特許第6386934号(P6386934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386934
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】金属担持炭酸塩粒子の製造法
(51)【国際特許分類】
   C01F 11/18 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
   C01F11/18 H
   C01F11/18 B
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-34650(P2015-34650)
(22)【出願日】2015年2月25日
(65)【公開番号】特開2016-155710(P2016-155710A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 洸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 将治
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−327458(JP,A)
【文献】 特開昭61−190335(JP,A)
【文献】 特開2013−035796(JP,A)
【文献】 特開平07−247205(JP,A)
【文献】 特開平08−337507(JP,A)
【文献】 特開平07−017803(JP,A)
【文献】 特開2008−074771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸第2族金属塩と、液状アルコール類と、酸化銀とを、40℃以上液状アルコール類の沸点以下の温度で反応させること特徴とするが担持した炭酸第2族金属塩粒子の製造法。
【請求項2】
炭酸第2族金属塩が、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム及び炭酸ストロンチウムから選ばれるものである請求項1記載の製造法。
【請求項3】
液状アルコール類が、液状1価アルコール及び多価アルコールから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載の製造法。
【請求項4】
得られるが担持した炭酸第2族塩粒子の炭酸第2族金属塩粒子が、球状粒子である請求項1〜のいずれか1項記載の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子金属が表面に担持された炭酸塩粒子の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
銀や銅は抗菌性をもつことから、繊維材料、樹脂材料、電子材料への添加剤として用いることで微生物への抗菌効果を発揮することが期待される。特に微粒子化することで比表面積が大きくなるため、金属表面における活性酸素発生量が多くなり、抗菌効果は高くなる。
しかし、銀微粒子等は単体で使用すると、高い表面エネルギーによって凝集・焼結が起こりやすく、微粒子としての特性が活かしづらくなるだけでなく、被添加材へ均一に分散させるためのハンドリングも難しくなる。
【0003】
このような観点から、銀等の金属を炭酸カルシウム粒子表面上に担持させる技術が報告されている。例えば、炭酸カルシウムに硝酸銀水溶液や塩化銀水溶液を含浸させる方法(特許文献1及び2)が報告されている。また、炭酸カルシウムに可溶性リン酸化合物を添加した後、金属粒子の非水分散液を接触させる方法(特許文献3)。炭酸カルシウムに硝酸銀を反応させて炭酸銀被覆炭酸カルシウムを製造した後、高温で焼成する方法(非特許文献1)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−236304号公報
【特許文献2】特開平7−17803号公報
【特許文献3】特開平8−337507号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Inorganic Materials, Vol.4, Nov.613-616(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記の製造法は、いずれも高温条件の焼成が必要であり、バテライト型のような球状粒子にならず、また反応工程が多く工業的に利用できない方法であった。
従って、本発明の課題は、簡便な手段で、工業的に有利に金属担持炭酸塩を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、高温条件の焼成を行なうことなく炭酸塩粒子表面に銀等の金属を析出させるべく種々検討した結果、銀等の金属の酸化物と炭酸塩とをアルコール中で40℃以上の温度で反応させれば、炭酸塩粒子の表面で金属酸化物の還元反応が生起し、炭酸塩粒子の表面に金属微粒子が担持した粒子が効率良く生成することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔5〕を提供するものである。
【0009】
〔1〕炭酸第2族金属塩と、液状アルコール類と、第11族又は第12族金属の酸化物とを、40℃以上液状アルコール類の沸点以下の温度で反応させること特徴とする第11族又は第12族金属が担持した炭酸第2族金属塩粒子の製造法。
〔2〕炭酸第2族金属塩が、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム及び炭酸ストロンチウムから選ばれるものである〔1〕記載の製造法。
〔3〕液状アルコール類が、液状1価アルコール及び多価アルコールから選ばれる1種又は2種以上である〔1〕又は〔2〕記載の製造法。
〔4〕第11族又は第12族金属の酸化物が、酸化銀、酸化銅又は酸化亜鉛である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の製造法。
〔5〕得られる第11族又は第12族金属が担持した炭酸第2族塩粒子の炭酸第2族金属塩粒子が、球状粒子である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の製造法。
【発明の効果】
【0010】
本発明方法によれば、簡易な操作かつ少ない工程で、工業的に有利に金属担持炭酸塩粒子が得られる。本発明により得られる金属担持炭酸塩粒子は、球状の形態にもすることができ、また炭酸塩粒子表面に担持した金属は微細であり、金属の表面積が大きくなるため、担持された金属の特性が十分に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1で得られた粒子のX線回折スペクトル(XRD)を示す。
図2】実施例1で得られた粒子の走査型電子顕微鏡像(反射電子像)を示す。
図3】比較例1で得られた粒子のXRDを示す。
図4】比較例2で得られた粒子の走査型電子顕微鏡像(反射電子像)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第11族又は第12族金属が担持した炭酸第2族金属塩粒子の製造法は、炭酸第2族金属塩と、液状アルコール類と、第11族又は第12族金属の酸化物とを、40℃以上液状アルコール類の沸点以下の温度で反応させること特徴とする。
【0013】
炭酸第2族金属塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウムが挙げられる。このうち、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウムが好ましく、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムがより好ましく、炭酸カルシウムがさらに好ましい。
【0014】
第11族又は第12族金属の酸化物としては、酸化銀、酸化銅、酸化亜鉛が挙げられる。このうち、金属自体抗菌作用等の活性を有する酸化銀、酸化銅がより好ましく、酸化銀がさらに好ましい。これらの金属酸化物は1種でも2種以上を混合して用いてもよい。
これらの金属酸化物の使用量は、還元後の担持粒子の凝集を抑制させる点から、炭酸第2族金属塩1質量部に対し、0.1〜0.5質量部が好ましく、0.1〜0.4質量部がより好ましく、0.1〜0.3質量部がさらに好ましい。
【0015】
液状アルコール類としては、還元作用を有する常温で液体のアルコール類が好ましく、例えば、液状1価アルコール及び多価アルコールから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。液状1価アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のC1−C6アルコールが挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、液状ポリエチレングリコール、液状ポリプロピレングリコール、グリセリン等の2価又は3価のアルコールが挙げられる。
これらの液状アルコール類のうち、C1−C6アルコール、2価又は3価のアルコールがより好ましい。
液状アルコール類の使用量は、還元速度の点から、第11族又は第12族金属の酸化物1質量部に対して50〜500質量部が好ましく、100〜500質量部がより好ましく、150〜500質量部がさらに好ましい。
【0016】
本発明方法を行うにあたって、炭酸第2族金属塩と、液状アルコール類と、第11族又は第12族金属の酸化物との3成分を反応させればよく、これらの成分の添加順序は限定されない。反応は、40℃以上液状アルコール類の沸点以下の温度で行うことが必要である。40℃未満の反応温度では、第11族又は第12族金属酸化物の還元反応が進行せず、炭酸金属塩粒子の表面に第11族又は第12族金属が担持されない。より好ましくは40〜150℃であり、さらに好ましくは40〜120℃である。
反応時間は、液状アルコール類、金属酸化物の種類によって異なるが、通常30分〜5時間程度でよい。
【0017】
上記の反応により、炭酸第2族金属塩粒子の表面で第11族又は第12族金属酸化物の還元反応が進行し、表面に第11族又は第12族金属微粒子が担持された炭酸第2族金属塩粒子が得られる。この形態であることは走査型電子顕微鏡(SEM)の反射電子像(BSE)により確認することができる。また、第11族又は第12族金属塩粒子であることは、X線回折スペクトルにより確認できる。
炭酸第2族金属塩粒子表面上の第11族又は第12族金属は、粒子表面上の還元反応で生成するため、均一に担持され、かつ微細な粒子状である。従って、銀や銅粒子の表面積が大きく、その抗菌活性は向上する。また、亜鉛の場合には、鮮度保持機能が増大する。
また、例えば炭酸カルシウムを用いた場合、バテライト型の球状の形態の金属担持炭酸カルシウム粒子が得られる。このような球状粒子は、例えば使用感のよい化粧品材料として特に有用である。
本発明により得られる金属担持炭酸第2族金属塩粒子の粒子径は特に限定されないが、平均粒子径として0.1μm〜50μmが好ましく、0.1μm〜10μmがより好ましく、0.1μm〜5μmがさらに好ましい。なお、平均粒子径は走査型電子顕微鏡により測定される粉末の最大長を粒子径とし200個の粉末の最大長を平均したものである。
【実施例】
【0018】
次に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
【0019】
実施例1
(1)炭酸カルシウム合成工程
1.5mol/LのCaCl2水溶液を調製し「溶液A」とした。一方、(NH42CO3を蒸留水に溶解させて「溶液B」を調製した。反応溶液全量(溶液A+溶液B)におけるCa濃度は1.4mol/L、CO3濃度は1.5mol/Lである。溶液Aと溶液Bの混合、攪拌は、メカニカル制御攪拌器を用いて、攪拌回転数600rpmにて3分間20℃で行った。スラリーをろ過、洗浄後、105℃で1時間乾燥を行い、炭酸カルシウムを得た。得られた炭酸カルシウムは、バテライトであり、形状は球状であった。
【0020】
(2)金属担持工程
得られた炭酸カルシウム3.0gをメタノール溶媒(還元剤)100mL中に酸化銀0.67gと共に添加し、50℃で1時間攪拌することで酸化銀を還元させ、炭酸カルシウム表面へ銀の状態で担持させた。還元・担持処理後にガラスフィルターでろ過し、試料を作製した。
【0021】
(3)結果
XRD測定の結果、炭酸カルシウムと銀のピークのみが見られたことから(図1)、酸化銀の還元が完了していることを確認した。試料のSEM観察結果(反射電子像)を図2に示す。白く光っている箇所が銀である。粒子径100nm以下の銀微粒子が粒子径約500nmの炭酸カルシウム上にほぼ均一に担持している。また、炭酸カルシウムは、バテライトの球状の形状を維持している。
【0022】
比較例1(金属担持工程の還元温度が20℃の場合)
実施例1と同様に作製した炭酸カルシウム3.0gをメタノール溶媒(還元剤)100mL中に酸化銀0.67gと共に添加し、20℃で1時間攪拌することで酸化銀を還元させ、炭酸カルシウム表面に担持させた。還元処理後にガラスフィルターでろ過し、試料を作製した。
得られた試料をXRDで測定した結果、炭酸カルシウムと酸化銀のピークが見られたことから(図3)、還元反応が起きていないことを確認した。
【0023】
比較例2(炭酸カルシウムと別途作成した銀微粒子を混合した場合)
(1)銀微粒子作製工程
酸化銀をメタノールと混合し、50℃で1h攪拌した。攪拌後、反応容器壁面に付着した銀微粒子を回収した。
(2)炭酸カルシウムと銀微粒子の非水溶媒中での混合工程
実施例1と同様に作製した炭酸カルシウム粉末3.0gに対し、銀微粒子0.62gをメタノール100mL中で30分間攪拌した。攪拌後、ガラスフィルターでろ過し、試料を得た。
(3)結果
試料のSEM観察結果(反射電子像)を図4に示す。白く光っている箇所が銀である。100nm以下の銀微粒子が凝集しており、炭酸カルシウム上への均一な担持は確認できなかった。
図1
図2
図3
図4