(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386860
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】濁水処理装置および濁水処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 29/11 20060101AFI20180827BHJP
B01D 29/50 20060101ALI20180827BHJP
B01D 29/62 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
B01D29/10 510E
B01D29/10 520Z
B01D29/10 530D
B01D29/24 B
B01D29/38 580Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-204705(P2014-204705)
(22)【出願日】2014年10月3日
(65)【公開番号】特開2016-73900(P2016-73900A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】509320737
【氏名又は名称】一般社団法人グリーンディール推進協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】志方 洋介
【審査官】
宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−000559(JP,A)
【文献】
特開平11−333220(JP,A)
【文献】
特開昭62−197198(JP,A)
【文献】
特開2012−096142(JP,A)
【文献】
特開2000−189721(JP,A)
【文献】
特開2014−188414(JP,A)
【文献】
特開平11−347382(JP,A)
【文献】
特開平11−290884(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/037999(WO,A1)
【文献】
実開昭52−007480(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 29/11
B01D 29/50
B01D 29/62
B01D 65/02
B01D 35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁物質を含む濁水を処理するための濁水処理装置であって、
濁水をろ過するためのろ過槽と、
前記濁水の貯留源と前記ろ過槽の上部とを接続する移送流路と、
前記ろ過槽中の濁水に浸漬してろ過処理を行うための少なくとも1つの中空状のろ過材と、
吸引側が前記移送流路の途中および前記ろ過材の内部に接続された真空吸引手段と、
を備え、
前記移送流路の途中と前記真空吸引手段の吸引側とを非連通状態とし、前記濁水の貯留源と前記ろ過槽の上部とを連通状態とし、かつ前記ろ過材の内部と前記真空吸引手段の吸引側とを連通状態とし、その他は前記ろ過槽を密閉した状態で、前記真空吸引手段により真空吸引することによって前記ろ過材を介して前記ろ過槽内に負圧を形成することにより前記濁水を前記ろ過槽内に取り込み、前記ろ過材を前記濁水中に浸漬させた状態で、前記濁水をろ過して前記ろ過材の表面に前記懸濁物質を付着させた後、
前記濁水の貯留源と前記ろ過槽の上部とを非連通状態とし、前記ろ過槽の上部と前記真空吸引手段の吸引側とを連通状態とし、前記ろ過材の内部と前記真空吸引手段の吸引側とを非連通状態とし、かつ前記ろ過材の内部を大気側と連通状態とし、その他は前記ろ過槽を密閉した状態で前記真空吸引手段により前記ろ過材の内部に大気を取り込み、前記ろ過材を前記濁水に浸漬させた状態で、その大気を前記ろ過材の外部に排出することにより前記ろ過材の表面に付着した懸濁物質を剥離することを特徴とする濁水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の濁水処理装置であって、
前記ろ過材が内部に位置するように設置され、上端および下端が開口する内筒管を備えることを特徴とする濁水処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の濁水処理装置であって、
前記剥離の際の前記ろ過材の膨らみを抑制するための貼り合わせ部または膨らみ抑制部材を備えることを特徴とする濁水処理装置。
【請求項4】
懸濁物質を含む濁水を処理するための濁水処理方法であって、
濁水をろ過するためのろ過槽中に少なくとも1つの中空状のろ過材を設置して、前記濁水の貯留源と前記ろ過槽の上部とを移送流路で接続し、吸引側が前記移送流路の途中および前記ろ過材の内部に接続された真空吸引手段を用い、前記移送流路の途中と前記真空吸引手段の吸引側とを非連通状態とし、前記濁水の貯留源と前記ろ過槽の上部とを連通状態とし、かつ前記ろ過材の内部と前記真空吸引手段の吸引側とを連通状態とし、その他は前記ろ過槽を密閉した状態で、真空吸引することによって前記ろ過材を介して前記ろ過槽内に負圧を形成することにより前記濁水を前記ろ過槽内に取り込み、前記ろ過材を前記濁水中に浸漬させた状態で、前記濁水をろ過して前記ろ過材の表面に前記懸濁物質を付着させた後、
前記濁水の貯留源と前記ろ過槽の上部とを非連通状態とし、前記ろ過槽の上部と前記真空吸引手段の吸引側とを連通状態とし、前記ろ過材の内部と前記真空吸引手段の吸引側とを非連通状態とし、かつ前記ろ過材の内部を大気側と連通状態とし、その他は前記ろ過槽を密閉した状態で前記真空吸引手段により真空吸引することによって前記ろ過材の内部に大気を取り込み、前記ろ過材を前記濁水に浸漬させた状態で、その大気を前記ろ過材の外部に排出することにより前記ろ過材の表面に付着した懸濁物質を剥離することを特徴とする濁水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濁水を濃縮するための濁水処理装置および濁水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場等で発生する濁水の処理や、比較的小規模の閉鎖水域の浄化に伴う濁水の処理には、濁水中の懸濁物質(SS成分、例えば、粘土、シルト、セメント成分等)の除去や固化、脱水が避けられない要件である。
【0003】
このような濁水の処理において、例えば飲料水精製においては、前処理として凝集剤等の薬品を用いる凝集処理により濁水中の懸濁物質をある程度除いた後、さらに砂ろ過等のろ過処理により、処理水を得ることが行われている。
【0004】
凝集処理では、凝集剤撹拌槽、凝集沈降分離水槽、pH調整槽、中和槽等より構成される処理設備を必要とし、連続処理をする場合は、処理中の濁水を貯留する大容量の濁水槽が必要となる。さらに、凝集剤が排出脱水ケーキに混入するため、多くの場合、産業廃棄物としての処分が必要となり、再資源化の観点からも、コスト面でも課題となっている。
【0005】
前処理に用いられる、凝集剤等の薬品を使用しない濁水処理装置としては、例えば、特許文献1には、ろ過槽内に分離膜を配設した膜モジュールを浸漬し、ポンプを用いて膜モジュールの二次側を吸引することによる吸引圧、あるいは水面のヘッド差による圧力を膜間差圧として膜モジュールによるろ過を行う汚濁水のろ過方法において、コンプレッサを用いて膜モジュールの二次側より一次側へエアーを通気させることにより、膜モジュールの洗浄処理を行う汚濁水のろ過方法が記載されている。
【0006】
しかし、濁水処理装置において、特許文献1のようにポンプとコンプレッサを併用すると設備のコストが増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−168727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、簡易な構成で濁水の濃縮を行うことができる濁水処理装置および濁水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、懸濁物質を含む濁水を処理するための濁水処理装置であって、濁水をろ過するためのろ過槽と、
前記濁水の貯留源と前記ろ過槽の上部とを接続する移送流路と、前記ろ過槽中の濁水に浸漬してろ過処理を行うための少なくとも1つの中空状のろ過材と、
吸引側が前記移送流路の途中および前記ろ過材
の内部に接続された真空吸引手段と、を備え、
前記移送流路の途中と前記真空吸引手段の吸引側とを非連通状態とし、前記濁水の貯留源と前記ろ過槽の上部とを連通状態とし、かつ前記ろ過材の内部と前記真空吸引手段の吸引側とを連通状態とし、その他は前記ろ過槽を密閉した状態で、前記真空吸引手段により真空吸引することによって
前記ろ過材を介して前記ろ過槽内に負圧を形成することにより前記濁水を前記ろ過槽内に取り込み、前記ろ過材を前記濁水中に浸漬させた状態で、前記濁水をろ過して前記ろ過材の表面に前記懸濁物質を付着させた後、
前記濁水の貯留源と前記ろ過槽の上部とを非連通状態とし、前記ろ過槽の上部と前記真空吸引手段の吸引側とを連通状態とし、前記ろ過材の内部と前記真空吸引手段の吸引側とを非連通状態とし、かつ前記ろ過材の内部を大気側と連通状態とし、その他は前記ろ過槽を密閉した状態で前記真空吸引手段により前記ろ過材の内部に大気を取り込み、
前記ろ過材を前記濁水に浸漬させた状態で、その大気を前記ろ過材の外部に排出することにより前記ろ過材の表面に付着した懸濁物質を剥離する濁水処理装置である。
【0010】
前記濁水処理装置において、前記ろ過材が内部に位置するように設置され、上端および下端が開口する内筒管を備えることが好ましい。
【0011】
前記濁水処理装置において、前記剥離の際の前記ろ過材の膨らみを抑制するための縫製、溶着等による貼り合わせ部または膨らみ抑制部材を備えることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、懸濁物質を含む濁水を処理するための濁水処理方法であって、濁水をろ過するためのろ過槽中に少なくとも1つの中空状のろ過材を設置して、
前記濁水の貯留源と前記ろ過槽の上部とを移送流路で接続し、吸引側が前記移送流路の途中および前記ろ過材の内部に接続された真空吸引手段を用い、前記移送流路の途中と前記真空吸引手段の吸引側とを非連通状態とし、前記濁水の貯留源と前記ろ過槽の上部とを連通状態とし、かつ前記ろ過材の内部と前記真空吸引手段の吸引側とを連通状態とし、その他は前記ろ過槽を密閉した状態で、真空吸引することによって
前記ろ過材を介して前記ろ過槽内に負圧を形成することにより前記濁水を前記ろ過槽内に取り込み、前記ろ過材を前記濁水中に浸漬させた状態で、前記濁水をろ過して前記ろ過材の表面に前記懸濁物質を付着させた後、
前記濁水の貯留源と前記ろ過槽の上部とを非連通状態とし、前記ろ過槽の上部と前記真空吸引手段の吸引側とを連通状態とし、前記ろ過材の内部と前記真空吸引手段の吸引側とを非連通状態とし、かつ前記ろ過材の内部を大気側と連通状態とし、その他は前記ろ過槽を密閉した状態で
前記真空吸引手段により真空吸引することによって前記ろ過材の内部に大気を取り込み、
前記ろ過材を前記濁水に浸漬させた状態で、その大気を前記ろ過材の外部に排出することにより前記ろ過材の表面に付着した懸濁物質を剥離する濁水処理方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、真空吸引手段を用いる簡易な構成で濁水の濃縮を行うことができる濁水処理装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る濁水処理装置の一例を示す概略構成図であり、真空吸引ろ過工程を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る濁水処理装置の一例を示す概略構成図であり、水中剥離工程を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る濁水処理装置の他の例を示す概略構成図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る濁水処理装置の他の例を示す概略構成図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る濁水処理装置の他の例を示す概略構成図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る濁水処理装置におけるろ過材の構成の一例を示す概略図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る濁水処理装置を備える濁水処理システムの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<濁水処理>
本発明の実施形態に係る濁水処理装置の一例の概略構成を
図1に示し、その構成について説明する。本実施形態に係る濁水処理装置1は、主に、濁水をろ過処理し、濃縮するために用いられる。濁水処理装置1は、濁水をろ過するためのろ過槽10と、ろ過槽10中の濁水に浸漬してろ過処理を行うための少なくとも1つの中空状のろ過材12と、ろ過材12に接続された真空吸引手段としての真空吸引装置14とを備える。
【0017】
図1の濁水処理装置1において、移送流路20の一端が濁水の貯留源である被処理濁水槽34中の被処理濁水に浸漬され、他端はろ過槽10の上部の開口部32に接続され、移送流路20の途中には三方バルブ28が設けられている。ろ過材12は中空状になっており、ろ過材12の内部と接続された配管16によりろ過槽10の上部に設けられた開口部30を通して真空吸引装置14の吸引側と接続されている。ろ過槽10は密閉されていてもよい。配管16の途中には三方バルブ24,26が設けられている。三方バルブ28と三方バルブ26とは、配管22により接続されている。ろ過槽10の下部には、バルブ44を介して排出口46が設けられている。
図1の例では、濁水処理装置1は1つのろ過材12を有するが、ろ過材12の数は少なくとも1つであればよく、2つ以上であってもよく、これに限定されるものではない。
【0018】
次に、濁水処理装置1の動作および濁水処理方法について
図1,2を参照して説明する。
【0019】
図1に示すように、三方バルブ28を被処理濁水槽34とろ過槽10の開口部32との連通状態、三方バルブ24,26をろ過槽10の開口部30と真空吸引装置14との連通状態として、真空吸引装置14を作動させて真空吸引を開始する。真空吸引されることによってろ過材12を介してろ過槽10内に負圧が形成され、被処理濁水槽34から移送流路20を通して懸濁物質(SS成分)を含む濁水等の被処理濁水がろ過槽10に移送され、ろ過材12によって被処理濁水のろ過処理が行われる(真空吸引ろ過工程)。ろ過材12によりろ過処理されたろ過水は、配管16を通して系外へ排出される。一方、ろ過物である懸濁物質等は、ろ過材12の表面に付着される。
【0020】
ろ過槽10が密閉されている場合、被処理濁水がろ過材12の上端に達すると、ろ過槽10上部の残留空気が排出されないため水位の上昇が止まる。真空吸引が継続しているため、ろ過材12を介して系外に排出されたろ過水量と同等量の被処理濁水がろ過槽10内に連続的に供給され、ろ過槽10内の水位がほぼ一定に保たれる。本構成により、真空吸引により濁水の貯留源である被処理濁水槽34から被処理濁水をろ過槽10に自動供給することができる。また、ろ過槽10中の濁水の水位がほぼ一定に保たれるため、センサやフロート弁等による水位管理を行わなくてもよい。
【0021】
なお、真空吸引ろ過工程に限定すれば、ポンプ等を用いてろ過槽10に濁水を供給し、真空吸引装置および中空状のろ過材を用いてろ過処理を行えばよく、ろ過槽10は密閉されていなくてもよい。
【0022】
ろ過材12の表面に、汚泥等の懸濁物質が付着すると通水性が低下し、ろ過水の量が減少する。そこで、真空吸引装置14を作動させたまま、
図2に示すように、三方バルブ26,28をろ過槽10の開口部32と真空吸引装置14との連通状態として、三方バルブ24を大気側とろ過槽10の開口部30との連通状態とする。大気が三方バルブ24の開口部から吸引されてろ過材12の内部に取り込まれ、ろ過材12の表面より排出されることにより、ろ過材12の表面に付着していた汚泥等の懸濁物質は剥離して落下する(水中剥離工程)。ろ過材12の膨張によるろ過槽10内の水位の上昇は、ろ過槽10内のろ過材12の上部に空間を設けて吸収すればよい。ろ過材12の表面に付着していた汚泥等の懸濁物質が十分に剥離したら、真空吸引装置14を停止すればよい。濃縮された濃縮スラリーは、バルブ44を開状態として、排出口46から排出される(排出工程)。以上の真空吸引ろ過工程、水中剥離工程および排出工程を繰り返すことにより、濁水の濃縮処理が行われる。
【0023】
本構成により、コンプレッサ等の送気装置を用いなくても、真空吸引装置という簡便な手段で効率的な濃縮処理を実現することができる。これにより、付帯設備の削減と装置の簡素化とにより設備コストのより一層の低減、作業性の向上、省スペース化が可能となる。
【0024】
また、本処理方法では、凝集剤を用いなくてもよいため、凝集剤撹拌槽、pH調整槽、中和槽などの水槽を設ける必要がなく、設備の軽減につながる。凝集剤等の添加物を含まないため、ケーキを産業廃棄物処理する必要がなく、オンサイトで再利用可能となり、コスト低減効果も高い。
【0025】
被処理濁水槽34は、被処理濁水を貯留し、少なくとも移送流路20の一端を接続または浸漬可能なものであればよく、特に制限はない。
図1,2の濁水処理装置1において、被処理濁水槽34中の被処理濁水に移送流路20の一端が浸漬されて真空吸引処理が行われるが、被処理濁水槽34を設けずに、池、河川、湖等の処理対象に移送流路20の一端が直接浸漬されて真空吸引処理が行われてもよい。
【0026】
移送流路20は、ろ過槽10のどの位置に接続してもよい。
【0027】
排出口46は、ろ過槽10の下部に設けられればよく、ろ過槽10の下部側面に設けられてもよい。
【0028】
三方バルブ24,26,28を用いて真空吸引ろ過工程と水中剥離工程における流路を切り替えているが、二方バルブを用いて流路を切り替えてもよく、特に制限はない。
【0029】
真空吸引装置14としては、真空吸引できるものであればよく、特に制限はないが、例えば、真空ポンプ、エジェクタ等が挙げられ、高い真空度と高排気量を有する装置が好ましい。
【0030】
ろ過材12への大気の導入は、ろ過材12の上部から導入しても下部から導入してもよいが、ろ過材の表面からほぼ一様の状態で汚泥等を剥離することができる等の点で、下部から導入することが好ましい。
【0031】
濁水処理に用いられるろ過材12は例えば布材で、水分は通すが、所定の大きさの懸濁物質等は通さないろ過機能を有し、さらに内側に空気等の気体が注入されると内部から外側に気体を排出するように適度な通気性を備えている。ろ過材12の形状および材質は、濁水等の被処理水から懸濁物質を捕捉、分離することができるものであればよく、特に制限はない。ろ過材12の形状および材質は、処理対象となる被処理水の性状、含まれる懸濁物質等の性状等に応じて選択すればよい。ろ過材12の形状は、中空状のものであればよく、特に制限はないが、例えば、円筒形状、楕円筒形状、多角筒形状等の筒型形状や、板形状、球形状、多角形形状等であり、板形状が好ましい。ろ過面積を大きくするためには、できるだけろ過材が膨らまないような構成とし、できるだけ多くのろ過材をろ過槽内に設置するとよい。
【0032】
例えば、
図6に示すような、1つ以上のろ室50を有する板形状のろ過材12を用いることができる。
図6に示すろ過材12は、ろ布を縫製処理または溶着等により貼り合わされた貼り合わせ部52によって1つ以上のろ室50が形成された構成となっている。ろ過材12によりろ過処理されたろ過水は、各ろ室50内から下部集水管54を通って排出されるようになっている。各ろ室50にはろ過水が通過するための流路を形成した板状等のパネル材等を挿入してもよい。
【0033】
図6に示すように、ろ過材12の両側面を覆うように、剥離の際のろ過材の膨らみを抑制する膨らみ抑制部材36を設置してもよい。本構成により、水中剥離工程において、ろ過材の膨らみが抑制されるため、
図3に示すように、ろ過槽10内に複数のろ過材12を向かい合うように設置する場合、より近接してろ過材12を配置することができ、効率的なろ過を行うことができる。
【0034】
膨らみ抑制部材36としては、例えば、網状の剛性部材等が挙げられる。また、
図6に示すような縫製処理または溶着等による貼り合わせ部52等により、ろ室50を多設し、ろ過材12の膨らみを抑制する構造としてもよい。
【0035】
図4に示すように、ろ過槽10内に、ろ過材12が内部に位置するように設置され、上端および下端が開口する内筒管38を備えてもよい。本構成により、水中剥離工程において、ろ過材12から排出された空気が内筒管38内を上昇し、内筒管38の内外で比重差が発生し、下部から上方向に向かって水流が発生する。これにより、気水混合流によるろ過材12の表面の洗浄と、ろ過材12の内部からの空気による水中剥離とが行われ、より効率的な水中剥離を行うことができる。
【0036】
図5に示すように、ろ過槽10内に、複数のろ過材12を、多段および複数列に設置してもよい。
図5の例では、ろ過材12を2段および2列に設置しているが、これに限定されない。各ろ過材12には、ろ過材12の両側面を覆うように膨らみ抑制部材36が設置されている。また、全てのろ過材12が内部に位置するように内筒管38が設置されている。上段の各ろ過材12の下部は開口部30a、バルブ40を介して、下段の各ろ過材12の下部は開口部30bを通しバルブ42を介して、配管16により、真空吸引装置14の吸引側と接続されている。
【0037】
三方バルブ28を被処理濁水槽34とろ過槽10の開口部32との連通状態、三方バルブ24,26をろ過槽10の開口部30a,30bと真空吸引装置14との連通状態とし、バルブ40,42を開状態として、真空吸引装置14を作動させて真空吸引を開始する。真空吸引されることによって各ろ過材12を介してろ過槽10内に負圧が形成され、被処理濁水槽34から移送流路20を通して懸濁物質(SS成分)を含む濁水等の被処理濁水がろ過槽10に移送され、各ろ過材12によって被処理濁水のろ過処理が行われる(真空吸引ろ過工程)。各ろ過材12によりろ過処理されたろ過水は、配管16を通して系外へ排出される。一方、ろ過物である懸濁物質等は、各ろ過材12の表面に付着される。
【0038】
各ろ過材12の表面に、汚泥等の懸濁物質が付着すると通水性が低下し、ろ過水の量が減少する。そこで、真空吸引装置14を作動させたまま、三方バルブ26,28をろ過槽10の開口部32と真空吸引装置14との連通状態として、三方バルブ24を大気側とろ過槽10の開口部30a,30bとの連通状態とすると、大気が三方バルブ24の開口部から吸引されて各ろ過材12の内部に取り込まれる。ろ過材12から排出された空気が内筒管38内を上昇し、内筒管38の内外で比重差が発生し、下部から上方向に向かって水流が発生する。これにより、気水混合流による各ろ過材12の表面の洗浄と、各ろ過材12の内部からの空気による水中剥離とが行われ、より効率的な水中剥離を行うことができる。各ろ過材12の表面に付着していた汚泥等の懸濁物質が十分に剥離したら、バルブを切り替えて真空吸引ろ過工程に入ればよい。
【0039】
また、真空吸引ろ過工程の後、別の方法として、真空吸引装置14を作動させたまま、三方バルブ26,28をろ過槽10の開口部32と真空吸引装置14との連通状態として、上段側のバルブ40を閉状態とし、三方バルブ24を大気側とろ過槽10の開口部30a,30bとの連通状態とすると、大気が三方バルブ24の開口部から吸引されて下段の各ろ過材12の内部に取り込まれる。下段の各ろ過材12から排出された空気が内筒管38内を上昇し、内筒管38の内外で比重差が発生し、下部から上方向に向かって水流が発生する。これにより、気水混合流による上段側の各ろ過材12の表面の一次洗浄が行われ、次に、上段側のバルブ40を開状態とすると、上段側の各ろ過材12の内部からの空気による水中剥離が行われる。このように水中剥離を下段から上段へと順次実施することにより、さらに効率的な水中剥離を行うことができる。
【0040】
図7に、本発明の実施形態に係る濁水処理装置1を備える濁水処理システムの一例の概略構成を示す。
図7の濁水処理システム3において、被処理濁水槽34からの濁水について、ろ過槽10およびろ過材を備える濁水処理装置1で真空吸引装置14を用いた前ろ過処理が行われる。得られたろ過水は、必要に応じて貯水槽60に貯留された後、ろ過処理装置62に送液され、ろ過されて、処理水が得られる。ろ過処理装置62としては、ろ過処理を行うものであればよく、特に制限はないが、例えば、砂ろ過装置、中空糸等を用いた高度水処理装置等が挙げられる。
【0041】
本実施形態に係る濁水処理装置の処理対象となる被処理濁水としては、例えば、土木・建築現場等で発生する濁水、河川・湖沼・池・運河等の底質改善や浚渫に伴う濁水、土壌洗浄後の濁水、粘土・シルト等を含む濁水、セメント成分等の化学物質を含む濁水等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、放流レベルから飲料水生成(高度処理)の前処理まで多様な濁水処理が可能である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]
図3に示すように、上部に2つの開口部30,32が設置された円筒状の樹脂製のろ過槽10(内径230mm、高さ1000mm、容積40L/m)内にろ過材12として中空平板状のろ布(通気度100cm
3/cm
2/min、幅90mm×高さ230mm、ろ布面積414cm
2)2枚(合計ろ布面積828cm
2)を同じ高さに向かい合うように設置し、移送経路20となる管を、三方バルブ28を介して被処理濁水槽34に浸漬した。配管16により、ろ布を開口部30に接続し、三方バルブ24,26を介して真空吸引装置14の吸引側と接続した。三方バルブ26と三方バルブ28とを配管22により接続した。それぞれの平板状のろ布の両面には、膨らみ抑制部材36として、網状の剛性部材(幅110mm×高さ250mm)を設置した。
【0044】
ろ過槽10を密閉し、三方バルブ28を被処理濁水槽34とろ過槽10の開口部32との連通状態、三方バルブ24,26をろ過槽10の開口部30と真空吸引装置14との連通状態として、真空吸引を開始するとろ布を介してろ過槽10内に負圧が形成され、被処理濁水槽34の濁水がろ過槽10内のろ布上端まで上昇した。ろ過水が系外に排出されても常にこの状態が保たれ(水位一定)、ろ過処理を継続した。
【0045】
真空吸引装置14を作動させたまま、
図3に示すように、三方バルブ26,28をろ過槽10の開口部32と真空吸引装置14との連通状態として、三方バルブ24を大気側とろ過槽10の開口部30との連通状態とした。ろ過槽10の上部に形成される負圧により、大気が三方バルブ24の開口部から吸引され(吸気量:約400L/min)、ろ過材12を介して大気が排出されることにより、ろ過材12の表面に付着していた汚泥等の懸濁物質が剥離して落下した。
【0046】
このように、コンプレッサ等の送気装置を用いず、真空吸引手段を用いる簡易な構成で濁水の濃縮を行うことができた。また、膨らみ抑制部材により、ろ布の膨らみが抑制された。
【符号の説明】
【0047】
1 濁水処理装置、3 濁水処理システム、10 ろ過槽、12 ろ過材、14 真空吸引装置、16,22 配管、20 移送流路、24,26,28 三方バルブ、30,30a,30b,32 開口部、34 被処理濁水槽、36 膨らみ抑制部材、38 内筒管、40,42,44 バルブ、46 排出口、50 ろ室、52 貼り合わせ部、54 下部集水管、60 貯水槽、62 ろ過処理装置。