【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するための本発明の空気吹出装置は、
空気流路及び吹出口を画成する筒体と、前記吹出口を通過した空気流を目標方向へ案内する「案内壁」と、前記案内壁の一部を形成する開閉弁であって前記案内壁に設けられた凹部を開放又は閉鎖することが可能な「開閉弁」と、を備える。
【0009】
具体的には、前記案内壁は、
前記吹出口の正面方向に対して交差する向きに突出した「凸面形状」を有すると共に、該案内壁を前記吹出口が属する仮想平面に投影したときの投影面が「前記吹出口の全体を覆う」ように配置されている。
【0010】
更に、前記開閉弁は、前記目標方向に基づいて前記凹部を開放又は閉鎖するようになっている。
【0011】
上記構成によれば、空気吹出装置の案内壁が上述した「凸面形状」及び「配置」を有することにより、自動車のユーザ等が「吹出口の正面方向」から空気吹出装置を見たとき、ユーザ等の視線が「案内壁」によって遮られ、吹出口がユーザ等に視認されない。更に、吹き出し空気流の「目標方向」を考慮して「開閉弁」が「案内壁に設けられた凹部を開放又は閉鎖する」ことにより、案内壁から空気流が剥がれる位置(以下「剥離位置」という。)が調整され、吹き出し空気流が「目標方向」へ案内される。
【0012】
上述した本発明の特徴の詳細について、以下に述べる。
【0013】
本発明における案内壁は、「吹出口を通過した空気流を目標方向へ案内する」べく、吹出口よりも下流側に設けられる。この案内壁は、「吹出口の正面方向に対して交差する向きに突出した凸面形状」を有しており、案内壁の凸面(凸形状の湾曲面)を「吹出口が属する仮想平面に投影したときの投影面」が「吹出口の全体」を覆うように配置されている(例えば、
図1及び
図2を参照。)。その結果、この投影方向に平行に(即ち、吹出口の正面方向から)ユーザ等が空気吹出装置を見ると、案内壁によって吹出口が隠され、吹出口がユーザ等に視認されないことになる。
【0014】
一方、「吹出口を通過した空気流」は、案内壁の表面(凸形状の湾曲面)に貼り付くように案内壁に沿って流れる。これは、粘性を有する流体の近傍に物体が存在すると、流体の流れがその物体の表面に沿って湾曲する効果(コアンダ効果)が生じるためである。このように空気流が流れている際に、「案内壁に設けられた凹部」を開閉弁が「開放」したとき、空気流が凹部に曝されることになる。このとき、空気流と案内壁の表面(例えば、凹部の底)との距離が増大すること等に起因し、凹部において、コアンダ効果による付着力が失われる。その結果、凹部において、空気流が案内壁から剥がれる。これに対し、開閉弁が凹部を「閉鎖」していれば、空気流は凹部に曝されることなく「案内壁の一部を形成する」開閉弁の表面(即ち、案内壁の表面)に沿って流れる。よって、上記とは異なり、コアンダ効果による付着力は失われない。その結果、空気流は、凹部において剥がれない。なお、凹部が閉鎖されているとき、空気流は、凹部よりも下流側の所定位置(例えば、案内壁の最端部)において剥離することになる。このように、開閉弁が「案内壁に設けられた凹部を開放又は閉鎖する」と、空気流の剥離位置が変化する。
【0015】
一般に、案内壁から剥がれた空気流は、剥離位置における案内壁の接平面に沿った方向(以下「接平面方向」という。)に流れる。換言すると、剥離位置を変化させることにより、吹き出し空気流の流れ方向を調整できる。具体的には、開閉弁を用いて上述したように剥離位置を変化させれば、吹き出し空気流の流れ方向を“凹部が存在する位置における案内壁の接平面方向”と“凹部の下流側の所定位置(案内壁の形状に基づいて定まる剥離位置)における案内壁の接平面方向”との間で切り替えることができる。よって、「目標方向」が前者の方向であれば凹部を「開放」し、「目標方向」が後者の方向であれば凹部を「閉鎖」すれば、吹き出し空気流の流れ方向を目標方向に一致させることができる。即ち、開閉弁を「目標方向に基づいて」操作することにより、吹き出し空気流の流れ方向を調整できる。
【0016】
したがって、本発明の空気吹出装置は、空気吹出装置としての機能(吹き出し空気流の流れ方向を調整する機能)を損なうことなく吹出口を出来る限り不可視化できる。
【0017】
更に、本発明の空気吹出装置は、従来装置のような風向調整機構(フィン等)を必要としないため、吹出口を従来装置よりも更に狭小化することも可能である。加えて、本発明の空気吹出装置(特に、案内壁)を、自動車の他の内装用部品の一部(例えば、カーナビゲーションシステムのディスプレイ等を固定するフレーム)として用いれば、吹出口だけでなく空気吹出装置そのものがユーザ等に認識され難くなるため、自動車の内装部等の美観を更に向上することも可能である。
【0018】
ところで、上記「吹出口」は、“空気流路の開口端(筒体内の中空部の下流側端部)”であり、案内壁よりも上流側に存在している。吹出口を通過した空気流を出来る限り滞りなく案内壁に誘導する観点から、吹出口と、案内壁の上流側端部と、の距離は出来る限り小さいこと(更には、両者が同じ位置に存在すること)が好ましい。
【0019】
上記「吹出口の正面方向」は、“吹出口の開口面の中心を同開口面に直交するように通過する直線が伸びる方向”である。吹出口の正面方向は、例えば、吹出口を通過した空気流が直進する方向、又は、空気流路の軸線方向と言い換え得る。
【0020】
上記「吹出口が属する仮想平面」は、“吹出口の開口面がその平面上に存在することになる仮想上の平面”である。吹出口が属する仮想平面は、例えば、吹出口の開口面をその周辺に拡張した平面と言い換え得る。
【0021】
以上、本発明の空気吹出装置の構成・効果について説明した。次いで、以下、本発明の空気吹出装置のいくつかの態様(態様1,2)について述べる。
【0022】
・態様1
本発明の空気吹出装置において、凹部の形状、凹部を設ける位置および凹部の数などは、空気吹出装置に要求される吹き出し空気流の調整性能などを考慮して定められればよく、特に制限されない。
【0023】
例えば、凹部の開放時において、空気流と案内壁の表面との距離が凹部にて急激に増大すれば、同距離が緩やかに増大する場合に比べ、空気流をより確実に凹部にて案内壁から剥がれさせることができる。
【0024】
そこで、本態様の空気吹出装置は、
前記凹部よりも上流側に在り且つ前記凹部に隣接する前記案内壁の表面と、前記表面に隣接する前記凹部の側面と、がなす角度が「直角又は鋭角」である、ように構成され得る。
【0025】
ところで、案内壁は凸面形状を有しているため、「案内壁の表面」は、厳密には平面ではなく曲面(凸形状の湾曲面)である。また、「凹部の側面」は、凹部の形状に応じた面形状を有するため、必ずしも平面とは言えない。しかし、凹部における空気流の剥離性を検討する観点においては、それら面が有する曲率は無視し得る。即ち、本態様の空気吹出装置においては、「案内壁の表面」及び「凹部の側面」が平面であると見なし、上記「角度」を特定し得る。
【0026】
なお、上記「角度」は、“凹部よりも上流側に在り且つ凹部に隣接する案内壁の表面の接平面”と“その表面に隣接する凹部の側面の接平面”とがなす角度、と言い換え得る。
【0027】
・態様2
更に、例えば、複数の凹部を空気流の流れ方向に沿って案内壁に設ければ、単一の凹部を案内壁に設ける場合に比べ、空気流の剥離位置を多段階に変更できる。その結果、吹き出し空気流の流れ方向をより精密に調整できる。
【0028】
そこで、本態様の空気吹出装置は、
前記案内壁に空気流の流れ方向に沿って複数の凹部が設けられ、
前記複数の凹部の各々を独立して開放又は閉鎖することが可能な複数の前記開閉弁を備える、ように構成され得る。