(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヒータスペーサの外側面にコネクタを装着するためのコネクタ装着部と、前記ヒータスペーサのみ又は前記ヒータスペーサ及び前記ヨークの両方に形成した、前記凹部又は前記溝から前記コネクタ装着部に連通する配線通し孔と、前記配線通し孔に通されて前記コイルと前記コネクタとを接続する配線と、を備えること
を特徴とする請求項4に記載の真空ポンプ。
前記加熱部は、前記加熱板又は前記ネジ溝排気部ステータ又は前記ヨークに取り付けた温度センサと、前記温度センサでの検出値に基づいて前記加熱板又は前記ネジ溝排気部ステータ又は前記ヨークが所定の温度となるように制御する温度制御手段と、を備えること
を特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ。
前記加熱部は、前記加熱板又は前記ネジ溝排気部ステータ又は前記ヨークに取り付けた温度センサと、前記温度センサでの検出値に基づいて前記加熱板又は前記ネジ溝排気部ステータ又は前記ヨークが所定の温度となるように制御する温度制御手段と、を備えること
を特徴とする請求項2ないし8のいずれかに記載の真空ポンプ。
前記加熱部は、前記コイルに取り付けた温度センサと、前記温度センサでの検出値に基づいて前記コイルが所定の温度を超えないように制御する保護制御手段と、を備えること
を特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ。
前記加熱部は、前記コイルに取り付けた温度センサと、前記温度センサでの検出値に基づいて前記コイルが所定の温度を超えないように制御する保護制御手段と、を備えること
を特徴とする請求項2ないし8又は請求項10のいずれかに記載の真空ポンプ。
前記ベーススペーサ及び前記ステータベースよりも前記ネジ溝排気部ステータを優先的に加熱できるようにする手段として、前記ネジ溝排気部ステータと前記ベーススペーサ又は前記ステータベースとの間に隙間を空けること又は熱伝導率がより低い中間部材を介在させることで、前記ネジ溝排気部ステータと前記ベーススペーサ又は前記ステータベースとが直接的に接触しないこと
を特徴とする請求項2ないし8、請求項10又は請求項12のいずれかに記載の真空ポンプ。
前記ヒータスペーサと前記加熱板にボルト通し孔を設け、これらのボルト通し孔に通された締結ボルトで前記ヒータスペーサと前記加熱板を一体にして前記ネジ溝排気部ステータに取り付ける構成、又は、前記ネジ溝排気部ステータと前記加熱板にボルト通し孔を設け、これらのボルト通し孔に通された締結ボルトで前記ネジ溝排気部ステータと前記加熱板を一体にして前記ヒータスペーサに取り付ける構成、又は、前記ネジ溝排気部ステータにボルト通し孔を設け、該ボルト通し孔に通された締結ボルトで、前記ネジ溝排気部ステータの下側端面が前記加熱板と当接するように前記ネジ溝排気部ステータを前記ベーススペーサ又は前記ステータベースに取り付ける構成と、
前記ヒータスペーサよりも前記ネジ溝排気部ステータを優先的に加熱できるようにする手段として、前記ヒータスペーサと前記加熱板の境界付近において、肉抜き部を設けることにより、前記加熱板から前記ヒータスペーサへの伝熱を低減する構成とを、採用したこと
を特徴とする請求項2ないし8、請求項10、請求項12、請求項13又は請求項15ないし16のいずれかに記載の真空ポンプ。
前記ポンプベースには、前記ヨークが配置された凹部と、コネクタを装着するためのコネクタ装着部と、前記コネクタ装着部から前記凹部に連通する配線通し孔と、前記配線通し孔に通されて前記コイルと前記コネクタとを接続する配線と、が設けられていること
を特徴とする請求項24ないし28のいずれかに記載の真空ポンプ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0048】
図1は、本発明の第1実施形態である真空ポンプ(ネジ溝ポンプ並行流タイプ)の断面図、
図2は
図1のA部拡大図、
図3は
図1のB部拡大図である。
【0049】
図1の真空ポンプP1は、例えば、半導体製造装置、フラット・パネル・ディスプレイ製造装置、ソーラー・パネル製造装置におけるプロセスチャンバやその他の密閉チャンバのガス排気手段等として利用される。この真空ポンプP1は、外装ケース1内に、回転翼13と固定翼14により気体を排気する翼排気部Ptと、ネジ溝19A、19Bを利用して気体を排気するネジ溝排気部Psと、これらの駆動系とを有している。
【0050】
外装ケース1は、筒状のポンプケース1Aとベーススペーサ1Bとをその筒軸方向に締結ボルトで一体に連結した円筒形になっている。ポンプケース1Aの上端部側はガス吸気口2として開口しており、ベーススペーサ1Bの下端部側面にはガス排気口3を設けてある。
【0051】
ガス吸気口2は、ポンプケース1A上縁のフランジ1Cに設けた図示しない締結ボルトにより、例えば半導体製造装置のプロセスチャンバ等、高真空となる図示しない密閉チャンバに接続される。ガス排気口3は、図示しない補助ポンプに連通接続される。
【0052】
ポンプケース1A内の中央部には各種電装品を内蔵する円筒状のステータベース4が設けられている。このステータベース4はベーススペーサ1Bの内底に一体に立設しているが、これとは別の実施形態として、例えば、そのステータベース4をベーススペーサ1Bとは別部品として形成してベーススペーサ1Bの内底にネジ止め固定してもよい。
【0053】
ステータベース4の内側には回転軸5が設けられており、回転軸5は、その上端部がガス吸気口2の方向を向き、その下端部がベーススペーサ1Bの方向を向くように配置してある。また、回転軸5の上端部はステータベース4の円筒上端面から上方に突出するように設けてある。
【0054】
また、前記回転軸5は、支持手段としての2組のラジアル磁気軸受10、10と1組のアキシャル磁気軸受11により径方向と軸方向が回転可能に支持され、この状態で、駆動手段としての駆動モータ12により回転駆動されるように構成してある。支持手段(ラジアル磁気軸受10、10、アキシャル磁気軸受11)と駆動手段(駆動モータ12)はステータベース4に収容してある。なお、ラジアル磁気軸受10、10、アキシャル磁気軸受11及び駆動モータ12は公知であるため、その具体的な詳細説明は省略する。
【0055】
ステータベース4の外側にはロータ6が設けられている。このロータ6は、ポンプケース1A及びベーススペーサ1Bに内包され、ステータベース4の外周を囲む円筒形状であって、その略中間に位置する環状板体の連結部60で、直径の異なる2つの筒体(第1の筒体61と第2の筒体62)をその筒軸方向に連結した形状になっている。
【0056】
第1の筒体61の上端には、その上端面を構成する部材として、端部材63が一体に設けられており、この端部材63を介して、前記ロータ6は前記回転軸5に固定され、回転軸5を介して、ラジアル磁気軸受10、10及びアキシャル磁気軸受11で、その軸心(回転軸5)周りに回転可能に支持されている。
【0057】
図1の真空ポンプP1におけるロータ6は一つのアルミ合金塊から切り出し加工したものであることより、ロータ6を構成する第1の筒体61、第2の筒体62、連結部60、及び端部材63は一部品として形成されているが、これとは別の実施例として、連結部60を境にして第1の筒体61と第2の筒体62とが別部品で構成されるロータを採用することも可能である。この場合、第1の筒体61はアルミニウム合金等の金属材料で形成し、第2の筒体62は樹脂で形成する等、第1の筒体61と第2の筒体62の構成材料を異なるものとしてもよい。
【0058】
《翼排気部Ptの詳細構成》
図1の真空ポンプP1では、ロータ6の略中間(具体的には、連結部60)より上流(ロータ6の略中間からロータ6のガス吸気口2側端部までの範囲)が翼排気部Ptとして機能する。以下、この翼排気部Ptを詳細に説明する。
【0059】
ロータ6の略中間より上流側のロータ6外周面、具体的には該ロータ6を構成する第1の筒体61の外周面には、複数の回転翼13が一体に設けられている。これら複数の回転翼13は、ロータ6の回転中心軸(回転軸5)若しくは外装ケース1の軸心(以下「真空ポンプ軸心」という)を中心として放射状に並んで配置されている。
【0060】
一方、ポンプケース1Aの内周側には複数の固定翼14が設けられており、これら複数の固定翼14もまた、真空ポンプ軸心を中心として放射状に並んで配置されている。
【0061】
そして、
図1の真空ポンプP1では、前記のように放射状に配置された回転翼13と固定翼14とが真空ポンプ軸心に沿って交互に多段に配置されることによって、真空ポンプP1の翼排気部Ptが構成されている。
【0062】
なお、前記いずれの回転翼13も、ロータ6の外径加工部と一体的に切削加工で切り出し形成したブレード状の切削加工品であって、気体分子の排気に最適な角度で傾斜している。前記いずれの固定翼14もまた、気体分子の排気に最適な角度で傾斜している。
【0063】
《翼排気部Ptによる排気動作説明》
以上の構成からなる翼排気部Ptでは、駆動モータ12の起動により、回転軸5、ロータ6および複数の回転翼13が一体に高速回転し、最上段の回転翼13がガス吸気口2から入射した気体分子に下向き方向の運動量を付与する。この下向き方向の運動量を有する気体分子が固定翼14によって次段の回転翼13側へ送り込まれる。以上のような気体分子への運動量の付与と送り込み動作とが繰り返し多段に行われることにより、ガス吸気口2側の気体分子はロータ6の下流に向かって順次移行するように排気される。
【0064】
《ネジ溝排気部Psの詳細構成》
図1の真空ポンプP1では、ロータ6の略中間(具体的には、連結部60)より下流(ロータ6の略中間からロータ6のガス排気口3側端部までの範囲)がネジ溝排気部Psとして機能する。以下、このネジ溝排気部Psを詳細に説明する。
【0065】
ロータ6の略中間より下流側のロータ6、具体的には該ロータ6を構成する第2の筒体62は、ネジ溝排気部Psの回転部材として回転する部分であって、ネジ溝排気部Psの内外2重円筒形のネジ溝排気部ステータ18A、18B間に所定のギャップを介して挿入・収容される構成になっている。
【0066】
内外2重円筒形のネジ溝排気部ステータ18A、18Bのうち、内側のネジ溝排気部ステータ18Aは、その外周面が第2の筒体62の内周面と対向するように配置された円筒形の固定部材であって、第2の筒体62の内周によって囲まれるように配置されている。
【0067】
一方、外側のネジ溝排気部ステータ18Bは、その内周面が第2の筒体62の外周面に対向するように配置された円筒形の固定部材であって、第2の筒体62の外周を囲むように配置されている。
【0068】
内側のネジ溝排気部ステータ18Aの外周部には、ロータ6の内周側(具体的には第2の筒体62の内周側)にネジ溝排気通路R1を形成する手段として、深さが下方に向けて小径化したテーパコーン形状に変化するネジ溝19Aを形成してある。ネジ溝19Aはネジ溝排気部ステータ18Aの上端から下端にかけて螺旋状に刻設してあり、このようなネジ溝19Aを備えたネジ溝排気部ステータ18Aにより、第2の筒体62の内周側にはネジ溝排気流路(以下「内側ネジ溝排気流路R1」という)が形成される。尚、この内側のネジ溝排気部ステータ18Aはその下端が
図2のように、加熱板23で支持されている。
【0069】
外側のネジ溝排気部ステータ18Bの内周部には、ロータ6の外周側(具体的には第2の筒体62の外周側)にネジ溝排気通路R2を形成する手段として、前記ネジ溝19Aと同様のネジ溝19Bを形成してある。このようなネジ溝19Bを備えたネジ溝排気部ステータ18Bにより、第2の筒体62の外周側にはネジ溝排気流路(以下「外側ネジ溝排気流路R2」という)が形成される。なお、この外側のネジ溝排気部ステータ18Bもその下端部が
図2のように、加熱板23で支持されている。
【0070】
図示は省略するが、先に説明したネジ溝19A、19Bを第2の筒体62の内周面又は外周面若しくはその両面に形成することで、前記のような内側ネジ溝排気流路R1又は外側ネジ溝排気流路R2が設けられるように構成してもよい。
【0071】
ネジ溝排気部Psでは、ネジ溝19Aと第2の筒体62の内周面でのドラッグ効果やネジ溝19Bと第2の筒体62の外周面でのドラック効果により、気体を圧縮しながら移送するため、ネジ溝19Aの深さは、内側ネジ溝排気流路R1の上流入口側(ガス吸気口2に近い方の流路開口端)で最も深く、その下流出口側(ガス排気口3に近い方の流路開口端)で最も浅くなるように設定してある。このことはネジ溝19Bも同様である。
【0072】
外側ネジ溝排気流路R2の上流入口は、多段に配置されている回転翼13のうち最下段の回転翼13Eと後述する連通開口部Hの上流端との間の隙間(以下「最終隙間G1」という)に連通している。また、同流路R2の下流出口は、
図3のように、環状合流路S1と横穴流路S2と環状合流路S3を通じて、ガス排気口3側に連通している。
【0073】
内側ネジ溝排気流路R1の上流入口は、ロータ6の略中間でロータ6の内周面(具体的には、連結部60の内面)に向って開口している。また、同流路R1の下流出口は、環状合流路S1と横穴流路S2と環状合流路S3を通じて、ガス排気口3側に連通している。
【0074】
環状合流路S1は、第2の筒体62の端部と後述の加熱部20との間に所定の隙間(
図1の真空ポンプP1では、ステータベース4の下部外周を一周する形態の隙間)を設けることによって、内側及び外側ネジ溝排気流路R1、R2の下流出口と横穴流路S2とに連通するように形成してあり、また、横穴流路S2は、外側ネジ溝排気部ステータ18Bの端部に複数の切欠きを設けることによって、環状合流路S1と環状合流路S3とガス排気口3とに連通するように形成してある。
【0075】
ロータ6の略中間には連通開口部Hが開設されており、連通開口部Hは、ロータ6の表裏面間を貫通するように形成されることで、ロータ6の外周側に存在する気体の一部を内側ネジ溝排気流路R1へ導くように機能する。かかる機能を備えた連通開口部Hは、例えば、
図1のように連結部60の内外面を貫通するように形成してもよい。また、
図1の真空ポンプP1では、前記連通開口部Hを複数設け、これら複数の連通開口部Hが真空ポンプ軸心に対して点対称となるように配置してある。
【0076】
《ネジ溝排気部Psにおける排気動作説明》
先に説明した翼排気部Ptの排気動作による移送で外側ネジ溝排気流路R2の上流入口や最終隙間G1に到達した気体分子は、外側ネジ溝排気流路R2や連通開口部Hから内側ネジ溝排気流路R1に移行する。この移行した気体分子は、ロータ6の回転によって生じる効果、すなわち第2の筒体62の外周面とネジ溝19Bでのドラッグ効果や、第2の筒体62の内周面とネジ溝19Aでのドラッグ効果によって、遷移流から粘性流に圧縮されながら環状合流路S1に向かって移行する。そして、環状合流路S1に到達した気体分子の粘性流は、横穴流路S2を通って環状合流路S3へ、そしてガス排気口3に流入し、ガス排気口3から図示しない補助ポンプを通じて外部へ排気される。
【0077】
《
図1の真空ポンプにおける加熱部の説明》
図1の真空ポンプP1において、ネジ溝排気部ステータ18A、18Bの下部には、生成物の付着を防止する手段として、加熱部20を設けている。具体的には、ネジ溝排気部ステータ18A、18Bとその下部に配置されている前記ステータベース4との間に、この加熱部20は設けられている。
【0078】
前記加熱部20は、
図2に示したように、凹部21を有するヒータスペーサ22と、凹部21内に配置されたヨーク25と、ヨーク25上に配置したコイル26と、ネジ溝排気部ステータ18A、18Bに当接し、凹部21を塞ぐようにヒータスペーサ22に取り付けられた加熱板23と、凹部21内を外気圧に設定可能とするシール手段24と、を備えている。
【0079】
そして、前記コイル26に高周波の交流電流を流すことによる電磁誘導加熱により、前記加熱部20は、ヨーク25及び加熱板23を加熱し、これにより前記ヒータスペーサ22、ネジ溝排気部ステータ18A、18B、ベーススペーサ1B及びステータベース4を加熱するように構成してある。
【0080】
ヒータスペーサ22は、その外側面にコネクタ100を装着するためのコネクタ装着部101と、前記凹部21からコネクタ装着部101に連通する配線通し孔102と、配線通し孔102に通されてコイル26とコネクタ100とを接続するコイル26の配線103と、を備えている。前記ヨーク25にも、前記コイル26の配線103や後述する温度センサ51の配線を通すため、配線通し孔102を設けている。
【0081】
また、この
図2に示すコネクタ100、コネクタ装着部101、配線通し孔102、配線103、及び温度センサ51の配線は水平位置(ベーススペーサ1Bの外周に向ける方向)に配置しているが、
図14に示したように垂直位置(ステータベース4の底面に向ける方向)に配置してもよい。
【0082】
前記シール手段24は、Oリングその他のシール部材で凹部21の開口周縁をシールすることにより、内側及び外側ネジ溝排気流路R1、R2等のように真空となる領域から凹部21内を切り離し、凹部21内だけを外気圧に設定可能としている。
【0083】
前記凹部21内は、配線通し孔102を介してヒータスペーサ22外部の大気が取り込まれることにより、大気圧となるように設定してある。なお、凹部21内には大気以外の外気を取り込むことも可能である。また、凹部21内の圧力は、大気圧に限定されることはなく、真空放電によるコイル26の絶縁被覆破壊が生じない圧力であればよい。
【0084】
ヨーク25とコイル26との間は、その間に介在する絶縁板27により電気的に絶縁されている。また、ヒータスペーサ22はアルミニウム合金で形成され、加熱板23とヨーク25は、鉄系材料(例えば、純鉄、S15C、S25C)や磁性を有するステンレス材料(例えば、フェライト系ステンレス材料、SUS430、SUS304、SUS420J2)等の磁性材料で形成され、前記コイル26は、良導体(例えば、銅材料)で形成されている。
【0085】
前記コイル26に高周波の交流電流を流すと、コイル26と加熱板23及びヨーク25とが電磁結合し、加熱板23及びヨーク25の内部に渦電流が発生する。そうすると、加熱板23やヨーク25には固有の電気抵抗があるため、加熱板23やヨーク25でジュール熱が発生する。また、加熱板23やヨーク25では鉄損発熱、コイル26では銅損発熱が生じ、これらの熱によって、ネジ溝排気部ステータ18A、18Bとヒータスペーサ22が優先的に加熱される。更に、ヒータスペーサ22からの伝熱によって、ベーススペーサ1Bやステータベース4も加熱される。
【0086】
コイル26から加熱板23までの距離と、絶縁板27の厚みに相当するコイル26からヨーク25までの距離は、必要に応じて適宜変更することができるが、ネジ溝排気部ステータ側での生成物の付着を防止する観点からは、その距離はヨーク25よりも加熱板23の方が有効に加熱できる距離に設定することが好ましい。
【0087】
また、前記加熱部20では、ヨーク25の断面形状をネジ溝排気部ステータ18A、18Bの端部に向かって上向きの溝形状とし、そのヨーク25の上端部を加熱板23に近づけて配置している。これにより、ヨーク25内のコイル26は磁性材料の加熱板23とヨーク25で囲まれた空間内に配置されるから、コイル26の磁束漏れが少なくなり、加熱効率の向上が図られている。
【0088】
さらに、前記加熱部20は、加熱板23に取り付けた温度センサ51と、温度センサ51での検出値に基づいて加熱板23が所定の温度となるように制御する温度制御手段(図示省略)と、を備えている。
【0089】
さらに、前記加熱部20は、コイル26に取り付けた温度センサ(図示省略)と、温度センサでの検出値に基づいてコイル26が所定の温度を超えないように制御する保護制御手段(図示省略)と、を備えてもよい。
【0090】
加熱板23への温度センサ51の取付け方式としては、
図2のように、凹部21側のみに開口したセンサ取付け穴50を加熱板23に形成し、このセンサ取付け穴50に温度センサ51を挿入して接着材等で固定する方式を採用することができる。温度センサ51の配線は、センサ取付け穴50から凹部21と配線通し孔102を通してコネクタ100に接続してある。
【0091】
図1の真空ポンプP1では、前記加熱部20がベーススペーサ1B及びステータベース4よりもネジ溝排気部ステータ18A、18Bを優先的に加熱できるようにする手段として、外側のネジ溝排気部ステータ18Bとベーススペーサ1Bとの間に隙間を空けること又は熱伝導率がより低いOリングからなる中間部材Mを介在させることで、外側のネジ溝排気部ステータ18Bとベーススペーサ1B又はステータベース4とが直接的に接触しないように構成している。なお、Oリング以外の部材を前記中間部材Mとして採用することもできる。
【0092】
図4は、加熱部の取付け構造例の説明図である。
【0093】
図1の真空ポンプP1において、加熱部20は、この
図4の取付け構造例のように、締結ボルトBT1でネジ溝排気部ステータ18A、18Bの端部に取り付け固定することができる。
【0094】
特に、この
図4の取付け構造例では、ヒータスペーサ22と加熱板23のそれぞれにボルト通し孔を設け、これらのボルト通し孔に通された締結ボルトBT1でヒータスペーサ22と加熱板23とを一体にしてネジ溝排気部ステータ18A、18Bの端部に取り付け固定することで、加熱部20とネジ溝排気部ステータ18A、18Bからなる加熱ユニットが構成されるようにしている。
【0095】
また、この
図4の取付け構造例では、ヒータスペーサ22とベーススペーサ1Bとに共通のボルト通し孔を設け、この共通のボルト通し孔に通された締結ボルトBT2で加熱部20をベーススペーサ1Bに後付け固定している。
【0096】
図4のように、加熱部20をベーススペーサ1Bに組み付けた後は、ネジ溝排気部ステータ18A、18Bの加熱状態を点検する作業において、特にそのネジ溝排気部ステータ18A、18B下端付近の表面温度を温度計測器で測定することが困難である。しかしながら、先に説明した加熱部20とネジ溝排気部ステータ18A、18Bからなる加熱ユニットの状態では、ネジ溝排気部ステータ18A、18Bの周りにベーススペーサ1Bが存在しないので、ネジ溝排気部ステータ18A、18B下端付近の表面温度を温度計測器で容易に測定することができる等、ネジ溝排気部ステータ18A、18Bの加熱状態を点検する際の作業性に優れる。
【0097】
また、この
図4の取付け構造例では、ヒータスペーサ22よりもネジ溝排気部ステータ18A、18Bを優先的に加熱できるようにする手段として、ヒータスペーサ22と加熱板23の境界付近において、前記締結ボルトBT1のボルト通し孔を内含する円周状の溝のような肉抜き部Nを設けることにより、加熱板23とヒータスペーサ22の接触面積を減らし、加熱板23からヒータスペーサ22への伝熱を低減している。
【0098】
前記加熱部20において、凹部21とヨーク25の固定方式としては、凹部21内にヨーク25を圧入する方式、図示しないネジ止め固定する方式、あるいは、凹部21内にヨーク25を接着する方式を採用することができる。
【0099】
また、前記加熱部20において、ヨーク25とコイル26の固定方式としては、ヨーク25内に樹脂等を充填することで、コイル26全体を樹脂等でモールドする方式を採用することができる。
【0100】
さらに、前記加熱部20において、加熱板23とネジ溝排気部ステータ18A、18Bの固定方式としては、例えば
図4のように加熱板23の表面に凸部を設け、この凸部を外側のネジ溝排気部ステータ18Bと内側のネジ溝排気部ステータ18Aとの間に圧入する方式、あるいは、前記凸部を外側のネジ溝排気部ステータ18Bと内側のネジ溝排気部ステータ18Aとの間に嵌め込み、それらを接着する方式を採用することができる。
【0101】
なお、前記加熱部20において、加熱板23とネジ溝排気部ステータ18A、18Bは前記の通り締結ボルトBT1によって締結されるので、先に説明した加熱板23とネジ溝排気部ステータ18A、18Bの圧入や接着による固定方式は、必要に応じて省略することも可能である。
【0102】
図5は、加熱部に冷却手段を設けた構造例の説明図である。
【0103】
図1の真空ポンプP1において冷却手段を取り付ける場合は、例えば、この
図5の構造例のように、加熱部20のヒータスペーサ22を鋳造で作製する際に、そのヒータスペーサ22の中に冷却手段として水冷管7を埋め込むことができる。
【0104】
ヒータスペーサ22とベーススペーサ1Bは別部品であり、ヒータスペーサ22は全体として比較的薄いドーナツ形状板のような形態であることから、鋳造によるヒータスペーサ22の作製作業、及び、その鋳造の際に前記水冷管7をヒータスペーサ22に鋳込む作業自体は比較的容易なものである。
【0105】
図6は、排気口での生成物の付着を加熱により防止する構造例の説明図である。
【0106】
この
図6の構造例は、排気口3を構成する排気管30の外周に伝熱管8を装着し、その伝熱管8端部のフランジ部を締結ボルトBT3で加熱部20のヒータスペーサ22外周部に取付けたものである。この構造例では、ヒータスペーサ22の熱で伝熱管8を介して排気管30を加熱し、排気口3における生成物の付着を防止する。
【0107】
伝熱管8を排気管30に装着する方式としては、例えば、伝熱管8をその軸方向に縦割りで複数(例えば2分割)に分割して取り付ける方式や、排気管30の直径以下に取り付ける方式を採用することができる。
【0108】
図7は、加熱部のヒータスペーサとベーススペーサとを一体化した構造例の説明図である。
【0109】
先に説明した加熱部20のヒータスペーサ22は、
図7の構造例のようにベーススペーサ1Bと一体化することができる。これにより、部品点数が削減でき、ベーススペーサ1Bに対するヒータスペーサ22の組み付け作業が不要となり、ポンプ組立精度の向上も図れる。
【0110】
図8は、加熱部のヒータスペーサとベーススペーサとステータベースとを一体化した構造例の説明図である。
【0111】
先に説明した加熱部20のヒータスペーサ22とベーススペーサ1Bとステータベース4とを
図8のように一体化することもでき、これにより、更なる部品点数の削減、及びポンプ組立精度の向上も図れる。
【0112】
この
図8の取付け構造例では、内側のネジ溝排気部ステータ18Aと加熱板23のそれぞれにボルト通し孔を設け、これらのボルト通し孔に通された締結ボルトBT4で内側のネジ溝排気部ステータ18Aと加熱板23とを一体にしてステータベース4に取り付け固定する構成と、外側のネジ溝排気部ステータ18Bにボルト通し孔を設け、該ボルト通し孔に通された締結ボルトBT4で、外側のネジ溝排気部ステータ18Bの下側の端面が加熱板23と当接するように外側のネジ溝排気部ステータ18Bをベーススペーサ1Bに取り付け固定する構成と、を採用している。
【0113】
図9は、温度センサの別の取付け例の説明図である。
【0114】
前記温度センサ51は、この
図9の取付け例のようにネジ溝排気部ステータ18A、18Bに埋め込む形式で取り付けてもよい。
図9の取付け例では、凹部21から加熱板23を通ってネジ溝排気部ステータ18A、18Bに達する長さのセンサ取付け穴50を形成し、このセンサ取付け穴50に温度センサ51を挿入して接着材等で固定している。この場合も、温度センサ51の配線は、センサ取付け穴50から凹部21と配線通し孔102を通してコネクタ100に接続してある。ネジ溝排気部ステータ18A、18Bの下端部と加熱板23の上端部との間にはシール手段52(例えば、Oリング)を配置してある。
【0115】
図10は、本発明の第2実施形態である真空ポンプ(ネジ溝ポンプ折り返し流タイプ)の断面図である。
【0116】
図1の真空ポンプP1は、ロータ6の略下半分(第2の筒体62)の内周側と外周側を並行してガスが流れる構成(ネジ溝ポンプ並行流タイプ)であるが、この
図10の真空ポンプP2は、そのタイプが異なる。
【0117】
すなわち、
図10の真空ポンプP2は、同図矢印Uで示したように、ロータ6を構成する第2の筒体62の下端側と上端側でガスの流れが上下方向に折り返すことにより、ロータ6の略下半分(第2の筒体62)の内周側と外周側とでガスが逆向きに流れる構成(ネジ溝ポンプ折り返し流タイプ)である。なお、その構成以外の真空ポンプP2の基本的な構成については
図1の真空ポンプP1と同様であるため、
図10では、
図1に示した部材と同一部材に同一の符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0118】
先に説明した
図1の真空ポンプP1で採用の加熱部20は、この
図10のようなネジ溝ポンプ折り返し流タイプの真空ポンプP2にも適用することができる。なお、
図10の真空ポンプP2に適用された加熱部20の具体的な構成は、
図1の真空ポンプP1で採用の加熱部20と同様であるため、その詳細説明は省略する。
【0119】
また、
図10に示したガス排気口3は、
図1に示したような排気口の構成をステータベース4に構成してもよい。
【0120】
図11は、本発明の第3実施形態である真空ポンプ(ネジ溝ポンプ単流タイプ)の断面図である。
【0121】
この
図11の真空ポンプP3は、
図1の真空ポンプP1において、内側のネジ溝排気部ステータ18Aを省略することで、ロータ6の外周側のみにネジ溝排気流路R2が形成されるように構成したものである。
【0122】
この
図11のような真空ポンプP3にも、
図1の真空ポンプP1で採用の加熱部20を適用することができる。特に、この
図11の適用例では、加熱部20の具体的な構成として、第2の筒体62に向かって突出した突起28を加熱板23に設けている。
【0123】
かかる突起28は、第2の筒体62の内周と対向するように配置されることでクリアランス・シールを形成し、ネジ溝排気流路R2の下流出口から環状合流路S1に到達したガスがロータ6の内側空間へ侵入することを減少する。
【0124】
なお、この
図11の加熱部20において、前記突起6以外の具体的な構成は、
図1の真空ポンプP1で採用の加熱部20と同様であるため、その詳細説明は省略する。
【0125】
図12は、加熱部のヨークを省略した構造例の説明図である。
【0126】
前記加熱部20のヒータスペーサ22は、磁性材料で形成することもできる。この場合には、
図12の構造例のように、ヨーク25(
図1参照)を省略することができ、これにより、部品点数の削減を図れる。
【0127】
この
図12の構造例においては、前記の通り、ヒータスペーサ22が磁性材料であるため、コイル26に高周波の交流電流が流れると、コイル26と加熱板23との電磁結合だけでなく、更に、コイル26とヒータスペーサ22とが電磁結合し、加熱板23の他、ヒータスペーサ22の内部にも渦電流が生じる。これにより、ヒータスペーサ22でも十分なジュール熱が発生し、ヒータスペーサ22からの伝熱によってベーススペーサ1Bやステータベース4を加熱することができる。
【0128】
図13は、コイルの磁束漏れをより一層効果的に減少し得る構造例の説明図である。
【0129】
前記加熱部20では、コイル26の配線103や温度センサ51の配線を通すため、前記の通り、ヨーク25にも配線通し孔102を形成しているので、コイル26の磁束がその配線通し孔102を通じて外部に漏れる可能性がある。
【0130】
この一方、
図13の構造例では、磁束漏れ低減手段として、ヨーク25からコネクタ装着部101までの配線通し孔102全範囲及びコネクタ装着部101の一部に磁性材料からなるシールドパイプ200を装着し、また、コネクタ100の周囲に磁性材料からなるシールド板201を設置しているため、前記のような磁束漏れを効果的に減少することができる。
【0131】
なお、
図1の真空ポンプP1でも、この
図13の構造例を適用することで、磁束漏れの減少を図っている。また、この
図13の構造例は、
図1の真空ポンプP1のように、加熱部20の凹部21内が外気圧となる構成のものだけでなく、そのような凹部21内が真空となる構成のものにも適用することができる。
【0132】
ところで、この
図13の構造例では、シールドパイプ200とシールド板201を併用したが、シールドパイプ200とシールド板201のいずれか一方だけでも、十分に磁束漏れを減少可能であるなら、他方を省略することもできる。
【0133】
図14は加熱部の構造の別例の説明図、
図15は
図14に示した加熱部の部分拡大図である。
【0134】
この
図14に示した加熱部70は、
図1に示した本発明の第1実施形態である真空ポンプ(ネジ溝ポンプ並行流タイプ)に適用している。
図1と同符号の構成の詳細説明は省略する。
【0135】
図14の加熱部70は、
図15に示したように、凹部72を有するヒータスペーサ71と、凹部72内に配置されたヨーク73と、
図14に示したネジ溝排気部ステータ18A、18Bの下側端面に当接し、凹部72を塞ぐようにヒータスペーサ71に取り付けられた溝75を有する加熱板74と、溝75内に配置したコイル77と、凹部72及び溝75内を外気圧に設定可能とするシール手段として弾性を持つOリング83と、を備えている。
【0136】
そして、コイル77に高周波の交流電流を流すことによる電磁誘導加熱により、加熱部70は、ヨーク73及び加熱板74を加熱し、これによりヒータスペーサ71、ネジ溝排気部ステータ18A、18B、ベーススペーサ1B及びステータベース4を加熱するように構成してある。
【0137】
前記Oリング83は、
図15に示した凹部72及び溝75の開口周縁をシールすることにより、
図1に示した内側及び外側ネジ溝排気流路R1、R2等のように真空となる領域から凹部72及び溝75内を切り離し、凹部72及び溝75内を外気圧に設定可能としている。
【0138】
前記Oリング83を備える構成の場合は、
図15に示したように、Oリング83を加熱板74に取り付けるOリング溝84と、Oリング溝84の開口端面から底面までの間に設けられる最小直径部85と、を有し、最小直径部85は、Oリング83の内径より大きいこと又はOリング溝84の縁に設けた突起部86で構成されることにより、Oリング83の脱落を防止するOリング脱落防止手段として機能するように構成してもよい。
【0139】
さらに、
図15に示したようなOリング溝84及びOリング83をヒータスペーサ71に設置してもよく、この際には前記Oリング脱落防止手段を削除してもよい。
【0140】
図15において、加熱板74とコイル77との間は、その間に介在する絶縁板81により電気的に絶縁されている。ヒータスペーサ71はアルミニウム合金で形成され、加熱板74とヨーク73は、鉄系材料(例えば、純鉄、S15C、S25C)や磁性を有するステンレス材料(例えば、フェライト系ステンレス材料、SUS430、SUS304、SUS420J2)等の磁性材料で形成され、コイル77は、良導体(例えば、銅材料)で形成されている。
【0141】
前記コイル77に高周波の交流電流を流すと、コイル77と加熱板74及びヨーク73とが電磁結合し、加熱板74及びヨーク73の内部に渦電流が発生する。そうすると、加熱板74やヨーク73には固有の電気抵抗があるため、加熱板74やヨーク73でジュール熱が発生する。また、加熱板74やヨーク73では鉄損発熱、コイル77では銅損発熱が生じ、これらの熱によって、ネジ溝排気部ステータ18A、18Bとヒータスペーサ71が優先的に加熱される。更に、ヒータスペーサ71からの伝熱によって、ベーススペーサ1Bやステータベース4も加熱される。
【0142】
コイル77からヨーク73までの距離と、絶縁板81の厚みに相当するコイル77から加熱板74までの距離は、必要に応じて適宜変更することができるが、ネジ溝排気部ステータ側での生成物の付着を防止する観点からは、その距離はヨーク73よりも加熱板74の方が有効に加熱できる距離に設定することが好ましい。
【0143】
前記加熱部70では、ヨーク73の断面形状は板形状とし、そのヨーク73の上端部を加熱板74に近づけて配置している。これにより、加熱板74内のコイル77は磁性材料の加熱板74とヨーク73で囲まれた空間内に配置されるから、コイル77の磁束漏れが少なくなり、加熱効率の向上が図られている。
【0144】
また、前記加熱部70は、センサ取付け穴78に取り付けた温度センサ79と、温度センサ79での検出値に基づいて加熱板74が所定の温度となるように制御する温度制御手段(図示省略)と、を備えている。
【0145】
さらに、前記加熱部70は、コイル77に取り付けた温度センサ80と、温度センサ80での検出値に基づいてコイル77が所定の温度を超えないように制御する保護制御手段(図示省略)と、を備えてもよい。
【0146】
前記加熱板74への温度センサ79の取付けは、
図15に示したように、溝75側のみに開口したセンサ取付け穴78を加熱板74に形成し、このセンサ取付け穴78に温度センサ79を挿入している。また、コイル77への温度センサ80の取付けは、
図15に示したように、コイル77の表面に温度センサ80を貼り付けてある。そして、これら2つの温度センサ79、80のうち、温度センサ79の配線は、センサ取付け穴78から溝75と凹部72と配線通し孔102を通してコネクタ100に接続し、また、温度センサ80の配線は、溝75から凹部72と配線通し孔102を通してコネクタ100に接続してある。
【0147】
図15の加熱部70では、前記溝75及びセンサ取付け穴78内に樹脂82を充填することで、コイル77、絶縁板81、温度センサ79、80をモールドしている。また、コイル77の脱落を防止する手段として、前記溝75の縁に設けた突起部76で構成した脱落防止手段を備えてもよい。
【0148】
図15の加熱部70は、ヨーク73をヒータスペーサ71の凹部72内に締結ボルトBT5で固定した構成を採用している。これとは違う構成として、図示は省略するが、かかる加熱部70は、前記凹部72を削除したヒータスペーサ71と、ヨーク73とを備え、かつ、該ヨーク73を内包するように前記溝75を加熱板74に形成した構成と、ヒータスペーサ71の上に締結ボルトBT5でヨーク73を固定した構成と、を採用してもよい。このような構成からなる加熱部70によると、前記凹部72を省略することができ、これにより加工部の削減を図れる。なお、このような構成からなる加熱部70は、機能的には
図14、15に示した構成の加熱部70と同様であるため、その詳細説明は省略する。
【0149】
以上説明したように、第1から第3実施形態の真空ポンプP1、P2、P3では、加熱部20(70)の具体的な構成として、コイル26(77)に交流電流を流すことによる電磁誘導加熱でヨーク25(73)及び加熱板23(74)を加熱し、これによりヒータスペーサ22(71)、ネジ溝排気部ステータ18A、18B、ベーススペーサ1B及びステータベース4を加熱する構成を採用した。このため、加熱部20(70)によるベーススペーサ1B及びステータベース4の加熱によってベーススペーサ1B及びステータベース4内での生成物の付着も防止できることより、真空ポンプ全体としての生成物の付着量を低減することができる。
【0150】
また、第1から第3実施形態の真空ポンプP1、P2、P3によると、加熱部20(70)の具体的な構成として、シール手段24(83)により外気圧に設定可能なヒータスペーサ22の凹部21(加熱板74の溝75)内に、コイル26(77)が配置される構成、及び、凹部21(溝75)内を大気圧又はそれに近い圧力等、真空放電が生じない外気圧に設定する構成を採用したため、真空放電によるコイル26(77)の絶縁被覆破壊を防止し、コイル26(77)の長寿命化を図ることができる。また、コイル26(77)の絶縁被覆破壊によるショート等、真空ポンプの電気系統の故障を防止でき、真空ポンプの長期間安定な連続運転が可能になる。
【0151】
更に、第1から第3実施形態の真空ポンプP1、P2、P3にあっては、凹部21(溝75)内は例えば大気圧又はそれに近い圧力に設定されるから、凹部21(溝75)内のコイル26(77)の配線103をコネクタ100に接続する際、そのコネクタ100として高価な真空コネクタを使用する必要がなく、安価なコネクタの使用で済み、真空ポンプ全体のコスト低減も図れる。
【0152】
図16は、本発明の第4実施形態である真空ポンプ(ネジ溝ポンプ平行流タイプ)の断面図、
図17(a)は
図16のA部拡大図、
図17(b)は加熱板の拡大図である。
【0153】
図16の真空ポンプP4において、
図1の真空ポンプP1と同一の部材には同一の符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0154】
《
図16の真空ポンプにおける加熱部の説明》
図16の真空ポンプP4もまた、
図1の真空ポンプP1と同じく、ネジ溝排気部ステータ18A、18Bの下部に、生成物の付着を防止する手段として、加熱部20を設けている。具体的には、この
図16の加熱部20もまた、
図1の加熱部20と同じく、ネジ溝排気部ステータ18A、18Bとその下部に配置されているステータベース4との間に設けられている。
【0155】
図16の加熱部20は、
図17に示したように、内側のネジ溝排気部ステータ18A(以下必要に応じて「内側ネジ溝排気部ステータ18A」という)又は外側のネジ溝排気部ステータ18B(以下必要に応じて「外側ネジ溝排気部ステータ18B」という)のいずれかに当接する加熱板23と、ポンプベース1Dに配置されたヨーク25と、ヨーク25上に配置したコイル26と、を備えている。なお、ポンプベース1Dは、
図1のベーススペーサ1Bとステータベース4が一体になったものである。
【0156】
そして、前記コイル26に高周波の交流電流を流すことによる電磁誘導加熱により、
図17の加熱部20は、加熱板23及びヨーク25を加熱し、これにより内側ネジ溝排気部ステータ18A、外側ネジ溝排気部ステータ18B、及びポンプベース1Dを加熱するように構成してある。更に、この加熱部20はポンプベース1Dからの伝熱によってステータコラム4も加熱することができる。
【0157】
図17の加熱部20では、ポンプベース1D側に凹部21を設け、凹部21の開口付近に前記加熱板23を配置するとともに、その凹部21内に前記ヨーク25を配置している。当該凹部21は、ステータコラム4の下部外周を1周する環状の形態であって、ポンプベース1D側からネジ溝排気部ステータ18A、18Bの端部に向かって開口するように形成してあるが、このような凹部21は省略することもできる。
【0158】
図17の加熱部20における加熱板23は、前記凹部21の開口とネジ溝排気部ステータ18A、18Bの端部との間に位置し、かつ、内側ネジ溝排気部ステータ18A、外側ネジ溝排気部ステータ18Bのいずれかに当接する2以上の分離加熱板23A、23Bとして、複数に分離している。
【0159】
前記のように複数に分離した加熱板23の具体的な構造例として、
図16の真空ポンプP4では、内側ネジ溝排気部ステータ18A、外側ネジ溝排気部ステータ18Bが筒状であること、及び、凹部21が環状であることに対応して、ステータコラム4の下部外周を1周する内外2重のリング状板材を用意し、それらを内側の分離加熱板23A及び外側の分離加熱板23Bとして採用している。
【0160】
また、
図16の真空ポンプP4では、内側の分離加熱板23Aは、内側ネジ溝排気部ステータ18Aの端部に直接当接して取り付けられることによって、内側ネジ溝排気部ステータ18Aを集中的に加熱する手段として機能するように設けている。一方、外側の分離加熱板23Bは、外側ネジ溝排気部ステータ18Bの端部に直接当接して取り付けられることによって、外側ネジ溝排気部ステータ18Bを集中的に加熱する手段として機能するように設けている。
【0161】
図17の加熱部20でも、ヨーク25とコイル26との間は、その間に介在する絶縁板27により電気的に絶縁されている。また、
図17の加熱部20における加熱板23とヨーク25も、鉄系材料(例えば、純鉄、S15C、S25C)や磁性を有するステンレス材料(例えば、フェライト系ステンレス材料、SUS430、SUS304、SUS420J2)等の磁性材料で形成され、前記コイル26は、良導体(例えば、銅材料)で形成されている。
【0162】
図17を参照すると、ポンプベース1Dには、コネクタ100を装着するためのコネクタ装着部101と、コネクタ装着部101から前記凹部21に連通する配線通し孔102と、配線通し孔102に通されてコイル26とコネクタ30とを接続するコイル26の配線103と、が設けられている。前記ヨーク25にも、前記コイル30の配線103や後述するセンサ51の配線を通すため、配線通し孔102を設けている。また、
図17に示すコネクタ100、コネクタ装着部101、配線通し孔102、配線103、及びセンサ51の配線は水平位置(ベース1Bの外周に向ける方向)に配置しているが、垂直位置(ベース1Bの底面に向ける方向)に配置してもよい。
【0163】
図17において、コネクタ100から配線103を介してコイル26に高周波の交流電流を流すと、コイル26と加熱板23(分離加熱板23A、23B)及びヨーク25とが電磁結合し、加熱板23及びヨーク25の内部に渦電流が発生する。そうすると、加熱板23やヨーク25には固有の電気抵抗があるため、加熱板23やヨーク25でジュール熱が発生する。また加熱板23やヨーク25では鉄損発熱、コイル26では銅損発熱が生じる。これらの熱のうち、特に加熱板23で発生した熱により内側及び外側ネジ溝排気部ステータ18A、18Bが優先的に加熱され、また、ヨーク25で発生した熱によりベーススペーサ1Bが優先的に加熱される。更に、ポンプベース1Dからの伝熱によってステータコラム4も加熱される。
【0164】
内外の分離加熱板23A、23Bは、同じ材質の磁性材料で形成することによって、分離加熱板23A、23Bごとの発熱量が略同じになるように設定してもよいが、これとは別の実施形態として、それらを異なる材質の磁性材料で形成することにより、分離加熱板23A、23Bごとに発熱量が異なるように構成してもよい。
【0165】
内側ネジ溝排気部ステータ18A、外側ネジ溝排気部ステータ18Bは、その質量、材質、熱損失の違い等から熱容量が異なる場合がある。例えば、内側ネジ溝排気部ステータ18Aよりも外側ネジ溝排気部ステータ18Bの熱容量の方が大きい場合もある。この場合は、例えば、外側の分離加熱板23Bを純鉄系の材料で形成する一方、内側の分離加熱板23Aをステンレス材料で形成することで、内側の分離加熱板23Aの発熱量よりも外側の分離加熱板23Bの発熱量の方が大きくなるように設定することができる。これにより、加熱板23は、内側ネジ溝排気部ステータ18Aと外側ネジ溝排気部ステータ18Bが略同じ温度となるように加熱したり、それぞれの目標温度となるように加熱したりする等、ネジ溝排気部ステータ18A、18Bの熱容量に応じてネジ溝排気部ステータ18A、18Bを加熱することができる。
【0166】
他に材質を変更する方法としては、材料に添加物を加える方法がある。例えば、分離加熱板の材料にセラミックスを添加し、材料の電気抵抗等の物性を部分的に変化させる。それによって、分離加熱板の全体のみならず一部分についての発熱量の変更が可能となる。
【0167】
図18から
図22は、先に説明した加熱板23の分離に関する他の実施形態の説明図である。
【0168】
これらの
図18から
図22に示された加熱板23もまた、先に説明した
図16、
図17の加熱板23と同じく、内外の分離加熱板23A、23Bとして分離しているが、その具体的な分離構成は以下のように異なる。
【0169】
図16、
図17の加熱板23において、これを構成する内外の分離加熱板23A、23Bはその分離による隙間部G3(以下「分離隙間G3」という)を基準として左右対称の断面形状になっている。この一方、
図18、
図19の加熱板23において、これを構成する内外の分離加熱板23A、23Bは、その分離隙間G3を基準として左右非対称の断面形状であることにより、分離加熱板23A、23Bごとに発熱範囲及び発熱量が異なる構成になっている。
【0170】
特に、
図18の加熱板23では、内外の分離加熱板23A、23Bの幅L1、L2が異なることにより、内外の分離加熱板23A、23Bは、その分離隙間G3を基準として左右非対称の断面形状になっている。ここで、例えば、内側ネジ溝排気部ステータ18Aよりも外側ネジ溝排気部ステータ18Bの熱容量の方が大きい場合は、外側ネジ溝排気部ステータ18Bの方が温度上昇し難い。この場合は、この
図18のように、内側の分離加熱板23Aの幅L2よりも外側の分離加熱板23Aの幅L1を大きく設定する。これにより、加熱板23は、内側ネジ溝排気部ステータ18A、外側ネジ溝排気部ステータ18Bが略同じ温度となるように加熱したり、それぞれの目標温度となるように加熱したりする等、ネジ溝排気部ステータ18A、18Bの熱容量に応じてネジ溝排気部ステータ18A、18Bを加熱することができる。
【0171】
この一方、
図19の加熱板23では、内外の分離加熱板23A、23Bの厚さH1、H2が異なることにより、内外の分離加熱板23A、23Bは、その分離隙間G3を基準として左右非対称の断面形状になっている。ここで、例えば、内側ネジ溝排気部ステータ18Aよりも外側ネジ溝排気部ステータ18Bの熱容量の方が大きい場合には、この
図19のように、内側の分離加熱板23Aの厚さH2よりも外側の分離加熱板23Bの厚さH1を大きく設定する。これにより、加熱板23は、内側ネジ溝排気部ステータ18A、外側ネジ溝排気部ステータ18Bが略同じ温度となるように加熱したり、それぞれの目標温度となるように加熱したりする等、ネジ溝排気部ステータ18A、18Bの熱容量に応じてネジ溝排気部ステータ18A、18Bを加熱することができる。
【0172】
図20の加熱板23において、これを構成する内外の分離加熱板23A、23Bは、内側の分離加熱板23Aを無垢材で形成し、外側の分離加熱板23Bを積層材で形成したものであり、これにより、内側の分離加熱板23Aよりも外側の分離加熱板23Bの方が発熱量は少なくなるように設定してある。この設定は、内側ネジ溝排気部ステータ18Aの熱容量よりも外側ネジ溝排気部ステータ18Bの熱容量の方が小さい場合の例であり、この例とは逆の場合は、内側の分離加熱板23Aを積層材で形成し、外側の分離加熱板23Bを無垢材で形成すればよい。
【0173】
前記のような積層材を採用した更に別の実施形態として、内外の分離加熱板23A、23Bを双方とも積層材で形成するとともに、その積層数を内外の分離加熱板23A、23Bで変えることにより、分離加熱板23A、23Bごとに発熱量が異なるように設定することも可能である。
【0174】
図21、
図22の加熱板23において、これを構成する内外の分離加熱板23A、23Bは、その分離した部分が上下方向に重なることによって、分離隙間G3を基準として左右非対称の断面形状であることに加え、当該分離隙間G3(加熱板23の分離した部分)がジグザグに折れ曲がった通路形状になっている。
【0175】
前記分離隙間G3は空隙であるため、そのような分離隙間G3から加熱板23上部側へのコイル26の磁束漏れは避けられない。しかしながら、
図21、
図22のような分離加熱板23A、23Bの重ね構造によると、その分離隙間G3が前記のようにジグザグに折れ曲がった通路形状になることで、分離隙間G3の長さが増えるため、分離隙間G3から加熱板23上部側へのコイル26の磁束漏れを効果的に減少させることができる。
【0176】
特に、
図21のような分離加熱板23A、23Bの重ね構造では、内外の分離加熱板23A、23Bの幅L1、L2も異なる構成になっているので、分離加熱板23A、23Bごとに発熱範囲及び発熱量が異なり、ネジ溝排気部ステータ18A、18Bの熱容量に応じて、ネジ溝排気部ステータ18A、18Bを加熱することもできる。
【0177】
また、
図16の真空ポンプP4では、前記加熱部20がポンプベース1Dよりも内側ネジ溝排気部ステータ18Aや外側ネジ溝排気部ステータ18Bを優先的に加熱できるようにする手段として、内側ネジ溝排気部ステータ18Aとステータコラム4との間に空隙G2を設けたり、外側ネジ溝排気部ステータ18Bとポンプベース1Dとの間に空隙G2を設けたりすることで、内側ネジ溝排気部ステータ18Aとステータコラム4との接触面積及び外側ネジ溝排気部ステータ18Bとポンプベース1Dとの接触面積が、いずれも小さくなるように設定している。
【0178】
図16、
図17において、前記コイル26から前記加熱板23までの距離と、絶縁板27の厚みに相当するコイル26からヨーク25までの距離は、必要に応じて適宜変更することができるが、ネジ溝排気部ステータ18A、18B側での生成物の付着を効果的に防止する観点からは、その距離は、ヨーク25よりも加熱板23の方を有効に加熱できる距離に設定することが好ましい。
【0179】
図16、
図17の加熱部20では、ヨーク25の断面形状を内側及び外側ネジ溝排気部ステータ18A、18Bに向かって上向きの溝形状とし、そのヨーク25の上端部を加熱板23に近づけて配置している。これにより、ヨーク25内のコイル26は磁性材料の加熱板23とヨーク25で囲まれた空間内に配置されるから、コイル26の磁束漏れは少ない。
【0180】
また、
図16、
図17の加熱部20では、ヨーク25と加熱板23との間に所定の隙間部を設けている。これにより、加熱板23で発生した熱がヨーク25を通じてポンプベース1D側に逃げ難くなり、加熱板23によるネジ溝排気部ステータ18A、18Bの優先的な加熱が可能になる。
【0181】
図16の真空ポンプP4は、更に、
図17にも示したように、ポンプ内の温度を検出する温度検出センサ51と、温度検出センサ51での検出値に基づいて加熱板23が所定の温度となるように制御する温度制御手段(図示省略)と、を備えている。なお、この
図16の真空ポンプP4では、
図17のように、外側ネジ溝排気部ステータ18Bに温度検出センサ51を取り付けているが、その取り付け位置に限定されることはない。例えば、内側ネジ溝排気部ステータ18Aや加熱板23に温度検出センサ51を取り付けてもよい。
【0182】
図16、
図17の加熱部20は、前記コイル26に取り付けたコイル温度検出センサ(図示なし)と、前記コイル温度検出センサでの検出値に基づいて前記コイルが所定の温度を超えないように制御する保護制御手段(図示省略)と、を備えてもよい。
【0183】
また、
図16の真空ポンプP4では、加熱板23に貫通孔を形成し、この貫通孔と凹部21と配線通し孔102とを通じて、温度検出センサ51及びコイル温度検出センサの配線をコネクタ100に接続しているが、これとは別の接続方式を採用してもよい。
【0184】
図16、
図17の加熱部20において、凹部21とヨーク25の固定方式としては、例えば、凹部21内にヨーク25を圧入する方式、図示しないネジ止め固定する方式、あるいは、凹部21内にヨーク25を接着剤で固定する方式を採用することができる。
【0185】
また、
図16、
図17の加熱部20において、ヨーク25とコイル26の固定方式としては、ヨーク25内に樹脂等を充填することで、コイル26全体を樹脂等でモールドする方式を採用することができる。
【0186】
さらに、
図16、
図17の加熱部20において、加熱板23と内側及び外側ネジ溝排気部ステータ18A、18Bの固定方式としては、加熱板23(分離加熱板23A、23B)の表面に設けた凸部を外側ネジ溝排気部ステータ18Bと内側ネジ溝排気部ステータ18Aとの間に嵌め込み、加熱板23とネジ溝排気部ステータ18A、18Bとを締結ボルトで固定する方式(ボルト固定方式)や、それらを接着剤で固定する方式(接着固定方式)等を採用することができ、また、前記ボルト固定方式と接着固定方式を併用してもよい。
【0187】
図16、
図17の加熱部20では、コイル26の配線103や温度センサ51及びコイル温度検出センサの配線を通すため、ヨーク25にも配線通し孔102を形成しているので、コイル26の磁束がその配線通し孔102を通じて外部に漏れる可能性がある。このため、この
図16、
図17の加熱部20では、磁束漏れ低減手段として、ヨーク25からコネクタ装着部101までの配線通し孔102全範囲に磁性材料からなるシールドパイプ200を装着し、また、コネクタ100の周囲に磁性材料からなるシールド板201を設置している。なお、シールドパイプ200とシールド板201いずれか一方だけでも、十分に磁束漏れを防止可能であるなら、他方を省略することもできる。
【0188】
図16の真空ポンプP4は、加熱部20とポンプベース1Dとステータコラム4とを一体化した構造になっているが、これらは別部品として形成することもできる。
【0189】
以上説明したように、第4実施形態の真空ポンプP4にあっては、加熱部20の具体的な構成として、コイル26に交流電流を流すことによる電磁誘導加熱で加熱板23及びヨーク25を加熱し、これにより内側ネジ溝排気部ステータ18A、外側ネジ溝排気部ステータ18B、及びポンプベース1Dを加熱する機能を備えた。このため、加熱部20によるポンプベース1Dの加熱によってポンプベース1D内での生成物の付着も防止でき、これに加えて更に、ポンプベース1Dからの伝熱によってステータコラム4も加熱でき、ステータコラム4での生成物の付着も防止できることより、真空ポンプP4全体としての生成物の付着量を低減できる。
【0190】
また、第4実施形態の真空ポンプP4では、配線通し孔102に磁性材料からなるシールドパイプ200を装着する構成や、コネクタ100の周囲に磁性材料からなるシールド板201を設置した構成を採用したため、シールドパイプ200やシールド板201によってコイル26の磁束漏れを減らすことができ、漏れ磁束によって真空ポンプP4内部の電装部品が誤動作する等、磁束漏れによる真空ポンプ電気系統のトラブルを効果的に防止することができる。
【0191】
更に、第4実施形態の真空ポンプP4によると、加熱板20の具体的な構成として、加熱板23は、内側及び外側ネジ溝排気部ステータ18A、18Bのいずれかに当接する2以上の分離加熱板23A、23Bとして、複数に分離した構成を採用した。このため、例えば、当該加熱板23を内側及び外側ネジ溝排気部ステータ18A、18Bの端部に当接させて取付けるポンプ組立て段階において、加熱板23は2以上に分離した状態の分離加熱板23A、23Bとして内外それぞれのネジ溝排気部ステータ18A、18Bに個別に取り付けることができる。従って、内側及び外側ネジ溝排気部ステータ18A、18Bにおいてその長さ方向の加工寸法誤差や取付け寸法誤差が存在する場合でも、これらの誤差の影響を受けることなく、加熱板23を内側及び外側ネジ溝排気部ステータ18A、18Bに容易に取り付けることができるし、内側及び外側ネジ溝排気部ステータ18A、18Bにおける長さ方向の加工寸法や取り付け寸法を高精度なものとする必要がない点で、真空ポンプP4全体のコスト低減も図ることができる。
【0192】
図18から
図22に示した加熱板23の構造例や、内外の分離加熱板23A、23Bでその材質を異なる構成例は、それぞれ単独で採用できるが、必要に応じて、それらを組み合わせて採用してもよい。
【0193】
また、第4実施形態の真空ポンプP4では、ネジ溝排気部Psがネジ溝ポンプ並行流タイプを構成しているが、このタイプのネジ溝排気部Psを限定するものではなく、ネジ溝排気部ステータを持つ全ての真空ポンプにも適応することができる。適用できる真空ポンプとしては、例えば、外側ネジ溝排気部ステータのみのネジ溝排気部Psを構成するタイプ、あるいは外側ネジ溝によって排気した後に内側ネジ溝によって繋ぎ排気するネジ溝排気部Psを構成するタイプがある。
【0194】
以上、説明した第1ないし第4実施形態の真空ポンプP1、P2、P3、P4では、翼排気部Ptとネジ排気部Psとを構成しているが、本発明は、ネジ排気部Psのみのものにも適用することができる。