特許第6386930号(P6386930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6386930換気装置およびこれを備える原子炉建屋、ならびに換気方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386930
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】換気装置およびこれを備える原子炉建屋、ならびに換気方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 9/06 20060101AFI20180827BHJP
   G21D 3/08 20060101ALI20180827BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20180827BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   G21C9/06
   G21D3/08 F
   F24F7/06 Q
   F24F13/02 Z
   F24F13/02 D
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-21253(P2015-21253)
(22)【出願日】2015年2月5日
(65)【公開番号】特開2016-142716(P2016-142716A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田原 美香
(72)【発明者】
【氏名】竹内 裕行
(72)【発明者】
【氏名】吉野 浩一
(72)【発明者】
【氏名】村松 浩一
(72)【発明者】
【氏名】青木 一義
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000-98075(JP,A)
【文献】 特開2013-228218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 9/06
F24F 7/06
F24F 13/02
G21D 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスを含むガスを処理することで発熱し、処理した前記ガスを流出させる発熱部と、
前記発熱部の下流側の位置に設けられ、前記発熱部から流出する前記ガスによる気流を遮断、封鎖可能な封鎖部材と、
前記発熱部による発熱を原因として、前記気流を封鎖の状態から通過の状態に移行するように前記封鎖部材を動かす移行機構と
を具備する換気装置。
【請求項2】
前記封鎖部材が、前記発熱部の下流側にある壁面開口を塞ぐように自重に抗して位置固定された板部材であり、
前記移行機構が、前記発熱部の前記発熱が伝導する位置に設けられている
請求項1記載の換気装置。
【請求項3】
前記発熱部の前記発熱を電力に変換する熱電変換部をさらに具備し、
前記移行機構は、前記熱電変換部が発生する前記電力に基づいて前記封鎖部材を動作させる
請求項1記載の換気装置。
【請求項4】
前記封鎖部材は、前記発熱部の下流側にある壁面開口を塞ぐことができるとともに、前記壁面開口が設けられる壁面に下端面または下端面付記が蝶番で位置固定された板部材であり、
前記移行機構は、前記板部材が前記壁面開口を塞ぐように該板部材を係止させるストッパーを備えるとともに、前記電力に基づき前記ストッパーの係止を解くように構成される
請求項3記載の換気装置。
【請求項5】
前記発熱部と前記封鎖部材との間に設けられた電動ファンと、
前記発熱部の前記発熱により前記電動ファンを駆動する電力を発生する熱電変換部と
をさらに具備する請求項1記載の換気装置。
【請求項6】
躯体構造物に囲まれた少なくとも一つの区画と、
前記区画に設けられた請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の換気装置と
を具備する原子炉建屋。
【請求項7】
水素ガスを含むガスを処理し、処理した前記ガスを流出させるステップと、
前記ガスに伴う発熱に基づき、前記ガスが流出する流路を通常時に遮断、封鎖する封鎖部材を封鎖の状態から通過の状態に移行させるステップと
を具備する換気方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水素を含むガスを換気する換気装置およびこれを備える原子炉建屋、ならびに換気方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントにおいては、過酷事故に備える一環として原子炉建屋内で高濃度化するおそれがある水素ガスを悪条件でも滞りなく排気可能なことが強く求められている。可能性として、原子炉内(圧力容器内)の一次冷却材である水は、配管破損等により原子炉格納容器内に高温、高圧状態で放出されると、放射線により水素と酸素とに分解される。そして、格納容器の高圧状態が継続すれば格納容器のシール部分など脆弱部位から水素を含むガスが原子炉建屋内に漏えいする。
【0003】
また、水素ガスは、圧力容器内が冷却不能に陥ると、圧力容器内の水蒸気が、燃料被覆管に用いられている高温化したジルコニウムと反応することによっても短時間で大量に発生する。この水素ガスは、配管破損等の原因があれば原子炉格納容器内に放出され、さらに格納容器の高圧状態が継続すれば格納容器のシール部分など脆弱部位から原子炉建屋内に漏えいする。
【0004】
電源が存在する場合は、非常用ガス処理系が作動し、原子炉建屋内の水素を含むガスは放射性物質をフィルタ除去した後に外部に排気される。電源喪失の場合や電源復旧が遅れる場合は非常用ガス処理系が作動しないが、その場合は、原子炉建屋内の水素濃度の上昇を検知して建屋屋上にあるベント設備を開放することで、原子炉建屋内の水素を大気中に放出する。しかし、ベント設備が建屋屋上に設けられるのみでは、建屋下層階の躯体構造物で囲まれた区画に水素漏えいがある場合に対処できないと考えられる。一般に空気中に水素が混合すると水素濃度12.5体積%ないし17体積%で爆轟に至る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−225823号公報
【特許文献2】特開2009−69121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、躯体構造物に囲まれ、水素が蓄積しやすい建屋区画でも滞りなく水素を含むガスを排気することができる換気装置およびこれを備える原子炉建屋、ならびに換気方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の換気装置は、発熱部と封鎖部材と移行機構とを持つ。発熱部は、水素ガスを含むガスを処理することで発熱し、処理したガスを流出させる。封鎖部材は、発熱部の下流側の位置に設けられ、発熱部から流出するガスによる気流を遮断、封鎖可能に構成されている。また、移行機構は、発熱部による発熱を原因として、気流を封鎖の状態から通過の状態に移行するように封鎖部材を動かす。さらに、実施形態の原子炉建屋は、躯体構造物に囲まれた少なくとも一つの区画と、この区画に設けられた上記換気装置とを備える。
【0008】
また、実施形態の換気方法は、次のような方法である。(1)水素ガスを含むガスを発熱部にて処理し、処理したガスを発熱部から流出させる。(2)発熱部でのガスの処理に伴う発熱に基づき、発熱部からガスを流出する流路を通常時に遮断、封鎖する封鎖部材を封鎖の状態から通過の状態に移行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の各実施形態によれば、水素が蓄積しやすい建屋区画でも滞りなく水素を含むガスを排気することができる換気装置およびこれを備える原子炉建屋、ならびに換気方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1の換気装置が備え付けられた原子炉建屋の一部を断面で示す態様図。
図2図1中に示した換気装置の構成を示す斜視図。
図3図2に示した換気装置の変形例を示す斜視図。
図4図2に示した換気装置の別の変形例を示す斜視図。
図5】実施形態2の換気装置が備え付けられた原子炉建屋の一部を断面で示す態様図。
図6図5中に示した換気装置の構成を示す斜視図。
図7図6に示した換気装置の変形例を示す斜視図。
図8図2ないし図4、および図6図7中に示した流路形成部材14の変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以上を踏まえ、以下では実施形態の換気装置を図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態1の換気装置が備え付けられた原子炉建屋の一部を断面で示している。概略として、原子炉建屋内にある原子炉格納容器100から水素漏えいが生じた場合に対処するように、水素漏えいの可能性のある換気対象区画51に専用の換気装置(符号11から符号14)を設けている。区画51は、原子炉格納容器100に接し、躯体構造物に囲まれた比較的狭い区画である。この換気装置は、区画51よりも大きな容積を有する隣接区画52との間にある壁面に備え付けられている。
【0012】
このように換気装置を設けることで、建屋屋上にある建屋ベント装置(不図示)による排気のみでは困難な建屋下層階における水素漏えい等にも対処することができる。この換気装置による水素ガスの対処は、以下説明するように、不活性ガスによる水素ガスを希釈ではないので、事故収束にあたる活動員に窒息のおそれがない。また、水素を空気中の酸素と積極的に反応させて除去する方式でもないので、反応熱で狭い区画51内が異常に高温化することもない。一時的に反応する酸素がなくなって水素が高濃度化するというような危険な状態の発生も防止できる。
【0013】
図2は、図1中に示した換気装置の構成を斜視で示している。図2において図1中に示した符号のものと同一のものには同一符号を付してある。以下、図2をも参照しつつ説明を続ける。この換気装置は、発熱部11、封鎖部材12、支持部材13、流路形成部材(チムニー)14を有する。
【0014】
端的に、この形態は、封鎖部材12を、発熱部11から見て気流の下流の側にある壁面開口を塞ぐように自重に抗して位置固定された板部材とし、この自重を支えるように支持部材13が移行機構として設けられている。支持部材13は、発熱部11が発生する熱により物理的状態が変化し封鎖部材12の重みを支えられなくなる。これにより、封鎖部材12が落下して壁面開口が開放され気流の封鎖状態が解かれる。この形態は、重力と、熱による支持部材13の物理的状態の変化とを利用して封鎖部材12を動かす(落下させる)ので、仕組みとして単純である。
【0015】
以下、個別の構成物ごとに機能を説明する。発熱部11は、水素ガスを含むガスに曝され当該ガスを処理することで発熱し、処理されたガスを流出させる。この形態では、処理されたガスは発熱により下方から上方へ自然な気流となる。発熱部11によるガスの処理は、より具体的には、例えば、水素を酸化する作用を有する触媒(Pt、Pdなど)を利用してガス中に含まれる水素ガスを酸化する処理であり、この酸化反応により発熱部11が発熱する。封鎖部材12は、発熱部11の下流側(発熱部11から見て気流の下流の側であり、この形態では上方)の位置に設けられており、普段は図1における隣接区画52との壁面開口を塞ぐことで、区画51と隣接区画52との間の、発熱部11で処理され発熱部11から流出したガスの流れを含む気流を遮断、封鎖している。この形態では、封鎖部材12は、板状の部材であり、支持部材13により自重に抗して位置固定されている。
【0016】
支持部材13は、発熱部11による発熱を原因として、区画51と隣接区画52との間の気流を封鎖の状態から通過の状態に移行するように封鎖部材12を動かす(落下させる)機構のひとつの具体例である。この支持部材13は、発熱部11が発生する熱が伝導して高温化する位置に設けられており、普段は封鎖部材12である板部材の重みを支えている。そして発熱部11が発熱すると封鎖部材12を支える機能が喪失する。
【0017】
より具体的には、例えば、発熱部11が発生する熱により溶融する金属部材もしくは蝋部材、または発熱部11が発生する熱により封鎖部材12の重みを支えられなくなるように変形する記憶形状合金部材もしくは熱可塑性樹脂部材などを採用することができる。支持部材13の状態が変化する温度としては例えば200℃〜300℃程度を想定することができる。一般には、水素濃度が高くなるほど発熱部11が発生する熱が増加するので、この換気装置を動作させるべき水素濃度で発熱部11が上昇させる温度に対応して、支持部材13の状態が変化するように支持部材13の特性を選ぶ。
【0018】
流路形成部材14は、発熱部11と封鎖部材12との間で気流の流路を形成すべく設けられた筒状の部位を有する部材である。このように流路形成部材14を設ければ、水素を含むガスの気流が流路形成部材14内に形成されるので、そのガスの確実な排気につながる。
【0019】
以上の構成物を有する換気装置がはたらくと、水素を含む高温化したガスが換気対象区画51から隣接区画52へと排気される。一方で、区画51内には、換気空調系ダクト61から空気が流入する。隣接区画52に排気された水素を含むガスは隣接区画52にある空気で希釈され、さらに隣接区画52にある上階との連通口などを通過して上方に移動する。そして最終的には、水素ガスを建屋ベント装置(不図示)で原子炉建屋外に排出処理するか、原子炉建屋内の比較的大きな空間に備えられた静的可燃性ガス処理装置(不図示)で処理することができる。
【0020】
この換気装置による排気先は、隣接区画52とする以外に、隣接せずに存在する別の区画としてもよい。その場合には、ガス流路を別途形成して換気対象区画51とその別の区画とをつなぐ。または、排気先として外気につながる空間とすることも考えられる。
【0021】
この換気装置によれば、停電であっても動作し、その結果、躯体構造物に囲まれ、水素が蓄積しやすい建屋区画でも滞りなく水素を含むガスを排気することができる。また同時に換気空調系ダクト61から空気供給がなされ、区画51内の酸欠を防止できる。特に、水素濃度が上昇すると発熱が増すので気流も増強されて排気効率が向上する。また、温度上昇した気流とともに排熱もなされるので、付近の温度上昇も抑えられる。通常時は封鎖部材12によって気流を封鎖しているので装置の存在は有意でなく、通常時の換気空調系の機能を損なわない。
【0022】
次に、図3は、図2に示した換気装置の変形例を斜視で示している。図3において、図2中に示したものと同一または同一相当のものには同一符号を付してある。その部分については、加える事項がない限り説明を省略する。
【0023】
この形態は、封鎖部材12として板状の部材を使用する点で図2と同じであるが、封鎖部材12の重みを支える仕組みに違いがある。すなわち、発熱部11が発生する熱が伝導して高温化する位置に設けられている支持部材13Aは、封鎖部材12の重みを直接支えるのではなく、ワイヤ13Bの一方端で封鎖部材12が吊られ、ガイドリング13Cでワイヤ13Bの方向が案内され、ワイヤ13Bの他端が支持部材13Aで固定されていることにより、封鎖部材12の重みを支えている。
【0024】
支持部材13Aについては、図1図2を参照して説明した支持部材13と同様な材料のものを利用することができる。ワイヤ13Bは、図示するような2本に限らず、封鎖部材12を一か所で吊るように1本とすることも可能である。この形態は、封鎖部材12が封鎖している壁面開口と、発熱部11が発生する熱が伝導して高温化する位置とが比較的離れている場合に向いている構成である。また、封鎖部材12の真下に適当な高温化領域が位置しない場合にも向いている。その他の点については図1図2を参照してすでに説明したとおりである。
【0025】
次に、図4は、図2に示した換気装置の別の変形例を斜視で示している。図4において、図2中に示したものと同一または同一相当のものには同一符号を付してある。その部分については、加える事項がない限り説明を省略する。
【0026】
この形態は、図2に示した構成に加えて、発熱部11が発生する熱が伝導する位置に設けられた熱電変換部15と、熱電変換部15によって発生した電力を用いて水素ガス検知の旨の信号を生成、出力する信号出力部16とをさらに備えるようにしたものである。この形態によれば、停電であってもこの換気装置において水素ガス検知の旨の信号(特に電気信号)を生成、出力することができる。したがって、例えば、中央制御室にその信号を出力することで、運転員が状況の把握に役立てることができる。
【0027】
次に、図5は、実施形態2の換気装置が備え付けられた原子炉建屋の一部を断面で示している。図5において、図1中に示したものと同一または同一相当のものには同一符号を付してある。その部分については、加える事項がない限り説明を省略する。また図6は、図5中に示した換気装置の構成を斜視で示している。図6において図5中に示した符号のものと同一のものには同一符号を付してある。
【0028】
以下、図6をも参照しつつ説明を続ける。この換気装置には、図2から図4に示したものとは異なる、具体的な封鎖部材および移行機構の別の例が含まれている。この換気装置は、発熱部11、流路形成部材(チムニー)14、封鎖部材21、蝶番22、ストッパー23、電動モータ24、モータ制御部25、熱電変換部26を有し、熱電変換部26が発生する電力に基づいて、封鎖部材21が区画51と隣接区画52との間の気流を封鎖の状態から通過の状態に移行するように構成したものである。
【0029】
封鎖部材21は、発熱部11から見て気流の下流の側にある壁面開口を塞ぐように位置固定された板部材である。蝶番22は、壁面開口が設けられた壁面と封鎖部材21の下端面または下端面付近との間をつないでいる。ストッパー23は、蝶番22の開き位置が壁面開口を塞ぐべく封鎖部材21を配置させているときにその位置を固定する。電動モータ24は、封鎖部材21から壁面開口を開放すべくストッパー23を外すことができる。熱電変換部26は、発熱部11が発生する熱が伝導する位置に、熱により発生する電力を電動モータ24に供給すべく設けられている。モータ制御部25は、電動モータ24の動作を制御する。
【0030】
端的に、この形態は、図示するように、板部材である封鎖部材21の上部の側の重心がストッパー23の側にずれている形状になっており、ストッパー23が外されると蝶番22の開き位置が動いて封鎖部材21から壁面開口が開放され気流の封鎖状態が解かれる。この形態は、移行機構として熱電変換部26と電動モータ24とを含み、少し仕組みが複雑化するが、制御部25による電動モータ24の制御をさらに考慮することで換気装置として高機能化の可能性が増している(後述する)。電動モータ24には、図示するような回転モータのほか可動片が直線状に動くモータ(ソレノイドアクチュエータ)を採用してもよい。
【0031】
この形態の換気装置は、熱電変換部26が発生する電力を利用することにより、やはり停電であっても動作し、その結果、躯体構造物に囲まれ、水素が蓄積しやすい建屋区画でも滞りなく水素を含むガスを排気することができる。また同時に換気空調系ダクト61から空気供給がなされ、区画51内の酸欠を防止できる。特に、水素濃度が上昇すると発熱が増すので気流も増強されて排気効率が向上する。また、温度上昇した気流とともに排熱もなされるので、付近の温度上昇も抑えられる。通常時は封鎖部材12によって気流を封鎖しているので装置の存在は有意でなく、通常時の換気空調系の機能を損なわない。
【0032】
この形態を高機能化する例としては、熱電変換部26を、特に、発熱部11が発生する熱を取り込む受熱部と、受熱部によって取り込んだ熱を放熱できる放熱部とを有する構成に変更することが考えられる。動作としては、受熱部の温度が放熱部の温度より高いときには、発熱部11が発生する熱により発生する電力を電動モータ24に供給する。一方、受熱部の温度が放熱部の温度より低いときには、発熱部11が発生する熱により発生する電力を、モータ制御部25の制御により、電動モータ24に供給しないかまたは電動モータ24がストッパー23を外さない動作になるように供給する。
【0033】
以上によれば、水素漏えいがあるときには電動モータ24が作動し、封鎖部材21の初期の配置位置が動かされ、壁面開口が開放され気流の封鎖状態が解かれる。一方、熱電変換部26に受熱部と放熱部とが設けられることから、水素漏えいがない場合で区画内に火災が発生したときには、放熱部の方が受熱部より高温になり、その結果、封鎖部材21の初期の配置位置は動かされず、壁面開口が開放されず気流の封鎖状態は解かれない。よって、さらなる酸素供給を絶ち、火災の煙を閉じ込めることができる。
【0034】
次に、図7は、図6に示した換気装置の変形例を斜視で示している。図7において、図6中に示したものと同一または同一相当のものには同一符号を付してある。その部分については、加える事項がない限り説明を省略する。
【0035】
この形態は、図6に示した換気装置が有する構成に加え、さらに電動ファン27、ファン制御部28、熱電変換部29を有する。電動ファン27は、発熱部11から見て気流の下流の側であって封鎖部材21の上流の側、すなわち発熱部11と封鎖部材21との間に設けられており、その位置で気流の流れを加勢することができる。熱電変換部29は、発熱部11が発生する熱が伝導する位置に、熱により発生する電力を電動ファン27に供給すべく設けられている。ファン制御部28は、電動ファン27の動作を制御する。
【0036】
このように電動ファン27を設ければ、電動ファン27は発熱部11が発生する熱を利用した熱電変換部29により動作するので、停電であっても動作しかつその結果排気効率が向上する。
【0037】
この形態を高機能化する例としては、熱電変換部29を、特に、発熱部11が発生する熱を取り込む受熱部と、受熱部によって取り込んだ熱を放熱できる放熱部とを有する構成に変更することが考えられる。動作としては、受熱部の温度が放熱部の温度より高いときには、発熱部11が発生する熱により発生する電力を電動ファン27に供給する。一方、受熱部の温度が放熱部の温度より低いときには、発熱部11が発生する熱により発生する電力を、ファン制御部28の制御により、電動ファン27に供給しないかまたは電動ファン27が気流の流れを加勢しない動作になるように供給する。
【0038】
以上によれば、水素漏えいがあるときには電動ファン27が作動し、気流の流れが加勢され排気効率が向上する。一方、熱電変換部29に受熱部と放熱部とが設けられることから、水素漏えいがない場合で区画内に火災が発生したときには、放熱部の方が受熱部より高温になり、その結果、電動ファン27による気流の加勢は起こらない。よって、火災に対して加勢することがなくなる。
【0039】
次に、図8は、図2ないし図4、および図6図7中に示した流路形成部材14の変形例を示している。この流路形成部材14Aは、流路形成部材14Aの流路断面積として発熱部11Aにおける断面積より封鎖部材の側における断面積の方が小さい。これによれば、流路形成部材14Aの、気流の入り口である側で大きな断面積により水素ガスを集めることができるので、排気効率を増すことができる。
【0040】
以上説明したように、各実施形態の換気装置によれば、通常時は封鎖部材12、21によって気流を封鎖しているので装置の存在は有意でなく、通常時の換気空調系の機能を損なわない。事故等で水素ガスを含むガスが発生して発熱部11が水素ガスを含むガスに曝されると発熱し、発熱により発熱部11は下方から上方へ自然な気流を発生させる。封鎖部材12、21は、発熱部11から見て気流の下流の側であって気流を遮断、封鎖する位置に設けられている。封鎖部材12、21は、発熱部11での発熱によって封鎖部材12、21を動かす機構である移行機構により、気流を封鎖の状態から通過の状態に移行するように動かされる。
【0041】
したがって、この換気装置によれば、停電であっても動作し、その結果、躯体構造物に囲まれ、水素が蓄積しやすい建屋区画が存在する場合にも滞りなく水素を含むガスを換気することができる。特に、水素濃度が上昇すると発熱が増すので気流も増強されて排気効率が向上する。また、温度上昇した気流とともに排熱もなされるので、付近の温度上昇も抑えられる。
【0042】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
11、11A…発熱部、12…封鎖部材、13、13A…支持部材、13B…ワイヤ、13C…ガイドリング、14、14A…流路形成部材(チムニー)、15…熱電変換部、16…信号出力部、21…封鎖部材、22…蝶番、23…ストッパー、24…電動モータ、25…モータ制御部、26…熱電変換部、27…電動ファン、28…ファン制御部、29…熱電変換部、51…換気対象区画、52…隣接区画、61…換気空調系ダクト、100…原子炉格納容器。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8