(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の根太では、ねじ軸に対する止めナットの位置調整だけによって振れ止め具の根太からの突出量を調整するため、外気温の変化などによって根太に伸縮変形が生じた場合には、根太の長さ寸法の変化に応じて一定の固定状態を保つことが困難である。
つまり、外気温の温度低下によって根太が縮む場合には、固定枠の内壁面に対する振れ止め具からの押圧力が弱まり、根太自体に位置ずれが生じるおそれがある。このため、根太によってデッキの反りなどの変形を抑制することが困難である。他方、外気温の温度上昇によって根太が伸びる場合には、固定枠の内壁面に過大な押圧力が加えられるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、外気温が変化しても一定の固定状態を保つことができるデッキ支持材、デッキおよびデッキ施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のデッキ支持材は、一対の壁部間に固定されてデッキ材を支持するデッキ支持材であって、前記一対の壁部の対向方向を長手方向として配置される支持本体と、前記支持本体の一方の端部に、前記支持本体の長手方向に沿ってスライド可能に取り付けられるスライド部材と、前記スライド部材を一対の壁部のうちの一方の壁部に向かって付勢するばね部材と、前記支持本体の他方の端部および前記スライド部材のうちの少なくとも一方に取り付けられる長さ調整具と、前記支持本体の他方の端部および前記スライド部材のうちのいずれか他方または前記長さ調整具にそれぞれ取り付けられて前記一対の壁部に当接する一対の当接部材とを備え
、前記スライド部材および前記支持本体のうちの一方には、スライド方向に延びた長孔が形成され、前記スライド部材および前記支持本体のうちの他方には、前記長孔にガイドされるガイド体が形成され、前記ガイド体は、前記支持本体に対する前記スライド部材の傾きを抑制可能に前記長孔に挿通されることを特徴とする。
【0007】
本発明のデッキ支持材によれば、長さ調整具の長さ調整によってデッキ支持材の全長を調整できるうえ、ばね部材によってスライド部材が一方の壁部に向かって付勢されるため、金属製、樹脂製、木製などの支持本体の長さ寸法が外気温の変化を受けて変化しても、
外気温の変化に対応してスライド部材が支持本体の長手方向に沿ってスライドし、ばね部材が弾性伸縮することで、デッキ支持材の固定状態を一定に保つことができる。つまり、外気温の温度低下によって支持本体が縮む場合には、ばね部材に付勢されるスライド部材が一方の壁部に向かってスライドすることで、デッキ支持材の全長を伸ばすことができ、一対の壁部への固定が位置ズレを生じる程度にまで緩むことを防止できる。また、外気温の温度上昇によって支持本体が伸びる場合には、スライド部材がばね部材の付勢に抗して支持本体の一方の端部に向かってスライドすることで、デッキ支持材の全長を縮めることができ、一対の壁部に過大な押圧力が加えられることを抑制できる。
さらに、長さ調整具の長さ調整によって一対の壁部に対する突っ張り力をも調整できる。
また、長さ調整具が支持本体の他方の端部に取り付けられる場合には、長さ調整具の長さ調整によって支持本体の長手方向における位置を調整でき、設置自由度を拡げることができる。
他方、長さ調整具がスライド部材に取り付けられる備える場合には、デッキ支持材を一対の壁部間に突っ張り固定した状態で長さ調整を行うことで、支持本体の長手方向における位置を維持したままスライド部材の支持本体に対する位置を調整でき、一対の壁部に対する押圧力を調整できる。
加えて、ガイド体が、支持本体に対するスライド部材の傾きを抑制可能に長孔に挿通されるため、スライド部材の支持本体に対する傾きによるデッキ支持材の浮き上がりを抑制できる。
なお、デッキ支持材は、例えば、デッキが固定される根太によって構成される。
【0008】
本発明のデッキ支持材では、前記長さ調整具は、前記支持本体の他方の端部に取り付けられる第一長さ調整具と、前記スライド部材に取り付けられる第二長さ調整具とを備え、前記第一長さ調整具には、前記一対の当接部材のうちの一方の当接部材が取り付けられ、前記第二長さ調整具には、前記一対の当接部材のうちの他方の当接部材が取り付けられることが好ましい。
このような構成よれば、第一長さ調整具の長さ調整によって支持本体の他方の端部に対する一方の当接部材の突出量を調整できるため、第一長さ調整具を支持本体の位置調整やデッキ支持材の全長調整用として利用でき、他方、第二長さ調整具の長さ調整によってスライド部材に対する他方の当接部材の突出量を調整できるため、第二長さ調整具をばね付勢力調整用として利用でき、各長さ調整具の使い分けによって施工性の向上を図れる。さらに、第一長さ調整具および第二長さ調整具の双方を備えるため、調整幅の拡大を容易に行うことができる。
【0010】
本発明のデッキ支持材では、前記ガイド体は、スライド方向に並んで位置する2本以上のガイド用ビスによって構成されることが好ましい。
このような構成によれば、ガイド体の構成を2本以上のガイド用ビスによって簡略化でき、2本以上のガイド用ビスがスライド方向に並んで位置するため、スライド部材の支持本体に対する傾きを抑制できる。
【0011】
本発明のデッキ支持材では、前記スライド部材には、前記支持本体に対するスライド方向の位置を示す目印が設けられることが好ましい。
このような構成によれば、前述した支持本体に対するスライド方向の位置を示す目印がスライド部材に設けられるため、目印によってスライド部材の支持本体に対するスライド方向の位置を確認しつつスライド部材を位置調整でき、例えば、ばね部材の付勢力を予め定められた設定値に簡単に設定できる。
【0012】
本発明のデッキ支持材では、前記支持本体から下方への突出量を調整可能な高さ調整具をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、支持本体から下方への突出量を調整可能な高さ調整具を備えるため、例えば、デッキ支持材の下部に高さ位置調整用のパネル材などを設置しなくても、高さ調整具によってデッキ支持材の高さ位置を適切な高さ位置に簡単に調整できる。
【0013】
本発明のデッキは、前述した本発明のデッキ支持材と、前記デッキ支持材に固定されるデッキ材とを備えて構成されることを特徴とする。
本発明のデッキによれば、前述した本発明のデッキ支持材と同様の作用効果を発揮可能なデッキとすることができる。従って、デッキ材のデッキ支持材への固定後に外気温が変化しても、デッキ支持材の一対の壁部への固定状態を一定に保てるので、デッキ材の位置ズレ、浮き上がりや傾きが生じるおそれをなくすことができる。
【0014】
本発明のデッキ施工方法は、デッキ材と、一対の壁部間に固定されて前記デッキ材を支持するデッキ支持材とを備えるデッキを施工するためのデッキ施工方法であって、前記デッキ支持材は、前記一対の壁部の対向方向を長手方向として配置される支持本体と、前記支持本体の一方の端部に、前記支持本体の長手方向に沿ってスライド可能に取り付けられるスライド部材と、前記スライド部材を一対の壁部のうちの一方の壁部に向かって付勢するばね部材と、前記支持本体の他方の端部および前記スライド部材のうちの少なくとも一方に取り付けられる長さ調整具と、前記支持本体の他方の端部および前記スライド部材のうちのいずれか他方または前記長さ調整具にそれぞれ取り付けられて前記一対の壁部に当接する一対の当接部材とを備え、前記長さ調整具は、前記支持本体の他方の端部に取り付けられる第一長さ調整具と、前記スライド部材に取り付けられる第二長さ調整具とを備え、前記第一長さ調整具には、前記一対の当接部材のうちの一方の当接部材が取り付けられ、前記第二長さ調整具には、前記一対の当接部材のうちの他方の当接部材が取り付けられるものとしておき、
前記スライド部材および前記支持本体のうちの一方には、スライド方向に延びた長孔が形成され、前記スライド部材および前記支持本体のうちの他方には、前記長孔にガイドされるガイド体が形成され、前記ガイド体は、前記支持本体に対する前記スライド部材の傾きを抑制可能に前記長孔に挿通され、前記一対の壁部間に前記デッキ支持材を配置し、前記第一長さ調整具の長さ調整により前記デッキ支持材の全長を調整して前記一対の当接部材を前記一対の壁部にそれぞれ当接し、前記第二長さ調整具の長さ調整により、前記デッキ支持材の支持本体に対してスライド部材をスライドさせて、ばね部材の付勢力が予め定められた設定値にある状態とし、前記デッキ支持材に前記デッキ材を固定することを特徴とする。
本発明のデッキ施工方法によれば、先ず第一長さ調整具の長さ調整によってデッキ支持材の全長を調整してデッキ支持材を一対の壁部に当接することで、一対の壁部に大きな押圧力を加えることなく、デッキ支持材の固定位置を設定できる。
さらに、第二長さ調整具の長さ調整によってスライド部材を支持本体に対してスライドさせるため、支持本体の位置変化を生じることなくデッキ支持材の固定位置を維持したまま、ばね部材の付勢力を設定値にできる。
このように、第一長さ調整具をデッキ支持材の全長調整に用い、第二長さ調整具をばね部材の付勢力の調整に用いることで、施工性を向上できる。
加えて、ガイド体が、支持本体に対するスライド部材の傾きを抑制可能に長孔に挿通されるため、スライド部材の支持本体に対する傾きによるデッキ支持材の浮き上がりを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外気温が変化しても一定の固定状態を保つことができるデッキ支持材、デッキおよびデッキ施工方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[本実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1,2に示すデッキ1は、デッキ材2と、本実施形態に係るデッキ支持材である根太3とを備えて構成され、建物のバルコニー4に設置されるものである。
バルコニー4は、コンクリート製の底部5および壁部6,7を備えて構成されている。壁部6,7はバルコニー4の出幅方向において互いに対向して配置されている。
【0018】
デッキ材2は、水平方向に複数並設されている。複数のデッキ材2のうちバルコニー4の出幅方向における両端部に配置されるデッキ材2A,2Bは、固定ビス8によって複数の根太3に固定されている。
デッキ材2は、木粉を含有した合成樹脂製の押出形材によってそれぞれ同一形状に形成されており、デッキ1の間口方向(バルコニー4の間口方向と同方向)および奥行方向(バルコニー4の出幅方向と同方向)に並んで設けられている。
デッキ材2は、平面視略矩形状であり、
図2に示すように、デッキ上板部21と、デッキ下板部22と、デッキ側縁部23と、デッキ上板部21およびデッキ下板部22を連結してデッキ材2を補強する補強板部24とを有して形成されている。デッキ材2の内部は中空とされている。
互いに隣接するデッキ側縁部23同士は、根太3にビス止めされた連結金具25を介して連結されている。また、互いに隣接するデッキ材2の端部間には、目地塞ぎ材(図示省略)が介在されている。
【0019】
複数の根太3は、デッキ1の間口方向において所定間隔を隔てて壁部6,7間に配置されている。
根太3は、
図3〜5に示すように、根太本体30(支持本体)と、スライド部材40と、ばね部材であるコイルばね50と、連結体55A,55B(ガイド体)と、長さ調整具60,70と、当接部材62,72と、高さ調整具80とを備えて構成されている。スライド部材40およびコイルばね50によって付勢装置が形成されている。
【0020】
根太本体30は、アルミ押出形材によって中空に形成されており、根太上板部31と、根太側板部32,33と、根太下板部34と、根太延出板部35A,35Bとを有している。
根太上板部31の両側縁は、根太側板部32,33の上縁から
図5において左右方向に若干突出している。根太上板部31の長手方向における両端部には、前述した固定ビス8がねじ込まれて、デッキ材2A,2Bが固定される。
根太側板部32,33には、後述する各ビス9,551,552が螺合するねじ孔が形成されている。
根太下板部34には、後述する取付板83が嵌合する嵌合凹部341が、根太本体30の長手方向に沿って形成されている。嵌合凹部341には、後述する軸部材81が挿通される挿通孔(図示省略)が形成されている。
根太延出板部35Aは、根太側板部32の根太上板部31寄りに位置する部分から
図5の右側に延出して形成されている。根太延出板部35Bは、根太側板部33の根太上板部31寄りに位置する部分から
図5の左側に延出して形成されている。
【0021】
また、根太本体30の長手方向における両端部30A,30Bには、固定金具36,37がそれぞれ固定されている。
固定金具36は、根太本体30の端部30A(他方の端部)に固定されるものであり、板状の金具をコ字状に折曲して形成され、側板部361,362および連結板部363を有している。
側板部361,362は、根太側板部32,33に沿って配置されており、上縁が根太延出板部35A,35Bにそれぞれ当接している。側板部361,362には、ビス9が挿通する孔がそれぞれ形成されており、当該孔に挿通したビス9が根太側板部32,33の各ねじ孔に螺合することによって、側板部361,362は根太側板部32,33に固定されている。
連結板部363は、側板部361,362を連結しており、根太本体30の端部30A側の端面を塞いで配置されている。連結板部363には、後述する軸部材61が螺合する螺合孔363Aが形成されている。
【0022】
固定金具37は、根太本体30の端部30B(一方の端部)に固定されるものであり、板状の金具をコ字状に折曲して形成され、側板部371,372および連結板部373を有している。
側板部371,372は、根太側板部32,33に沿って配置されており、上縁が根太延出板部35A,35Bにそれぞれ当接している。側板部371,372には、ビス9および後述する段付きビス551,552が挿通する孔がそれぞれ形成されており、当該孔に挿通した各ビス9,551,552が根太側板部32,33の各ねじ孔に螺合することによって、側板部371,372は根太側板部32,33に固定されている。
連結板部373は、側板部371,372を連結しており、根太本体30の端部30B側の端面を塞いで配置されている。連結板部373には、後述する軸部材71が挿通される挿通孔373Aが形成されている。
【0023】
スライド部材40は、矩形板状の金具をコ字状に折曲して形成され、スライド板部41,42および連結板部43を有している。
スライド板部41,42は、側板部371,372に沿って配置されており、上縁が根太延出板部35A,35Bにそれぞれ当接している。スライド板部41,42には、根太本体30の長手方向に延びた長孔411,421がそれぞれ形成されている。長孔411,421および固定金具37の各孔に連結体55A,55Bが挿通され、当該連結体55A,55Bが根太側板部32,33の各ねじ孔に螺合することによって、スライド板部41,42は根太側板部32,33にそれぞれ連結されている。この連結体55A,55Bは、長孔411,421にガイドされる。
また、スライド板部41,42には、その根太本体30に対するスライド方向の位置を示す目印45(
図3参照)が設けられている。目印45はスライド方向において二つ設けられている。両目印45間に根太本体30の端部30B側の端面が位置するようにスライド部材40のスライド方向の位置が調整されると、スライド部材40のスライド方向であって壁部7に向かうコイルばね50の付勢力は予め定められた設定値の範囲内とされる。
連結板部43は、スライド板部41,42の先端を連結しており、スライド部材40のスライド方向において固定金具37の連結板部373から離間して位置している。連結板部43には、後述する軸部材71が螺合する螺合孔431が形成されている。
【0024】
コイルばね50は、スライド部材40の連結板部43と固定金具37の連結板部373との間に介在されている。コイルばね50の一端は連結板部43に当接しており、コイルばね50の他端は連結板部373に当接している。
このコイルばね50は、スライド方向であってスライド部材40を根太本体30から離間する方向に付勢している。
【0025】
連結体55Aは、スライド方向に間隔を隔てて並んで位置した2本の段付きビス551,552(ガイド用ビス)によって構成されている。
段付きビス551,552のねじ軸部は根太側板部32のねじ孔に螺合し、段付きビス551,552の円柱軸部は長孔411に摺動可能に配置されている。
段付きビス551から段付きビス552までのスライド方向寸法は、長孔411の長さ寸法よりも短い。このため、スライド板部41は根太側板部32にスライド可能に連結されている。
また、スライド部材40が段付きビス551,552のうちの一方のビスを中心とする回転は段付きビス551,552のうちの他方のビスの長孔411への当接によって抑制される。従って、スライド部材40が根太本体30に対して上方または下方に傾くことは、段付きビス551,552によって抑制されている。
なお、連結体55Bも、連結体55Aと同様に、段付きビス551,552によって構成され、スライド板部42を根太側板部33にスライド可能に連結し、スライド部材40の根太本体30に対する傾きを抑制している。
【0026】
長さ調整具60(第一長さ調整具)は、根太本体30の端部30A側に配置されている。長さ調整具60は、根太本体30の長手方向に延びて固定金具36の螺合孔363Aに螺合する軸部材61(ねじ軸)と、軸部材61の回転操作用の操作ナット63と、軸部材61の回転をロックする止めナット64とを備えて構成されている。軸部材61の先端側には操作ナット63が固定されており、操作ナット63よりも固定金具36側に位置する軸部材61の部分には止めナット64が螺合している。
【0027】
当接部材62は、皿状に形成され、軸部材61の先端に回転可能に取り付けられている。また、当接部材62には、緩衝材(図示省略)が装着されており、この緩衝材が壁部6に当接している。
【0028】
前述した長さ調整具60は、本実施形態では主に根太3の全長調整に利用されるものであり、操作ナット63の回転操作により軸部材61を回転、逆回転することで、軸部材61の固定金具36からの突出量を調整し、当接部材62を根太本体30の長手方向に移動させられる。そして、止めナット64を回転し、当該止めナット64が固定金具36の連結板部363に当接することで、軸部材61の回転、逆回転は止められ、当接部材62の位置は固定される。また、止めナット64を逆回転し、この止めナット64が連結板部363から離間することで、軸部材61は回転、逆回転可能な状態となる。
【0029】
長さ調整具70(第二長さ調整具)は、根太本体30の長手方向に延びた軸部材71(ねじ軸)と、軸部材71の回転操作用の操作ナット73と、軸部材71の回転をロックする止めナット74とを備えて構成されている。軸部材71は、スライド部材40の螺合孔431に螺合して固定金具37の挿通孔373Aに挿通している。軸部材71の先端側には操作ナット73が固定されており、操作ナット73よりも固定金具37側に位置する軸部材71の部分には止めナット74が螺合している。
【0030】
当接部材72は、皿状に形成され、軸部材71の先端に回転可能に取り付けられている。また、当接部材72には、緩衝材(図示省略)が装着されており、この緩衝材が壁部7に当接している。
【0031】
前述した長さ調整具70は、本実施形態では主にコイルばね50の付勢力の調整に利用されるものであり、操作ナット73の回転操作により軸部材71を回転、逆回転することで、軸部材71のスライド部材40からの突出量を調整し、当接部材72を根太本体30の長手方向に移動させられる。そして、止めナット74を回転し、当該止めナット74がスライド部材40の連結板部43に当接することで、軸部材71の回転、逆回転は止められ、当接部材72の位置は固定される。また、止めナット74を逆回転し、この止めナット64が連結板部43から離間することで軸部材71は回転、逆回転可能な状態となる。
なお、長さ調整具70の根太本体30に対する位置は、スライド部材40のスライドによってスライド方向に変位する。
【0032】
高さ調整具80は、
図2に示すように、根太本体30の長手方向に沿って所定間隔を隔てて複数配置されている。高さ調整具80は、
図5に示すように、上下方向に延びた軸部材81と、軸部材81の先端に取り付けられた操作摘み82と、軸部材81が螺合するとともに、根太本体30の嵌合凹部341に嵌合し、ビス10によって取り付けられる取付板83とを備えて構成されている。
この高さ調整具80は、操作摘み82の回転操作により軸部材81を回転、逆回転することで、根太本体30の下方への突出量を調整する。
なお、軸部材81には、回転をロックする止めナット(図示省略)が螺合していてもよい。
【0033】
[デッキの施工]
以下、デッキ1の施工手順について説明する。
先ず、
図1に示すように、複数の根太3を間口方向に沿って所定間隔を隔てて配置する。この際、各根太3の長手方向の向きはバルコニー4の出幅方向と同じ向きとされ、当接部材62はバルコニー4の壁部6側(先端側)に位置し、当接部材72はバルコニー4の壁部7側(基端側)に位置した状態とされる。また、当接部材72は、壁部7に当接した状態とされている。
ここで、
図2に示すように、バルコニー4の底部5には、壁部7から壁部6に向かって下さがりの傾斜勾配が設定されているので、複数の高さ調整具80の操作摘み82をそれぞれ操作して各軸部材81の下方への突出量を調整して、根太3が水平方向に延びた状態にする。
【0034】
次に、長さ調整具60の長さ調整によって各根太3の全長を調整し、壁部6,7間に仮固定する。つまり、操作ナット63の回転操作によって軸部材61の突出量を調整し、当接部材62を根太本体30の長手方向に沿って壁部6に向かって突出させ(
図6参照)、壁部6に当接させる。つづいて、止めナット64を回転して固定金具36の連結板部363に当接し、軸部材61の回転をロックする。このようにして、根太3を壁部6,7間に仮固定する。
【0035】
次に、長さ調整具70の長さ調整によって各根太3の壁部6,7に対する突っ張り状態を調整する。つまり、操作ナット73の回転操作によって軸部材71の突出量を調整し、スライド部材40をスライド方向において根太本体30に向かって接近させ、二つの目印45間に根太本体30の端部30B側の端面が位置した際に、コイルばね50の付勢力が予め定められた設定値の範囲内に設定されたとし、止めナット74を回転してスライド部材40の連結板部43に当接して、軸部材71の回転をロックする。このように、コイルばね50の付勢力を調整し、根太3の壁部6,7に対する押圧力を調整することで、突っ張り状態を調整する。ここで仮に、長さ調整具70の長さ調整によってコイルばね50の付勢力を設定値の範囲内に調整しきれかなった場合には、長さ調整具60の長さ調整によってコイルばね50の付勢力を調整してもよい。
【0036】
次に、複数のデッキ材2を根太3上に載置しながら水平方向に並設し、バルコニー4の出幅方向における両端部に配置されたデッキ材2A,2Bを固定ビス8によって根太本体30の両端部30A,30Bに固定する。
このようにして、デッキ1をバルコニー4に施工する。
【0037】
[本実施形態の効果]
(1)長さ調整具60,70を備えるため、根太3の一対の壁部6,7間への設置の際に根太3の全長を調整できるうえ、根太本体30に対してスライド可能なスライド部材40と根太本体30の端部30Bに設けられた固定金具37との間に介在されるコイルばね50によって、スライド部材40が壁部7に向かって付勢されるため、アルミ製の根太本体30の長さ寸法が外気温の変化を受けて変化しても、この外気温の変化に対応してスライド部材40が根太本体30の長手方向に沿ってスライドし、コイルばね50が弾性伸縮することで、各根太3の固定状態を一定に保つことができる。つまり、外気温の温度低下によって根太本体30の長さ寸法が縮む場合には、コイルばね50に付勢されるスライド部材40が壁部7に向かってスライドすることで、根太3の全長を伸ばすことができ、壁部6,7への固定が位置ズレを生じる程度にまで緩むことを防止できる。また、外気温の温度上昇によって根太本体30の長さ寸法が伸びる場合には、スライド部材40がコイルばね50の付勢に抗して根太本体30の端部30Bに向かってスライドすることで、根太3の全長を縮めることができ、壁部6,7に過大な押圧力が加えられることを抑制できる。
さらに、長さ調整具60,70の長さ調整によって壁部6,7に対する突っ張り力をも調整できる。
また、長さ調整具60の長さ調整によって根太本体30の長手方向における位置を調整でき、設置自由度を拡げることができる。
他方、根太3を壁部6,7間に突っ張り固定した状態で、長さ調整具70による長さ調整を行うことで、根太本体30の長手方向における位置を維持したままスライド部材40の根太本体30に対する位置を調整でき、壁部6,7に対する押圧力を調整できる。
(2)長さ調整具60の長さ調整によって根太本体30に対する当接部材62の突出量を調整できるため、長さ調整具60を根太本体30の位置調整や根太3の全長調整用として利用できる。他方、長さ調整具70の長さ調整によってスライド部材40に対する当接部材72の突出量を調整できるため、長さ調整具70を付勢力調整用として利用できる。このため、長さ調整具60,70の使い分けによって施工性の向上を図れる。さらに、長さ調整具60,70の双方を備えるため、調整幅の拡大を容易に行うことができる。
(3)連結体55A,55Bが、根太本体30に対するスライド部材40の傾きを抑制可能に長孔411,421に挿通されるため、スライド部材40の根太本体30に対する傾きによる根太3の浮き上がりを抑制できる。
(4)連結体55A,55Bの構成を2本の段付きビス551,552によって簡略化でき、段付きビス551,552がスライド方向に並んで位置するため、スライド部材40の根太本体30に対する傾きを抑制できる。
(5)根太本体30に対するスライド方向の位置を示す目印45がスライド部材40に設けられるため、目印45によってスライド部材40の根太本体30に対するスライド方向の位置を確認しつつスライド部材40を位置調整することで、コイルばね50の付勢力を予め定められた設定値に簡単に設定できる。
(6)高さ調整具80が根太本体30に取り付けられるため、例えば、根太3の下部に高さ位置調整用のパネル材(図示省略)などを設置しなくても、高さ調整具80によって根太3の高さ位置を適切な高さ位置に簡単に調整できる。
(7)デッキ1の施工において、先ず長さ調整具60の長さ調整によって根太3の全長を調整して当接部材62,72を壁部6,7に当接することで、壁部6,7に大きな押圧力を加えることなく、根太3の固定位置を設定(仮固定)できる。
さらに、長さ調整具70の長さ調整によってスライド部材40を根太本体30に対してスライドさせるため、根太本体30の位置変化を生じることなく根太3の固定位置を維持したまま、コイルばね50の付勢力を設定値に設定できる。
このように、長さ調整具60を根太3の全長調整に用い、長さ調整具70をコイルばね50の付勢力の調整に用いることで、施工性を向上できる。
【0038】
[変形例]
本発明は、以上の実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は、本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、長さ調整具60,70の双方を備えて構成されているが、これに限定されず、長さ調整具60,70のうちのいずれか一方だけを備えて構成されていてもよい。長さ調整具60の構成が省略される場合には、当接部材62は固定金具36に取り付けられ、また、長さ調整具70の構成が省略される場合には、当接部材72はスライド部材40に取り付けられる。これらの場合において、固定金具36やスライド部材40には、当接部材62,72ではなく、例えば緩衝材によって構成される当接部材が取り付けられてもよい。
【0039】
前記実施形態では、スライド方向に並んで位置する2本の段付きビス551,552によってスライド部材40を根太本体30に連結しているが、これに限定されず、例えば3本以上の段付きビス551,552を備えていてもよい。また、1本の段付きビス551(552)を備えていてもよく、この場合には、スライド部材40は根太延出板部35A,35Bによってスライド方向に案内されて、根太本体30に対する傾きが抑制される。
また、前記実施形態では、スライド方向に並んで位置する2本の段付きビス551,552を備えるため、根太延出板部35A,35Bを省略して根太本体30を構成しても、スライド部材40の根太本体30に対する傾きは、段付きビス551,552によって抑制可能である。
【0040】
前記実施形態では、スライド部材40には、根太本体30に対するスライド方向における所定範囲内の位置を示す目印45が設けられているが、この目印45の構成は省略されてもよい。
【0041】
前記実施形態では、根太本体30には高さ調整具80が取り付けられているが、当該高さ調整具80の構成を省略してもよい。この場合、根太3の下部に高さ位置調整用のパネル材(図示省略)などを設置して、根太3の高さ位置を調整する。
【0042】
前記実施形態では、長孔411,421がスライド部材40に形成され、連結体55A,55Bが根太本体30に固定されているが、これに限定されず、例えば長孔411,421が根太本体30に形成され、連結体55A,55Bがスライド部材40に形成されていてもよい。この場合固定金具37にも連結体55A,55Bが挿通される長孔が形成される。
【0043】
前記実施形態では、デッキ1の施工において、長さ調整具70の長さ調整によってコイルばね50の付勢力を調整しているが、これに限定されず、例えば長さ調整具60の長さ調整によってコイルばね50の付勢力を調整してもよい。なお、この場合、根太本体30は長手方向に変位を生じることとなる。