特許第6386872号(P6386872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386872
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】内壁下地材用バインダー基材
(51)【国際特許分類】
   C08L 61/10 20060101AFI20180827BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20180827BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20180827BHJP
   C08L 61/20 20060101ALI20180827BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   C08L61/10
   C08K3/30
   C08K3/32
   C08L61/20
   E04F13/08 G
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-215482(P2014-215482)
(22)【出願日】2014年10月22日
(65)【公開番号】特開2016-79365(P2016-79365A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】315016376
【氏名又は名称】アイカSDKフェノール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(72)【発明者】
【氏名】小野 能理善
【審査官】 佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−204035(JP,A)
【文献】 特開2005−179574(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/073557(WO,A1)
【文献】 特開2001−079806(JP,A)
【文献】 特開平10−169158(JP,A)
【文献】 特開2000−327797(JP,A)
【文献】 特開2008−173562(JP,A)
【文献】 特開2007−092822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 61/00−61/34
C08K 3/30
C08K 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノボラック型フェノール樹脂に、ピロ硫酸、ピロ亜硫酸、次亜硫酸、ピロリン酸、ピロ亜リン酸およびアスコルビン酸、並びに前記各酸の塩からなる群から選ばれる1種以上である漂白性を有する化合物および/またはジシアンジアミド・塩化アンモニウム・ホルムアルデヒド重縮合物、ジシアンジアミド・アンモニア・ホルムアルデヒド重縮合物、ジシアンジアミド・ポリアルキレンポリアミン重縮合物、ジシアンジアミド・ホルムアルデヒド重縮合物、からなる群から選ばれる1種以上であるカチオン性樹脂を配合してなる内壁下地材用バインダー基剤。
【請求項2】
前記漂白性を有する化合物を前記ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して、0.1〜15質量部配合する請求項1に記載のバインダー基剤。
【請求項3】
前記カチオン性樹脂を前記ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部配合する請求項1または2に記載のバインダー基剤。
【請求項4】
前記ノボラック型フェノール樹脂がハイオルソノボラック型であり、o/p比が2.4以上である請求項1〜のいずれか一項に記載のバインダー基剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のバインダー基剤と硬化剤とからなるバインダー。
【請求項6】
請求項に記載のバインダーを用いて、繊維材料および/または無機粉体を加熱成形してなる内壁下地材。
【請求項7】
請求項に記載の内壁下地材に壁紙を積層してなる内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維材料および/または無機粉体を成形して内壁下地材とするためのフェノール樹脂バインダーの基材、これと硬化剤からなるバインダー、該バインダーを用いた内壁下地材、およびこれに壁紙(クロス)を積層してなる内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
建材内壁等の内装材に使用される成形材料として、繊維材料や無機粉体をフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂のバインダーを用いて剛性の高い成形材料を得ることは、古くから行われてきた(例えば特許文献1参照)。
特に、フェノール樹脂は、その耐薬品性、耐熱性、耐水性等を活かしてよく用いられてきた。
フェノール樹脂として、レゾ−ル型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂がともに用いられており、レゾ−ル型フェノール樹脂は、熱硬化、架橋剤硬化等において硬化度が大きく、下記の着色汚染の問題は生じにくいが、単独で用いるとブロッキングが起こるため、ノボラック型フェノール樹脂を併用する必要がある。
【0003】
一方、ノボラック型フェノール樹脂は、初期縮合物であるジヒドロキシジフェニルメタン(2核体)などが少なくなく、これが酸化されて着色成分となり、また、強度を出すために、ヘキサメチレンテトラミンやアミン化合物やグリシジル基を有する化合物、あるいはイソシアナト基、カルボキシル基、メチロ−ル基等を有する化合物で硬化させてバインダーとして用いるが、硬化・成形時の高温加熱によりフェノール性水酸基の部分的な酸化が起こって、フェノール酸化物(一部キノン化)、特にフェノール樹脂の低分子量酸化物(部分的にキノン化したオリゴマー)等が成形材料中に生じ、高温高湿下あるいは低温での結露現象において、これらの着色成分が水分に溶出し、成形材料の表面まで移行する。
したがって、ノボラック型フェノール樹脂および硬化剤をバインダーとして繊維材料や無機粉体を成形した成形体を内壁下地材とし、壁紙(クロス)を積層して壁や天井の内装材としたときに、上記着色物質が壁紙(クロス)に染みだして着色汚染をひき起こすという問題がある。
このため、実際の使用形態としては、ノボラック型フェノール樹脂のみを用いることは少なく、通常は、レゾール型フェノール樹脂やクレゾールノボラック樹脂を併用することにより、壁紙(クロス)の黄変を低減する配合が用いられている。
【0004】
着色汚染の問題を解決するために様々な試みが行われており、フェノール性水酸基のアシル化やエ−テル化、アセチル化といった水酸基の部分を他の置換基で置き換える方法が取られることがあるが、置換することでフェノール樹脂の特徴である耐熱性や耐薬品性等が劣ること、製造時の工程時間が長くなること、および原料コストが余分にかかり安価な樹脂が得られないという欠点がある。また、ビスフェノールAを出発原料として用いたレゾ−ル型フェノール樹脂やノボラック型フェノール樹脂が提案されており、耐汚染性には比較的有効であるが、ビスフェノールA型フェノール樹脂に含まれる遊離したビスフェノールAや低分子量体は環境面、人体への安全性面から好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−327797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、繊維材料および/または無機粉体を成形して内壁下地材とするためのフェノール樹脂バインダーにおいて、壁紙(クロス)の着色汚染を抑えることができるノボラック型フェノール樹脂バインダー基材、これと硬化剤からなるバインダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために検討を重ねた結果、ノボラック型フェノール樹脂に、漂白性を有する化合物またはカチオン性樹脂を単独または併用して配合した内壁下地材用バインダー基剤を、硬化剤と組み合わせて、繊維材料および/または無機粉体を成形するためのバインダ−として用いることにより、壁紙(クロス)の着色汚染を抑えた内壁下地材が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は下記のものである。
[1]ノボラック型フェノール樹脂に、漂白性を有する化合物および/またはカチオン性樹脂を配合してなる内壁下地材用バインダー基剤。
[2]前記漂白性を有する化合物が、ピロ硫酸、亜硫酸、ピロ亜硫酸、次亜硫酸、ピロリン酸、亜リン酸、ピロ亜リン酸および次亜リン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、およびアスコルビン酸、そのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれる1種以上である上記[1]のバインダー基剤。
[3]前記カチオン性樹脂が、ジシアンジアミド・塩化アンモニウム・ホルムアルデヒド重縮合物、ジシアンジアミド・アンモニア・ホルムアルデヒド重縮合物、ジシアンジアミド・ポリアルキレンポリアミン重縮合物、ジシアンジアミド・ホルムアルデヒド重縮合物、エピクロルヒドリン・ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド・SO共重合物およびジアリルアミン塩・SO共重合物からなる群から選ばれる1種以上である上記[2]のバインダー基剤。
[4]前記漂白性を有する化合物を前記ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して、0.1〜15質量部含有する上記[1]〜[3]のいずれかのバインダー基剤。
[5]前記カチオン性樹脂を前記ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部含有する上記[1]〜[3]のいずれかのバインダー基剤。
[6]前記ノボラック型フェノール樹脂がハイオルソノボラック型であり、o/p比が2.4以上である上記[1]〜[5]のいずれかのバインダー基剤。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかのバインダー基剤と硬化剤とからなるバインダー。
[8]上記[7]のバインダーを用いて、繊維材料および/または無機粉体を加熱成形してなる内壁下地材。
[9]上記[8]の内壁下地材に壁紙を積層してなる内装材。
【発明の効果】
【0009】
本発明のノボラック型フェノール樹脂に漂白性を有する化合物および/またはカチオン性樹脂を配合してなる内壁下地材用バインダー基剤を硬化剤と組み合わせたバインダーで繊維材料および/または無機粉体を加熱成形することにより得た内壁下地材は、高温高湿下、あるいは、低温で外部温度との温度差から生じる結露を生じる条件下でも、装飾材料である壁紙(クロス)の黄色や茶褐色等の変色汚染を起こさない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明の内壁下地材用バインダー基剤は、ノボラック型フェノール樹脂に、フェノール樹脂2核体などの着色原因成分に対して漂白性を有する化合物および/または該着色原因成分を物理的に吸着(イオン的に固形化)するカチオン性樹脂を配合して得るものである。
【0012】
本発明の内壁下地材は、後述するように、バインダー基剤を含むバインダーと繊維材料、無機粉体を水中によく分散させて、水分を除去し、乾燥、熱硬化してボードをつくるものであるため、バインダー基剤は、水分散性でなければならない。
そこで、本発明の内壁下地材用バインダー基剤に用いるノボラック型フェノール樹脂は、水分散性がよくなければならず、好ましくは、フェノールとホルムアルデヒド(ホルマリン、パラホルム等)を原料としたストレートノボラック樹脂を用いる。また、壁紙(クロス)の着色汚染を抑える観点から、o/p比が2.4以上である「ハイオルソストレートノボラック型フェノール樹脂」(以下、ハイオルソノボラック型フェノール樹脂もしくはハイオルソノボラック樹脂ともいう。)がより好ましい。
【0013】
なお、本明細書において、「ハイオルソノボラック樹脂」とは、フェノ−ル性水酸基に対してオルソ−オルソ位でのメチレン結合が全メチレン結合の50%以上であるノボラック樹脂を指し、オルソ−オルソ位でのメチレン結合が全メチレン結合の50%未満のものを「ランダムノボラック樹脂」という。また、「o/p比」とは、13C−NMRを用いて測定した時の[(オルソ位同士で結合しているメチレンの積分比)+(オルソ位とパラ位結合しているメチレンの積分比)×1/2]/[(パラ位同士で結合しているメチレンの積分比)+(オルソ位とパラ位結合しているメチレンの積分比)×1/2]であって、ハイオルソノボラック樹脂のo/p比は2.0以上であり、ランダムノボラック樹脂のo/p比は1.5未満である。ハイオルソノボラック樹脂のo/p比は、好ましくは2.4以上、より好ましくは2.7以上、さらに好ましくは2.9以上である。
【0014】
ハイオルソノボラック型フェノール樹脂は、初期縮合物であるジヒドロキシジフェニルメタン(2核体)として2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン(オルソ結合)の割合が多く、これは酸化により水素原子が引き抜かれにくく、着色の原因物質とみられるトリフェニルメタンになり難いと考えられる。
しかしながら、o/p比が2.4以上であるハイオルソノボラック型フェノール樹脂のみでは、なお壁紙(クロス)の着色汚染は十分には抑えることはできない。したがって、本発明の内壁下地材用バインダー基剤としてハイオルソノボラック樹脂を用いる場合も、耐汚染性対策として、漂白性を有する化合物および/またはカチオン性樹脂を配合する。
【0015】
本発明の内壁下地材用バインダー基剤に用いるノボラック型フェノール樹脂は、常法により、フェノール類とホルムアルデヒド類を酸触媒存在下に重縮合して得ることができる。
【0016】
酸触媒として、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸などを使用すると、ランダムノボラック樹脂を生成する。これら酸(H)によりホルムアルデヒドがカチオンとなって求電子置換反応する際、p-配向性が強くランダムノボラックとなる。
酸触媒として、酢酸亜鉛、酢酸鉛、ナフテン酸鉛などの2価金属(Mg、Zn、Cd、Pb、Co、Ni)塩、あるいはホウ酸マンガン、ホウ酸カルシウム、ホウ酸等を使用すると、ハイオルソノボラック樹脂を生成する。
【0017】
本発明の内壁下地材用バインダー基剤で用いる着色原因成分に対して漂白性を有する化合物とは、ピロ硫酸、亜硫酸、ピロ亜硫酸、次亜硫酸、ピロリン酸、亜リン酸、ピロ亜リン酸、次亜リン酸およびアスコルビン酸、並びに前記各酸の塩から選ばれる1種以上である。塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が好ましい。前記アルカリ金属としては、NaまたはKが好ましく、アルカリ土類金属としては、CaまたはMgが好ましい。
【0018】
ピロ硫酸塩としてはピロ硫酸ナトリウム、ピロ硫酸カリウム、ピロ硫酸カルシウムなどが挙げられ、亜硫酸塩としては亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウムなどが挙げられ、ピロ亜硫酸塩としてはピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸カルシウムなどが挙げられ、また、次亜硫酸塩としては次亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸カリウム、次亜硫酸カルシウムなどが挙げられる。
ピロリン酸塩としてはピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸カルシウムなどが挙げられ、亜リン酸塩としては亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウムなどが挙げられ、ピロ亜リン酸塩としてはピロ亜リン酸ナトリウム、ピロ亜リン酸カリウム、ピロ亜リン酸カルシウムなどが挙げられ、また、次亜リン酸塩としては次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウムなどが挙げられる。
アスコルビン酸塩としては、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0019】
これらの中でも、変色汚染性や原料入手容易性の観点からは、次亜硫酸、ピロ亜リン酸およびアスコルビン酸、並びに前記各酸の塩から選ばれる一種以上が好ましく、次亜硫酸、ピロ亜リン酸およびアスコルビン酸、並びに前記各酸のナトリウム塩から選ばれる一種以上がより好ましい。
【0020】
漂白性を有する化合物の含有量は、ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して0.1〜15質量部であることが好ましく、0.2〜10質量部であることがより好ましく、1.0〜5.0質量部であることが特に好ましい。漂白性を有する化合物の添加量が、0.1質量部以上であると、還元作用が十分に発揮されて変色汚染を十分に抑えることができ、15質量部以下であれば、バインダ−としての含浸性や強度が低下しない。
【0021】
漂白性を有する化合物のノボラック型フェノール樹脂への配合方法としては、ノボラック型フェノール樹脂の合成反応終了後の反応水溶液に、好ましくは温度60〜120℃、より好ましくは70〜100℃、特に好ましくは90〜100℃で配合し、脱水を行って水や未反応フェノールを除去する方法をとる。また、他の配合方法として、フレ−ク状、粒状、塊状等の樹脂と漂白性を有する化合物を混合粉砕して粉状体を得てもよい。
【0022】
本発明の内壁下地材用バインダー基剤で使用するカチオン性樹脂とは、フェノール樹脂2核体などの低分子量成分を物理的に吸着(イオン的に固形化)すると推定され、そのような作用をする好ましいカチオン性樹脂として次のものが挙げられる。
【0023】
ジシアンジアミド・塩化アンモニウム・ホルムアルデヒド重縮合物、ジシアンジアミド・アンモニア・ホルムアルデヒド重縮合物、ジシアンジアミド・ポリアルキレンポリアミン重縮合物、ジシアンジアミド・ホルムアルデヒド重縮合物、エピクロルヒドリン・ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド・SO共重合物、ジアリルアミン塩・SO共重合物などである。
なかでも、耐汚染性の観点からはジシアンジアミド・塩化アンモニウム・ホルムアルデヒド重縮合物またはジシアンジアミド・ポリアルキレンポリアミン重縮合物が好ましい。
【0024】
カチオン性樹脂の含有量は、ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、0.2〜15質量部であることがより好ましく、1.0〜10質量部であることが特に好ましい。カチオン性樹脂の添加量が0.1質量部以上であると着色汚染物質を捕集する効果が十分に発揮され、20質量部以下であればバインダ−としての含浸性や強度を損なうことがなく、フェノール樹脂の特徴である難燃性を低下させることがない。
【0025】
カチオン性樹脂のノボラック型フェノール樹脂への配合方法としては、ノボラック型フェノール樹脂の合成反応終了後の反応水溶液に、好ましくは温度60〜120℃、より好ましくは70〜100℃、特に好ましくは90〜100℃で配合し、脱水を行って水や未反応フェノールを除去する方法をとる。また、他の配合方法として、フレ−ク状、粒状、塊状等のノボラック型フェノール樹脂とカチオン性樹脂を混合粉砕して粉状体を得てもよい。
【0026】
このようにして得られる本発明の内壁下地材用バインダー基剤には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、各種添加剤を含有させることができる。
【0027】
本発明の内壁下地材用バインダー基剤は、硬化剤を加えて共粉砕することにより、粉体状の内壁下地材用のバインダーとする。
内壁下地材は、繊維材料および/または無機粉体とバインダーを水中に分散させてよく混合したものからつくるので、バインダーは、水によく分散させるため、粉体状とする必要がある。
【0028】
硬化剤としては、レゾール樹脂などノボラック型フェノール樹脂と架橋する他のフェノール樹脂を好ましく使用することができ、各種のノボラック型フェノール樹脂の架橋剤を使用することもできる。
【0029】
レゾール樹脂は、一般にフェノールおよびホルマリンを、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、アンモニア水等の塩基性触媒の存在下で反応することによって得られる。その後、必要に応じて塩酸、硫酸、リン酸等の酸で中和し、蒸溜を行って水分や未反応フェノールを除去し、固形状にする。
これを、ノボラック型フェノール樹脂に漂白性を有する化合物および/またはカチオン性樹脂を配合してなるバインダー基剤に加えて共粉砕することにより、本発明の内壁下地材用バインダーとする。
【0030】
本発明において、硬化剤として使用できるノボラック型フェノール樹脂の架橋剤としては、フェノール樹脂の架橋剤に通常使用されるものを用いることができ、例えば、イソシアナト基を少なくとも2つ以上もつイソシアネート化合物として、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等を溶液状または粉状で用いる。また、アミノ基を少なくとも2つ以上もつアミン化合物としてはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリアミン等が好ましく用いることができる。
エポキシ基を少なくとも2つ以上もつグリシジルエ−テル化合物としては、ビスフェノールA型、脂肪族型、複素環状型等のテトラ、トリ、ジグリシジルエ−テル等を用いることができる。また、メチロ−ル化メラミン化合物等を用いることができ、ノボラック型フェノール樹脂の汎用架橋剤であるヘキサメチレンテトラミンも用いることができる。メチロ−ル化メラミン化合物は工業的に入手可能なものも用いることができ、例えば、日本カーバイド工業社製のニカレヂン(粉末状メチロールメラミン)などが挙げられる。
【0031】
これらノボラック型フェノール樹脂と架橋する他のフェノール樹脂、およびノボラック型フェノール樹脂の架橋剤は、ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して5.0〜90質量部使用するのが好ましく、10〜70質量部使用することがより好ましく、20〜50質量部使用することが特に好ましい。
【0032】
本発明の内壁下地材は、通常次のようにして製造する。
すなわち、上記のバインダーと繊維材料および/または無機粉体を水中に分散させて、ミキサーでよく混合し、この混合物を金属板上に均等に散布する。その後、ロールを通し、加圧により賦形しながらある程度の水分を除去し、残りの残存水分は加熱乾燥して、厚さ10〜40mmの板状物を得る。次いで、オーブンにより、150〜180℃で加熱硬化することにより、剛性のあるボード状の内壁下地材を得る。
【0033】
繊維材料としては、パルプなどの有機質繊維、無機質繊維およびセルロ−ス繊維が好ましく用いられる。
無機粉体しては、炭酸カルシウム、タルクなどが好ましく用いられる。
通常、繊維材料および/または無機粉体100質量部に対して、本発明のバインダーを好ましくは5〜50質量部、より好ましくは7〜40質量部、特に好ましくは10〜30質量部混合する。
【0034】
本発明の内壁下地材に壁紙(クロス)を積層してなる内装材は、上記の内壁下地材に
澱粉糊などの接着剤を介して壁紙(クロス)を積層することにより得られる。
壁紙(クロス)としては、無地もしくは装飾模様が施されたセルロ−ス紙やアルミ蒸着紙、樹脂バインダ−紙等、および塩化ビニルなどの樹脂製シ−トを用いることができる。
そして、本発明の内装材は、壁や天井の建材内壁として使用される。
【0035】
本発明のバインダーを用いることで内壁下地材上の壁紙(クロス)の着色汚染が抑えられる作用機構については明確ではないが、前記した如く、以下のように推測される。
【0036】
ノボラック型フェノール樹脂は初期縮合物であるジヒドロキシジフェニルメタン(2核体)等が少なくなく、その反応、濃縮時等に部分的に酸化され、その結果、酸化されたキノン化合物または、カルボキシ化、部分的にキノン化したオリゴマーが生成するものと考えられ、また、内壁下地材をつくるために高温度で加熱成形する際にも同様に酸化、キノン化が起こると推測される。これらキノン化合物または部分的にキノン化したオリゴマーは着色物質であり、その中で水溶性の高い物質は、高温高湿下あるいは低温での結露現象において、水分に溶出し、成形材料の表面まで移行し、さらに壁紙(クロス)に到達し、その表面で蓄積や濃縮されて壁紙(クロス)を着色汚染することとなる。
【0037】
しかしながら、内壁下地材用バインダー基剤の中に漂白性を有する化合物を配合すると、高温で加熱成形した際に生じるキノン化合物または、部分的にキノン化したオリゴマーが生成するのを還元作用により、これらの着色物質を着色の影響が出る量以下に抑えることができる。また、本発明で使用するカチオン性樹脂は、キノン化合物または、部分的にキノン化したオリゴマーを物理的に吸着(イオン的に固形化)することにより着色汚染を抑える。
さらに、ノボラック型フェノール樹脂としてo/p比が2.4以上であるハイオルソノボラック型フェノール樹脂を用いると、初期縮合物であるジヒドロキシジフェニルメタン(2核体)が2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン(オルソ結合)が多く、これは酸化により水素原子が引き抜かれにくく、着色の原因物質とみられるトリフェニルメタンになり難いと考えられる。
なお、o/p比が2.4以上ハイオルソノボラック型フェノール樹脂のみでは、壁紙(クロス)の着色汚染は十分には抑えることはできないので、漂白性を有する化合物および/またはカチオン性樹脂の配合が必要である。
【実施例】
【0038】
以下に実施例および比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0039】
(合成例1)
撹拌羽根を備えたセパラブルフラスコに、フェノール(三菱化学社製)1000gおよび37質量%ホルムアルデヒド(三菱瓦斯化学社製)568gを入れて溶解させた後、撹拌しながら酢酸亜鉛(日本化学産業社製)2.0gを添加し、内温100℃にて2時間反応を行い、ハイオルソノボラック型フェノール樹脂(樹脂A)を得た。樹脂Aのo/p比は2.8、重量平均分子量は6000であった。
【0040】
(o/p比の測定)
ノボラック型フェノール樹脂のo/p比は、13C−NMRを用いて測定した。
o/p比=[(オルソ位同士で結合しているメチレンの積分比)+(オルソ位とパラ位結合しているメチレンの積分比)×1/2]/[(パラ位同士で結合しているメチレンの積分比)+(オルソ位とパラ位結合しているメチレンの積分比)×1/2]
【0041】
13C−NMR測定条件は以下の通りである。
装置:ブルカー社製AVANCE III 400、溶媒:重ピリジン、温度:23℃、周波数100MHz、基準物質:TMS、積算回数:512回
【0042】
(重量平均分子量)
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーShodex GPC−101(昭和電工社製)を用いて、以下の条件で、重量平均分子量を測定した。
カラム:LF−804(昭和電工社製)
カラムの温度:40℃
試料:0.2質量%テトラヒドロフラン溶液
流量:1ml/min
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI検出器
【0043】
(合成例2〜11、比較合成例1〜2)
表1および2に示す組成および反応条件で、フェノール樹脂A〜の合成を行った。各樹脂のo/p比および重量平均分子量を表1および2に示した。樹脂A〜Kについては、酢酸亜鉛を用いた弱酸性下で付加縮合反応させた後、脱水しながら縮合反応を進めることにより、オルソ位でのメチレン基結合の多いハイオルソノボラック型のフェノール樹脂を得た。一方樹脂L、については、シュウ酸を用いた縮合反応により、メチレン基結合位置がオルソ位とパラ位が同程度のランダムノボラック型のフェノール樹脂を得た。
(レゾール樹脂の合成)
撹拌羽根を備えたセパラブルフラスコに、フェノール(三菱化学社製)1000gおよび37質量%ホルムアルデヒド(三菱瓦斯化学社製)1207gを入れて溶解させた後、撹拌しながら25%苛性ソーダ(信越化学工業社)20gを添加し、内温90℃にて1.5時間反応を行い、その後、50℃まで冷却を行い硫酸(日本化成社製)7g添加し、90℃まで蒸溜を行い固形のレゾール樹脂を得た。重量平均分子量は4000であった。
【0044】
(漂白性を有する化合物および/またはカチオン性樹脂の混合)
樹脂A〜Eおよび樹脂G〜Lに対して、それぞれ表1および表2に示す組成および条件で、漂白性を有する化合物および/またはカチオン性樹脂(固形分としての添加量)の混合を行った。樹脂A〜Cおよび樹脂G〜I、L、に対しては、樹脂の合成後、内温90℃まで冷却した後、漂白性を有する化合物および/またはカチオン性樹脂を加えて撹拌・保持した後に、常圧濃縮、真空濃縮を行い、冷却後に取り出した。樹脂D、Eおよび樹脂J、Kについては、樹脂の合成後、常圧濃縮、真空濃縮を行い、冷却した後に漂白性を有する化合物および/またはカチオン性樹脂を加えてミキサーで混合した。樹脂F、Mについては、樹脂合成後、常圧濃縮、真空濃縮を行い、冷却した後に取出し、漂白性を有する化合物やカチオン性樹脂の混合は行わなかった。
【0045】
なお、カチオン性樹脂は次のものを用いた。
カチオン性樹脂1:ジシアンジアミド・塩化アンモニウム・ホルムアルデヒド重縮合物30質量%水溶液(第一工業製薬社製、「アミゲン」)
カチオン性樹脂2:ジシアンジアミド・ポリアルキレンポリアミン縮合物40質量%水溶液(第一工業製薬社製、「アミゲンNF」)
【0046】
(バインダー基剤およびバインダーの調製)
樹脂A〜Mにそれぞれ漂白性を有する化合物および/またはカチオン性樹脂を加えて得られたバインダー基剤A〜Mについて、硬化剤としてレゾール樹脂を表1および2に記載の分量で加えて粉砕処理を行い、見かけ密度0.4g/mlの粉体樹脂であるバインダーA〜Mを得た。
【0047】
(実施例1)
バインダーAを6質量部、炭酸カルシウム40g、木質繊維のパルプ10g、および水1000gをプラスチック製の容器内に投入してミキサーで混合し、均一にほぐれるまで混合分散させた。次に撹拌しながら、凝集剤として1%硫酸アルミニウム水溶液10gを添加して凝集沈降させた。更にヌッチェに容器内の内容物を全て流し込み適度に吸引してケーキを得た。水分率は重量換算で約30%に調整した。得られた混合物を端部がフリーな金属枠に厚さ20mmに堆積させ、上から金属板を載せたものを温度150℃、圧力50kg/cm、20分間の条件で熱プレスして、170℃オーブンにて40分間硬化させ、厚さ6mmの板材を作製した。得られた板材を100×25mmにカットして試験板とした。
【0048】
(実施例2〜11、比較例1〜2)
実施例1と同様にして、バインダーB〜Mを用いてそれぞれ試験板を作製した。
【0049】
(耐汚染性の評価)
ポリ塩化ビニルを被覆した白色のクロス紙(シンコール社製、「RC−7919」)を100×25mmにカットし、試験板に積層して輪ゴムで固定した。試験板を20Lポリ袋に入れ、蒸留水5gを流し入れて試験板に浸透させた後、ポリ袋を密閉した。試験板入りポリ袋を80℃の恒温機内に静置し、ポリ袋内が80℃90%RHとなるような環境にしたうえで、1時間保持し、クロスに対する耐汚染性試験を行った。評価は以下の基準にて、5段階評価で行った。
【0050】
5: 全く汚染なし
4: 汚染性微小、僅かに変色
3: 汚染性少、わずかにうすい黄色に変色
2: 汚染性中、黄色に変色
1: 汚染性大、濃い茶色に変色
なお、それぞれのランクの中間と評価されるものは、3.5、4.5などで示した。
【0051】
実施例1〜11および比較例1〜2について耐汚染性試験の結果を表1、2に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】