(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
塗膜の劣化度と前記塗膜が受ける劣化外力との関係である第1関係と、実環境における前記塗膜の暴露時間と前記実環境における前記塗膜が前記暴露時間で受ける劣化外力との関係である第2関係と、を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記第1関係と前記第2関係とから、前記実環境における前記塗膜の劣化度と前記実環境における前記塗膜の前記暴露時間との関係である第3関係を求める計算部と、を備える、塗膜耐候性評価システム。
前記計算部は、前記記憶部に記憶された前記塗膜に対する促進耐候性試験における試験時間と前記塗膜が前記試験時間で受ける劣化外力との関係である第4関係と、前記塗膜に対する前記促進耐候性試験における試験時間と前記塗膜の劣化度との関係である第5関係と、から前記第1関係を求め、前記第1関係を前記記憶部に記憶させる、請求項1に記載の塗膜耐候性評価システム。
塗膜の劣化度と前記塗膜が受ける劣化外力との関係である第1関係と、実環境における前記塗膜の暴露時間と前記実環境における前記塗膜が前記暴露時間で受ける劣化外力との関係である第2関係と、を記憶する記憶部を備える塗膜耐候性評価システムの動作方法である塗膜耐候性評価方法であって、
前記記憶部に記憶された前記第1関係と前記第2関係とから、前記実環境における前記塗膜の劣化度と前記実環境における前記塗膜の前記暴露時間との関係である第3関係を求める計算ステップを含む、塗膜耐候性評価方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面とともに本発明に係る塗膜耐候性評価システム及び塗膜耐候性評価方法の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
建物の外装等に用いられる塗膜は、有機系塗料等により構成されており、紫外線、熱等の劣化外力を受けることで劣化する。塗膜の劣化度は、例えば、劣化外力を受ける前の物理的特性値(光沢度、色彩)、力学的特性値(強度、伸び、硬さ、付着力)等に対する劣化外力を受けた後のこれらの特性値等の変化率または変化量で表される。劣化外力は塗膜が実際に暴露される環境である実環境によって異なるため、同じ塗膜を同じ時間暴露しても、塗膜の劣化度は実環境によって異なる。本実施形態の説明では、塗膜の劣化度は塗膜の光沢保持率の変化量で表される。
【0018】
塗膜には機能低下による耐用限界がある。「建築物の長期使用に対応した外装・防水の品質確保ならびに維持保全手法の開発に関する研究」(建築研究資料145)において、塗装仕上げの更新時期は光沢保持率が30%に低下したときとされていることに基づき、本実施形態では耐用限界と判断する基準を光沢保持率30%としている。塗膜の光沢保持率が塗膜の耐用限界に達するまでの時間が塗膜の耐用年数である。なお、一般的に用いられるJISの耐候性品質の光沢保持率は80%とされているが、これは耐用限界と判断する基準ではなく、耐用限界に達する前の塗膜に対する規格である。
【0019】
図1に本実施形態に係る塗膜耐候性評価システム1を示す。本実施形態に係る塗膜耐候性評価システムは、実環境における塗膜耐候性を評価するシステムであり、具体的には、実環境における塗膜の光沢保持率と実環境における塗膜の暴露時間との関係を求めるシステムであり、より具体的には、当該関係において光沢保持率30%に対応する暴露時間を塗膜の耐用年数の推定値である推定耐用年数として求めるシステムである。即ち、本実施形態における塗膜の推定耐用年数とは、光沢保持率が100%から30%に低下するまでの実環境における暴露時間の推定値である。
【0020】
塗膜耐候性評価システム1は、例えば、PC(Personal Computer)等に相当し、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、キーボード、ディスプレイ等のハードウェアを含むコンピュータによって構成されている。塗膜耐候性評価システム1の後述する各機能は、これらの構成要素がプログラム等により動作することで発揮される。なお、塗膜耐候性評価システム1は、一つのコンピュータで実現されてもよいし、複数のコンピュータがネットワークにより互いに接続されて構成されるコンピュータシステムで実現されていてもよい。
【0021】
塗膜耐候性評価システム1の機能構成について説明する。
図1に示されるように、塗膜耐候性評価システム1は、記憶部2と、入力部3と、計算部4と、出力部5と、を備えている。
【0022】
記憶部2は、第1〜第5関係を記憶するメモリ等の記憶手段である。以下に第1〜第5関係について説明する。
【0023】
[1]第1関係
第1関係は、塗膜の光沢保持率(以下、「塗膜の光沢保持率」を単に「光沢保持率」ともいう。)と塗膜が受ける劣化外力(以下、「塗膜が受ける劣化外力」を単に「劣化外力」ともいう。)との関係である。光沢保持率と劣化外力とは相関関係にあり、塗膜は劣化外力を受けるほど、劣化して光沢保持率が低下する。第1関係は、劣化外力の値と、その値の劣化外力を受けた後の塗膜の光沢保持率の値との関係である。なお、劣化外力を受ける前の塗膜の光沢保持率の値を100%とする。記憶部2は、光沢保持率が100%から特定の値に低下するまでに塗膜が受ける劣化外力の値を第1関係として記憶している。ここでは、記憶部2は、光沢保持率が100%から30%に低下するまでに塗膜が受ける劣化外力の値を第1関係として記憶している。
【0024】
劣化外力が同じであっても、光沢保持率の低下の度合いは塗膜によって異なる。即ち、塗膜を示す塗膜情報ごとに第1関係は異なる。塗膜情報とは、例えば、塗膜を構成する材料等により分類される塗膜の種類を示す情報であり、具体的には、例えば、塗膜の製品名である。記憶部2は、複数の第1関係をそれぞれ塗膜情報に対応づけて記憶している。第1関係は、予め記憶部2に記憶されたものでもよいが、ここでは、塗膜情報ごとに、計算部4が後述の第4関係と第5関係とから計算で求めて記憶部2に記憶させたものである。
【0025】
ここで、劣化外力について説明する。劣化外力は標準試料を用いて測定される。劣化外力を測定するための標準試料として、ロット間のばらつきがなく分子構造が単純なポリオレフィン系のものが挙げられる。ここでは、例えば、市販されている一般財団法人日本ウエザリングテストセンターの規格JWTCS4001に従うポリエチレンリファレンス試料片が標準試料として用いられる。当該ポリエチレンリファレンス試料片は、トランス形ビニレン基を含み、波数965cm
−1における吸光度と波数2020cm
−1における吸光度との比が1.0〜1.3の高密度ポリエチレンからなっている。当該ポリエチレンリファレンス試料片の厚さは、0.20±0.02mmである。
【0026】
標準試料は、劣化外力によってフリーラジカル化する。ラジカルは酸素と結合してハイドロパーオキサイドという不安定な状態となる。ハイドロパーオキサイドは、その分解によって再びラジカルを生成する。このような過程を繰り返す自動酸化反応により、標準試料の劣化が進行する。このとき酸化反応物としてカルボニル基(C=O)が生成する。
【0027】
図2は、劣化外力を受けた標準試料のフーリエ変換赤外分光(FT−IR)スペクトルの例を示す図である。横軸は波数(Wavenumbers)であり、縦軸は吸光度(Absorbance)である。この例の標準試料は、試験時間(促進時間)を100hとする促進耐候性試験により劣化外力を受けたものである。試験時間は、通常50h〜100hとされる。促進耐候性試験では、劣化外力である光を発生させる人工光源が用いられ、人工光源の光の強さ等の試験条件を調整することで、実環境よりも強い劣化外力を塗膜に付与することができると共に、劣化外力の強さを一定に保つことができる。ここでは、促進耐候性試験を行う促進耐候性試験機として、例えば、スガ試験機株式会社製7.5kWキセノンウェザーメーターSX75を用いている。なお、劣化外力の強さを一定に保つとは、単位時間当たりの劣化外力を一定に保つことを意味し、例えば、単位時間よりも短い時間での劣化外力が異なる場合も含む意味である。
【0028】
図2に示されるように、1715cm
−1付近に存在する吸収ピークはカルボニル基の吸収ピークであり、2020cm
−1付近に存在する吸収ピークはメチレン基の吸収ピークである。上述のように、標準試料の劣化の進行に伴い、カルボニル基が生成することから、劣化外力の指標として、式(1)で示されるカルボニルインデックス(CI)を用いることができる。
CI=A
1715/A
2020 ・・・(1)
A
1715:1715cm
−1付近のカルボニル基の吸光度
A
2020:2020cm
−1付近のメチレン基の吸光度
【0029】
各吸光度は対応するピークのピーク高さであり、
図2に示されるベースラインからの高さによって定められる。この例のカルボニルインデックスは、A
1715/A
2020=0.2434/0.13568≒1.79と求められる。カルボニルインデックスを用いることにより、劣化外力を精度よく示すことができる。本実施形態では、劣化外力の値を表す指標としてカルボニルインデックスを用いる。
【0030】
[2]第2関係
第2関係は、実環境における塗膜の暴露時間と実環境における塗膜が当該暴露時間で受ける劣化外力との関係である。基本的には、塗膜の暴露時間と塗膜が当該暴露時間で受ける劣化外力とは相関関係にあり、塗膜の暴露時間が増すにつれて塗膜が当該暴露時間で受ける劣化外力は増す関係にある。ここでは、記憶部2は、実環境における予め設定された期間、例えば1年間当たりの劣化外力の値を第2関係として記憶している。このように1年間当たりの劣化外力の値を第2関係とすることで、季節による劣化外力の違いが第2関係に与える影響を抑制し易い。
【0031】
暴露時間が同じであっても、実環境における塗膜が当該暴露時間で受ける劣化外力は、実環境により異なる。即ち、実環境を示す実環境情報ごとに第2関係は異なる。実環境情報とは、例えば、塗膜の設けられる実環境の位置する地域、塗膜の設けられる面が向く方位、及び塗膜の設けられる面が地表となす角度(0度から90度の範囲)等を示す情報である。なお、塗膜の設けられる面に対して塗膜の設けられる方向は、角度が0度から90度の範囲において、常に地表を向かない。第2関係は、実環境情報に対応づけて記憶部2に記憶される。
【0032】
第2関係は、実環境である屋外で行われる試験である屋外暴露試験により実環境情報ごとに求められる。劣化外力は上述のように標準試料を用いて測定される。劣化外力は実環境情報及び試験時間(暴露時間)によって決まるパラメータであり、実環境情報及び試験時間が同じであれば、塗膜が受ける劣化外力は、標準試料が受ける劣化外力と等しい。即ち、実環境情報及び試験時間が同じであれば、標準試料が受ける劣化外力を測定することは、塗膜が受ける劣化外力を測定することと等しい。
【0033】
図3に標準試料に対する屋外暴露試験の例を示す。
図3に示されるように、標準試料Rはフレキシブル基板S上に貼り付けられた状態で設けられる。フレキシブル基板Sは、例えばセメント等の無機材料である。標準試料Rは、耐候性評価の対象である外装等に用いられる塗膜(暴露試験体)と同じ地域、方位及び角度で太陽光が当たるように暴露架台に設けられる。実際に設けられる建物を用いて劣化外力を測定する場合、標準試料Rは耐候性評価を行う方位及び角度の壁面に設けられる。
【0034】
標準試料Rが受ける劣化外力は、標準試料Rの両面に与えられる劣化外力F1,F2を含む。劣化外力F1は、標準試料Rに対してフレキシブル基板Sの反対側から標準試料Rに与えられ、標準試料Rに対してフレキシブル基板Sの反対側から標準試料Rに入射する光等を含む。劣化外力F2は、フレキシブル基板S側から標準試料Rに与えられ、フレキシブル基板Sによる反射光等を含む。
【0035】
屋外暴露試験の試験時間は、例えば1年間とされ、1カ月ごとに新たな標準試料Rを用いて測定した劣化外力を12カ月分積算することにより、実環境における1年間当たりの劣化外力の値が第2関係として求められる。1つの標準試料Rによる試験時間を1カ月とするのは、試験時間が長くなり、標準試料Rが剥離する等して劣化が平衡状態に達すると、カルボニルインデックスにより劣化外力を精度よく示せなくなるおそれがあるからである。
【0036】
図4に第2関係の例を示す。具体的には、
図4は、標準試料に対する屋外暴露試験におけるカルボニルインデックス積算値と試験時間との関係の例を示す図である。ここでは、東京、銚子及び宮古島の屋外暴露試験場のそれぞれにおいて、2012年12月から2013年11月までの1年間にわたり1カ月ごとにカルボニルインデックスを測定し、カルボニルインデックスを積算した値であるカルボニルインデックス積算値を求めている。横軸は、カルボニルインデックスが測定された年及び月であり、縦軸は、測定されたカルボニルインデックスである。標準試料Rの設置される方位はいずれも南面であり、角度は東京で45度面、銚子で30度面、及び宮古島で20度面である。カルボニルインデックスで示される1年間当たりの劣化外力は、東京で11.5であり、銚子で9.8であり、宮古島で14.0である。本実施形態では、これらの値が第2関係として、実環境情報に対応づけて記憶部2に記憶される。第2関係は、例えば、屋外暴露試験によって予め得られる。
【0037】
[3]第3関係
第3関係は、実環境における塗膜の光沢保持率と実環境における塗膜の暴露時間との関係である。基本的には、塗膜の光沢保持率と塗膜の暴露時間とは相関関係にあり、塗膜の暴露時間が増すにつれて塗膜の光沢保持率が低下する関係にある。第3関係は、予め記憶部2に記憶されたものではなく、計算部4が第1関係と第2関係とから計算で求めて記憶部2に記憶させるものである。ここでは、記憶部2は、光沢保持率が100%から30%に低下する(劣化度が特定の値になる)までの実環境における暴露時間を第3関係として記憶している。当該暴露時間は、塗膜の推定耐用年数であり、これにより実環境における塗膜耐候性を評価することができる。
【0038】
[4]第4関係
第4関係は、塗膜に対する促進耐候性試験における試験時間と塗膜が当該試験時間で受ける劣化外力との関係である。塗膜に対する促進耐候性試験における試験時間と塗膜が当該試験時間で受ける劣化外力とは相関関係にあり、試験時間が増すにつれて塗膜が当該試験時間で受ける劣化外力が増す関係にある。ここでは、記憶部2は、促進耐候性試験の試験時間を単位時間としたときの劣化外力の値、即ち、促進耐候性試験における単位時間当たりの劣化外力の値を第4関係として記憶している。
【0039】
上述のように、実環境では季節により劣化外力が異なる場合があるため、記憶部2は、実環境における1年間当たりの劣化外力を第2関係として記憶している。これに対し、促進耐候性試験では劣化外力の強さを一定に保つことができるため、記憶部2は、単位時間を、例えば、100hとして第4関係を記憶している。
【0040】
上述のように、実環境情報及び試験時間が同じであれば、標準試料が受ける劣化外力を測定することは、塗膜が受ける劣化外力を測定することと等しい。したがって、標準試料に対する促進耐候性試験を行い、促進耐候性試験における試験時間と標準試料が当該試験時間で受ける劣化外力との関係を求めることにより、第4関係を求めることができる。促進耐候性試験の試験時間は、例えば単位時間とされる。
図2の例では、試験時間が100hであることから、単位時間を100hとすると、カルボニルインデックスで示される単位時間当たりの劣化外力は、1.79である。本実施形態では、この値が第4関係として記憶部2に記憶される。第4関係は、例えば、標準試料に対する促進耐候性試験によって予め得られる。
【0041】
[5]第5関係
第5関係は、塗膜に対する促進耐候性試験における試験時間と塗膜の光沢保持率との関係である。塗膜に対する促進耐候性試験における試験時間と塗膜の光沢保持率とは相関関係にあり、試験時間が増すほど、塗膜は劣化して光沢保持率が低下する。記憶部2は、光沢保持率が100%から特定の値に低下する(劣化度が特定の値となる)までにかかる試験時間を第5関係として記憶している。ここでは、記憶部2は、光沢保持率が100%から30%に低下するまでにかかる試験時間を第5関係として記憶している。
【0042】
試験時間が同じであっても、光沢保持率の劣化の度合いは塗膜によって異なる。即ち、塗膜情報ごとに第5関係は異なる。記憶部2は、複数の第5関係をそれぞれ塗膜情報に対応づけて記憶している。第5関係は、塗膜情報ごとの塗膜それぞれに対する促進耐候性試験によって塗膜情報ごとに求められる。
【0043】
図5に第5関係の例を示す。
図5は、塗膜に対する促進耐候性試験における塗膜の光沢保持率と試験時間との関係の例を示す図である。横軸は試験時間であり、縦軸は塗膜の光沢保持率である。塗膜はアクリルシリコン樹脂系塗料からなる塗膜である。
図5に示されるように、塗膜に対する促進耐候性試験における塗膜の光沢保持率が100%から30%に低下するまでにかかる試験時間は、5500hである。本実施形態では、促進耐候性試験によって、このような試験時間の値が塗膜情報ごとに第5関係として求められ、塗膜情報に対応づけて記憶部2に記憶される。
【0044】
入力部3は、塗膜情報及び実環境情報を入力するキーボード等の入力手段である。入力部3は、塗膜情報入力部、及び実環境情報入力部として機能している。入力部3は、例えば、ユーザによるキーボードの操作に応じて塗膜情報及び実環境情報を入力し、これらを計算部4に出力する。
【0045】
計算部4は、CPU等の計算手段である。計算部4は、記憶部2に記憶された第1関係と第2関係とから第3関係を求めて出力部5に出力する。本実施形態では、計算部4は、式(2)を用い推定耐用年数を求める。計算部4は、塗膜情報及び実環境情報ごと推定耐用年数を求める。具体的には、後述する。
Y=(Y’s×B’)/D’ ・・・(2)
Y:推定耐用年数
Y’s:耐候性データ
B’:方位、角度による係数
D’:年間劣化外力
【0046】
ここで、係数B’は、方位、角度ごとに測定された劣化外力を、南面、垂直面で測定された劣化外力で除することで求められる係数である。即ち、南面、垂直面の係数B’は1である。係数B’は、方位、角度ごとに予め記憶されている。方位が南面の場合における係数B’と角度との関係の例を表1に示す。表1に示されるように、例えば、角度が「45度面」の場合における係数B’は、「1.46」である。本実施形態では、このような関係が予め方位ごとに求められ、記憶部2に記憶されている。
【表1】
【0047】
図6は、方位が南面の場合における係数B’と角度との関係の例を示す図である。
図6には、表1のデータと、表1のデータの近似曲線(角度をx、係数B’をyとして、y=−0.0001x
2+0.0094x+1.3348で示され、決定係数R
2が0.999となる二次曲線。)とが示されている。横軸は角度であり、縦軸は係数B’である。当該近似曲線によれば、表1に示される角度以外の角度についても、対応する係数B’を予測値として得ることができる。
【0048】
年間劣化外力D’は、1年間当たりの劣化外力をカルボニルインデックスで示した値であり、実環境により異なる。年間劣化外力D’は、第2関係における1年間の暴露時間に対応する劣化外力に相当する。耐候性データY’sは、塗膜の光沢保持率が100%から30%に低下するまでに塗膜が受ける劣化外力をカルボニルインデックスで示した値であり、第1関係における光沢保持率30%に対応する劣化外力に相当する。
【0049】
第1関係は、予め記憶部2に記憶されていてもよいが、ここでは、計算部4が、記憶部2に記憶された第4関係と第5関係とから第1関係を求め、記憶部2に記憶させている。具体的には、本実施形態では、計算部4は、式(3)を用い耐候性データY’sを求め、記憶部2に記憶させている。
Y’s=T×C ・・・(3)
T:耐用限界促進時間
C:促進耐候性試験条件
【0050】
耐用限界促進時間Tは、促進耐候性試験において光沢保持率が耐用限界に達したときの試験時間であり、本実施形態の第5関係における光沢保持率30%に対応する試験時間に相当する。促進耐候性試験条件Cは、促進耐候性試験における単位時間当たりの劣化外力をカルボニルインデックスで示した値である。促進耐候性試験条件Cは、本実施形態の第4関係において試験時間が単位時間である場合に対応する劣化外力に相当する。なお、耐候性データY’sは、実環境における屋外暴露試験によっても求めることができるが、本実施形態では、耐候性データY’sは、いずれも促進耐候性試験で求められる耐用限界促進時間T及び促進耐候性試験条件Cから求めているので、試験時間の短縮化が可能である。
【0051】
出力部5は、計算部4が求めた第3関係を出力するディスプレイ等の出力手段である。出力部5による出力は、例えば、ディスプレイ等への表示出力としてもよいし、あるいは他の装置に情報を出力することとしてもよい。
【0052】
続いて、
図7のフローチャートを用いて、塗膜耐候性評価システム1の動作方法である本実施形態に係る塗膜耐候性評価方法について説明する。ここでは、例えば、地域「東京」、方位「南面」、角度「45度面」における製品名「X」の塗膜の推定耐用年数を得る場合について説明する。
【0053】
動作開始時において、記憶部2は第2関係、第4関係及び第5関係を予め記憶している。記憶部2は、例えば、第2関係として表2の内容、第4関係として1.79/100h、及び第5関係として表3の内容を記憶する。
【表2】
【表3】
【0054】
塗膜耐候性評価システム1の動作開始後、例えば、ユーザによるキーボードの操作に応じて、入力部3は塗膜情報「X」及び実環境情報「東京」、「南面」、「45度面」を入力する(S1)。続いて、計算部4は、記憶部2から第4関係として「1.79/100h」を読み出すと共に、入力部3が入力した塗膜情報「X」に応じて記憶部2から対応する第5関係として「5000h」を読み出す(S2)。計算部4は、このように読み出した第4関係と第5関係とから、式(3)を用い第1関係「89.5(=1.79×50)」を求める(S3)。
【0055】
記憶部2は、計算部4により求められた第1関係を塗膜情報「X」に対応づけて記憶する(S4)。続いて、計算部4は、記憶部2から塗膜情報「X」に対応する第1関係を読み出すと共に、入力部3が入力した実環境情報「東京」に応じて記憶部2から第2関係として「11.5/年」を読み出す(S5)。計算部4は、入力部3が入力した実環境情報「南面」、「45度面」に応じて、予め記憶された対応する係数B’の値1.4を読み出す。続いて、計算部4は、このように読み出した第1関係及び第2関係と、係数B’の値とから、式(2)を用い第3関係「11.3年(≒1.46×89.5/11.5)」を求める(S6、計算ステップ)。記憶部2は、計算部4により求められた第3関係を塗膜情報「X」及び実環境情報「東京」、「南面」、「45度面」に対応づけて記憶する(S7)。
【0056】
続いて、計算部4は、記憶部2から塗膜情報「X」及び実環境情報「東京」、「南面」、「45度面」に対応する第3関係を読み出す(S8)。本実施形態では、耐用限界として光沢保持率30%が採用され、これに対応して第3関係が求められている。したがって、出力部5は、この値を推定耐用年数として出力する(S9)。以上により、塗膜耐候性評価システム1によれば、「東京」、「南面」、「45度面」における製品名「X」の塗膜の推定耐用年数「11.3年」を得ることができる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態では、塗膜の光沢保持率と塗膜が受ける劣化外力との関係である第1関係と、実環境における塗膜の暴露時間と実環境における塗膜が受ける劣化外力との関係である第2関係とから、実環境における塗膜の光沢保持率と実環境における塗膜の暴露時間との関係である第3関係が求められる。また、第1関係は、塗膜に対する促進耐候性試験における試験時間と塗膜が当該試験時間で受ける劣化外力との関係である第4関係と、塗膜に対する促進耐候性試験における試験時間と塗膜の劣化度との関係である第5関係と、から計算部4の計算により求められる。
【0058】
第1関係は、屋外暴露試験によっても求められるが、試験期間が長期化し易い。本実施形態では、標準試料に対する促進耐候性試験から第4関係を求め、塗膜に対する促進耐候性試験から第5関係を求め、これらの第4関係及び第5関係から第1関係を求めている。つまり、促進耐候性試験の結果のみから第1関係を求めているので、試験時間の短縮化が可能である。
【0059】
一方、第2関係は、塗膜に対する屋外暴露試験から求められるものの、この屋外暴露試験の試験時間は1年間である。したがって、本実施形態によれば、促進耐候性試験と、1年間の屋外暴露試験とを行うことにより、実環境における塗膜耐候性の評価として、塗膜の推定耐用年数を得ることができる。このように、屋外暴露試験を実際に劣化するまでの期間である長期間行う必要がないため、実環境における塗膜耐候性を簡単に評価することができる。
【0060】
図8(a)は、屋外暴露試験により求めた実環境における塗膜の暴露時間と実環境における塗膜の光沢保持率との関係の例を示す図である。横軸は塗膜の暴露時間であり、縦軸は塗膜の光沢保持率である。塗膜はいずれも同じアクリルシリコン樹脂系塗料からなる塗膜である。実環境により劣化外力が異なるため、
図8(a)に示されるように、実環境により塗膜の光沢保持率の低下の度合いが異なる。例えば、暴露時間が3年間のときの光沢保持率は、宮古島で最も低い。従来、このような実環境による劣化外力の違いを反映させて塗膜の耐用年数を評価するには、屋外暴露試験による必要があり、塗膜によっては、試験期間が数年以上となる場合があった。
【0061】
図8(b)は、カルボニルインデックスと塗膜の光沢保持率との関係の例を示す図である。横軸は、劣化外力(カルボニルインデックス)であり、縦軸は塗膜の光沢保持率である。
図8(b)における「東京」、「銚子」、及び「宮古島」のデータは、第2関係を用い、
図8(a)のデータにおいて、実環境ごとの暴露時間をカルボニルインデックスに変換して得たものである。
図8(b)における「キセノンウェザーメーター」のデータは、第4関係を用い、
図5のデータにおいて、促進耐候性試験の試験時間をカルボニルインデックスに変換して得られたものである。
【0062】
上述のように実環境により劣化外力が異なるため、
図8(a)に示されるように暴露時間が同じであっても、実環境ごとに光沢保持率は異なる。しかしながら、
図8(b)のようにカルボニルインデックスが同じであれば、実環境によらず光沢保持率は略同等となる。本実施形態ではこの点を利用し、実環境における塗膜耐候性を簡単に評価することを可能としている。本実施形態では、建物の竣工時に外装仕上げの耐用年数(寿命)を高い確度で簡単に推定することができるので、推定耐用年数(推定寿命)に合わせて外装仕上げの更新を計画的に行うことができる。
【0063】
本実施形態では、劣化外力の指標として、カルボニルインデックスを用いているので、塗膜が受ける劣化外力を精度よく測定することができる。
【0064】
本実施形態では、入力部3が塗膜情報及び実環境情報を入力し、記憶部2は、塗膜情報に対応づけて第1関係を記憶し、実環境情報に対応づけて第2関係を記憶する。計算部4は、このような第1関係及び第2関係を用いて計算を行う。このため、塗膜情報及び実環境情報に対応した塗膜の推定耐用年数を評価することができる。
【0065】
続いて、塗膜耐候性評価システム1により求められた推定耐用年数を用いて、塗膜の維持管理費用を試算する方法について説明する。ここでの塗膜の維持管理とは、塗膜の推定耐用年数に合わせて外装仕上げの更新を行うことであり、塗膜の維持管理費用とは、このような塗膜の維持管理を行いながら塗膜を使用した場合にかかる費用のことである。初期の外装仕上げには、塗膜の維持管理費用として、材工設計価格のみがかかる。材工設計価格とは、建物の外装仕上げ1m
2当たりかかる費用であり、塗膜情報ごとに予め設定されている。なお、材工設計価格は、主材(建物の外装の上塗り塗膜以外の材料)の価格を含まない。外装仕上げの更新には、塗膜の維持管理費用として、材工設計価格に加えて、経費として高圧洗浄費用及び仮設費がかかる。
【0066】
材工設計価格及び塗膜耐候性評価システム1により求められた推定耐用年数を表4及び表5に示す。これらは、実環境情報を、例えば、「東京」、「南面」、「垂直面」とした場合の例である。表4は、仕様を示す仕様情報が「アクリルシリコン樹脂系塗装(硬質)」であるA社製の塗膜及びB社製の塗膜の場合であり、表5は、仕様情報が「ふっ素樹脂系塗装(硬質)」であるC社製の塗膜及びD社製の塗膜の場合である。仕様情報とは、塗膜の材料のみにより分類される塗膜の種類を示す情報であり、塗膜情報よりも大まかに塗膜の種類を分類する情報である。この場合、仕様情報と社名とにより塗膜情報が特定され、特定された塗膜情報を用いて推定耐用年数が求められる。
【表4】
【表5】
【0067】
材工設計価格及び推定耐用年数として表4の値を用いると共に、外装仕上げの更新の際の経費(高圧洗浄費用及び仮設費)を2500円/m
2とした場合、例えば、仕様情報が「アクリルシリコン樹脂系塗装(硬質)」であるA社製の塗膜の維持管理費用は、塗膜の使用期間が6年以下では、材工設計価格のみで2230円/m
2となる。塗膜の使用期間が7年以上12年以下では、これに加えて材工設計価格2230円/m
2と経費2500円/m
2がかかるため、塗膜の維持管理費用は6960円/m
2となる。このように、塗膜の維持管理費用は、推定耐用年数ごとに所定の金額ずつ増加し続ける。
【0068】
図9,10は、塗膜の使用期間と塗膜の維持管理費用との関係の例を示す図である。
図9は、仕様情報が「アクリルシリコン樹脂系塗装(硬質)」であるA社製の塗膜及びB社製の塗膜の場合であり、
図10は、仕様情報が「ふっ素樹脂系塗装(硬質)」であるC社製の塗膜及びD社製の塗膜の場合である。いずれも横軸は塗膜の使用期間であり、縦軸は塗膜の維持管理費用である。これらの関係によれば、塗膜の使用期間に応じた塗膜の維持管理費用を容易に試算することができる。
【0069】
[変形例1]
続いて、実施形態の変形例1について説明する。上述の実施形態では、耐用限界が予め光沢保持率30%と設定されていたが、本変形例では、耐用限界を任意に設定することができる。
【0070】
即ち、本変形例では、記憶部2は、塗膜に対する促進耐候性試験において光沢保持率が100%から、例えば10%、20%、30%・・・(耐用限界の光沢保持率)に低下するまでにかかる試験時間を、それぞれ塗膜の耐用限界の光沢保持率を示す耐用限界情報に対応づけて、塗膜情報ごとに第5関係として記憶する。入力部3は、例えば、ユーザによるキーボードの操作に応じて、塗膜情報及び実環境情報に加えて、耐用限界情報を入力する。つまり、入力部3は、耐用限界情報入力部としても機能する。入力部3は、具体的には、例えば、塗膜情報「X」及び実環境情報「東京」、「南面」、「垂直面」に加えて、耐用限界情報「50%」を入力する。
【0071】
計算部4は、記憶部2から第5関係を読み出す際に、入力部3が入力した塗膜情報「X」及び耐用限界情報「50%」に対応する第5関係を読み出す。計算部4は、このように第5関係を読み出す以外は実施形態と同様にして、第3関係を求める。これにより、第3関係として、塗膜情報「X」、実環境情報「東京」、「南面」、「垂直面」、及び耐用限界情報「50%」に対応した塗膜の推定耐用年数を求めることができる。
【0072】
以上説明したように、本変形例によれば、塗膜の耐用限界を任意に設定し、設定した耐用限界に対応した塗膜の推定耐用年数を求めることができる。
【0073】
[変形例2]
続いて、実施形態の変形例2について説明する。本変形例では、塗膜情報及び実環境情報に基づき推定耐用年数を求める代わりに、実環境情報及び期待耐用年数に基づき対応する塗膜情報を求める点で実施形態と主に相違している。期待耐用年数とは、耐用年数として期待される値である。
【0074】
即ち、本変形例では、入力部3は、例えば、ユーザによるキーボードの操作に応じて、実環境情報及び期待耐用年数を入力する。計算部4は、入力部3が期待耐用年数を入力すると、記憶部2に記憶された全ての塗膜情報の一つずつに対して、入力部3が入力した実環境情報に対応する推定耐用年数を順次求め、求めた推定耐用年数を実環境情報及び塗膜情報に対応づけて記憶部2に記憶させる。計算部4は、全ての塗膜情報について推定耐用年数を求めると共に、記憶部2に記憶させ終えると、記憶部2に記憶された推定耐用年数の中から、入力部3が入力した期待耐用年数以上である推定耐用年数の塗膜情報を抽出する。出力部5は、計算部4により抽出された塗膜情報を全て出力する。
【0075】
以上説明したように、本変形例によれば、推定耐用年数が期待耐用年数を満足する塗膜情報を抽出することができる。
【0076】
[変形例3]
続いて、実施形態の変形例3について説明する。本変形例では、塗膜の推定耐用年数に加えて、耐用年数コスト指数及びコスト指数を求めることができる点で実施形態と主に相違している。ここで、耐用年数コスト指数とは、推定耐用年数(年)を材工設計価格(千円)で割った値であり、材工設計価格が千円あたりの推定耐用年数を示す。即ち、一般的には、耐用年数コスト指数が高いほど推定耐用年数の点で費用対効果が高いと言える。コスト指数とは、材工設計価格(円)を推定耐用年数(年)で割った値であり、推定耐用年数1年間あたりの材工設計価格を示す。即ち、一般的には、耐用年数コスト指数が低い塗膜ほど推定耐用年数の点で費用対効果が高いと言える。
【0077】
本変形例では、まず計算部4は、本実施形態と同様に、入力部3が入力した塗膜情報及び実環境情報に対応する推定耐用年数を求める。出力部5が推定耐用年数を出力した後、入力部3は、例えば、ユーザによるキーボードの操作に応じて、当該塗膜情報に対応する材工設計価格を入力する。計算部4は、入力部3から材工設計価格が入力されると、記憶部2から当該塗膜情報及び当該実環境情報に対応する推定耐用年数を読み出す。計算部4は、この推定耐用年数と、材工設計価格と、を用いて、耐用年数コスト指数及びコスト指数を計算により求める。出力部5は、計算部4により求められた耐用年数コスト指数及びコスト指数を出力する。
【0078】
図11(a)は、推定耐用年数と耐用年数コスト指数との関係の例を示す図であり、
図11(b)は推定耐用年数とコスト指数との関係の例を示す図である。
図11(a)の横軸は推定耐用年数であり、縦軸は耐用年数コスト指数である。
図11(b)の横軸は推定耐用年数であり、縦軸はコスト指数である。これらは、実環境情報を東京とした場合の例である。本変形例において、実環境情報を、例えば、「東京」、「南面」、「垂直面」として、様々な塗膜情報に対して推定耐用年数、耐用年数コスト指数及びコスト指数を求めることにより、これらの図を容易に得ることができる。これらの図においてA,B,C,及びDが付されたプロットは、上述のA社製、B社製、C社製及びD社製の塗膜それぞれに対応している。これらの図によれば、例えば、プロット全体から、推定耐用年数が長い塗膜ほど耐用年数コスト指数が高く且つコスト指数が低くなる傾向がある、即ち、推定耐用年数が長い塗膜ほど推定耐用年数の点で費用対効果が高くなる傾向がある、といったことが容易に把握できる。また、プロット全体の回帰直線又は近似曲線を求めることで、これらの傾向を数式で表すこともできる。
【0079】
以上説明したように、本変形例によれば、塗膜の材工設計価格を入力することができ、塗膜の推定耐用年数に加えて、耐用年数コスト指数及びコスト指数を求めることができる。これにより、例えば、
図11(a)及び
図11(b)に示されるような推定耐用年数と耐用年数コスト指数との関係、及び推定耐用年数とコスト指数との関係を容易に把握することができる。
【0080】
[変形例4]
続いて、実施形態の変形例4について説明する。本変形例では、特定の塗膜情報及び特定の実環境情報に対応する推定耐用年数を求める代わりに、特定の仕様情報に対応する全ての塗膜情報について、特定の実環境情報に対応する推定耐用年数を求める点で実施形態と主に相違している。
【0081】
即ち、本変形例では、記憶部2は、予め仕様情報及び塗膜情報に対応づけて第5関係を記憶している。仕様情報は、例えば、上述の「アクリルシリコン樹脂系塗装(硬質)」、「ふっ素樹脂系塗装(硬質)」等である。入力部3は、例えば、ユーザによるキーボードの操作に応じて、実環境情報及び仕様情報を入力する。計算部4は、入力部3が実環境情報及び仕様情報を入力すると、記憶部2に記憶された塗膜情報であって、入力部3が入力した仕様情報に対応する全ての塗膜情報の一つずつに対して、入力部3が入力した実環境情報に対応する推定耐用年数を順次求める。計算部4は、このように順次求めた推定耐用年数を、入力部3が入力した実環境情報及び仕様情報と、計算に用いた第5関係の塗膜情報とに対応づけて、記憶部2にさせる。計算部4が全ての塗膜情報について推定耐用年数を求めると共に、記憶部2に記憶させ終えると、出力部5は、塗膜情報ごとに複数の推定耐用年数を出力する。
【0082】
以上説明したように、本変形例によれば、特定の仕様情報に対応する全ての塗膜情報について特定の実環境情報に対応する推定耐用年数を求めることができる。
【0083】
[変形例5]
続いて、実施形態の変形例5について説明する。本変形例は、特定の仕様情報に対応する全ての塗膜情報について特定の実環境情報に対応する推定耐用年数を求める点で変形例4と一致し、更に推定耐用年数が期待耐用年数を満足する塗膜情報を抽出する点で変形例4と相違している。
【0084】
即ち、本変形例では、記憶部2は、変形例4と同様に、予め仕様情報及び塗膜情報ごとに第5関係を記憶している。入力部3は、例えば、ユーザによるキーボードの操作に応じて、期待耐用年数、実環境情報及び仕様情報を入力する。計算部4は、変形例4と同様に、入力部3が入力した仕様情報に対応する全ての塗膜情報について、入力部3が入力した実環境情報に対応する推定耐用年数を求め、仕様情報、塗膜情報、及び実環境情報に対応づけて記憶部2に記憶させる。計算部4は、全ての塗膜情報について推定耐用年数を求めると共に、記憶部2に記憶させ終えると、記憶部2に記憶された推定耐用年数の中から、入力部3の入力した期待耐用年数以上である推定耐用年数の塗膜情報を抽出する。出力部5は、計算部4により抽出された塗膜情報を出力する。
【0085】
以上説明したように、本変形例によれば、特定の仕様情報に対応する全ての塗膜情報の中から、推定耐用年数が期待耐用年数を満足する塗膜情報を抽出することができる。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0087】
本実施形態では、塗膜の劣化度を光沢保持率の変化量としている。光沢保持率は塗膜劣化の初期段階を評価するのに有効である。しかしながら、初期の光沢保持率が低い塗膜では、光沢保持率の変化量が小さいため、光沢保持率の変化量により塗膜の劣化を評価するのは困難である。塗膜は用途の違いによって種々の機能(ひび割れ追従性、中性化抑制、防水、遮熱等)を有している。そこで、これらの塗膜機能に応じた特性値による耐用限界を検討することもできる。即ち、耐用限界を評価したい塗膜機能に応じて、用いる特性値を適宜選択してもよい。
【0088】
塗膜耐候性評価システム1の動作開始時に第1関係が既知である場合は、記憶部2は第1関係を予め記憶し、第4関係及び第5関係を記憶しなくてもよい。
【0089】
記憶部2が第5関係を1つの塗膜情報に対してのみ記憶している場合、入力部3による塗膜情報の入力を省略することができる。また、記憶部2が第2関係を1つの実環境情報に対してのみ記憶している場合、入力部3による実環境情報の入力を省略することができる。
【0090】
記憶部2は、第2関係を南面以外の方位または垂直面以外の角度の場合以外についても記憶してもよい。入力部3が入力した実環境情報に方位、角度まで一致する第2関係が記憶部2に記憶されていれば、計算部4は係数B’を用いることなく(係数B’を1として)推定耐用年数を計算することができる。
【0091】
実環境情報は、地域、方位、角度のいずれか、又はその他でもよい。また、入力部3による実環境情報の入力がなくてもよい。計算部4は、その場合は、予め設定された実環境情報を用いて計算を行ってもよい。例えば、計算部4は、入力部3による方位の入力がない場合は、方位を「南面」として計算を行う。また、計算部4は、入力部3による角度の入力がない場合は、角度を「垂直」として計算を行う。