まれる。ここで、0<x≦1であり、0<y≦1である。活物質として、これらの化合物を単独で用いてもよく、或いは、複数の化合物を組合せて用いてもよい。
【0027】
ポリマーの例には、ポリアニリン及びポリピロールのような導電性ポリマー材料、又はジスルフィド系ポリマー材料が含まれる。
また、イオウ(S)又はフッ化カーボンも活物質として使用できる。
【0028】
より好ましい活物質の例には、正極電圧が高いリチウムマンガン複合酸化物(例えばLiMn)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLiNiO)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLiCoO)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1−yCo)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLiMn2−yNi)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiMnCo1−y)、リチウムリン酸鉄(例えばLiFePO)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物が含まれる。ここで、0<x≦1であり、0<y≦1である。
【0029】
活物質の比表面積は、0.1m/g以上10m/g以下であることが好ましい。0.1m/g以上の比表面積を有する正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる観点から好ましい。10m/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる観点から好ましい。
【0030】
結着剤は、活物質と集電体105aを結着させる。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴムが含まれる。
【0031】
導電剤は、集電性能を高め、且つ活物質と集電体105aとの接触抵抗を抑えるために必要に応じて配合される。導電剤の例には、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛のような炭素質物が含まれる。
【0032】
正極材料層105bにおいて、正極材料層105bを100質量部とするとき、活物質が80質量部以上98質量部以下であり、結着剤が2質量部以上20質量部以下の割合で配合することが好ましい。
【0033】
正極材料層105b中の結着剤は、2質量部以上の量にすることにより十分な電極強度が得られる。また、20質量部以下にすることにより電極の絶縁体の配合量を減少させ、内部抵抗を減少できる。
【0034】
正極材料層105bに導電剤を加える場合には、正極材料層105bを100質量部とするとき、活物質が77質量部以上95質量部以下であり、結着剤が2質量部以上20質量部以下であり、導電剤が3質量部以上15質量部以下の割合で配合することが好ましい。正極材料層105b中の導電剤は、3質量部以上の量にすることにより上述した効果を発揮することができる。また、正極材料層105b中の導電剤を15質量部以下にすることにより、高温保存下での正極導電剤表面での非水電解質の分解を低減することができる。
【0035】
集電体105aは、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
【0036】
アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下、より好ましくは15μm以下にすることが望ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上が好ましい。アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下にすることが好ましい。
【0037】
正極105は、例えば活物質、結着剤及び必要に応じて配合される導電剤を適当な溶媒に懸濁してスラリーを調製し、このスラリーを正極集電体105aに塗布した後に乾燥することにより正極材料層105bを形成した後、プレスを施すことにより作製される。正極103は、また、活物質、結着剤及び必要に応じて配合される導電剤をペレット状に形成して正極材料層105bとし、これを集電体105a上に形成することにより作製されてもよい。
【0038】
ここで、実施形態の非水電解質二次電池における低温特性について説明する。実施形態においては、−20℃を基準にその低温特性について評価する。低温特性は、2つのRsolとRctという2つの抵抗値で評価を行う。Rsolは、セルの交流インピーダンス測定を行った際の、1kHzの抵抗値である。Rctは、同じく0.1Hzの抵抗値である。
【0039】
常温以上の温度条件での出力特性(レート特性)に優れた電池を得るためには、Rsolの低い電解液が好ましい。一方、低温ではイオン伝導性とは異なる反応抵抗(Rct)が増大する。低温での出力特性に優れた電池を得るためには、Rctの低い電解液が好ましい。Rsol及びRctの両抵抗が低い電解液が望まれるが、通常は、RsolとRctのどちらか一方が優れ、どちらか一方が劣る傾向がある。RsolとRctの低い電解液を得るために、発明者が検討したところ、電解液溶媒の鎖状カーボネートの−20℃における自己拡散係数が1.4×10−10/sec以上2.0×10−10/secの範囲にあるものを用いることが好ましいことがわかった。
【0040】
3)電解液
電解液は、例えば、電解質を有機溶媒に溶解することにより調製される液状非水電解質、又は、液状電解質と高分子材料を複合化したゲル状非水電解質であってよい。
【0041】
液状非水電解質は、電解質を0.5モル/L以上2.5モル/L以下の濃度で有機溶媒に溶解することが好ましい。
【0042】
非水電解質二次電池用電解液の溶媒は、電解質の解離を促進できるよう、誘電率の高い溶媒が望ましい。高い誘電率を持つ溶媒として、環状のカーボネート類(例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート)が用いられる。しかし、誘電率の高い溶媒は粘度も高く、解離したLiイオンの拡散を妨げる事から、通常、誘電率は小さいが、粘度も小さい溶媒と混合して使用される。粘度の小さい溶媒として鎖状のカーボネート類(例えばジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなど)が通常用いられる。
実施の形態によれば、非水電解質二次電池用として用いられる電解液中の鎖状カーボネートの−20℃における自己拡散係数が1.4×10−10/sec以上2.0×10−10/secの範囲にある。
【0043】
電解液中の各成分の拡散係数は、電解液の粘度の他に、その分子サイズにより影響を受けることが知られている。分子サイズが大きくなると、拡散係数は小さくなる。通常、電解液溶媒の分子サイズは、材料に固有の値となるはずであるが、実際の電解液中では電解質と相互作用した状態となる。Liイオン電池用電解液中では、溶媒分子の一部は、解離したLiイオンの周辺に溶媒が配置された、いわゆる溶媒和した状態にあるとされている。電極界面での反応(電池の充放電に相当する)を考慮すると、溶媒和したままでは反応を進めることができない。従って、配位した溶媒を引き剥がす(脱溶媒和)反応が進行する。脱溶媒和のためには、その数や結着状態に応じたエネルギーが必要となり、実際の電池反応における抵抗(Rct)として観察される。
【0044】
鎖状カーボネートの自己拡散係数は、電解液中の溶媒和状態を反映していると考えられる。自己拡散係数を大きくすることで、見かけの分子サイズが小さくなり、溶媒和エネルギーが減少、抵抗を低減することできると考えられる。一方、溶媒の自己拡散係数は電解液のイオン伝導性と必ずしも連動するわけではない。イオン伝導性は脱溶媒和とは独立した抵抗成分となる。電解質濃度や種類を変化させることで、溶媒の拡散係数が増加することがあるが、電解質の解離状態や粘度などによって、イオン伝導性が減少してしまうことがある。
【0045】
−20℃における鎖状カーボネートの自己拡散係数が1.4×10−10/secより小さいと、電極反応の抵抗が大きくなってしまい好ましくない。また、2.0×10−10/secより大きいと、Liイオンの拡散係数が減少し、Rsolが高くなるため好ましくない。−20℃における鎖状カーボネートの自己拡散係数が1.4×10−10/sec以上の場合でも、一般的なセパレータを用いると、電解液のイオン伝導性が低くなる。この場合は、実施形態のセパレータ104を用いることが好ましい。セパレータ104の説明は、後述する。
【0046】
鎖状カーボネートの自己拡散係数は電解液中での見かけの分子サイズに影響される。鎖状カーボネートの一部は電解液中で解離している電解質のカチオン、アニオンに配位した状態となる。リチウムイオン二次電池の電解液に用いられる電解質はカチオンがリチウムイオンであるリチウム電解質が用いられる。自己拡散係数を大きくするには、種類の異なるアニオンを混合すると良い。従ってリチウムイオン二次電池の電解質として複数のリチウム電解質を混合すると良い。これは、異なるアニオンが鎖状カーボネートの周辺に存在することで、アニオンと溶媒の相互作用のバランスが崩れ、見かけの分子サイズが小さくなるためである。しかし、単純に2種類以上のリチウム電解質を混合しただけでは、互いのアニオンの影響が強くなってしまうため、自己拡散係数が大きくならない。また、混合により電解質の濃度が高すぎると電解液の粘度が増加し、Rsolが低下してしまうため好ましくない。従って、混合するリチウム電解質は電解液重量の10wt%以下程度にするのが好ましい。
【0047】
Rsolの低いリチウム電解質として、LiPFが好ましい。LiPFは高電位でも酸化し難い性質からも好ましい。リチウム電解質がLiPFのみではRctが高いが、異なる種類のリチウム電解質を混合することでRctを低減できる。実施形態のリチウム電解質としては、LiBF、LiBOB(Lithium Bis(Oxalate)Borate)、LiHPO,LiHPO,LiPO,LiPO、LiFSI(Lithium Bis(Fluorosulfonyl)Imide)、LiTFSI(Lithium Bis(Trifluoromethanesulfonyl)Imide)LiClO(Lithium Percrorate)やLiAsF(Lithium Hexafluoroarsenate)、などが挙げられ、これらを混合することにより−20℃におけるRctを低減することができるため好ましい。実施形態では、これらのリチウム電解質を混合したものを用いることが好ましい。リチウム電解質を混合することで、異なる種類のアニオンが鎖状カーボネートの周辺に存在する。結果、溶媒とアニオンの相互作用状態が様々となり配位エネルギーのバランスが崩れることで、電解液中のLiイオンに対する溶媒和エネルギーが減少し、−20℃におけるRctが低減される。混合するリチウム電解質のRctは、大きくてもよいし小さくてもよい。上記理由により、Rctを低減させるために用いられるリチウム電解質のRctは、必ずしも小さいものでなくてもよい。これらのリチウム電解質は、電解液重量に対し0.5wt%以上10wt%以下であると、RctとRsolがバランスよく低くなるため好ましい。電解液中に混合するリチウム電解質の量が多すぎると、Rctが高くなり、常温での電池のレート特性が悪くなるため好ましくない。また、電解液中に混合するリチウム電解質の量が少なすぎると、低温でのレート特性の改善の効果が実質的になくなるため好ましくない。
【0048】
次に自己拡散係数の測定方法について説明する。電解液溶媒の拡散係数はプロトン(1H)−NMR(Nuclear Magnetic Resonance)を用いた磁場パルス勾配(PFG:Palsed Magnetic Field Gradient)NMR測定によって求めることができる。PFG−NMR法とは、−20℃の試料に磁場勾配パルスを印加し、一定時間後の強度減衰をピークとして測定する手法である。一定時間(拡散時間)経過中に、対象物質は自己拡散係数に応じた速度で移動し、重心が変化する。その結果、強度の減衰が起こり、その度合いは印加するPFGの強度に依存する。ピーク強度と拡散係数は下記の2式によって表される。
【0049】
鎖状カーボネートとその他電解液成分は1H−NMRのスペクトルにより判断することができる。目的とする鎖状カーボネート単独の1H−NMR測定を行い、電解液のスペクトルにおけるシグナルの数、強度、化学シフトから対象の鎖状カーボネートに特有のシグナルを帰属する。帰属したシグナルのPFG強度に対する減衰を参照することで、目的の鎖状カーボネートとそれ以外を区別することができる。
【0050】
E=Eexp[−γ×G×δ×D×(Δ−δ/3)]
式中のDは拡散係数であり、GはPFG強度であり、Δは拡散時間であり、δはPFG印加時間であり、γは磁気回転比であり、Eはシグナルエコー強度であり、EはGが最小の時のシグナルエコー強度である。式は、底がネイピア数eである指数関数である。
【0051】
ここで、E、E0、G、D以外は定数であり、式を変形し定数項をAとまとめると、
ln(E/E)=−A×G×D
と表すことができる。従って、PFG強度を変化させ、ピーク強度を観察し、上記式のプロットの傾きから拡散係数を算出することができる。式は、底がネイピア数eである対数関数である。以上の測定方法の詳細は、日本ゴム協会誌、第76巻、第9号、324p(2003)とJ.Phys.Chem. B, 103, 519 (1999)に記載されている。
【0052】
4)セパレータ104
セパレータ104は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、またはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、または、合成樹脂製不織布から形成されてよい。中でも、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能であるため、安全性を向上できるセパレータ104である。
【0053】
セパレータ104は正極105と負極103の短絡を防止し、異常時には熱収縮などにより電池の暴走を防ぐ役割が求められている。従って、強度などと共にある程度の厚さと大きな空孔(貫通孔)などがないことが通常は求められる。特にカーボンを負極に使用した電池では、その作動電位の低さから、低温使用時などにおいて、Li金属の析出が起こりうる。析出するLi金属はデンドライトと呼ばれ、針状の構造をしていることが知られている。電池内にLiデンドライトが析出、成長すると、セパレータ104を貫通し対極に至り、電池が異常発熱を起こす(内部短絡)。従って、電池のセパレータ104にはある程度のデンドライトが析出しても内部短絡とならないような厚さと大きな空孔がないことが求められる。
【0054】
一方、電池特性の観点からは、厚く、孔の少ないセパレータ104ほど抵抗が増加する。これは、セパレータ104内に充填された電解液のLiイオン拡散が妨げられて、セパレータ104の抵抗が増加する。従って、電池の安全性と電池特性はトレードオフの関係にある。
【0055】
実施形態において、電池の負極としてチタン含有酸化物が用いられる。チタン含有酸化物はLiイオンとの反応電位が0.8V以上と高く、低温作動時においてもLiデンドライトの析出がほとんど起こらない。また、正極と負極の接触(内部短絡)が起こったとしても、接触した負極がすばやく放電し、絶縁状態となるため、過剰な電流が流れなくなる。従って、カーボン負極では使用できない貫通孔を持ったセパレータ104の使用が可能となる。
【0056】
薄く、孔の大きいセパレータ104を使用することで、非水電解質二次電池内に電解液を多く保持できる。また電解液の拡散がスムーズに進行するため、薄く、孔の大きいセパレータ104は、非水電解質二次電池の抵抗を低減できる。この抵抗はLiイオンの拡散性、すなわちイオン伝導性に相当するが、セパレータ104の構造自体は、電極反応抵抗(Rct)には寄与しない。イオン伝導性を向上させるセパレータ104は、自己拡散係数が1.4×10−10/sec以上の鎖状カーボネートを電解液溶媒に用いる場合、イオン伝導性の観点からより好ましい材料である。
【0057】
一方、電解液の溶媒の自己拡散係数を増加させると、イオン伝導性が低下してしまう可能性がある。セパレータ104が薄く、貫通孔を有していることで、イオン伝導性の変化による影響が相対的に小さくなり、電解液の溶媒の自己拡散係数増加による効果を増大させることが可能となる。従って、セパレータ104中に一定量の貫通孔が存在することが望ましい。なお、イオン伝導性の効果があったとしても、上記理由によりカーボン負極と実施形態のセパレータ104は好ましい組み合わせではない。
【0058】
セパレータ104中に平均直径が10μm以上100μm以下の範囲の空孔が存在することが望ましい。この範囲の大きさの空孔を有するセパレータ104を用いた非水電解質二次電池は、低抵抗かつ安全性が高いという利点を有する。セパレータ104の空孔が10μmより小さいと、セパレータ104中のLiイオンの拡散が妨げられ、抵抗が増大する観点から好ましくない。セパレータ104の空孔が100μmより大きいと、正極と負極が直接接触しやすくなり、自己放電量が増大するため好ましくない。
【0059】
セパレータ104中の空孔は、イオン伝導性及び自己放電の抑制の観点から、多すぎても少なくても好ましくない。そこで、セパレータ104の正極又は負極と接している面において、空孔が占める面積は、50%以上80%以下である。
【0060】
セパレータ104の厚さは平均で2μm以上30μm以下の範囲にあることが望ましい。この範囲の厚さのセパレータ104を用いた非水電解質二次電池は、低抵抗かつ安全性が高いという利点を有する。2μmより小さいと、正極負極間の距離が小さく、貯蔵中に自己放電が大きくなる観点から好ましくない。30μmより大きいと、Liイオンの拡散距離が長くなり、抵抗が増大する観点から好ましくない。
【0061】
セパレータ104の厚さはより好ましくは3μm以上15μm以下である。厚さが15μm以下のセパレータ104を用いた非水電解質二次電池は、Liイオンの拡散距離が更に低減するためより好ましい。厚さが3μm以上のセパレータ104を用いた非水電解質二次電池は、自己放電がより減少するため好ましい。なお、厚さが15μm以下のセパレータ104は、リチウムデンドライト発生の可能性がある活物質の使用が困難となる。チタン含有酸化物を負極に用いている場合は、セパレータ104の厚さは15μm以下がより好ましい。
【0062】
セパレータ104の厚さは、電極を剥離したセパレータ104の長さ方向で1cm間隔でその中央部の厚さを測定した平均値とすることができる。
【0063】
また、セパレータ104の空孔は、以下の方法によって測定することができる。セパレータ104を水銀圧入ポロシメーター(例えば株式会社島津製作所オートポアIV9500)を用いて細孔径の測定を行なう。得られた細孔径と細孔体積のプロファイルから、細孔径10μmにおける細孔体積がセパレータ104の1gあたり0.15mL以上であれば、10μm以上の細孔を有していると定義する。同様に細孔径100μmにおける細孔体積がセパレータ104の1gあたり0.15mL以下であれば、100μm以上の細孔を有していないと定義する。
【0064】
5)外装部材
外装部材には、ラミネートフィルム製容器または金属製容器を用いることができる。ラミネートフィルムの厚さは0.5mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.2mm以下である。金属製容器は、厚さ1mm以下であることが好ましく、より好ましい範囲は0.5mm以下であり、さらに好ましい範囲は0.2mm以下である。
【0065】
外装部材の形状は、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、ボタン型等が挙げられる。外装部材は、電池寸法に応じて、例えば携帯用電子機器等に積載される小型電池用外装部材、二輪乃至四輪の自動車等に積載される大型電池用外装部材が挙げられる。
【0066】
ラミネートフィルムは、樹脂層間に金属層を介在した多層フィルムが用いられる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔もしくはアルミニウム合金箔が好ましい。樹脂層は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子材料を用いることができる。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行って外装部材に成形することができる。
【0067】
金属製容器は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、ケイ素等の元素を含む合金が好ましい。合金中に鉄、銅、ニッケル、クロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は1質量部以下にすることが好ましい。これにより、高温環境下での長期信頼性、放熱性を飛躍的に向上させることができる。
【0068】
実施形態の非水電解質二次電池は、上記構成を有することで、交流抵抗を低くすることができる。上述のとおり低温ではRct成分の寄与が大きく、低温での出力特性を向上させるには、この抵抗を下げることが望ましい。そのために、電解液中の鎖状カーボネートの自己拡散係数を増加させることがこのましい。一方、自己拡散係数を増加させると、イオン伝導性が低下する場合がある。常温での出力特性を維持させるために、Rsolの増大は好ましくない。RsolとRctのうちの一方だけに着目すると、セル全体の抵抗低減とはならない場合がある。ここで、上述した薄く、大きな孔を含むセパレータ104を用いることで、セパレータ104中のイオン伝導性が高く保持され、Rsolの増加が抑制される。セパレータ104を用いることで、電池の抵抗を下げることができる。そこで、RsolとRctは、それぞれ、Rsol<20Ω・cmとRct<120Ω・cmを満たすと、電池抵抗が低いため好ましい。
【0069】
また、低温から高温までの動作温度で、安定した出力特性を得るためには、低温での出力特性と常温以上での出力特性のバランスが良い電池が好ましい。実施形態の非水電解質二次電池では、上述のRsolとRctの調整を行うことで、このバランスを更に良好にすることができる。そこで、RsolとRctは、Rsol/Rct>0.16の関係を満たすことが好ましい。同様の理由により、RsolとRctは、0.3>Rsol/Rct>0.16の関係を満たすことがより好ましい。
【0070】
RsolとRctは、以下の方法によって測定する。電池を周波数応答アナライザ付きのインピーダンス測定装置(例えばSolartron社製電気化学測定システム12608型)に接続する。電池を恒温槽内に設置し、一定温度で2時間以上放置し、セルの温度を調整する。周波数範囲を100kHzから0.05Hzの間で変化させながら交流インピーダンス測定を行なう。得られた複素平面におけるプロット(Cole−Coleプロット)中の1kHz、0.1Hzに対応する実軸の抵抗値を求める。抵抗値と電池内の正負極対向面積を掛け合わせたものを交流抵抗Rsol、Rctと定義する。
【0071】
実施形態によれば、低温での出力特性又は低温から高温までの出力特性に優れた非水電解質電池を提供することができる。
【0072】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る電池パックは、第1実施形態の非水電解質二次電池(単電池)を1個または複数有する。複数の単電池を備える場合、各単電池は電気的に直列もしくは並列に接続されている。第2実施形態に係る電池パックは、第1実施形態の非水電解質二次電池を電池用のセルとして用いる。
【0073】
このような電池パックを図3および図4を参照して詳細に説明する。単電池には、例えば、扁平型電池を使用することができる。
【0074】
扁平型非水電解質電池から構成される複数の単電池201は、外部に延出した負極端子202および正極端子203が同じ向きに揃えられるように積層され、粘着テープ204で締結することにより組電池205を構成している。これらの単電池201は、図4に示すように互いに電気的に直列に接続されている。
【0075】
プリント配線基板206は、負極端子202および正極端子203が延出する単電池21側面と対向して配置されている。プリント配線基板206には、図4に示すようにサーミスタ207、保護回路208および外部機器への通電用端子209が搭載されている。なお、組電池205と対向する保護回路基板206の面には組電池205の配線と不要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
【0076】
正極側リード210は、組電池205の最下層に位置する正極端子203に接続され、その先端はプリント配線基板206の正極側コネクタ211に挿入されて電気的に接続されている。負極側リード212は、組電池205の最上層に位置する負極端子202に接続され、その先端はプリント配線基板206の負極側コネクタ213に挿入されて電気的に接続されている。これらのコネクタ211、213は、プリント配線基板206に形成された配線214、215を通して保護回路208に接続されている。
【0077】
サーミスタ207は、単電池201の温度を検出し、その検出信号は保護回路208に送信される。保護回路208は、所定の条件で保護回路208と外部機器への通電用端子209との間のプラス側配線216aおよびマイナス側配線216bを遮断できる。所定の条件とは、例えばサーミスタ207の検出温度が所定温度以上になったときである。また、所定の条件とは単電池201の過充電、過放電、過電流等を検出したときである。この過充電等の検出は、個々の単電池201もしくは単電池201全体について行われる。個々の単電池201を検出する場合、電池電圧を検出してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検出してもよい。後者の場合、個々の単電池201中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。図3および図4の場合、単電池201それぞれに電圧検出のための配線217を接続し、これら配線217を通して検出信号が保護回路208に送信される。
【0078】
正極端子203および負極端子202が突出する側面を除く組電池205の三側面には、ゴムもしくは樹脂からなる保護シート218がそれぞれ配置されている。
【0079】
組電池205は、各保護シート218およびプリント配線基板206と共に収納容器219内に収納される。すなわち、収納容器219の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の内側面それぞれに保護シート218が配置され、短辺方向の反対側の内側面にプリント配線基板206が配置される。組電池205は、保護シート218およびプリント配線基板206で囲まれた空間内に位置する。蓋220は、収納容器219の上面に取り付けられている。
【0080】
なお、組電池205の固定には粘着テープ204に代えて、熱収縮テープを用いてもよい。
この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮チューブを周回させた後、熱収縮チューブを熱収縮させて組電池を結束させる。
【0081】
図3図4では単電池201を直列接続した形態を示したが、電池容量を増大させるためには並列に接続してもよい。組み上がった電池パックを直列、並列に接続することもできる。
【0082】
また、電池パックの態様は用途により適宜変更される。電池パックの用途としては、大電流特性でのサイクル特性が望まれるものが好ましい。具体的には、デジタルカメラの電源用や、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車等の車載用が挙げられる。特に、車載用が好適である。
【0083】
以上の第3の実施形態によれば、第2の実施形態に係る非水電解質電池を備えているため、サイクル安定性、レート特性、充放電効率、ガス発生耐性に優れた電池パックを提供することができる。
(実施例)
【0084】
以下、実施例に基づいて上記実施形態をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
(負極の作製)
負極活物質として粉末のスピネル型チタン酸リチウム(LiTi12)を85質量部と、導電剤としてアセチレンブラック10質量部と、結着剤としてPVdFを5質量部とを混合した負極合剤をNMPに加え、厚さ15μmのアルミ箔からなる集電体に塗布し、乾燥した。その後、プレス処理をして負極を作製した。
【0085】
(正極の作製)
正極活物質として粉末の層状岩塩型コバルト酸リチウム(LiCoO)を85質量部と、導電剤としてグラファイト5質量部とアセチレンブラック5質量部と、結着剤としてPVdFを5質量部とを混合した正極合剤をNMPに加え、厚さ15μmのアルミ箔からなる集電体に塗布し、乾燥した。その後、プレス処理をして正極を作製した。
【0086】
(非水電解質二次電池の作製)
作製した正極と負極を、セパレータを介して積層した。この積層物を、負極が外周側になるように渦巻き状に巻いて電極群を作製した。
セパレータとして、ポリエチレン製多孔質フィルム及びセルロースからなるセパレータを用いた。セパレータ中央部の厚さを1cm間隔で測定した厚さの平均値は12μmであった。内部に空孔として最大直径が30μmの孔径を持つものを使用した。
【0087】
(電解液の調整)
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)又はジエチルカーボネート(DEC)を体積比で1:2の割合で混合した混合溶媒に六フッ化リン酸リチウムを1.0mol/L溶解して非水電解溶液を調製した。調整した非水電解液溶液に、リチウムビス(オキサラト)ホウ酸(LiBOB)を電解液重量に対し1質量%となるよう混合した。
【0088】
(自己拡散係数の評価)
電解液中のEMC及びDEC(鎖状カーボネート)の拡散係数を以下の方法によって測定した。アルゴンガスで置換されたグローブボックス内で電池を解体し、電解液を取り出した。得られた電解液を100μL採取し、日本電子社製ECA−400のミクロ管に導入し、1H−NMR測定を行った。試料部を−20℃になるまで冷却し、2時間保持した後、測定を行った。得られたスペクトルの化学シフト値から、EMC又はDECのピークを特定した。続いて、PFGの印加時間を4.0msec、拡散時間を200msecとし、PFG強度を0.02T/m以上0.3T/m以下の範囲で20点変えて測定しピーク減衰強度の変化を求めた。得られたプロットの傾きから、溶媒成分の自己拡散係数を算出した。得られた溶媒の自己拡散係数は1.8×10−10secであった。
【0089】
作製した電極群と調製した非水電解質溶液をアルミラミネート製の容器に収納し非水電解質二次電池を組み立てた。なお、組み立てた二次電池の全体の容量が1000mAhになるように、正極及び負極塗布量を調整した。
【0090】
(実施例2〜16、比較例1〜6)
実施例2〜16及び比較例1〜6は、表1と表2に示す条件で実施例1と同様に電極群、非水電解質二次電池の作製、自己拡散係数の評価、正極及び負極塗布量の調整を行った。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
(初回充放電試験)
実施例1〜16及び比較例1〜6の電池を用いて充放電試験を行い、初回充放電容量を測定した。充放電は、25℃の恒温槽内で、1000mAの電流値で1.5V〜3Vの範囲で行った。
【0094】
(レート特性の評価)
実施例1〜16及び比較例1〜6の電池を用いてレート抵抗の測定を行なった。電池を1000mAで充電後に放電を5000mAの電流値で行い、放電容量を測定した。1000mAにおける放電容量に対する比率をレート特性として算出した。
【0095】
(低温特性の評価)
実施例1〜16及び比較例1〜6の電池を用いて低温抵抗の測定を行なった。電池を充電後に−20℃の恒温槽内に2時間設置し、電池の温度を調整した。放電を1000mAの電流値で行い、−20℃の放電容量を測定した。25℃における放電容量に対する比率を低温特性として算出した。
【0096】
(サイクル特性の評価)
実施例1〜16及び比較例1〜6の電池を用いて、60℃の高温環境下で電極劣化の加速試験を行った。100サイクル繰り返し充放電を行い(充電/放電で1サイクルとする)、放電容量維持率を調べた。充放電は、正負極間の電圧が1.5V〜3.0Vの電位範囲で、放電電流値1000mAの条件で行った。容量維持率は、1000mAでの初回放電容量を基準として算出した。
実施例1〜16及び比較例1〜6の電池に対して行った上記の特性評価の結果を表3に示す。
【0097】
【表3】
【0098】
実施例1〜16は、比較例1〜6と比較して低温特性が高かった。よって、実施例1〜16は比較例1〜6よりも低温時の抵抗上昇が抑制されていることが示された。電解液の組成が変わっても低温時の自己拡散係数が実施の形態の範囲に入ることで低温抵抗を低減できることが示された。
【0099】
実施例1〜13及び16は比較例1〜5と比較して低温特性が高かった。薄く、細孔径の大きいセパレータを用いていても、電解液の自己拡散係数を大きくしないと低温特性が改善できないことが示された。
【0100】
実施例1〜6は比較例2〜4と比較して低温特性が高かった。混合するリチウム電解質の量が多すぎると、電解液中でアニオン同士の相互作用が強くなる。一方、混合するリチウム電解質の量が少なすぎると、アニオン同士の相互作用がほぼなくなってしまう。結果、自己拡散係数が実施の形態の範囲に入らず、Rctが増大し低温特性が低下することが示された。
【0101】
実施例1及び16は比較例5に比べ、レート特性に優れていた。電解液に多量にリチウム電解質が混合されることで、電解液の粘度が上昇しすぎてしまい、Rsolが増大する。結果、Rsol/Rctが実施の形態の範囲に入らず低温特性が低下する。更に、Rsolが増大することで、レート特性が低下する。
【0102】
実施例1〜16は比較例6と比べ100サイクル後の容量維持率に優れていることが分かった。カーボン負極で薄く、細孔径の大きいセパレータを使用すると析出したLiによる微小短絡を防ぐことが出来ず、容量劣化が起こったと考えられる。よって、実施例1〜16は低温特性を維持しつつ、サイクル特性を両立することが示された。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0104】
100…非水電解質二次電池、101…捲回電極群、102…袋状外装材、103…負極、104…セパレータ、105…正極、106…負極端子、107…正極端子、200…電池パック、201…単電池、202…負極端子、203…正極端子、204…粘着テープ、205…組電池、206…プリント配線基板、207…サーミスタ、208…保護回路、209…通電用端子、210…正極側リード、211…正極側コネクタ、212…負極側リード、213…負極側コネクタ、214…配線、215…配線、216a…プラス側配線、216b…マイナス側配線、217…配線、218…保護シート、219…収納容器、220…蓋
図1
図2
図3
図4